説明

フットサル用屋上施設

【課題】支点反力の低減により基礎を小型化かつ簡略化でき、かつ部材作用力の低減によって部材断面を縮小化でき、更に部材コストの低減等を図り得るフットサル用屋上施設を提供する。
【解決手段】フットサル施設1は、所定間隔で一方向に並んで配置された略門型形状の架構面材2,2…と、これら架構面材2,2…を繋ぐ複数列の連結材3,3…とからなり、これらの骨組構造にネット5を張設して構成されるとともに、前記架構面材2は、両側の柱部材2A、2Aと、柱部材2A、2Aの上部同士を繋ぐアーチ状梁部材2Bと、該アーチ状梁部材2Bの両側部同士を繋ぐタイバー4とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デパートなどの商業用ビル、大型スポーツ施設又はオフィスビルなどの屋上に設置されるフットサル用屋上施設に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のサッカーブームに伴い、フットサルの競技人口も徐々に増えつつある。フットサルは、基本的に室内で行われる5人制のサッカーで、欧州や南米では古くから行われているスポーツである。フィールドの広さが11人制サッカーの約1/9で済むため、場所の確保が容易であるなどの点からサッカー愛好者が11人制サッカーの代わりに楽しむようになってきている。
【0003】
フットサル用施設としては、例えば下記特許文献1に示されるように、競技場を囲むように、地盤に築造した基礎によって隅柱及び間柱を支持するとともに、前記隅柱及び間柱によってフェンスを支持させた構造の施設が設置される。また、下記特許文献2では、移動或いは設置・撤去を可能としたフットサル用フェンスが開示されている。このフットサル用フェンスは、フェンス全長を適宜分割した長さに相当する幅W1,W2を有する枠体と、この枠体に張設されたネットと、前記枠体の背面側に折り畳み可能に設けられた脚部とからなる施設である。
【0004】
ところで、近年はデパートなどの商業用ビルや大型スポーツ施設の屋上などにもフットサル用施設が幾つか設置されている。この場合は、屋上面に防水処理が成されているため、直接アンカーボルトを挿通することができない。従って、屋上面にコンクリート基礎を枠組み状に打設するか、枠組みした鋼材を設置し、これに隅柱及び間柱を支持させるとともに、これら隅柱間及び間柱間に天井梁部材を横架して骨組構造体を設け、前記隅柱及び間柱、天井梁部材にネットを支持させる構造(従来構造)が採用されている。
【特許文献1】特開平9−158548号公報
【特許文献2】特開平9−19527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来構造の場合は、門型のラーメン構造であるため、柱支点部では水平方向の力が大きく作用するとともに、曲げモーメントや撓みが大きく、これに対応するために部材断面が大きくすると、これに伴って支点反力が大きくなり、前記枠組みコンクリート基礎や枠組み鋼材が大きくなるなどの問題があった。また、部材断面が大きくなることによって部材コスト増を招く、更に競技フィールド内を枠組みコンクリート基礎又は枠組み鋼材が横断することになる場合は、競技フィールド(人工芝)面を屋上面から嵩上げしなければならず、この嵩上げ構造(例えば、硬質発泡樹脂ブロックなどの敷設)とするための費用が別途発生していた。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、支点反力の低減により基礎を小型化かつ簡略化でき、かつ部材作用力の低減によって部材断面を縮小化でき、部材コストの低減等を図り得るフットサル用屋上施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、所定間隔で一方向に並んで配置された略門型形状の架構面材と、これら架構面材を繋ぐ複数列の連結材とからなり、これらの骨組構造にネットを張設して構成されるとともに、前記架構面材は、両側の柱部材と、柱部材の上部同士を繋ぐアーチ状梁部材と、該アーチ状梁部材の両側部同士を繋ぐタイバーとから構成されていることを特徴とするフットサル用屋上施設が提供される。
【0008】
上記請求項1記載の本発明においては、前記架構面材と、これらを繋ぐ連結材とからなる骨組構造を採用するとともに、前記架構面材は、両側の柱部材と、柱部材の上部同士を繋ぐアーチ状梁部材と、該アーチ状梁部材の両側部同士を繋ぐタイバーとから構成するようにしてある。前記タイバーは、アーチ状梁部材による変形を拘束するとともに、外方向に作用する水平力を相殺し、支点部(基礎部)に作用する水平力を低減するため、部材断面を縮小化できるようになるとともに、基礎を小型化かつ簡略化できるようになる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記タイバーに所定の張力を導入してある請求項1記載のフットサル用屋上施設が提供される。
