説明

フッ素ガス生成装置

【課題】緊急停止時に安全に停止させることができ、かつ速やかに再起動させることができるフッ素ガス生成装置を提供する。
【解決手段】フッ素ガス生成装置100の緊急停止時に作動する緊急停止設備を備え、緊急停止設備は、フッ素ガス生成装置100の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って同伴ガス遮断弁47が閉弁されることによって遮断される同伴ガスに代わり、精製装置16の冷媒を代替ガスとして供給可能な代替ガス供給設備201と、代替ガスのフッ化水素供給通路41への供給と遮断を切り替える代替同伴ガス遮断弁209と、フッ素ガス生成装置100の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って開弁して計装ガスが供給可能となる計装ガス遮断弁を有する緊急停止用計装ガス供給設備とを備え、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、計装ガスの供給を受けて代替同伴ガス遮断弁209が開弁し代替ガスがフッ化水素供給通路41へと供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ガス生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフッ素ガス生成装置として、電解槽を使用し、電気分解によってフッ素ガスを生成する装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、フッ化水素を含む溶融塩からなる電解浴中でフッ化水素を電解する電解槽32を備え、陽極側の第1気相部分にフッ素ガスを主成分とするプロダクトガスを発生させると共に、陰極側の第2気相部分に水素ガスを主成分とする副生ガスを発生させるフッ素ガス生成装置が開示されている。
【0004】
電解槽32には、溶融塩中に原料であるフッ化水素を供給するための原料配管82が配設される。原料配管82には、配管83、93を介して、フッ化水素源84と窒素源94とが接続される。フッ化水素源84側の配管83には切替え弁86が配設され、窒素源94側の配管93には切替え弁96が配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−43885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のようなフッ素生成装置において、停電等のトラブルによって装置全体が緊急停止した場合には、切替え弁86,96が自動的に閉弁されてフッ化水素及び窒素ガスの供給が遮断される。このとき、原料配管82に残存するフッ化水素蒸気が電解槽32の溶融塩中に溶け込み、原料配管82内の圧力が低下することによって、電解槽32の溶融塩が原料配管82に逆流する事態が起こりうる。その場合、逆流した溶融塩は固化して原料配管82を閉塞する。
【0007】
このように、停電等のトラブルによって装置全体が緊急停止した場合には、安全に停止させることができない。また、再起動の際には、閉塞した原料配管の復旧作業が必要となるため、速やかに再起動させることができない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、緊急停止時に安全に停止させることができ、かつ速やかに再起動させることができるフッ素ガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶融塩中のフッ化水素を電気分解することによって、フッ素ガスを生成するフッ素ガス生成装置であって、溶融塩が貯留され、溶融塩に浸漬された陽極にて生成されたフッ素ガスを主成分とする主生ガスが導かれる第1気室と、溶融塩に浸漬された陰極にて生成された水素ガスを主成分とする副生ガスが導かれる第2気室とが溶融塩液面上に分離して区画された電解槽と、前記電解槽の溶融塩から気化して前記陽極から生成された主生ガスに混入したフッ化水素ガスを冷媒を使用して凝固させて捕集してフッ素ガスを精製する精製装置と、フッ化水素供給源のフッ化水素を前記電解槽に補充するためのフッ化水素供給通路と、前記フッ化水素供給源のフッ化水素を前記電解槽に導くための同伴ガスを前記フッ化水素供給通路に供給する同伴ガス供給源と、前記同伴ガス供給源の同伴ガスの供給と遮断を切り替える同伴ガス遮断弁と、前記フッ素ガス生成装置の緊急停止時に作動する緊急停止設備と、を備え、前記緊急停止設備は、前記フッ素ガス生成装置の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って前記同伴ガス遮断弁が閉弁されることによって遮断される同伴ガスに代わり、前記精製装置にてフッ化水素ガスの凝固のために使用された冷媒を代替ガスとして供給可能な代替ガス供給設備と、前記代替ガス供給設備の代替ガスの前記フッ化水素供給通路への供給と遮断を切り替える代替ガス遮断弁と、前記フッ素ガス生成装置の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って開弁して計装ガスが供給可能となる計装ガス遮断弁を有する緊急停止用計装ガス供給設備と、を備え、前記フッ素ガス生成装置の緊急停止時には、前記緊急停止用計装ガス供給設備の計装ガスの供給を受けて前記代替ガス遮断弁が開弁し、前記代替ガス供給設備の代替ガスが前記フッ化水素供給通路へと供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緊急停止時には、作動源の喪失に伴い計装ガス遮断弁が開弁することによって、代替ガス遮断弁が計装ガスの供給を受けて開弁し、代替ガス供給設備の代替ガスがフッ化水素供給通路へと供給されるため、フッ化水素供給通路に溶融塩が逆流することが防止される。したがって、フッ素ガス生成装置の緊急時にはフッ素ガス生成装置を安全に停止させることができ、かつ速やかにフッ素ガス生成装置を再起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置を示す系統図である。
