説明

フッ素アパタイト粉体の製造方法、フッ素アパタイト粉体および吸着装置

【課題】粒子強度の改善が図られた主としてフッ素アパタイトで構成されたフッ素アパタイト粉体を製造し得るフッ素アパタイト粉体の製造方法、粒子強度の強いフッ素アパタイト粉体およびかかるフッ素アパタイト粉体を充填剤として備える吸着装置を提供すること。
【解決手段】本発明のフッ素アパタイト粉体の製造方法は、カルシウム源と、リン酸源と、フッ素源とを原材料として、湿式法を用いて合成されるフッ素アパタイトを含有するスラリーに超音波を付与する第1の工程と、前記スラリーを乾燥することにより、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体を得る第2の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素アパタイト粉体の製造方法、フッ素アパタイト粉体および吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキシアパタイトは、カルシウムイオンとリン酸基とが高密度に規則的に配列した構造を有し、両性イオン交換体として静電相互作用に基づく吸着能を有する。
【0003】
このため、このハイドロキシアパタイトで構成される粉体(ハイドロキシアパタイト粉体)は、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、細胞等の生体関連物質を分離する分離用カラムの吸着剤として広く利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
より詳しくは、ハイドロキシアパタイト粉体では、例えば、タンパク質を分離する場合、タンパク質が酸性タンパク質であると、その構造中に含まれるカルボキシル基がハイドロキシアパタイト粉体のカルシウムイオンに配位結合して吸着し、または、タンパク質が塩基性タンパク質であると、その構造中に含まれるアミノ基がハイドロキシアパタイト粉体のリン酸基にイオン結合して吸着するため、タンパク質は、ハイドロキシアパタイト粉体に対する各タンパク質における吸着能の大きさの差に基づいて分離されるため、分離用カラムの吸着剤として広く利用されている。
【0005】
このようなハイドロキシアパタイト粉体を吸着剤として備える分離用カラム(吸着装置)では、近年、研究用のレベルから生産用のレベルにまで、そのサイズがスケールアップしており、その結果、吸着剤として充填されるハイドロキシアパタイト粉体に掛かる圧力が増大してしまうという結果を招いている。そして、このような吸着剤に掛かる圧力の増大により、カラム中へのこの吸着剤の充填時やカラム使用時等に吸着剤が崩壊し、その結果として、カラム端部に設けられているフィルターが目詰まりするため、充填剤の交換を頻繁に行う必要が生じるという問題がある。
【0006】
かかる問題点を解消することを目的に、近年、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ素アパタイトで構成される粉体(フッ素アパタイト粉体)が注目されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
すなわち、このフッ素アパタイトは、ハイドロキシアパタイトとほぼ同一の結晶構造を有しており、このため、ハイドロキシアパタイトとほぼ等しいタンパク質等の生体関連物質に対する吸着特性(吸着能)を備えている。さらに、フッ素アパタイト粉体は、ハイドロキシアパタイト粉体と比較するとより安定な物質であるため、粒子強度が強くかつ耐酸性が高いという性質を有する点から注目されている。
【0008】
しかしながら、このようなフッ素アパタイト粉体を分離用カラムの吸着剤に適用したとしても、分離用カラムをよりサイズの大きい生産用のものとした場合では、フッ素アパタイト粉体が吸着剤に求められる粒子強度を十分に有しているとは言い難い。
【0009】
【特許文献1】特開2003−200039号公報
【特許文献2】特開2004−330113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、粒子強度の改善が図られた主としてフッ素アパタイトで構成されたフッ素アパタイト粉体を製造し得るフッ素アパタイト粉体の製造方法、粒子強度の強いフッ素アパタイト粉体およびかかるフッ素アパタイト粉体を充填剤として備える吸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(14)の本発明により達成される。
(1) カルシウム源と、リン酸源と、フッ素源とを原材料として、湿式法を用いて合成されるフッ素アパタイトを含有するスラリーに超音波を付与する第1の工程と、
前記スラリーを乾燥することにより、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体を得る第2の工程とを有することを特徴とするフッ素アパタイト粉体の製造方法。
これにより、優れた粒子強度を有するフッ素アパタイト粉体を製造することができる。
【0012】
(2) 前記第1の工程において、前記スラリーに対する超音波の付与は、前記フッ素アパタイトの合成の後に行う上記(1)に記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
これにより、優れた粒子強度を有するフッ素アパタイト粉体を製造することができる。
【0013】
(3) 前記第1の工程において、前記スラリーに付与する前記超音波の出力は、前記スラリーと水との総容量を180Lとしたとき、500〜2500Wである上記(1)または(2)に記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【0014】
これにより、得られるフッ素アパタイト粉体をより確実に優れた粒子強度を有するものとすることができる。
【0015】
(4) 前記第1の工程において、前記スラリーに前記超音波を付与する時間は、10分〜10時間である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【0016】
これにより、得られるフッ素アパタイト粉体をより確実に優れた粒子強度を有するものとすることができる。
【0017】
(5) 前記第1の工程における前記スラリー中の前記フッ素アパタイトの含有量は、20wt%以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【0018】
これにより、スラリー中のフッ素アパタイトに対して超音波をより均一に付与することができる。
【0019】
(6) 前記カルシウム源は、水酸化カルシウムである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【0020】
これにより、フッ素アパタイトをより効率よくかつ簡便に製造することができ、また、容易にフッ素アパタイトを含有するスラリーを得ることができる。
【0021】
(7) 前記リン酸源は、リン酸である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【0022】
これにより、フッ素アパタイトをより効率よくかつ簡便に製造することができ、また、容易にフッ素アパタイトを含有するスラリーを得ることができる。
【0023】
(8) 前記フッ素源は、フッ化水素である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【0024】
これにより、他のフッ素源を用いる場合と比較して、副反応生成物の生成がないか、あるいは極めて少ない。このため、フッ素アパタイト中に混入する不純物の含有量を少なくすることができ、フッ素アパタイトの耐酸性および粒子強度を向上させることができる。
