説明

フッ素化フェナントロリン誘導体を含む電荷輸送組成物

本発明は、式(I)の化合物を含む電荷輸送組成物に関する。本発明はさらに、このような電荷輸送組成物を含む活性層が少なくとも1層設けられた電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電荷輸送組成物に関する。本発明はさらに、このような電荷輸送組成物を含む活性層が少なくとも1層設けられた活性型電子デバイスに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本件出願は、2002年7月10日に出願された米国仮特許出願第60/394767号ならびに2003年3月28日に出願された米国仮特許出願第60/458277号の優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
OLEDディスプレイを構成する発光ダイオード(「OLED」)などの有機光活性型電子デバイスでは、OLEDディスプレイの2つの電気的接点層の間に有機活性層が挟まれた形になっている。OLEDにおいては、電気的接点層に電圧が印加されると、透光性の電気的接点層を介して有機光活性層から光線が放出される。
【0004】
有機エレクトロルミネッセント化合物を発光ダイオードの活性成分として用いることは周知である。単純な有機分子、共役ポリマー、有機金属錯体が用いられてきた。
【0005】
光活性型材料を用いたデバイスには、光活性(たとえば発光)層と一方の接点層との間に位置する1層以上の電荷輸送層が用いられていることが多い。光活性層と正孔注入性接点層との間に正孔輸送層を設けてもよく、これはアノードとも呼ばれる。また、光活性層と電子注入性接点層との間に電子輸送層を設けてもよく、これはカソードとも呼ばれる。
【0006】
【特許文献1】国際公開第02/02714号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0019782号明細書
【特許文献3】EP1191612号明細書
【特許文献4】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献5】EP1191614号明細書
【特許文献6】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/41512号パンフレット
【特許文献8】米国特許第6,303,238号明細書
【非特許文献1】マーカス(Markus)、ジョン(John)、Electronics and Nucleonics Dictionary、 470および476(McGraw−Hill, Inc.、 1966)
【非特許文献2】「Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer」、Nature 第357巻、第477〜479ページ(1992年6月11日)
【非特許文献3】カーク・オスマー化学大辞典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版、第18巻、第837〜860ページ、1996年、Y.ワン(Wang)
【非特許文献4】ブラッドリー(Bradley)ら、Synth.Met.(2001)、116(1−3)、379〜383
【非特許文献5】キャンベル(Campbell)ら、Phys.Rev.B、Vol.65 085210
【非特許文献6】トヨタ(Toyota)ら、Tetrahedron Letters 1998、39、2697〜2700
【非特許文献7】サイトウ(Saitoh)ら、Canadian Journal of Chemistry 1997、75、1336〜1339
【非特許文献8】J.Heterocyclic Chemistry 1983、20、681〜6
【非特許文献9】ヤマダ(Yamada)ら、Bulletin of the Chemical Society of Japan 1990、 63、 2710〜12
【非特許文献10】O.ロース(Lohse)、P.テブナン(Thevenin)、E.ウォルドボーゲル(Waldvogel) Synlett、1999、45〜48
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電荷輸送材料およびアンチクエンチング材料には依然として需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、図1に示される式Iを有するフェナントロリン誘導体を含む電荷輸送組成物に関するものであり、式中、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、Fと、Clと、Brと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アルケニルと、アルキニルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
a、b、cおよびdは0であるか、a+b=2n+1かつc+d=5になるような整数であり、
nは整数であり、
xは0であるか、1から3の整数であり、
yは、0、1または2であり、
但し、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にある。
【0009】
もうひとつの実施形態では、本発明は、図2に示される式II(a)または式II(b)を有する電荷輸送組成物に関するものであり、式中、
、R、a〜d、n、x、yは上記にて定義したとおりであり、
は、出現するごとに同一または異なり、単結合と、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アリーレンアルキレン、およびヘテロアリーレンアルキレンから選択される基と、から選択され、
Qは、単結合と多価基とから選択され、
mは少なくとも2に等しい整数であり、
pは0または1である。
【0010】
もうひとつの実施形態において、本発明は、それぞれ図1および図2に示される式I、式II(a)、式II(b)から選択される材料を含む活性層を少なくとも1層有する電子デバイスに関するものであり、式中、R〜R、Q、a〜d、m、n、p、x、yは上記にて定義したとおりであり、但し、式Iにおいて、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にある。
【0011】
