説明

フォーム用紙

【課題】軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有するフォーム用紙を提供する。
【解決手段】原料パルプ及び填料を成分とする基紙の少なくとも一方の面に、水溶性樹脂塗工液が塗工されたフォーム用紙であって、JIS P 8124に準拠した坪量が70g/m2以下で、前記塗工液が紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷にも対応可能なフォーム用紙に関するものである。より詳しくは、オフセット印刷が施され、連続伝票用途に加工された後に、インクジェット印刷する場合に好適なフォーム用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フォーム用紙は、巻取り形状でオフセット輪転印刷機に供給され、このオフセット輪転印刷機にて単色又は多色印刷された後、ミシン目加工、パンチ穴加工、折り加工等のフォーム加工が施される。
【0003】
オフセット輪転印刷工程においては、インキタックや湿し水による表面強度の低下によって白抜けの問題が発生するため、多色印刷の場合は色間での見当ずれの問題が発生するため、表面強度が強く、寸法安定性に優れるフォーム用紙が求められる。特に、フォーム用紙は、通常、商業用途であるため、各種印刷画像の再現性や寸法安定性等において高い品質が求められる。
【0004】
従来、フォーム用紙は、オフセット輪転印刷機によって印刷されるのが通常であったが、近年のビジュアル化やIT化の進展により、オフセット輪転印刷とインジェット印刷とが一連の印刷として行われる傾向にある。例えば、定型的な印刷柄等の固定情報はオフセットフルカラー印刷され、顧客情報等の可変情報は後工程でインクジェットフルカラー印刷される。
【0005】
このインクジェット印刷は、インクの滲みが生じないことや印字部が鮮明であることが求められ、また、印字部が印刷機のロール等と擦れることにより、印字部が汚れたり、印刷機のロールが汚れたりしないことが求められ、したがってインクの乾燥性(セット性)が求められる。加えて、インクジェット印刷機で印字された印字部が水に濡れても滲まない特性(耐水性)も求められる。つまり、現在のフォーム用紙は、オフセット印刷適性と、インクジェット印刷適性との両方を有することが望まれる。
【0006】
この点、従来のフォーム用紙としては、例えば、叩解したLBKPを主体とするパルプを用いて抄紙した原紙に、澱粉及びポリアクリルアミドを配合した紙力増強剤を含有するサイズプレス液を付着させたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このフォーム用紙は、多色印刷での剥けやベッセルピック、白抜けの発生を防止することができるとして提案されたものである。しかしながら、このフォーム用紙には、インクジェット印刷適性がなく、インクの滲みを防止することができない。
【0007】
また、従来のフォーム用紙としては、ステキヒトサイズ度が特定された原紙に、カチオン性樹脂のインク定着剤、サイズ剤等を含有する塗料を塗布し、ステキヒトサイズ度を特定の範囲に調整したものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このフォーム用紙は、ドットの滲みが小さく、十分な耐水性を有し、インク吸収性に優れるとして提案されたものである。また、従来のフォーム用紙としては、表面及び裏面の繊維配向角、繊維配向比を特定したものも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。このフォーム用紙は、折加工時、折加工状態で使用された場合の斜形や印字時に生じるカールあるいはコックリングを防止することができるとして提案されたものである。しかしながら、これらのフォーム用紙は、表面強度が不足するため、オフセット印刷時に、インキタックや湿し水によって、剥けが発生し、白抜けの問題が発生する。
【0008】
さらに、以上の従来のフォーム用紙は、そもそも個々の印刷手段にのみ適応するように開発されているため、印刷手段が限られ、異なる印刷手段に供した場合は、その品質について、自ずとある程度の妥協をせざるを得ない。
【0009】
一方、インクジェット印刷時の裏抜けを防止するという観点からは、フォーム用紙の坪量を80g/m2以上とすることが好ましいが、近年では、地球環境保護の観点から、世界的に森林保護に取り組んでおり、我が国においても省資源化、軽量化、リサイクル化等の対策に積極的に取り組むようになっている。フォーム用紙についても、軽量化すれば、生産量は同じでも生産面積が増加するため、1m2当りの製造・輸送・使用後の焼却に伴う二酸化炭素の排出削減が可能となる。しかしながら、省資源ということで単純に坪量を80g/m2から70g/m2以下に下げただけでは、印刷情報の裏抜けや滲み、高速フォーム印刷における記録適性の低下につながる。上記従来のフォーム用紙では、この問題を解決したものがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005‐206992号公報
【特許文献2】特開平10‐166713号公報
【特許文献3】特開2005‐178015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする主たる課題は、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有するフォーム用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原料パルプ及び填料を成分とする基紙の少なくとも一方の面に、水溶性樹脂塗工液が塗工されたフォーム用紙であって、
JIS P 8124に準拠した坪量が70g/m2以下で、
前記塗工液は、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む、
ことを特徴とするフォーム用紙。
【0013】
〔請求項2記載の発明〕
前記オレフィン系サイズ剤の塗工量が片面当り0.001〜0.01g/m2、前記水溶性ポリアミン系樹脂の塗工量が片面当り0.1〜1.0g/m2とされている、
請求項1記載のフォーム用紙。
【0014】
〔請求項3記載の発明〕
前記填料の50%以上は炭酸カルシウムで、
この炭酸カルシウムを含む填料は、前記基紙中に3〜12%配合され、
JIS P 8149に準拠した不透明度が80〜90%とされている、
請求項1又は請求項2記載のフォーム用紙。
【0015】
〔請求項4記載の発明〕
前記紙力増強剤の塗工量が片面当り0.5〜4.0g/m2とされている、
請求項1〜3記載のいずれか1項に記載のフォーム用紙。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有するフォーム用紙となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本形態のフォーム用紙は、原料パルプ及び填料を成分とする基紙の一方又は両方の表面に、水溶性樹脂塗工液が塗工されたものであって、JIS P 8124に準拠した坪量が70g/m2以下で、前記塗工液は、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む。
【0018】
〔基紙〕
(原料パルプ)
本形態のフォーム用紙に好適に用いられる基紙は、古紙パルプを含有する中性抄紙にて得られるものであり、寸法安定性に優れ、引張強度が高く、低コストで得られて環境に優しいものである。
