説明

フォーカス制御装置

【課題】合焦点を中心に必要最小限の振幅でフォーカスサーチ動作を行うことができ、周期的な面ぶれや突発的なノイズの混入があっても良好なフォーカス制御装置を提供する。
【解決手段】対物レンズが記録面側に接近する方向で衝突しないように設定されたフォーカスエラー信号値を第1閾値とし、記録面から遠ざかる方向で離れ過ぎないように設定されたフォーカスエラー信号値を第2閾値とする時、フォーカスエラー信号が第1閾値と第2閾値との間に入っていることを判定する領域判定手段14と、領域判定手段から出力される領域判定信号に基づいてフォーカスエラー信号が第1閾値と第2閾値との間になるようにフォーカス制御するレンズ制御手段16と、面ぶれで発生する対物レンズの逆行による領域判定信号の乱れを補正してフォーカスエラー信号の最大振幅値を検出し、フォーカスエラー信号の利得を制御する振幅測定制御手段21とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置等の光情報記録媒体に対して情報を記録したり、再生したりする装置に用いる光ピックアップの対物レンズをフォーカス方向へ移動させて対物レンズの焦点位置(合焦点)を検出して対物レンズの移動方向を制御するフォーカス制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光情報記録媒体、例えば光ディスクに対して情報を記録したり、再生したりする装置にあっては、フォーカスサーボを引き込む前の処理として、光ピックアップの対物レンズをディスク面に直交する方向、すなわちフォーカス方向に移動させて対物レンズ焦点位置(合焦点ともいう)を探るフォーカスサーチ動作を行う。
この場合、光ディスクの反りや面ぶれ、レンズアクチュエータやディスクモータの取り付け精度等により対物レンズのニュートラル位置から合焦点までの距離がばらついても対物レンズの焦点位置を検出できるように、対物レンズを一定の振幅でフォーカス方向に大きく移動させてフォーカスサーチ動作を行っていた(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この時の状態を図9を参照して説明する。図9はフォーカスサーチ動作時のディスク表面と対物レンズの先端との位置関係を示すグラフである。図9は低密度光ディスクと高密度光ディスクがある場合において高密度光ディスクに合焦させる場合の例を示している。
フォーカスサーチ動作を開始すると対物レンズはディスク表面より遠く離れたニュートラル位置からディスク表面に接近し、高密度光ディスクに対する合焦点を通過して更に大きくディスク表面に近づいた後に、対物レンズの移動方向を反転させてディスク表面から遠ざかるように動作する。この間、対物レンズを介してディスク表面にレーザ光が照射されてディスク表面にて反射され、この反射光が光センサ(図示せず)で検出されてフォーカスエラー信号が継続的に得られている。従って、上記対物レンズの先端が高密度光ディスクに対する合焦点を通過したことを認識することができる。
以後は、上記合焦点の位置を認識することによりフォーカスサーボが行われ、対物レンズの移動がフォーカスエラー信号に基づいて制御され、上記合焦点を中心としてこれを跨ぐようにして対物レンズは移動して行くことになる。
【特許文献1】特開平10−55546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光ディスクの情報記録面に形成される光スポットは、対物レンズのNA(Numerical Aperture:開口数)とレーザ光の波長によって決定され、光スポットの大きさは波長/NAに比例するため光ディスクの高密度化を行うには、微小な光スポットを得るために波長の短いレーザ光を採用するかNAを上げることが必要である。
