説明

フッ素化合物の製造方法、及びフッ素化合物

【課題】本発明は、入手容易な原料から工業的に有利な方法で新規な含フッ素ヘテロアリール化合物を製造する手段を提供するとともに、有機電界発光素子(或いは有機EL素子)材料の合成原料として有用な新規な含フッ素ピラゾール化合物の提供を目的とする。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を、含ハロゲン溶媒中でフッ素ガスと反応させることを特徴とする、下記一般式(2)で表される化合物の製造方法。


式中、R1及びR2は、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。ただし、少なくとも一方はヘテロアリール基を表す。nは1以上の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料・電子材料の合成中間体として有用な新規な含フッ素化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ヘテロアリール化合物は、発光材料・電子材料の合成中間体(例えば、特許文献1参照)や医薬・農薬の合成中間体(例えば、非特許文献1参照)として有用であることが知られている。また、架橋された構造を有するヘテロアリール化合物は、レニウムやクロムなどの遷移金属原子の配位子として利用され、医薬分野(例えば、非特許文献2参照)や高分子合成における触媒(例えば、特許文献2参照)として、その有用性が示されている。
【0003】
特に、特許文献1中に例示されている白金錯体化合物の中でも、第38ページに216番の番号で例示されている、下記式(5)で表される化合物は、その構造的特徴から高い耐久性が期待される。しかしこの化合物について、半経験的分子軌道法計算を用いて行った燐光発光の極大波長予測値は、理想的な青色とされる455〜460nmから僅かに低波長側の451nmにあり、この化合物を用いて有機電界発光素子を作製した場合に紫色を帯びた青色を発光することが予測される。
【0004】
【化1】

【0005】
一方、下記式(6)で表される化合物は、半経験的分子軌道法計算を用いて行った燐光発光の極大波長予測値は、理想的な青色に近い460nmであり、この化合物を用いて有機電界発光素子を作製した場合には青色を発光することが予測される。このため、式(6)で表される化合物の開発が熱望されていた。
【0006】
【化2】

【0007】
しかしながら、上記式(6)で表される化合物の合成中間体となる、下記式(7)で表される、テトラフルオロエチレン基で架橋された構造を有するピラゾール化合物は、これまでに合成された報告がない。
【0008】
【化3】

【0009】
公知な、テトラフルオロエチレン基で架橋された構造を有するピラゾール化合物としては、下記式(8)で表される化合物が知られている(例えば、非特許文献3参照)。しかしこの化合物の製造方法ではピラゾール環の3−位でテトラフルオロエチレン基と結合した化合物が得られ、ピラゾール環の4−位でテトラフルオロエチレン基と結合した化合物は、本質的に得ることはできない。
【0010】
【化4】

【0011】
こういう状況にあって、公知な類似化合物の合成方法を適用して、上記式(7)で表される化合物を新規に合成することも考えられる。公知な合成方法としては、エチニレン基で架橋された構造を有するアリール化合物を、テトラフルオロエチレン基で架橋された構造を有するアリール化合物へと変換する方法が知られている。
【0012】
例えば、下記反応式(i)に示したような二フッ化キセノンを用いて変換する方法が
知られている(例えば、非特許文献4参照)。しかしこの方法は、非常に高価で入手の難しい二フッ化キセノンが必要であり、また毒性及び腐食性が高く取扱いの難しい無水フッ化水素を溶媒として大量に使用しなければならず、工業的な製造に適さない。これに加えて、この方法でヘテロアリール基の置換したエチニレン化合物をフッ素化した例は知られていない。
【0013】
【化5】

【0014】
また、下記反応式(ii)に示したようなテトラフルオロホウ酸ニトロシルを用いて変
換する方法が知られている(例えば、非特許文献5参照)。しかしこの方法は、毒性及び腐食性が高く取扱いの難しいピリジン・フッ化水素複塩を溶媒として大量に使用しなければならず、工業的な製造に適しているとは言い難い。これに加えて、この方法でヘテロアリール基の置換したエチニレン化合物をフッ素化した例は知られていない。また後述の実施例に詳細を示すが、この方法を適用して上記式(7)で表される化合物の合成を試みたが、目的物を得ることはできなかった。
【0015】
【化6】

【0016】
また同様に、下記反応式(iii)に示したようなフッ素−ハロゲン間化合物を用いてフ
ッ素化する方法が知られている(例えば、非特許文献6参照)。しかしこの方法では、高価なヨウ素を必要とする上に、不安定で危険性の高いフッ化ヨウ素を予め合成しておかねばならないために、工業的実施は困難であることに加えて、この方法でヘテロアリール基の置換したエチニレン化合物をフッ素化した例は知られていない。
【0017】
【化7】