【0010】
上記請求項2記載の本発明においては、前記タイバーに対し、支点の水平反力が最小化されるように、所定の張力を導入するようにするものである。
【0011】
請求項3に係る本発明として、少なくとも前記フットサル用屋上施設の天井面において、前記架構面材群と、前記連結材群によって区画される各画成領域群の内、架構面材の部材方向の任意列及び架構面材の部材直交方向の任意列に対してブレースを設けてある請求項1、2いずれかに記載のフットサル用屋上施設が提供される。
【0012】
上記請求項3記載の本発明においては、少なくとも前記フットサル用屋上施設の天井面において、前記架構面材群と、前記連結材群によって区画される各画成領域群の内、架構面材の部材方向の任意列及び架構面材の部材直交方向の任意列に対してブレースを設けることにより、完全に籠状に保形された構造体としたため、地震力等に対して堅牢な構造体とすることが可能となる。
【0013】
請求項4に係る本発明として、前記架構面材の柱部材の下端にベースプレートを固設しておき、前記フットサル用屋上施設を屋上面に載置し、前記ベースプレート部分をモルタル又はコンクリートにより根巻きしてある請求項1〜3いずれかに記載のフットサル用屋上施設が提供される。
【0014】
上記請求項4記載の本発明においては、柱部材下端の基礎構造は、柱部材の下端にベースプレートを固設しておき、前記フットサル用屋上施設を屋上面に載置し、前記ベースプレート部分をモルタル又はコンクリートにより根巻きした構造体とするものである。本発明のフットサル用屋上施設の場合は、支点水平力の低減化又は最小化が成されているため、簡単な根巻き構造の基礎で構造上十分な支持力を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、支点反力の低減により基礎を小型化かつ簡略化でき、かつ部材作用力の低減によって部材断面を縮小化でき、更に部材コストの低減等を図り得るようになるため、屋上に設置されるフットサル施設として好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1はフットサルコートの平面図、図2はフットサル施設1の平面骨組図、図3はその横断面図、図4はその側面骨組図である。
【0017】
本形態例では、図1に示されるように、屋上に隣接して設置される2つのフットサルコートを囲むサイズ、具体的には平面寸法で30m×42mのフットサル施設について詳述する。
【0018】
フットサル施設1は、図2〜図4に示されるように、所定間隔で一方向に並んで配置された略門型形状の架構面材2,2…と、これら架構面材2,2…を繋ぐ複数列の連結材3,3…とからなり、これらの骨組構造にネット5を張設して構成されるものであり、間口30mの大スパンに対応させるために、前記架構面材2を、両側の柱部材2A、2Aと、柱部材2A,2Aの上部同士を繋ぐアーチ状梁部材2Bと、該アーチ状梁部材2Bの両側部同士を繋ぐタイバー4とから構成したものである。
【0019】
前記アーチ状梁部材2Bは、綺麗な曲線状でなくてもよく、例えば多角形状であってもよい。なお、本明細書では、多角形状の梁部材であっても、本アーチ状梁部材2Bの概念に統括されるものとする。前記タイバー4の設置位置は、フットサルの必要空間高として7m程度を確保するように設置する。構造的には、アーチ状梁部材2Bの端部同士を連結するように配設するのが最も効果が高いが、フットサル施設1の構造高が高くなるため、タイバー4の長さLがアーチ状梁部材2B全長Lの70%以上、好ましくは80%以上となるように配設するのが望ましい。
【0020】
また、本フットサル施設1では、図2に示されるように、少なくとも前記フットサル用屋上施設1の天井面において、前記架構面材群2,2…と、前記連結材3,3…群によって区画される各画成領域群の内、架構面材2の部材方向の任意列及び架構面材2の部材直交方向の任意列に対してブレース6,6…を設けるようにしている。具体的には、図2の平面骨組図及び図4の側面骨組図に示されるように、端部架構面材2と、これに隣接する次列の架構面材2との間の断面方向の各画成領域列にX状のブレース6、6を設けるとともに、前記架構面材2の部材直交方向に関しては、両側部分の画成領域列、図示例では図2の平面図における最側部列に、X状のブレース6、6を設けることにより、ブレース6を配設した画成領域を周方向に閉合させることにより、完全に籠状に保形された構造体としている。また、側面では、図5に示されるように、任意の画成領域、図示例では両端部では天井部から連続するように画成領域にX状のブレース6を設けるとともに、中間の画成領域にX状のブレース6を設け、保形された構造体としている。妻面となる端部架構面材2においては、図4に示されるように、間柱9,9を配設するとともに、上下2段に水平材10,10…を設け、任意の画成領域、図示例では中段及び下段の両端部画成領域にX状のブレース6,6を設け、保形された構造体としている。
