説明

フォーカス調整装置及び方法

【課題】高速なフォーカス調整が求められる場合においても対応可能なフォーカス調整装置を提供する。
【解決手段】レーザ光を出射するレーザ光源11と、レーザ光源11から出射されたレーザ光をその光軸を中心とする円環状のビームに成形する成形光学系16と、成形光学系16からの円環状ビームを被検体2へ照射する対物レンズ19と、被検体2からの戻り光を受光する受光素子21と、受光素子21により受光された戻り光のビーム形状に基づいて被検体との間でフォーカス調整を行うフォーカス調整部23、24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に光を照射し、その戻り光を受光してフォーカス調整を行うフォーカス調整装置及び方法に関し、特に通常のコントラスト法と比較してより高速にフォーカス調整を行う際に好適なフォーカス調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コントラスト法に基づいてAF(オートフォーカス)制御を行うフォーカス調整装置、またこれを適用したカメラが知られている。コントラスト法では、被写体をCCD等の撮像素子で撮像して画像信号を生成し、この生成した画像信号から所定エリア内の空間周波数帯域の成分を抽出し、その絶対値を積分することで焦点評価値を算出する。この算出した焦点評価値は、焦点検出エリアのコントラストに対応しているため、焦点評価値が高くなるにつれてコントラストそのものが高くなる。像のコントラストは、合焦レンズが合焦位置に近いほど高くなるため、焦点評価値がピークとなるレンズ位置を合焦位置と判断することが可能となる。このため、かかる焦点評価値のピーク位置を見つけて合焦レンズをフォーカスすることで、被写体に精度よく合焦させることができる。
【0003】
このようなコントラスト法を利用した技術としては、例えば特許文献1に示すようなレンズ制御システムが提案されている。一般的に被写体を撮像するカメラに対してフォーカス調整機能を持たせる場合には、上述コントラスト法により、合焦時間が500ミリ秒程度であっても、ユーザに対してそれほど違和感を感じさせることはない。
【0004】
これに対して、このようなカメラとしての使用ではなく、例えばベルトコンベア上で搬送される多数の被検体の個々につき画像処理を通じて検査する検査装置としての使用の場合、瞬時のフォーカス調整を実現する必要があり、一般的には50ミリ秒程度の合焦時間で行う必要がある。しかしながら、上述したコントラスト法では、かかる50ミリ秒程度の高速なフォーカス調整が困難であるため、ベルトコンベア上で搬送される個々の被検体に対して合焦させることができず、高速な被検体検査を行うことができないという問題点があった。
【0005】
また、被検体表面に段差が形成されていたり、或いは斜めに傾いた状態で載置されていた場合においても、これらの各状態を高速に検出した上でフォーカス調整に反映させる必要もあった。
【0006】
また、特にレンズ等を始めとした光学部品からなる被検体を検査する場合に、係る被検体上に形成された微細な疵も合焦時に様々な影響を及ぼすものとなる。このため、高速なフォーカス調整を行う上で、かかる微細な疵も高精度に検出した上で、これに応じた合焦を実現する必要もあった。
【0007】
なお、従来技術としては、例えば特許文献2のレーザ加工方法の発明において実際に自動焦点合わせを行う技術も開示されているが、上述した問題点を解決しえるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−280048号公報
【特許文献2】特開2008−87053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、例えばベルトコンベア上で搬送される多数の被検体の個々につき画像処理を通じて検査する場合等のように、50ミリ秒程度の高速なフォーカス調整が求められる場合においても対応可能なフォーカス調整装置及び方法を提供することにある。
【0010】