本願明細書において使用する場合、「電荷輸送組成物」という用語は、電極から電荷を受け取ることができ、この材料の厚さ方向に比較的高効率かつ少ない電荷損失で電荷が遷移しやすい材料を意味するものとする。アノードから正の電荷を受け取り、これを輸送できるのが正孔輸送組成物である。カソードから負の電荷を受け取り、これを輸送できるのが電子輸送組成物である。「アンチクエンチング組成物」という用語は、励起状態の光活性層へ、あるいは励起状態の光活性層から隣接する層へのエネルギー遷移と電子移動の両方を防止する、遅れさせる、あるいは抑制する材料を意味するものとする。「光活性」という用語は、エレクトロルミネッセンス、フォトルミネッセンスおよび/または感光性を呈する材料を意味する。「HOMO」という用語は、化合物の最高被占分子軌道を示す。「LUMO」という用語は、化合物の最低空位分子軌道を示す。「基」という用語は、有機化合物の置換基など、化合物の一部を意味するものとする。「ヘテロ」という接頭辞は、1以上の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示す。「アルキル」という用語は、1個の結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、かつ1個の結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「アルキレン」という用語は、2個以上の結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するものである。「ヘテロアルキレン」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、かつ2個以上の結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するものである。「アルキレン」という用語は、2個以上の結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するものである。「ヘテロアルキレン」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、かつ2個以上の結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導された基を意味するものである。「アルケニル」という用語は、1個以上の炭素−炭素二重結合を有し、かつ1個の結合点を有する炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「アルキニル」という用語は、1個以上の炭素−炭素三重結合を有し、かつ1個の結合点を有する炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「アルケニレン」という用語は、1個以上の炭素−炭素二重結合を有し、かつ2個以上の結合点を有する炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「アルキニレン」という用語は、1個以上の炭素−炭素三重結合を有し、かつ2個以上の結合点を有する炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルケニレン」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロアルキンレン(heteroalkynlene)」という用語は、1以上のヘテロ原子を有する類似の基を意味するものである。「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルケニレン」、「ヘテロアルキニル」および「ヘテロアルキンレン(heteroalkynlene)」という用語は、1以上のヘテロ原子を有する類似の基を意味するものである。「アリール」という用語は、1個の結合点を有する芳香族炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、かつ1個の結合点を有する芳香族基から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「アリールアルキレン」という用語は、アリール置換基を有するアルキル基から誘導された基を意味するものであり、この基は、さらに置換されていなくても置換されていてもよい。「ヘテロアリールアルキレン」という用語は、ヘテロアリール置換基を有するアルキル基から誘導された基を意味するものであり、この基は、さらに置換されていなくても置換されていてもよい。「アリーレン」という用語は、少なくとも2個の結合点を有する芳香族炭化水素から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「ヘテロアリーレン」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、かつ2個の結合点を有する芳香族基から誘導された基を意味するものであり、この基は、置換されていなくても置換されていてもよい。「アリーレンアルキレン」という用語は、アリール基とアルキル基の両方を有し、かつアリール基上に1個の結合点とアルキル基上に1個の結合点とを有する基を意味するものである。「ヘテロアリーレンアルキレン」という用語は、アリール基とアルキル基の両方を有し、かつアリール基上に1個の結合点とアルキル基上に1個の結合点とを有する基であって、少なくとも1個のヘテロ原子がある基を意味するものである。特に明記しない限り、いずれの基も非置換または置換されたものとすることが可能である。「隣接して」というフレーズは、デバイスの層についていう場合、必ずしも1つの層が他の層のすぐ隣にあることを意味するわけではない。一方、「隣接したR基」というフレーズは、化学式で互いに隣り合ったR基(すなわち、結合によって結び付いた原子上にあるR基同士)の意味で用いられる。「化合物」という用語は、原子からなる分子で構成された、電気的に荷電されていない物質を意味するものとし、ここでいう原子とは物理的な手段では分離できないものである。「配位子」という用語は、金属イオンの配位圏に結合した分子、イオンまたは原子を意味するものとする。「錯体」という用語は、名詞として用いる場合、少なくとも1個の金属イオンと少なくとも1個の配位子とを有する化合物を意味するものとする。また、全体を通して、周期律表の族に左から右に1〜18の番号を付すIUPAC基準の番号を使用する(CRC Handbook of ChemistryおよびPhysics、第81版、2000)。
【0012】
特に定義しない限り、本願明細書で用いる技術用語および科学用語はいずれも、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味である。特に定義しない限り、図中の文字記号はいずれも、その原子略号で表される原子を示す。本発明の実施あるいは試験には本願明細書で説明する内容に類似あるいは同等の方法や材料を利用することが可能ではあるが、以下、好適な方法および材料について説明する。本願明細書に記載の刊行物、特許出願、特許ならびにその他の参考文献はいずれも、その内容全体を本願明細書に援用する。矛盾が生じた場合は、定義部分を含む本願明細書が優先するものとする。また、材料、方法、実施例はすべて一例にすぎず、限定的なものではない。
【0013】
本発明の他の特徴および利点については、以下の詳細な説明ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示される式Iで表されるフェナントロリン誘導体化合物には、ET/AQと略記される電子輸送組成物およびアンチクエンチング剤としての特定の用途がある。
【0015】
