説明

フットコントローラ装置

【課題】歯科用施術器具等に使用するエアーバルブの開度は、初期設定において前記ペダルの踏み込み量に応じて所定の開度特性が得られるように設定されていたが、検出器であるポテンショメータや歪みゲージおよび機械的部分が経年変化等によって特性が変わって、踏み込み量による前記初期設定されたエアーバルブの開度特性が変化するといった問題を解決する。
【解決手段】予め作成したペダルの踏み込み量に対するハンドピース等の施術器具を制御するための理想的な出力特性を作成しておき、経年変化等によって前記理想的な出力特性からずれた場合に、電源の投入時にペダルを踏み込まない状態での出力から自動的にゼロ点調整を行い、かつ、ペダルを踏み込んだ状態時における出力と前記予め設定した理想的な出力とを比較演算することで理想的な出力特性に補正する制御回路11からなることを特徴とするフットコントローラ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、例えば、歯科医療におけるハンドピースの回転数を制御するために、歯科医師がペダルを踏み込むことによって前記制御を行うフットコントローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科医療においてハンドピースの回転数をペダルの踏み込みによって変化させるフットコントローラ装置にあっては、該フットコントローラ装置のペダルを踏み込むことで回転して抵抗値が変化する抵抗ボリュームであるポテンショメータ、あるいは、押圧力を加えることで撓む歪曲板に取付けられた歪みゲージの抵抗値の変化を電圧や電流の値の変換してエアーバルブの開度を制御することで行っていた。
【特許文献1】特開平10−127660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記したエアーバルブの開度は、初期設定において前記ペダルの踏み込み量に応じて所定の開度特性が得られるように設定されていたが、検出器であるポテンショメータや歪みゲージおよび機械的部分が経年変化等によって特性が変わって、踏み込み量による前記初期設定されたエアーバルブの開度特性が変化するといった問題があり、また、機器毎に踏み込み量を設定することができないといった問題もあった。
【0004】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、検出器や機械的部分が経年変化等によって予め設定されている理想的な特性よりもずれた場合には、電源投入時に常にゼロ点調整が行われ、最高出力時の踏み込み量は使用者が設定を行い、従って、施術者による施術時においてフットペダルの好みの踏み込み量による施術器具の制御が常に一定となり、操作性の優れたフットコントローラ装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフットコントローラ装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、予め作成したペダルの踏み込み量に対するハンドピース等の施術器具を制御するための理想的な出力特性を作成しておき、電源の投入時に常にゼロ点調整を行い、かつ、ペダルを踏み込んだ状態時における出力と前記予め設定した理想的な出力とを比較演算することで理想的な出力特性に補正する制御回路とから構成し、経年変化等が発生しても理想的な出力特性からずれることがないようにしたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の手段は、予め作成したペダルの踏み込み量に対するハンドピース等の施術器具を制御するための理想的な出力特性を作成しておき、電源の投入時に常にゼロ点調整を行い、かつ、ペダルを踏み込んだ位置において最大値設定用スイッチを操作することで、該前記踏み込んだ位置において前記予め設定した理想的な出力となるように出力特性を補正する制御回路とから構成し、経年変化等が発生しても理想的な出力特性からずれることがなく、また、踏み込んだ位置において前記予め設定した理想的な出力とすることが可能なようにしたことを特徴とする。
【0007】
前記した請求項1または2において、前記演算を行う数式が(入力−MIN)/(MAX−MIN)であって、この演算結果に理想的な出力特性におけるオフセット値を加算することで理想的な出力特性に補正することを特徴とする。なお、前記数式における入力はペダルを踏み込んでいる位置での出力、MAXは最大出力を得るのに設定するペダルを踏み込んだ位置での出力、MINはペダルを踏み込まない状態の出力である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は前記したように、フットコントローラ装置の経年変化による、特性変化が生じても自動的に予め設定した理想的な特性に補正を行って、常に理想的な特性の下でハンドピース等の施術器具を制御して最適な状態で施術を行うことができ、かつ、品質のバラツキを吸収することができる。
