説明

フッ化カルボニルを用いた含フッ素環状エステルの製造方法

【課題】モノフルオロ化反応により効率的に含フッ素環状エステルへと誘導する方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるケトアルコール又はケトチオールを塩基存在下、フッ化カルボニルと反応させることを特徴とする、下記一般式(2)で示される含フッ素環状エステルの製造方法。


[式中の置換基R1〜R5はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2基の何れかを示す。Yは酸素又は硫黄原子を示し、nは0から6の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の電解液溶媒及び添加剤、機能性材料中間体、医薬品用中間体及び有機溶剤等に使用が期待される含フッ素環状エステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の電解液は、一般には電解質と有機溶媒から構成されており、有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートに代表される環状炭酸エステルと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートに代表される鎖状炭酸エステル、又は、γ−ブチロラクトン等の混合物から構成される場合が多い。しかしながら、こうした有機溶媒は、その使用温度範囲、粘度、電気化学的な安定性等に問題がある。そこで、このような問題を解決する手段として、上述の有機化合物にフッ素原子を導入してそれらの問題の改善を試みる検討が行われている。
【0003】
中でもモノフッ素化はパーフルオロ化と比較して大きく極性を変化させることから、誘電率、粘度、密度等の物性を大きく変化させると考えられている(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
モノフルオロ環状炭酸エステルの例としては、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-クロロ-5-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐メチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐メチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-クロロ‐5-フルオロ‐5‐メチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(フルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(フルオロメチル)-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(フルオロメチル)-5,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(1-フルオロエチル))-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(1-フルオロプロピル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(1-フルオロブチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐エチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4,5‐ジメチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐エチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐プロピル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐プロピル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐ブチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐ブチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐ペンチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐ペンチル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐ヘキシル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐ヘキシル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐4‐フェニル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ‐5‐フェニル‐1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-1,3-ジオキサン-2-オン等がこれまでに報告されている。
【0005】
