説明

フッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法

【課題】 臭気や長期保存時の問題の原因となる連鎖移動剤を使用しなくても、溶剤置換等の煩雑な工程を必要としない簡便な方法でフッ素化アルキル基含有オリゴマーを得る製造方法を提供すること。
【解決手段】 フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を含有するエチレン性不飽和単量体類(I)中のエチレン性不飽和基1モルに対して、重合開始剤(C)を0.07〜0.70モル用いて前記単量体類(I)を重合してフッ素化アルキル基含有オリゴマーを得ることを特徴とするフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フッ素化アルキル基を持つ単量体とフッ素化アルキル基を持たないその他の単量体とを共重合して得られる共重合体は、含フッ素重合型界面活性剤として広く利用されてきた。このような重合体は、フッ素化アルキル基を持つ単量体の導入量、その他の単量体種の選択等により水溶性から油溶性まで幅広い重合体が簡便に合成でき、界面活性剤としての応用には好適である。前記含フッ素重合体を界面活性剤として応用する場合、通常、重合体中のフッ素原子含有量が多い程界面活性能力は高まるが、一定量以上のフッ素原子含有量になると、添加される媒体(例えば、溶媒、樹脂)への溶解性が低下するため、結果として界面活性能力が低下する。同じフッ素原子含有量の含フッ素界面活性剤を比較した場合、媒体への溶解性は、分子量が低いものの方が良好である。特に、含フッ素重合型界面活性剤の場合、含フッ素部分が凝集し易いため、高フッ素原子含有量になると各種媒体への溶解性が、取り扱い上問題の多い含ハロゲン媒体を除いて著しく低下する。このような事情から、含フッ素重合型界面活性剤を得ようとする場合、分子量が数千レベルの所謂オリゴマーを設計することが多い。
【0002】
フッ素化アルキル基含有オリゴマーを製造する方法としては、例えば、重合開始剤と共に連鎖移動剤を多量に併用して用いる手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。前記特許文献1には、含フッ素重合型界面活性剤の重量平均分子量として好ましいものは約2,000〜20,000、最も好ましいものは2,000〜7,000との記載があり、典型的な重合体の調整方法として、原料として用いる単量体の合計モル数に対して重合開始剤を0.046モル、連鎖移動剤を0.046モル用い、酢酸エチル溶液中で重合させる方法が挙げられている。しかし、連鎖移動剤を使用すると、未反応物が残留し界面活性能に悪影響を及ぼすことがある。また、連鎖移動係数が高く最も汎用に用いられているチオール化合物は、未反応物の残留による臭気の問題、さらには界面活性剤の長期保存に際しては変色、界面活性能の低下等の問題点がある。
【0003】
また、単量体類とオリゴマーとの溶剤に対する溶解性の差を利用する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。前記特許文献2では、重合前の単量体混合物は溶解するが、得られる重合体は沈殿する「沈殿媒体」中で重合開始剤を単量体類の全モル数に対して0.001〜0.10モル、好ましい範囲は0.006〜0.02モルで用いてラジカル重合を行い、連鎖移動剤を使用することなく泡消火薬剤として有用な低粘度(低分子量)重合体を得ている。しかし、該公報記載の沈殿媒体を使用する方法は、重合後に溶媒置換を行うか、一旦沈殿物として得られた重合体を取り出すか、或いは溶媒留去後、利用しやすい溶液状態とするために溶解性の高い溶剤に再溶解させる必要がある。このような溶媒置換、溶媒留去、固体取り出し、乾燥、再溶解等の操作は、製造時間が長くなるばかりでなく、単量体混合物の組成、重合体の構成、分子量、沈殿媒体の種類等に依存する沈殿物(オリゴマー)の性状によっては、その操作は困難を極める場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−173225号公報(第5−7頁)
【特許文献2】特表2002−517530号公報(第9−14頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のような状況に鑑み、連鎖移動剤を使用しなくても、簡便な方法でフッ素化アルキル基含有オリゴマーを得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を含有するエチレン性不飽和単量体類(I)中のエチレン性不飽和基1モルに対して、重合開始剤(C)を0.07〜0.70モル用いて前記単量体類(I)を重合することを特徴とするフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を含有するエチレン性不飽和単量体類(I)中のエチレン性不飽和基1モルに対して、重合開始剤(C)を0.07〜0.7モル用いて前記単量体類(I)を重合してフッ素化アルキル基含有オリゴマーを得ることを特徴とするフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連鎖移動剤を使用しなくても、簡便な方法でフッ素化アルキル基含有オリゴマーを得ることができ、製造時及び保存時の臭気の問題や保存中における性能(界面活性能)の劣化がない含フッ素重合型界面活性剤を得ることができる。