説明

フッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルの製造

式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2(式中、nは2〜5である)のフッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルを製造する方法であって:a)
【化1】


をフッ素化して、FSO2−(CF2(n-1)−COFを生成するステップ;b)FSO2−(CF2(n-1)−COFをヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と反応させて、FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを生成するステップ;c)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを金属カチオンM+p(pはMの原子価である)の塩と反応させて、(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを生成するステップ;およびd)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを熱分解して、FSO2−(CF2(n)−O−CF=CF2を生成するステップを含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂の合成において重要な種類のモノマーである、式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2(式中、nは2〜5である)のフッ化スルホニルを有する過フッ化ビニルエーテルを製造するための4ステップ法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,749,526号明細書には、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化ルビジウムおよび臭化ルビジウムから選択される少なくとも1種類の触媒の存在下にて、フッ化カルボニル化合物をヘキサフルオロプロピレンオキシドと反応させることによる、フルオロ脂肪族エーテル含有フッ化カルボニルの製造が開示されている。
【0003】
米国特許第5,902,908号明細書には、溶媒の非存在下で、フッ化カルボン酸ハロゲン化物を金属化合物と、相当する金属塩の分解温度未満で反応させ、次いで生成された相当する金属塩の温度を分解温度を超える温度に上げることによって、フッ化ビニルエーテルを製造する方法が開示されている。
【0004】
米国特許第6,255,536号明細書には、式CF2=CF−O−Rf(式中、Rfが、酸素原子を含有し、それによって更なるエーテル結合を形成し得る、直鎖状、分枝鎖もしくは環状の過フッ素化脂肪族基である)の過フッ化ビニルエーテルの製造方法が開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔には、本発明は、式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2(式中、nは2〜5である)のフッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルを製造する方法であって:a)
【化1】

をフッ素化して、FSO2−(CF2(n-1)−COFを生成するステップ;b)FSO2−(CF2(n-1)−COFをヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と反応させて、FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを生成するステップ;c)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを金属カチオンM+p(pはMの原子価である)の塩と反応させて、(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを生成するステップ;およびd)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを熱分解して、FSO2−(CF2(n)−O−CF=CF2を生成するステップを含む方法を提供する。
【0006】
本発明の利点は、nが2〜5の場合、特にnが4の場合に固有に適応された、式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2のフッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルを製造するための簡便かつ効率的な方法を提供することである。これらの種はイオン交換樹脂の合成において重要なモノマーである。本発明の更なる利点は、式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2(nは2〜5である)のフッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルの製造方法であって、危険および困難を伴うテトラフルオロエチレン(TFE)の使用が必要ない方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
簡潔には、本発明は、式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2(式中、nは2〜5である)のフッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルを製造する方法であって、
a)
【化2】

をフッ素化して、FSO2−(CF2(n-1)−COFを生成するステップ;b)FSO2−(CF2(n-1)−COFをヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と反応させて、FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを生成するステップ;c)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを金属カチオンM+p(pはMの原子価である)の塩と反応させて、(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを生成するステップ;およびd)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを熱分解して、FSO2−(CF2(n)−O−CF=CF2を生成するステップを含む方法を提供する。nの値は2〜5、一般的に3〜4、最も一般的には4である。pの値は一般的に、1または2、最も一般的には1である。金属カチオンM+pの塩は、最も一般的にはNa2CO3である。
【0008】
ステップa)は、次式:
【化3】

(式中、nは2〜5である)
による、4〜7員環であるスルトンをフッ素化して、FSO2−(CF2(n-1)−COFを生成することを含む。フッ素化はいずれかの適切な手段によって達成されるが、最も一般的には、米国特許第2,732,398号明細書に記載のように電気化学的フッ素化によって達成される。
【0009】
ステップb)は、FSO2−(CF2(n-1)−COFをヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と反応させて、FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを生成することを含む。ステップb)は、いずれかの適切な手段によって達成されるが、一般的には、ジグライムなどの適切な極性溶媒中のFSO2−(CF2(n-1)−COFの溶液にHFPOを添加することによって達成される。通常、触媒が存在する。触媒は、一般的にはフッ化物触媒、最も一般的にはKFである。フッ化物触媒以外のいずれかの触媒の非存在下で反応を行うことができる。一般的には、HFPOは、存在するFSO2−(CF2(n-1)−COFのモル量を超えないモル量で添加される。さらに一般的には、存在するFSO2−(CF2(n-1)−COFのモル量は、存在するHFPOのモル量を少なくとも10%、さらに一般的には20%、さらに一般的には30%超えて残る。ステップb)は、本出願と同日に出願された、係属中の米国特許出願第10/322,254号明細書(代理人整理番号57659US002)に開示されている方法によって達成される。
【0010】
ステップc)は、FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを金属カチオンM+p(pはMの原子価である)の塩と反応させて、(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを生成することを含む。原子価pは任意の原子価であるが、一般的に1または2、最も一般的には1である。Mはいずれかの適切な金属であるが、一般的にNa、K、RbおよびCsから選択され、最も一般的にはNaである。塩のアニオンは、いずれかの適切なアニオンであるが、一般的にはフッ化スルホニル官能基からフッ素を取り除くほど塩基性ではないアニオンである。金属カチオンM+pの塩は最も一般的には、Na2CO3である。ステップc)は一般的に、グリム、ジグライム等の極性溶媒中で行われる。ステップc)は一般的に、高温で、通常40〜100℃で行われる。
【0011】
ステップd)は、溶媒を除去した後に、(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを熱分解して、FSO2−(CF2(n)−O−CF=CF2を生成することを含む。生成物(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pの温度をその分解温度まで上げるのに十分な熱源が用いられる。分解温度は反応物によって様々であるが、一般に160℃〜210℃だろう。一般に、熱分解前に、通常真空または減圧にすることによって、残存する溶媒が除去される。次いで、生成物は、いずれかの適切な手段によって回収され、単離され、精製される。
【0012】
反応生成物の単離および精製は、本発明の方法の1つまたは複数のステップの後に行うことが望ましいことは理解されよう。
【0013】
本発明は、イオン交換樹脂の合成において重要な種類のモノマーである、フッ化スルホニルを有する過フッ化ビニルエーテルの合成に有用である。
【0014】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を過度に限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0015】
別段の指定がない限り、すべての試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI)から入手されたか、または市販されており、あるいは公知の方法により合成することもできる。
【0016】
【化4】