上記のようなモノフルオロ化合物を合成する方法としては、フッ素を含まない化合物に対してフッ素化剤を用い直接フッ素化する方法と、あらかじめフッ素を含む最小構成単位の出発物質を化学変換する方法(合成ブロック法)の2通りがある。
【0006】
そのうち直接フッ素化する方法としては、1:ハロゲン交換反応、2:フッ素ガスを用いた直接フッ素化反応、3:電解フッ素化反応等が知られている。
【0007】
ハロゲン交換反応では、例えば4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オンは、相当する塩素化体をフッ化カリウムでフッ素化する方法が報告されているが、一般に高い反応温度、長い反応時間を要する場合が多い(特許文献1参照)。
【0008】
フッ素ガスを用いた直接フッ素化反応の場合、例えば、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、トランス-4,5-ジフルオロ−1,3−ジオキソラン-2-オン等が、フッ素ガスと1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネートとも呼ばれる)との反応により得られたことが報告されている(特許文献2、3及び4参照)。
【0009】
一方、γ-ブチロラクトンをフッ素ガスによりフッ素化した場合、目的生成物の選択性は非常に低く、γ-フルオロ-γ-ブチロラクトン以外に数種類のモノフルオロ化体が得られ、それら混合物から目的のモノフルオロ化体を単離精製することは非常に困難である(非特許文献3及び5参照)。
【0010】
また、ジメチルカーボネートをフッ素ガスでフッ素化した場合、モノフルオロ化体であるフルオロメチル−メチルカーボネートの他に、ジフルオロ化体やトリフルオロ化体であるビス(フルオロメチル)カーボネート及びフルオロメチル−ジフルオロメチルカーボネート等が副生するため、精製が非常に困難となる(特許文献6参照)。
【0011】
このように、フッ素ガスを用いた直接フッ素化反応による方法では、モノフルオロ環状炭酸エステルを高選択的に得ることは困難である。
【0012】
また、電解フッ素化法としては、環状炭酸エステルやラクトン、鎖状炭酸エステル、環状エーテルのモノフルオロ化が報告されている。しかし、この方法では非常に高価な白金電極を使用する必要があることや、電解時に電極がイオン化し溶出してしまうこと等から、コストや設備設計の面において課題が残されている (特許文献7及び8並びに非特許文献4参照)。
【0013】
また、合成ブロック法としては、フッ素置換メチル基含有プロピレングリコールと、炭酸ジメチル等の鎖状炭酸エステルとのエステル交換により、フッ素置換メチル基を持つ環状炭酸エステル類の合成が報告されている(特許文献9参照)。しかし、水酸基と同一炭素に有るフッ素原子を持つ化合物は非常に不安定であるため、この方法では炭酸エステルの環内部にフッ素を持つ環状炭酸エステル類は合成することは不可能である。
【0014】
また、フッ化カルボニルとビアセチル又は2,3-ペンタンジオンから4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン又は4,5-ジフルオロ-4-エチル-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オンを得る方法が知られている(非特許文献5参照)。しかしながら、この方法で得られる生成物はジフルオロ環状炭酸エステルであり、モノフルオロ環状炭酸エステルを得る方法は未だ報告されていない。
【0015】
【特許文献1】国際公開第98/15024号パンフレット
【特許文献2】特開2000-309583号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0167279A1号明細書
【特許文献4】特開2000-344763号公報
【特許文献5】特開2001-226367号公報
【特許文献6】特開2004-10491号公報
【特許文献7】特開2006-1843号公報
【特許文献8】特開2003-73873号公報
【特許文献9】特開平10-233345号公報
【非特許文献1】Electrochemistry, 76, p.2 (2008).
【非特許文献2】Chem.Lett.,37, No.4, p.476 (2008).
【非特許文献3】J. Fluorine Chem., 108, p.107, (2001).
【非特許文献4】Tetrahedron Lett., 43, p.1502, (2002).
【非特許文献5】J. Am. Chem. Soc., 84, p.4275, (1962).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決し、モノフルオロ化反応により効率的に含フッ素環状エステルへと誘導する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、モノフルオロ化反応により含フッ素環状エステルを簡便に得る目的で鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0018】
[1]下記一般式(1)で示されるケトアルコール又はケトチオールを塩基存在下、フッ化カルボニルと反応させることを特徴とする、下記一般式(2)で示される含フッ素環状エステルの製造方法。
【化1】