該手法は、原料として用いる単量体類の選択の幅が広く、水溶性から油溶性まで、又フッ素原子含有量に由来する界面活性能のレベル等、所望の性能に応じて分子設計が出来ると共に、媒体との相溶性をも鑑みた分子量の設定も容易であり、工業的応用価値の高い手法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、フッ素化アルキル基とはアルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたもの(パーフルオロアルキル基)と、アルキル基中の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたもの〔例えば、−(CFH等〕との総称であり、直鎖状でも分岐状であっても良い。更に、該フッ素化アルキル基中に酸素原子を含むもの〔例えば−OCFCF(OCF(CF)CFCFCF、−(OCFCF−等〕も本定義中に含めるものとする。
【0010】
本発明で用いるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、フッ素化アルキル基とエチレン性不飽和基を有する化合物であれば制限なく用いることができる。フッ素化アルキル基の炭素数としては、重合反応時に用いる溶媒、後述する重合開始剤(C)、及び後述する必要に応じて併用されるその他の単量体との相溶性、及び得られるオリゴマーを界面活性剤として使用した場合に添加される材料中の溶媒や樹脂等の各種媒体への溶解性と、界面活性能力を両立させ得る観点から通常1〜20であり、4〜12であることが好ましく、特に6〜8であることが好ましい。
【0011】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としては、原料の入手が容易であり、他の成分との相溶性等に優れる点から、下記一般式(1)
CH=C(R)COO(X) (1)
(式中、Rは水素原子、メチル基、塩素原子、フッ素原子又はシアノ基であり、Xはフッ素原子を含まない2価の連結基であり、aは0または1の整数であり、Rはフッ素化アルキル基である。)
にて表される単量体であることが好ましい。
【0012】
前記一般式(1)中のXとしては、例えば、−(CH−、−CHCH(OH)(CH−、−(CHNR−SO−、−(CHNR−CO−(但し、nは1〜10の整数であり、Rは水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基である。)、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−等が挙げられる。又、前記一般式(1)中のRとしては、例えば、−C、−C15、−C17、−(CFH、−(CFCF(CF、−(OCFCFOCFCF、−(OCFCF(CF))等が挙げられる。
【0013】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例として以下の如きものが挙げられる。
A−1 :CH=CHCOOCHCH17
A−2 :CH=C(CH)COOCHCH17
A−3 :CH=CHCOOCHCH1225
A−4 :CH=CHCOOCHCH13
A−5 :CH=CHCOOCHCH
A−6 :CH=CFCOOCHCH13
A−7 :CH=CHCOOCHCF
A−8 :CH=C(CH)COOCHCF(CF
A−9 :CH=C(CH)COOCHCFHCF
A−10:CH=CHCOOCH(CF
A−11:CH=CHCOOCHCH(OH)CH17
A−12:CH=CHCOOCHCHN(C)SO17
A−13:CH=CHCOOCHCHN(C)COC15
A−14:CH=CHCOOC(CF(CF)OCF
A−15:CH=CHCOOCH(CF(CF)OCF
尚、本発明がこれら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。また、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、1種類であっても良いし、構造が異なる2種類以上の化合物の混合物であっても良い。
【0014】
本発明の製造方法で得られるオリゴマー中の含フッ素部位であるフッ素化アルキル基は、モノマーとして用いるエチレン性不飽和単量体中に存在するので、必ず側鎖部分に位置することになる。また、このような前記単量体(A)の多く、例えば、前記化合物A−1〜A−15は、フロンまたは代替フロンのようなハロゲン系溶媒を使用することなく、汎用の有機溶媒(例えば、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶剤、酢酸エチルのようなエステル系溶剤、イソプロピルアルコールのようなアルコール系溶剤、トルエンのような芳香族系溶剤等)中でも収率よく重合反応を進行させることが可能であり、また、重合して得られるオリゴマーも該有機溶媒に溶解する。この為、前記特許文献2に記載された様な煩雑な処理を行わなくとも界面活性剤として使用できるオリゴマーを得ることができ、工業的応用価値が高い。
【0015】