【0018】
また、下記反応式(iv)に示したようなフッ素ガスを用いて芳香族基で置換されたエ
チニレン化合物をフッ素化する方法が知られている(例えば、非特許文献7参照)。しかし、この製造方法は、オゾン層破壊物質であるために現在では入手が困難なフルオロトリクロロメタン(CFC−11)を使用していることから、現在では実施は非常に困難と言える。これに加えて、この方法でヘテロアリール基の置換したエチニレン化合物をフッ素化した実施例は知られていない。これは、ヘテロアリール基を有する化合物とフッ素ガスを反応させた場合、通常の反応条件では、分子内でもっとも電子密度の高い、ヘテロアリール環上のヘテロ原子が反応を受けることから、目的とするテトラフルオロエチレン基で架橋されたヘテロアリール化合物を得ることはできないと考えられ、試みられてこなかったためである。事実、後述の比較例に詳細を示すが、本発明者らが一般的なアセトニトリル溶媒中及び酢酸溶媒中でのフッ素化の条件で、ヘテロアリール基の置換したアセチレン化合物のフッ素化を試みたが、目的とするテトラフルオロエチレンは得られなかった。
【0019】
【化8】

【特許文献1】特開2007−19462号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0288464号明細書
【非特許文献1】G.W.Ware、D.M.Whitacre著、「An Introduction to Insecticides, 4th edition」 University of Minnesota, Minnesota, 2004
【非特許文献2】W.Krause著、「Contrast Agents III Radiopharmaceuticals From Diagnostics to Therapeutics, Topics in Current Chemistry 252」Springer Berlin Heidelberg New York, 2005
【非特許文献3】「ジャーナル・フセソユツノーゴ・キミケスコーゴ・オブスケストワ・イム・デー・アイ・メンデレーエフ(Zhurnal Vsesoyuznogo Khimicheskogo Obshchestva im. D.I. Mendeleeva)」第26巻、1981年、105ページ。
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」第39巻、1974年、2646ページ。
【非特許文献5】「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」第59巻、1994年、6493ページ。
【非特許文献6】「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」第51巻、1986年、222ページ。
【非特許文献7】「ジャーナル・オブ・フローリン・ケミストリー(Journal of Fluorine Chemistry)」第25巻、1984年、169ページ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、新規な含フッ素ヘテロアリール化合物を、入手容易な原料から工業的に有利な方法で、製造する手段を提供することにある。また、有機電界発光素子(或いは有機EL素子)材料の合成原料として有用な、新規な含フッ素ピラゾール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、テトラフルオロエチレン基で架橋されたヘテロアリール化合物を入手が容易な原料から工業的に有利な方法で製造する条件を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題は下記手段により解決された。
【0022】
1.下記一般式(1)で表される化合物を、含ハロゲン溶媒中でフッ素ガスと反応させることを特徴とする、下記一般式(2)で表される化合物の製造方法。
【0023】
【化9】

【0024】
(一般式(1)及び一般式(2)中、R1及びR2は、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。ただし、少なくとも一方はヘテロアリール基を表す。nは1以上の整数を表す。)
2.前記一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2が、共にヘテロアリール基であることを特徴とする、上記1に記載の製造方法。
3.含ハロゲン溶媒が、含ハロゲン飽和炭化水素溶媒又は含ハロゲン飽和炭化水素エーテル溶媒であることを特徴とする、上記1又は2に記載の製造方法。
4.前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であり、前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0025】
【化10】

【0026】
(一般式(3)および一般式(4)中、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
5.下記一般式(4)で表される化合物。
【0027】
【化11】

【0028】
(一般式(4)中、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【発明の効果】
【0029】
本発明の製造方法によれば、新規な含フッ素ヘテロアリール化合物を入手容易な原料から工業的に有利な方法で製造することが可能である。また本発明により、有機電界発光素子(或いは有機EL素子)材料の合成原料として有用な、新規な含フッ素ピラゾール化合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の下記一般式(2)で表される化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物を含ハロゲン溶媒中でフッ素ガスと反応させることを特徴とする。
【0031】
【化12】