【0025】
(9) 前記第1の工程において、前記フッ素アパタイトを含有するスラリーは、前記カルシウム源と前記リン酸源とを反応させることにより、ハイドロキシアパタイトを含有するスラリーを得た後、該ハイドロキシアパタイトと前記フッ素源とを反応させて、前記ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部を、フッ素原子で置換することにより得られる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
これにより、フッ素アパタイトを確実にスラリー中に合成することができる。
【0026】
(10) 前記第1の工程において、前記フッ素アパタイトを含有するスラリーは、前記カルシウム源を含有するスラリーに、前記リン酸源と前記フッ素源との混合物を滴下して反応させることにより、合成されたハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されることにより得られる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
これにより、フッ素アパタイトを確実にスラリー中に合成することができる。
【0027】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするフッ素アパタイト粉体。
これにより、得られたフッ素アパタイト粉体は優れた粒子強度を有するものとなる。
【0028】
(12) ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の一部が、フッ素原子で置換されてなるフッ素アパタイトを含有するスラリーを乾燥することにより得られた、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体であって、
当該フッ素アパタイト粉体を、平均粒径40±5μmの大きさに分級し、圧縮粒子強度を測定したとき、前記圧縮粒子強度が5.4MPa以上であることを特徴とするフッ素アパタイト粉体。
【0029】
かかる圧縮粒子強度を有するフッ素アパタイト粉体は、優れた粒子強度を有するものということができる。
【0030】
(13) 上記(11)または(12)のフッ素アパタイト粉体、または、当該フッ素アパタイト粉体を焼成して得られた焼結粒子を吸着剤として備える吸着装置。
【0031】
これにより、吸着剤に適用されるフッ素アパタイト粉体が優れた粒子強度を有しているため、サイズの大きい生産用の分離カラムの吸着剤にも好適に適用することができる。
【0032】
(14) 上記(11)または(12)のフッ素アパタイト粉体、または、当該フッ素アパタイト粉体を焼成して得られた焼結粒子を吸着剤として備え、複数のタンパク質を含有する液体中の前記複数のタンパク質を吸着し、それぞれの前記タンパク質と前記フッ素アパタイト粉体との吸着性の差に基づいて、各前記タンパク質を分離する吸着装置。
【0033】
これにより、吸着剤に適用されるフッ素アパタイト粉体が優れた粒子強度を有しているため、サイズの大きい生産用の分離カラムの吸着剤に適用したとしても、前記溶液中のタンパク質同士を確実に分離することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、超音波が付与されたフッ素アパタイトを含有するスラリーを用いてフッ素アパタイト粉体が製造されるので、このフッ素アパタイト粉体は、強い粒子強度を有するものとなる。また、製造されたフッ素アパタイト粉体は、このように強い粒子強度を有するものであるので、サイズの大きい生産用の分離カラムの吸着剤に好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明のフッ素アパタイト粉体の製造方法、フッ素アパタイト粉体および吸着装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0036】
まず、本発明のフッ素アパタイト粉体の製造方法について説明する。
本発明のフッ素アパタイト粉体の製造方法は、カルシウム源と、リン酸源と、フッ素源とを原材料として、湿式法を用いて合成されるフッ素アパタイトを含有するスラリーに超音波を付与する第1の工程と、このフッ素アパタイトを含有するスラリーを乾燥することにより、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体を得る第2の工程とを有する。
【0037】
<第1製造方法>
以下では、まず、この本発明のフッ素アパタイト粉体の第1製造方法について説明する。
【0038】
本実施形態で説明するフッ素アパタイト粉体の第1製造方法は、ハイドロキシアパタイトスラリー調製工程S1と、フッ化水素含有液調製工程S2と、フッ素アパタイト合成工程S3と、フッ素アパタイト乾燥工程S4を有している。以下、これらの工程について、順次説明する。
【0039】
[S1] ハイドロキシアパタイトスラリー調製工程
まず、ハイドロキシアパタイトを含有するスラリーを調製する。
【0040】
以下、このスラリーを調製する方法について説明する。
ハイドロキシアパタイトを含有するスラリーは、各種合成方法を用いて得ることができるが、カルシウム源とリン酸源との少なくとも一方を溶液として用いる湿式合成法によって得るのが好ましい。このような方法を用いると、微細なハイドロキシアパタイト(ハイドロキシアパタイトの一次粒子)がスラリー中に形成されるとともに、このハイドロキシアパタイトが均一に分散されたスラリー(ハイドロキシアパタイトスラリー)を得ることができる。
【0041】
また、湿式合成法を用いることにより、高価な製造設備を必要とせず、スラリーを簡便に、かつ効率よくハイドロキシアパタイトを合成すること、すなわち、ハイドロキシアパタイトを含有するスラリーが製造できる。
【0042】
カルシウム源としては、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム等を用いることができる。一方、リン酸源としては、リン酸、リン酸アンモニウム等を用いることができる。これらの中でも、特に、カルシウム源として水酸化カルシウムを主成分とするものが、また、リン酸源としてリン酸を主成分とするものが好ましい。
【0043】
かかるカルシウム源およびリン酸源を用いることにより、ハイドロキシアパタイトをより効率よくかつ安価に製造することができ、また、容易にハイドロキシアパタイトを含有するスラリーを得ることができる。
【0044】
具体的には、例えば、容器内で、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の懸濁液中に、リン酸(H3PO4)溶液を滴下し、撹拌混合することにより、ハイドロキシアパタイトが合成され、ハイドロキシアパタイトを含有するスラリーが得られる。
【0045】
また、スラリー中におけるハイドロキシアパタイトの含有量は、1〜20wt%程度であるのが好ましく、5〜12wt%程度であるのがより好ましい。これにより、後述する工程[S3]において、より効率よくハイドロキシアパタイトが有する水酸基をフッ素原子で置換してフッ素アパタイトを合成することができる。また、後述する工程[S3]において、比較的小さいエネルギーで、スラリーを十分に撹拌することができ、さらに十分にスラリーを攪拌できることから、スラリー中のハイドロキシアパタイト同士間でのフッ素原子による置換率の均一化を図ることができる。
【0046】
[S2] フッ化水素含有液調製工程
一方、第1の製造方法では、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーとは別に、フッ素源として、フッ化水素を含有するフッ化水素含有液を調製する。
【0047】