また本発明では、かかる高速なフォーカス調整を行う際に、被検体表面に段差が形成されていたり、或いは斜めに傾いた状態で載置されていた場合においても、これらの各状態を高速に検出した上でフォーカス調整に反映させることが可能なフォーカス調整装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係るフォーカス調整装置は、レーザ光を出射する光源と、上記光源から出射されたレーザ光をその光軸を中心とする円環状のビームに成形する成形光学系と、上記成形光学系からの円環状ビームを被検体へ照射する照射光学系と、上記被検体からの戻り光を受光する受光手段と、上記受光手段により受光された戻り光のビーム形状に基づいて上記被検体との間でフォーカス調整を行うフォーカス調整手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係るフォーカス調整装置は、請求項1記載の発明において、上記成形光学系は、上記光源から出射されたレーザ光の光軸上において円錐部同士が対向するように並設された一対のアキシコンレンズからなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係るフォーカス調整装置は、請求項1又は2記載の発明において、上記フォーカス調整手段は、合焦時における戻り光の円環状のビーム形状を基準としたときに、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の相対的な大小関係を識別し、当該識別結果に基づいてフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係るフォーカス調整装置は、請求項1又は2記載の発明において、上記フォーカス調整手段は、合焦時における戻り光の円環状のビーム形状を基準としたときに、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の相対的な歪曲度合を識別し、当該識別結果に基づいてフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係るフォーカス調整装置は、請求項1又は2記載の発明において、上記フォーカス調整手段は、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の非連続点を識別し、その識別した非連続点に基づいて上記被検体表面に形成された段差部の位置及び/又は形状を判別し、当該判別結果に基づいてフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係るフォーカス調整装置は、請求項1又は2記載の発明において、上記フォーカス調整手段は、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の屈曲点を識別し、その識別した屈曲点に基づいて上記被検体表面に形成された欠陥の位置及び/又は形状を判別し、当該判別結果に基づいてフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項7に係るフォーカス調整方法は、光源からレーザ光を出射し、上記出射したレーザ光をその光軸を中心とする円環状のビームに成形し、上記円環状ビームを被検体へ照射し、上記被検体からの戻り光を受光し、上記受光した戻り光のビーム形状に基づいて上記被検体との間でフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述の如き構成からなる本発明によれば、被検体に対するフォーカス調整をコントラスト法と比較してより高速に行うことが可能となり、50ミリ秒程度の高速なフォーカス調整を行うことが可能となる。また、本発明では、かかる高速なフォーカス調整を行う際に、被検体表面に段差が形成されていたり、或いは斜めに傾いた状態で載置されていた場合においても、これらの各状態を高速に検出した上でフォーカス調整に反映させることができる。また、本発明では、かかる高速なフォーカス調整を行う上で、微細な疵も高精度に検出した上で、これに応じた合焦を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用したフォーカス調整装置のブロック構成図である。
【図2】本発明を適用したフォーカス調整装置の他のブロック構成図である。
【図3】実際の戻り光の円環形状の相対的な大小関係を、合焦時ビーム形状を基準として識別する場合について説明するための図である。
【図4】実際の戻り光の円環形状の相対的な歪曲度合を識別する場合について説明するための図である。
【図5】円環ビーム形状の輪郭の非連続点に基づいて段差を識別する例について説明するための図である。
【図6】円環形状に形成された屈曲点の位置に基づいて被検体表面に形成された欠陥の位置及び/又は形状を判別する例を示す図である。
