説明

フォトマスク及びフォトマスクを用いたパターン形成方法

【課題】 フォトマスクの表面に成長性欠陥が発生することを抑制するフォトマスク及びフォトマスクを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 実施形態のフォトマスクでは、露光光を透過する透明基板を持つ。前記露光光に対して前記透明基板より透過率が低く、かつ第1の原子を含む半透明膜が、前記透明基板上に周期的に設けられる。前記半透明膜の表面を覆い、前記露光光を透過する保護膜が設けられる。前記露光光が前記半透明膜に照射されたとき、前記第1の原子が前記保護膜にトラップされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フォトマスク及びフォトマスクを用いたパターン形成方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の微細パターン形成のため、フォトリソグラフィ法が用いられている。フォトリソグラフィ法に用いられるフォトマスクには、通常、完全な遮光膜と透過部を有するものが用いられているが、パターンの高解像化のため、遮光膜を半透過膜にしたハーフトーンマスクも用いられている。
【0003】
近年、フォトリソグラフィ法において、露光波長が短くなるに伴い、露光エネルギーが大きくなっている。ハーフトーンマスクのようなフォトマスクに高エネルギーな光が照射されると、半透明膜中の原子のうち例えばモリブデン原子や窒素原子が昇華し、また不純物イオンや周辺環境の不純物イオンの化学反応が起こり、フォトマスクの表面にモリブデン原子を含んだ硫酸アンモニウム系の成長性欠陥が発生するといった問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−186069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、フォトマスクの表面に成長性欠陥が発生することを抑制するフォトマスク及びフォトマスクを用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態のフォトマスクでは、露光光を透過する透明基板を持つ。前記露光光に対して前記透明基板より透過率が低く、かつ第1の原子を含む半透明膜が、前記透明基板上に周期的に設けられる。前記半透明膜の表面を覆い、前記露光光を透過する保護膜が設けられる。前記露光光が前記半透明膜に照射されたとき、前記第1の原子が前記保護膜にトラップされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るフォトマスクの例を示す断面図。
【図2】本実施形態に係るフォトマスクの例を示す断面図。
【図3】本実施形態に係るフォトマスクの例を示す断面図。
【図4】本実施形態に係るフォトマスクの製造方法を示す断面図。
【図5】本実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法を示す断面図。
【図6】本実施形態に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
本実施形態に係るフォトマスクについて以下説明する。
【0010】
図1乃至図3は、本実施形態に係るフォトマスクの例を示す断面図である。
【0011】
図1のように、本実施形態に係るフォトマスク1においては、露光光を透過する透明基板2が設けられる。露光光は、例えば波長248nmのKrFエキシマレーザ光又は波長193nmのArFエキシマレーザ光等が用いられる。透明基板2としては、露光光を透過するものとして、例えば石英基板が用いられる。
【0012】
透明基板2の主面上には、露光光に対して透明基板2より透過率が低く、周期的に凹凸パターンを有する半透明膜3が設けられる。半透明膜3は、第1の原子として窒素原子を含むものであり、第2の原子としてモリブデン原子が含まれていてもよい。半透明膜3には、例えば MoSiN, MoSiON等が用いられ、これらは露光光の波長によって使い分ける。半透明膜3は、半透明膜3を透過した露光光の位相をシフトするものである。
【0013】
さらに、半透明膜3の表面を覆うように、露光光を透過する保護膜4が設けられる。保護膜4として、例えばSiOH基を有するSiOx(シリコン酸化膜)又はSiON膜が用いられる。半透明膜3に第1の原子が含まれている場合には、露光光を照射した際に、窒素原子がSiOx膜に含まれるSiOH基にトラップされる。このとき、SiOH基の水素原子が、窒素原子を含む基に置換される。これにより、硫酸アンモニウム系の成長性欠陥の原因となる窒素原子の昇華を抑制することができる。その結果、保護膜4に第1の原子として窒素原子が含まれることになる。
【0014】
保護膜4は、図2に示すように、透明基板2の主面上の半透明膜3のみでなく、透明基板2の側面及び裏面を覆うように設けられていてもよい。このように、透明基板2全体を覆う場合には、透明基板2を介して第1の原子が昇華することを抑制することができる。
【0015】
さらに、図3(a)に示すように、保護膜4は、窒素原子の昇華を抑制するためのSiOH基を有するSiOx膜を含む保護膜4aと、モリブデン原子の昇華を抑制する多孔質SiOx膜(ポーラスシリコン酸化膜)等を含む保護膜4bとの積層膜であってもよい。半透明膜3に第1の原子及び第2の原子が含まれている場合には、露光光を照射した際に、窒素原子が保護膜4aであるSiOx膜のSiOH基にトラップされ、モリブデン原子が保護膜4bである多孔質SiOx膜にトラップされる。これにより、露光光照射による半透明膜3に含まれる第1の原子及び第2の原子の昇華を抑制することができ、成長性欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0016】
