説明

フッ素ポリマー分散体を含んだ高耐候性屋根用コーティング

本発明は、水平、低傾斜の柔軟性を有した表面、特に、水平、低傾斜の屋根に使用される水性のフッ素重合体コーティングに関する。当該コーティングは工場、現場で使用できる。また、当該コーティングにより、耐久性、低粉塵性、耐汚染性、防水加工、太陽光反射持続性、白カビ耐性が改良されるという効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平、低傾斜の柔軟性を有した表面、特に、水平、低傾斜の屋根に使用される水性のフッ素重合体コーティングに関する。当該コーティングは工場、現場で使用できる。また、当該コーティングにより、耐久性、低粉塵性、耐汚染性、防水加工、太陽光反射持続性、白カビ耐性が改良されるという効果を示す。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟性を有した屋根用の現場に利用されるコーティングは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂を原料とする。これらのコーティングは、存在する物質、もしくは、EPDM製の新品の屋根、アスファルト、噴霧された泡、ポリオレフィンもしくは他の膜などに、スプレーされてしばしば使用される。これらのコーティングは、雹や他の環境ストレスによる割れ目や他のダメージに対する耐性が必要なため、高い柔軟性が必要となる。これらのコーティングは、かなりの割合で、色は白色であり、太陽光線を高い割合で反射するので、それにより屋根の冷却効率を維持することで、建物のエネルギーコストを下げることができる。冷却効率の基準については、冷却屋根レーティングカウンシル(Cool Roof Ratings Council)により定義されている。しかしながら、現在のコーティングの技術では、時間の経過と共に、2つの主要な要因、すなわち、1)粉塵とコーティングの環境染色と2)太陽光線/紫外線による退化とコーティングの中の高分子バインダの浸食により、前記した反射率をしばしば維持できない。
【0003】
最表面の高分子バインダが、屋根ふきシステムの内部の層で存在する低分子量の構成要素、例えば可塑剤又は色のついた不純物(例えばアスファルトの材料)が表面に浸出することを防止するバリア特性が十分でない場合でも、若しくは風化の進んだ場合でも、反射率は減少する。これらの可塑剤と色のついた不純物は、菌類と他の生体組織の食物源となる。それらが屋根の表面に近いとき、それらにより色のついた菌類、糸状菌、カビと藻の成長を促進する。そして、それにより屋根は染色され、さらに屋根の反射率を低下させる。生体の成長は、コーティング層の高い水分吸収率によっても促進される。そこで、水吸収(と後の現場の耐候性)が非常に低いレベルにあり、また、屋根ふきシステムの内部から、可塑剤とその他の有色の不純物の移動を防止することができる屋根を保護するコーティングが必要となる。
【0004】
1つの方法としては、米国特許第6680357号公報(特許文献1)と米国特許第6833414号公報(特許文献2)に示され、低粉塵の技術で知られているが、重合体のガラスの転移温度(Tg)を上げることによって、もしくは、最終的な重合体膜を架橋させるレベルを上昇させることによって、最表面の高分子バインダを「より硬く」する方法が知られている。しかしながら、この方法を、柔軟性を有する屋根用のコーティングに使用するには、コーティングが優れた柔軟性を維持する必要があり、そのために、その実施は制限される。より高いTgを有するコーティングは、一般には、その使用が制限され環境保護に適した低揮発性有機溶媒(VOC)コーティングとしては認められない高いレベルのVOCを必要とする。硬い物質において凝集剤のレベルが十分でないと、使用時にコーティングに割れ目が入って、良好な撥水性、保護特性を有することはできない。
【0005】
米国特許第5532304号公報(特許文献3)には、又、コーティングの耐汚染性を高めるために、架橋が可能なフッ素重合体を特定の硬化剤、更には四官能基性加水分解性シランオリゴマーと結合させる方法が示されている。しかしながら、前記特許では、柔軟性のある基質と特性の良好なバランスを維持するようなコーティングの柔軟性の維持については示されていない。さらには、この文献においては、コーティングの柔軟性を大きく制限する四官能基性シランオリゴマーは高レベル(フッ素重合体に対して5〜50%まで)であることが好ましいとされている。
【0006】
高耐候性「冷却効率の良い屋根」の塗料は、ポリ(フッ化ビニリデン)樹脂を含むフッ素重合体の溶液分散のコイルコーティングにより作製されるものであり、たとえば、KYNAR 500 PVDF樹脂(登録商標)(アーケマ(Arkema)社)又はKYNAR 9301(アーケマ(Arkema)社)、Zeffle LC 700(ダイキン)、いわゆるFEVE樹脂(例えば旭硝子からのルミフロン(Lumiflon)樹脂)などのポリエステル繊維(フッ化ビニリデン)共重合体のようなフッ素重合体の溶液、米国特許第6242557号公報(特許文献4)に示されるようなペルフルオロエーテルコーティングが知られている。これらの塗料の多くは、優れた耐汚染性、低粉塵性を示し、「冷却効率の良い屋根」の特徴を長期にわたって維持できる。しかしながら、これらの塗料は高レベルVOCsを使用しているため、低レベルのVOCコーティングとしては認められない。さらに、コイルコーティングは高温焼成が必要であり、柔軟性を有する屋根に利用することはできない。また、同様の理由で、現存する屋根に利用することもできない。
【0007】
本願発明では、驚くべきことに、水性アクリル変性フッ素重合体を含んだコーティング組成物を柔軟性のある基材に使用できることを発見した。それによると、十分に耐久性を改善でき、可塑剤の移動、低水分吸収性、低粉塵性、反射率の長期維持を含んだ対汚染性を改善でき、さらに低レベルのVOCコーティングとして提供できることがわかった。
【特許文献1】米国特許第6680357号公報
【特許文献2】米国特許第6833414号公報
【特許文献3】米国特許第5532304号公報
【特許文献4】米国特許第6242557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐久性、低粉塵性、対汚染性、撥水性、太陽光の反射率の持続、白カビ耐性を有した水性の屋根用コーディングを提供することを目的とする。
【0009】