【図7】本発明を適用したフォーカス調整装置の更なる他のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用したフォーカス調整装置1のブロック構成を示している。このフォーカス調整装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源11と、このレーザ光源11から出射されたレーザ光のビーム径を拡径する凹レンズ12と、凹レンズ12により拡径されたレーザ光を平行光とする凸レンズ13と、この凸レンズ13を通過するレーザ光の光路中に配設された第1のアキシコンレンズ14、第2のアキシコンレンズ15とから構成され、レーザ光を円環状のビームに成形する成形光学系16と、成形光学系により成形された円環状ビームの光路中に配設されたビームスプリッタ18と、このビームスプリッタ18からの円環状ビームを被検体2上に集光させる対物レンズ19と、被検体2を反射してビームスプリッタ18を透過した戻り光の光路中に配設されたチューブレンズ20と、チューブレンズ20により集光された戻り光を受光する受光素子21とを備えている。
【0022】
また、この受光素子21は、制御部22に電気的に接続され、更にこの制御部22は、チューブレンズ20を介してフォーカス調整を実現するための第1のフォーカス調整部23と、対物レンズ19を介してフォーカス調整を実現するための第2のフォーカス調整部24とに接続されている。
【0023】
ちなみに、このフォーカス調整装置1は、被検体2を画像処理を介して検査するための検査装置等に対して実装される場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではなく、被写体を撮像するカメラ等、フォーカス調整が必要となるいかなる機器に対して適用されるものであってもよい。
【0024】
被検体2は、本発明を適用したフォーカス調整装置1によるフォーカス調整の対象となるものであって、仮にフォーカス調整装置1が検査装置に実装される場合には、その検査装置による検査対象になる。かかる場合において、被検体2は、例えばベルトコンベア等を介して搬送されてくるものであってもよく、フォーカス制御装置1は、そのベルトコンベア上の個々の被検体2に対してフォーカス調整を行っていくことになる。
【0025】
光源11は、図示しないホルダに取り付けられ、例えば重水素ランプ(D2ランプ)やタングステンランプ等を用いるようにしてもよいし、半導体レーザを使用するようにしてもよい。光源11から出射されるレーザ光の波長は、いかなるものであってもよいが、赤外帯域や紫外帯域といった可視帯域以外の波長のみを含むレーザ光を使用するようにしてもよい。なお、本発明では、光源11としてレーザ光を発光するものに限定されるものではなく、通常の光を発光するものであってもよいが、以下の説明においてはレーザ光が発光された場合を例にとり説明をする。
【0026】
凹レンズ12は、光源11から出射されたレーザ光が最初に入射する光学部品であり、当該レーザ光が拡散光線として伝播するように光を屈折させるものである。この凹レンズ12を通過したレーザ光は、ビーム径がより拡大された状態で凸レンズ13へと入射する。
【0027】
凸レンズ13は、拡散光線として伝播されてきたレーザ光の光路上に配設され、当該レーザ光を屈折させることによりこれを平行光線に変換する。凸レンズ13を通過したレーザ光は、成形光学系16へと導かれる。
【0028】
成形光学系16を構成する第1のアキシコンレンズ14、第2のアキシコンレンズ15は、それぞれ円錐面を有する円錐部14a、15aと、円筒部14b、15bとから構成される。第1のアキシコンレンズ14、第2のアキシコンレンズ15は、光源11からの光を光軸上の直線像に変換する軸対称面を備えた光学素子である。これら一対の第1のアキシコンレンズ14並びに第2のアキシコンレンズ15は、光源11から出射されたレーザ光の光軸上において円錐部14a、15aの先端同士が対向するように並設される。これにより、凸レンズ13からの平行光を第1のアキシコンレンズ14の円筒部14b側から入射させると、入射した光が円錐部14aの斜面及び頂点から射出される際にリング状に集光されて、リング状のビームが形成される。リング状のビームは、第2のアキシコンレンズ15の円錐部15aから入射して、円環状ビームとされ、第2のアキシコンレンズ15の円筒部15b側から射出される。
【0029】