【0021】
前記架構面材2を構成する柱部材2A、アーチ状梁部材2Bとしては、例えばH鋼材、角形鋼管、丸形鋼管などの比較的剛性の高い部材を好適に使用することができ、前記連結材3としては、例えば溝形鋼材、アングルなどの比較的剛性の低い部材を好適に使用することができる。さらに、前記タイバー4及びブレース6としては、丸棒、PC鋼棒などの棒材を好適に使用することができる。試算した構造計算では、前記柱部材2A、アーチ状梁部材2BはH-250*125*6*9のH鋼材、前記連結材3は2C-100*50*20*3.2〜2C-120*60*20*3.2の溝形鋼材、前記タイバー4はφ25mmの丸棒、前記ブレース6はφ19mmの丸棒の部材により構造耐力は十分であった。
【0022】
前記フットサル施設1は、デパートなどの商業用ビル、大型スポーツ施設又はオフィスビルなどの屋上に設置されるが、前記柱部材2Aの下端の納まりは、図6に示されるように、柱部材2Aの下端にベースプレート3aを固設しておき、前記フットサル用屋上施設1を屋上面に載置したならば、前記ベースプレート部分3aをモルタル又はコンクリート7により根巻きし設置を完了する。なお、図示例では、屋上面が防水層8Bと、モルタル表層8Aとから構成されているため、モルタル表層8Aをベースプレート3a寸法、若しくはこれより大きい寸法で窪み状に切り抜き、この窪み部分にベースプレート3aを設置した上で、モルタル又はコンクリート7により根巻きするようにしている。
【実施例】
【0023】
本発明に係るフットサル施設1の構造的効果を検証するため、本発明構造モデルと、梁をアーチ状部材のみとした比較構造モデル(その1)と、門型ラーメンの比較構造モデル(その2)とについて、夫々、死荷重時反力(鉛直反力及び水平反力)、死荷重時の曲げモーメント、死荷重時の変位(撓み)をフレーム解析により求めた。
【0024】
その結果を図7〜図9に示すとともに、下表1に纏めた。
【表1】

【0025】
表1から明らかなように、本発明構造モデルの場合は、水平反力を他のモデルケースに比べて大幅に低減できるようになるとともに、部材断面力を低減でき、さらに変位も大幅に抑制できることが判明している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フットサルコートの平面図である。
【図2】フットサル施設1の平面骨組図である。
【図3】その横断面図である。
【図4】その正面図である。
【図5】その側面骨組図である。
【図6】柱部材2Aの基部納まり構造を示す図である。
【図7】本発明構造モデルのフレーム解析結果を示す図である。
【図8】比較構造モデル(その1)のフレーム解析結果を示す図である。
【図9】比較構造モデル(その2)のフレーム解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1…フットサル施設、2…架構面材、2A…柱部材、2B…アーチ状梁部材、3…連結材、3a…ベースプレート、4…タイバー、5…ネット、6…ブレース、7…モルタル又はコンクリート、8A…モルタル表層、8B…防水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で一方向に並んで配置された略門型形状の架構面材と、これら架構面材を繋ぐ複数列の連結材とからなり、これらの骨組構造にネットを張設して構成されるとともに、前記架構面材は、両側の柱部材と、柱部材の上部同士を繋ぐアーチ状梁部材と、該アーチ状梁部材の両側部同士を繋ぐタイバーとから構成されていることを特徴とするフットサル用屋上施設。
【請求項2】
前記タイバーに所定の張力を導入してある請求項1記載のフットサル用屋上施設。
【請求項3】
少なくとも前記フットサル用屋上施設の天井面において、前記架構面材群と、前記連結材群によって区画される各画成領域群の内、架構面材の部材方向の任意列及び架構面材の部材直交方向の任意列に対してブレースを設けてある請求項1、2いずれかに記載のフットサル用屋上施設。
【請求項4】
前記架構面材の柱部材の下端にベースプレートを固設しておき、前記フットサル用屋上施設を屋上面に載置し、前記ベースプレート部分をモルタル又はコンクリートにより根巻きしてある請求項1〜3いずれかに記載のフットサル用屋上施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−122546(P2006−122546A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317603(P2004−317603)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(303026350)有限会社洋テック (3)
【出願人】(501406912)アシストインターナショナル株式会社 (4)