さらには、本発明は、完全な屋根のコーティングもしくは表面のコーティングに工場もしくは現場で使用することができるポリフッ化ビニリデンを主成分とする屋根用コーティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの発明の目的は、水性フッ素重合体コーティング組成物により実現される。当該フッ素重合体は100,000を超える平均分子量を有している。
【0011】
さらに本発明の目的は、アクリル変性フッ素重合体コーティング組成物により実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、柔軟性のある表面で使用するための水性フッ素重合体コーティング組成物に関するものである。フッ素重合体は高分子量フッ素重合体であり、100,000を超える平均分子量を有している。用語「フッ素重合体」はフルオロモノマー単位で少なくとも50モルパーセントを含んでいる重合体と共重合体(2つ以上の異なるモノマーを有していて、たとえば三量体を含んでいる重合体を含む)を示す。また、用語「(共)重合体」は、ここでは重合体と共重合体の両方を示す。本発明に使用されるフルオロモノマーに制限はないが、本発明の実施に適切なものとしては、フッ化ビニリデン、ビニルフッ化物、トリフルオロエチレン、塩化トリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とこれらに関連する共重合体があげられる。
【0013】
好ましい実施形態としては、フッ素重合体は、アクリル変性フッ素重合体、すなわち、入れ子型ネットワーク(相互に侵入してお互いに絡みあうネットワーク)を有する「AMF」タイプの分散体であり、具体的には、フッ素重合体中固体質量でフッ化ビニリデン(VF2)共重合を約50〜95%含み、それに熱力学的に混合可能なアクリル成分を加えたもの、であることが好ましい。任意に、1〜20%の第二の重合体の分散体、たとえばアクリルラテックス又はポリウレタン分散体をその上に混合することができる。同様に、重合体の固体質量の0〜約40質量%の凝集剤を加えることもできる。
【0014】
さらに好ましくは、AMF重合体は、HFPを18〜28質量%含むとともに、VF2/HFP共重合体を70〜90%含んでいることが望ましい。AMF中のアクリルはMMAの共重合体であり、EA又はBAを加えて、MAAのような共重合化された酸性モノマーを低レベルで加えたものである。最も好ましい組成は、ジプロピレングリコールメチルエーテル又はブチルジグリコールのような水と混合可能な凝集剤を約0〜10%程度含んでいることが好ましい。試薬を混合する際には、Sancure 815のような脂肪族のポリウレタン分散体が重合体の固体中0〜10質量%のレベルで存在することが好ましい。
【0015】
本発明のフッ素重合体を製造し使用する調製法をその具体的な実施例と共に以下に説明する。すなわち、アクリル変性フッ素重合体は、フッ化ビニリデンを85.8質量%含み、ヘキサフルオロプロピレンを14.2質量%含み、融解粘度(120°の円錐入射角を有する15:1L/Dキャピラリーを使用したASTM D 3835による)が23kpで232℃であり、アクリル酸メチルとアクリル酸エチルの18:9の割合で含んだアクリルモノマーの混合物を、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体と総アクリル酸固体の質量の割合が70:30となるまで、重合させたシードラテックスとして、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体シードを使用することで調製する。
【0016】
本発明の実施に際して出発物質として用いられるフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体ラテックスは、米国特許第3178399号公報の方法と類似の方法で合成できる。合成は、ラテックス中の粒子の平均粒子径が250nm以下、好ましくは150nm以下となるように、適切な量の界面活性剤および/又はモノマーに対する適切な比率の水を使用する既知の技術により制御でき、それにより最終的な粒子径を350nm以下にすることができる。
【0017】
フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体ラテックスは、適当な撹拌装置、反応物を加えるための原料注入口、適切な還流冷却器、過硫酸アンモニアのような遊離基開始剤とラウリル酸ナトリウムのような界面活性剤を組み合わせた消火用ガスの注入口を備えている適切なサイズの反応容器にあらかじめ装填した方が良い。次に、メタクリル酸メチル(18質量部)、アクリル酸エチル(9質量部)、メルカプトプロピオン酸イソオクチル(約1質量部)の混合物を加え、混合物が十分に混ざるように、しかしラテックスエマルジョンが凝固しないように、一般的には90rpmで撹拌を開始する。反応容器とその内容物は、空気の除去を確実にするのに十分な浸透/置換期間(好ましくは約30分)、不活性ガス(好ましくはアルゴン)により置換した方が良い。置換終了時に、反応容器とその内容物の温度を約70℃まで上昇させ、その終了時より反応時間を測定する。一定の時間、好ましくは1時間、反応させた後、好ましくは、還流冷却器の熱交換能力を上回ることのなく、しかし反応が維持されるのに適切な割合で、シリンジポンプを用いて、残っているモノマー混合物を加えれば良い。全てのモノマー混合物を加えた後も、70℃の反応温度と撹拌を維持し、未反応のモノマーを反応させるために、反応時間を、好ましくは2時間程度追加し、反応を続ければ良い。その後、反応容器は周囲の温度、約20℃まで冷やし、通気口を放出し、反応容器に含まれるラテックスはチーズクロスによって濾過される。
【0018】
当業者にとって理解可能なことであるが、出発物質としては、特定のフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体ラテックスの代わりに、本発明では、他の周知のビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、米国特許5093427号公報と国際公開WO98/38242号パンフレット)や、ビニリデンフッ化ホモ重合体(米国特許3475396号公報と米国特許3857827号公報)もシード重合体として上記の反応で同じく使用できる。
【0019】
また、本発明では、適切に使用できるシード重合体としては、米国特許5646201号公報、米国特許5925705号公報、米国特許6242547号公報と米国特許6403740号公報に記載のフッ化ビニル(共)重合体、フッ化ビニルジン(共)重合体も適切に使用することができる。
【0020】