【図2】緊急停止用計装ガス供給設備を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るフッ素ガス生成装置100について説明する。
【0014】
フッ素ガス生成装置100は、電気分解によってフッ素ガスを生成し、生成されたフッ素ガスを外部装置4へと供給するものである。外部装置4としては、例えば半導体製造装置であり、その場合、フッ素ガスは、例えば半導体の製造工程においてクリーニングガスとして使用される。
【0015】
フッ素ガス生成装置100は、電気分解によってフッ素ガスを生成する電解槽1と、電解槽1から生成したフッ素ガスを外部装置4へと供給するフッ素ガス供給系統2と、フッ素ガスの生成に伴って生成された副生ガスを処理する副生ガス処理系統3とを備える。
【0016】
まず、電解槽1について説明する。
【0017】
電解槽1には、フッ化水素(HF)を含む溶融塩が貯留される。本実施の形態では、溶融塩として、フッ化水素とフッ化カリウム(KF)の混合物(KF・2HF)が用いられる。
【0018】
電解槽1の内部は、溶融塩中に浸漬された区画壁6によって陽極室11と陰極室12とに区画される。陽極室11及び陰極室12の溶融塩中には、それぞれ陽極7及び陰極8が浸漬される。陽極7と陰極8の間に電源9から電流が供給されることによって、陽極7ではフッ素ガス(F2)を主成分とする主生ガスが生成され、陰極8では水素ガス(H2)を主成分とする副生ガスが生成される。陽極7には炭素電極が用いられ、陰極8には軟鉄、モネル、又はニッケルが用いられる。
【0019】
電解槽1内の溶融塩液面上には、陽極7にて生成されたフッ素ガスが導かれる第1気室11aと、陰極8にて生成された水素ガスが導かれる第2気室12aとが互いのガスが行き来不能に区画壁6によって区画される。このように、第1気室11aと第2気室12aは、フッ素ガスと水素ガスとの混触による反応を防ぐため、区画壁6によって完全に分離される。これに対して、陽極室11と陰極室12の溶融塩は、区画壁6によって分離されず区画壁6の下方を通じて連通している。
【0020】
KF・2HFの融点は71.7℃であるため、溶融塩の温度は90〜100℃に調節される。電解槽1の陽極7及び陰極8から生成したフッ素ガス及び水素ガスのそれぞれには、溶融塩からフッ化水素が蒸気圧分だけ気化して混入する。このように、陽極7にて生成され第1気室11aに導かれるフッ素ガス及び陰極8にて生成され第2気室12aに導かれる水素ガスのそれぞれには、フッ化水素ガスが含まれている。
【0021】
電解槽1には、貯留された溶融塩の液面レベルを検出する液面レベル検出器としての液面計13が設けられる。液面計13には、窒素ガス供給源45からパージガス供給通路44を通じてパージガスとして窒素ガスが供給される。液面計13に供給された窒素ガスは、電解槽1内に挿入された挿入管13aを通じて一定流量溶融塩中にパージされる。液面計13は、窒素ガスが溶融塩中にパージされた際の背圧を検知し、その背圧と溶融塩の液比重とから液面レベルを検出する背圧式液面計である。パージガス供給通路44には、窒素ガスの供給と遮断を切り替える遮断弁43が設けられる。
【0022】
遮断弁43は、コンプレッサ(図示せず)から供給される圧縮空気によって駆動する空気駆動弁であり、圧縮空気の供給が無い場合には閉弁するノーマルクローズ型の弁である。
【0023】
次に、フッ素ガス供給系統2について説明する。
【0024】
第1気室11aには、フッ素ガスを外部装置4へと供給するための第1メイン通路15が接続される。
【0025】
第1メイン通路15には、第1気室11aからフッ素ガスを導出して搬送する第1ポンプ17が設けられる。第1ポンプ17には、ベローズポンプやダイアフラムポンプ等の容積型ポンプが用いられる。
【0026】
第1メイン通路15における第1ポンプ17の上流には、主生ガスに混入したフッ化水素ガスを捕集してフッ素ガスを精製する精製装置16が設けられる。精製装置16は、フッ素とフッ化水素との沸点の違いを利用して、フッ素ガスからフッ化水素ガスを分離して取り除く装置である。
【0027】
精製装置16は、フッ化水素ガスを含むフッ素ガスが流入するガス流入部としてのインナーチューブ61と、フッ素ガスに混入したフッ化水素ガスが凝固する一方、フッ素ガスはインナーチューブ61を通過するように、フッ素の沸点以上かつフッ化水素の融点以下の温度でインナーチューブ61を冷却する冷却装置70とを備える。
【0028】
インナーチューブ61は、有底筒状部材であり、上部開口は蓋部材62にて封止される。蓋部材62には、インナーチューブ61内に陽極7にて生成されたフッ素ガスを導く入口通路63と、インナーチューブ61からフッ素ガスを排出するための出口通路65とが接続される。入口通路63と出口通路65は、第1メイン通路15の一部を構成する。
【0029】
入口通路63には、インナーチューブ61へのフッ素ガスの流入を許容又は遮断する入口弁64が設けられる。出口通路65には、インナーチューブ61からのフッ素ガスの流出を許容又は遮断する出口弁66が設けられる。
【0030】