次に、重合開始剤(C)について述べる。重合開始剤は重合機構により選択される。一般に重合機構はアニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合に基づき溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、乳化重合法により規定される。本発明の製造方法に重合機構の制限はないが、工業的な重合温度等の製造条件、原料モノマーの入手容易性、目的とする分子量(重合度)、フッ素化アルキル基含有オリゴマーの用途展開容易性を考慮すると、ラジカル溶液重合法により製造することが好ましい。従って、重合開始剤(C)も溶媒に可溶なラジカル重合性開始剤を用いることが好ましい。このようなラジカル重合性開始剤には、光重合開始剤と熱重合開始剤が挙げられるが、本製造法における重合制御が容易である点から、熱重合開始剤である有機過酸化物又はアゾ化合物を用いることが好ましい。前記有機過酸化物又はアゾ化合物としては、重合条件により種々選択可能であるが、目的とする分子量、重合温度とその制御性、重合時間等を考慮し、10時間半減期温度が40〜120℃であるものが好ましく、60〜100℃であることが特に好ましい。具体的化合物としては、日本油脂株式会社製パーヘキサHC、パーヘキサTMH、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC等のパーオキシケタール類、パーロイル355、パーロイルO、パーロイルL、パーロイルS、ナイパーBW、ナイパーBMT等のジアシルパーオキサイド、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート、パーシクロND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルIB、パーブチルL、パーブチル535、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ等のパーオキシエステル類、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(例えば、大塚化学株式会社製AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(例えば、大塚化学株式会社製AMBN)、2,2’−アゾビス−2−ジメチルバレロニトリル(例えば、大塚化学株式会社製ADVN)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(例えば、和光純薬工業株式会社製V−601)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(例えば、和光純薬工業株式会社製V−40)、2,2’−アゾビス−[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド](例えば、和光純薬工業株式会社製VF−096)、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(例えば、和光純薬工業株式会社製V−30)、2,2’−アゾビス−(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)(例えば、和光純薬工業株式会社製VAm−110)、2,2’−アゾビス−(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)(例えば、和光純薬工業株式会社製VAm−111)等が挙げられる。尚、本発明が上記具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0016】
本発明の製造方法においては、後述するように多量の重合開始剤(C)を使用するため、重合反応中に開始剤ラジカルが多量に発生する。重合開始剤(C)としてアゾ化合物を使用した場合、開始剤ラジカル発生時に窒素が副生し、開始剤ラジカル同士の再カップリング反応が起こると重合反応に寄与しない不純物(再カップリング化合物)が相当量副生することになる。このような、重合開始剤由来の再カップリング化合物は、得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーの用途によっては、これが添加される媒体に対する溶解性、界面活性能等の目的とする性能に悪影響を及ぼす場合がある。この点を考慮すると、重合開始剤(C)としては10時間半減期温度が40〜120℃の有機過酸化物を用いることが最も好ましい。
【0017】
また、重合開始剤(C)の選択に際しては、オリゴマー末端の構造設計という観点も重要である。本発明の製造方法では、多量の重合開始剤(C)を使用するため、得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーの重合度が低下し、数多くの分子鎖末端が存在することになる。この時分子鎖末端構造は、重合開始剤由来の構造であることが多く、従って重合開始剤(C)の構造によっては、得られるオリゴマーが使用される材料系に対する溶解性、界面活性能等の目的とする性能に大きく影響を及ぼすことになり、重合開始剤(C)としては低分子量のものが好ましく、目的とする性能、単量体類(I)の選択等を考慮して重合開始剤(C)を選択することが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法では、重合開始剤(C)は原料として用いるエチレン性不飽和単量体類(I)中のエチレン性不飽和基1モルに対して、0.07〜0.7モル使用することが必要であり、好ましくは0.1〜0.6モル、特に好ましくは0.15〜0.5モルの範囲である。