また、当業者にとっては認識可能なことであるが、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタアクリル酸が具体的に記述されているが、これらは、既知のアクリルモノマー、アクリル酸モノマーと共重合することが知られているエチレン化された不飽和モノマーなどでも代用できる。ただし、モノマーの主要成分はアクリル酸エステルとメタクリル酸エステル類から選択されなければならない。適切に使用できるアクリル、メタクリル、他の共重合可能なモノマーとしては、特に制限はないが、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸アミル、2−アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸アミル、2-メタクリル酸エチルヘキシル、α−又はβ−又は不飽和カルボン酸(アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸(IA))、ビニルエステル合成物とアミド合成物(アクリルアミド、メタクリルアミド)が含まれる。この中でも、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0021】
さらには、少量の架橋が可能なモノマーも使用できることができる。当該モノマーとしては、特に制限はないが、アリルオキシプロパンジオール(AOPD)、メタクリル酸イソブチル、アセトアセトキシメタクリル酸エチル(AEA又はAAEM)、N−アルキルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド又はNMA、N−アルキルアクリルアミド、N−ジアルキルメタクリルアミド、N−ジアルキルアクリルアミド、イソブトキシメタクリルアミド(IBMA又はiBMA)、水酸基を含むエチレン化された不飽和モノマー(たとえば、ヒドロキシエチルメタクリル酸、HEMA、アクリル酸ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルアクリル酸、ヒドロキシプロピルメタクリル酸、ジエチレングリコールアクリル酸エチル(DGEA)、エポキシ基を有するモノマー(たとえば、グリシジルアクリル酸、グリシジルメタクリル酸(GMA)、シラノールを有するポリマー(たとえば、γ−トリメトキシシランメタクリル酸、γ−トリエトキシシランメタクリル酸、トリメチルシリルプロピルアクリル酸(TMPA又はTMSPA))、アルデヒド基の機能を有するモノマー(例えば、アクロレイン)アルケニルシアン化合物(例えばアクリロニトリルメタクリロニトリル)が挙げられる。
【0022】
共役ジエン(例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、フッ化アルキルアクリル酸、フッ化メタクリル酸アルキル)、芳香族アルケニル合成物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンハロゲン化物)、ジビニル炭化水素化合物(例えば、ジビニルベンゼン)などの、機能のないモノマーを使用しても良い。
【0023】
必要なら、反応性の高い乳化剤として既知の少量の共重合可能な低分子量の重合体もしくはオリゴマーを含めても良い。フッ素樹脂粒子を修飾する架橋を形成するために、エチレン化された不飽和基の機能を1つ以上含んだモノマーを使用しても良い。望ましくは、これらのモノマーはモノマー全体の質量の5%未満が良い。このタイプのモノマーとして適している典型的な例としては、アリルメタクリル酸、モノエチレングリコールジメタクリル酸、ジエチレングリコールジメタクリル酸がある。
【0024】
使用されるアクリルモノマー全量は、フッ素重合体100質量部あたり、10〜200質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0025】
上記のように、シード重合は、アクリルとその類似のモノマーの乳化重合の従来技術と同条件で行えば良い。シードラテックスに、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、pH調節剤と、任意に、溶媒とキレート剤を組み合わせて、酸素分子を除去するために空気置換を行った後に、不活性ガス雰囲気下、大気圧下で0.5〜6時間、約20〜約90℃、好ましくは約40〜80℃で反応を行う。
【0026】
反応、それ自体は、フッ素重合体をシードとして使用し、このタイプの反応の既知の方法の標準的な技術の何れかに従い、行えば良い。従来技術としては、反応開始の時にフッ素重合体の分散中にモノマー混合物の全てを加えるバッチ重合、反応開始時にモノマー混合物の一部を加え、さらに反応の進行中に、残りのモノマー混合物を連続的にもしくは数回に分けて加える半連続重合、反応中通して、モノマー混合物を連続的にもしくは数回に分けて加える連続重合がある。
【0027】
乳化重合は一回もしくは数段階で行うことも可能である。もし、数段階で行う場合は、それぞれの段階で上記に述べた一回で行う方法と同様に、同じモノマー、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤、pH調節剤、任意で溶剤とキレート剤を含んでいても良く、又は、既知の技術で知られている原理を基礎として、反応中形成されるラテックスの最終の粒子の形態が好ましい状態になるように一回か二回以上原材料を変化させても良い。最終的なラテックス粒子は、一番内側のフッ素重合体の相に加えて、1つか2つ、3つ以上の様々な形状の相により構成される。相の形状としては、均一な粒子、コアシェル(core-shell)型、不完全なコアシェル(core-shell)型、逆コアシェル(inverse core-shell)型、半月形、イチゴ形、入れ子型ネットワーク(相互に侵入してお互いに絡みあうネットワーク)などがある。これらの全ての形状と形態は当業者にとって周知のものである。本発明では、粒子の形と/又は形態に制限はないが、好ましい形態としては均一な粒子であると良い。
【0028】
フッ素重合体の相、アクリルと任意の他のモノマーの相が最終的な粒子中でどのように配列されているのかは正確には明らかにされていない。しかし、粒子を形成中に、フッ素重合体粒子によって、モノマー混合物が大部分吸着され、重合されると考えられている。
【0029】