フッ化水素を溶解する溶媒は、後述する工程[S3]における反応を阻害しないものであれば、いかなるものも使用が可能である。
【0048】
かかる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられ、これらを混合して用いることもできるが、中でも、特に、水であるのが好ましい。溶媒として水を用いれば、後述する工程[S3]における反応の阻害をより確実に防止することができる。
【0049】
フッ化水素含有液中のフッ化水素の含有量は、1〜60wt%程度であるのが好ましく、2.5〜10wt%程度であるのがより好ましい。フッ化水素の含有量がこのような範囲であれば、後述する工程[S3]において、スラリーのpHを目的とする範囲内に調整するのが容易である。また、フッ化水素含有液のpHが極端に低くならず、安全に取り扱うこともできる。
【0050】
なお、本工程では、フッ素源として、フッ化水素を用いることとしたが、フッ化水素以外に、例えば、フッ化水素アンモニウム(NHF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化マグネシウム(MgF)およびフッ化カルシウム(CaF)等を用いることができる。
【0051】
ただし、本工程のようにフッ素源としてフッ化水素を用いることにより、他のフッ素源を用いる場合と比較して、副反応生成物の生成がないか、あるいは極めて少ない。このため、フッ素アパタイト中に混入する不純物の含有量を少なくすることができ、フッ素アパタイトの耐酸性および粒子強度を向上させることができる。なお、ここでいう不純物とは、フッ素アパタイトの原料に起因するアンモニアやリチウム等を指す。
【0052】
[S3] フッ素アパタイト合成工程
次に、前記工程[S1]で調製されたハイドロキシアパタイトスラリーと前記工程[S2]で調製されたフッ化水素含有液とを混合することにより、フッ化水素含有液を含むハイドロキシアパタイトスラリー中において、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを反応させる湿式法により、フッ素アパタイトを得る。
【0053】
すなわち、ハイドロキシアパタイトに、フッ化水素を接触させることで、次式(I)に示すように、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部をフッ素原子で置換して、フッ素アパタイトに変換して、フッ素アパタイト(フッ素アパタイトの一次粒子)を得る。
【0054】
Ca10(PO(OH)
Ca10(PO(OH)2−2x2X ・・・ (I)
[ただし、式(I)中、xは0<x≦1である。]
【0055】
このように、ハイドロキシアパタイトを含むスラリー中で、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素を反応させることにより、フッ素アパタイトを簡便に製造することができる。
【0056】
また、ハイドロキシアパタイトが一次粒子の段階で水酸基がフッ素原子により置換されるので、得られるフッ素アパタイトにおいてフッ素原子による水酸基の置換率が特に高くなる。
【0057】
また、フッ素源として、前記工程[S2]のようにフッ化水素(HF)を用いた場合には、前述したようにフッ素アパタイト中に混入する不純物の含有量を少なくすることができ、フッ素アパタイトの耐酸性および粒子強度を向上させることができる。
【0058】
フッ素アパタイト中の不純物濃度は、具体的には、できる限り低いことが好ましく、300ppm以下であるのが好ましく、100ppm以下であるのがより好ましい。これにより、フッ素アパタイトは、不純物濃度が低くなることに起因して、より耐酸性の高いものとなる。
【0059】
なお、本発明では、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応条件(例えば、pH、温度、時間等)を調整することにより、合成されるフッ素アパタイト中の不純物濃度を前記範囲とすることが可能である。
【0060】
特に、フッ素源を含有する溶液としてフッ化水素含有液を用いる構成とすることにより、フッ化水素含有液が添加されたハイドロキシアパタイトスラリーのpHを2.5〜5の範囲内に調整し、この状態で、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素を反応させることができる。なお、本明細書中において、フッ化水素含有液が添加されたハイドロキシアパタイトスラリーのpHとは、フッ化水素含有液の全量をスラリーに混合した時点のpHとする。
【0061】
ここで、ハイドロキシアパタイトスラリーのpHを2.5未満に調製すると、ハイドロキシアパタイト自体が溶解する傾向を示し、フッ素アパタイトを得ることが困難となる。さらに、ハイドロキシアパタイトにフッ化水素含有液を混合する際に用いる装置の構成成分が溶出し、得られるフッ素アパタイトの純度が低下するという問題も生じる。さらに、フッ化水素含有液を使用してpH2.5未満である低いpHにフッ化水素含有液が添加されたフッ素アパタイトを含有するスラリーを調整することは、技術的に極めて困難である。
【0062】
一方、フッ化水素含有液を用いて、フッ化水素含有液が添加されたハイドロキシアパタイトスラリーのpHを5超に調整するには、スラリー中に大量の水を添加せざるを得ない。このため、スラリーの全量が極めて多くなり、スラリー全量に対するフッ素アパタイトの収率が低下することから、工業的にも不利である。
【0063】
これらに対して、フッ化水素含有液が添加されたハイドロキシアパタイトスラリーのpHを2.5〜5に調整することにより、反応により生成したフッ素アパタイトが一旦溶解傾向を示した後に、再結晶することになる。このため、結晶性の高いフッ素アパタイトを得ることができる。
【0064】
なお、フッ化水素含有液が添加されたハイドロキシアパタイトスラリーのpHは、2.5〜5に調整すればよいが、2.5〜4.5程度に調整するのが好ましく、2.7〜4程度に調整するのがより好ましい。かかる範囲にフッ化水素含有液が添加されたハイドロキシアパタイトスラリーのpHを調整することにより、より簡便かつ高収率で、結晶性の高いフッ素アパタイトを得ることができる。
【0065】
また、ハイドロキシアパタイトスラリーとフッ化水素含有液とは、これらを一時(同時)に混合するようにしてもよいが、ハイドロキシアパタイトスラリー中にフッ化水素含有液を滴下することにより混合するのが好ましい。このように、スラリー中にフッ化水素含有液を滴下することにより、比較的簡便に、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを反応させることができる。また、スラリーのpHをより容易かつ確実に前記範囲に調製することができる。このため、ハイドロキシアパタイト自体の分解や、溶解等を防止することができ、高収率で高純度のフッ素アパタイトを得ることができる。
【0066】
フッ化水素含有液を滴下する速度は、1〜20L/時間程度であるのが好ましく、3〜10L/時間程度であるのがより好ましい。このような滴下速度でフッ化水素含有液をハイドロキシアパタイトスラリー中に混合(添加)することにより、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを、より穏やかな条件で反応させることができる。
【0067】
また、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応は、ハイドロキシアパタイトスラリーを撹拌しつつ行うのが好ましい。撹拌によって、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とが均一に接触し、反応を効率よく進行させることができる。また、得られるフッ素アパタイト同士間でのフッ素原子の置換率をより均一なものとすることができ、例えば、得られるフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)や、その焼結粒子を用いて、吸着剤を製造した場合、その特性のバラツキが小さくなり、信頼性の高いものとなる。