本発明の製造方法における重合開始剤(C)の使用量は、従来の重合体の合成と比較し多量であり、この為、側鎖部位にフッ素化アルキル基を有する様々な形態の低重合度又は低分子量のフッ素化アルキル基含有オリゴマーを簡便に合成することが可能である。得られる該オリゴマーは、重合温度、重合濃度、溶媒等の重合条件、単量体類(I)の選択にも依存するが、平均重合度としては通常2〜10、好ましくは2〜7であり、数平均分子量としては500〜5000程度である。
【0019】
本発明の製造方法において原料として使用するエチレン性不飽和単量体類(I)としては、前述のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を用いること以外に何ら制限されるものではなく、得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーの使用用途、目的とする性能のレベル等に応じて、その他の単量体を適宜選択し併用することが可能である。特に前記単量体(A)中のフッ素化アルキル基は、得られるオリゴマーを界面活性剤として用いる際の疎水性基又は疎油性基となる為、水、有機溶媒、樹脂等の界面活性剤を添加される媒体に対する相溶性を向上させるためには、親媒基を有する単量体を併用して共重合させることが好ましい。
【0020】
前記その他の単量体を併用する場合のその使用量としては何ら制限されるものではなく、得られるオリゴマーの使用目的等によって適宜選択されるものであるが、界面活性剤として使用する場合にフッ素原子由来の界面活性能を十分に発現させるためには、原料として用いる単量体類(I)中に前記単量体(A)が10〜90重量%の範囲で含有されていることが好ましく、特に40〜80重量%の範囲で含有されていることが好ましい。
【0021】
前記その他の単量体としては、単量体(A)と共重合するものであれば特に制限なく使用できる。例えば、スチレン、ブタジエン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシルブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、またα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、即ちアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸誘導体としてアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以後この表現は、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を総称するものとする。)、即ち(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステル等、また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシアルキルエステル、即ち2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステル等、更にはモノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ−ト、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェ−ト、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
また(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル即ちジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステル等、また(メタ)アクリル酸の、炭素数が3〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル、例えばメトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステル等、更に環状構造含有モノマーとしては、例えばジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等、またアルキル炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル、即ちグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等、また、共栄社化学株式会社製HOA−MS、HOA−MPL、HOA−MPE、HOA−HH、東亜合成株式会社製アロニックス M−5300、M−5400、M−5500、M−5600、M−5700等の市販品が挙げられる。尚、本発明が、これら具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。前記その他の単量体中のエチレン性不飽和基は、1個だけ有する単官能性であっても、2個以上有する多官能性であっても構わない。また、その他の単量体としては1種類であっても良いし、2種類以上を同時に用いても構わない。更にこれらの単量体は、市販品をそのまま用いることも可能であるが、製造前に蒸留精製、溶媒による洗浄、再結晶、各種吸着剤、カラムによる精製等の前処理を行った後に用いても構わない。