【0009】
また、理想的な特性時における最大値に対する踏み込み位置を変更しても、該変更した踏み込み位置で理想的な特性の最大出力を得ることができるので、歯科医等の利用者の踏み込み癖に合わせた踏み込み位置で最大出力が得られ、従って、操作性の良いフットコントローラを作製できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、電源投入時に予め設定した理想的な特性からずれた場合に、自動的に前記理想的な特性となるように補正する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明に係るフットコントローラ装置の一実施例を図面と共に説明する。
図1〜図3は前記した公知の特許公報として紹介した特開平10−127660号公報に開示されているフットコントローラ本体にして、図1、図2において、1は床面に載置される基板、2は該基板1上に固定された取付板、3は該取付板2から起立された固定板、4は該固定板3からクランク状に折曲された弾性を有する歪曲板にして、先端に固定されたペダル5を押下することにより固定側水平部が歪曲される。
【0012】
6は前記歪曲板4における前記水平部4aの両面に固定された一対の歪みゲージにして、前記水平部4aが歪曲されるとそれぞれ抵抗値が変化する。7は前記歪曲板4の水平部を覆うカバーである。
【0013】
図3は前記したフットペダル5を踏み込んで固定側水平部4aを歪曲することにより、歪みゲージ6の抵抗値が変化することによってハンドピースの回転数制御を行うための回路について説明する。なお、図1、図2と同一符号は同一部材を示している。
【0014】
8は前記2個の歪みゲージ6が2辺に接続された抵抗ブリッジ回路、9は該抵抗ブリッジ回路8の抵抗値差分のみを増幅する作動増幅器、10は該作動増幅器9よりの出力を増幅するゲイン調整可能な増幅器、11は該増幅器10よりの出力からハンドピース等の施術器具を予め設定した特性(図4に示す実線の特性)で駆動させるための制御回路、12は歯科医等の利用者がペダル5を好みの踏み込み位置において最大出力とすることを希望する時に操作して制御回路11のメモリに最大出力となる踏み込み位置を記憶させるための最大値設定用スイッチである。
【0015】
以下、前記した構成に基づいて動作を説明する。
先ず、図4の実線で示す大多数の歯科医が施術器具を操作するのに理想的な特性aである。なお、図4において、横軸はペダル5の踏み込み量を示し単位は「mm」であり、縦軸は電気的な出力を示し単位は「V」である。そして、ペダル5を踏み込む前の最小出力を10と仮定し、最大の出力100は最大の踏み込み量より手前において得られ、かつ、それ以上の踏み込み量でも最大出力は変化せず、また、最小出力と最大出力の間を直線で結ばれる特性となっている。
【0016】
前記した理想的な特性aを得る動作を図3と共に説明するに、ペダル5を踏み込まない状態において出力が10、ペダル5を最大に設定する位置まで踏み込んだ状態において出力が100となり、かつ、それ以上の踏み込み量では出力が変化しないように制御回路11で演算し設定する。なお、前記ペダル5を最大に設定する位置まで踏み込んだ時の出力を100とし、また、ペダル5を踏み込まない状態での出力を10としているが、これは説明を簡単にするためであって実際には出力100は5V、出力10は0.5Vである。
【0017】
すなわち、ペダル5を踏み込まない状態における2個の歪みゲージ6の抵抗値が表裏で逆抵抗値として出力される。この時の抵抗値は抵抗ブリッジ回路8を介して作動増幅器9で差分電圧が出力され、この電圧は増幅器10で増幅される。なお、2つの歪みゲージ6を同一歪曲板4に固定することにより、温度変動による抵抗値の変化を相殺することができる。
【0018】
前記増幅器10よりの出力は該増幅器10に組み込まれているフィルタにおいてノイズが除去され、制御回路11に入力されるので、該入力された増幅器10よりの出力を10とする。次いで、ペダル5を最大に設定する位置(全ストロークの9割)まで踏み込んだ状態での増幅器10よりの出力を100となし、かつ、それ以降の踏み込み量では一定の出力となし、かつ、前記増幅器10よりの出力10〜200までの間を直線的となるように制御回路11で演算することで図4に示す理想的な特性aを得ると共に記憶しておく。
【0019】
前記したように理想的な特性aを初期設定としてフットコントローラ装置において、歪みゲージ6や機械的な要素が経年変化等によって理想的な特性aからずれた場合、すなわち、図4における特性bまたはcの如くずれた場合、特性bにあっては、電源の投入時にペダル5を踏み込まない状態で出力が高いので増幅器10よりの出力が大きくなって施術器具が駆動を開始し、かつ、ペダル5を最大位置まで踏み込んでも理想の最大出力まで達しない。一方、特性cにあっては、ペダル5を踏み込まない状態では出力が低いので施術器具が駆動されるようなことはないが、ペダル5を最大位置まで踏み込んだ場合には理想の最大出力よりも高くなって施術器具、例えば、ハンドピースが高速回転し施術に不適当な状態となったり、ハンドピースが破損したりする可能性がある。