冷却装置70は、インナーチューブ61を部分的に収容可能であり内部に冷媒としての液体窒素を貯留可能なジャケットチューブ71と、ジャケットチューブ71に対して液体窒素を給排する液体窒素給排系統72とを備える。
【0031】
ジャケットチューブ71には、液体窒素供給源76から供給される液体窒素をジャケットチューブ71内に導く液体窒素供給通路77が接続される。液体窒素供給通路77には、液体窒素の供給流量を制御する流量制御弁78が設けられる。液体窒素供給通路77における流量制御弁78の下流には、ジャケットチューブ71の内部圧力を検出する圧力計80が設けられる。
【0032】
ジャケットチューブ71内は、液体窒素と気化した窒素ガスとの2層からなり、液体窒素の液面レベルは液面計74によって検出される。
【0033】
ジャケットチューブ71には、ジャケットチューブ71内の窒素ガスを排出するための窒素ガス排出通路79が接続される。窒素ガス排出通路79には、ジャケットチューブ71の内部圧力を制御する圧力調整弁81が設けられる。圧力調整弁81は、圧力計80の検出結果に基づいて、ジャケットチューブ71の内部圧力が予め定められた所定圧力となるように制御する。この所定圧力は、ジャケットチューブ71内の液体窒素の温度がフッ素の沸点(−188℃)以上かつフッ化水素の融点(−84℃)以下の温度となるように決定される。具体的には、ジャケットチューブ71内の液体窒素の温度が−180℃程度となるように、0.4MPaに設定される。このように、圧力調整弁81は、ジャケットチューブ71内の液体窒素の温度が−180℃程度に維持されるように、ジャケットチューブ71の内部圧力を0.4MPaに制御する。圧力調整弁81を通じて排出された窒素ガスは大気に放出される。
【0034】
ジャケットチューブ71内の液体窒素が気化して排出されることによって、ジャケットチューブ71内の液体窒素は減少する。そこで、流量制御弁78は、液面計74の検出結果に基づいて、ジャケットチューブ71内の液体窒素の液面レベルが一定に維持されるように、液体窒素供給源76からジャケットチューブ71への液体窒素の供給流量を制御する。
【0035】
インナーチューブ61は、ジャケットチューブ71によって、フッ素の沸点以上かつフッ化水素の融点以下の温度に冷却されるため、インナーチューブ61内ではフッ素ガスに混入したフッ化水素のみが凝固し、フッ素ガスはインナーチューブ61を通過する。このようにして、主生ガスに混入したフッ化水素ガスが捕集され、フッ素ガスが精製される。
【0036】
第1メイン通路15における第1ポンプ17の下流には、第1ポンプ17によって搬送されたフッ素ガスを貯留するための第1バッファタンク21が設けられる。第1バッファタンク21に貯留されたフッ素ガスは外部装置4へと供給される。
【0037】
第1バッファタンク21の下流には、外部装置4へと供給されるフッ素ガスの流量を検出する流量計26が設けられる。電源9は、流量計26の検出結果に基づいて、陽極7と陰極8の間に供給される電流値を制御する。具体的には、第1バッファタンク21から外部装置4へと供給されたフッ素ガス量が第1バッファタンク21に補充されるように、陽極7におけるフッ素ガスの生成量を制御する。
【0038】
このように、陽極7におけるフッ素ガスの生成量は、外部装置4へと供給されたフッ素ガス量を補充するように制御されるため、第1バッファタンク21の内部圧力は大気圧よりも高い圧力に維持される。これに対して、フッ素ガスが使用される外部装置4側は大気圧であるため、外部装置4に設けられるバルブを開弁すれば、第1バッファタンク21と外部装置4との間の圧力差によって、第1バッファタンク21から外部装置4へとフッ素ガスが供給されることになる。
【0039】
第1メイン通路15における第1バッファタンク21の上流と下流には、それぞれフッ素ガスの流通を許容又は遮断する遮断弁22,23が設けられる。
【0040】
第1メイン通路15に設けられる入口弁64、出口弁66、遮断弁22、及び遮断弁23は、コンプレッサから供給される圧縮空気によって駆動する空気駆動弁であり、圧縮空気の供給が無い場合には閉弁するノーマルクローズ型の弁である。
【0041】
次に、副生ガス処理系統3について説明する。
【0042】
第2気室12aには、水素ガスを外部へと排出するための第2メイン通路30が接続される。
【0043】
第2メイン通路30には、第2気室12aから水素ガスを導出して搬送する第2ポンプ31が設けられる。
【0044】
第2メイン通路30における第2ポンプ31の上流には、窒素ガス供給源45から希釈ガス供給通路32を通じて水素ガスの濃度を低下させる爆発防止用の希釈ガスとして窒素ガスが供給される。希釈ガス供給通路32には、窒素ガスの供給と遮断を切り替える遮断弁33が設けられる。
【0045】
また、第2メイン通路30における第2ポンプ31の上流には、水素ガスの流通と遮断を切り替える遮断弁35が設けられる。
【0046】
第2メイン通路30における第2ポンプ31の下流には除害部34が設けられ、第2ポンプ31にて搬送された水素ガスは除害部34にて無害化されて放出される。
【0047】
希釈ガス供給通路32に設けられる遮断弁33及び第2メイン通路30に設けられる遮断弁35は、コンプレッサから供給される圧縮空気によって駆動する空気駆動弁であり、圧縮空気の供給が無い場合には閉弁するノーマルクローズ型の弁である。
【0048】
フッ素ガス生成装置100は、電解槽1の溶融塩中にフッ素ガスの原料であるフッ化水素を供給する原料供給系統5も備える。以下では、原料供給系統5について説明する。
【0049】