なお、成形光学系16は、上述した一対のアキシコンレンズ14、15を介して平行光を円環状ビームに変換できるものであればいかなる部品、系で構成されていてもよい。
【0030】
ちなみに、この成形光学系16の例としては、このような一対のアキシコンレンズ14、15を用いる場合に限定されるものではなく、例えば円環状のビームが透過可能なようにマスクパターンが施されたマスクを用いてもよいし、所定のビームモードに変換可能な偏光子を用いるようにしてもよい。この偏光子としては、アジマス偏光に変換可能な偏光子、或いはラディアル偏光に変換可能な位相素子を用いるようにしてもよい。また,成形光学系を使わず,TEM01モードを発信するレーザ光源を使用してもよい。
【0031】
凹レンズ17は、この成形光学系16を通過した円環状ビームの径を若干調整するものであれば足り、その曲面は緩やかなものであってもよい。この凹レンズ17は、あくまで成形光学系16を構成する第1のアキシコンレンズ14、第2のアキシコンレンズ15と相俟って、被検体2に対して照射する円環状ビームが当該被検体2上で、或いは被検体2に到達する前にフォーカスしないようにするために設けられたものである。このため、成形光学系16における第2のアキシコンレンズ15の光軸方向の位置を調整するのみで円環状ビームが被検体2上で又はその到達前にフォーカスするのを防止できるのであれば、この凹レンズ17の構成を省略するようにしてもよい。
【0032】
ビームスプリッタ18は、凹レンズ17から入射されてくる円環状ビームをそのまま直線状に透過させ、また被検体2の方向に屈折させる。またこのビームスプリッタ18は、被検体2からの戻り光をそのまま直線状に透過させ、またその戻り光を折り曲げる。このとき、ビームスプリッタ18に入射する光のうち、1/2が直線状に透過し、1/2が折り曲げられるものとしたとき、円環状ビームが被検体2を反射し、その戻り光が受光素子21側へと出射する割合は、当初の1/4の割合となる。
【0033】
対物レンズ19は、ビームスプリッタ18からの円環状ビームを被検体2上に集光させる。このとき対物レンズ19は、被検体2に対して照射される円環状ビームが被検体2上で、またこれに到達する前に合焦することなく、あくまで円環状のままのビーム形状で照射されるように、予め被検体2との距離が調整されている。
【0034】
また、この対物レンズ19は、フォーカス調整部24による制御の下で、被検体2に対する距離が自在に調整可能とされている。また、この対物レンズ19は、フォーカス調整部24による制御の下、被検体2に対する傾斜角度等も調整可能とされていてもよい。
【0035】
チューブレンズ20は、ビームスプリッタ18を直線状に通過した戻り光が入射される。このチューブレンズ20は、入射されてくる戻り光を集光し、これを受光素子21へ結像させる。この受光素子21上に結像させる際には、受光素子21に到達する前に合焦してしまうのを防止できるような位置にチューブレンズ20が設けられていることが望ましい。
【0036】
受光素子21は、チューブレンズ20によって結像された戻り光を受光して光電変換する。この光電変換された信号は、制御部22に送られる。ちなみに、この受光素子21は、円環状ビームからなる戻り光の平面的な形状をも識別することができるように、2次元的に規則的に配列されていることが望ましい。
【0037】
制御部22は、少なくともCPU(Central Processing Unit)を有する制御ユニットとして構成されていればよいが、外付けのPC(パーソナルコンピュータ)等で具体化されるものであってもよい。この制御部22は、受光素子21から送信されてくる電気信号に含まれる、戻り光のビーム形状を識別する。この制御部22は、識別した戻り光のビーム形状に基づいて、第1のフォーカス調整部23及び/又は第2のフォーカス調整部24に対して、実際にフォーカス調整を行うための制御信号を送信する。このとき、制御部22は、得られた戻り光のビーム形状を図示しない画像表示装置を介して表示させるようにしてもよい。
【0038】
第1のフォーカス調整部23は、制御部22から送信されてきた制御信号に基づいて、チューブレンズ20を光軸方向へ移動させることによりフォーカス調整を行う。
【0039】
また、第2のフォーカス調整部24は、制御部22から送信されてきた制御信号に基づいて、対物レンズ19を光軸方向へ移動させることによりフォーカス調整を行う。このとき第2のフォーカス調整部24は、受信した制御信号に基づいて、対物レンズ19を被検体2に対して傾けるための制御を行うようにしてもよい。