乳化剤としては、陰イオン性の乳化剤、非イオン性の乳化剤又はその組合せを使用すれば良い。場合によっては、両性もしくは、陽イオン性の界面活性剤を使用しても良い。陰イオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステルのナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキル琥珀酸塩スルホン酸のナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のナトリウム塩を使用しても良い。その中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(若しくは、アルキルフェニル)アリルエーテルスルホン酸などを使用することが好ましい。非イオン物質乳化剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルを使用すると良い。好ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどを使用すると良い。両性の乳化剤としては、ラウリルベタインなどで良い。陽イオン表面活性剤としては、アルキルペリジニウム(peridinium)塩化物、アルキル塩化アンモニウムなどを使用すれば良い。また、モノマーをと共重合する乳化剤は、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウムなどで良い。
【0030】
使用される界面活性剤又は乳化剤の量は、通常フッ化ビニリデンポリマー粒子とモノマー混合物の合計の100質量部として、およそ0.05からおよそ5質量部までである。
【0031】
重合開始剤としては、エチレン重合の開始するための水または油に溶ける遊離基を有する既存の物質を使用すれば良い。
【0032】
水溶性の重合開始剤としては、水溶性の過硫酸塩と過酸化水素を使用すれば良い。場合によっては、重合開始剤は還元剤と共に使用しても良い。適切な還元剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸とその塩類とホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムを含んでも良い。油性の重合開始剤としては、任意に、モノマー混合物又は溶媒で分解されるものであって良く、有機ペルオキシドとアゾ開始剤が含まれる。これらの合成物の典型的例は、2,2'−アゾビスイソ臭化ニトリル、2,2'アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メタンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−(2−エチルヘキサン塩)、コハク酸ペルオキシド、一般的なジアシルペルオキシド、一般的なペルオキシジカーボネート、一般的なペルオキシカーボネート、低残余モノマー含有量を担保するのに使用できることが見出されたt−アミルペルオキシエステルを含んだ一般的なペルオキシエステルが挙げられる。t−アミルペルオキシドもまた、使用可能である。好ましい開始剤としては、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アンモニウム過硫酸、p−メタンヒドロペルオキシド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノルペルオキシドとt−ブチル−ペルオキシ−(2−エチルヘキサノエート)などが挙げられる。使われる重合開始剤の量は、モノマー混合物中、およそ0.1〜3質量部まであると良い。
【0033】
既知の連鎖移動剤を使用しても良い。連鎖移動剤としては、たとえば、ハロゲン化炭化水素(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルムなど)、メルカプタン(例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなど)、キサントゲン酸(例えば、二硫化ジメチルキサントゲン酸、二硫化ジイソプロピルキサントゲン酸など)やテルペン類(例えば、ジペンタン、テルピノレンなど)が挙げられる。重合開始剤の量は、モノマー混合物中、好ましくは、およそ0から10質量部まであると良い。
【0034】
キレート試薬としては、たとえば、グリシン、アラニンとエチレンジアミンテトラ酢酸などが挙げられる。pH調節剤としては、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムと炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。キレート試薬の量は、モノマー混合物中、およそ0から0.1質量部、pH調節剤の量は、モノマー混合物中、およそ0から3質量部である。
【0035】
反応中に、少量の溶媒を加えても良い。これによりシード重合体を膨張させることができる。これらの溶媒としては、典型的には、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トリクロロフルオロエタン、メチルイソブチルケトン、ジメチルスルホキシド、トルエン、フタル酸ジブチル、メチルピロリドン、酢酸エチルなどを、実施可能性、火災危険に対する安全性、環境安全と生産安全性がそこなわれないような少量で使用すると良い。使用される溶媒の量は、モノマー混合物の合計の100質量部として、およそ0からおよそ20質量部までである。
【0036】
最終的にアクリル変性フッ素重合体の粒径が、反応から合成されるラテックスの特性と、粒子から合成されるコーティングの特性に影響を及ぶことが見出された。好ましくは小さい粒径であることが好ましい。良好なフイルム形成と、良好なコーティングの光沢が得られるからである。粒径は50〜400nmであり、また、好ましくは、50〜200nmである。粒径が50nm未満になると、得られる分散体が高粘度になるので、その結果、高固体分散体を得ることができない。また、より高い剪断状況が適用されるならば、凝固が起こる。粒径が400nmを超えると、ラテックスの安定性が低くなる。
【0037】
本発明のアクリル変性フッ素重合体の平均粒子径は、フッ化ビニリデン重合体粒子のサイズを適宜選択することで、コントロールすればよい。
【0038】
必要に応じて、界面活性剤とpH調整剤は、架橋を行うときの反応性だけでなく、その安定性および/又はフイルム形成能力を向上させるために最終ラテックスに加えると良い。
【0039】