【0019】
基紙に含有される古紙パルプの種類には特に限定がなく、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、更紙古紙、石膏ボード古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される古紙パルプがあげられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。また、古紙パルプの原料としては、市中回収古紙や抄紙工程で発生する仕損品等を用いることもできる。
【0020】
基紙には以上の古紙パルプの他にも、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプや、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的に又は機械的に製造されたパルプ等の公知のパルプを、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0021】
ただし、一般的に針葉樹と比較して広葉樹は、繊維が短くて細いため、湿度による繊維の収縮が小さく、寸法安定性が良好であるので、LBKP、LUKP、LSBKP等を古紙パルプと併用することが好ましい。また、広葉樹からなるパルプは、従来から印刷筆記用紙に用いられるように、平坦性が生じやすく、滑らかで緻密な紙層を形成することができるという特性を有するので、原料パルプとして古紙パルプを使用する中性抄紙においては、広葉樹からなるパルプを併用すると、寸法安定性に優れ、引張り強度が高く、低コストで環境に優しいフォーム用基紙、あるいはこの基紙を用いたフォーム用紙となる。
【0022】
基紙中の古紙パルプの含有量は、原料パルプ全量の5〜30質量%である。古紙パルプの含有量が原料パルプ全量の5質量%未満では、紙面のpHを中性領域にすることが出来ないといった不都合が生じる。
【0023】
リサイクルが繰り返された古紙パルプは、バージンのパルプ繊維と比較して、本来繊維表面に生じていた毛羽立ちが、幾度となく繰り返された脱墨再生処理により脱落し、ひしゃげた平坦なパルプ繊維となり、紙層形成時に繊維同士の絡み合いが少なく、強度低下や劣化による紙紛発生の恐れ、フォーム印刷工程における作業性の面での品質低下を招く恐れがある。したがって、古紙パルプの配合量は、原料パルプ全量の30質量%以下とすることが好ましい。しかしながら、古紙パルプは、幾度となく繰り返された脱墨再生処理により、極めて寸法安定性に優れた性質を有するので、古紙パルプの配合量を、原料パルプ全量の5質量%以上とすることが好ましい。
【0024】
好適には、広葉樹クラフトパルプを主成分(好ましくは70質量%以上)とし、これに古紙パルプが組み合わされた原料パルプを使用するのが好ましい。特に、広葉樹クラフトパルプと古紙パルプとの配合割合が、70〜95:5〜30であるとより好ましくなり、70〜90:10〜30であると特に好ましくなる。広葉樹クラフトパルプの原料パルプ中の配合割合を70〜95質量%とすることで、紙力増強剤、オレフィン系のサイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂の組み合わせからなる水溶性樹脂塗工液を、基紙内部に過度に浸透させることなく塗工可能となる。また、バージンパルプよりも比較的扁平な古紙パルプを5〜30質量%含有させることで、基紙表面が平坦化して間隙が少なくなり、基紙表面に紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂の組み合わせからなる水溶性樹脂塗工液を均一に塗工して、基紙表面を均一に被覆できるようになる。
【0025】
本形態においては、基紙をJIS P 8220「パルプ‐離解方法」に記載の方法に準拠して離解した後のパルプ繊維の重量平均繊維長(カヤニ平均繊維長試験機:Fiber Laboにて測定)が、0.4mm以上、好ましくは0.6mm以上であり、また0.9mm以下、好ましくは0.8mm以下である。重量平均繊維長が0.4mmよりも短い場合は、繊維間の隙間が狭く、パルプ繊維の絡み合いが強い状態であるため、吸放湿をした際にパルプ繊維の伸縮が起こり、基紙の寸法変化が大きくなる。他方、重量平均繊維長が0.9mmを超える場合は、本件発明における記録手段のひとつであるインクジェット印刷において、インクジェットインクに対する寸法安定性の点ではよいが、繊維間の隙間が大きくなり、繊維同士の絡み合いが少なくなって、基紙の縦方向の引張強度が低下する。また、原料パルプが古紙パルプを含有する場合の中性抄紙において、基紙のJIS P 8220に記載の方法に準拠して離解した後の重量平均繊維長を0.4〜0.9mmとすることで、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有する、寸法安定性に優れ、引張り強度が高く、低コストで環境に優しいフォーム用紙を得ることができる。
【0026】
以上の重量平均繊維長の調整方法は、特に限定されないが、従来公知の叩解処理や、用いる古紙の選別により行うことができ、特にOA古紙はフォーム用紙と類似の原料構成であるので、OA古紙を用いるのが好ましい。
【0027】
なお、本形態において、基紙をJIS P 8220に記載の方法に準拠して離解した後の重量平均繊維長を規定するのは、抄紙前の原料パルプにおいては、古紙由来の微細な繊維が原料パルプ中に存在し、抄紙する際に、抄紙ワイヤー下やプレス工程での脱水により繊維構成が変化するため、忠実にフォーム用基紙の紙質を特定するには、フォーム用基紙そのものの重量平均繊維長を測定する必要があるためである。
【0028】
本形態の基紙に用いるパルプの叩解度(CSF)は、400〜550mL、特に400〜500mLとなるように調整されることが好ましい。CSFが400mL未満では、広葉樹クラフトパルプが主成分である場合に、引張り強度や引裂き強度の低下が見られ、高速フォーム印刷時に断紙や紙粉が発生し易くなる、また、CSFが400mL未満では、叩解が進んで繊維長の短いパルプの比率が高まり、繊維同士の絡み合いが強くなって吸放湿による伸縮が大きくなる恐れがある。他方、CSFが550mLを超えると、地合いムラが生じ易くなり、インクジェット印刷時の吸収乾燥性、繊細さが欠ける問題が生じる。また、CSFが550mLを超えると、繊維長の長いパルプの比率が高まり、寸法安定性の点ではよいが、繊維同士の絡み合いが少なくなって引張り強度が低下し、加工時に断紙トラブルが発生する恐れがある。また、原料パルプが古紙パルプを含有する場合の中性抄紙において、基紙に用いるパルプのCSFが400〜550mLとなるようにすることで、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有するフォーム用紙を得ることができる。さらに、上記CSFになるように調整することにより、塗工液が基紙に浸透しやすい状況になるが、紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤、水溶性ポリアミン系樹脂をそれぞれ所定の範囲で含有させることで、塗工液の粘度を10〜30mPa・sと比較的高めに設定することができ、塗工液の基紙への浸透を抑制して、塗工液を基紙表面に留まらせることにより、インクジェット適性を有するフォーム用紙を得ることができる。
【0029】