また、図3(b)に示すように、保護膜4は、透明基板2の主面上に、透明基板2の主面上の半透明膜3のみでなく、透明基板2の側面及び裏面を覆うように設けられていてもよい。このように、透明基板2全体を覆う場合には、透明基板2を介して第1の原子及び第2の原子が昇華することを抑制することができる。
【0017】
本発明の本実施形態に係るフォトマスク1によれば、半透明膜3の表面を覆う保護膜4が設けられている。これにより、露光光の照射により半透明膜3から拡散する第1の原子をトラップすることができ、硫酸アンモニウム系の成長性欠陥の原因となる第1の原子としての窒素原子の昇華を抑制することができる。
【0018】
さらに、保護膜4が透明基板2の主面だけでなく、透明基板2の側面及び裏面に設けられている場合には、第1の原子の昇華をさらに抑制することができ、第1の原子を含む成長性欠陥の発生を抑制することができる。
【0019】
さらに、本実施形態において、保護膜4が第1の原子の昇華を抑制する保護膜4aと第2の原子の昇華を抑制する保護膜4bの積層膜である場合には、半透明膜3に含まれる第1の原子及び第2の原子の昇華を抑制することができ、成長性欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0020】
本実施形態に係るフォトマスク1の製造方法について以下説明する。
【0021】
図4は、本実施形態に係るフォトマスク1の製造方法を示す断面図である。
【0022】
図4(a)に示すように、本実施形態に係るフォトマスク1においては、露光光を透過する透明基板2としての石英基板の主面上に、露光光に対して透明基板2より透過率が低い半透明膜3を成膜する。半透明膜3は、第1の原子として例えば窒素原子を含むものであり、第2の原子としてモリブデン原子を含むものであってもよい。半透明膜3には、例えばMoSiON膜が用いられる。
【0023】
その後、図4(b)に示すように、半透明膜3上にレジスト膜5を塗布し、電子線リソグラフィ法により、レジスト膜5を加工し、レジスト膜5をマスクパターンの形状に成型する。マスクパターンの形状は、例えばラインアンドスペースパターンである。
【0024】
その後、図4(c)に示すように、加工したレジスト膜5をマスクとして半透明膜3をエッチングする。このエッチングは、例えば塩素系のエッチングガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)を用いて行う。
【0025】
次いで、図4(d)に示すように、レジスト膜5を、例えば酸素アッシングにより除去し、周期的に凹凸パターンを有する半透明膜3が形成される。
【0026】
次に、図1に示すように、半透明膜3の表面を覆うように例えば熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により保護膜4を形成する。保護膜4の形成方法は、他にもALD法、プラズマCVD法等を用いてもよい。図2のように、保護膜4は、透明基板2の主面上の半透明膜3のみでなく、透明基板2の側面及び裏面を覆うように形成してもよい。保護膜4は、露光光として用いられる例えばArFエキシマレーザ光を透過するものである。保護膜4には、第1の原子が昇華することを抑制するものとして、例えばSiOx膜又はSiON膜が用いられる。
【0027】
さらに、保護膜4として、窒素原子の昇華を抑制するためのSiOH基を有するSiOx膜を含む保護膜4aと、モリブデン原子の昇華を抑制する多孔質SiOx膜等を含む保護膜4bとの積層膜を形成してもよい。この場合、半透明膜3に含まれる第1の原子及び第2の原子の昇華を抑制することができ、成長性欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0028】
以上により、図1に示すように、本実施形態に係るフォトマスク1の製造工程が完了する。
【0029】
本実施形態に係るフォトマスク1を用いたパターン形成方法について以下説明する。図5及び図6は、本実施形態に係るフォトマスク1を用いたパターン形成方法を説明するための断面図を示す。
【0030】
まず、図5(a)のように、基板6上に被加工膜7として例えばSiOx膜を形成する。SiOx膜は、例えばCVD法により形成する。その後、被加工膜7上に塗布法によりレジスト膜8を塗布する。
【0031】
次に、図5(b)のように、フォトマスク1を所定の位置に配置し、レジスト膜8にフォトマスク1を介して露光光を照射する。このとき、露光光として、例えば波長248nmのKrFエキシマレーザ光又は波長193nmのArFエキシマレーザ光等が用いられる。露光光に用いられる波長が短波長であるため、半透明膜3中に含まれる第1の原子としての窒素原子や第2の原子としてのモリブデン原子が拡散されるが、保護膜4によりトラップされる。これにより、成長性欠陥の原因となる原子をフォトマスク1からの昇華を抑制することができ、成長性欠陥の発生を抑制することができる。
【0032】
本実施形態に係るフォトマスク1では、透明基板2上に、遮光膜でなく、半透明膜3を形成しているため、露光光が半透明膜3の表面だけでなく、半透明膜3中にも侵入する。そのため、透明基板2上に遮光膜を形成している場合と比べて、半透明膜3中の原子が昇華されやすい。この場合においても、半透明膜3の表面を覆う保護膜4により、半透明膜3からの拡散原子をトラップし、成長性欠陥の発生を抑制することができる。