【0032】
上記一般式(1)及び(2)中、R1及びR2は、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。ただし、少なくとも一方はヘテロアリール基を表す。好ましくは共にヘテロアリール基であり、これらヘテロアリール基は同一でも異なっていてもよい。また、nは1以上の整数であるが、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、さらに好ましくは1〜2の整数であり、特に好ましくは1である。
【0033】
ヘテロアリール基とは、置換基を有してもよい、1〜2種類のヘテロ原子を1〜4個含有する、3〜14員環好ましくは5〜10員環の単環式又は二環式のヘテロアリール基である。ヘテロ原子とは炭素以外の元素の原子である。炭素以外の元素としては、好ましくは第15周期元素又は第16周期元素であり、より好ましくは、窒素、リン、ヒ素、酸素、硫黄、セレン、テルルからなる群から選ばれる元素であり、さらに好ましくは、窒素、酸素、硫黄からなる群から選ばれる元素である。
【0034】
ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、プリニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、フロピリジル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チアトリアゾリル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、チエノピリジル、などが挙げられるが、好ましくは、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリルであり、より好ましくは、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリルであり、さらに好ましくは、ピロリル、ピラゾリル、ピリジル、インドリル、フリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾフリル、チエニル、イソチアゾリル、ベンゾチエニルであり、特に好ましくはピラゾリルである。
【0035】
ヘテロアリール基とエチニレン基又はテトラフルオロエチレン基との結合は、ヘテロアリール環上のどの原子において結合を形成してもよいが、好ましくはヘテロアリール環上の炭素原子において結合を形成する。
【0036】
アリール基とは、置換基を有してもよい、炭素数6〜20好ましくは炭素数6〜12のアリール基である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などが挙げられる。
【0037】
下記に、置換基を有しない、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ヘテロアリール環及びアリール環上の炭素原子及びヘテロ原子上の任意の位置で水素原子を置換する形で置換基を導入させた化合物は、化合物の構造式を示さずとも、当業者であれば容易にその化学構造を推測できるため、ここでは置換基を有しない形の具体例のみを挙げる。
【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
【化15】

【0041】
【化16】

【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
【化20】

【0046】
下記に、置換基を有しない、一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ヘテロアリール環及びアリール環上の炭素原子及びヘテロ原子上の任意の位置で水素原子を置換する形で置換基を導入させた化合物は、化合物の構造式を示さずとも、当業者であれば容易にその化学構造を推測できるため、ここでは置換基を有しない形の具体例のみを挙げる。
【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
【化24】

【0051】
【化25】

【0052】
【化26】

【0053】
【化27】

【0054】
ヘテロアリール基及びアリール基が有してもよい置換基の例としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アルキリデン基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6であり、例えばメチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタジエニリデンなどが挙げられる。)、ハロアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばフルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルなどが挙げられる。)、アルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、2−(メトキシエトキシ)エチルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アリーリデン基(好ましくは炭素数7〜31、より好ましくは炭素数7〜11であり、例えばベンジリデンなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシ、ピペリジルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオ、ピペリジニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、チオキソ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヒドロキシイミノ基、ヒドラゾノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0055】
上記一般式(1)で表される化合物は、公知の方法で合成できる(例えば、テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)第50巻、1975年、4467ページ、及び、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)第62巻、1997年、1491ページ、及び、オーガニック・レターズ(Organic Letters)第3巻、2001年、2883ページ、など)。この方法を参考にすることにより、当業者であれば、一般式(1)で表される化合物中のR1及びR2が同一のものも異なるものも、容易に収率よく合成することができる。
【0056】
一般式(2)で表される化合物の製造方法は、下記に示すように、一般式(1)で表される化合物を、含ハロゲン溶媒中でフッ素ガスと反応させる工程を有するものである。下記一般式(1)及び一般式(2)中のR1、R2およびnは前記の意味と同義である。
【0057】
【化28】