なお、本明細書において、パルプの叩解度は、JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」に記載の方法に準拠して測定したカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)をいう。また、このCSFを調節するための叩解は、ダブルディスクリファイナー(DDR)を使用して行うことができる。
【0030】
一方、原料パルプの主成分として用いる広葉樹クラフトパルプのCSFは、好ましくは400〜550mL、より好ましくは450〜500mLである。
【0031】
本形態においては、以上の原料パルプを混合して抄紙原料(原料スラリー)を調製するが、当該原料パルプには、填料のほか、例えば、内添サイズ剤、紙力増強剤、紙厚向上剤、歩留向上剤等の通常のフォーム用紙に配合される種々の添加剤を、その種類及び配合量を適宜調整して内添することができる。この抄紙原料は、例えば、ワイヤーパートにて抄紙した後、プレスパート、プレドライヤーパート等に供して基紙とし、この基紙の一方又は両方の表面にコーターパートにて水溶性樹脂塗工液を塗工し、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート、ワインダーパート等に供して目的とするフォーム用紙とする。
【0032】
(内添サイズ剤)
本形態において、基紙には、内添サイズ剤として、例えば、アルキルケテンダイマー(以下「AKD」ともいう。)やアルケニル無水コハク酸(以下「ASA」ともいう。)、ロジンエマルジョン、スチレン系サイズ等の公知のサイズ剤を内添することができる。
【0033】
サイズ剤の内添量は、好ましくは0.01〜0.5g/m2、より好ましくは0.02〜0.15g/m2である。JIS P 8124に準拠した坪量を70g/m2以下とする場合において、基紙表面に、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む塗工液を設けることとの相乗効果によって、更には、前記オレフィン系サイズ剤の塗工量を片面当り0.001〜0.01g/m2、前記水溶性ポリアミン系樹脂の塗工量を片面当り0.1〜1.0g/m2とすることとの組合せにより、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有するフォーム用紙を得ることができる。
【0034】
より詳細には、サイズ剤の内添量が0.01g/m2未満であると、基紙のサイズ性が低下し、基紙表面に塗工する塗工液が基紙に沈み込み、インクジェット印刷をした際のインクの沈み込みや、裏抜け、滲みの問題が発生するおそれがある。他方、サイズ剤の内添量が0.5g/m2を超えると、基紙のサイズ性が高くなり過ぎ、用紙表面のバリア性が向上し過ぎ、インクジェットインクが適度に基紙に浸透しなくなるため、インクジェットインクの乾燥性(セット性)が悪くなり、高速インクジェット印刷時における印刷情報の汚れや、インクジェット印刷機の汚れの問題が発生するおそれがある。
【0035】
〔水溶性樹脂塗工液(組成物)〕
前述したように、本形態のフォーム用紙において、基紙表面に塗工される水溶性樹脂塗工液は、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む。
【0036】
(紙力増強剤)
本形態において、紙力増強剤は、オフセット印刷時における白抜けを防止するために不可欠である。この紙力増強剤としては、例えば、澱粉や植物ガムなどの天然で得られる高分子化合物や、尿素‐ホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂などが挙げられる。ただし、軽量のインクジェット対応フォーム用基紙表面への塗工作業性、カチオン性のオレフィン系サイズ剤との相溶性、高速フルカラーインクジェット印刷を可能にする剛度の確保の面から、ポリアクリルアミド系樹脂を使用するのが好ましい。更に、このポリアクリルアミド系樹脂としては、カチオン性のポリアクリルアミドを好適に用いることができる。カチオン性のポリアクリルアミドは、オレフィン系サイズ剤と組み合わせて基紙の表面に塗工することによって、他のサイズ剤との組み合わせにおいては問題となる、異物の発生や変色、増粘が生じず、塗工適性も秀でる相乗効果を有する。また、カチオン性のポリアクリルアミドとオレフィン系サイズ剤とを組み合わせ、更に水溶性ポリアミン系樹脂を組み合わせて基紙表面に塗工することにより、軽量で有りながら印刷情報の裏抜けが無く、インクジェットインクの滲みが抑えられ、高速フォーム印刷適性を満足するフォーム用紙となり、更に、剛度が向上し、フルカラーインクジェット印刷におけるカールの発生が少なくなり、波打の発生が小さくなり、搬送性に優れたフォーム用紙が得られる。
【0037】
本形態において、このカチオン性のポリアクリルアミドとしては、ポリアクリルアミド内のアミド基を部分的に加水分解して得られるもの、アクリルアミドとアクリル酸との共重合物などを用いることができる。また、かかるアクリル酸の代わりに、例えば、メタアクリル酸や無水マレイン酸を用いた共重合物、第3成分としてアクリロニトリルやアクリル酸エステルを含む3元共重合体を用いることもできる。
【0038】
本形態において、カチオン性のポリアクリルアミドの平均分子量は、300000〜1000000、好ましくは400000〜500000である。カチオン性のポリアクリルアミドの平均分子量が300000未満では、剛度が十分に向上せず、他方、1000000を超えると粘度が増して塗工操業性が低下し、ミスト発生の問題が生じる。
【0039】
本形態において、カチオン性のポリアクリルアミドは、オレフィン系のサイズ剤、水溶性ポリアミン系樹脂と好適に組み合わせて用いることができるが、更に、酸化澱粉など種々の変性澱粉、各種ポリビニルアルコールなどと併用塗工することもでき、また、アニオン性のポリアクリルアミドに混合して使用することもできる。
【0040】
紙力増強剤の塗工量は、水溶性樹脂塗工液を構成するオレフィン系サイズ剤、水溶性ポリアミン系樹脂との関係から、好ましくは0.5〜4.0g/m2、より好ましくは0.5〜3.0g/m2とする。塗工量が0.5g/m2未満であると用紙表面の紙力が不足し、オフセット印刷時に白抜けの問題が発生するおそれがある。他方、塗工量が4.0g/m2を超えるとオフセット印刷時に紙粉の問題は発生しないが、用紙表面が固まってJIS P 8116に準拠する引裂強さが低下し、ミシン目強度が不足し、ミシン目での紙切れの問題が発生するおそれがある。また、紙力増強剤の塗工量を増やすと、用紙表面のバリア性が強化され過ぎて、インクジェットインクが用紙表面に留まり、インクの乾燥性(セット性)が悪くなり、高速インクジェット印刷時に印字情報の汚れやインクジェット印刷機の汚れの問題が発生するおそれがある。
【0041】
(オレフィン系サイズ剤)
本形態において、オレフィン系サイズ剤は、インクジェット印刷時の印刷情報の滲み(フェザリング)を防止する効果と、低坪量であっても印刷情報の裏抜けを防止する効果とを有する。
【0042】
オレフィン系サイズ剤の塗工量は、紙力増強剤及び水溶性ポリアミン系樹脂との組合せによる相乗効果を考慮して、好ましくは片面当り0.001〜0.01g/m2、より好ましくは片面当たり0.002〜0.008g/m2である。塗工量が0.001g/m2未満であると、インクジェット印刷時の印刷情報の滲みを防ぐことができなくなるおそれがある。他方、塗工量が0.01g/m2を超えると、インクジェット印刷時の滲みを防ぐことはできるが、用紙表面のバリア性が向上し過ぎてしまい、インクジェットインクが適度に基紙に浸透しなくなるため、乾燥性(セット性)が悪くなり、特に高速インクジェット印刷時の印刷情報の汚れや、インクジェット印刷機の汚れの問題が発生するおそれがある。