電解槽1は、電解槽1に補充するためのフッ化水素が貯留されたフッ化水素供給源40とフッ化水素供給通路41を介して接続される。フッ化水素供給源40に貯留されたフッ化水素は、フッ化水素供給通路41を通じて電解槽1の溶融塩中に供給される。フッ化水素供給通路41には、フッ化水素供給源40から電解槽1へのフッ化水素の供給と遮断を切り替える遮断弁42が設けられる。
【0050】
また、フッ化水素供給通路41には、同伴ガス供給源としての窒素ガス供給源45から同伴ガス供給通路46を通じて同伴ガスとして窒素ガスが供給される。同伴ガス供給通路46には、同伴ガスの供給と遮断を切り換える同伴ガス遮断弁としての遮断弁47が設けられる。同伴ガスは、フッ化水素を電解槽1の溶融塩中に導くためのガスである。同伴ガスである窒素ガスは、溶融塩中にはほとんど溶けず、第2気室12aから副生ガス処理系統3を通じて排出される。
【0051】
フッ化水素供給通路41に設けられる遮断弁42及び同伴ガス供給通路46に設けられる遮断弁47は、コンプレッサから供給される圧縮空気によって駆動する空気駆動弁であり、圧縮空気の供給が無い場合には閉弁するノーマルクローズ型の弁である。
【0052】
以上のように、電解槽1の液面計13には、ノーマルクローズ型の空気駆動弁である遮断弁43が設けられる。
【0053】
また、フッ素ガス供給系統2には、ノーマルクローズ型の空気駆動弁である入口弁64、出口弁66、遮断弁22、及び遮断弁23が設けられる。
【0054】
また、副生ガス処理系統3には、ノーマルクローズ型の空気駆動弁である遮断弁33及び遮断弁35が設けられる。
【0055】
また、原料供給系統5には、ノーマルクローズ型の空気駆動弁である遮断弁42及び遮断弁47が設けられる。
【0056】
停電やコンプレッサの故障等に伴うフッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、これらの空気駆動弁は駆動源である圧縮空気の喪失によって閉弁する。
【0057】
その場合、液面計13では、パージガスである窒素ガスの供給が遮断されるため、電解槽1中のフッ化水素蒸気が液面計13内に流入し、液面計13がフッ化水素によって腐食して故障が発生するおそれがある。
【0058】
また、フッ素ガス供給系統2では、精製装置16のインナーチューブ61及び第1ポンプ17がそれぞれ密閉されるため、インナーチューブ61及び第1ポンプの内部圧力が上昇し、フッ素ガスが漏洩するおそれがある。
【0059】
また、副生ガス処理系統3では、希釈ガスである窒素ガスの供給が遮断されるため、第2メイン通路30中の水素ガスの濃度が上昇するおそれがある。
【0060】
また、原料供給系統5では、フッ化水素供給源40から電解槽1へのフッ化水素の供給、及び同伴ガスである窒素ガスの供給が遮断される。これにより、フッ化水素供給通路41に残存するフッ化水素蒸気が電解槽1の溶融塩中に溶け込み、フッ化水素供給通路41内の圧力が低下するため、電解槽1の溶融塩がフッ化水素供給通路41に逆流するおそれがある。その場合には、逆流した溶融塩が固化することによって、フッ化水素供給通路41が閉塞するおそれがある。
【0061】
さらに、電解槽1では、内部が密閉状態となるため、内部圧力が上昇して溶融塩が漏洩するおそれがある。
【0062】
これらの対策として、フッ素ガス生成装置100は、緊急停止時に作動して、装置全体を安全に停止させるための緊急停止設備を備える。以下では、緊急停止設備について説明する。
【0063】
緊急停止設備は、フッ素ガス生成装置100の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って各空気駆動弁が閉弁されることによって遮断される窒素ガス供給源45の窒素ガスに代わり、代替ガスを供給可能な代替ガス供給設備201と、フッ素ガス生成装置100の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って代替ガス供給設備201に計装ガスが供給可能となる緊急停止用計装ガス供給設備210(図2参照)とを備える。
【0064】
代替ガス供給設備201は、精製装置16の冷却装置70にてフッ化水素ガスの凝固のために使用され排出された液体窒素を回収して保存し、窒素ガスを代替ガスとして供給可能な窒素バッファタンク202を備える。
【0065】
冷却装置70のジャケットチューブ71には、液体窒素を排出するための液体窒素排出通路90が接続される。液体窒素排出通路90の下流端は、窒素バッファタンク202に接続される。液体窒素排出通路90には、ジャケットチューブ71内の液体窒素の窒素バッファタンク202への排出と遮断を切り替える冷媒遮断弁203が設けられる。冷媒遮断弁203は、緊急停止用計装ガス供給設備210から供給される計装ガスによって駆動する空気駆動弁であり、計装ガスの供給が無い通常状態では閉弁であるノーマルクローズ型の弁である。
【0066】
窒素バッファタンク202は、ジャケットチューブ71よりも下方に配置されるため、冷媒遮断弁203が開弁されることによって、ジャケットチューブ71内の液体窒素は重力によって窒素バッファタンク202に排出される。
【0067】
液体窒素の排出を受けた窒素バッファタンク202内は、液体窒素と窒素ガスとの2層からなる。窒素バッファタンク202には、内部の窒素ガスをフッ素ガス生成装置100の各所に代替ガスとして供給するための代替ガス供給通路204が接続される。代替ガス供給通路204には、代替ガスの供給と遮断を切り替える代替ガス遮断元弁205が設けられる。また、代替ガス遮断元弁205の下流には、代替ガスを所定圧力に減圧する減圧弁206が設けられる。
【0068】