【化2】

[式中の置換基R1〜R5は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R1〜R5はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2 基の何れかを示す。また、置換基R1〜R5のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基R1〜R5に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に、又は、CN基若しくはNO2基によって部分的に置換できる。また、これらの置換基R1〜R5に含まれる炭素原子は、-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, -SO2-, -SO3-, -N=, -N=N-, -NR'-, -N(R')2, -PR'-,-P(O)R'-, -P(O)R'-O-, -O-P(O)R'-O-, 及びP(R')2=N-の群から選択した原子、及び/又は、原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基、又はハロゲン原子によって部分的若しくは完全に置換されたアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は、非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す)。Yは酸素又は硫黄原子を示し、nは0から6の整数である。]
【0019】
[2]下記一般式(3)で示されるケトアルコール又はケトチオールを塩基存在下、フッ化カルボニルと反応させることを特徴とする、下記一般式(4)で示される含フッ素環状エステルの製造方法。
【化3】

【化4】

[式中の置換基R6〜R10は、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R6〜R10はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2基の何れかを示す。また、置換基R6〜R10のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基R6〜R10に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に、又は、CN基若しくはNO2 基によって部分的に置換できる。また、これらの置換基R6〜R10に含まれる炭素原子は、-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, -SO2-, -SO3-,-N=, -N=N-,-NR'-, -N(R')2, -PR'-,-P(O)R'-, -P(O)R'-O-, -O-P(O)R'-O-, 及びP(R')2=N-の群から選択した原子、及び/又は、原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基、又はハロゲン原子によって部分的若しくは完全に置換されたアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は、非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す)。Zは酸素又は硫黄原子を示し、mは0から6の整数である。]
【0020】
[3]使用する塩基が、有機塩基であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【0021】
[4]前記有機塩基が、環状アミンであることを特徴とする、前記[3]に記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【0022】
[5]前記一般式(1)及び(2)中の置換基R1〜R5が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2 基の何れかを示す、前記[1]に記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【0023】
[6]前記一般式(1)及び(2)中の置換基R1〜R5が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、C1〜C20の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基又はアルコキシ基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、又は、アリール基の何れかを示す、前記[1]に記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、特定のケトアルコール又はケトチオールを塩基触媒の存在下でフッ化カルボニルと反応させることにより、モノフルオロ化反応が進行し、含フッ素環状エステルを、容易且つ高選択的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。

先ず、本発明に係る前記一般式(1)〜(4)で示される化合物について説明する。
【0026】
本発明に係る前記一般式(1)及び(2)で示される化合物としては、前記一般式(1)及び(2)中の置換基R1〜R5が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2基の何れかである化合物が好ましい。
【0027】
また、前記一般式(1)中のR1〜R5が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、C1〜C20の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基又はアルコキシ基、又は、アリール基である化合物が入手の容易さやフッ化カルボニルとの副反応の起こりにくさの観点から更に好ましい。
【0028】
また、置換基R1〜R5は、任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基Rに含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に、或いは、CN基、又は、NO2基によって部分的に置換された物であってもよい。また、これらの置換基Rに含まれる炭素原子は、-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, -SO2-, -SO3-, -N=, -N=N-, -NR'-, -N(R')2, -PR'-,-P(O)R'-, -P(O)R'-O-, -O-P(O)R'-O-, 及びP(R')2=N-の群(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、又はハロゲン原子によって部分的若しくは完全に置換されたアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は、非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す)から選択した原子、及び/又は、原子団によって置換された物であってもよい。
【0029】
また前記一般式(1)及び(2)中のYは酸素又は硫黄原子を示し、nは 0から6の整数が好ましく、0若しくは1が更に好ましい。
【0030】
本発明の前記一般式(3)及び(4)で示される化合物としては、前記一般式(3)及び(4)中の置換基R6〜R10が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2 基である化合物が好ましい。
【0031】
また、前記一般式(3)及び(4)中のR6〜R10が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、C1〜C20の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基又はアルコキシ基、又は、アリール基である化合物が入手の容易さやフッ化カルボニルとの副反応の起こりにくさの観点から、更に好ましい。
【0032】
また、置換基R6〜R10は、任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基Rに含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に、或いは、CN基、NO2基によって部分的に置換された物であってもよい。また、これらの置換基Rに含まれる炭素原子は、-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, -SO2-, -SO3-, -N=, -N=N-, -NR'-, -N(R')2, -PR'-,-P(O)R'-, -P(O)R'-O-, -O-P(O)R'-O-, 及びP(R')3=N-の群(ここで、R'はC1 〜C10の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、又はハロゲン原子によって部分的若しくは完全に置換されたアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は、非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す)から選択した原子及び/又は原子団によって置換された物であってもよい。
【0033】
また、前記一般式(3)及び(4)中のZは、酸素又は硫黄原子を示し、mは0〜6の整数が好ましく、0若しくは1が更に好ましい。
【0034】
上記C1〜C30のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デカニル、n-ドデカニル等の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基を挙げることができる。
【0035】
上記C2〜C30のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、クロチル基、ゲラニル基等の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基を挙げることができる。
【0036】
上記C2〜C30のアルキニル基としては、CH≡C−、CH≡C−CH2−、CH≡C-CH2−CH2−、CH3−C≡C−CH2−等の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基を挙げることができる。
【0037】
上記シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等を挙げることができる。また、該シクロアルキル基は、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等の部分的に若しくは完全に不飽和の結合を有するものも含み、又ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に置換でき、或いは、CN基、又は、NO2基によって部分的に置換できる。
【0038】
上記アリール基としては、フェニル、クメニル、メシチル、トリル、キシリル基等(これらのアリール基にはアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アシル基、ホルミル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基並びにハロゲン原子を、一個又は複数個含有していてもよい)を挙げることができる。
【0039】
上記複素環基としては、ピロジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラロゾリジニル、ピラゾニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チエニル基等を挙げることができる。また、これらの複素環基にはアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基並びにハロゲン原子を、一個又は複数個含有していてもよい。
【0040】
上記ハロゲン原子としては、F、Cl、Br及びIを挙げることができる。
【0041】
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。
【0042】
上記置換基R1〜R5が共同で形成してもよい環状構造としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環等を挙げることができる。