【0023】
得られるオリゴマーを界面活性剤として使用する際には、添加される媒体に対する相溶性、特に樹脂に対する相溶性を向上させる場合、オリゴマー中の親媒基が2個以上の繰り返し単位を有する官能基又はセグメントを含むブロックオリゴマーやグラフトオリゴマーであることが好ましい。このような点から、原料として用いる単量体類(I)中に、親媒基が2個以上の繰り返し単位を有する官能基又はセグメントを含む、所謂マクロモノマーであるエチレン性不飽和単量体(B)を含有することが好ましい。マクロモノマーであるエチレン性不飽和単量体(B)を用いると、容易にフッ素化アルキル基含有グラフトオリゴマーを製造することが可能である。
【0024】
本発明で得られるオリゴマーは、前記重合開始剤(C)を多量に用いることによって、主鎖の繰り返し単位が少ない低重合度の重合体となる。従って、前述の単量体(B)として高分子量(高重合度)マクロモノマーを用いると、主鎖部よりも長い側鎖部を有する櫛型オリゴマーが得られる。即ち本発明の製造方法によれば、併用するマクロモノマーと重合開始剤(C)の選択さらには重合条件の選択により、様々な形態の櫛型オリゴマーを容易に製造できるものである。
【0025】
前記単量体(B)としては、2個以上の繰り返し単位を有する官能基またはセグメントとエチレン性不飽和基を有するものであれば、何ら制限なく用いることができ、例えば、メチルメタクリレートマクロモノマー(例えば、東亜合成株式会社製AA−6)スチレンマクロモノマー(例えば、東亜合成株式会社製AS−6S)、スチレン−アクリロニトリルマクロモノマー(例えば、東亜合成株式会社製AN−6S)、ジフェニルシロキサンマクロモノマー、ジメチルシロキサンマクロモノマー(例えば、チッソ株式会社製サイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725)、ラクトン変性(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFA−3,FA−5,FA−10L、FM−3、FM−5)等の各種マクロモノマーが挙げられる。このようなマクロモノマー中のエチレン性不飽和基は、1個だけ有する単官能性のマクロモノマーであっても、2個以上有する多官能性のマクロモノマーであっても構わない。
【0026】
本発明者等の知見によれば、前記単量体(B)としては、樹脂や溶媒に対する汎用的な相溶性向上および界面活性能向上の点から、ポリオキシアルキレン構造を有するエチレン性不飽和単量体(b1)であることが好ましい。該ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブッロク共重合体からなる構造、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレンブロック共重合からなる構造、さらにはポリオキシエチレン鎖やポリオキシプロピレン鎖の末端が炭素数1〜18のアルキル基によってキャップされたもの等が挙げられる。具体的な化合物としては、新中村化学工業(株)社製NKエステルM−20G、M−40G、M−90G、M−230G、M−450G、AM−90G、1G、2G、3G、4G、9G、14G、23G、9PG、A−200、A−400、A−600、APG−400、APG−700、日本油脂(株)社製ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、PME−100、PME−200、PME−400、PME−4000、PP−1000、PP−500、PP−800、70FEP−350B、55PET−800、50POEP−800B、NKH−5050、PDE−50、PDE−100、PDE−150、PDE−200、PDE−400、PDE−600、AP−400、AE−350、ADE−200、ADE−400等が挙げられる。尚、本発明が上記具体例によって何等限定されるものでないことは勿論である。
【0027】
本発明のフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法において、重合開始剤(C)の種類及び導入量の他に、溶媒、重合温度、重合濃度、単量体類(I)と重合開始剤(C)の注入方法等によっても、得られるオリゴマーの重合度又は分子量が変化する。本発明ではこれらの諸条件についての制限はなく、目的とする該オリゴマーの重合度又は分子量、及びそれに伴う性能、重合開始剤(C)の使用量、単量体類(I)の組成や性状等により適宜選択することが好ましい。
【0028】
重合反応させる際に、溶媒は必ずしも使用する必要はないが、作業容易性や重合反応に伴う発熱の制御容易性、安全性の点から溶媒存在下で行うことが好ましい。前記溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類のいずれも使用できる。前記溶媒としては単一であっても、2種類以上の混合溶媒であっても構わない。
【0029】