代替ガス供給通路204は途中で複数に分岐して形成され、窒素バッファタンク202内の窒素ガスは、窒素ガス供給源45の窒素ガスの代替ガスとしてフッ素ガス生成装置100の各所に供給される。具体的には、代替ガス供給通路204は、液面計13にパージガスを供給する代替パージガス供給通路204aと、第2メイン通路30に希釈ガスを供給する代替希釈ガス供給通路204bと、フッ化水素供給通路41に同伴ガスを供給する代替同伴ガス供給通路204cとに分岐して形成される。
【0069】
代替パージガス供給通路204aには、パージガスの供給と遮断を切り替える代替パージガス遮断弁207が設けられ、代替希釈ガス供給通路204bには、希釈ガスの供給と遮断を切り替える代替希釈ガス遮断弁208が設けられ、代替同伴ガス供給通路204cには同伴ガスの供給と遮断を切り替える代替同伴ガス遮断弁209が設けられる。
【0070】
代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、及び代替同伴ガス遮断弁209は、緊急停止用計装ガス供給設備210から供給される計装ガスによって駆動する空気駆動弁であり、計装ガスの供給が無い通常状態では閉弁であるノーマルクローズ型の弁である。
【0071】
また、液面計13の挿入管13aは、途中並列に分岐して形成され、一方の通路には、通常運転時には開状態でありパージガスの供給を可能とする通常時供給弁242が設けられ、他方の通路には、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には開状態となりパージガスの供給を可能とする緊急時供給弁243が設けられる。
【0072】
通常時供給弁242は、コンプレッサ(図示せず)から供給される圧縮空気によって駆動する空気駆動弁であり、圧縮空気の供給が無い場合には閉弁するノーマルクローズ型の弁である。また、緊急時供給弁243は、緊急停止用計装ガス供給設備210から供給される計装ガスによって駆動する空気駆動弁であり、計装ガスの供給が無い通常状態では閉弁であるノーマルクローズ型の弁である。
【0073】
図2に示すように、緊急停止用計装ガス供給設備210は、計装ガスである圧縮空気が充填された計装ガス容器としてのボンベ211を備える。ボンベ211には、内部の計装ガスを冷媒遮断弁203、代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、及び代替同伴ガス遮断弁209に供給するための計装ガス供給通路212が接続される。計装ガス供給通路212には、計装ガスの供給と遮断を切り替える計装ガス遮断弁213が設けられる。また、計装ガス遮断弁213の下流には、計装ガスを所定圧力に減圧する減圧弁214が設けられる。計装ガス遮断弁213は、コンプレッサから供給される圧縮空気によって駆動する空気駆動弁であり、圧縮空気の供給が無い場合には開弁するノーマルオープン型の弁である。したがって、コンプレッサが運転状態である通常状態では、計装ガス遮断弁213は閉弁状態である。
【0074】
計装ガス遮断弁213は、停電やコンプレッサの故障等に伴うフッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、駆動源である圧縮空気の喪失によって開弁する。これにより、ボンベ211の計装ガスは、計装ガス供給通路212を通じて冷媒遮断弁203、代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、代替同伴ガス遮断弁209、及び緊急時供給弁243に供給され、駆動源である計装ガスの供給を受けた各弁203,205,207,208,209,243は開弁する。このように、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、冷媒遮断弁203、代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、代替同伴ガス遮断弁209、及び緊急時供給弁243は開弁する。
【0075】
計装ガス供給通路212における減圧弁214の下流には、計装ガスを大気放出する放出通路215が分岐して設けられる。放出通路215には、計装ガスの放出流量を制限する流量制限部としてのオリフィス216が設けられる。このように、計装ガス遮断弁213の開弁後、計装ガス供給通路212内の計装ガスは放出通路215を通じて大気に放出される。計装ガス供給通路212内の計装ガスの大気放出に伴って、計装ガスの圧力が各弁203,205,207,208,209,243の必要駆動圧を下回った場合には、各弁203,205,207,208,209,243は閉弁することになる。計装ガスの総量はボンベ211の容量によって決まり、計装ガスの放出流量はオリフィス216の径にて決まる。したがって、冷媒遮断弁203、代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、代替同伴ガス遮断弁209、及び緊急時供給弁243の開弁時間は、ボンベ211の容量及びオリフィス216の径によって調整される。
【0076】
なお、計装ガス遮断弁213を空気駆動弁にて構成する代わりに、電気を駆動源とし、電気の供給が無い場合には開弁するノーマルオープン型の電磁弁にて構成するようにしてもよい。このように構成しても、停電に伴うフッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、計装ガス遮断弁213は駆動源の喪失によって開弁するため、冷媒遮断弁203、代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、代替同伴ガス遮断弁209、及び緊急時供給弁243は開弁する。