次に、本発明の含フッ素環状エステルの製造方法について説明する。
【0043】
本発明の前記一般式(2)又は(4)で表わされる含フッ素環状エステルは、前記一般式(1)若しくは(3)で表わされるケトアルコール又はケトチオ―ルと、フッ化カルボニルとを、加熱下で且つ加圧下で、塩基触媒の存在下に接触させることにより、製造することができる。
【0044】
本発明の製造方法において、フッ化カルボニルの量は、前記一般式(1)若しくは(3)で表わされるケトアルコール又はケトチオ―ルに対して、0.1〜10当量が好ましく、特に1.0当量が最も好ましい。
【0045】
触媒となる塩基としては、例えば、芳香族窒素化合物、脂肪族窒素化合物等の有機塩基が挙げられる。具体的には、芳香族窒素化合物として、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、ピリミジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、2,6-ルチジン等を挙げることができ、脂肪族窒素化合物として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン等を挙げることができる。本発明の製造方法としては、環状アミン化合物が好ましく、特にピリジン及びピリジン誘導体が最も好ましい。
【0046】
触媒となる塩基の添加量は、前記一般式(1)若しくは(3)で表わされるケトアルコール又はケトチオ―ルに対して、0.01〜100mol%が好ましく、特に0.05〜10mol%が最も好ましい。添加量が0.01mol%未満だと反応の進行が遅く、100mol%を超えると副反応を起こし、精製が困難となる。
【0047】
本発明の製造方法における反応は、溶媒存在下に行ってもよく、反応溶媒としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、及びエーテル系溶媒等を用いることができ、特にハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、その中でも塩化メチレンやクロロホルムが最も好ましい。また、この反応は無溶媒系でも行うこともできる。
【0048】
本発明の製造方法で用いられる反応器は、耐圧性の容器が好ましく、その中でもステンレス製オートクレーブが最も好ましい。
【0049】
本発明の製造方法では、フッ化カルボニル導入時の反応系内の温度は-100〜30℃の範囲であることが好ましく、-100〜-50℃の範囲であることが更に好ましい。-100℃未満だと工業的な方法として実用的でなく、30℃を超えるとガスの導入が困難である。またフッ化カルボニルを導入後の、環化反応時の反応系内の温度は、0〜200℃の範囲であることが好ましく、30〜100℃の範囲であることが更に好ましい。0℃未満だと環化反応が進行しにくく反応時間を要し、200℃を超えると生成物自体の分解を起こす可能性がある。
【0050】
反応圧力は、通常、常圧〜10MPaの範囲で行うことができるが、0.1〜5MPaの範囲で行うことが好ましい。使用できる反応器の汎用性と安全性の面から10MPa以上での反応は実際的ではない。
【0051】
反応時間は、通常0.1〜100時間の範囲で行うことができるが、1〜24時間の範囲で行うことが好ましい。100時間を超える長時間の反応は実際的でない。
【0052】
上記の反応終了後は、直接蒸留精製、又は、反応終了液を水若しくはアルカリ金属の無機塩基、例えば炭酸水素ナトリウム等の水溶液に流し込み、有機溶媒、例えば、塩化メチレン等により抽出することにより粗生成物を得ることができる。必要に応じて蒸留、再結晶等により更に高い化学純度に精製することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明の製造方法を具体的に説明するが、本発明の製造方法はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0054】
<実施例1> 4-フルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(1)の製造
【化5】