【0040】
ちなみに、制御部22、第1のフォーカス調整部23、第2のフォーカス調整部24を独立した構成要素として捉えてもよいが、概念的にはこれらを一まとめにしてフォーカス調整手段として捉えるようにしてもよい。
【0041】
なお本発明を適用したフォーカス調整装置1は、例えば図2に示すような形態で具体化されるものであってもよい。この図2の構成では、先ず凹レンズ12と、凸レンズ13との間にポラライザ30を挿入する。成形光学系16と、凹レンズ17との間に1/2波長板31を設けている。また、図1でいうビームスプリッタ18の代替として、偏光ビームスプリッタ33で構成し、かかる偏光ビームスプリッタ33と、対物レンズ19との間に、1/4波長板32を配設している。
【0042】
ポラライザ30は、光源11から出射された、各種偏光成分が混合した状態にあるレーザ光のうち、直線偏光成分のみを通過させる。また1/2波長板31は、直線偏光成分の方向を所定の方向(例えばP波)に回転させる。
【0043】
1/4波長板32は、通過する光ビームに1/4波長の位相差を与える。すなわち、この1/4波長板32は、入射した往路の光ビームを直線偏光(P波)から円偏光に変換し、被検体2で反射された復路の光ビームを円偏光から直線偏光(S波)に変換する。
【0044】
また偏光ビームスプリッタ33は、P波とされて入射した光ビームを被検体2側へ導くとともに、被検体2側からS波として入射されてくる戻り光をそのまま透過させる。
【0045】
このような図2の構成からなるフォーカス調整装置1によれば、光源11から出射されるレーザ光の偏光成分が各種混合したものであっても、より高い光効率を以って受光素子21により電気信号に変換することが可能となる。
【0046】
次に、本発明を適用したフォーカス調整装置1の動作について説明をする。
【0047】
フォーカス調整装置1として図1の構成を例にとると、先ず光源11から出射されたレーザ光は、凹レンズ12によって拡径され、凸レンズ13によって平行光とされた上で成形光学系16により円環状ビームとされる。この円環状ビームは、凹レンズ17によりビーム径が若干調整された上でビームスプリッタ18を介して光路が折り曲げられ、対物レンズ19により集光されて被検体2上に照射される。この被検体2上に照射された円環状ビームは、被検体2上を反射し、対物レンズ19を介してビームスプリッタ18へと導かれる。
【0048】
このとき、戻り光の一部は、ビームスプリッタ18を通過し、チューブレンズ20を介して受光素子21上に結像され、光電変換される。光電変換によって得られた電気信号は、制御部22へと送られることになる。このとき、制御部22は、得られた電気信号を介して実際に受光素子21上に結像された戻り光のビーム形状を取得することが可能となる。
【0049】
ちなみに制御部22は、予め合焦時において受光素子21において結像されるであろう円環状ビームのパターンを取得しているものとする。この合焦時における円環状ビームの形状を図3(a)に示すように、合焦時ビーム形状という。そして、この制御部22は、新たに取得した戻り光のビーム形状を、合焦時ビーム形状を基準として比較を行う。具体的には、制御部22は、実際の戻り光の円環形状の相対的な大小関係を、合焦時ビーム形状を基準として識別する。そして制御部22は、その識別結果に基づいてフォーカス調整を行うべく、第1のフォーカス調整部23、第2のフォーカス調整部24に対して制御信号を送信する。
【0050】
実際に図3(b)に示すように新たに取得した戻り光の円環形状が、合焦時ビーム形状を基準とした場合に、より小径だった場合には、対物レンズ19と被検体2との間の距離が長いために合焦できない場合を示している。このため、かかる場合には、合焦時ビームパターンと同径となるまで、対物レンズ19を被検体2に対して近づける動作を行う。
【0051】
また図3(c)に示すように新たに取得した戻り光の円環形状が、合焦時ビーム形状を基準とした場合に、より大径だった場合には、対物レンズ19と被検体2との間の距離が短いために合焦できない場合を示している。このため、かかる場合には、合焦時ビームパターンと同径となるまで、対物レンズ19を被検体2に対して遠ざける動作を行う。
【0052】
