説明

フック型嵌込部材を備えた受け側レピアおよびフック型嵌込部材の製造方法

受け側レピアのためのフック型嵌込部材(17)において、クランプ・レバーのヘッドに対するクランプ面(21)が特殊輪郭(26、27)を備えている。工具、特に放電加工装置のワイヤ(29)をクランプ面(21)に到達させるために、嵌込部材は空隙(28)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ面にほぼ垂直に移動可能なクランプ・レバーのヘッドの対向面に対するクランプ面を備えたアームと、クランプ・レバーのヘッドのための案内面を備えたアームとを有する、受け側レピアのためのフック型嵌込部材、そのフック型嵌込部材の製造方法、ならびにそのフック型嵌込部材を備えた受け側レピアに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べた種類の受け側レピアは、レピア織機で使用される。受け側レピアは、ある構造型式では、送り側レピアによって杼口に挿入された緯糸を杼口のほぼ中央で受け取り、次いで緯糸を杼口の挿入側とは反対の側に引き寄せる。別の構造型式では、受け側レピアは緯糸を挿入側で受け取り、その緯糸を反対側に引き寄せる。
【0003】
冒頭に述べた種類の受け側レピアは、例えばEP 0 123 005 Aから既知である。例えば耐摩滅性材料から作製された単一構造のフック型嵌込部材は、その製造の際に既に両方のアームのクランプ面と案内面が、互いに厳密に調整されているので、組立作業が比較的簡単であるという利点を有している。
【0004】
織速度が速い場合、受け側レピアには対応する大きな動荷重がかかる。緯糸を確実に把持するためには、比較的大きなクランプ力が必要である。受け側レピアのフック型部材のクランプ面が、長手方向リブおよび長手方向溝から成る特殊輪郭を有し、その特殊輪郭に、対応する特殊輪郭を設けたクランプ・レバーのヘッドを割り当てることも、既に知られている(WO 02/077343)。これにより、クランプ力の値を比較的小さく制限し、それでも緯糸を確実に把持することが可能である。
【0005】
クランプ面に前述のような特殊輪郭を作製するには、費用がかかり、かつ特殊な工具が必要である。例えば直径が非常に小さい回転研削工具を使用しなければならない。
【特許文献1】EP 0 123 005 A
【特許文献2】WO 02/077343
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、好ましくは緯糸を確実に把持するために比較的大きなクランプ力を必要とせず、できるだけ少ない費用で製造可能な、冒頭に述べた種類の受け側レピアのための嵌込部材を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、嵌込部材のアームのクランプ面が特殊輪郭を備え、かつ嵌込部材のもう一方のアームが長手方向に延びる空隙を有し、その空隙を通って工具がクランプ面に到達可能であることによって解決される。
【0008】
本発明に基づいて嵌込部材を形成することにより、空隙を通って工具をクランプ面に到達させ、その工具でクランプ面を加工することが可能になる。この工具の空間的な制限は軽減される。例えば直径が比較的大きな回転研削工具をクランプ面に到達させ、そこに特殊輪郭を設けることができる。
【0009】
本発明の一実施形態においては、空隙はその対向する両側面によって、クランプ・レバーのヘッドの付加部のための横方向ガイドを形成している。これにより、ヘッドは受け側レピアの長手方向を横切って案内され、場合によってはクランプ結合が外れてしまうかもしれない振動をこの横方向に起こすことができない。
【0010】
本発明の更なる実施形態においては、空隙は、少なくともクランプ面に近い領域では、長手方向リブと長手方向溝とで形成されたクランプ面の特殊輪郭の幅と基本的に対応するサイズを有する。
【0011】
本発明は、受け側レピアのためのフック型嵌込部材の製造方法にも関しており、その際、嵌込部材は、クランプ・レバーのヘッドの対向面に対するクランプ面を備えたアームと、クランプ・レバーのヘッドのための案内面を備えたアームとを有しており、この方法では、嵌込部材は空隙を有しており、その空隙を通って工具をクランプ面に到達させ、その工具でクランプ面に特殊輪郭が設けられる。
【0012】
嵌込部材にまず空隙を設けるこの方法では、工具を空隙を通ってクランプ面に到達させるので、クランプ面を加工するために比較的大きな工具を用いることが可能である。
【0013】
第1の実施形態では、クランプ面の特殊輪郭が回転研削工具によって作製されるようになっている。嵌込部材の空隙により、直径が比較的大きい回転研削工具を使用することができ、それでもなお工具はクランプ面に到達する。