【0055】
500mLオートクレーブに、ヒドロキシアセトン(東京化成製;70g, 0.94mol)、ピリジン(15mL)、塩化メチレン(40mL)を仕込み、液体窒素により-100℃に冷却してボンベよりフッ化カルボニル(65 g, 0.98mol)を導入した。昇温して室温に戻した後、器内温度70℃で22時間加熱した(圧力は0.6MPaまで上昇)。加熱を止め、圧力を常圧に戻してオートクレーブ中より黒色液体を得た。
【0056】
得られた黒色液体に塩化メチレン150mLと水100mLを加え分液した。さらに有機溶媒相を飽和重曹水100mLで2回洗浄し、硫酸マグネシウム25gを加えて乾燥した。溶媒を留去し黒色液体を93.4g得た。この液体を蒸留(64〜66℃, 0.8kPa)して透明液体1-1(81.3g, 0.68mol)を得た。収率は72%であった。得られた透明液体1-1は、以下に示す本留の機器分析データーにより目的物であることが確認された。
【0057】
1H-NMR(300MHz, 基準物質:Me4Si, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:1.84(d, 3H, J=17.1), 4.33(dd, 1H, J=10.2, 30.6), 4.57(dd, 1H, J=10.2, 17.1)
19F-NMR(282MHz, 基準物質:CFCl3, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:-92.47(double quintet, J= 30.6, 17.3)
【0058】
<実施例2> 4-フルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(1)の製造
500mLオートクレーブに、ヒドロキシアセトン(東京化成製;52.2g, 0.705mol)、ピリジン(6.0mL)を仕込み、液体窒素により-100℃に冷却してボンベよりフッ化カルボニル(52g, 0.788mol)を導入した。昇温して室温に戻した後、器内温度100℃で24時間加熱した(圧力は0.6MPaまで上昇)。加熱を止め、圧力を常圧に戻してオートクレーブ中より黒色液体95.0g)を得た。
【0059】
得られた黒色液体に塩化メチレン150mLと水100mLを加え分液した。さらに有機溶媒相を飽和重曹水100mLで2回洗浄し、硫酸マグネシウム25gを加えて乾燥した。溶媒を留去し黒色液体を72.0g得た。この液体を蒸留(70〜72℃, 1.0kPa)して透明液体1-2(48.7g, 0.575mol)を得た。収率は57%であった。得られた透明液体1-2は、実施例1と同様の機器分析データーにより目的物であることが確認された。
【0060】
<実施例3> 4-フルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(2)の製造
【化6】

【0061】
500mLオートクレーブに、アセトイン(東京化成製;74.3g, 0.843mol)、ピリジン(12.0mL)、塩化メチレン(40mL)を仕込み、液体窒素により-100℃に冷却してボンベよりフッ化カルボニル(54g, 0.818mol)を導入した。昇温して室温に戻した後、器内温度60℃で12時間加熱した(圧力は0.6 MPaまで上昇)。加熱を止め、圧力を常圧に戻してオートクレーブ中より黒色液体(182g)を得た。
【0062】
得られた黒色液体に塩化メチレン150mLと水120mLを加え分液した。さらに有機溶媒相を飽和重曹水100mLで2回洗浄しさらに飽和塩水100mLで洗浄した。有機相へ硫酸マグネシウム:25gを加えて乾燥した。溶媒を留去し黒色液体を119.4g得た。この液体を蒸留(64〜66℃, 0.6kPa)して透明液体2(86.4g, 0.644mol)(trans/cis=1.0/0.15)を得た。収率は76%であった。得られた透明液体2は、以下に示す本留の機器分析データーにより目的物であることが確認された。
【0063】
2-trans
1H-NMR(300MHz, 基準物質:Me4Si, 重溶媒:CDCl3), δ ppm: 1.50(dd, 3H, J=2.1,6.6), 1.76(d, 3H,J= 17.7), 4.59(dq, 1H, J= 21.3, 6.6)
19F-NMR(282MHz, 基準物質:CFCl3, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:-110.85(m, 1F)
2-cis
1H-NMR(300MHz, 基準物質:Me4Si, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:1.41(d, 3H, J=6.9), 1.72(d, 3H, J= 18.3), 4.79(dq, 1H, J= 17.7, 6.9)
19F-NMR(282MHz, 基準物質:CFCl3, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:-88.74(quintet, 1F, J= 18.3)
【0064】
<実施例4> 4-フルオロ-4,5,5-トリメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(3)の製造
【化7】