一実施形態において、Rは、フェニルと、ビフェニルと、ピリジルと、ビピリジルとから選択され、これらはさらに置換されていてもよい。置換基の例としては、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキレン、ヘテロアリールアルキレン、F、C、OC、C、OC(式中、a〜dおよびnは上記にて定義したとおりである)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
一実施形態において、少なくとも1個のRはフェニルおよびビフェニルから選択され、Fと、Cと、OCと、Cと、OC(式中、a〜dおよびnは上記にて定義したとおりである)とから選択される基でさらに置換されていてもよい。
【0017】
通常、nは整数である。一実施形態において、nは1から20の整数である。一実施形態において、nは1から12の整数である。
【0018】
このタイプの好適なET/AQ化合物の例としては、図3の式I(a)〜式I(i)で示されるものがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0019】
式Iで表される組成物は、実施例に示すような標準的な合成有機手法を用いて調製可能なものである。これらの化合物は蒸発による手法または従来の溶液処理法で、薄膜として適用可能である。本願明細書において使用する場合、「溶液処理」とは、液体状の媒質から膜を形成することを示す。この液体状の媒質は、溶液、分散液、エマルジョン、あるいはその他の形態にすることが可能である。一般的な溶液処理法としては、たとえば、溶液流延、ドロップ流延、カーテン流延、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷などがあげられる。
【0020】
場合によっては、化合物のTgを高め、安定性、塗布性、その他の特性を改善すると望ましいことがある。これは、2以上の化合物を架橋基と結合し、図2に示される式II(a)または式II(b)を有する化合物を形成して達成することが可能である。これらの式において、Qは単結合であるか、あるいは2個以上の結合点を有する多価架橋基である。多価架橋基は、2個以上の結合点を有する炭化水素基であってもよいし、脂肪族または芳香族であってもよい。多価架橋基は、ヘテロアルキル基または複素芳香族基であってもよく、この場合のヘテロ原子はN、O、SまたはSiなどである。多価基Qの例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基ならびにヘテロ原子を有する類似の化合物;単環、多環、縮合環の芳香族および複素芳香族;トリアリールアミンなどのアリールアミン;シランおよびシロキサンがあげられるが、これに限定されるものではない。好適な架橋基Qの別の例を図4に式III(a)〜式III(h)として示す。式III(f)では、どの炭素が電荷輸送部分に結合してもよい。式III(h)では、どのSi原子が電荷輸送部分に結合してもよい。GeおよびSnなどのヘテロ原子を用いることも可能である。架橋基は−[SiMeR−SiMeR−であってもよく、この場合のRおよびnは上記にて定義したとおりである。
【0021】
通常、mは少なくとも2の整数である。正確な数字は、Qで利用できる結合位置の数とフェナントロリン部分およびQの幾何学的形状とに左右される。一実施形態において、mは2から10の整数である。
【0022】
通常、nは整数である。一実施形態において、nは1から20の整数である。一実施形態において、nは1から12の整数である。
【0023】
一実施形態において、Rは、フェニルと、ビフェニルと、ピリジルと、ビピリジルとから選択され、これらはさらに置換されていてもよい。置換基の例としては、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキレン、ヘテロアリールアルキレン、F、C、OC、C、OC(式中、a〜dおよびnは上記にて定義したとおりである)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
一実施形態において、少なくとも1個のRはフェニルおよびビフェニルから選択され、Fと、Cと、OCと、Cと、OC(式中、a〜dおよびnは上記にて定義したとおりである)とから選択される基でさらに置換されていてもよい。
【0025】
一実施形態において、Rはフェニレンおよび置換フェニレンから選択される。置換基の例としては、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキレン、ヘテロアリールアルキレン、F、C、OC、C、OC(式中、a〜dおよびnは上記にて定義したとおりである)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
一実施形態において、Rは、1から20個の炭素原子を有するアルキレン基から選択される。
【0027】
一実施形態において、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にある。
【0028】
式II(a)および式II(b)で表される組成物は標準的な合成有機手法を用いて調製可能なものである。
【0029】
(電子デバイス)
本発明は、光活性層と一方の電極との間に設けられた本発明の電荷輸送組成物のうちの少なくとも1種を含む電子デバイスに関する。一般的なデバイス構造を図6に示す。デバイス100はアノード層110とカソード層160とを有する。アノードに隣接しているのは正孔輸送材料を含む層120である。カソードに隣接しているのは電子輸送材料および/またはアンチクエンチング材料を含む層140である。正孔輸送層と電子輸送層および/またはアンチクエンチング層との間が光活性層130である。任意に、これらのデバイスではカソードの隣に別の電子輸送層150が用いられることが多い。層120、130、140、150については、個別ならびに総称として活性層と呼ぶ。
【0030】
デバイス100の用途によっては、光活性層130を(発光ダイオードまたは発光電気化学セル用など)印加電圧によって活性化される発光層としたり、(光検出器用など)印加バイアス電圧の有無とは関係なく放射エネルギーに応答して信号を生成する材料の層とすることが可能である。光検出器の例としては、光導電素子、光抵抗器、光スイッチ、フォトトランジスタ、フォトチューブ、光電池があげられ、これらの用語は、(非特許文献1)に説明されている。
【0031】
本発明のフェナントロリン誘導体化合物は、層140における電子輸送組成物および/またはアンチクエンチング組成物として、あるいは層150における電子輸送組成物として特に有用である。
【0032】
デバイスの他の層については、このような層で有用であることが分かっている材料であれば、どのような材料で形成してもよい。アノード110は、正の電荷キャリアの注入に特に効率のよい電極である。これは、たとえば、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合金属酸化物を含有する材料で作ることができ、あるいは導電性ポリマーおよびこれらの混合物であってもよい。好適な金属としては、11族金属、4族、5族、6族の金属、8〜10族の遷移金属があげられる。アノードを透光性にするのであれば、インジウム−スズ−酸化物などの12族、13族、14族の金属の混合金属酸化物を用いるのが普通である。また、アノード110は、(非特許文献2)に説明されているようなポリアニリンなどの有機材料も含む。生成された光を観察できるように、アノードおよびカソードの少なくとも一方は少なくとも部分的に透明なものとする。