【0068】
この場合、ハイドロキシアパタイトスラリーを撹拌する撹拌力は、スラリー1Lに対して、1〜10kW程度の出力であるのが好ましく、1〜5kW程度の出力であるのがより好ましい。撹拌力をこのような範囲の値とすることにより、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応の効率をより向上させることができる。
【0069】
また、フッ化水素の混合量は、フッ素量がハイドロキシアパタイトが有する水酸基の量に対して0.65〜1.25倍程度となるようにするのが好ましく、0.70〜1.15倍程度となるようにするのがより好ましい。これにより、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基をフッ素原子に、より効率よく置換することができる。
【0070】
ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを反応させる際の温度は、特に限定されないが、5〜50℃程度であるのが好ましく、20〜40℃程度であるのがより好ましい。このような温度範囲に設定することにより、ハイドロキシアパタイトスラリーのpHを低く調整した場合でも、ハイドロキシアパタイトの分解や溶解等を防止することができる。また、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応率を向上させることができる。さらに、生成したフッ素アパタイトの再結晶を効率よく促して、フッ素アパタイトを得ることができる。
【0071】
この場合、ハイドロキシアパタイトスラリーにフッ化水素含有液を滴下する時間(加える時間)は、30分〜16時間程度かけて行うのが好ましく、1〜8時間程度かけて行うのがより好ましい。このような滴下時間で、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを反応させることにより、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基をフッ素原子で十分に置換することができる。なお、滴下時間を上記の上限値を越えて長くしても、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応の進行は、それ以上期待できない。
【0072】
このフッ素アパタイトは、式(I)に示したように、必ずしも純粋なフッ素アパタイト(すなわちハイドロキシアパタイトの水酸基が完全にフッ素原子により置換されたハロゲン化度、式(I)中のxが1のもの)に限らず、ハイドロキシアパタイトの水酸基の一部のみがフッ素原子により置換されたものも含まれる。
【0073】
なお、本実施形態のようにフッ素源としてフッ化水素を用いた場合では、ハイドロキシアパタイトの表面ばかりでなく、その内部までも、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基をフッ素原子により置換することが可能である。具体的には、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基をフッ素原子により、75%以上置換することが可能であり、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応条件(例えば、pH、温度、時間、フッ化水素の混合量等)を適宜調整することにより、95%以上置換することも可能である。なお、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基をフッ素原子により、50%以上置換されたものは、耐酸性が特に優れており、好ましい。
【0074】
また、このようなフッ素アパタイトは、不純物が極めて少ないため、優れた耐酸性および粒子強度を有している。
【0075】
以上のようにしてハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたフッ素アパタイトが得られる。
【0076】
このようなフッ素アパタイト(フッ素アパタイトの一次粒子)は、スラリー中で、正に帯電している部分(カルシウムサイト)と、負に帯電している部分(リン酸サイト)とを有している。そのため、フッ素アパタイトの一次粒子同士は、一の一次粒子の正に帯電している部分と、他の一次粒子の負に帯電している部分との間にファンデルワールス力(分子間力)が働き、それらが互いに凝集することにより、フッ素アパタイトの一次粒子の凝集体(以下、単に「凝集体」と言うこともある。)を形成している。
【0077】
このような凝集体は、本発明者の検討により、凝集体同士間の間で生じる引力と斥力の関係により、図1に示すように、その凝集体の大きさに従って粒度分布を求めたとき、その分布の頻度が大きくなる、二つのピークを有することが判っている。なお、本明細書中において、粒径が小さい方のピークにある凝集体を一次凝集体と言い、粒径が大きい方のピークにある凝集体を二次凝集体と言うこととする。
【0078】
本発明では、このような一次凝集体および二次凝集体を含む凝集体を形成しているフッ素アパタイト(フッ素アパタイトの一次粒子)を含有するスラリーに対して超音波を付与することに特徴を有する。この超音波が付与されたスラリーを、次工程[S4]において、乾燥させることにより、フッ素アパタイトが造粒してフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)が得られるが、このフッ素アパタイト粉体は、特に優れた粒子強度を有するものとなる。
【0079】
ところで、フッ素アパタイトを合成する際および/またはフッ素アパタイトが合成された後に、スラリーを攪拌する構成とし、この攪拌する攪拌力を制御することにより、一次凝集体および二次凝集体の粒径の大きさ、さらには、一次凝集体と二次凝集体との存在比を調整し得ることが知られている。さらに、一次凝集体の存在比がより大きい凝集体を含有するスラリーを乾燥させることにより得られたフッ素アパタイト粉体は、粒子強度が強いものとなることが知られている。
【0080】
これに対して、凝集体を含有するスラリーに対する超音波の付与では、本発明者の検討により、一次凝集体と二次凝集体との存在比が変化しないこと、すなわち、二次凝集体が分解(破砕)されないことが判っており、超音波付与による粒子強度の増強には、一次凝集体と二次凝集体との存在比とは異なる別の要因が寄与しているものと推察される。
【0081】
スラリー中に含まれるフッ素アパタイト一次粒子およびその凝集体の含有量は、特に限定されないが、20wt%以下であるのが好ましく、5〜15wt%程度であるのがより好ましい。これにより、スラリー中のフッ素アパタイト一次粒子に対して超音波をより均一に付与することができる。
【0082】
また、スラリーに付与する超音波の出力は、スラリーを密閉容器中に収納し、この密閉容器を水中に浸漬した状態で超音波を付与する場合、前記スラリーと前記水との総容量を180Lとしたとき、500〜2500W程度であるのが好ましく、1200〜2000W程度であるのがより好ましい。
【0083】
超音波の周波数は、特に限定されないが、10〜50kHz程度であるのが好ましく、25〜40kHz程度であるのがより好ましい。
【0084】
超音波を付与する時間は、10分〜10時間程度であるのが好ましく、1〜5時間程度であるのがより好ましい。
【0085】