【0043】
この点、本形態においては、オレフィン系サイズ剤以外のサイズ剤として、スチレン樹脂系、アルキルダイマー系(荒川化学社製のサイズパインK‐902等)、高級脂肪酸系(近代化学工業社製のNS‐815等)、石油樹脂系(近代化学社製のH‐7A等)、スチレンアクリル合成樹脂系(パールガムCS‐25S等)等の表面サイズ剤を使用することができる。ただし、紙力剤増強剤であるポリアクリルアミドとの溶解性、水溶性ポリアミン系樹脂との相乗効果の点からは、オレフィン系のサイズ剤が好ましい。
【0044】
また、本形態において、オレフィン系サイズ剤は、カチオン性を有しているオレフィン系サイズ剤が好ましい。カチオン性を有しているオレフィン系サイズ剤は、原料パルプに対して自己定着性を有するため、紙力増強剤や水溶性ポリアミン系樹脂とともに基紙表面に塗工するにおいて、定着剤が必要とならず、基紙表面に水溶性樹脂の塗工層を効果的に設けることができる。
【0045】
(水溶性ポリアミン系樹脂)
本形態において、水溶性ポリアミン系樹脂は、インクジェット印刷が施されたフォームが、水に濡れた際の滲みを防止(耐水性)する効果を有する。
【0046】
水溶性ポリアミン系樹脂の塗工量は、紙力増強剤や水溶性ポリアミン系樹脂と組み合わせた場合の相乗効果を醸し出し、軽量で有りながら印刷情報の裏抜けが無く、インクジェットインクの滲みを抑え、高速インクジェットフォーム印刷適性を満足するために、好ましくは片面当り0.1〜1.0g/m2、より好ましくは片面当たり0.3〜0.7g/m2とする。塗工量が0.1g/m2未満であると、耐水性が不足し、水に濡れた際にインクジェット印刷情報が滲んでしまい、印刷内容が判読不明となるおそれがある。他方、塗工量が1.0g/m2を超えると、水に濡れた場合の印刷情報の滲みの問題はないが、製造コストが高くなる。
【0047】
本形態において、好適に用いることができる水溶性ポリアミン系樹脂としては、例えば、(1)ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(2)第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基等を有するアクリル重合体、(3)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(4)ジシアンジアミド‐ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性重合体、(5)ジシアンジアミド‐ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性重合体、(6)エピクロルヒドリン‐ジメチルアミン共重合体、(7)ジアリルジメチルアンモニウム‐SO2重縮合体、(8)ジアリルアミン塩‐SO2重縮合体、(9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド‐アクリルアミド共重合体、(11)アリルアミン塩の共重合体、(12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(13)アクリルアミド‐ジアリルアミン共重合体、(14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等を例示することができる。
【0048】
(助剤)
本形態において、水溶性樹脂塗工液には、紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂のほか、例えば、蛍光増白剤を配合することができる。蛍光増白剤は、紙の増白効果を有するのみならず、インク受容性を向上させる効果も有する。
【0049】
蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体、なかでもスルホン酸基を5個有するスチルベン誘導体を好適に用いることができる。スチルベン誘導体は、一般的に紙の増白剤として用いられ、例えば、被染着物質であるポリビニルアルコールと併用することにより、その増白効果が向上する。特に、スルホン酸基を5個有するスチルベン誘導体は、より一層の増白効果が認められ、なかでもトランス型にスルホン酸基を5個有するスチルベン誘導体は、蛍光増白強度が高く、増白維持期間が長いので、得られるフォーム用紙の白色度がさらに向上する点で好ましい。
【0050】
蛍光増白剤の配合量は、特に限定されないが、増白効果の発現及び低コスト化の観点から、好ましくは片面当たり0.1〜2.0g/m2、より好ましくは片面当たり0.3〜1.5g/m2である。蛍光増白剤は、紙力増強剤やオレフィン系サイズ剤、水溶性ポリアミン系樹脂と組み合わせて用いるに当たり、相溶性の面や水溶性樹脂塗工液中での不用意な凝固物の発生防止の面、分散性の面でpH8〜10、粘度20〜40mPa・sのものが好ましい。
【0051】
さらに、本形態の水溶性樹脂塗工液には、例えば、蛍光増白剤の被染着物質、消泡剤、離型剤、着色剤、保水剤等の各種助剤を適宜配合することもできる。
【0052】
(塗工・乾燥)
基紙の一方又は両方の面への水溶性樹脂塗工液の塗工は、例えば、複数段階、通常はプレドライヤーパートとアフタードライヤーパートとの2段階で行われるドライヤーパートの、各ドライヤーパート間のサイズプレスにおいて、行うのが好ましい。
【0053】
水溶性樹脂塗工液の塗工には、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、カーテンコーター等の塗工装置を用いることができ、これらの塗工装置が備えられたオンマシンコーター又はオフマシンコーターによって、基紙に1回又は2回以上に分けて水溶性樹脂塗工液を塗工することができる。
【0054】
ただし、以上の各種コーターのなかでも、基紙の表面のうねりに沿った均質な塗工層が確保されるという点から、ロールコーターを用いることが好ましい。
【0055】
また、ドライヤーパートにおける乾燥方法は、特に限定されず、例えば、熱風加熱、ガスヒーター加熱、赤外線ヒーター加熱等の各種加熱乾燥方式を適宜採用することができる。
【0056】
本形態において、水溶性樹脂塗工液は、基紙の一方又は両方の表面に対して、片面当たり0.6〜5.0g/m2となるように塗工するのが好ましい。塗工量が片面あたり0.6g/m2未満であると、基紙表面に未塗工部分が生じ易く、ドットの欠けやインクジェット印刷時の網点不良が生じるおそれがある。これに対し、塗工量が片面あたり0.6g/m2以上であると、基紙表面が均質に水溶性樹脂塗工液で塗工され、例えば、オフセット印刷におけるブランケット汚れがなくなり、また、インクジェット印刷時の印刷情報の精細性が向上する等、各種印刷手段にマルチに適用可能な優れた印刷適性を容易に確保することができる。他方、水溶性樹脂塗工液の塗工量が、片面当たり5.0g/m2を超えると、オフセットインクやインクジェットインクの吸収乾燥性が阻害され、しかも水性樹脂塗工液の粘調性が増加し、生産性の低下やコストアップをまねくおそれがある。
【0057】
さらに、水溶性樹脂塗工液の塗工量は、より好ましくは1.0〜3.5g/m2、特に好ましくは2.0〜3.0g/m2である。この範囲においては、前記の各種印刷手段にマルチに適用可能な優れた印刷適性が更に向上する。