必要に応じて、架橋を行わないときは、部分的もしくは完全な中和反応を起こさせる塩基添加により、フッ素重合体ラテックスのpHを7以上、好ましくは8以上とすればよい。適当な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、1級有機アミン、2級有機アミン、3級有機アミン(例えば、AMP−90とAMP−95(アンガス化学、Angus Chemicals))、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、種々のアミン化合物(例えばヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミンとドデシルアミン)があげられる。少なくとも4つの炭素原子をもつ、一つ以上の脂肪族側鎖基を有する有機アミンが好ましい。好ましい有機アミンとしては、特に制限はないが、n−ブチルジエタノールアミン(BDEA)、2−ブチルジエタノールアミン(BAE)、オクチルジエタノールアミン(ODEA)、オクチルアミノエタノール(OAE)と2−(ジイソプロピルアミノ)エタノールが挙げられる。上記の好ましいアミンを使用して中和を行うと、コーティングの割れ目抵抗性が向上する。
【0040】
必要に応じて、樹脂は、ラテックスにより凝固させ、生じる固体を、残留する液体から分離した後、水により洗浄することで分離すればよい。乾燥後、その固体は通常微粉末の形態で得ることができる。
【0041】
本発明の処理によって得られるアクリル変性フッ素重合体分散体は、クリアコートに使用すれば良い、もしくは顔料、分散剤、増粘剤、消泡剤、凍結抑制剤、体質顔料、フィラーと被膜剤のような典型的塗料添加物を加えることによって、水性乳液タイプのコーティングとして調製しても良い。当業者であれば、形成される塗料とフイルムの必要な特性を最適化することができる。ひとつの実施例としては、使用する顔料としては、太陽の赤外線の反射率の良いルチルTiO2とシェパードカラー社(Shepherd Color Company)により販売されている「ALCTIC」顔料のような混合酸化金属顔料とを含む既知の顔料がある。既知の体質顔料とフィラーとしては、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、タルカムパウダー、バライト、他の鉱物(例えば「Minex」材料(nephylene syentite))、ガラスの球も使用される。
【0042】
コーティング調製の一般的な工程は以下の通りである。
1) フッ化重合体ラテックスの調製
2) 中和
任意に、
3)凝集剤(凝集溶剤)と増粘剤の添加
4)(ノンクリアコートの場合)顔料分散体の添加
任意に、
5)ポリウレタン分散体の添加
【0043】
コーティング組成物には、1つか、2つ以上の水溶性の樹脂か、水中に分散可能な樹脂を含んでいれば、特に制限はないが、例えば、N−メチルメラミン樹脂、アルキル化されたメチルメラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン系樹脂、尿素樹脂、アルキル樹脂、マレイン酸化された油、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、などが挙げられる。これらは、本発明のアクリル変性フッ素重合体から塗料と他のコーティング材料を調製するときに添加されると良い。当業者であればこれらの添加剤の量と性質を任意に調製することで、所望の性質を有する最終的なフイルム形成混合物や、フイルムなどを得ることができる。
【0044】
コーティング組成物は、使用される温度未満であるフイルム形成最低温度(MFFT)を有している。コーティングが現場で使用される場合、MFFTは15℃以下、好ましくは、8℃以下である。また、コーティングが工場内で使用される場合、任意で、焼成のように、熱をかけてもよい。この場合、MFFTは25℃以下、好ましくは、15℃以下である。好ましいMFFTとするには、周知の通り、フッ化重合体の成分により調整すれば良い。また、高温のMFFTを有するフッ素重合体にそのMFFTを低下させる添加剤を加えることで、形成のための好ましいMFFTを得ると良い。そのような添加剤としては、凝集剤、ポリウレタン分散体、低いMFFTを有するアクリル、MFFTの低下に効果的な特定の界面活性剤を含む。MFFTを低下させる添加物は、フッ化重合体中、最高40質量%まで加えることができるが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは2〜15質量%以下である。
【0045】
ある実施例においては、コーティング組成物は、フッ化重合体固体中0〜10質量%の凝集剤含有するような低VOCである。凝集剤がないコーティング調製は使用の後、例えば、工場での焼成、現場での2,3秒の再加熱のように、加熱することコーティングに使用することができる。コーティングを空気乾燥させるためには、調製の時にフッ化重合体固体中10〜20質量%の凝集剤を有している場合に、最も良いフイルム形成結果が得られる。
【0046】
コーティングは工場で使用されるか、現場で平らであるか低傾斜で柔軟性を有する屋根の基材(例えば噴霧されたポリウレタンフォーム)に使用される。典型的には、コーティングは、スプレー、ブラシ又はロール−コートにより使用される。コーティングは、柔軟性のある屋根の基材や下塗りや結合層(tie-layer)に直接的に使用してもよい。本コーティングの好ましい使用例としては、従来のフッ素を含有しない重合体の基礎コーティング(例えば、アクリル、ウレタン、シリコン)の上に、好適な性質を有する表面コーティングとして使用すれば良い。コーティングの厚さは、0.2〜20mmであるが、顔料を含んだコーティングの場合より0.5〜10mm、クリアコーティングの場合、0.2〜5mmであることがより望ましい。
【0047】
本発明のコーティング組成物の構成の有利な点としては、従来のアクリル、ウレタン、シリコンとは反対に、工場で使用されるAMFを含んだコーティングは、本質的に汚染を防止する性質を有するということである。この性質は、温度と圧力が高くなる条件下で、膜が直線上にコートされ巻き戻される時に、特に有効である。
【0048】
使用されるフッ素重合体コーティングは、従来のアクリル、ウレタン、シリコンコーティングと比較して、非常に低いVOCを有し、耐候性、低粉塵性、耐汚染性が改善される。太陽光線を反射する白色コーティングはその反射効率を長期間保持することができ、それにより建築物を冷却するに必要なエネルギー荷重を減少させることができる。
【0049】
以下に示される実施例は、発明の実施にあたって発明者により検討された最良の形態であるが、例示目的にすぎず、以下の実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0050】
AMF重合体の合成
〈実施例1〉
Vazo−67(0.5g)、ラウリル硫酸ナトリウム(8.0g)、フッ素重合体ラテックス(樹脂の構成は、75パーセントのVF2、25パーセントのHFPからなり、41.4質量パーセントの固体、2000g)を、冷却器、高純度のアルゴン、モノマーの注入口、攪拌機を備えた容器に予め充填した。