【0058】
フッ素ガスは、そのまま用いてもよいが、フッ素ガスに対して不活性な気体で希釈して用いてもよく、或いはフッ素ガスに対して不活性な液体に溶解又は分散させて用いてもよく、好ましくは不活性な気体で希釈されたフッ素ガスが用いられる。不活性な気体としては、窒素やヘリウムやネオンなどが挙げられるが、経済的な理由から窒素がより好ましい。フッ素ガスの希釈度は、希釈ガス中におけるフッ素ガスの体積濃度として0.01〜80%が好ましく、0.1%〜40%がより好ましい。
【0059】
フッ素ガスとの反応を行う温度は、実施可能な温度範囲であればどのような温度でもよいが、工業的実施の点から−100℃〜+100℃で行うことがより好ましく、−80〜+60℃且つ溶媒の融点以上且つ溶媒の沸点以下の温度で行うことがさらに好ましい。
【0060】
フッ素ガスとの反応を行う圧力は、特に限定されないが、通常の場合、工業的実施の点から大気圧〜1MPaの圧力範囲で行うのが好ましい。
【0061】
フッ素化反応に用いるフッ素の量は、一般式(1)で表される化合物中のエチニレン基1モルに対して2モル以上用いることが必要であり、好ましくはエチニレン基1モルに対して2〜100モルを用い、より好ましくはエチニレン基1モルに対して2〜20モルを用いる。
【0062】
フッ素ガスとの反応形式は、バッチ式でも連続式でもよい。本発明の実施例では、バッチ式で行っている。
【0063】
フッ素ガスとの反応に用いる反応容器は、フッ素ガス及び副生成する可能性のあるフッ化水素による腐食を受けない樹脂製又は金属製又は陶器製のものが好ましいが、フッ化水素捕捉剤を共存させて反応を行う場合には、ガラス製反応容器又はガラスを含む材料で内張りされた、フッ素ガス及び副生成する可能性のあるフッ化水素による腐食を受けうる金属製容器を用いることもできる。
【0064】
フッ化水素捕捉剤としては、フッ化水素を捕捉可能なあらゆる物質を用いることができるが、好ましくはフッ化金属塩(例えばフッ化ナトリウム、フッ化カルシウムなどが挙げられる。)、炭酸金属塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。)、水酸化金属塩(例えば水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。)、酸化金属塩(例えば酸化アルミニウムなどが挙げられる。)を用い、より好ましくはフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、酸化アルミニウムからなる群から選ばれる捕捉剤を単独又は二種類以上を組み合わせて用い、さらに好ましくはフッ化リチウム、フッ化ナトリウム又はフッ化カリウムを単独で用いる。またフッ化水素捕捉剤は、生成するフッ化水素を補足するために必要な最低限量だけを使用することもできるが、通常は過剰量を使用することにより良好な結果が得られる。後述の本発明の実施例では、フッ化水素捕捉剤として過剰量のフッ化ナトリウムを共存させ、ガラス製容器を用いて合成を行っている。
フッ化水素捕捉剤は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、1〜500モル用いることが好ましい。
【0065】
フッ素ガスとの反応は、液相で行う。液相での反応は、一般式(1)で表される化合物が含ハロゲン化合物であり、且つフッ素ガスと反応を行う温度において液体である場合は、それ自身が溶媒として働くために、溶媒を用いなくてもよいが、好ましくは含ハロゲン溶媒を用いて行う。
【0066】
ここで、ハロゲンとは、好ましくはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、より好ましくはフッ素、塩素である。含ハロゲン溶媒とは、分子内に、1種類或いは2種類以上のハロゲン原子を、少なくとも1つ以上有する、フッ素ガスとの反応温度において液体である化合物を指し示す。含ハロゲン化合物とは、分子内に、1種類或いは2種類以上のハロゲン原子を、少なくとも1つ以上有する化合物である。
【0067】
一般式(1)で表される化合物が、フッ素ガスとの反応に用いる含ハロゲン溶媒へ全く溶解していない状態で反応を行ってもよいが、好ましくは1%以上が溶解している状態で反応を行い、さらに好ましくは5%以上が溶解している状態で反応を行う。
【0068】
フッ素ガスとの反応に用いられる含ハロゲン溶媒としては、好ましくは含ハロゲン飽和炭化水素(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有する、鎖状、分枝状又は環状の飽和化合物で、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15、さらに好ましくは炭素数1〜10の飽和炭化水素化合物であり、例えば四塩化炭素、クロロホルム、フルオロホルム、ジクロロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロジフルオロメタン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロヘキサフルオロプロパン、ジクロロペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロシクロプロパン、パーフルオロイソブタン、テトラクロロオクタフルオロイソプレン、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)などが挙げられる。)、含ハロゲン飽和炭化水素エーテル(分子内に、1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのエーテル性酸素原子を有する、鎖状、分枝状又は環状の飽和化合物で、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15、さらに好ましくは炭素数1〜10であり、例えばクロロメチルメチルエーテル、クロロメチルジクロロメチルエーテル、トリクロロメチルメチルエーテル、トリフルオロメチルメチルエーテル、トリクロロメチルトリフルオロメチルエーテル、トリフルオロエチルメチルエーテル、ジクロロトリフルオロエチルエチルエーテル、ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)などが挙げられる。)、含ハロゲンアルコール(分子内に、1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのアルコール性水酸基を有する、鎖状、分枝状又は環状のアルコール化合物で、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8であり、例えばトリフルオロエタノール、クロロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ノナフルオロ−t−ブタノールなどが挙げられる。)