また対物レンズの光軸に対するディスク面の傾きの影響を低減するため、高密度の光ディスクにおいては光の入射面から情報記録面までの厚みを薄くしている。それに伴って対物レンズの先端からディスク表面までの間隔、いわゆるワーキング・ディスタンス(WD)も短くなってきている。例えば図9に示すように、従来の光ディスクの場合には、合焦点からディスク表面までの距離であるWD1は大きいが、高密度光ディスクの場合のWD2はかなり小さくなっている。
【0005】
また高精度に情報記録面に光スポットを形成する必要から、合焦点付近におけるフォーカスエラーの感度も高くなってきている。すなわち図9に示すように、高密度光ディスクの場合には、合焦点付近におけるフォーカスエラー信号の時間軸方向におけるS字カーブ特性の時間幅が短くなっている。
そのため、上述のようにワーキング・ディスタンスが狭くなると、従来行われてきたディスク面に垂直な方向に光ピックアップの対物レンズを一定の振幅で大きく移動させて対物レンズの焦点位置を検出するフォーカスサーチ方法では図9に示す様に対物レンズと高密度光ディスクとが衝突してしまう可能性がでてきた。
【0006】
またフォーカスサーボを安定に引き込むためには合焦点におけるフォーカスエラー信号の時間的な変化率が所定のレベル以下である必要があるため、従来と同じ方法で合焦点を移動させると高密度光ディスクではフォーカスエラー変化率が大きくなってしまいフォーカスサーボを安定に引き込めない。
この問題点を解決するために、従来の方法でフォーカスサーボを安定に引き込むためにはアクチュエータの対物レンズの移動速度を落とすことも考えられるが、これではフォーカスサーチにかかる時間が増えてしまうので採用することはできない。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、合焦点を中心に必要最小限の振幅でフォーカスサーチ動作を行うことができるフォーカス制御装置を提供することにあり、特に回転時の光ディスクに周期的な面ぶれがあったり、フォーカスエラー信号に突発的なノイズの混入があっても良好なフォーカス制御が可能なフォーカス制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決する手段として以下に記載の構成からなる。すなわち、
照射光を対物レンズを介して光情報記録媒体の記録面に合焦させ、前記記録面からの戻り光により得られるフォーカスエラー信号に基づいて、前記対物レンズが前記光情報記録媒体に衝突することを防止するフォーカス制御装置において、前記対物レンズが前記照射光を前記記録面に合焦させた合焦位置における前記フォーカスエラー信号値を基準値として、前記対物レンズが前記合焦位置を超えて前記記録面側に接近する方向にあって、前記対物レンズが前記光情報記録媒体に衝突しないように設定された前記フォーカスエラー信号値を第1閾値とし、前記対物レンズが前記合焦位置を超えて前記記録面から遠ざかる方向にあって、前記対物レンズが前記光情報記録媒体から離れ過ぎないように設定された前記フォーカスエラー信号値を第2閾値とする時、前記フォーカスエラー信号が前記第1閾値と前記第2閾値との間に入っていることを判定して出力する領域判定手段と、前記領域判定手段から出力される領域判定信号に基づいて、前記フォーカスエラー信号が前記第1閾値を超えて前記記録面に近づいた場合に、或いは前記第2閾値を超えて前記記録面から遠ざかる場合に前記合焦位置に戻し、前記フォーカスエラー信号が前記第1閾値と前記第2閾値との間になるように制御して、前記対物レンズを前記光情報記録媒体に衝突させずにフォーカス制御するレンズ制御手段と、前記対物レンズが前記合焦位置から所定距離だけ離れた複数位置における前記領域判定信号の振幅値から矩形状の複数の振幅測定区間信号を生成し、前記振幅測定区間信号のハイレベル期間とローレベル期間毎に前記フォーカスエラー信号の最大値と最小値を検出して、その差分となる最大振幅値を得て、前記最大振幅値に基づいて前記フォーカスエラー信号の利得を制御する振幅測定制御手段と、を有することを特徴とするフォーカス制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフォーカス制御装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