また本発明によれば、図4に示すように、合焦時ビーム形状と比較して、被検体からの実際の戻り光の円環形状の相対的な歪曲度合を識別し、当該識別結果に基づいてフォーカス調整を行うようにしてもよい。仮に被検体2が対物レンズ19に対して傾いている場合には、円環形状からなるビーム形状は、楕円形状に歪曲してしまい、また、その円環の幅x、yも偏りが生じてしまう。ちなみに、この円環の歪曲方向や、その幅の偏りが生じる方向は、被検体2の対物レンズ19に対する傾きに対応したものである。また、実際に被検体2が対物レンズ19に対してどの程度傾いているかは、円環の歪曲度合や、円環の幅x、yの大きさ、比率等から識別することができる。特にこの円環の幅x、yの比率から、その被検体2の傾きをより定量的に求めることが可能となる。
【0053】
そして、この戻り光の円環形状の歪曲方向や歪曲度合を識別することで、実際に対物レンズ19が被検体2にどの方向でどの程度傾いているかを識別し、その識別結果に基づいて対物レンズ19を被検体2に対して傾ける動作を行う。このとき、被検体2から戻り光の円環形状を随時識別することにより、合焦時ビーム形状との間でどの程度の形状上の差異があるかを判別し、その判別結果に応じて対物レンズ19への動作を修正するようにしてもよい。
【0054】
また、図5(a)に示すように表面がフラットな被検体2の場合には、得られる円環形状は何れも連続した輪郭を持つものとして現れる。合焦時ビーム形状は、この図5(a)に示すように、z軸方向がフラットな被検体2をターゲットにし、予め取得したものとしている。
【0055】
これに対して、図5(b)に示すように、被検体2がz軸方向において段差が存在する場合には、得られる円環ビーム形状の輪郭が非連続なものとして形成される。このため制御部22は、被検体2からの実際の戻り光の円環形状の非連続点を識別し、その識別した非連続点に基づいて被検体表面に形成された段差部の位置及び/又は形状を判別するようにしてもよい。そして、この判別結果に基づいてフォーカス調整を行うようにしてもよい。
【0056】
ちなみに、この非連続点におけるズレ量yを定量的に判別することにより、かかる段差部における具体的な段差も識別することができ、これに基づいてフォーカス調整を行うようにしてもよい。
【0057】
更に本発明によれば、例えば図6に示すように、被検体2の表面において欠陥が形成されている場合には、当該欠陥の形成されている位置において戻り光の円環形状に屈曲点が形成される。この屈曲点の位置を識別し、その識別した結果に基づいて被検体2表面に形成された欠陥の位置及び/又は形状を判別し、当該判別結果に基づいてフォーカス調整を行うようにしてもよい。
【0058】
上述の如き構成からなる本発明によれば、被検体2に対するフォーカス調整をコントラスト法と比較してより高速に行うことが可能となり、50ミリ秒程度の高速なフォーカス調整を行うことが可能となる。また、本発明では、かかる高速なフォーカス調整を行う際に、被検体表面に段差が形成されていたり、或いは斜めに傾いた状態で載置されていた場合においても、これらの各状態を高速に検出した上でフォーカス調整に反映させることができる。また、本発明では、かかる高速なフォーカス調整を行う上で、微細な疵も高精度に検出した上で、これに応じた合焦を実現することが可能となる。
【0059】
なお本発明は、例えば赤外光を用いてフォーカス調整を行うようにしてもよく、観察像に影響を及ぼすことなく高速に焦点位置を制御することが可能となる。
【0060】
また、本発明は、上述したフォーカス調整装置に限定されるものではなく、被検体の形状測定装置として具体化されるものであってもよい。この形状測定装置への応用を考える場合には、第1のフォーカス調整部23、第2のフォーカス調整部24の構成を省略するようにしてもよい。
【0061】
かかる場合において、制御部22は、受光素子21において受光された戻り光のビーム形状の各部の寸法に応じた数値を計算し、これをディスプレイ等を初めとした図示しない表示装置へ出力する。戻り光のビーム形状の各部の寸法に応じた数値とは、例えば、図4でいうところのxとyの比率等いかなるものであってもよい。
【0062】
また図7は、他の実施の形態を示している。この形態では、成形光学系16を構成する第1のアキシコンレンズ14、第2のアキシコンレンズ15の代替として、マスク43が描かれたガラス板45を配設するようにしてもよい。このガラス板45に描かれたマスク43のパターンは、図7に示すように中心に円が塗りつぶされてなるとともに、その円を中心とした輪状の太線が描かれている。このような形のマスク43を通過した光は、上述したアキシコンレンズ14、15を通過したときと同様の円環形状のビームとすることが可能となる。