【0014】
特に有利な一実施形態では、クランプ面の特殊輪郭は、放電加工装置の、クランプ面の長手方向に向いたワイヤによって作製されるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の更なる特徴および利点は、図面に示された実施形態についての以下の説明および従属請求項から明らかである。
【0016】
図1から図3に示した受け側レピア10は、基本的に針状のハウジング11を有しており、このハウジングの先端が、フック12として形成されている。ハウジング11中をクランプ・レバー13が案内され、このクランプ・レバーは駆動装置によって受け側レピア10の長手方向に移動可能である。駆動装置は、ハウジング11から突き出た作動レバー14から成り、この作動レバーは、軸15の周りを旋回可能である。作動レバー14とクランプ・レバー13は、作動レバーがハウジング11中に押し込まれたとき、作動レバーがクランプ・レバー13をハウジング11中へ引き込みフック12から引き離すように結合されている。クランプ・レバー13は、したがって作動レバー14も、クランプ・レバー13をフック12の方向に押している圧縮バネ16によって負荷をかけられている。
【0017】
フック12は、耐摩滅性の材料、特に鋼またはセラミックスから成る嵌込部材17を備えている。嵌込部材17は、比較的長いアーム18と、比較的短いアーム19とを有しており、これらのアームは、ほぼ半円形の末端部20を介して互いに結合されている。嵌込部材17の比較的長いアーム18の内側には、クランプ・レバー13のヘッド23の対向面22が到達可能なクランプ面21が設けられている。
【0018】
対向面22を、嵌込部材17のアーム18のクランプ面21に到達させるのは、クランプ・レバー13の長手方向の移動を、クランプ面21にほぼ垂直な移動に方向転換することによって行う。この方向転換は、嵌込部材17のアーム19の案内面24で行われ、この案内面に沿って、クランプ・レバー13のヘッド23の対向案内面25が摺動する。嵌込部材17のアーム19の案内面24、およびクランプ・レバー13のヘッド23の対向案内面25は、アーム18のクランプ面21およびヘッド23の対向面22に対して約30°の角度で延びている。アーム18のクランプ面21、およびクランプ・レバー13のヘッド23の対向面22は、互いに対応する特殊輪郭を備えており、この特殊輪郭が互いに噛み合う。この特殊輪郭は、長手方向溝26および長手方向リブ27から成っており、これらについては図4および図5に則して更に詳しく説明する。
【0019】
図4および図5から分かるように、嵌込部材17のアーム18のクランプ面21は、平行な長手方向溝26および長手方向リブ27から成る特殊輪郭を有しており、この溝およびリブには、ヘッド23のクランプ対向面22の特殊輪郭が対応して割り当てられている。クランプ面21に加工工具を到達可能にするために、嵌込部材のアーム18の向かい側にあるアーム19は、クランプ面21の長手方向に延びるスリット状の空隙28を有しており、この空隙が、アーム19を、したがって案内面24を、2つの部分に分割している。末端部20においても、空隙28がクランプ面21の高さまで延びている。空隙は、アーム19を2つの部分アーム34、35に分割している。
【0020】
加工工具は空隙28を通ってクランプ面に到達可能であり、その加工工具によって、長手方向溝26と、その間にある長手方向リブ27とを形成することができる。これは、図4に示されているように、放電加工によりワイヤ29で行うことが好ましい。このワイヤ29は放電加工装置の一部であり、長手方向溝26と、その間にある長手方向リブ27とを形成するために、空隙28を通り抜けてクランプ面21に到達させることができる。この作製により、末端部20に、長手方向溝26および長手方向リブに対応する特殊輪郭36ができるが、この特殊輪郭にクランプ機能はない。
【0021】
嵌込部材17は、まずその基本形状に作製する。これは、例えば焼結によって行う。その際、好ましくは超硬合金から成る粒の細かい粉末状の物質を基本本体に成形し、つまり物質の融点付近まで加熱して焼き固め、硬化させる。一変形実施形態では、嵌込部材17は、金属ブロックから、特に研削によって基本形状に加工する。更なる変形実施形態では、嵌込部材を、その基本形状に鋳造する。嵌込部材17の基本形状は、基本的にU字形の空隙41を有しており、この空隙は、両方のアーム18と19の間にあり、緯糸の進入方向に垂直に延びている。U字形の空隙41は、嵌込部材17の基本形状と一緒に作製される。クランプ・レバーのヘッドのための案内面24は、適切には研削によって形成される。