【0058】
(平坦化処理)
基紙の一方又は両方の表面に、水溶性樹脂塗工液を塗工したら、平坦性、印刷適性を付与する目的で、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等の、弾性ロールと金属ロールとの組合せによる平坦化処理を施すのが好ましい。スーパーカレンダーやソフトカレンダー等によると、従来のマシンカレンダーによるのと異なり、用紙表面を幅広の面で、高温で処理することになるので、基紙の密度や塗工層の密度を過度に高めることなく平坦化することができ、例えば、オフセット印刷、インクジェット印刷等において好適な印刷面を形成することができる。なかでも、所定温度の金属ロールと弾性ロールとを、垂直方向に複数段組み合わせ、垂直方向に加圧するスーパーカレンダーは、温水を用いて70℃程度に加熱することから、電気を用いて加熱するソフトカレンダーに比べて経済的であるので、特に好適に用いられる。
【0059】
カレンダー処理の線圧や温度、速度は、特に限定されないが、処理後の塗工層の平坦性を充分に向上させ、また最終的に得られるフォーム用紙の緊度が過度とならないようにするために、例えば、スーパーカレンダーで、線圧は95〜300kN/m、金属ロール温度は50〜90℃、通紙速度は500〜1000m/分にすることが好ましく、これらの条件では、表面性の指標となるパーカー・プリント・サーフ粗さを後述する所定範囲内に容易に調整することができる。
【0060】
〔フォーム用紙〕
(坪量)
本形態のフォーム用紙のJIS P 8124「紙及び板紙‐坪量測定方法」に準拠した坪量は、70g/m2以下、好ましくは60〜70g/m2である。近年の省資源化と郵送コスト低減、軽量化による作業性の改善の時流に沿い、軽量でありながら印刷情報の裏抜けがなく、不用意に水に濡れた際にもインクジェットインクの滲みが生じにくく、インクジェット印刷適性及びオフセット印刷適性(フォーム印刷適性)を満足するために、本形態においては、従来の坪量80g/m2以上のフォーム用紙を下回る、坪量60〜70g/m2に調整するとともに、所定の水溶性樹脂塗工液を基紙表面に設ける。
【0061】
より詳細には、フォーム用紙の坪量が60g/m2未満では、高速フォーム印刷時の引張り強度や引裂き強度が不十分となり、腰も無くなるため、印刷トラブルや搬送不良を招きやすくなる。他方、坪量が70g/m2を超えると、前述フォーム用紙の軽量化に逆行する。
【0062】
(灰分)
本形態において、基紙には、填料が内添され、JIS P 8251に準拠した灰分が、好ましくは3〜12質量%、より好ましくは5〜10質量%とされる。この灰分には、原料パルプとして用いる古紙パルプに付着して基紙中に持ち込まれる古紙由来の填料も含まれる。原料パルプとして古紙パルプを用いた場合、この古紙パルプに付着した填料によって数%の不透明度向上効果を期待することができるが、更なる不透明度向上とフルカラーインクジェット印刷におけるインキ吸収乾燥性の向上とを目的に、新たに填料を加え、JIS P 8251に準拠した灰分を3〜12質量%に調整する。
【0063】
より詳細には、JIS P 8251に準拠した灰分を3質量%未満にするのは、新たに基紙中に加える填料を減らし、あるいは古紙由来の微細繊維、灰分を原料調整段階で十分に洗浄することで可能であるが、不透明性の低下やフルカラーインクジェット印刷適性が低下する問題が生じるおそれがある。他方、灰分が12質量%を超えると、フルカラーインクジェット印刷機を使用した場合に、インクジェット印刷インクの浸透・乾燥ムラが生じやすくなり、カールし易い紙質となる。JIS P 8251に準拠して測定した灰分のより好ましい範囲は、5〜10質量%である。
【0064】
新たに加える填料の種類は、特に限定されず、例えば、タルク、クレー、二酸化チタン、炭酸カルシウム等の公知の填料を加えることができる。ただし、古紙由来の填料も含めて、全填料の50質量%以上が炭酸カルシウムとなるようにするのが好ましく、全填料の60〜90質量%が炭酸カルシウムとなるようにするのがより好ましい。
【0065】
また、炭酸カルシウムとしては、カルサイト系炭酸カルシウム又はアラゴナイト系炭酸カルシウムを好適に用いることができ、紡錘型又は毬栗状に凝集し又結晶化した炭酸カルシウム等の形状を有するものを好適に用いることができる。填料として紡錘型又は毬栗状の炭酸カルシウムを用い、好適にはpH6〜10、より好適にはpH6.5〜9.5の中性からアルカリ性で抄造することにより、得られる軽量のインクジェット対応フォーム用紙の不透明度と剛度とを同時に向上させることができる。
【0066】
より詳細には、炭酸カルシウムを用いると、炭酸カルシウムのバッファー効果によって抄紙pHが7〜9になるところ、抄紙pHが中性あるいはアルカリ性の場合は、抄紙pHが酸性の場合と比べてパルプ繊維1本1本が十分に伸びるので、繊維相互が水素結合を形成する領域が増加する。したがって、灰分が酸性印刷用紙と同程度の場合には、中性印刷用紙の紙力の方が高くなり、この結果、坪量が70g/m2以下と軽量のインクジェット対応フォーム用紙であっても、クラーク剛度の低下を抑制し、印刷機での搬送性に優れ、高速輪転印刷に耐え得る十分な強度が得られる。また、炭酸カルシウムは、例えば、ホワイトカーボン等よりも、古紙由来の填料として古紙パルプ中に残留する割合が少ないものの、カチオン性を有するオレフィン系のサイズ剤や、カチオン性の水溶性ポリアミン系樹脂との相性が良く、特にカチオン性を有するオレフィン系サイズ剤の薬品歩留向上に寄与し、オレフィン系サイズ剤を配合する効果が向上される。
【0067】
さらに、填料として紡錘型又は毬栗状の炭酸カルシウムを用いた軽量のインクジェット対応フォーム用紙の印刷適性は、例えば、柱状、キュービック型、針状の軽質炭酸カルシウムを配合した従来のフォーム用紙と比較して極めて良好であり、白色度も高くなる。また、紡錘型又は毬栗状の炭酸カルシウムを用いると、インクジェット印刷用のインクが用紙表面に付着しやすくなり、インクの未定着による印刷機や印刷面の汚れを来たしにくくなる。
【0068】
紡錘型又は毬栗状の炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムに二酸化炭素含有気体を反応させ、例えば、紡錘型や柱状の安定なカルサイト型結晶構造の炭酸カルシウムや準安定なアラゴナイト型結晶構造の炭酸カルシウムを得る過程において、二酸化炭素含有気体の供給方法を調整したり、脱水、乾燥、熱処理を施す際に、例えば、縮合リン酸あるいはその金属塩等の添加剤を添加したりすることで、紡錘型や柱状の結晶構造が毬栗状に凝集し又は結晶化するので、この現象を利用して得ることができる。
【0069】
(表面粗さ)
本形態のフォーム用紙は、ISO 8791‐4「紙及び板紙‐粗さ平滑度試験方法(空気漏洩法)‐第4部:プリントサーフ法」に記載の方法に準拠して測定したパーカー・プリント・サーフ粗さが、表面及び裏面のいずれも、1.50μm/Pa・s以上、更には1.70μm/Pa・s以上、特に1.80μm/Pa・s以上であることが好ましく、また、3.50μm/Pa・s以下、更には3.30μm/Pa・s以下、特に3.20μm/Pa・s以下であることが好ましい。
【0070】
例えば、オフセットフルカラー印刷、フルカラーインクジェット印刷を行う際に、ベック平滑度や王研式平滑度、光学的な平滑度の測定では、個々の印刷手段における印刷適性の指標としては利用可能であるものの、各種印刷にマルチに適応した印刷適性を把握するには一長一短を有するものである。したがって、本形態では、微視的な約5μm/Pa・sの領域の平滑性を測定することが可能なパーカー・プリント・サーフ粗さにより、フォーム用紙の表面及び裏面について平坦性を評価する。