別の容器では、メタクリル酸メチル(67g)、アクリル酸ブチル(17.0g)、メタクリル酸(8g)とメルカプトプロピオン酸イソオクチル(0.35g)のモノマー混合物を用意した。
反応装置と、その初期の中身を30分間、掃討、置換した後、最初のモノマー混合物(50.35g)を反応容器に入れた。混合物を大気圧、室温下、アルゴン雰囲気下で、60分間撹拌した。それから、反応容器よその内容物を70℃に熱した。60分後、モノマー混合物の残り(42g)を添加した。モノマーの供給の割合は、シリンジポンプにより調整した。すべてのモノマー混合物が加えられ、残量モノマーは70℃、120分で消費した。反応混合物は室温まで冷やされて、取り出され、その反応によって生産されたラテックスは、チーズクロスにより濾過した。その後、ラッテクスの凝固により微粉末として、ポリマー樹脂を回収し、その後、水により回収し、乾燥させた。固体とする前の、ラテックスの最終固体の内容物は、44質量%であった。
【0051】
〈実施例2〉
Vazo−67(1.0g)、ラウリル硫酸ナトリウム(5.0g)、フッ素重合体ラテックス(樹脂の構成は、75パーセントのVF2、25パーセントのHFPからなり、41.6質量パーセントの固体、1400g)を、冷却器、高純度のアルゴン、モノマーの注入口、攪拌機を備えた容器に予め充填した。
別の容器では、メタクリル酸メチル(190g)、アクリル酸ブチル(50.0g)、メタクリル酸(7g)とメルカプトプロピオン酸イソオクチル(0.85g)のモノマー混合物を用意した。
反応装置と、その初期の内容物を30分間、掃討、置換した後、最初のモノマー混合物(124.85g)を反応容器に入れた。混合物を大気圧、室温下、アルゴン雰囲気下で、60分間撹拌した。それから、反応容器よその内容物を70℃に熱した。35分後、モノマー混合物の残り(123.0g)を供給した。モノマーの供給の割合は、シリンジポンプにより調整した。すべてのモノマー混合物が加えられ、残量モノマーは70℃、60分で消費した。反応混合物は室温まで冷やされて、取り出され、その反応によって生産されたラテックスは、チーズクロスにより濾過した。その後、ラッテクスの凝固により微粉末として、ポリマー樹脂を回収し、その後、水により回収し、乾燥させた。固体とする前の、ラテックスの最終固体の内容物は、49質量%であった。
【0052】
〈コーティングの組成物〉
AMFエラストマーコーティングの調製はいくつかのステージが含まれる。すなわち、中和、クリアコート調製、顔料分散、最終調製である。
【0053】
〈中和〉
上記に挙げられた1400gのAMFラテックスを5μmのフィルターに通して、3等分して350gずつとし、清潔で、ふたを有するクリアガラス製の容器に保存した。それぞれでpHを測定し(2.86〜2.94の間であった)、下記の3つの試薬の各々を、3等分したAMFラテックスに混合し、pH8.5まで中和した。
中和剤1:28質量%の水酸化アンモニウム
中和剤2:100%2−アミノ2−メチル−1−プロパノール(AMP−95、アンガス(Angus))
中和剤3:100%n−ブチルジエタノールアミン(Vantex(登録商標) T、アーケマ(Arkema)社)
【0054】
〈クリアコート調製〉
次に、各々の中和された約50gのラテックスは、クリアコート調製するために、樹脂固体上で、10質量%まで、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)又はジエチレングリコールブチルエーテル(DEB)と混合した。これらのクリアコートは、その乾燥フイルムの特性を検査するために、10mmブレードのLENETAチャートに流し込んだ。全ての候補が、割れ目も斑もない透明な膜であり、最初の試験に合格した。
【0055】
〈顔料粉末A〉
以下の灰色粉末調製方法は、最初に屋根ふき塗料調製の塗料のふるまいを試験するのに使用された;
蒸留水 266.5g
アンモニア 0.1g
Disperbyk(登録商標)180(BYK−Chemie) 12.5g
Foamex (登録商標)810(Tego) 1.2g
Triton(商標)CF−10(Dow) 5.0g
RCL 6T(TiO2 Millennium Chemicals) 400.0g
Shepherd Black 10C909 100.0g
これらの化合物は、Cowles Groundによると、Hegman値は7.5かそれより良好であった。
【0056】
〈コーティング調製1〉
この灰色粉末物15.6gを、最初のコーティングを作製するために、上記に挙げた各々のクリアコート48.0gと混合した。それらの粘着力とフイルム調製の試験をするために、LENETAチャートに流し込んだ。
【0057】
〈顔料粉末B〉
顔料粉末方法Aで調製は、乾燥中にフイルム内部にストレスがかかり、多くが失敗であった。従って、3gのMINEX 7(増量剤)と0.4gのAcrysol RM825(増粘剤、Rohm and Haas)の追加によって、上記の調製方法を修正した。
【0058】
〈白色顔料コーティング〉
高反射率を有する白色の二酸化チタニウム組成物を下記のように調製した。
蒸留水 129.4g
アンモニア 0.1g
Disperbyk(登録商標)180 12.5g
Foamex (登録商標)810 1.2g
Triton(商標)CF−10 5.0g
RCL 6T 500.0g
これらの化合物は、Cowles Groundによると、Hegman値は7.5かそれより良好であった。
【0059】
2つのクリアコートを調製した。1つはAMF/BDEA/DPMを使用したもので、1つは、AMF/BDEA/DEBを使用したものである。それぞれのクリアコートに、2つの白色顔料コーティング調製を行った。1つは、MINEX(登録商標)7(Sibelco製)を含有し、1つはMINEX(登録商標)7を含まないものである。また、接着を促進し、フイルムの安定化とより良好なフイルムを得るために、ポリウレタン分散(SANCURE(登録商標)815、Noveon社製)を7質量%になるまで、各々加えた。それぞれの調製された顔料の体積濃度(PVC)は以下の通りである。
【0060】
〈実施例3〉
クリアコート(AMF/BDEA/DPM) 70.0g
顔料粉末 23.3g
Acrycol(登録商標)RM825 0.6g
MINEX(登録商標)7は含まれておらず、PVC=17である。
【0061】
〈実施例4〉
クリアコート(AMF/BDEA/DPM) 70.0g
顔料粉末 23.3g
Acrycol(登録商標)RM825 0.6g