【0022】
空隙28を、嵌込部材17の基本形状中に既に設けておき、続いて好ましくは研削によって仕上げることができる。別の実施形態では、空隙28は、放電加工によりワイヤ29で、嵌込部材17の基本形状に加工される。同じワイヤ29での放電加工により、長手方向溝26および長手方向リブ27から成る特殊輪郭を形成する場合は、嵌込部材17の挟持を伴う1つの作業工程ですべての加工ステップが実施されるという利点が生じる。一変形実施形態では、比較的太いワイヤで嵌込部材17の基本形状中に空隙28を設け、これに続いて比較的細いワイヤ29で、長手方向溝26および長手方向リブ27を有する特殊輪郭を作製する。
【0023】
図5から分かるように、空隙28は、クランプ面21の領域で、つまり末端部20でだけ、アーム18のクランプ面21の幅に対応するサイズを有する。その他の領域では、空隙が半分未満にまで狭められている。放電加工装置のワイヤ29をクランプ面21に到達させるには、このような空隙28で十分である。クランプ面21の特殊輪郭、つまり長手方向溝26および長手方向リブ27を回転研削工具で作製する場合は、空隙28が、アーム19の領域においても、クランプ面21の幅に適合する、つまり両端の長手方向溝26の間隔に対応するサイズを有していなければならない。
【0024】
特に図2および図6で確認できるように、この例示的実施形態では、クランプ・レバー13のヘッド23は付加部30を備えており、この付加部は、嵌込部材17のアーム19における空隙28の両側面の間を案内される。これにより、たとえアーム18のクランプ面21およびヘッド23の対向面22の特殊輪郭が、まだ互いに噛み合っていなくても、ヘッド23は、クランプ・レバー13の長手方向を横切る移動から保護される。空隙28の側面は、ヘッド23の付加部30のための案内面42を形成している。
【0025】
図6に基づく例示的実施形態では、空隙28は、嵌込部材17を、フック12に対して位置合わせし固定するためにも使用される。フック12は突出部32を備えており、この突出部は、嵌込部材17をフック12に取り付ける際に、アーム19の部分アーム34、35の間の空隙28に嵌め込まれる。嵌込部材17はまた、フック12の下方部分31で支えられている。
【0026】
図7および図8に基づく実施形態では、クランプ・レバー43は長手方向に移動するのではなく、例えばWO 02/077343から既知であるように、回転軸48の周りでの回転運動のみを実施する。この実施形態の場合も、前述の例示的実施形態に対応する、2つのアーム18および19を含む嵌込部材が設けられる。この構造型式の場合も、アーム19は、空隙28によって2つの部分アーム34、35に分割されている。クランプ・レバー43のヘッド44は付加部45を備えており、この付加部は、図6に示された付加部30と同様に、空隙28の側面の間を案内される。図8に示されているように、クランプ・レバー43は、付加部45がアーム19の空隙28によって形成されたガイドから外れることなく、双方向矢印Aの方向に移動することができる。縁部46は、アーム19まで移動可能である。
【0027】
本発明は、示された例示的実施形態のみに限定されるものではない。特に、嵌込部材のアーム18のクランプ面21の特殊輪郭を、回転研削工具ではなく、放電加工装置によりワイヤ29で作製する場合、空隙28は、この例示的実施形態とは異なる形状を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】レピア織機用の本発明に基づく受け側レピアの部分図である。
【図2】閉じた状態でのフック型嵌込部材の領域における受け側レピアの拡大図である。
【図3】開いた状態での図2に対応する図である。
【図4】放電加工装置によって特殊輪郭を作製する際の嵌込部材の透視図である。
【図5】クランプ面の特殊輪郭の方向に見た嵌込部材を少し拡大した透視図である。
【図6】図2の線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】開いた状態での一変形実施形態の図1と同様の部分図である。
【図8】クランプ状態での図7に基づく実施形態の一変形形態を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 受け側レピア
11 ハウジング
12 フック
13 クランプ・レバー
14 作動レバー
15 軸
16 圧縮バネ
17 嵌込部材
18 アーム
19 アーム
20 末端部
21 クランプ面
22 対向面
23 ヘッド
24 案内面
25 対向案内面
26 長手方向溝、特殊輪郭
27 長手方向リブ、特殊輪郭
28 空隙