単量体類(I)と溶媒の組み合わせによっては、溶媒への連鎖移動反応が生じ得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーの分子量に影響を与える場合がある。例えば、単量体(I)中に(メタ)アクリルモノマーを含有する場合、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンのようなケトン類は連鎖移動反応を起し難いが、イソプロピルアルコール等のアルコール類は連鎖移動反応を起し易い。本発明の製造方法では、単量体類(I)と溶媒との組み合わせにより、広範な溶媒を選択することが可能であり、従って、場合によっては、溶媒への連鎖移動反応を利用し分子量を調整することも可能である。
【0030】
単量体類(I)と重合開始剤(C)との溶媒への注入方法についても制限はないが、多量の重合開始剤(C)を使用するため、重合反応の制御、安全性の点から滴下しながら注入することが好ましい。滴下する方法としては、単量体類(I)、重合開始剤(C)と溶媒の組み合わせ、目的とする重合度又は分子量、安全性等を考慮し、単量体類(I)、重合開始剤(C)、溶媒の任意な組み合わせからなる滴下液が調製される。このような、単量体類(I)、重合開始剤(C)、溶媒の任意な組み合わせからなる滴下液は、単量体類(I)、重合開始剤(C)、必要に応じて使用する溶媒との相溶性を考慮して決定される。一般に含フッ素化合物を含む溶液を調製する場合、その種類や濃度に制約を受ける場合がある。このような制約は、得られるオリゴマーの重合度又は分子量等の設計に影響したり、製造設備上の制約を受けたりする場合もあるが、本発明で用いる単量体類(I)、重合開始剤(C)は、無溶媒でも滴下液を調製できる組み合わせがあるばかりでなく、各々が広範な溶媒に可溶であるため、その組み合わせの中から、重合度又は分子量の設計や製造設備に影響を及ぼすことなく、最適な滴下液を調製することが可能である。
【0031】
さらに、製造条件によっては、滴下液として高濃度のフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)と溶媒の混合物、単量体類(I)、単量体類(I)と溶媒との混合物、単量体類(I)と重合開始剤(C)との混合物、単量体類(I)、重合開始剤(C)及び溶媒の混合物等を調製する必要が生じる。このような場合であっても、併用するその他の単量体類、重合開始剤(C)、溶媒との組み合わせにもよるが、多くのフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)は、均質溶液又は分散液を得ることが可能である。滴下液が均質又は分散状態であることは、共重合反応をより均質に進行させる上で重要である。これは得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーの応用特性(例えば、溶剤や樹脂溶液への溶解性、界面活性能)にも影響する場合があり、通常、均質な共重合体が好ましく、滴下液も均質であることが好ましい。滴下液の均質又は分散性は、上記したフッ素化アルキル基鎖長およびフッ素原子含有量に強く依存する。本発明においては、広い範囲で滴下液の均質又は分散性を保てることから、重合条件の許容範囲が広くなり、オリゴマーを合理的且つ効率的に設計できるという利点を有する。
【0032】
さらに、重合度が低くなるために、例えば単量体の両末端に重合開始剤切片が付加した化合物等が生成する場合がある。これらは、目的とする性能によっては不純物となり悪影響を及ぼすこともあるが、逆に、類似構造を持つ複数の分子の混合物となり、相溶性等が向上する場合もある。このような混合物は、用途や目的に応じて取り扱うことができる。即ち、そのまま用いても構わないし、必要があればフッ素化アルキル基含有オリゴマー以外の成分を、溶媒による抽出、洗浄、吸着剤による除去したり、各種カラム、クロマトグラフィーによる精製等を行ったりすることが可能である。
【0033】
このようにして得られたフッ素化アルキル基含有オリゴマーの用途に制限はなく、例えば、界面活性剤、表面改質剤、離型剤、帯電防止剤、起泡剤、消泡剤、流動性調整等の成形助剤、相溶化剤、分散剤等として用いることが可能である。特に、界面活性剤としては、高い界面活性効果が期待できる高フッ素含有量の分子でありながら、溶媒、樹脂への溶解性も高いものが製造できるため各種用途への展開が可能である。界面活性剤として使用する場合、その添加量は用途や目的によって異なるが、調製される組成物中、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%である。本発明で得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーを界面活性剤として用いることにより、濡れ性、レベリング性、起泡性、消泡性、浸透性、湿潤性、洗浄性等の効果を得ることが可能である。