フォーカスエラー信号のレベル変化順序に基づいて対物レンズが合焦点よりディスク面に近い位置にあるか、離れた位置にあるかを判別して、ディスク面に近い位置にある場合はディスク面から離す方向に対物レンズを移動し、離れている場合は近づける方向に移動するようにしたので、対物レンズは常に合焦点を中心に小さな振幅でフォーカスサーチ動作を行うことができる。
従って、従来のフォーカスサーチ法のように光ディスクの反りや面ぶれ、レンズアクチュエータやディスクモータの取り付け精度等による対物レンズのニュートラル位置からの合焦点位置のばらつきを考慮して、対物レンズをフォーカス方向に大きく移動させてレンズ焦点位置を探る必要がなく、WD(ワーキング・ディ スタンス)が狭い場合でもフォーカスサーボ引き込み時の対物レンズと光情報記録媒体との衝突を防止することができる。
また、光ディスクの面ぶれの周期とランプ状信号の周期が合致したときの不都合やフォーカスエラー信号に突発的なノイズの混入などがあっても、それらの影響を除去した良好なフォーカス制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係るフォーカス制御装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係るフォーカス制御装置を含む光ピックアップの主要部を示すブロック構成図、図2はフォーカス制御装置の領域判定回路を示すブロック構成図である。
図1において、光情報記録媒体の一例である光ディスクDは、スピンドルモータMによって回転駆動される。この光ディスクDに対して光ピックアップ2が相対移動可能に設けられる。この光ピックアップ2は、アクチュエータ4によって光ディスクDの表面方向(光軸方向)へ前進後退移動される対物レンズ6を有しており、図示しないレーザ素子にて発せられた記録再生用のレーザ光が図示しない光学系及び対物レンズ6を介して上記ディスク表面に照射されて光スポットを形成するようになっている。尚、ここではトラッキング方向のアクチュエータの記載は省略している。
【0011】
光センサ8は、上記ディスク表面(記録面)からの反射光を検出するものである。フォーカスエラー検出回路10は、上記光センサ8からの信号に基づいてフォーカスエラー信号FSを生成し出力する。このとき、フォーカスエラー信号FSは検出回路の定数やレーザ光の強度、光ディスクの反射率等の各種バラツキにより出力レベルが異なってくるので、後述の振幅測定制御回路21からの利得制御信号により利得を制御されて出力されるようになっている。尚、トラッキングエラー検出回路等の記載は省略している。
このフォーカスエラー信号FSは、次いでフォーカス制御装置12へ入力される。このフォーカス制御装置12は、上記フォーカスエラー信号FSに基づいて対物レンズ6が、合焦点よりディスク表面に近い位置にあるか、遠い位置にあるかを判定する領域判定回路14と、この領域判定回路14の判定結果に応じて上記対物レンズ6の移動方向を制御するレンズ制御回路16とを有している。
【0012】
このレンズ制御回路16は上記領域判定回路14からの出力を所定の時間Td(図4参照)だけ遅延させる遅延回路18と、この遅延回路18の出力に基づいてアクチュエータ4に対する制御信号を形成するアクチュエータ制御回路19とよりなる。そして、アクチュエータ制御回路19の出力は、ドライバ20へ入力され、ここでアクチュエータドライバ信号DSが出力される。
また領域判定回路14は、図2に示すように、2つのコンパレータ回路22、24と、これらの出力に個別に接続される論理回路よりなる2つの立ち上がりエッジ検出回路26、28と、両立ち上がりエッジ検出回路26、28の出力がS入力とR入力へそれぞれ入力されるRSフリップフロップ30とにより構成される。このRSフリップフロップ30からは領域判定信号ASが出力される。