29 ワイヤ、工具
30 付加部
31 下方部分
32 突出部
34 アーム
35 アーム
41 空隙
43 クランプ・レバー
44 ヘッド
45 付加部
46 縁部
48 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ面にほぼ垂直に移動可能なクランプ・レバー(13、43)のヘッド(23、44)の対向面(22)に対するクランプ面(21)を備えたアーム(18)と、向かい側のアーム(19)とを有する、レピア織機用の受け側レピア(10)のためのフック型嵌込部材(17)において、前記嵌込部材(17)の前記アーム(18)の前記クランプ面(21)が特殊輪郭(26、27)を備えており、かつ前記嵌込部材(17)の前記向かい側のアーム(19)が空隙(28)を有しており、前記空隙を通って工具(29)が前記クランプ面(21)に到達可能であることを特徴とする嵌込部材。
【請求項2】
当該空隙(28)が、当該クランプ・レバー(13、43)の当該ヘッド(23、44)の付加部(30、45)のための横方向ガイドを形成していることを特徴とする請求項1に記載の嵌込部材。
【請求項3】
当該空隙(28)が、少なくとも当該クランプ面(21)に近い領域では、前記クランプ面(21)の、長手方向リブ(27)および長手方向溝(26)から形成された当該特殊輪郭の幅に基本的に対応するサイズを有することを特徴とする請求項1または2に記載の嵌込部材。
【請求項4】
当該空隙(28)が、当該向かい側のアーム(19)の領域では、当該アーム(18)の特殊輪郭を設けた当該クランプ面(21)の幅より狭い幅を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の嵌込部材。
【請求項5】
クランプ・レバー(13、43)のヘッド(23、44)の対向面(22)に対するクランプ面(21)を備えたアーム(18)と、向かい側のアームとを有する、レピア織機用の受け側レピア(10)のためのフック型嵌込部材(17)の製造方法において、前記嵌込部材(17)が空隙(28)を有しており、前記空隙を通って工具(29)が前記クランプ面(21)に到達し、前記工具によって前記クランプ面(21)に特殊輪郭(26、27)が加工されることを特徴とする方法。
【請求項6】
当該クランプ面(21)が、長手方向リブ(27)および長手方向溝(26)から成る特殊輪郭を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
当該クランプ面(21)の当該特殊輪郭を、回転研削工具で作製することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
当該クランプ面(21)の当該特殊輪郭を、放電加工装置の、前記クランプ面の長手方向に向けたワイヤ(29)で作製することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
当該空隙(28)を、放電加工によって設けることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
クランプ・レバー(13、43)のヘッド(23、44)の対向面(22)に対するクランプ面(21)を備えたアーム(18)と、向かい側のアーム(19)とを有するフック型嵌込部材(17)を備えた、レピア織機用の受け側レピアにおいて、前記フック型嵌込部材(17)が、請求項1から4の少なくとも一項に対応して形成されていることを特徴とする受け側レピア。
【請求項11】
当該受け側レピア(10)の基本本体が、当該嵌込部材(17)の当該空隙(28)中に食い込む少なくとも1つの突出部(32)を備えていることを特徴とする請求項10に記載の受け側レピア。
【請求項12】
当該クランプ・レバー(13、43)の当該ヘッド(23、44)が、当該嵌込部材(17)の当該空隙(28)中を案内される付加部(30、45)を備えていることを特徴とする請求項10または11に記載の受け側レピア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−534790(P2008−534790A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502268(P2008−502268)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001851
【国際公開番号】WO2006/099931
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505229818)
【Fターム(参考)】