超音波を付与する際の各種条件を、上記範囲内に設定することにより、一次凝集体と二次凝集体との存在比が変化することなく、得られるフッ素アパタイト粉体をより確実に優れた粒子強度を有するものとすることができる。
【0086】
[S4] フッ素アパタイト乾燥工程
次に、フッ素アパタイトを含有するフッ素アパタイトスラリーを乾燥することにより、フッ素アパタイトを造粒させて、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)を得る。
【0087】
得られたフッ素アパタイト粉体は、前記工程[S2]において、フッ素アパタイトを含有するスラリーに超音波が付与されているので、本工程において、得られたフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)は、特に優れた粒子強度を有するものとなる。
【0088】
なお、フッ素アパタイトを含むフッ素アパタイトスラリーを乾燥することにより、フッ素アパタイトを造粒してフッ素アパタイト粉体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、スラリーをスプレードライヤー等により噴霧乾燥する方法等が挙げられる。
【0089】
また、フッ素アパタイトスラリーを乾燥する際の乾燥温度は、75〜250℃程度であるのが好ましく、95〜200℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、一次粒子内や一次粒子同士間で形成される間隙(空孔)を残存させつつ、粒子強度(機械的強度)にも優れる乾燥粒子を得ることができる。
【0090】
さらに、一次粒子を造粒して得られたフッ素アパタイト粉体の平均粒径は、10〜100μm程度であるのが好ましく、30〜90μm程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、耐酸性および粒子強度に優れるフッ素アパタイト粉体とすることができる。
【0091】
なお、このようなフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)は、焼成(焼結)して焼結粒子とすることもできる。
【0092】
この場合、フッ素アパタイト粉体を焼成する焼成温度は、200〜800℃程度であるのが好ましく、400〜700℃程度であるのがより好ましい。(この場合、焼結によっても粒子強度は上昇する。)
以上のような工程を経て、フッ素アパタイト粉体を製造することができる。
【0093】
なお、得られたフッ素アパタイト粉体の粒子強度は、例えば、以下のようにして規定することができる。
【0094】
すなわち、フッ素アパタイト粉体を、平均粒径40±5μmの大きさに分級し、この分級されたフッ素アパタイト粉体で測定される圧縮粒子強度の大きさで規定することができる。
【0095】
このような条件で測定される圧縮粒子強度は、できる限り大きい方が好ましく、具体的には、5.4MPa以上であればよく、5.9MPa以上であるのが好ましい。かかる大きさの圧縮粒子強度を有するフッ素アパタイト粉体は、極めて高い粒子強度を有するものと判断することができる。
【0096】
なお、この第1の製造方法では、工程[S1]〜工程[S3]により、本発明のフッ素アパタイト粉体の製造方法における第1の工程が構成され、工程[S4]により、第2の工程が構成される。
【0097】
<第2製造方法>
次に、本発明のフッ素アパタイト粉体の第2製造方法について説明する。
【0098】
本実施形態で説明するフッ素アパタイト粉体の第2製造方法は、液体調製工程S1’と、フッ素アパタイト合成工程S2’と、フッ素アパタイト乾燥工程S3’を有している。以下、これらの工程について、順次説明する。
【0099】
[S1’] 液体調製工程(第1の工程)
[S1’−1] カルシウム源含有液調製工程
まず、カルシウムを含むカルシウム源(カルシウム系化合物)を含有するカルシウム源含有液を調製する。
【0100】
カルシウム源(カルシウム系化合物)としては、前記第1製造方法で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0101】
また、カルシウム源含有液としては、前記カルシウム源を含有する溶液および懸濁液等を用いることができるが、カルシウム源が水酸化カルシウムである場合、水酸化カルシウムを水中に懸濁させた水酸化カルシウム懸濁液を用いるのが好ましい。このような懸濁液を用いて、後述する工程[S2]でフッ素アパタイトを合成すると、微細なフッ素アパタイトが形成されるとともに、このフッ素アパタイトの凝集体が均一に分散されたフッ素アパタイトを得ることができる。
【0102】
また、カルシウム源含有液中のカルシウム源(カルシウム系化合物)の含有量は、1〜20wt%程度であるのが好ましく、5〜12wt%程度であるのがより好ましい。これにより、後述する工程[S2’]において、より効率よくフッ素アパタイトを合成することができる。また、後述する工程[S2’]において、比較的小さいエネルギーで、カルシウム源含有液(溶液または懸濁液)を十分に撹拌することができることから、形成されるフッ素アパタイト同士間でのフッ素原子の導入率の均一化を図ることができる。
【0103】
[S1’−2] フッ化水素含有液調製工程
次に、フッ素源として、フッ化水素を含有するフッ化水素含有液を調製する。
【0104】
フッ化水素含有液としては、前記第1製造方法で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0105】
[S1’−3] リン酸源含有液調製工程
次に、リン酸源を含有するリン酸源含有液を調製する。
リン酸源としては、前記第1製造方法で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0106】
また、リン酸を溶解する溶媒は、後述する工程[S2]における反応を阻害しないものであれば、いかなるものも使用が可能であり、前記第1製造方法で挙げたフッ化水素を溶解する溶媒と同様のものを用いることができる。
【0107】
なお、フッ化水素を溶解する溶媒と、リン酸源を溶解する溶媒とは、同種または同一のものを用いるのが好ましい。これにより、後述する工程[S2’]において得られる第1の混合液中で、フッ化水素含有液とリン酸源含有液とをカルシウム源含有液に対して均一に混合することができ、合成されるフッ素アパタイトのフッ素原子の導入率を均一なものとすることができる。
【0108】
以上のようにして調製した各液体は、後述する工程[S2’]で、カルシウム源、フッ化水素およびリン酸源が、これらの液体が混合した第1の混合液中において同時に存在し得る条件であれば、いかなる順序で混合して第1の混合液を得るようにしてもよいが、まず、フッ化水素含有液とリン酸源含有液とを混合した第2の混合液を得た後、この第2の混合液をカルシウム源含有液に添加して第1の混合液を得るようにするのが好ましい。かかる構成とすることにより、フッ化水素含有液とリン酸源含有液とをカルシウム源含有液に対してより均一に混合することができ、合成されるフッ素アパタイトのフッ素原子の導入率のさらなる均一化を図ることができる。また、第1の混合液中で、フッ化カルシウム等の副生成物が生成するのを的確に防止または抑制することができる。
【0109】
なお、上記以外で、第1の混合液を得る方法としては、例えば、カルシウム源含有液に対して、フッ化水素含有液およびリン酸源含有液をほぼ同時に添加する方法、フッ化水素含有液に対して、カルシウム源含有液およびリン酸源含有液をほぼ同時に添加する方法、リン酸源含有液に対して、カルシウム源含有液およびフッ化水素含有液をほぼ同時に添加する方法等が挙げられる。
【0110】
したがって、以下では、前記第2の混合液を調製した後に、カルシウム源含有液に第2の混合液を混合して第1の混合液を得てフッ素アパタイトを合成する場合を代表に説明する。