【0033】
層120に使用できる正孔輸送材料の例については、たとえば、(非特許文献3)にまとめられている。正孔輸送性分子とポリマーのどちらも利用できる。一般に用いられている正孔輸送性分子としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、銅フタロシアニンなどのポルフィリン化合物があげられる。一般に用いられている正孔輸送性ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリアニリン、これらの混合物があげられる。また、上述したものなどの正孔輸送性分子をポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマーにドープして正孔輸送性ポリマーを得ることも可能である。
【0034】
光活性層130の例としては、周知のあらゆるエレクトロルミネッセント材料があげられる。有機金属エレクトロルミネッセント化合物が好ましい。最も好ましい化合物は、シクロメタル化イリジウムおよびプラチナエレクトロルミネッセント化合物ならびにこれらの混合物である。ペトロフ(Petrov)らの(特許文献1)にはイリジウムとフェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子またはフェニルピリミジン配位子との錯体がエレクトロルミネッセント化合物として開示されている。また、米国特許公報(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)などには、他の有機金属錯体が開示されている。イリジウムの金属錯体でドープされたポリビニルカルバゾール(PVK)の活性層を有するエレクトロルミネッセントデバイスが、バローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)の(特許文献6)および(特許文献7)に記載されている。電荷搬送(carrying)ホスト材料およびリン光白金錯体を含むエレクトロルミネッセント発光層が、トンプソン(Thompson)らの米国特許公報(特許文献8)、(非特許文献4)、(非特許文献5)に記載されている。いくつかの好適なイリジウム錯体の例を図5に式IV(a)〜式IV(e)としてあげておく。似たような四配位白金錯体も利用可能である。上述したように、これらのエレクトロルミネッセンス錯体は単独で利用することもできるし、電荷搬送ホストにドープして用いることもできる。本発明の組成物は、電子輸送層および/またはアンチクエンチング層140において有用であることに加えて、光活性層130に含まれる発光ドーパント用の電荷搬送(carrying)ホストとしても機能できる。
【0035】
層150に利用できる別の電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq)などの金属キレート化オキシノイド化合物、2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)および3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)などのアゾール化合物、これらの混合物があげられる。
【0036】
カソード160は、電子または負の電荷キャリアを注入する上で特に効率の良い電極である。カソードは、アノードよりも仕事関数の低いものであれば、どのような金属または非金属であってもよい。カソード向けの材料は、1族のアルカリ金属(Li、Csなど)、2族(アルカリ土類)の金属ならびに、希土類元素、ランタニド、アクチニドを含む12族の金属から選択することが可能である。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、マグネシウムなどの材料ならびにこれらの組み合わせを利用してもよい。Li含有有機金属化合物すなわち、LiF、LiOを有機層とカソード層との間に堆積させ、動作電圧を下げることも可能である。
【0037】
有機電子デバイスに他の層を用いることは周知である。たとえば、アノード110と正孔輸送層120との間に層(図示せず)を設け、正の電荷輸送および/または層のバンドギャップマッチングを容易にしたり、あるいは保護層として機能させることが可能である。この場合、従来技術において周知の層を利用すればよい。また、上述した層のいずれも2以上の層で構成することができる。あるいは、アノード層110、正孔輸送層120、電子輸送層140および150、カソード層160のうちの一部または全部を表面処理し、電荷キャリア輸送効率を高めるようにしてもよい。各構成層の材料に何を選ぶかは、デバイス効率の高いデバイスを提供するという目標とデバイスの動作寿命とのバランスを取りながら判断するとよい。
【0038】
それぞれの機能的層を2以上の層で構成してもよいことは理解できよう。
【0039】
このデバイスは、個々の層を好適な基板に順次蒸着することをはじめとして、さまざまな手法で製造可能なものである。ここで、ガラスフィルムやポリマーフィルムなどの基板を利用することができる。熱的蒸発、化学気相成長法などの従来の蒸着手法を用いることが可能である。あるいは、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールツーロール法を含むがこれに限定されるものではない従来の適当なコーティング手法を利用して、有機層を溶液または好適な溶媒中の分散液からコーティングすることが可能である。通常、これらの異なる層は厚さの範囲が以下のとおりとなる。アノード110、500〜5000Å、好ましくは1000〜2000Å;正孔輸送層120、50〜2000Å、好ましくは200〜1000Å;光活性層130、10〜2000Å、好ましくは100〜1000Å;電子輸送層140および150、50〜2000Å、好ましくは100〜1000Å;カソード160、200〜10000Å、好ましくは300〜5000Å。デバイスにおける電子−正孔再結合領域の位置、ひいてはデバイスの発光スペクトルについては、各層の相対的な厚さによって変えることができる。よって、電子輸送層の厚さは、電子−正孔再結合領域が発光層内にくるように選択すべきである。層厚の所望の比は、使用する材料の厳密な性質に左右される。
【0040】
本発明のフェナントロリン誘導体化合物は、OLED以外の用途に役立つことがある。たとえば、これらの組成物を太陽エネルギー変換用の光起電力装置に用いることができる。また、スマートカード用の電界効果トランジスタや薄膜トランジスタ(TFT)ディスプレイドライバの用途に用いられることもある。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の特定の特徴ならびに利点について示すものである。これらの実施例は本発明を例示するためのものであり、限定するものではない。特に明記しない限り、パーセンテージはいずれも重量基準である。