【0077】
次に、図1を参照して、フッ素ガス供給系統2及び副生ガス処理系統3における緊急停止設備について説明する。
【0078】
緊急停止設備は、第1メイン通路15と並列に設けられた除害用通路221を備える。
【0079】
第1メイン通路15における入口弁64の上流側、つまり電解槽1の第1気室11aと除害用通路221とは第1排出通路222を通じて接続される。第1メイン通路15における入口弁64と出口弁66との間、つまり精製装置16のインナーチューブ61と除害用通路221とは第2排出通路223を通じて接続される。また、第1メイン通路15における出口弁66と遮断弁22との間には第1ポンプ17をバイパスするバイパス通路225が接続され、バイパス通路225と除害用通路221とは第3排出通路224を通じて接続される。
【0080】
除害用通路221には除害部226が設けられ、各排出通路222,223,224にて排出されたフッ素ガスは除害部226にて無害化されて放出される。
【0081】
各排出通路222,223,224には、第1メイン通路15から除害用通路221へのフッ素ガスの排出と遮断を切り替える遮断弁227,228,229が設けられる。また、遮断弁227,228,229の下流には、第1メイン通路15から除害用通路221へのフッ素ガスの流れのみを許容する逆止弁230,231,232が設けられる。
【0082】
遮断弁227,228,229は、緊急停止用計装ガス供給設備210から供給される計装ガスによって駆動する空気駆動弁であり、計装ガスの供給が無い通常状態では閉弁であるノーマルクローズ型の弁である。したがって、遮断弁227,228,229は、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、駆動源である計装ガスの供給を受けて開弁する。
【0083】
また、第2メイン通路30には遮断弁35をバイパスするバイパス通路240が接続される。バイパス通路240にはバイパス遮断弁241が設けられる。
【0084】
バイパス遮断弁241は、緊急停止用計装ガス供給設備210から供給される計装ガスによって駆動する空気駆動弁であり、計装ガスの供給が無い通常状態では閉弁であるノーマルクローズ型の弁である。したがって、バイパス遮断弁241は、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、駆動源である計装ガスの供給を受けて開弁する。
【0085】
次に、緊急停止設備の動作について説明する。
【0086】
停電やコンプレッサの故障等に伴うフッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、コンプレッサから各遮断弁43,47,33への圧縮空気の供給が停止されるため、窒素ガス供給源45から液面計13、フッ化水素供給通路41、及び第2メイン通路30への窒素ガスの供給が遮断される。また、コンプレッサからフッ素ガス供給系統2の入口弁64、出口弁66、遮断弁22、遮断弁23、及び副生ガス処理系統3の遮断弁35への圧縮空気の供給も停止されるため、これら各弁も閉弁する。したがって、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、フッ素ガス生成装置100の各所にて上述したような事態が発生するおそれがある。
【0087】
しかし、計装ガス遮断弁213は駆動源である圧縮空気の喪失によって開弁し、冷媒遮断弁203、代替ガス遮断元弁205、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、及び代替同伴ガス遮断弁209は、ボンベ211の計装ガスの供給を受けて開弁する。
【0088】
冷媒遮断弁203の開弁によって、ジャケットチューブ71内の液体窒素は窒素バッファタンク202に排出される。液体窒素の排出を受けた窒素バッファタンク202内は液体窒素と窒素ガスとの2層からなり、窒素ガスは、代替パージガス供給通路204a、代替希釈ガス供給通路204b、及び代替同伴ガス供給通路204cを通じて液面計13、第2メイン通路30、及びフッ化水素供給通路41に供給される。そして、液面計13では、緊急時供給弁243もボンベ211の計装ガスの供給を受けて開弁するため、コンプレッサからの圧縮空気の供給の停止によって閉弁した通常時供給弁242をバイパスしてパージガスが溶融塩中に供給される。このように、窒素ガス供給源45からの窒素ガスの供給が遮断されても、窒素バッファタンク202から窒素ガスが代替ガスとして供給されるため、フッ素ガス生成装置100の緊急停止前と同じ状態を保つことができる。したがって、液面計13の故障、第2メイン通路30中の水素ガス濃度の上昇、及び溶融塩の逆流によるフッ化水素供給通路41の閉塞が防止される。
【0089】
計装ガス遮断弁213の開弁によって、フッ素ガス供給系統2の遮断弁227,228,229もボンベ211の計装ガスの供給を受けて開弁する。これにより、電解槽1の第1気室11a、インナーチューブ61、及び第1ポンプ17は除害用通路221に連通する。また、計装ガス遮断弁213の開弁によって、副生ガス処理系統3のバイパス遮断弁241もボンベ211の計装ガスの供給を受けて開弁する。これにより、電解槽1の第2気室12aは除害部34に連通し、フッ素ガス生成装置100の緊急停止前と同じ状態が保たれる。このように、フッ素ガス生成装置100の緊急停止時にフッ素ガス供給系統2及び副生ガス処理系統3の各弁が閉弁しても、電解槽1、インナーチューブ61、及び第1ポンプ17が密閉状態となることが防止され、内部圧力が上昇することが防止される。