【0020】
そこで、制御回路11は増幅器10よりの出力が理想的な特性aよりもずれた場合には特性aとなるように制御する。すなわち、ペダル5を踏み込まない位置での増幅器10よりの出力を「MIN」とし、また、ペダル5を最大に設定する位置まで踏み込んだ時の出力を「MAX」とし、さらに、ペダル5が現在踏み込まれている位置での出力を「入力」として下記の演算を行う。
ペダルの踏み込み加減=(入力−MIN)/(MAX−MIN)
【0021】
経年変化等によって理想的な特性aよりずれて特性bまたはcとなった場合について説明すると、
(入力−MIN)/(MAX−MIN)×(100−10)+10
上記計算された割合を、理想的な出力幅(ここでは、簡単にするために100−10=90とする)に演算し直し、それに理想最小出力の値を加えることで、理想的な出力を演算する。
【0022】
これにより、フットコントローラ装置の経年変化等によって理想的な特性aに対して実際の特性がb,cのようにずれても、理想的な特性aが得られ、最大出力を得る踏み込み位置も設定可能となり、また、踏み込まない状態での出力も補正がかかり、常に安定した状態での使用が可能となる。
【0023】
前記した説明では、経年変化等によって理想的な特性aからbあるいはcの如くずれた場合に、最大出力は理想的な特性aに示した特性となるように補正する場合を示したが、歯科医等の利用者によっては理想的な特性aにおける踏み込み量よりも小さな踏み込み量あるいは大きな踏み込み量で最大出力値を好む場合がある。
【0024】
そこで、本発明にあっては、図4の理想的な最大出力よりも小さな踏み込み量あるいは大きな踏み込み量で最大出力が得られるように、前記制御回路11のメモリをセットするためのスイッチ12を設け、前記利用者がペダル5を踏み込みながらこの踏み込み量で最大の出力を希望する時に、スイッチ12を操作することで、前記図4の特性図における特性aの最大に設定する位置(a)から最大に設定する位置(b)において最大出力が得られるように補正を行う。特性図における特性dは理想的な最大出力の踏み込み位置より小さな踏み込み位置で最大の出力が得られるように補正した場合を示している。
【0025】
なお、前記した実施例では歪みゲージ6によってペダル5の踏み込み量を検出する場合について説明したが、センサとして可変抵抗器を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フットコントローラ本体の平面図である。
【図2】同上の中央断面図である。
【図3】本発明のフットコントローラ装置の回路ブロック図である。
【図4】理想的な制御特性と該特性からずれた特性を示すペダルの踏み込み量に対する出力値を示す特性図である。
【符号の説明】
【0027】
5 ペダル
6 歪みゲージ
11 制御回路
12 最大値設定用スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め作成したペダルの踏み込み量に対するハンドピース等の施術器具を制御するための理想的な出力特性を作成しておき、電源の投入時に常にゼロ点調整を行い、かつ、ペダルを踏み込んだ状態時における出力と前記予め設定した理想的な出力とを比較演算することで理想的な出力特性に補正する制御回路とから構成し、経年変化等が発生しても理想的な出力特性からずれることがないようにしたことを特徴とするフットコントローラ装置。
【請求項2】
予め作成したペダルの踏み込み量に対するハンドピース等の施術器具を制御するための理想的な出力特性を作成しておき、電源の投入時に常にゼロ点調整を行い、かつ、ペダルを踏み込んだ位置において最大値設定用スイッチを操作することで、前記踏み込んだ位置において前記予め設定した理想的な出力となるように出力特性を補正する制御回路とから構成し、経年変化等が発生しても理想的な出力特性からずれることがなく、また、踏み込んだ位置において前記予め設定した理想的な出力とすることが可能なようにしたことを特徴とするフットコントローラ装置。
【請求項3】
前記演算を行う数式が
(入力−MIN)/(MAX−MIN)であって、
この演算結果に理想的な出力特性におけるオフセット値を加算することで理想的な出力特性に補正することを特徴とする請求項1または2記載のフットコントローラ装置。
なお、前記数式における
入力はペダルを踏み込んでいる位置での出力、
MAXは最大出力を得るのに設定するペダルを踏み込んだ位置での出力
MINはペダルを踏み込まない状態の出力
である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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