このような界面活性剤としての具体例は、泡消火薬剤、自動車、家電、OA機器、電子・電気機器及び部品用等の各種塗料、各種印刷インキ、インクジェットインキ、PS版用感光液、半導体及びフラットパネルディスプレイ用フォトレジスト、カラーレジスト、反射防止膜剤、現像液、エッチング液、リンス液、剥離液等のリソグラフィー材料、乳剤、現像液等の写真材料、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、PPS等のエンジニアリングプラスチック、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、NBR、SBR、EPDM、シリコーン系及びフッ素系等のゴム材料、紙、金属、ガラス、セラミックス等と、場合によっては有機・無機顔料、染料、カ−ボン等の着色剤、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン等の有機微粉末、更に耐光性向上剤、耐候性向上剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、艶調整剤、帯電防止剤、導電調整剤等の各種充填剤からなるシート、フィルム、板、チューブ、ロール、ベルト、金型を用いて賦型した成形物、糸、繊維等に対するプライマーコーティング材料、中塗りコーティング材料、表面(トップ)コーティング材料等が挙げられる。このような、コーティング材料は、溶液の形態によって無溶剤、水系、有機溶剤系、樹脂の種類により熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化方法によって熱硬化型、UV等のエネルギー線硬化型等に分別されるが、本発明で得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーは、種々のあらゆるタイプのコーティング材料に適応することが可能である。また、コーティング材料の塗布方法は、用途と目的に応じて選択され、グラビアコーター、ナイフコーター、ディッピング塗布、スプレー塗布、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター、カーテンコーター、フローコーター、刷毛塗り等の方法により各種基材上に塗布することができる。本発明で得られるフッ素化アルキル基含有オリゴマーは、特に目的とする膜厚が薄い(5μm以下)場合、さらには薄膜で塗布面積が大きい場合、高せん断力や高速塗工する場合に界面活性効果が顕著になる。
【実施例】
【0034】
次に本発明をより詳細に説明するために参考例、実施例及び比較例を掲げるが、これらの説明によって本発明が何等限定されるものでないことは勿論である。文中の「部」は、断わりのない限り重量基準である。
【0035】
実施例1
撹拌装置、コンデンサー、温度計、滴下ロートを備えたガラスフラスコに重合溶媒としてメチルイソブチルケトンを250g仕込む。一方、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)としてA−4を40g(0.0957モル)、(A)以外のエチレン性不飽和単量体(B)として平均重合度4.5モルのポリエチレンオキシド鎖含有アクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマーAE−200)を40g(0.1481モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレートを20g(0.1724モル)、重合開始剤(C)としてt−ブチルパーオキシ−2―エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製パーブチルO、以下パーブチルOと略す。10時間半減期温度;72.1℃)を20g(0.0926モル)そしてメチルイソブチルケトン50重量部を予め混合し均一に溶解させ、滴下ロートに仕込み滴下液とする。
【0036】
滴下液を仕込んだ滴下ロートをガラスフラスコにセットし、窒素ガスを注入しながら110℃まで昇温する。110℃に到達したら滴下液を6時間かけて一定量ずつ滴下する。その後、12時間ホールドし重合を完結させ含フッ素オリゴマー(1)をMIBK溶液として得た。本重合溶液は、MIBK臭を有したが、脱MIBKを行うと粘ちょうな液体(オリゴマー1とする。)が得られ、ほぼ無臭であった。
【0037】
オリゴマー1のゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す。)によるポリスチレン換算数平均分子量はMn=1,160であり、単量体および重合開始剤組成より計算された平均重合度は3.2であった。
【0038】
オリゴマー1の1%水溶液は、透明な液体であった。オリゴマー1の0.1wt%水溶液のウィルヘルミー法にて測定した表面張力は19.5mN/mであり、低濃度で優れた表面張力低下能力を示した。尚、平均重合度は、溶剤への連鎖移動反応は起こらず、オリゴマー末端には必ず重合開始剤切片が位置するものとして計算した。
【0039】
実施例2
実施例1における滴下液中の単量体組成を、A−4を40g(0.0957モル)、平均重合度9モルで末端がメトキシ基であるポリエチレンオキシド鎖含有メタアクリレート(新中村化学株式会社製NKエステル M−90G)を60g(0.1210モル)とした以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ほぼ無臭の含フッ素オリゴマー(オリゴマー2とする。)を得た。オリゴマー2の数平均分子量はMn=1,400平均重合度は2.5であった。オリゴマー2の1%水溶液は、沈殿は生じず僅かに濁る分散液体であった。オリゴマー2の0.1wt%水溶液のウィルヘルミー法にて測定した表面張力は20.8mN/mであり、低濃度で優れた表面張力低下能力を示した。