上記コンパレータ回路22、24には、基準値として閾値+TH1、−TH2がそれぞれ入力されている。上記各立ち上がりエッジ検出回路26、28は、上記コンパレータ回路22、24の出力の一部を遅延させる遅延素子回路26A、28Aと、上記コンパレータ回路22、24の出力を一方のピンへ入力し、他方のピンは負論理のピンとしてこれには前記遅延素子回路26A、28Aの出力を入力するアンド回路26B、28Bとよりなる。
【0013】
次に、上述のように構成された装置の動作について説明する。
まず、図2及び図3に基づいて領域判定回路14の動作について説明する。図3はレンズ位置とフォーカスエラー信号と領域判定信号とセット(リセットを含む)信号との関係を示すタイミングチャートである。
通常、対物レンズ6(図1参照)が遠くからディスク表面に近づく方向で合焦点を通過した場合は、フォーカスエラー信号FSはゼロ(例えば期間h1)→正(例えば期間h2)→負(例えば期間h3)→ゼロ(例えば期間h4)と変化し、ディスク表面から遠ざかる方向で合焦点を通過した場合はゼロ(例えば期間h5)→負(例えば期間h6)→正(例えば期間h7)→ゼロ(例えば期間h8)と変化する。
なお、上記のh2−h3、h6−h7の期間をS字カーブ期間という。
【0014】
まず、フォーカスサーチ動作がスタートし、対物レンズ6が合焦点に近づくと(期間h1,h2)、図2に示す領域判定回路14の各コンパレータ回路22、24に入力されたフォーカスエラー信号FSのレベルがゼロから正方向に変化し図3の時刻t1に正の閾値である+TH1を超える。このときコンパレータ回路22の出力がL(ロー)からH(ハイ)に変化し、立ち上がりエッジ検出回路26より遅延素子回路26Aの遅延量dに相当する幅の正のパルスがRSフリップフロップ30のセット入力(S)に出力されるが、RSフリップフロップ30はフォーカスサーチ開始時にHレベル(ハイレベル)にセットされているので領域判定信号ASはHレベルのままで変化しない(時刻t1)。
【0015】
次に対物レンズ6が合焦点のポイントP1を通過するとフォーカスエラー信号FSはゼロから負方向(期間h3)に変化した後再びゼロ方向に戻り図3の時刻t2に負の閾値である−TH2を超える(フォーカスエラー信号は負)。このときはコンパレータ回路24の出力がLからHに変化し立ち上がりエッジ検出回路28より遅延量dの幅の正のパルスがRSフリップフロップ30のリセット入力(R)に出力され、領域判定信号ASはLとなり対物レンズ6が合焦点よりディスク表面に近い領域にあると判定される(時刻t2)。
対物レンズ6が合焦点を通過してディスク表面に近い領域に移ると(期間h4)、アクチュエータ制御回路19(図1参照)は対物レンズ6を合焦点に戻すように制御するので、対物レンズ6はポイントP2にて移動方向を反転し、再び合焦点に向かい始める(期間h5)。
【0016】
対物レンズ6がディスク表面に近い領域から合焦点に近づくとフォーカスエラー信号FSのレベルがゼロから負方向に変化した後に正方向に変化し図3の時刻t3に−TH2を超える(期間h6)。このときはコンパレータ回路24の出力がLからHに変化し立ち上がりエッジ検出回路28より正のパルスがRSフリップフロップ30のリセット入力(R)に出力されるがRSフリップフロップ30は既にLレベル(ローレベル)にリセットされているので領域判定信号ASはLレベルのままで変化しない(時刻t3)。
【0017】
次に対物レンズ6が再び合焦点のポイントP3を超えるとフォーカスエラー信号FSはゼロから正方向に変化した後再びゼロ方向に戻り図3の時刻t4に+TH1を超える(期間h7)。このときはコンパレータ回路22の出力がLからHに変化し立ち上がりエッジ検出回路26より正のパルスがRSフリップフロップ30のセット入力(S)に出力され、領域判定信号ASはHとなり対物レンズ6が合焦点より遠い領域にあると判定される。以後同様な工程を繰り返して行くことになる。