米国特許第2,732,398号明細書に記載のように、1,4−ブタンスルトン(6900g,50.7モル)をHF中で電気化学的にフッ素化して、4−(フルオロスルホニル)ヘキサフルオロブチリルフルオリド、FSO2(CF23COF(収率28%で4000g,14.3モル)を得た。
【0017】
B. FSO2−CF2CF2CF2−COF+CF3CFOCF2+KF→FSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF(CF3)−COF
フッ化カリウム114gを有するジグライム2L中で、4−(フルオロスルホニル)ヘキサフルオロブチリルフルオリド、FSO2(CF23COF2162g(7.7モル)を当モル量のヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)(1281g,7.7モル)と反応させて、パーフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシプロピオニルフルオリド(収率65%で2250g,5.1モル)と、更なるヘキサフルオロプロピレンオキシド単位を有する、より高い沸点の副生成物675gとを得た。
【0018】
C. FSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF(CF3)−COF+Na2CO3+熱→FSO2−CF2CF2CF2CF2−O−CF=CF2
次いで、パーフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシプロピオニルフルオリド1108g(2.5モル)をグリム中で70℃にて炭酸ナトリウム(603g,5.7モル)と反応させて、酸のナトリウム塩を生成した。次いで、溶媒を真空下で除去し、乾燥した塩を165℃に加熱して、二酸化炭素副生成物で真空を破壊し、182℃まで加熱し続けて、パーフルオロ−4−(フルオロスルホニル)ブトキシビニルエーテル(収率74%で703g,1.9モル)を単離した。
【0019】
本発明の種々の修正および変更は、本発明の範囲および原理から逸脱することなく、当業者には明らかになるだろう。本発明は、上記に記述される例証となる実施形態に過度に限定されるものでないことは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式FSO2−(CF2n−O−CF=CF2(式中、nは2〜5である)のフッ化スルホニル末端基を有する過フッ化ビニルエーテルを製造する方法であって、
a)
【化1】

をフッ素化して、FSO2−(CF2(n-1)−COFを生成するステップ;
b)FSO2−(CF2(n-1)−COFをヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)と反応させて、FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを生成するステップ;
c)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COFを金属カチオンM+p(pはMの原子価である)の塩と反応させて、(FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを生成するステップ;および
d)FSO2−(CF2(n)−O−CF(CF3)−COO-p+pを熱分解して、FSO2−(CF2(n)−O−CF=CF2を生成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
n=4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)が極性溶媒中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属カチオンの前記塩がNa2CO3である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属カチオンの前記塩がNa2CO3である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップb)がフッ化物触媒の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップb)が、フッ化物触媒以外のいずれかの触媒の非存在下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フッ化物触媒がKFである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記フッ化物触媒がKFである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップb)全体を通して、存在するFSO2−(CF2(n-1)−COFのモル量が、存在するHFPOのモル量を少なくとも10%超える量で残る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップb)全体を通して、存在するFSO2−(CF2(n-1)−COFのモル量が、存在するHFPOのモル量を少なくとも10%超える量で残る、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップa)が電気化学的フッ素化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップa)が電気化学的フッ素化を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップa)が電気化学的フッ素化を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップa)が電気化学的フッ素化を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップa)が電気化学的フッ素化を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップa)が電気化学的フッ素化を含む、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2006−510720(P2006−510720A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564850(P2004−564850)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/034920
【国際公開番号】WO2004/060857
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】