【0071】
表面及び裏面のいずれか一方でも、前記パーカー・プリント・サーフ粗さが1.50μm/Pa・s未満では、例えば、インクジェット記録における高精細で乾燥性に優れた印刷面を得ることが困難となるおそれがある。他方、表面及び裏面のいずれか一方でも、前記パーカー・プリント・サーフ粗さが3.50μm/Pa・sを超えると、例えば、オフセットフルカラー印刷、フルカラーインクジェット印刷における高精細な印刷面を得ることが困難となるおそれがある。
【0072】
また、近年特に商用印刷で求められているように、用紙の表裏面性の差異を小さくするために、表裏面のパーカー・プリント・サーフ粗さの差(絶対値)は、1.00μm/Pa・s以下、更には0.98μm/Pa・s以下、特に0.95μm/Pa・s以下とすることが好ましい。
【0073】
このように、パーカー・プリント・サーフ粗さを、表面及び裏面いずれも1.50〜3.50μm/Pa・sの範囲内とし、かつ、表裏面のパーカー・プリント・サーフ粗さの差(絶対値)を1.00μm/Pa・s以下とすることで、軽量でありながら例えばオフセットフルカラー印刷、フルカラーインクジェット印刷等の各種印刷方法のいずれにもより適応した、フォーム用紙を得ることができる。
【0074】
なお、本明細書において、パーカー・プリント・サーフ粗さは、前記ISO 8791‐4に準拠し、パーカー・プリント・サーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M‐569型、MESSMER BUCHEL社製)を用い、バッキングディスクがソフトラバーで、クランプ圧力が1MPaの条件で測定した値をいう。得られた測定値が小さいほど、平滑性が高いことを示す。
【0075】
表面粗さの調製において、本形態においては、基紙表面に、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系のサイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を組み合わせた水溶性樹脂組成物を塗工しているため、前記した例えばスーパーカレンダーで、線圧は95〜300kN/m、金属ロール温度は50〜90℃、速度は500〜1000m/分にて平坦化することで、あたかも糊付けのシーツにアイロンでしわ伸ばしを行なうがごとく、用紙表面をシワの戻りを少なく平坦性を維持することができ、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、しかも、オフセット印刷適性のほか、滲みが生じない等のインクジェット印刷適性をも有するフォーム用紙を得ることができる。
【0076】
(動摩擦係数)
本形態のフォーム用紙は、基紙表面に、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系のサイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を組み合わせた水溶性樹脂組成物を塗工することで、JIS P 8147「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に記載の方法に準拠して、JIS P 8111「紙、板紙及びパルプ‐調湿及び試験のための標準状態」に準拠した標準状態で測定した動摩擦係数を、0.50〜0.90に好適に調整可能である。動摩擦係数が0.50未満では、紙同士が滑りやすく、例えばフルカラーインクジェット印刷時において、印刷時にロール上で用紙が滑って見当ズレが発生するなど、用紙搬送性が低下するおそれがある。他方、動摩擦係数が0.90を超えると、紙同士にかかる摩擦力が大きいために用紙表面に傷がつき易く、光沢性、平滑性、各種マルチに印刷可能な印刷適性が低下するおそれがある。
【0077】
動摩擦係数は、更には0.55以上、特に0.60以上であることが好ましく、また、更には0.85以下、特に0.80以下であることが好ましい。動摩擦係数がこのような範囲の場合には、前記用紙搬送性、光沢性、平滑性、各種マルチに印刷可能な印刷適性が、更に向上する。
【0078】
本形態のフォーム用紙においては、フルカラーインクジェット印刷における搬送性が極めて重要であり、搬送性と70g/m2以下の軽量なフォーム用紙での印刷適性とをバランスよく両立させるには、動摩擦係数が前記範囲内となるように、例えば、炭酸カルシウムの含有量を調整したり、前記のごとき平坦化処理を施したりし、得られるフォーム用紙に、各種印刷方法のいずれにも適応した表面性を付与することが好ましい。
【0079】
なお、本明細書において、動摩擦係数は、前記JIS P 8147の水平法に準拠し、水平板と錘との双方に白紙のインクジェット対応フォーム用紙を取り付け、これらインクジェット対応フォーム用紙の表裏面が相対するように配置し、表裏‐縦縦での測定で、引張速度が200mm/分で表裏面が擦れ合うようにして、JIS P 8111に準拠した標準状態で測定した値をいう。
【0080】
動摩擦係数の調整も、前記した例えばスーパーカレンダーで、線圧は95〜300kN/m、金属ロール温度は50〜90℃、速度は500〜1000m/分にて平坦化することで、調整可能である。
【0081】
動摩擦係数は、基紙を構成する原料パルプの影響もあり、本形態で好適な構成とする広葉樹クラフトパルプを主成分に古紙パルプを組み合わせてなる原料パルプで構成し、広葉樹クラフトパルプと古紙パルプとの割合を70〜95:5〜30、より好ましくは、75〜95:5〜25とすることが好ましく、更には、主成分として用いる広葉樹クラフトパルプのCSFを400〜550mL、特に450〜500mLとすることが好ましい。
【0082】
広葉樹クラフトパルプの原料パルプ中の割合を70〜95%とすることで、紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂の組合せからなる水溶性組成物を過度に基紙内部に浸透させること無く基紙表面に塗工可能になり、用紙表面の平坦性を向上させて動摩擦係数を低く調製することができる。また、比較的バージンパルプより扁平な古紙パルプを5〜30%含有させることで、基紙表面の間隙を少なくし、基紙表面に紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂の組合せからなる水溶性組成物を均一に塗工できるため、凹凸が減少し、前記平坦化手段で容易に動摩擦係数の調製が可能となる。
【0083】
(透湿度)
本形態のフォーム用紙は、基紙表面に、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系のサイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を組み合わせた水溶性樹脂組成物を塗工することで、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠した、温度20℃、相対湿度65%での透湿度M20を500g/m2・24h以下に、かつ、JIS Z 0208に準拠した、温度40℃、相対湿度65%での透湿度M40を1000g/m2・24h以上に調整することが可能である。
【0084】