【0042】
(実施例1〜5)
これらの実施例は、フッ素置換を有するフェナントロリン誘導体電荷輸送組成物の調製について示すものである。
【0043】
(実施例1)
本実施例は、図3の化合物I(c)の調製について説明するものである。
【0044】
2,9−ジヨード−1,10−フェナントロリン(900mg、2.08mmol、(非特許文献6)に準じて調製)と、3−トリフルオロメチルベンゼンボロン酸(989mg、5.20mmol、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(481mg、0.416mmol、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company))と、炭酸ナトリウム(882mg、8.32mmol)との混合物を、水(20mL)/トルエン(50mL)中で15時間、窒素下にて還流させた。続いて、有機層を分離し、水性層をクロロホルム3×25mLで抽出した。有機層同士を混合し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで脱水した。ヘキサン/ジクロロメタン(1:1、v:v)を溶離液として用いるシリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(生成物Rf=0.25)によって精製を行い、H NMRで求めた純度が95%を超える所望の生成物を淡い黄色の固体(560mg、57%)として得た。H NMR(CDCl、300MHz、296K):δ8.81(s,2H)、8.63(d,2H、J=7.5Hz)、8.36(d,2H、J=8.4Hz)、8.19(d,2H、J=8.41Hz)、7.84(s,2H)、7.68〜7.77(m,6H)ppm。19F NMR(CDCl、282MHz、296K)δ−63.25ppm。
【0045】
化合物I(a)、I(g)、I(h)とI(i)との混合物を同様の手順で生成した。
【0046】
(実施例2)
本実施例は、図3の化合物I(b)の調製について説明するものである。
【0047】
3,8−ジブロモ−1,10−フェナントロリン(1.5g、4.4mmol、(非特許文献7)に準じて調製)と、4−トリフルオロメチルベンゼンボロン酸(2.11g、11.1mmol、Lancaster Chemical Company、ニューハンプシャー州ウィンダム(Windham))と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(513mg、0.444mmol)と、炭酸ナトリウム(1.41g、13.3mmol)と、水(20mL)と、トルエン(100mL)とを用いて、実施例1と同じ手順を利用した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(ジクロロメタン/メタノール、9:1、v:v)で精製を行った後、冷やしたメタノールで生成物を洗浄することで、H NMRで求めた純度が95%を超える白色の固体(520mg、25%)を得た。H NMR(CDCl、300MHz、296K):δ9.46(d,2H、J=2.3Hz)、8.45(d,2H、2.3Hz)、7.94(s,2H)、7.91(d,4H、J=8.3Hz)、7.82(d,4H、J=8.4Hz)ppm。19F NMR(CDCl3、282MHz、296K)δ−63.12ppm。
【0048】
(実施例3)
本実施例は、図3の化合物I(e)の調製について説明するものである。
【0049】
2,9−ジヨード−1,10−フェナントロリン(1.00g、2.31mmol)と、4−フルオロベンゼンボロン酸(972mg、6.96mmol)と、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(92mg、0.23mmol、アルドリッチ(Aldrich))と、酢酸パラジウム(52mg、0.23mmol、アルドリッチ(Aldrich))と、フッ化カリウム(810mg、13.9mmol、アルドリッチ(Aldrich))とを無水ジオキサン(100mL)中で15時間還流させた後、ジオキサンを減圧下にて除去し、粗残渣を実施例1のようにして水性(aqueous)ワークアップに供した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(ジクロロメタン、100%生成物Rf=0.57)での精製を行い、H NMRで求めた純度が95%を超える淡い黄色の固体(567mg、67%)を得た。H NMR(CDCl、300MHz、296K):δ8.43(dd,4H、JHH=10.4Hz、JHF=5.5Hz)、8.28(d,2H、J=8.4Hz)、7.77(s,2H)、7.26(dd,4H、JHH=9.9Hz、JHF=5.9Hz)ppm。19F NMR(CDCl3、282MHz、296K)δ−113.0ppm。
【0050】
(実施例4)
本実施例は、図3の化合物I(d)の調製について説明するものである。
【0051】
4,7−ジクロロ−1,10−フェナントロリン(300mg、1.20mmol、(非特許文献8)に準じて調製)と、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンボロン酸(0.930mg、3.60mmol、アルドリッチ(Aldrich))と、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(154mg、0.361mmol)と、酢酸パラジウム(81mg、0.361mmol)と、炭酸ナトリウム(0.510mg、9.62mmol)と、水(5mL)と、トルエン(30mL)とを用いて実施例20および21と同じ手順を利用し、所望の生成物を白色の固体(410mg、56%)として得た。H NMR(CDCl、300MHz、296K):δ9.35(d,2H、J=4.49Hz)、8.06(s,2H)、8.00(s,4H)、7.73(2H,s)、7.66(d,2H、J=4.52Hz)ppm。19F NMR(CDCl、282MHz、296K)δ−63.32ppm。
【0052】
(実施例5)
本実施例は、図3の化合物I(f)の調製について説明するものである。
【0053】
2,9−ジクロロ−フェナントロリン(1.0g、4.01mmol、(非特許文献9)に準じて調製)と、3,5−ビストリフルオロメチルベンゼン−ボロン酸(2.59g、10.0mmol)と、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(171mg、0.401mmol)と、酢酸パラジウム(90mg、0.401mmol)と、フッ化カリウム(1.40g、24.1mmol)と、無水ジオキサン(100mL)とを用いて、実施例3と同じ手順を利用した。粗材料をジエチルエーテルで洗浄して生成物を精製し、所望の生成物を白色の固体(345mg、14%)として得た。H NMR(CDCl、300MHz、296K):δ8.92(d,4H、JHF=1.46Hz)、8.45(d,2H、J=8.3Hz)、8.25(d,2H、J=8.5Hz)、8.02(s,2H)、7.91(s,2H)ppm。19F NMR(CDCl、282MHz、296K)δ−63.50ppm。