【0090】
ボンベ211から供給される計装ガスは放出通路215を通じて大気に放出されるため、所定時間経過後、計装ガスの供給を受けて開弁していた各弁は閉弁する。ここで、液面計13では、通常時供給弁242及び緊急時供給弁243の双方が閉弁状態となるため、代替パージガス遮断弁207の閉弁によってパージガスの供給が停止された後も、電解槽1中のフッ化水素蒸気が液面計13内に流入することが防止される。また、挿入管13a内はパージガスにて十分置換された後に、緊急時供給弁243が閉弁するため、フッ素ガス生成装置100の再起動時には、液面計13は溶融塩の液面レベルを速やかに検出することが可能となる。
【0091】
各弁の開弁時間を規定するボンベ211の容量及びオリフィス216の径は、液面計13、フッ化水素供給通路41、及び第2メイン通路30への代替ガスの必要供給流量、並びに電解槽1、インナーチューブ61、及び第1ポンプ17の圧力上昇防止の観点から決められる。
【0092】
以上のように、フッ素ガス生成装置100が緊急停止した場合でも、緊急停止設備の作動によって、フッ化水素供給通路41の閉塞、液面計13の故障、電解槽1と第1メイン通路15の圧力上昇、及び第2メイン通路30中の水素ガス濃度の上昇等が防止され、フッ素ガス生成装置100を安全に停止させることができる。したがって、停電やコンプレッサの故障等が回復した場合には、フッ化水素供給通路41のガス置換等の特別な操作を行わなくても、速やかにフッ素ガス生成装置100を再起動させることができる。
【0093】
以上の実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0094】
フッ素ガス生成装置100の緊急停止時には、計装ガス遮断弁213が開弁し、それに伴いジャケットチューブ71内の液体窒素が代替ガスとして液面計13、フッ化水素供給通路41、及び第2メイン通路30に供給されると共に、電解槽1及び第1メイン通路15の圧力上昇が防止される。したがって、フッ素ガス生成装置100の緊急時にはフッ素ガス生成装置100を安全に停止させることができ、かつ停電やコンプレッサの故障等が回復した場合には、速やかにフッ素ガス生成装置100を再起動させることができる。
【0095】
以下に、上記実施の形態の他の形態について説明する。
【0096】
(1)上記実施の形態は、計装ガスとしてボンベ211に充填された圧縮空気を用いるものである。これに代わり、窒素バッファタンク202内の窒素ガスを計装ガスとして用いるようにしてもよい。つまり、窒素バッファタンク202内の窒素ガスを、窒素ガス供給源45の窒素ガスの代替ガスとして用いると共に、緊急停止用計装ガス供給設備210の計装ガスとしても用いるようにしてもよい。ただ、窒素ガスの供給量、及び計装ガスを受けて開弁する各弁の必要駆動圧の確保の観点から、ボンベ211から計装ガスを供給するのが望ましい。
【0097】
(2)上記実施の形態は、精製装置16の冷却装置70から排出された液体窒素を窒素バッファタンク202にて回収した後、窒素バッファタンク202内の窒素ガスを代替ガスとして利用するものである。これに代わり、冷却装置70から排出された液体窒素を代替ガスとして直接利用するようにしてもよい。その場合、液体窒素排出通路90の下流側に熱交換を利用した気化器を設けて液体窒素をガス化させる必要がある。
【0098】
(3)上記実施の形態は、精製装置16にて使用される冷媒として液体窒素を用いるものである。しかし、冷媒は液体窒素に限られるものではなく、液体アルゴン等を用いるようにしてもよい。
【0099】
(4)上記実施の形態では、フッ素ガス生成装置100の緊急停止の要因として、停電やコンプレッサの故障を挙げた。しかし、フッ素ガス生成装置100の緊急停止の要因はこれに限られるものではなく、フッ素ガス生成装置100の制御装置の故障や、電解槽1、各弁の故障に伴う手動及び自動による緊急停止も含む。
【0100】
(5)上記実施の形態では、窒素バッファタンク202はジャケットチューブ71よりも下方に配置される。しかし、窒素バッファタンク202は、ジャケットチューブ71と同レベル又はジャケットチューブ71よりも上方に配置するようにしてもよい。その場合には、ジャケットチューブ71内の液体窒素を窒素バッファタンク202に排出するために、ボンベ211の計装ガスによって駆動するポンプを液体窒素排出通路90に設ける必要がある。また、ポンプを設ける代わりに、ジャケットチューブ71内の気相部を加圧することによって、ジャケットチューブ71内の液体窒素を窒素バッファタンク202に排出するようにしてもよい。
【0101】
(6)上記実施の形態では、代替ガス供給設備201の遮断弁として、代替ガス遮断元弁205の他に、代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、及び代替同伴ガス遮断弁209も設けるように構成した。しかし、これに代わり、代替ガス遮断元弁205のみを設けるか、又は代替ガス遮断元弁205を設けずに代替パージガス遮断弁207、代替希釈ガス遮断弁208、及び代替同伴ガス遮断弁209のみを設けるように構成してもよい。
【0102】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、フッ素ガスを生成する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
100 フッ素ガス生成装置
1 電解槽