【0018】
さて、上述のような領域判定回路14の基本動作を理解した上で、次に図1及び図4を参照してフォーカスサーチ動作について説明する。図4はレンズ位置と、領域判定信号と遅延回路出力とアクチュエータドライブ信号との関係を示すタイミングチャートである。
まず、光ディスクDからの反射光は対物レンズ6を介して光ピックアップ2内の光センサ8により電気信号に変換されてフォーカスエラー検出回路10に出力される。このフォーカスエラー検出回路10は光センサ8により変換された電気信号に基づいてレーザ光の光スポットの合焦点位置に対応したフォーカスエラー信号FSをフォーカス制御装置12の一部を構成する領域判定回路14に出力する。
【0019】
この領域判定回路14はフォーカスエラー信号FSのレベル変化順序に基づいて対物レンズ6が合焦点の位置よりディスク面に近い位置にあるか、離れた位置にあるかを前述したように判明し、領域判定信号ASを出力する。
この領域判定回路14の出力である領域判定信号ASは遅延回路18により予め定められた時間Tdだけ遅れてアクチュエータ制御回路19に出力される。
このアクチュエータ制御回路19は領域判定回路14の判定結果に基づいて、対物レンズ6が合焦点よりディスク表面に近い位置にある場合はディスクと対物レンズ6を離し、合焦点より遠い位置にある場合はディスクに近づけるようにアクチュエータ4を動かす。
【0020】
まず、フォーカスサーチ動作のスタート時には領域判定回路14の状態はHレベル(合焦点より離れた状態)にセットされる。そして、領域判定回路14の出力(領域判定信号)は遅延回路18により所定の時間Td(図4参照)だけ遅れてアクチュエータ制御回路19に出力される。またアクチュエータ制御回路19は対物レンズ6の移動速度が一定になる様にアクチュエータ4に加わる電圧(アクチュエータドライブ信号)をランプ状(傾斜状)に変化させる。この動作は遅延された領域判定回路14の出力ASに遅延回路18にて積分処理を行うことで実現できる。
最初に合焦点に達するまでは領域判定回路14の出力である領域判定信号ASはHレベルの状態なので、アクチュエータ4に加えられる電圧は時間経過に比例して正方向にランプ状に変化し、対物レンズ6は一定の速度で合焦点に近づいて行く。
【0021】
ここで対物レンズ6が合焦点を通り過ぎると領域判定回路14の出力である領域判定信号ASはLレベル(合焦点よりディスク面に近づいた状態)に変化し、アクチュエータ制御回路19の入力も所定の時間Tdだけ遅れてLレベルに変化する。従ってアクチュエータ4に加えられる電圧は対物レンズ6が合焦点を通過した時間からTdだけ遅れて時間経過に比例して負方向にランプ状に変化し、対物レンズ6は一定の速度で一度通過した合焦点に再び近づいて行く。
以降、対物レンズ6が合焦点を通過する毎に領域判定回路14の出力である領域判定信号ASは対物レンズ6を合焦点に近づける方向に変化するので、アクチュエータ4は対物レンズ6を合焦点を中心にフォーカス方向に移動させフォーカスサーチ動作を繰り返す。
【0022】
また合焦点を中心としたフォーカスサーチの幅はアクチュエータ4に加わる電圧の時間的な変化率(積分器の定数)と遅延時間Tdで制御することができる。図5は本願発明のフォーカスサーチ時と従来装置のフォーカスサーチ時の対物レンズの軌跡を比較するための図である。この図から明らかなように、従来の装置のフォーカスサーチ動作では対物レンズが高密度光ディスクに衝突する恐れがあったが、本発明装置によれば合焦点を中心とする対物レンズの移動振幅が格段に小さくなり、対物レンズが高密度光ディスクに衝突することを防止することができる。
【0023】
次に光ディスクの面ぶれの周期とフォーカスサーチに用いるランプ状信号の周期が合致したときの不都合やフォーカスエラー信号に突発的なノイズの混入などがある場合の処理を行う振幅測定制御回路21について説明する。