【0054】
電子輸送組成物および/またはアンチクエンチング組成物の特性を以下の表1にまとめておく。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例6)
本実施例は、図5に式IV(a)として示すイリジウムエレクトロルミネッセンス錯体の調製について説明するものである。
【0057】
(フェニルピリジン配位子、2−(4−フルオロフェニル)−5−トリフルオロメチルピリジン)
使用した大まかな手順は、(非特許文献10)に説明されていた。脱気水200mlと、炭酸カリウム20gと、1,2−ジメトキシエタン150mlと、Pd(PPh0.5gと、2−クロロ−5−トリフルオロメチルピリジン0.05molと、4−フルオロフェニルボロン酸0.05molとの混合物を16〜30時間還流(80〜90℃)した。このようにして得られる反応混合物を水300mlで希釈し、CHCl(2×100ml)で抽出した。混合有機層をMgSO上で乾燥させ、真空により溶媒を除去した。この液体生成物を真空分留で精製した。固体材料をヘキサンから再結晶化させた。単離した材料の典型的な純度は98%を超えていた。
【0058】
(イリジウム錯体)
IrCl・nHO(54%Ir;508mg)と、上記にて得られた2−(4−フルオロフェニル)−5−トリフルオロメチルピリジン(2.20g)と、AgOCOCF(1.01g)と、水(1mL)との混合物を、温度を徐々に(30分間)185℃(油浴)まで上げながらN流下で強く攪拌した。185〜190℃で2時間経過後、混合物が固化した。この混合物を室温まで冷ました。抽出物の色がなくなるまで、固体をジクロロメタンで抽出した。この混合ジクロロメタン溶液を短いシリカカラムで濾過し、脱水した。残渣にメタノール(50mL)を添加した後、フラスコを−10℃で一晩保持した。トリス−シクロメタル化錯体すなわち図5の化合物IVaの黄色の沈殿物を分離し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥させた。収率1.07g(82%)。その温かい溶液を1,2−ジクロロエタン中でゆっくりと冷却することで、錯体のX線品質(X−Ray quality)の結晶が得られた。
【0059】
(実施例7)
本実施例は、本発明の電荷輸送組成物を用いたOLEDの製造について説明するものである。
【0060】
正孔輸送層(HT層)と、エレクトロルミネッセント層(EL層)と、少なくとも1層の電子輸送層および/またはアンチクエンチング層(ET/AQ層)とを含む薄膜OLEDデバイスを熱蒸発法によって製造した。油拡散ポンプ付きのエドワードオート(Edward Auto) 306蒸発器を利用した。すべての薄膜成膜でのベース真空を10−6トールの範囲とした。この成膜チャンバは真空から抜ける必要なく5種類の膜を成膜できた。
【0061】
スィンフィルムデバイセーズインコーポレイテッド(Thin Film Devices,Inc)から得られるパターン付きインジウム・スズ酸化物(ITO)被覆ガラス基板を用いた。これらのITOは、コーニング1737ガラスをベースにして1400ÅのITOコーティングを被覆したものであり、シート抵抗30オーム/スクエア、光線透過量80%である。続いて、このパターン付きITO基板を洗剤水溶液中で超音波により清浄した。次に基板を蒸留水ですすいだ後にイソプロパノールですすぎ、続いてトルエン蒸気中で3時間以内で脱脂した。
【0062】
続いて、清浄したパターン付きITO基板を真空チャンバに入れ、チャンバを10−6トールまでポンプ減圧した。次に、酸素プラズマを用いて約5〜10分間、基板をさらに清浄した。清浄後、熱蒸発によって基板上に複数の薄膜層を連続成膜した。最後に、AlまたはLiFおよびAlのパターン付き金属電極をマスクを通して成膜した。成膜時には水晶モニタ(Sycon STC−200)を使って膜厚を測定した。実施例で報告した膜厚はいずれも、成膜される材料の密度を1と仮定して算出した公称値である。続いて、完成したOLEDデバイスを真空チャンバから取り出し、封入せずにすみやかに特徴付けした。
【0063】
本発明のフェナントロリン誘導体ET/AQ組成物を用いて製造したデバイスを表2にまとめておく。いずれの場合もアノードは上述したようにITO、正孔輸送層は図15に示すMPMP、放出層は実施例6のイリジウム錯体で、各々明記したとおりの厚さとした。電子輸送層150を設ける場合はトリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(III)すなわちAlqで、明記したとおりの厚さとした。カソードはAlの層またはLiF/Alの二重層で、明記したとおりの厚さとした。
【0064】
【表2】

【0065】
OLEDサンプルについては、その(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス輻射vs電圧、(3)エレクトロルミネッセンススペクトルvs電圧を測定して特徴付けした。使用した装置200を図8に示す。OLEDサンプル220のI−V曲線についてはケースレー(Keithley)ソース測定ユニットモデル237、280で測定した。エレクトロルミネッセンス輻射(単位cd/m)vs.電圧はミノルタ製LS−110ルミネッセンス計210で測定し、電圧の方はケースレー(Keithley)SMUを用いてスキャンした。一対のレンズ230を使用して光を集め、電子シャッター240を通し、分光器250で分散させた上で、ダイオードアレイ検出器260で測定してエレクトロルミネッセンススペクトルを得た。3通りの測定を同時に行い、コンピュータ270で測定値を集めた。LEDのエレクトロルミネッセンス輻射を、デバイスを動かすのに必要な電流密度で除して、特定の電圧でのデバイスの効率を求める。単位はcd/Aである。
【0066】
本発明のフェナントロリン誘導体ET/AQ組成物を用いたデバイスでの結果を以下の表3にあげておく。
【0067】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の電荷輸送組成物の式Iを示す。
【図2】本発明の電荷輸送組成物の式II(a)および式II(b)を示す。
【図3】本発明の電荷輸送組成物の式I(a)〜式I(i)を示す。
【図4】多配位架橋基の式III(a)〜式III(h)を示す。
【図5】エレクトロルミネッセントイリジウム錯体の式IV(a)〜式IV(e)を示す。
【図6】発光ダイオード(LED)の概略図である。
【図7】周知の電子輸送組成物の式を示す。
【図8】LED用試験装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1に示される式Iを有するフェナントロリン誘導体を含む組成物であって、式中、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、Fと、Clと、Brと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アルケニルと、アルキニルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