2 フッ素ガス供給系統
3 副生ガス処理系統
4 外部装置
5 原料供給系統
7 陽極
8 陰極
13 液面計
15 第1メイン通路
16 精製装置
17 第1ポンプ
22,23 遮断弁
30 第2メイン通路
32 希釈ガス供給通路
33,35 遮断弁
40 フッ化水素供給源
41 フッ化水素供給通路
42,43 遮断弁
44 パージガス供給通路
45 窒素ガス供給源
46 同伴ガス供給通路
47 遮断弁
61 インナーチューブ
64 入口弁
66 出口弁
71 ジャケットチューブ
90 液体窒素排出通路
201 代替ガス供給設備
202 窒素バッファタンク
203 冷媒遮断弁
204 代替ガス供給通路
205 代替ガス遮断元弁
207 代替パージガス遮断弁
208 代替希釈ガス遮断弁
209 代替同伴ガス遮断弁
210 緊急停止用計装ガス供給設備
211 ボンベ
213 計装ガス遮断弁
215 放出通路
216 オリフィス
221 除害用通路
227,228,229 遮断弁
230,231,232 逆止弁
241 バイパス遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩中のフッ化水素を電気分解することによって、フッ素ガスを生成するフッ素ガス生成装置であって、
溶融塩が貯留され、溶融塩に浸漬された陽極にて生成されたフッ素ガスを主成分とする主生ガスが導かれる第1気室と、溶融塩に浸漬された陰極にて生成された水素ガスを主成分とする副生ガスが導かれる第2気室とが溶融塩液面上に分離して区画された電解槽と、
前記電解槽の溶融塩から気化して前記陽極から生成された主生ガスに混入したフッ化水素ガスを冷媒を使用して凝固させて捕集してフッ素ガスを精製する精製装置と、
フッ化水素供給源のフッ化水素を前記電解槽に補充するためのフッ化水素供給通路と、
前記フッ化水素供給源のフッ化水素を前記電解槽に導くための同伴ガスを前記フッ化水素供給通路に供給する同伴ガス供給源と、
前記同伴ガス供給源の同伴ガスの供給と遮断を切り替える同伴ガス遮断弁と、
前記フッ素ガス生成装置の緊急停止時に作動する緊急停止設備と、を備え、
前記緊急停止設備は、
前記フッ素ガス生成装置の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って前記同伴ガス遮断弁が閉弁されることによって遮断される同伴ガスに代わり、前記精製装置にてフッ化水素ガスの凝固のために使用された冷媒を代替ガスとして供給可能な代替ガス供給設備と、
前記代替ガス供給設備の代替ガスの前記フッ化水素供給通路への供給と遮断を切り替える代替ガス遮断弁と、
前記フッ素ガス生成装置の緊急停止に伴う駆動源の喪失に伴って開弁して計装ガスが供給可能となる計装ガス遮断弁を有する緊急停止用計装ガス供給設備と、を備え、
前記フッ素ガス生成装置の緊急停止時には、前記緊急停止用計装ガス供給設備の計装ガスの供給を受けて前記代替ガス遮断弁が開弁し、前記代替ガス供給設備の代替ガスが前記フッ化水素供給通路へと供給されることを特徴とするフッ素生成装置。
【請求項2】
前記精製装置は、
フッ化水素ガスを含む主生ガスが流入するガス流入部と、
主生ガスに混入したフッ化水素ガスが凝固する一方、フッ素ガスは前記ガス流入部を通過するように、フッ素の沸点以上かつフッ化水素の融点以下の温度で前記ガス流入部を冷媒を用いて冷却する冷却装置と、を備え、
前記代替ガス供給設備は、
前記冷却装置から排出された冷媒を回収して保存し、冷媒を代替ガスとして供給可能なバッファタンクと、
前記冷却装置の冷媒の前記バッファタンクへの排出と遮断を切り替える冷媒遮断弁と、を備え、
前記フッ素ガス生成装置の緊急停止時には、前記緊急停止用計装ガス供給設備の計装ガスの供給を受けて前記冷媒遮断弁が開弁し、前記冷却装置の冷媒が前記バッファタンクへと排出されることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項3】
緊急停止用計装ガス供給設備は、
計装ガスが充填された計装ガス容器と、
前記計装ガス遮断弁の下流に設けられ、計装ガスを大気放出する放出通路と、
前記放出通路に設けられ、計装ガスの放出流量を制限する流量制限部と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項4】
前記バッファタンクに保存された冷媒は、同伴ガスの代替ガスとして用いられると共に、前記緊急停止用計装ガス供給設備の計装ガスとしても用いられることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のフッ素ガス生成装置。
【請求項5】
前記第1気室に接続され、主成ガスを外部装置へと供給するための第1メイン通路をさらに備え、
前記緊急停止設備は、
前記第1メイン通路と並列に設けられた除害用通路と、
前記第1メイン通路と前記除害用通路とを接続する排出通路と、
前記排出通路に設けられ、前記第1メイン通路から前記除害用通路への主成ガスの排出と遮断を切り替える遮断弁と、をさらに備え、
前記フッ素ガス生成装置の緊急停止時には、前記緊急停止用計装ガス供給設備の計装ガスの供給を受けて前記遮断弁が開弁し、前記第1メイン通路の主成ガスが前記除害用通路へと排出されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のフッ素ガス生成装置。

【図1】
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【図2】
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