前述のごとく、本発明装置のフォーカスサーチ動作では合焦点を中心とする対物レンズの移動振幅が格段に小さくできるが、これにより対物レンズの移動振幅と光ディスクの面ぶれの振幅が同程度になる。このとき両者の周期が合致すると対物レンズが合焦点を通過しない状態が発生し、S字カーブ期間が正しく検出されずフォーカスサーチ動作に不都合が生ずるようになる。まずこの状態について図6を用いて説明する。
【0024】
図6において、(A)は面ぶれを有する合焦点位置(実線)とフォーカスサーチ動作での対物レンズの軌跡(破線)を重ねて表示したもので、(B)はこのときのフォーカスエラーFSを示したものである。
(A)の左端を例にとると、対物レンズは下方から次第に合焦点に近づいて行くが、合焦点が面ぶれのために上方に移動し対物レンズは合焦点を横切ることができない様子を示している。このときのフォーカスエラーFSは、(B)の左端に示すように合焦点の前後のエラー値が点対称でなくなるので正常なS字カーブ特性が得られなくなる。
このように、ディスクの面ぶれの周期とフォーカスサーチに用いるランプ状信号の周期が合致すると、対物レンズが合焦点を通過しきれずに戻ってしまう逆行という現象が発生することがあり、そのときには、フォーカスエラーFSは正しいS字カーブの最大エラー出力が得られていないことになる。
【0025】
同図(C)は、フォーカスエラーFSの検出状態を表現したものであるが、ディスクに面ぶれがない場合には存在しない上記逆行の期間がディスク1周に2度含まれている。この(C)に示すフォーカスエラーFSが前記図1の領域判定回路14に入力されると(D)に示す領域判定信号ASが得られ、逆行の期間では幅の狭いパルスが発生するようになる。
本来、ディスクの面ぶれがない場合には、この領域判定信号ASは図2で説明したように、Hレベル期間とLレベル期間の両方ともにS字カーブの期間が1個存在するものである。従って、Hレベル期間とLレベル期間の両方ともフォーカスエラーFSの最大値と最小値を検出しその差分をとればS字カーブの最大振幅値が毎回得られるものである。
このように、本来はHレベル期間とLレベル期間で得られた最大振幅値を前出の図1フォーカスエラー検出回路10への利得制御信号として用いることが可能であるが、図6(D)に示す逆行の期間が発生するときには、Hレベル期間やLレベル期間に必ずしもS字カーブ期間が存在するとは限らなくなる。従って、領域判定信号ASをそのまま用いてHレベル期間やLレベル期間で得た最大振幅値を利得制御に使用することはできないのである。
【0026】
図7は振幅測定制御回路21の内部を示したブロック図である。この回路はディスクの面ぶれがあるときの前記領域判定信号ASの不都合を補正し、Hレベル期間やLレベル期間に必ずS字カーブ期間が存在する振幅測定区間信号を作成して最大振幅値を得る働きをするものであり、図1に示すように、フォーカスエラー検出回路10からのフォーカスエラー信号FSと領域判定回路14からの領域判定信号ASを入力信号として信号処理し利得制御信号を生成して前記フォーカスエラー検出回路10へ送り込む構成になっている。以下、図7及び信号のタイミングを示す図8を用いて動作を説明する。
【0027】
図7において、フォーカスエラー振幅測定回路32は、フォーカスサーチを開始したときに最初にS字カーブ期間を通過したフォーカスエラーFSの最大最小値を測定して最大振幅値を得、次のバンド幅設定回路34でこの最大振幅値に対して所定比率であるT%の振幅値を得て、これをバンド幅情報として次のフォーカスエラーバンド幅範囲内検出回路40へ供給する。
フォーカスエラーバンド幅範囲内検出回路40は、入力のフォーカスエラー信号FSの振幅が前記バンド幅の範囲内か範囲外かを識別し、後述の第1カウンタ42、第2カウンタ44に夫々イネーブル(カウント可)信号を供給する。
【0028】
図8において、(A)はフォーカスエラー信号FSと設定したバンド幅の範囲を示したものである。次の(B)はフォーカスエラーバンド幅範囲内検出回路40の内部でフォーカスエラー信号FSがバンド幅範囲を越えた部分をパルス化したバンド外れ信号である。