M20が500g/m2・24hを超えると、常温における水分の吸放湿が激しいため、用紙のシワ、波うち、歪みが発生し易く、寸法安定性が低下する恐れがある。また、M40が1000g/m2・24h未満では、例えば、フルカラーインクジェット印刷において、インクジェット印刷インクを用紙に定着乾燥させるために、インク中に含まれる溶媒が紙外部へ抜け難く、用紙に局所的なシワ・波うち・歪みが発生し易くなる恐れがある。
【0085】
以上の透湿度は、M20が200g/m2・24h以上、480g/m2・24h以下であり、かつ、M40が1100g/m2・24h以上、1750g/m2・24h以下であるとより好ましい。
【0086】
本発明者等の知見では、軽量でありながら印刷情報の裏抜けが無く、インクジェットインクの滲みを抑え、高速フォーム印刷を行ってもインクジェット印刷適性を満足するフォーム用紙を提供するための構成として見出した、基紙表面に少なくとも紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を組み合わせた水溶性組成物を塗工することと、上記透湿度の限定とを行うことで、高速フォーム印刷時の用紙のシワ、波うち、歪みの改善を図れる。
【0087】
また、本形態においては、前記透湿度M20及び透湿度M40を、いずれも前記値に調整することにより、前述した課題解決のみならず、インクジェット対応フォーム用紙としての優れた寸法安定性及び印刷適性を更に充分に満足し得る品質を確保することができる。
【0088】
なお、本明細書において、透湿度M20は、前記JIS Z 0208のカップ法に準拠し、約10gの無水塩化カルシウムをカップ内に収め、恒温恒湿装置内の温度を20℃、相対湿度を65%に保持して6時間後に計量した透湿量から算出される、フォーム用紙(試料)の透湿度を測定した値をいう。また、本明細書において、透湿度M40は、前記JIS Z 0208のカップ法に準拠し、ポリアクリル酸塩系高吸水性樹脂を0.5重量%含む約20gの水をカップ内に収め、恒温恒湿装置内の温度を40℃、相対湿度を65%に保持して6時間後に計量した透湿量から算出される、フォーム用紙(試料)の透湿度を測定した値をいう。
【0089】
以上のように、本形態においては、用紙表面の粗さだけではなく、動的なフォーム用紙の表面性が調整され、かつ、フォーム用紙の表裏面における動摩擦係数が適切に調整されることにより、より優れたフォーム印刷適性及び寸法安定性を有するだけでなく、用紙搬送性やインクジェットフルカラー印刷適性にも特に優れたフォーム用紙を得ることができる。
【0090】
(印刷不透明度)
本形態のフォーム用紙は、JIS P 8149に準拠した印刷不透明度が80〜90%(好ましくは82〜88%)とされる。印刷不透明度が80%未満の場合は、印刷内容を反印刷面から読み取り易くなる。他方、印刷不透明度が90%を超える場合は、印刷不透明度の観点では問題はないが、90%を超える印刷不透明度を得るために基紙中灰分12%を超えた部分での含有が必要になり、軽量で有りながら印刷情報の裏抜けが無く、インクジェットインクの滲みを抑え、高速フォーム印刷を行ってもインクジェット印刷適性を満足するフォーム用紙を得難くなる。
【0091】
(白色度)
本形態のフォーム用紙の見栄えをより向上させるには、JIS P 8148「紙、板紙及びパルプ‐ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した用紙の白色度が70%以上、さらには75%以上であることが好ましい。白色度が70%未満の場合に比べ、例えばより高精彩で、コントラストの高い各種フルカラー印刷特有の写真調の仕上りが得られる。このようなフォーム用紙の白色度は、原料パルプ配合や抄紙条件、塗工顔料の調整により達成することができる。
【実施例】
【0092】
次に、本発明のフォーム用紙を、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
表1に記載の原料パルプ、内添サイズ剤及び填料を抄紙原料として用い、また、表2に記載の塗工量となるように調整した紙力増強剤、サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む塗工液を用いて、ワイヤーパート、プレスパート、プレドライヤーパート、サイズプレス、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート及びワインダーパートを含む製紙システムを用いて、フォーム用紙を製造した。ワイヤーパートではハイブリットフォーマーを用い、サイズプレスではゲートロールを用い、カレンダーパートではソフトカレンダーを用いた。なお、本件において、「質量%」は特にことわりの無い限り固形分を意味し、また、「塗工量」は、片面当たりである。以下には、使用薬品の詳細を示す。
【0093】
(内添サイズ剤)
・AKD(アルキルケテンダイマー):荒川化学社製 サイズパインK‐78
(内添PAM)
・PAM(ポリアクリルアミド):星光PMC社製 DS4366
(外添紙力増強剤)
・カチオン性PAM(ポリアクリルアミド):星光PMC社製 ST5000、分子量はST5000を基に調整した。
・酸化澱粉:日本食品化工株式会社製 MS3800
(外添サイズ剤)
・オレフィン系:星光PMC社製 SS2920
・スチレン系:星光PMC社製 SS2720
・AKD:星光PMC社製 SE2360
(外添水溶性ポリアミン)
・日東紡社製 ポリアリルアミンPAA‐03
(填料)
・炭酸カルシウム:奥多摩工業社製 タマパールTP‐121‐6S
・クレー:ENGELHARD社製 ANSHILEX93
・タルク:日本タルク社製 タルク
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
得られたフォーム用紙について、各種品質を調べ、結果を表3及び表4に示した。各種品質の測定・評価方法等は、以下のとおりである。
【0097】
〔坪量(米坪)〕
JIS P 8124「紙及び板紙‐坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0098】
〔PPS平滑度〕
ISO 8791‐4「紙及び板紙‐粗さ平滑度試験方法(空気漏洩法)‐第4部:プリントサーフ法」に記載の方法に準拠し、パーカー・プリント・サーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M‐569型、MESSMER BUCHEL社製)を用い、バッキングディスクがソフトラバーで、クランプ圧力が1MPaの条件で測定した。
【0099】
〔紙厚〕
JIS P 8118「紙及び板紙‐厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0100】
〔剛度(横)〕
JIS P 8143「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に準拠して、紙の幅方向(横)の値を測定した
【0101】
〔印刷不透明度〕
JIS P 8149「紙及び板紙‐不透明度試験方法(紙の裏当て)」に準拠して測定した。
【0102】
〔動摩擦係数〕
JIS P 8147「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に記載の水平法に準拠し、水平板と錘との双方に白紙のフォーム用紙を取り付け、これらフォーム用紙の表裏面が相対するように配置し、表裏‐縦縦での測定で、引張速度が200mm/分で表裏面が擦れ合うようにして、JIS P 8111「紙、板紙及びパルプ‐調湿及び試験のための標準状態」に準拠した標準状態で測定した。