【0063】
また本発明は、第3のフォーカス調整装置25が設けられていてもよい。この第3のフォーカス調整装置25は、被検体2を移動させることにより対物レンズ19との距離を調整するものである。この第3のフォーカス調整装置25を、第1のフォーカス調整装置23、第2のフォーカス調整装置24との関係において自在に調整するようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1 フォーカス調整装置
2 被検体
11 レーザ光源
12、17 凹レンズ
13 凸レンズ
14 第1のアキシコンレンズ
15 第2のアキシコンレンズ
16 成形光学系
18 ビームスプリッタ
19 対物レンズ
20 チューブレンズ
21 受光素子
22 制御部
23 第1のフォーカス調整部
24 第2のフォーカス調整部
30 ポラライザ
31 1/2波長板
32 1/4波長板
33 偏光ビームスプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
上記光源から出射されたレーザ光をその光軸を中心とする円環状のビームに成形する成形光学系と、
上記成形光学系からの円環状ビームを被検体へ照射する照射光学系と、
上記被検体からの戻り光を受光する受光手段と、
上記受光手段により受光された戻り光のビーム形状に基づいて上記被検体との間でフォーカス調整を行うフォーカス調整手段とを備えること
を特徴とするフォーカス調整装置。
【請求項2】
上記成形光学系は、上記光源から出射されたレーザ光の光軸上において円錐部同士が対向するように並設された一対のアキシコンレンズからなること
を特徴とする請求項1記載のフォーカス調整装置。
【請求項3】
上記フォーカス調整手段は、合焦時における戻り光の円環状のビーム形状を基準としたときに、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の相対的な大小関係を識別し、当該識別結果に基づいてフォーカス調整を行うこと
を特徴とする請求項1又は2記載のフォーカス調整装置。
【請求項4】
上記フォーカス調整手段は、合焦時における戻り光の円環状のビーム形状を基準としたときに、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の相対的な歪曲度合を識別し、当該識別結果に基づいてフォーカス調整を行うこと
を特徴とする請求項1又は2記載のフォーカス調整装置。
【請求項5】
上記フォーカス調整手段は、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の非連続点を識別し、その識別した非連続点に基づいて上記被検体表面に形成された段差部の位置及び/又は形状を判別し、当該判別結果に基づいてフォーカス調整を行うこと
を特徴とする請求項1又は2記載のフォーカス調整装置。
【請求項6】
上記フォーカス調整手段は、上記被検体からの実際の戻り光の円環形状の屈曲点を識別し、その識別した屈曲点に基づいて上記被検体表面に形成された欠陥の位置及び/又は形状を判別し、当該判別結果に基づいてフォーカス調整を行うこと
を特徴とする請求項1又は2記載のフォーカス調整装置。
【請求項7】
レーザ光を出射する光源と、
上記光源から出射されたレーザ光をその光軸を中心とする円環状のビームに成形する成形光学系と、
上記成形光学系からの円環状ビームを被検体へ照射する照射光学系と、
上記被検体からの戻り光を受光する受光手段と、
上記受光手段により受光された戻り光のビーム形状の各部の寸法に応じた数値を出力する出力手段とを備えること
を特徴とする被検体の形状測定装置。
【請求項8】
光源からレーザ光を出射し、上記出射したレーザ光をその光軸を中心とする円環状のビームに成形し、上記円環状ビームを被検体へ照射し、上記被検体からの戻り光を受光し、上記受光した戻り光のビーム形状に基づいて上記被検体との間でフォーカス調整を行うこと
を特徴とするフォーカス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−113174(P2012−113174A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262980(P2010−262980)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】