【0111】
[S1’−4] 第2の混合液調製工程
次に、前記工程[S1’−2]および[S1’−3]でそれぞれ調製した、フッ化水素含有液およびリン酸源含有液を混合して第2の混合液を得る。
【0112】
この第2の混合液中でのフッ化水素の含有量は、0.5〜60wt%程度であるのが好ましく、1.0〜10wt%程度であるのがより好ましい。フッ化水素の含有量がかかる範囲内であれば、後述する工程[S2’]において、合成されるフッ素アパタイトにおけるフッ素原子の導入率を向上させることができる。また、フッ素アパタイトが合成される際のpHの大きさを適切な範囲内に設定することができる。また、第2の混合液のpHが極端に低くならず、安全に取り扱うこともできる。
【0113】
また、第2の混合液中でのリン酸源の含有量は、1.0〜90wt%程度であるのが好ましく、5.0〜20wt%程度であるのがより好ましい。リン酸源の含有量がかかる範囲内であれば、後述する工程[S2’]において、フッ素アパタイトを効率良く合成することができる。また、第2の混合液のpHが極端に低くならず、安全に取り扱うこともできる。
【0114】
また、第2の混合液中での、フッ化水素およびリン酸源の含有量は、モル量で、リン酸源がフッ化水素に対して、1.0〜4.5倍程度となるようにするのが好ましく、2.0〜4.0倍程度となるようにするのがより好ましい。これにより、フッ素の導入率の高いフッ素アパタイトを効率良く合成することができる。
【0115】
[S2’] フッ素アパタイト合成工程
次に、前記工程[S1’−1]で調製されたカルシウム源含有液と、前記工程[S1’−4]で得られた第2の混合液とを混合することにより第1の混合液を得、この第1の混合液中において、カルシウム源(カルシウム系化合物)とフッ化水素とリン酸源とを反応させることにより、フッ素アパタイト(フッ素アパタイトの一次粒子)を得る。
【0116】
すなわち、カルシウム源およびリン酸源として、それぞれ、例えば、水酸化カルシウムおよびリン酸を用いた場合、水酸化カルシウムに、フッ化水素とリン酸とを接触させることで、前記式(I)に示すようにして、フッ素アパタイトを得る。
【0117】
このように、カルシウム源含有液と第2の混合液とを混合するという簡単な操作で、カルシウム源(例えば、水酸化カルシウム)にフッ化水素とリン酸源とを接触させて、これら同士の反応を進行させることにより、前記第1製造方法で説明したのと同様のフッ素アパタイトを確実に製造することができる。
【0118】
第2の混合液を滴下する速度は、1〜100L/時間程度であるのが好ましく、10〜100L/時間程度であるのがより好ましい。このような滴下速度で第2の混合液をカルシウム源含有液中に混合(添加)することにより、カルシウム源とフッ化水素とリン酸源とを、より穏やかな条件で反応させることができる。
【0119】
また、カルシウム源とフッ化水素とリン酸源との反応は、第1の混合液を撹拌しつつ行うのが好ましい。撹拌によって、カルシウム源にフッ化水素とリン酸源とが均一に接触し、反応を効率よく進行させることができる。また、得られるフッ素アパタイト同士間でのフッ素原子の導入率をより均一なものとすることができ、例えば、得られるフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)またはその焼結体(焼結粒子)を吸着剤に適用した場合、その特性のバラツキが小さくなり、信頼性の高いものとなる。
【0120】
この場合、第1の混合液(スラリー)を撹拌する撹拌力は、スラリー1Lに対して、0.5〜3W程度の出力であるのが好ましく、0.9〜1.8W程度の出力であるのがより好ましい。撹拌力をこのような範囲の値とすることにより、カルシウム源とフッ化水素とリン酸源との反応の効率をより向上させることができる。
【0121】
カルシウム源とフッ化水素とリン酸源とを反応させる際の温度は、特に限定されないが、5〜50℃程度であるのが好ましく、20〜40℃程度であるのがより好ましい。このような温度範囲に設定することにより、第1の混合液のpHを比較的低く調整した場合でも、合成されたフッ素アパタイトの分解や溶解等を防止することができる。また、カルシウム源とフッ化水素とリン酸源との反応率を向上させることができる。
【0122】
以上のようにして、カルシウム源とフッ化水素とリン酸源とが反応してフッ素アパタイトを含有するフッ素アパタイトスラリーが得られる。
【0123】
以上のようにして本製造方法において合成されたフッ素アパタイトを含有するスラリーについても、前記第1製造方法で合成されたフッ素アパタイトを含有するスラリーと同様に、フッ素アパタイトを含有するスラリーに対して超音波を付与する。かかる構成とすることにより、次工程[S3’]において、この超音波が付与されたスラリーを乾燥することにより得られたフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)は、特に優れた粒子強度を有するものとなる。
【0124】
[S3’] フッ素アパタイト乾燥工程
次に、フッ素アパタイトを含有するフッ素アパタイトスラリーを乾燥することにより、フッ素アパタイトを造粒させて、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)を得る。
【0125】
このフッ素アパタイトスラリーを乾燥させる方法としては、前記[S4]で説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0126】
以上のような工程を経て、フッ素アパタイト粉体を製造することができる。
なお、この第2の製造方法では、工程[S1’]および工程[S2’]により、本発明のフッ素アパタイト粉体の製造方法における第1の工程が構成され、工程[S3’]により、第2の工程が構成される。
【0127】
なお、本実施形態では、フッ素アパタイトが合成された後にフッ素アパタイトが含まれるスラリーに超音波を付与する場合について説明したが、超音波を付与する時期はこれに限定されず、例えば、フッ素アパタイトの合成中に、このフッ素アパタイトが含まれるスラリーに超音波を付与するようにしてもよい。
【0128】
以上のようなフッ素アパタイト粉体の製造方法で製造されたフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)または、このフッ素アパタイト粉体を焼成した焼結粒子は、クロマトグラフィー(吸着装置)が備える吸着剤(固定相)として適用される。
【0129】
そして、このようなクロマトグラフィーに、例えば、複数のタンパク質を含有する液体を通過させると、フッ素アパタイト粉体(吸着剤)に各タンパク質が吸着し、さらに、クロマトグラフィーに溶出液(緩衝液)を通過させると、各タンパク質とフッ素アパタイト粉体との吸着性の差に基づいて、溶出液中に各タンパク質が順次分離される。
【0130】
これらの粉体をクロマトグラフィーの吸着剤として用いれば、被検体(例えばタンパク質等)の分離条件や吸着条件の選択の幅を広げることが可能である。したがって、かかるクロマトグラフィーは、さらに広い領域(分野)への適用が可能となる。
【0131】
なお、フッ素アパタイト粉体は、吸着剤への適用のみならず、例えば、このフッ素アパタイト粉体を成形した成形体を焼成することにより得られた焼結体を、人工骨や人工歯根等として用いることもできる。
【0132】
以上、本発明のフッ素アパタイトの製造方法、フッ素アパタイト粉体および吸着装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0133】
例えば、本発明のフッ素アパタイトの製造方法には、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
【実施例】