SANCURE(登録商標)815 6.1g
MINEX(登録商標)7は含まれておらず、PVC=17である。
【0062】
〈実施例5〉
クリアコート(AMF/BDEA/DPM) 70.0g
顔料粉末 23.3g
Acrycol(登録商標)RM825 0.6g
SANCURE(登録商標)815 6.1g
MINEX(登録商標)7 14.4g
PVC=35
【0063】
〈実施例6〉
クリアコート 12473−32−1(AMF/BDEA/DEB) 70.0g
顔料粉末 23.3g
Acrycol(登録商標)RM825 0.6g
SANCURE(登録商標)815 6.1g
MINEX(登録商標)7は含まれておらず、PVC=17である。
【0064】
〈実施例7〉
クリアコート(AMF/BDEA/DEB) 70.0g
顔料粉末 23.3g
Acrycol(登録商標)RM825 0.6g
SANCURE(登録商標)815 6.1g
MINEX(登録商標)7 14.4g
PVC=35
【0065】
これらの白色コーティングは、水性の黒顔料粉末により着色された灰色のSOLARFLEXの初期塗装に、上塗りした。初期塗装は、20ブレードのエチレン/プロピレンジエンモノマーライナー(EPDM)、瀝青で修飾された活性ポリプロピレン(APP166)、白色熱可塑性ポリオレフィン(TPO)とラッセルルーフィング社(アメリカ合衆国、ペンシルバニア州オーランド(Russell Roofing Company of Oreland, PA))から入手可能な灰色TPOを使用して行った。これらは、一晩乾燥させ、10ブレードのこの初期コーティングの上に4つの白色コーティングを流し込んで、欠陥を調べた。実施例3(SANCURE(登録商標)815を使用していない)については、割れ目が見つかったが、その他の実施例(実施例4〜7)については割れ目もなく、良好であった。
【0066】
〈実施例8〉
A、AMFクリアコート調製を、RC−10206、70質量%のフッ素重合体の中和されたAMFラテックス、48質量%の固体中の30質量%のアクリルを使用して、上記のクリアコート調製に示した通り、行った。さらに、蒸留水で樹脂固体中、その組成物が43質量%となるように希釈した。
【0067】
B、高反射率を有する白色の二酸化チタニウム組成物を下記のように調製した。
蒸留水 133.96g
アンモニア 0.1g
Disperbyk(登録商標)180 7.5g
Foamex(登録商標)810 1.2g
Triton(商標)CF−10 5.0g
RCL 6T 500.0g
【0068】
C、白色塗料の調製は、18%のPVCで行われ、クリアコートと上記で述べたTiO2組成物を混合することで行われる。増粘剤Acrysol(登録商標)RM825は組成物の増粘性を調整するために添加した。
クリアコート(A) 280g
TiO2 顔料粉末(B) 93.33g
Acrysol(登録商標)RM−825 2.41g
【0069】
D、白色塗料組成物において、AMF固体に対して10質量%分、Noveon製のSANCURE(登録商標)815を添加した。
白色塗料組成物(C) 290g
SANCURE(登録商標)815 26.54g
【0070】
E、白色組成物(D)を5つに分割して、白色5つの異なるリン酸界面活性剤を、AMF固体に対して2質量%分、添加した。

白色塗料組成物(D) 50g
Triton(商標)X405(Dow) 0.48g

白色塗料組成物(D) 50g
Strodex(登録商標)SEK−50D(Dexter) 0.68g

白色塗料組成物(D) 50g
Strodex(登録商標)NB−20(Dexter) 0.35g

白色塗料組成物(D) 50g
Strodex(登録商標)PK−0VOC(Dexter) 0.85g

白色塗料組成物(D) 50g
Envirogem(登録商標)AE01(AirProducts)0.34g

5つ全ての組成物で沈殿とシネレシスに関しては安定であった。
【0071】
5つの塗料を、Henry Solarflex(登録商標)アクリルを基礎としたエラストマー基礎コーティング上に使用した。Strodex(登録商標)、SEK−50D、Strodex(登録商標)PK−0VOC(Dexter)、Triton(商標)X405を使用した調整によって乾燥させても割れ目が生じない適切なフイルムを生成できた。残りの2つについては、乾燥中に基礎コーティング上に割れ目が生じていた。
【0072】
〈実施例9〉
さらに3つの実施例8と類似の白色塗料組成物を調製した。そのうち2つの組成物においては、SANCURE(登録商標)815の代わりに、Acrysol(登録商標)WS−24(Rohm and Hass)もしくはNeoCryl(登録商標)XK−90(DSM Neoresin)をAMF固体の10質量%分、使用した。また、3つ目の組成物については、Acrysol(登録商標)WS−24(Rohm and Hass)とNeoCryl(登録商標)XK−90(DSM Neoresin)を50:50の割合で使用した。
3つすべての組成物で、Henry Solarflex(登録商標)アクリルを基礎としたエラストマー基礎コーテイング上に、被膜したが、乾燥中に割れ目が生じた。
【0073】
〈実施例10〉
AMFクリアコート組成物は上記のクリアコート調製の記述に従って、調整した。その組成物をさらに水で希釈して、樹脂固体の43質量%とした。高度な反射性のための白色の二酸化チタン組成物は下記に従い調製した。
蒸留水 135g
Disperbyk(登録商標)180(BYK−Chemie) 12.5g
アンモニア 0.2g
Foamex (登録商標)810(Tego) 1.2g
Triton(商標) CF−10(Dow) 5g
TiPure(登録商標)R−960(DuPont) 500.0g
【0074】
白色塗料組成物はSANCURE(登録商標)815の添加量をAMF固体の10質量%と25質量%となるように調整した。両方ともPVCは18%である。
A、
クリアコート(AMF/DPM/水) 232.56g
白色二酸化チタン組成物 93.5g
SANCURE(登録商標)815 28.6g
Strodex(登録商標)PK−0VOC 5g
Byk−346(BYK−Chemie) 1.08g
B、
クリアコート(AMF/DPM/水) 581.4g
白色二酸化チタン組成物 233.75g
SANCURE(登録商標)815 178g
Strodex(登録商標)PK−0VOC 12.5g
Byk−346(BYK−Chemie) 3.02g
【0075】