【0065】
500mLオートクレーブに、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン(東京化成製;24.5g, 0.239mol)、ピリジン(5.0mL)、塩化メチレン(30mL)を仕込み、液体窒素により-100℃に冷却してボンベよりフッ化カルボニル(20g, 0.303mol)を導入した。昇温して室温に戻した後、器内温度37℃で11時間加熱した(圧力は0.2 MPaまで上昇)。加熱を止め、圧力を常圧に戻してオートクレーブ中より黒色液体を得た。
【0066】
得られた黒色液体に塩化メチレン70mLと水50mLを加え分液した。さらに有機溶媒相を飽和重曹水50mLで洗浄しさらに水50mLで洗浄した。有機相へ硫酸マグネシウム15gを加えて乾燥した。溶媒を留去し白黄色固体を32.2g得た。この液体をヘキサン-エーテルにより再結晶して白色固体3(20.6g, 0.138mol)を得た。収率は58%であった。得られた白色固体3は、以下に示す結晶の機器分析データーにより目的物であることが確認された。
【0067】
3
1H-NMR(基準物質:Me4Si, 重溶媒:CDCl3), δ ppm: 1.46(s, 3H), 1.54(d, 3H, J= 3.0), 1.69(d, 3H, J= 18.6)
19F-NMR(基準物質:CFCl3, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:-103.38(qq, 1F, J= 18.6, 3.0)
【0068】
<実施例5> 4-フルオロ-4,5-ジフェニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(4)の製造
【化8】

【0069】
500mLオートクレーブに、ベンゾイン(東京化成製;25.0g, 0.118mol)、ピリジン(5.0mL)、塩化メチレン(20mL)を仕込み、液体窒素により-100 ℃に冷却してボンベよりフッ化カルボニル(12g, 0.181 mol)を導入した。昇温して室温に戻した後、器内温度56 ℃で12時間加熱した(圧力は0.3 MPaまで上昇)。加熱を止め、圧力を常圧に戻してオートクレーブ中より黒色液体を得た。
【0070】
得られた黒色液体に塩化メチレン150mLと水100mLを加え分液した。さらに有機溶媒相を飽和重曹水100mLで2回洗浄した。有機相へ硫酸マグネシウム20gを加えて乾燥した。溶媒を留去し白黄色固体を30g得た。この液体をヘキサン―塩化メチレンにより再結晶して白色固体4(5.0g, 0.019mol)(trans体のみ)を得た。収率は16%であった。得られた白色固体4は、以下に示す結晶の機器分析データーにより目的物であることが確認された。
【0071】
4-trans
1H-NMR(300MHz, 基準物質:Me4Si, 重溶媒:CDCl3), δ ppm: 5.60(d, 1H, J=21.3), 7.2-7.7(m, 10H)
19F-NMR(282MHz, 基準物質:CFCl3, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:-112.66(d, 1F, J= 21.3)
【0072】
<実施例6> 4-フルオロ-4-メチル-4H-1,3-ベンゾジオキシン-2-オン(5)の製造
【化9】