【0134】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.フッ素アパタイトの製造
(実施例1)
まず、水酸化カルシウム(カルシウム源)を純水に懸濁させ、その中へ、リン酸(リン酸源)水溶液を滴下していき、かつ十分に撹拌した。これにより、10wt%のハイドロキシアパタイトを含むスラリー50Lを得た。
【0135】
なお、得られた合成物がハイドロキシアパタイトであることを粉末X線回折法により確認した。
【0136】
一方、フッ化水素(フッ素源)を、4.2wt%となるように純水に溶解して、フッ化水素含有液を調製した。
【0137】
次に、スラリーを90Wの撹拌力で撹拌した状態で、フッ化水素含有液4.8Lを、速度2L/時間で滴下した。
【0138】
なお、フッ化水素含有液の滴下を終了した時点において、スラリーのpHは、3.00であった。
【0139】
その後、このスラリーを、温度25℃で24時間、90Wの撹拌力で撹拌を行った。これにより、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを反応させ、フッ素アパタイトを含むスラリーを得た。
【0140】
次に、得られたフッ素アパタイトを含むスラリー20Lをポリタンク中に入れ、このポリタンクを超音波洗浄機(エスエヌディ社製、「US−180MD」;最大出力 1900W、水槽容量 180L)が備える水槽中に入れた状態で、超音波洗浄機の設定を出力1900W、超音波付与時間3時間とすることにより、フッ素アパタイトを含むスラリーに超音波を付与した。
【0141】
なお、フッ素アパタイトを含むスラリーに対する超音波付与の途中で、1時間毎に、このスラリーを500mLずつ採取した。
【0142】
また、超音波を付与した後のスラリー中の反応生成物がフッ素アパタイトであることを粉末X線回折法により確認した。また、粉末X線回折の結果、フッ素アパタイトにおけるフッ素原子の置換率は、約88%であった。
【0143】
さらに、粉末X線回折の結果、フッ素アパタイト乾燥粒子中、フッ素アパタイト以外の生成物は、確認できなかった。
【0144】
次に、フッ素アパタイトを含むスラリーを、噴霧乾燥機(大川原化工機社製、「OC−20」)を用いて、150℃で噴霧乾燥することにより、フッ素アパタイトを造粒させて球状の乾燥粒子を得、得られた乾燥粒子(フッ素アパタイト粉体)を中心粒径約40μmで分級した。
【0145】
(実施例2)
まず、カルシウム源として水酸化カルシウム(カルシウム源)を3.11kg用意し、この水酸化カルシウムを9kgの純水に懸濁させることにより10wt%水酸化カルシウム懸濁液を調製した。
【0146】
次に、85wt%のリン酸水溶液と、4.2wt%のフッ化水素水溶液とを、それぞれ、2.9kgおよび4kg用意し、これらを15Lの純水にこの順で溶解させることによりリン酸・フッ化水素混合液を調製した。
【0147】
次に、水酸化カルシウム懸濁液を30Wの撹拌力で撹拌した状態で、リン酸・フッ化水素混合液を、速度2L/時間で滴下した。
【0148】
なお、リン酸・フッ化水素混合液の滴下を終了した時点において、リン酸・フッ化水素混合液が滴下された水酸化カルシウム懸濁液のpHは、3.4であった。
【0149】
引き続き、このリン酸・フッ化水素混合液が滴下された水酸化カルシウム懸濁液を、温度25℃で24時間、30Wの撹拌力で撹拌を行った。これにより、カルシウム源とフッ化水素とリン酸とを反応させ、フッ素アパタイトを含むスラリーを得た。
【0150】
次に、得られたフッ素アパタイトを含むスラリー20Lをポリタンク中に入れ、このポリタンクを超音波洗浄機(エスエヌディ社製、「US−180MD」;最大出力 1900W、水槽容量 180L)が備える水槽中に入れた状態で、超音波洗浄機の設定を出力1900W、超音波付与時間3時間とすることにより、フッ素アパタイトを含むスラリーに超音波を付与した。
【0151】
なお、フッ素アパタイトを含むスラリーに対する超音波付与の途中で、1時間毎に、このスラリーを500mLずつ採取した。
【0152】
また、スラリー中の反応生成物がフッ素アパタイトであることを粉末X線回折法により確認した。また、粉末X線回折の結果、フッ素アパタイトにおけるフッ素原子の置換率は、92%であった。
【0153】
さらに、粉末X線回折の結果、フッ素アパタイト乾燥粒子中、フッ素アパタイト以外の生成物は、確認できなかった。
【0154】
次に、フッ素アパタイトを含むスラリーを、噴霧乾燥機(大川原化工機社製、「OC−20」)を用いて、150℃で噴霧乾燥することにより、フッ素アパタイトを造粒させて球状の乾燥粒子を得、得られた乾燥粒子を中心粒径約40μmで分級した。
【0155】
(比較例1)
フッ素アパタイトを含むスラリーへの超音波の付与を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、中心粒径約40μmの乾燥粒子を得た。
【0156】
(比較例2)
フッ素アパタイトを含むスラリーへの超音波の付与を省略した以外は、前記実施例2と同様にして、中心粒径約40μmの乾燥粒子を得た。
【0157】
(参考例1)
まず、水酸化カルシウム(カルシウム源)を純水に懸濁させ、その中へ、リン酸(リン酸源)水溶液を滴下していき、かつ十分に撹拌した。これにより、10wt%のハイドロキシアパタイトを含むスラリー50Lを得た。
【0158】
次に、得られたハイドロキシアパタイトを含むスラリー20Lをポリタンク中に入れ、このポリタンクを超音波洗浄機(エスエヌディ社製、「US−180MD」;最大出力 1900W、水槽容量 180L)が備える水槽中に入れた状態で、超音波洗浄機の設定を出力1900W、超音波付与時間3時間とすることにより、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーに超音波を付与した。
【0159】
なお、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーに対する超音波付与の途中で、一時間毎に、このスラリーを500mLずつ採取した。
【0160】
また、スラリー中に含まれる合成物がハイドロキシアパタイトであることを粉末X線回折法により確認した。
【0161】
次に、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーを、噴霧乾燥機(大川原化工機社製、「OC−20」)を用いて、150℃で噴霧乾燥することにより、ハイドロキシアパタイトを造粒させて球状の乾燥粒子を得、得られた乾燥粒子(ハイドロキシアパタイト粉体)を中心粒径約40μmで分級した。
【0162】
(参考例2)
ハイドロキシアパタイトを含むスラリーへの超音波の付与を省略した以外は、前記参考例1と同様にして、中心粒径約40μmの乾燥粒子を得た。
【0163】
2.評価
2−1.アパタイト凝集体の粒度分布の評価
実施例1、2および参考例1で、フッ素アパタイト(またはハイドロキシアパタイト)を含むスラリーに対する超音波付与の途中で採取した、超音波付与後1時間後、2時間後および3時間後のスラリーについて、それぞれ、粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、「FRA」)を用いて、スラリー中に含まれるフッ素アパタイト(またはハイドロキシアパタイト)の凝集体の50%粒径を求めた。
【0164】
なお、50%粒径とは、スラリー中に含まれる全てのフッ素アパタイト(またはハイドロキシアパタイト)からなる凝集体の和を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の凝集体の粒子径のことを言う。
その測定結果を表1に示す。
【0165】
【表1】

【0166】