【0040】
実施例3
実施例1における滴下液中の単量体組成を、A−1を60g(0.0965モル)、平均重合度5モルのポリプロピレンオキシド鎖含有メタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマーPP−1000、以下PP−1000と略す。)を40g(0.1064モル)、パーブチルOを7.5g(0.0347モル)とした以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ほぼ無臭の含フッ素オリゴマー(オリゴマー3)を得た。オリゴマー3の数平均分子量はMn=2,100であり、平均重合度は4.7であった。オリゴマー3の1%IPA溶液および1%プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)溶液は透明な液体であった。オリゴマー3の0.1%PGME溶液のウィルヘルミー法により測定した表面張力は17.7mN/mであり、低濃度で優れた表面張力低下能力を示した。
【0041】
実施例4
実施例1における滴下液中の重合開始剤(C)としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬株式会社製V−601、10時間半減期温度;66℃)を20g(0.087モル)とした以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ほぼ無臭の含フッ素オリゴマー(オリゴマー4とする。)を得た。オリゴマー4の数平均分子量はMn=910平均重合度は2.3であった。オリゴマー4の1%水溶液は、透明な液体であった。オリゴマー4の0.1wt%水溶液のウィルヘルミー法にて測定した表面張力は19.7mN/mであり、低濃度で優れた表面張力低下能力を示した。
【0042】
比較例1
実施例1における滴下液中のパーブチルOを2g(0.0093モル)とし、重合温度を80℃とした以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ほぼ無臭の含フッ素オリゴマー(オリゴマー5)を得た。オリゴマー5の数平均分子量はMn=6,100であり、平均重合度は19.7であった。オリゴマー5の1%水溶液は白濁した。
【0043】
比較例2
実施例1における滴下液中のパーブチルOを2g(0.0093モル)、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンを3g(0.0149モル)とした以外は実施例1と同様に重合反応を行い、含フッ素オリゴマー(オリゴマー6)を得た。オリゴマー6はn−ラウリルメルカプタン由来の強い特異臭を有していた。オリゴマー6の数平均分子量はMn=960であり、平均重合度は2.5であった。
【0044】
比較例3
実施例3における滴下液中のパーブチルOを3重量部(0.0139モル)とし、重合温度を80℃とした以外は実施例1と同様に重合反応を行い、ほぼ無臭の含フッ素オリゴマー(オリゴマー7)を得た。オリゴマー7の数平均分子量はMn=8,400であり、平均重合度は20.4であった。オリゴマー7は1%IPA溶液および1%プロピレングリコーロモノメチルエーテル溶液に溶解しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を含有するエチレン性不飽和単量体類(I)中のエチレン性不飽和基1モルに対して、重合開始剤(C)を0.07〜0.7モル用いて前記単量体類(I)を重合してフッ素化アルキル基含有オリゴマーを得ることを特徴とするフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法。
【請求項2】
単量体類(I)中にマクロモノマーであるエチレン性不飽和単量体(B)を含有する請求項1記載のフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法。
【請求項3】
マクロモノマーであるエチレン性不飽和単量体(B)が、ポリオキシアルキレン構造を有するエチレン性不飽和単量体(b1)である請求項2記載のフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法。
【請求項4】
重合開始剤(C)が10時間半減期温度が40〜120℃の有機過酸化物(c1)である請求項1〜3の何れか1項記載のフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法。
【請求項5】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(A)を含有するエチレン性不飽和単量体類(I)中のエチレン性不飽和基1モルに対して、重合開始剤(C)を0.15〜0.5モル用いる請求項4記載のフッ素化アルキル基含有オリゴマーの製造方法。

【公開番号】特開2006−249130(P2006−249130A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63740(P2005−63740)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】