これらの組成物のZahn Cap番号2の粘着性はおのおの26.8秒、28.3秒であった。また、両組成物ともに沈殿とシネレシスに関しては安定であった。Henry Solarflex(登録商標)アクリルを基礎としたエラストマー基礎コーティング上に被膜したフイルムは乾燥中に割れ目も生じることなく、良好であった。
LENETA上の2つの組成物(AとB)から成るフイルムの水分吸収の定常状態はフイルム質量あたり、0.8%と1.3%であった。Henry Solarflex(登録商標)コーティングの水分吸収はフイルム質量あたり1.2〜1.5%であった。
【0076】
〈実施例11〉
屋根用黄褐色塗料は下記に従い調製した。
【表1】

【0077】
【表2】

この塗料は、約18%の体積濃度で約51質量%で、約35%の体積固体を有する顔料を含有していた。
【0078】
塗料は「Lenetaチャート」を塗布した紙基材(Leneta社から入手可能である)に使用し、室温で乾燥させた。乾燥したフイルムの厚さは30ミクロンであった。この塗料の太陽光線反射(TSR)をSSR−ER反射メーター(デバイスアンドサービス社、アメリカ合衆国、テキサス州、ダラス(Devices and Services Company, Dallas, Texas))により、ASTM C1549に準じて、測定したところ、TSRの値は0.746であった。
【0079】
〈実施例12〉
クリアコート組成物は、以下に従って調製した。
RC−10206 AMF ラテックス 200.0g
Co−resin分散体 29.7g
ジプロピレングリコールメチルエーテル 9.7g
Acrysol(登録商標)RM−8W 0.3g

得られたクリアコート調製物は、Sheen MFFT Bar(Gardner Instrumentsより入手可能である)を使用し、MFFTにより試験したところ、以下のような結果が得られた。
【0080】
【表3】

【0081】
クリアコートはまた、実施例8のように、白色顔料分散と組み合わせて白色屋根ふき塗料が使用されても良い。塗料のすべては、光沢があり、柔軟性のあるアクリルの初期/基礎コーティングに対して、また、鋼基材上の商品化されているKYNAR500(登録商標)PVDFを基礎とした塗料に対して、良好な隠蔽力と粘着力を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有した水性の屋根用コーティング組成物であって、平均分子量が100,000を越えるフッ素重合体を含む屋根用コーティング組成物。
【請求項2】
前記フッ素重合体がアクリル変性フッ素重合体である請求項1に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項3】
前記フッ素重合体はフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を70〜90質量%含む共重合体である請求項1又は2に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項4】
前記HFPが共重合体中に18〜28質量%存在する請求項1〜3の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項5】
前記アクリル変性フッ素重合体が、側鎖中に炭素数が4又は5以上のアルキル基を少なくとも1つ有する有機アミンにより、部分的にもしくは完全に中和されている請求項2〜4の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項6】
前記有機アミンがブチルジエタノールアミン、2-ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、オクチルアミノエタノール、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノールよりなる群から選択される請求項5に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項7】
前記アクリル変性フッ素重合体がフッ素重合体100質量部当たり10〜200質量部のアクリル部分を含む請求項2〜6の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項8】
前記アクリル変性フッ素重合体がフッ素重合体100質量部当たり20〜80質量部のアクリル部分を含む請求項2〜7の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項9】
顔料、分散剤、増粘剤、消泡剤、凍結抑制剤、体質顔料、フィラーと被膜剤から選択される1つ又は2つ以上の調整剤をさらに含む請求項1〜8の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項10】
前記組成物がフッ素重合体固体の質量を基準として0〜20質量%の凝集剤を含む請求項1〜9の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項11】
前記組成物が実質的に凝集剤を含まない請求項1〜10の何れか一項に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項12】
フッ素重合体固体を基準として40質量%以下の1つ又は2つ以上の添加剤を含む請求項1に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項13】
前記添加剤が、凝集剤、ポリウレタン分散体、低いMFFTを有するアクリル分散体、MFFTを効果的に低下させる界面活性剤からなる群から選択される請求項12に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項14】
前記添加剤が屋根用コーティング組成物中にフッ素重合体固体を基準として2〜15質量%存在する請求項12又は13に記載の屋根用コーティング組成物。
【請求項15】
最表面の層としてフッ素重合体を含む、柔軟性を有する屋根。
【請求項16】
前記フッ素重合体がアクリル変性フッ素重合体である請求項15に記載の柔軟性を有する屋根。

【公表番号】特表2008−540798(P2008−540798A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512296(P2008−512296)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/015816
【国際公開番号】WO2007/030152
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】