ここで、フッ素アパタイトおよびハイドロキシアパタイトの一次粒子は、スラリー中では、各一次粒子間の間で生じるファンデルワールス力に基づいて、凝集体を形成している。この凝集体は、一般的に、前述したように、その粒度分布を求めたとき、その分布の頻度が大きくなる一次凝集体と二次凝集体とを形成することが知られている(図1参照)。
【0167】
このような一次凝集体と二次凝集体とを含む凝集体を形成しているフッ素アパタイト(またはハイドロキシアパタイト)を含むスラリーに対する、超音波付与による影響について検討した。その結果、フッ素アパタイトおよびハイドロキシアパタイトともに、表1に示すように、50%粒径の大きさが若干低下する傾向が時間毎に認められるだけで、その大きさに殆ど変化が認められなかった。このことから、フッ素アパタイト(またはハイドロキシアパタイト)を含むスラリーに超音波を付与することによっては、フッ素アパタイトおよびハイドロキシアパタイトともに、二次凝集体が分解されて一次凝集体とはならないことが判った。
【0168】
2−2.アパタイト粉体の強度の評価
実施例1、2、比較例1、2および参考例1、2の乾燥粒子(フッ素アパタイト粉体またはハイドロキシアパタイト粉体)について、それぞれ、微小圧縮試験機(島津製作所社製、「型番MCT−W200−J」)を用いて、その粒子強度を求めた。
その測定結果を表2に示す。
【0169】
【表2】

【0170】
表2から明らかなように、超音波を付与されたフッ素アパタイトを含むスラリーを用いて得られた実施例1、2の乾燥粒子は、超音波の付与が省略されたフッ素アパタイトを含むスラリーを用いて得られた比較例1、2の乾燥粒子と比較して、フッ素アパタイトの製造方法に関わらず、その粒子強度が強くなることが明らかとなった。
【0171】
これに対して、超音波を付与されたハイドロキシアパタイトを含むスラリーを用いて得られた参考例1の乾燥粒子は、超音波の付与が省略されたハイドロキシアパタイトを含むスラリーを用いて得られた参考例2の乾燥粒子と、ほぼ同等の粒子強度を有しており、参考例2の乾燥粒子と比較して、その粒子強度が強くなることはなかった。
【0172】
以上のことから、フッ素アパタイトを含むスラリーに超音波を付与した後、このスラリーを用いて主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体(乾燥粒子)を得る構成とすることにより、粒子強度が強いフッ素アパタイト粉体を製造し得ることが判った。また、このような現象は、フッ素アパタイト粉体において、特異的に認められることが判った。
【0173】
なお、実施例1、2では、フッ素アパタイトの合成後に超音波の付与を行うようにしたが、フッ素アパタイトの合成時に超音波を付与した場合についても同様の検討を行ったが、実施例1、2の乾燥粒子と同様の傾向を示した。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】スラリー中におけるフッ素アパタイトで構成される凝集体の粒度分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム源と、リン酸源と、フッ素源とを原材料として、湿式法を用いて合成されるフッ素アパタイトを含有するスラリーに超音波を付与する第1の工程と、
前記スラリーを乾燥することにより、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体を得る第2の工程とを有することを特徴とするフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、前記スラリーに対する超音波の付与は、前記フッ素アパタイトの合成の後に行う請求項1に記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記スラリーに付与する前記超音波の出力は、前記スラリーと水との総容量を180Lとしたとき、500〜2500Wである請求項1または2に記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、前記スラリーに前記超音波を付与する時間は、10分〜10時間である請求項1ないし3のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程における前記スラリー中の前記フッ素アパタイトの含有量は、20wt%以下である請求項1ないし4のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項6】
前記カルシウム源は、水酸化カルシウムである請求項1ないし5のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項7】
前記リン酸源は、リン酸である請求項1ないし6のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項8】
前記フッ素源は、フッ化水素である請求項1ないし7のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程において、前記フッ素アパタイトを含有するスラリーは、前記カルシウム源と前記リン酸源とを反応させることにより、ハイドロキシアパタイトを含有するスラリーを得た後、該ハイドロキシアパタイトと前記フッ素源とを反応させて、前記ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部を、フッ素原子で置換することにより得られる請求項1ないし8のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程において、前記フッ素アパタイトを含有するスラリーは、前記カルシウム源を含有するスラリーに、前記リン酸源と前記フッ素源との混合物を滴下して反応させることにより、合成されたハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されることにより得られる請求項1ないし8のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のフッ素アパタイト粉体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするフッ素アパタイト粉体。
【請求項12】
ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の一部が、フッ素原子で置換されてなるフッ素アパタイトを含有するスラリーを乾燥することにより得られた、主としてフッ素アパタイトで構成されるフッ素アパタイト粉体であって、
当該フッ素アパタイト粉体を、平均粒径40±5μmの大きさに分級し、圧縮粒子強度を測定したとき、前記圧縮粒子強度が5.4MPa以上であることを特徴とするフッ素アパタイト粉体。
【請求項13】
請求項11または12のフッ素アパタイト粉体、または、当該フッ素アパタイト粉体を焼成して得られた焼結粒子を吸着剤として備える吸着装置。
【請求項14】
請求項11または12のフッ素アパタイト粉体、または、当該フッ素アパタイト粉体を焼成して得られた焼結粒子を吸着剤として備え、複数のタンパク質を含有する液体中の前記複数のタンパク質を吸着し、それぞれの前記タンパク質と前記フッ素アパタイト粉体との吸着性の差に基づいて、各前記タンパク質を分離する吸着装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−83713(P2010−83713A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254836(P2008−254836)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】