【0073】
500mLオートクレーブに、2'-ヒドロキシアセトフェノン(東京化成製;25.0g, 0.183mol)、ピリジン(5.0mL)、塩化メチレン(20mL)を仕込み、液体窒素により-100℃に冷却してボンベよりフッ化カルボニル(14g, 0.21mol)を導入した。昇温して室温に戻した後、器内温度50℃で14時間加熱した(圧力は0.2MPaまで上昇)。加熱を止め、圧力を常圧に戻してオートクレーブ中より黄色液体を得た。
【0074】
この液体を蒸留(102〜104℃, 0.1kPa)して透明液体5(18.2g, 0.099mol)を得た。収率は54%であった。得られた透明液体5は、以下に示す本留の機器分析データーにより目的物であることが確認された。
【0075】
5
1H-NMR(300MHz, 基準物質:Me4Si, 重溶媒:CDCl3), δ ppm: 2.12(d, 3H, J=17.2), 7.2-7.7(m, 5H)
19F-NMR(282MHz, 基準物質:CFCl3, 重溶媒:CDCl3), δ ppm:-69.43(q, 1F, J= 17.2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるケトアルコール又はケトチオールを塩基存在下、フッ化カルボニルと反応させることを特徴とする、下記一般式(2)で示される含フッ素環状エステルの製造方法。
【化1】

【化2】

[式中の置換基R1〜R5は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R1〜R5はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2 基の何れかを示す。また、置換基R1〜R5のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基R1〜R5に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に、又は、CN基若しくはNO2基によって部分的に置換できる。また、これらの置換基R1〜R5に含まれる炭素原子は、-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, -SO2-, -SO3-, -N=, -N=N-, -NR'-, -N(R')2, -PR'-,-P(O)R'-, -P(O)R'-O-, -O-P(O)R'-O-, 及びP(R')2=N-の群から選択した原子、及び/又は、原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基、又はハロゲン原子によって部分的若しくは完全に置換されたアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は、非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す)。Yは酸素又は硫黄原子を示し、nは0から6の整数である。]
【請求項2】
下記一般式(3)で示されるケトアルコール又はケトチオールを塩基存在下、フッ化カルボニルと反応させることを特徴とする、下記一般式(4)で示される含フッ素環状エステルの製造方法。
【化3】

【化4】

[式中の置換基R6〜R10は、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R6〜R10はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2基の何れかを示す。また、置換基R6〜R10のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基R6〜R10に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的に若しくは完全に、又は、CN基若しくはNO2 基によって部分的に置換できる。また、これらの置換基R6〜R10に含まれる炭素原子は、-O-, -C(O)-, -C(O)O-, -S-, -S(O)-, -SO2-, -SO3-, -N=, -N=N-,-NR'-, -N(R')2, -PR'-,-P(O)R'-, -P(O)R'-O-, -O-P(O)R'-O-, 及びP(R')2=N-の群から選択した原子、及び/又は、原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基、又はハロゲン原子によって部分的若しくは完全に置換されたアルキル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換若しくは置換されたフェニル基、又は、非置換若しくは置換されたヘテロシクルスを示す)。Zは酸素又は硫黄原子を示し、mは0から6の整数である。]
【請求項3】
使用する塩基が、有機塩基であることを特徴とする、請求項1又は2記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【請求項4】
前記有機塩基が、環状アミンであることを特徴とする、請求項3記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【請求項5】
前記一般式(1)及び(2)中の置換基R1〜R5が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、H原子、C1〜C30の直鎖状又は側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一若しくは複数の二重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一若しくは複数の三重結合を持つ直鎖状又は側鎖を有するアルキニル基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、CN基、又は、NO2 基の何れかを示す、請求項1記載の含フッ素環状エステルの製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)及び(2)中の置換基R1〜R5が、互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い、C1〜C20の直鎖状若しくは側鎖を有するアルキル基又はアルコキシ基、飽和又は部分的に若しくは完全に不飽和のシクロアルキル基、又は、アリール基の何れかを示す、請求項1記載の含フッ素環状エステルの製造方法。

【公開番号】特開2010−126477(P2010−126477A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302095(P2008−302095)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】