また(C)は入力の領域判定信号ASであり、(D)はこの領域判定信号ASのエッジ部分のタイミングパルスを示したものである。
次の(E)は第1カウンタ42がカウントしている期間を示し、(F)は第2カウンタ44がカウントしている期間を示している。
【0029】
さて、第1カウンタ42の動作目的は、領域判定信号ASが反転してから後にフォーカスエラー信号FSがバンド幅の範囲に入ったときからの時間を計測し、そこに所定時間とどまって居たときにラッチ信号を出力するものである。このフォーカスエラーがバンド幅内に所定時間居るということは、S字カーブ期間が検出されていないということであり、これは対物レンズが合焦点から十分外れた位置にあることを示すものであるから、この位置で領域判定信号ASの電位をラッチすれば、領域判定信号ASから逆行によるパルスが除かれた形態の信号を得ることができる。
第2カウンタ44の動作目的はフォーカスエラー信号FSに重畳されるノイズのような幅の狭いパルスによって第1カウンタ42が誤動作するのを防止することである。
【0030】
次に、第1、第2カウンタの動作を中心に説明する。
エッジ検出回路36で作成された図8(D)に示すエッジ信号の立下りを起点に、バンド幅測定区間信号回路38で(G)に示すバンド幅測定区間信号が立ち上がる。この立ち上がりから以降に来るバンド幅外れ信号(B)の立下りで(E)に示す第1カウンタ42のイネーブルを立ち上げ、また、バンド幅外れ信号(B)の立上がりで(F)に示す第2カウンタ44のイネーブルを立ち上げる。両カウンタは各イネーブル信号が立ち上がると時間計測を開始する。
第1カウンタ42はイネーブル信号(E)が立ち上がると時間計測を開始し、所定時間Nまでカウントすると計測を停止しそのタイミングでラッチ信号を生成してラッチ回路42へ出力し、バンド幅測定区間信号(G)をカットする。しかし、所定時間Nになる前に第2カウンタ44から下記「第1カウンタのディスエーブル信号」が出力されるとイネーブル信号(E)がカットされ、計測の停止とリセットが行われる。上記の所定時間Nは対物レンズが合焦点から十分離れるのに必要な時間として設定される。
第2カウンタ44はイネーブル信号(F)が立ち上がると時間計測を開始し、所定時間Pまでカウントすると計測を停止し、そのタイミングで「第1カウンタのディスエーブル信号」を出力し、上記したように第1カウンタ42の計測を停止する。しかし、所定時間Pになる前にバンド幅外れ信号(B)に立下り部があるとイネーブル信号(F)はカットされ計測を停止しリセットされる。上記の所定時間Pは突発的に混入するノイズの最大幅時間より大に設定する。
【0031】
以上の構成及び作用により、第1カウンタ42は対物レンズが合焦点から十分離れた位置でラッチ信号を出力することになり、この結果、ラッチ回路46から出力される振幅測定区間信号(H)は、領域判定信号AS(C)に含まれている逆行によって生じたパルスが除去され、且つHレベル期間とLレベル期間に必ずS字カーブ期間を有する振幅測定区間信号が得られることになる。なお、この振幅測定区間信号(H)は、図6では(E)に示してある。
【0032】
図7に戻り、ラッチ回路46から出力された振幅測定区間信号は、次いで振幅測定回路48に供給され、ここで振幅測定区間信号のHレベル期間とLレベル期間の夫々についてフォーカスエラー信号FSの最大値と最小値を検出し、その差分値である最大振幅値を得る。この最大振幅値は次の利得制御信号生成回路50に入力され、ここで所定の係数演算され利得制御信号となって図1のフォーカスエラー検出回路10に供給される。
【0033】
以上の構成により、本発明によるフォーカス制御装置では、光ディスクの面ぶれの周期とランプ状信号の周期が合致したときの不都合やフォーカスエラー信号に突発的なノイズの混入などがあってもそれらの影響を除去した状態でフォーカスエラー検出回路10の検出回路の定数やレーザ光の強度、光ディスクの反射率等の各種バラツキによるフォーカスエラーの変動を防止でき、安定したフォーカス制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るフォーカス制御装置を含む光ピックアップの主要部を示すブロック構成図である。