a、b、cおよびdは0であるか、a+b=2n+1かつc+d=5になるような整数であり、
nは整数であり、
xは0であるか、1から3の整数であり、
yは、0、1または2であり、
但し、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にあることを特徴とする組成物。
【請求項2】
が、フェニルと、置換フェニルと、ビフェニルと、置換ビフェニルと、ピリジルと、置換ピリジルと、ビピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、アリールアルキレンと、ヘテロアリールアルキレンと、Cと、Cとから選択される少なくとも1個の置換基を有する、置換フェニルと、置換ビフェニルと、置換ピリジルと、置換ビピリジルとから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1個のRが、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルおよび置換ビフェニルから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記フェナントロリン誘導体が図3の式I(b)〜式I(f)から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
図2の式II(a)および式II(b)から選択される式を有する組成物であって、式中、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、Fと、Clと、Brと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アルケニルと、アルキニルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
は、出現するごとに同一または異なり、単結合と、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アリーレンアルキレン、およびヘテロアリーレンアルキレンから選択される基と、から選択され、
Qは、単結合と多価基とから選択され、
mは少なくとも2の整数であり、
nは整数であり、
pは0または1であり、
xは0であるか、1から3の整数であり、
yは0、1または2であることを特徴とする組成物。
【請求項7】
Qが、脂肪族基と、複素脂肪族基と、芳香族基と、複素芳香族基とから選択される、少なくとも2個の結合点を有する炭化水素基から選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Qが、アルキレン基と、ヘテロアルキレン基と、アルケニレン基と、ヘテロアルケニレン基と、アルキニレン基と、ヘテロアルキニレン基とから選択されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Qが、単環式芳香族基と、多環式芳香族基と、縮合環芳香族基と、単環式複素芳香族基と、多環式芳香族基と、縮合環芳香族基と、アリールアミンと、シランと、シロキサンとから選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
Qが図4の式III(a)〜式III(h)から選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
が、フェニルと、置換フェニルと、ビフェニルと、置換ビフェニルと、ピリジルと、置換ピリジルと、ビピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
が、アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、アリールアルキレンと、ヘテロアリールアルキレンと、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルと、置換ビフェニルと、置換ピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1個のRが、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルおよび置換ビフェニルから選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
がフェニレンおよび置換フェニレンから選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、アリールアルキレンと、ヘテロアリールアルキレンと、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有することを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
が1から20個の炭素原子を有するアルキレン基から選択されることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にあることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項18】
図1に示される式Iを有するフェナントロリン誘導体を含む層を少なくとも1層含む電子デバイスであって、式中、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、Fと、Clと、Brと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アルケニルと、アルキニルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
a、b、cおよびdは0であるか、a+b=2n+1かつc+d=5になるような整数であり、
nは整数であり、
xは0であるか、1から3の整数であり、
yは、0、1または2であり、
但し、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にあることを特徴とする電子デバイス。
【請求項19】
が、フェニルと、置換フェニルと、ビフェニルと、置換ビフェニルと、ピリジルと、置換ピリジルと、ビピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
が、アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、アリールアルキレンと、ヘテロアリールアルキレンと、Cと、Cとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルと、置換ビフェニルと、置換ピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