、ハロゲン化芳香族化合物(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つの芳香環を有する化合物で、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜13、さらに好ましくは炭素数1〜8であり、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどが挙げられる。)、含ハロゲンエステル化合物(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのエステル基を有する化合物で、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15、さらに好ましくは炭素数1〜10であり、例えばクロロ酢酸エチル、ジクロロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリクロロ酢酸トリフルオロエチル、酢酸トリフルオロエチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、ノナフルオロブタンスルホン酸エチル、クロロスルホン酸トリフルオロエチル、トルエンスルホン酸クロロエチルなどが挙げられる。)、含ハロゲンカルボン酸(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物で、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15、さらに好ましくは炭素数1〜10であり、例えばクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ペンタクロロプロパン酸、トリフルオロ酢酸、ペンタクロロ安息香酸などが挙げられる。)、含ハロゲンスルホン酸(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのスルホ基を有する化合物で、好ましくは炭素数0〜15、より好ましくは炭素数0〜12、さらに好ましくは炭素数0〜10であり、例えばクロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ペンタクロロベンゼンスルホン酸などが挙げられる。)、含ハロゲンカルボン酸無水物(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのカルボン酸無水物部分構造を有する化合物で、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜15、さらに好ましくは炭素数2〜12であり、例えばクロロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタクロロ安息香酸アセチルなどが挙げられる。)、含ハロゲンスルホン酸無水物(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのスルホン酸無水物部分構造を有する化合物で、好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜15、さらに好ましくは炭素数0〜12であり、例えばクロロスルホン酸無水物、フルオロスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタクロロベンゼンスルホン酸無水物などが挙げられる。)、酸ハライド(分子内に1種類又は2種類以上のハロゲン原子を少なくとも1つ有し、且つ少なくとも1つのハロカルボニル基又はハロスルホニル基を有する化合物で、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜18、さらに好ましくは炭素数1〜15であり、例えばアセチルクロリド、アセチルフルオリド、トリクロロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、ペンタクロロ安息香酸クロリド、フタル酸クロリドなどが挙げられる。)、フッ化水素化合物(例えば無水フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化水素−トリエチルアミン錯化合物、フッ化水素−ピリジン錯化合物などが挙げられる。)が挙げられるが、より好ましくは含ハロゲン飽和炭化水素、含ハロゲン飽和炭化水素エーテル、ハロゲン化芳香族化合物、含ハロゲンエステル化合物、含ハロゲンカルボン酸無水物、含ハロゲンスルホン酸無水物、酸ハライド、フッ化水素化合物であり、さらに好ましくは含ハロゲン飽和炭化水素、含ハロゲン飽和炭化水素エーテル、ハロゲン化芳香族化合物、含ハロゲンエステル化合物であり、特に好ましくは含ハロゲン飽和炭化水素、含ハロゲン飽和炭化水素エーテルである。特に好ましい溶媒の具体例としては、四塩化炭素、クロロホルム、フルオロホルム、ジクロロメタン、フルオロトリクロロメタン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、トリクロロペンタフルオロプロパン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、トリフルオロメチルベンゼン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。
【0069】
一般式(1)で表される化合物とフッ素ガスとの反応により、ヘテロアリール基のヘテロ原子上にフッ素原子が置換した化合物が、副生成物として少量生成することがある。これをそのまま後処理してもよいが、このような化合物は一般的に強い酸化性を有することに加えて、分解により高い毒性と腐食性を有するフッ化水素を発生することがあるため、フッ素ガスと反応させた後に還元剤で処理する工程を加えることが好ましい。
【0070】
還元剤としては、還元性を有する如何なる化合物(例えば、水素化アルミニウム化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水素化ホウ素化合物、亜硫酸及び亜硫酸塩、次亜リン酸塩、アルカリ金属・アルカリ土類金属・亜鉛などの金属単体、鉄(II)塩、シュウ酸及びシュウ酸塩などが挙げられる。)をも用いることが可能である。中でも反応性の点から水素化アルミニウム化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物又は水素化ホウ素化合物が好ましく、取扱いの容易さ及び経済性の点から水素化ホウ素化合物(例えば水素化ホウ素ナトリウム、ジボランなどが挙げられる。)がより好ましい。還元剤は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.1〜20モル用いることが好ましい。
【0071】
次に、一般式(3)で表される化合物および一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0072】
【化29】

【0073】
一般式(3)及び(4)中、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、各々独立に、水素原子または置換基を表す。該置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、ハロアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばフルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ヨードメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルなどが挙げられる。)、アルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、2−(メトキシエトキシ)エチルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシ、ピペリジルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオ、ピペリジニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
【0074】
3、R4として好ましくは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アシル基、ヘテロ環基である。
【0075】
5、R6、R7、R8として好ましくは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヘテロ環基、シリル基、シリルオキシ基である。
【0076】
下記に、一般式(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表し、nPrはノルマルプロピル基を表す。結合線の先に何も書いていない場合は、その先がメチル基であることを表し、またジグザグ線の頂点に何も書いていない場合は、無置換のメチレン基を表す。
【0077】
【化30】

【0078】
【化31】

【0079】
【化32】

【0080】
【化33】

【0081】
一般式(3)で表される化合物の入手方法は、特に限定されないが、例えばジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)第62巻、1997年、1491ページ、オーガニック・レターズ(Organic Letters)第3巻、2001年、2883ページに示される方法で合成することができる。以下に、その製造方法の例を示す。
【0082】
【化34】

【0083】
下記一般式(9)で表される白金錯体化合物は、本発明の、R5、R7が共に水素原子であるような、一般式(4)で表される化合物を用いて、文献(特開2007−19462号公報など)に記載の方法を参考に、合成が可能である。但し、一般式(9)のR6、R8は一般式(3)及び(4)におけるそれらと同義である。
【0084】
【化35】

【0085】
一般式(4)で表される化合物のR3、R4が水素原子ではない場合、一般式(9)で表される化合物の製造では、R3及びR4を共に水素原子に変換した方が好適である。これは、当業者であれば、既知の方法を用いて、容易に成し遂げることができるであろう。例を挙げると、R3及びR4がメトキシメチル基又はテトラヒドロピラニル基の場合、塩酸酸性条件下で加熱処理することにより容易に水素原子に置換できる。R3及びR4がアシル基の場合、水酸化ナトリウム水溶液などの塩基性条件で処理することにより、容易に水素原子に置換できる。R3及びR4がメチル基の場合、既知の方法(例えばジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Journal of Heterocyclic Chemistry)第28巻、1991年、p.1837)に従って、水素原子に置換できる。
【0086】
一般式(9)で表される白金錯体化合物を用いた有機電界発光素子は、文献(特開2007−19462号公報など)に記載の方法により、作製できる。また前記の理論計算の結果から、作製された有機電界発光素子は、460nmに極大波長を有すると予測され、青色の燐光発光素子として有用である。
【実施例】
【0087】
以下に本発明を具体的に説明する実施例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。またここでは、ガスクロマトグラフィーはGCと、ガスクロマトグラフィー質量分析法はGC−MSと、薄層クロマトグラフィーはTLCと、核磁気共鳴法はNMRと、記す。1H−NMRではテトラメチルシランを内部標準として用い、19F−NMRではフルオロトリクロロメタンを外部標準として用いて測定を行った。ジクロロペンタフルオロプロパンはHCFC−225と記し、これは2種類の構造異性体(HCFC−225ca及びHCFC−225cb)の混合物として市販されているものを用いた。
【0088】
(1)GC分析条件
GCは、島津製作所製GC−14BとキャピラリーカラムとしてJ&WScientific社製DB−1(直径0.25mm×長さ15m)を用いた。昇温条件は、100℃で10分間保持させた後、20℃/minの速度で280℃まで昇温させた。検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を用いた。
(2)GC−MS分析条件
GC−MSは、島津製作所製GCMS−QP2010とキャピラリーカラムとしてJ&WScientific社製DB−1HT(直径0.25mm×長さ15m)を用いた。昇温条件は、100℃で10分間保持させた後、20℃/minの速度で280℃まで昇温させた。特に記さない限り、イオン化方法としてCIを用い、検出器電圧は70eVで測定を行った。
【0089】
実施例中で使用した原料物質である化合物(10)及び(12)は、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)第62巻、1997年、1491ページに記載の合成方法を参考に、下記反応式に従って製造した。(式中、Aはテトラヒドロピラニル基{化合物(10)}又はアセチル基{化合物(12)}を表す。)
【0090】
【化36】

【0091】
〔実施例1:HCFC−225溶媒中での化合物(11)の製造〕
【0092】
【化37】

【0093】
ガス導入管、ガス排出管につないだ還流冷却器、及び温度計を取り付けたガラス製反応容器に、化合物(10)2.19g、フッ化ナトリウム7.04g、HCFC−225 670mLを取り、窒素雰囲気下−80℃に冷却した浴に浸して、攪拌させた。これに窒素ガスを150mL/minの速度で0.5時間吹き込んだ後、窒素ガスで体積比2%に希釈したフッ素ガス(以下、窒素ガスで体積比n%に希釈したフッ素ガスを、n%希釈フッ素ガスと呼ぶ。)を200mL/minの速度で2時間吹き込んだ。吹き込んだ2%希釈フッ素ガスの量は25.0Lだった。窒素ガスを180mL/minの速度で0.75時間吹き込み、反応容器中の残存フッ素ガスを追い出してから、反応容器を浴から取り出し、室温まで昇温させた。GC及びGC−MS分析により、化合物(10)の消失と化合物(11)の生成を確認した。GC分析より、化合物(11)の収率は79%だった。反応液から固体を濾別した後、溶媒を留去させ、残渣にイソプロパノール10mLを加えた。
ガラス製反応容器に水素化ホウ素ナトリウム0.74g及びイソプロパノール25mLを取り、室温で攪拌させた。これに上記の残渣溶液を滴下し、そのまま0.5時間攪拌させた。水50mL、1mol/L塩酸18mLを加えよく攪拌させた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて溶液のpHを7から8に調節した。この溶液に塩化メチレン80mLを加えて抽出操作を行い、得られた有機層を乾燥させ溶媒を留去させて、薄茶色液状の粗生成物2.53gを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、化合物(11)の白色結晶0.82gを得た。
1H−NMR[TMS,CDCl3]:δ[ppm]=7.80(s,2H)、7.65(s,2H)、5.42−5.38(m,2H)、4.08−4.03(m,2H)、3.75−3.66(m,2H)、2.12−1.60(m,6H); 19F−NMR[CFCl3,CDCl3]:δ[ppm]=−105.2(m); GC−MS[CI,70eV]:m/z=403[M+H]+
【0094】
〔実施例2:塩化メチレン溶媒中での化合物(11)の製造〕
ガラス製反応容器に、化合物(10)0.083g、フッ化ナトリウム0.513g、塩化メチレン20mLを取り、窒素雰囲気下−80℃に冷却した浴に浸して、攪拌させた。これに窒素ガスを40mL/minの速度で0.5時間吹き込んだ後、4%希釈フッ素ガスを50mL/minの速度で0.28時間吹き込んだ。吹き込んだ4%希釈フッ素ガスの量は0.85Lだった。窒素ガスを40mL/minの速度で0.75時間吹き込み、反応容器中の残存フッ素ガスを追い出してから、反応容器を浴から取り出し、室温まで昇温させた。GC分析より、化合物(11)の収率は61%だった。
【0095】
〔実施例3:クロロホルム溶媒中での化合物(11)の製造〕
塩化メチレンをクロロホルムに、浴温を−40℃に変えた以外は、実施例2と同様に反応を行った。GC分析により、化合物(11)の収率は55%だった。
【0096】
[実施例4:ノナフルオロブチルメチルエーテル溶媒中での化合物(11)の製造]
塩化メチレンをクロロホルムに変えた以外は、実施例2と同様に反応を行った。GC分析により、化合物(11)の収率は53%だった。
【0097】
[実施例5:トリフルオロ酢酸エチル溶媒中での化合物(11)の製造]
塩化メチレンをトリフルオロ酢酸エチルに、浴温を−40℃に変えた以外は、実施例2と同様に反応を行った。GC分析により、化合物(11)の収率は44%だった。
【0098】
[実施例6:トリクロロ酢酸エチル溶媒中での化合物(11)の製造]
塩化メチレンをトリフルオロ酢酸エチルに、浴温を−15℃に変えた以外は、実施例2と同様に反応を行った。GC分析により、化合物(11)の収率は30%だった。
【0099】
〔実施例7:HCFC−225溶媒中での化合物(13)の製造〕
【0100】
【化38】

【0101】
ガラス製反応容器に化合物(12)0.061g、フッ化ナトリウム0.520g、HCFC−225 20mLを取り、窒素雰囲気下−80℃に冷却した浴に浸して、攪拌させた。これに窒素ガスを40mL/minの速度で0.5時間吹き込んだ後、4%希釈フッ素ガスを50mL/minの速度で0.16時間吹き込んだ。吹き込んだ4%希釈フッ素ガスの量は0.49Lだった。窒素ガスを40mL/minの速度で0.75時間吹き込み、反応容器中の残存フッ素ガスを追い出してから、反応容器を浴から取り出し、室温まで昇温させた。GC分析より、化合物(13)の収率は70%だった。
反応容器に3%炭酸水素ナトリウム水溶液20mLを加えて分液し、得られた有機層を乾燥させ溶媒を留去させて、薄茶色液状の粗生成物0.066gを得た。この一部をTLCにより精製し、目的とする化合物(13)の生成を確認した。
1H−NMR[TMS,CDCl3]:δ[ppm]=7.81(s,2H)、7.65(s,2H)、2.66(s,6H); 19F−NMR[CFCl3,CDCl3]:δ[ppm]=−105.1(m); GC−MS[CI,70eV]:m/z=319[M+H]+
【0102】
〔比較例1:アセトニトリル溶媒中での化合物(11)の製造〕
塩化メチレンをアセトニトリルに、浴温を−40℃に変えた以外は、実施例2と同様に反応を行った。GC及びGC−MS分析により、化合物(11)の生成は確認できたが、収率は5%以下であり、構造不明な複数の生成物が主生成物として確認された。19F−NMRより、+40〜+20ppm付近に、複数のピークが観測されたことから、ピラゾール環の窒素原子がフッ素化された化合物が生成したと考えられる。
【0103】
[比較例2:酢酸溶媒中での化合物(11)の製造]
塩化メチレンを酢酸に、浴温を5℃に変えた以外は、実施例2と同様に反応を行った。GC及びGC−MS分析により、化合物(11)の生成は確認できなかった。構造不明な複数の生成物が主生成物として確認された。19F−NMRより、+40〜+10ppm付近に、複数のピークが観測されたことから、ピラゾール環の窒素原子がフッ素化された化合物が生成したと考えられる。
【0104】
〔比較例3:ニトロシルテトラフルオロボレートを用いた化合物(11)の製造〕
【0105】
【化39】

【0106】
HDPE(高密度ポリエチレン)製反応容器にニトロシルテトラフルオロボレート(NOBF4)0.011g、ピリジン・ポリフッ化水素塩(pyridine(HF)n)0.5mLをとり、窒素雰囲気下、氷水浴中で攪拌させた。これに化合物(10)0.010gのジクロロメタン0.5mL溶液を加え、そのまま7時間攪拌させた後、浴を外して室温で11時間攪拌させた。
反応終了後、少量を抜き出して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加えて中和させ、酢酸エチルで抽出し、溶媒を留去させた。19F−NMRより、−105ppm付近にピークは全く無く、ジフルオロエチレン基の生成は認められなかった。
[実施例8:化合物(14)の合成]
【0107】
【化40】

【0108】
ガラス製反応容器に、化合物(11)2.2g、イオン交換樹脂(DOWEXR50W×2−100)6.6g、メタノール100mLを仕込み、攪拌しながら6時間加熱還流させた。NMRにて反応終了を確認後、室温まで冷却し、イオン交換樹脂を濾過、溶媒を留去し、酢酸エチル−ヘキサンを用いて再結晶を行い、化合物(14)を白色結晶として1.01g得た。
1H−NMR[TMS,MeOH−d4]:δ[ppm]=7.80(s,4H); 19F−NMR[CFCl3,MeOH−d4]:δ[ppm]=−106.9(m)。
[実施例9:化合物(16)の合成]
【0109】
【化41】

【0110】
窒素雰囲気下、ガラス製反応容器に、サリチルアルドキシム736mg、酸化銅192mg、炭酸セシウム18.9g、N,N−ジメチルホルムアミド250mLを仕込み、150℃まで加熱した後、化合物(14)2.39g及び化合物(16)1.57gをN,N−ジメチルホルムアミド200mLに溶かした溶液を6時間かけて滴下した。そのまま攪拌しながら、16時間加熱還流を行った。
反応終了後、セライトを用いて濾過し、濃縮した後、水と酢酸エチルを加えて抽出を行い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(16)を白色固体として、0.54g得た。
[実施例10:化合物(17)の合成]
【0111】
【化42】

【0112】
窒素雰囲気下、ガラス製反応容器に、化合物(6)433mg、塩化第一白金269mg、ベンゾニトリル25mLを仕込み、6時間かけて140℃から200℃まで段階的に昇温させて反応させた。
反応終了後、室温まで放冷させてから反応液を濃縮させ、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(17)を黄色固体として、59.5mg得た。
【0113】
[実施例11:発光素子の作成]
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、銅フタロシアニンを10nm蒸着し、この上に、NPD(N,N'−ジ−α−ナフチル−N,N'−ジフェニル)−ベンジジン)を40nm蒸着した。この上に、mCPと本発明の例示化合物(17)を90:10の比率(質量比)で67nm蒸着し、この上に、BAlqを40nm蒸着した。この上に、フッ化リチウムを3nm蒸着した後、アルミニウム60nmを蒸着し、素子を作製した。東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧を上記素子に印加して発光させた結果、化合物(17)に由来する青色の発光が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を、含ハロゲン溶媒中でフッ素ガスと反応させることを特徴とする、下記一般式(2)で表される化合物の製造方法。
【化1】

(一般式(1)および一般式(2)中、R1及びR2は、ヘテロアリール基またはアリール基を表す。ただし、少なくとも一方はヘテロアリール基を表す。nは1以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2が、共にヘテロアリール基であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
含ハロゲン溶媒が、含ハロゲン飽和炭化水素溶媒又は含ハロゲン飽和炭化水素エーテル溶媒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であり、前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【化2】

(一般式(3)および一般式(4)中、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
【請求項5】
下記一般式(4)で表される化合物。
【化3】

(一般式(4)中、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)

【公開番号】特開2009−235009(P2009−235009A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84976(P2008−84976)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】