【0033】
その後、図5(c)のように、被加工膜7上のレジスト膜8を現像し、フォトマスク1のマスクパターンを転写する。
【0034】
次に、図5(d)のように、パターンが転写されたレジスト膜8をマスクとして被加工膜7を例えばRIEによりエッチングする。その後、例えば酸素アッシングによりレジスト膜8を除去する。
【0035】
以上により、本実施形態に係るフォトマスク1を用いたパターン形成が完了される。
【0036】
また、図6のように、保護膜4が、窒素原子の昇華を抑制するためのSiOH基を有するSiOx膜等の保護膜4aと、モリブデン原子の昇華を抑制する多孔質SiOx膜等を含む保護膜4bの積層膜である場合には、レジスト膜8にフォトマスク1を介して露光光を照射する際、保護膜4は、半透明膜3から昇華する第1の原子及び第2の原子をトラップすることができる。
【0037】
以上のように、本発明の本実施形態によれば、半透明膜3の表面を覆う保護膜4が設けられている。これにより、露光光により半透明膜3から拡散する第1の原子をトラップすることができ、第1の原子を含む成長性欠陥の発生を抑制することができる。
【0038】
さらに、保護膜4が透明基板2の主面だけでなく、透明基板2の側面及び裏面に設けられている場合には、第1の原子の昇華をさらに抑制することができ、第1の原子を含む成長性欠陥の発生を抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態において、保護膜4が第1の原子の昇華を抑制する保護膜4aと第2の原子の昇華を抑制する保護膜4bの積層膜である場合には、半透明膜3に含まれる第1の原子及び第2の原子の昇華を抑制することができ、成長性欠陥の発生をさらに抑制することができる。
【0040】
なお、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0041】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…フォトマスク
2…透明基板
3…半透明膜
4…保護膜
4a…保護膜
4b…保護膜
5、8…レジスト膜
6…基板
7…被加工膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を透過する透明基板と、
前記透明基板上に周期的に設けられ、前記露光光に対して前記透明基板より透過率が低く、かつ第1の原子を含む半透明膜と、
前記半透明膜の表面を覆い、前記露光光を透過する保護膜と、
を備えたフォトマスクであって、
前記露光光が前記半透明膜に照射されたとき、前記第1の原子が前記保護膜にトラップされることを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記半透明膜は、第2の原子をさらに含み、前記保護膜は、第1の保護膜及び第2の保護膜が積層された膜であり、かつ前記露光光が、前記半透明膜に照射されたとき、前記第1の原子が前記第1の保護膜にトラップされ、前記第2の原子が前記第2の保護膜にトラップされることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
露光光を透過する透明基板と、
前記透明基板上に周期的に設けられ、前記露光光に対して前記透明基板より透過率が低く、かつ第1の原子を含む半透明膜と、
前記半透明膜の表面を覆い、前記露光光を透過し、SiOH基を有する保護膜と、
を備えたフォトマスク。
【請求項4】
前記半透明膜は、第2の原子をさらに含み、前記保護膜は、第1の保護膜及び第2の保護膜が積層された膜であり、前記第1の保護膜は、SiOH基を有するシリコン酸化膜であり、かつ前記第2の保護膜は、多孔質シリコン酸化膜であることを特徴とする請求項3に記載のフォトマスク。
【請求項5】
露光光を透過する透明基板上に、前記露光光に対して前記透明基板より透過率が低く、第1の原子を含む半透明膜が形成され、前記半透明膜の表面を覆い、前記露光光を透過する保護膜が形成されたフォトマスクを用いるパターン形成方法であって、
基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に前記フォトマスクを介して前記露光光を照射し、前記半透明膜に含まれる前記第1の原子が前記保護膜にトラップされる工程と、
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
露光光を透過する透明基板上に、前記露光光に対して前記透明基板より透過率が低く、第1の原子及び第2の原子を含む半透明膜が形成され、前記半透明膜の表面を覆い、前記露光光を透過する第1の保護膜及び第2の保護膜が積層されたフォトマスクを用いるパターン形成方法であって、
基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に前記フォトマスクを介して前記露光光を照射し、前記半透明膜に含まれる前記第1の原子が前記第1の保護膜にトラップされ、前記第2の原子が前記第2の保護膜にトラップされる工程と、
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−211948(P2012−211948A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76436(P2011−76436)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】