少なくとも1個のRが、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルおよび置換ビフェニルから選択されることを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
前記フェナントロリン誘導体が図3の式I(a)〜式I(i)から選択されることを特徴とする請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項23】
図2の式II(a)および式II(b)から選択される式を有する組成物を含む層を少なくとも1層含む電子デバイスであって、式中、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、Fと、Clと、Brと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アルケニルと、アルキニルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
は、出現するごとに同一または異なり、単結合と、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アリーレンアルキレン、およびヘテロアリーレンアルキレンから選択される基と、から選択され、
Qは、単結合と多価基とから選択され、
mは少なくとも2に等しい整数であり、
nは整数であり、
pは0または1であり、
xは0であるか、1から3の整数であり、
yは0、1または2であることを特徴とする電子デバイス。
【請求項24】
Qが、脂肪族基と、複素脂肪族基と、芳香族基と、複素芳香族基とから選択される、少なくとも2個の結合点を有する炭化水素基から選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
Qが、アルキレン基と、ヘテロアルキレン基と、アルケニレン基と、ヘテロアルケニレン基と、アルキニレン基と、ヘテロアルキニレン基とから選択されることを特徴とする請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
Qが、単環式芳香族基と、多環式芳香族基と、縮合環芳香族基と、単環式複素芳香族基と、多環式芳香族基と、縮合環芳香族基と、アリールアミンと、シランと、シロキサンとから選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項27】
Qが図4の式III(a)〜式III(h)から選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項28】
が、フェニルと、置換フェニルと、ビフェニルと、置換ビフェニルと、ピリジルと、置換ピリジルと、ビピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項29】
が、アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、アリールアルキレンと、ヘテロアリールアルキレンと、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルと、置換ビフェニルと、置換ピリジルと、置換ビピリジルとから選択されることを特徴とする請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
少なくとも1個のRが、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有する置換フェニルおよび置換ビフェニルから選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項31】
がフェニレンおよび置換フェニレンから選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項32】
アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、アリールアルキレンと、ヘテロアリールアルキレンと、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基を有することを特徴とする請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
が1から20個の炭素原子を有するアルキレン基から選択されることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項34】
Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にあることを特徴とする請求項23に記載のデバイス。
【請求項35】
図2に示される式IIを有するフェナントロリン誘導体を含む組成物であって、式中、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
a、b、cおよびdは、a+b=2n+1かつc+d=5になるような整数であり、
xは0であるか、1から3の整数であり、
yは、0、1または2であり、
但し、Fと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択される少なくとも1個の置換基が芳香族基上にあることを特徴とする組成物。
【請求項36】
図2の式II(a)から選択される組成物であって、式中、
Qは、単結合と多価基とから選択され、
mは2から10の整数であり、
は、出現するごとに同一または異なり、単結合と、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アリーレンアルキレン、およびヘテロアリーレンアルキレンから選択される基と、から選択され、
およびRは、出現するごとに同一または異なり、かつHと、アルキルと、ヘテロアルキルと、アリールと、ヘテロアリールと、Cと、OCと、Cと、OCとから選択され、
yは0、1または2であり、
a、b、cおよびdは、a+b=2n+1かつc+d=5になるような整数であることを特徴とする組成物。
【請求項37】
Qが図4の式III(a)〜式III(h)から選択されることを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか一項に記載の組成物を含む層を少なくとも1層含むことを特徴とする電子デバイス。
【請求項39】
前記デバイスが、発光ダイオード、発光電気化学セルまたは光検出器であることを特徴とする請求項35〜37のいずれか一項に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−505115(P2006−505115A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520120(P2004−520120)
【出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/021610
【国際公開番号】WO2004/005288
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】