【0103】
〔白色度〕
JIS P 8148「紙、板紙及びパルプ‐ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
【0104】
〔オフセット印刷適性〕
オフセット印刷機(型番:リソピアL‐BT3‐1100、三菱重工業(株)製)を使用し、カラーインク(品番:ADVAN、大日本インキ化学工業(株)製)にてフォーム用紙表面にカラー4色印刷を5000部行った。この印刷面について、目視及びルーペ(10倍)にて観察し、100cm2あたりの印刷面の白抜け個数を数え、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けが1個以下であり、印刷適性に非常に優れる。
○:白抜けが2個以上、3個未満であり、印刷適性に優れる。
△:白抜けが3個以上、4個未満であり、印刷適性にやや劣る。
×:白抜けが4個以上で、印刷適性に非常に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0105】
〔インクジェット印刷適性(IJ適性)〕
水性インクジェットプリンター(型番:Scitex6240J、サイテックス社製)を使用し、インクジェットプリンター用インク(黒、品番:サイテックス1040、サイテックス社製)にてフォーム用紙表面にベタ印字及び画線印字を行った。印字面を目視にて観察し、画質(ベタ部及び画線部の滲み)を以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ベタ部及び画線部いずれも滲みが全くなく、鮮明で高画質である。
○:ベタ部又は画線部に若干滲みが認められるが、実用上問題がない画質である。
△:画線部の滲みが多く、やや不鮮明な画質である。
×:ベタ部及び画線部いずれも滲みが著しく、不鮮明な画質である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0106】
〔搬送性〕
インクジェット印刷適性を評価した際のインクジェット印刷において、印刷時の重送や紙詰り等の印刷トラブルの発生回数を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0107】
(評価基準)
◎:印刷トラブルがなく、用紙搬送性が良好である。
○:印刷トラブルが1回発生したが、実用上問題ない程度である。
△:印刷トラブルが2回発生し、実用上問題がある。
×:印刷トラブルが3回以上発生し、用紙搬送性が劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0108】
〔寸法安定性〕
オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性を評価した際に得られた印刷物の印刷面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:波うち、シワ、歪みが殆どない。
○:波うち、シワ、歪みが若干認められるが、実用上問題がない。
△:波うち、シワ、歪みが明確に認められ、実用上問題となる場合がある。
×:波うち、シワ、歪みが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0109】
〔(インクジェット印字)裏抜け〕
インクジェット印刷適性を評価した際に得られた印刷物の印刷情報を反対面から見た際にどの程度読み取れたかを確認した。
◎:裏抜けが無い。
○:裏抜けが若干あり印刷内容が僅かに読み取れる。
△:裏抜けがあり印刷内容が読み取れ、実用上問題となる場合がある。
×:裏抜けが著しく、実用できない。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0110】
〔水による滲み〕
インクジェット印刷適性を評価した際に得た印刷物を水に10秒つけ、印刷内容が滲むかを確認した。
◎:滲みが殆ど無い。
○:滲みが若干あるが、印刷内容は読み取れる。
△:滲みがあり、印刷内容が読み取れないところがある。
×:滲みが著しく、印刷内容が読み取れない。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0111】
〔乾燥性〕
インクジェット印刷適性を評価した際に得た印刷物を印刷後3秒後にティシューで擦りインクがかすれるか確認した。
◎:インクのかすれが殆ど無い。
○:インクのかすれが僅かにあるが、印刷内容は読み取れる。
△:インクのかすれが多く、印刷内容が読み取れない部分がある。
×:インクのかすれが酷く、印刷内容が読み取れない。
【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
実施例のフォーム用紙は、いずれも、所定の水性組成物(水溶性樹脂塗工液)を塗工して塗工層が形成されており、坪量が特定範囲に調整されたものである。したがって、実施例のフォーム用紙は、オフセット印刷適性及びインクジェット印刷適性のいずれにも優れ、しかも用紙搬送性、寸法安定性にも優れており、各種フォーム印刷いずれにも好適な特性を具備したものである。
【0115】
これに対して、比較例のフォーム用紙は、水性組成物の組成や坪量が、前記実施例のように特定されていないため、オフセット印刷適性、インクジェット印刷適性、印刷適性のいずれかに劣り、各種フォーム印刷いずれにも好適な特性を具備しているとはいい難いものである。
【0116】
また参考例の現状市販品A、現状市販品B、現状市販品Cも同様に、水性組成物の組成や坪量が、前記実施例のように特定されていないため、やはり、オフセット印刷適性、インクジェット印刷適性、印刷適性のいずれかに劣り、各種フォーム印刷いずれにも好適な特性を具備しているとはいい難いものである。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のフォーム用紙は、インクジェット印刷、オフセット印刷等の各種フォーム印刷いずれにも好適なフォーム用紙として、適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプ及び填料を成分とする基紙の少なくとも一方の面に、水溶性樹脂塗工液が塗工されたフォーム用紙であって、
JIS P 8124に準拠した坪量が70g/m2以下で、
前記塗工液は、少なくとも紙力増強剤、オレフィン系サイズ剤及び水溶性ポリアミン系樹脂を含む、
ことを特徴とするフォーム用紙。
【請求項2】
前記オレフィン系サイズ剤の塗工量が片面当り0.001〜0.01g/m2、前記水溶性ポリアミン系樹脂の塗工量が片面当り0.1〜1.0g/m2とされている、
請求項1記載のフォーム用紙。
【請求項3】
前記填料の50%以上は炭酸カルシウムで、
この炭酸カルシウムを含む填料は、前記基紙中に3〜12%配合され、
JIS P 8149に準拠した不透明度が80〜90%とされている、
請求項1又は請求項2記載のフォーム用紙。
【請求項4】
前記紙力増強剤の塗工量が片面当り0.5〜4.0g/m2とされている、
請求項1〜3記載のいずれか1項に記載のフォーム用紙。

【公開番号】特開2011−26721(P2011−26721A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171166(P2009−171166)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】