【図2】フォーカス制御装置の領域判定回路を示すブロック構成図である。
【図3】レンズ位置とフォーカスエラー信号と領域判定信号とセット(リセットを含む)信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図4】レンズ位置と、領域判定信号と遅延回路出力とアクチュエータドライブ信号との関係を示すタイミングチャートである。
【図5】本願発明のフォーカスサーチ時と従来装置のフォーカスサーチ時の対物レンズ軌跡を比較するための図である。
【図6】面ぶれがある場合の領域判定信号生成を示す図である。
【図7】振幅測定制御回路のブロック図である。
【図8】振幅測定制御回路の各部の信号波形とタイミングを示す図である。
【図9】フォーカスサーチ動作時のディスク表面と対物レンズの先端との位置関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
2…光ピックアップ、4…アクチュエータ、6…対物レンズ、8…光センサ、10…フォーカスエラー検出回路、12…フォーカス制御装置、14…領域判定回路、16…レンズ制御回路、18…遅延回路、19…アクチュエータ制御回路、20…ドライバ、21…振幅測定制御回路、22,24…コンパレータ回路、26,28…立ち上がりエッジ検出回路、30…RSフリップフロップ、32…フォーカスエラー振幅測定回路、34…バンド幅設定回路、36…エッジ検出回路、38…バンド幅測定区間信号生成回路、40…フォーカスエラーバンド幅範囲内検出回路、42…第1カウンタ、44…第2カウンタ、46…ラッチ回路、48…振幅測定回路、50…利得制御信号生成回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光を対物レンズを介して光情報記録媒体の記録面に合焦させ、前記記録面からの戻り光により得られるフォーカスエラー信号に基づいて、前記対物レンズが前記光情報記録媒体に衝突することを防止するフォーカス制御装置において、
前記対物レンズが前記照射光を前記記録面に合焦させた合焦位置における前記フォーカスエラー信号値を基準値として、前記対物レンズが前記合焦位置を超えて前記記録面側に接近する方向にあって、前記対物レンズが前記光情報記録媒体に衝突しないように設定された前記フォーカスエラー信号値を第1閾値とし、前記対物レンズが前記合焦位置を超えて前記記録面から遠ざかる方向にあって、前記対物レンズが前記光情報記録媒体から離れ過ぎないように設定された前記フォーカスエラー信号値を第2閾値とする時、前記フォーカスエラー信号が前記第1閾値と前記第2閾値との間に入っていることを判定して出力する領域判定手段と、
前記領域判定手段から出力される領域判定信号に基づいて、前記フォーカスエラー信号が前記第1閾値を超えて前記記録面に近づいた場合に、或いは前記第2閾値を超えて前記記録面から遠ざかる場合に前記合焦位置に戻し、前記フォーカスエラー信号が前記第1閾値と前記第2閾値との間になるように制御して、前記対物レンズを前記光情報記録媒体に衝突させずにフォーカス制御するレンズ制御手段と、
前記対物レンズが前記合焦位置から所定距離だけ離れた複数位置における前記領域判定信号の振幅値から矩形状の複数の振幅測定区間信号を生成し、前記振幅測定区間信号のハイレベル期間とローレベル期間毎に前記フォーカスエラー信号の最大値と最小値を検出して、その差分となる最大振幅値を得て、前記最大振幅値に基づいて前記フォーカスエラー信号の利得を制御する振幅測定制御手段と、
を有することを特徴とするフォーカス制御装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate