説明

フッ素化界面活性剤

フッ素化界面活性剤を含む組成物。また、エポキシドと、酸アルコール又は酸メルカプタンのどちらかとの反応によって得られる未分離の反応生成物。さらに、レベリング剤、水、及び被膜形成有機ポリマーを含むコーティング組成物。本発明は、またコーティングの方法及びコーティングされた物品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多数の工業的プロセス及び天然のプロセスには薄層の液体被膜の流れが関与している。一般的な実用例には、液体塗料類、フロアワックス、及び木材封止剤類が挙げられる。これらの実用例の多くでは、均一な(水平な)コーティングを有することが望ましい。しかし、新しく塗布した液体被膜は通常不均一な表面を有する。被膜乾燥の力学に従って、これらの不均一表面はゆず肌やクレータ(即ち、一般に小円形斑点の形状である表面欠点の生成)のようなコーティング欠陥を生成する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
コーティング欠陥を削減し無くすことに広い工業的関心がある。しかしながら、コーティング欠陥の削減への関心にもかかわらず、レベリング剤として機能することができる特定の添加剤の発見は実験での実行に留まったままである。一般的に、一部のレベリング剤は界面活性剤類であるが、いずれの界面活性剤が持つ、溶媒または配合物の表面張力を低下させる能力も、界面活性剤がコーティング欠陥を削減するレベリング剤として有用であるかどうかを判定する予測値をほとんど有しないと分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本発明は、水、被膜形成有機ポリマー、及びレベリング剤を含むコーティング組成物を提供する。そのレベリング剤は式(I)(下記)で示される。
【0004】
f−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X (I)
式(I)中、Rfは、C2〜C6のペルフルオロアルキル基からなる群から選択される。Rは、H及びC1〜C18のアルキル基からなる群から選択される。各々のQは、O又はSからなる群から独立して選択される。Xは、−(C−(=O)−(CH2a−Q)b−M、−((CH2a−C(=O)−Q)b−M、及び−C(=O)−(CH2a−Q)b−CH2CH(OX’)−CH2N(R)SO2f、からなる群から選択され、式中MはH及びカチオンからなる群から選択され、各々のaは1〜5から独立して選択され、及び各々のbは1〜4から独立して選択される。X’はH及びXからなる群から選択される。
【0005】
幾つかの実施形態では、コーティング組成物はワックス又は顔料をさらに含む。
【0006】
別の態様において、本発明は組成物を基材に塗布することからなるコーティング方法に関し、その組成物は水、被膜形成有機ポリマー及び式(I)で示されるレベリング剤を含む。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は基材及びコーティングを含むコーティングされた物品に関する。そのコーティングは、水、被膜形成有機ポリマー、及び式(I)で示されるレベリング剤を含む。
【0008】
更なる態様において、本発明は
【0009】
【化1】

【0010】

H−Q−(CH2aCO2
と反応させて得られる未分離の反応生成物を含む組成物に関する。式中、Rf、R、WQ、M、及びaは上記に規定済みである。
【0011】
別の態様において、本発明はRf−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X、を含む組成物に関し、式中、Rf、R、X、X’、及びQは上記に規定済みであり、ただし、Xが−((CH2a−C(=O)−Q)b−Mである場合に、各々のbは2〜4から独立して選択される。
【0012】
本明細書によるコーティング組成物は、望ましいレベリング挙動を示し、基材にコーティングし、乾燥した時に、審美的に心地よい外観を有した乾燥コーティングを結果としてもたらすのが一般的である。
【0013】
本明細書において、全ての数値的範囲(例えば、2〜6の炭素原子)は、別に明確な言及がなければ、それらの終点を含むものとみなす。同様に、用語「被膜形成有機ポリマー」は乾燥すると均一に癒着する耐水性の有機ポリマーを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書によるコーティング組成物は、水、被膜形成有機ポリマー、及びレベリング剤を含む。
【0015】
本発明によるコーティング組成物は水だけに溶解又は分散された被膜形成有機ポリマーを有してもよいが、任意に水と溶解性のある有機溶媒を水と組み合わせることにより、例えば均一な乾燥及び、あるいは均一な被膜形成を促進してもよい。
【0016】
水溶性有機溶媒の例には、メタノール、エタノール、イロプロパノール、及びイソブタノールなどの1〜4の炭素原子を含有するアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びNーメチルピロリドンなどのアミド類及びラクタム類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、及びジアセトンアルコールなどのケトン類及びケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、及び例えばグリコールモノメチル(又はモノエチル)エーテルのような多価アルコールの低級アルキルエーテル類などのエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコール類及びポリアルキレングリコール類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;及びそれらの組み合わせ、が挙げられる。
【0017】
典型的には、コーティング組成物中の水と任意選択の水に可溶性の有機溶媒の量は、コーティング組成物の総重量に対して40〜99重量%の範囲にあるが、他の量で使用してもよい。
【0018】
この組成物に使用するのに好適な被膜形成ポリマーは、一般的に、炭素及び水素、並びに任意に酸素、窒素及び/又はハロゲンを含有する熱可塑性有機ポリマーである。好適なポリマーの例には、例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリカプロラクトン等のポリエステル類;例えば、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート等のコポリエステル類;例えば、ポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド類;例えば、ポリ(ビニルアセテート/メチルアクリレート)、ポリ(ビニリデンクロライド/ビニルアセテート)等のビニルポリマー類;例えば、ポリスチレン、及び例としてポリ(スチレン−コ−ブチルアクリレート)のようなスチレンとアクリレート(単数及び複数)のコポリマー類のポリオレフィン類;例えば、ポリ(ブタジエン/スチレン)等のポジリエン類;例えば、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチルアクリレート)、ポリ(メチルアクリレート−コ−アクリルレート)等のアクリルポリマー類;例えば、脂肪族、脂環式又は芳香族のジイソシアネート類とポリエステルグリコール類又はポリエーテルグリコール類との反応生成物等のポリウレタン類;及び例えば、エチルセルロースのようなセルロースエーテル類並びにセルロースアセテート/ブチレートのようなセルロースエステル類、等のセルロース誘導体類;が挙げられる。被膜形成ポリマーの組み合わせも同様に使用してもよい。このようなポリマーの水性エマルション又はラテックスを調製する方法及び材料はよく知られていて、市販供給源から入手可能である。
【0019】
1つ又は複数の被膜形成ポリマーが、例えば、エマルション又はラテックスで存在してよい。典型的には、被膜形成ポリマー(単数及び複数)の量は、コーティング組成物の総重量に対して、1〜40重量%の範囲にある。
【0020】
本発明のコーティング組成物は、任意の有機溶媒に加えて、1つ以上の可塑剤類、コーティング補助剤類、消泡剤類、ポリマーエマルション類、架橋剤類、ワックス類、顔料類、光安定剤類、無機充填剤類、又はそれらの組み合わせ、を含有してもよい。
【0021】
レベリング剤は式(I)で示される。
【0022】
f−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X (I)
式中、
fは、C2〜C6のペルフルオロアルキル基から成る群から選択される。これらの基は分枝状又は直鎖状であってよい。
【0023】
Rは、H及びC1〜C18のアルキル基から成る群から選択される。これらの基は分枝状又は直鎖状であってよく、及び環式又は非環式であってよい。環式の基はアルキル基又はアルキレン基で置換されていてもよい。例として、メチル、エチル、イソブチル、イソオクチル、ドデシル、及びオクタデシルが挙げられる。一部の実施形態では、Rは8個までの炭素原子を有してよく、又は3個までだけの炭素原子を有してもよい。一部の実施形態では、Rはメチル、エチル、又はプロピルである。
【0024】
Xは、−(C(=O)−(CH2a−Q)b−M、−((CH2a−C(=O)−Q)b−M、及び−(C(=O)−(CH2a−Q)b−CH2CH(OX’)CH2N(R)SO2fからなる群から選択される。MはH及びカチオンからなる群から選択される。Mがカチオンである場合、Mに最も接近したQは負電荷を有している。Mは組成物の全体の電荷をつり合わせる。好適なカチオンの例には、アルカリ金属カチオン類(例えば、Li+、Na+、K+)などの無機カチオン類;アルカリ土類金属カチオン類、遷移金属カチオン類、及びNH4+;並びに1級、2級、3級又は4級のアンモニウムカチオン類、スルホニウムイオン類、及びホスホニウムイオン類を含んだオニウムイオン類などの有機カチオン類、が挙げられる。
【0025】
各々のaは1〜5から独立して選択され、及び各々のbは1〜4から独立して選択される。X’はH及びXからなる群から選択される。aを変更するために、例えば、異なった酸アルコールをエポキシドと反応させてよい。一方、bは何モルの酸アルコールがエポキシドと反応するかによって変化させることができる。理論にとらわれるものではないが、酸アルコールとエポキシドの反応はスキームIで示したように進行すると考えられる。
【0026】
【化2】

【0027】
図のように、酸触媒によるエポキシドの開環はアルコールの酸素(又はメルカプタン使用の場合は、メルカプタンのS)、又はカルボン酸の酸素による求核攻撃を介して進行する。上に示した実施形態において、酸アルコールがアルコールの酸素の求核攻撃により反応する場合(経路1)、結果として得られる生成物は、
f−SO2N(R)CH2CH(OX’)CH2O(CH22CO2
であり、これは、いわゆる「エーテル結合」生成物である。一方、上に示した実施形態において、酸アルコールがカルボン酸の酸素の求核攻撃によって反応した場合(経路2)、結果として得られる生成物は、
f−SO2N(R)CH2CH(OX’)CH2OC(=O)(CH22OH
であり、これは、いわゆる「エステル結合」生成物である。
【0028】
「エステル結合」であろうと「エーテル結合」であろうと、結果として得られた生成物は酸触媒によりプロトン化し、第2の求核置換反応を受ける。この第2の反応は2に相当するb値を有したレベリング剤を生成する。さらなる付加反応が可能であり、それはb値を増加させる。当業者であれば、反応時間、反応温度、酸強度、反応物の相対濃度、及びさらには付加反応の次数及び/又は反応物の付加速度、などの反応条件が、b値の決定に関与できることを認識するであろう。スキームIIにおいて第2の求核性置換反応の一例をエステル結合に対して例示する。
【0029】
【化3】

【0030】
再度、理論にとらわれるわけではないが、水を置換する同様な求核攻撃が、酸アルコールと第1のエーテル結合に対するβ位置のアルコール基との間で発生してもよいと考えられる。さらには、同様な求核置換反応が酸アルコールとエーテル結合形成におけるカルボン酸末端基との間で発生してもよい。
【0031】
典型的には、コーティング組成物中のレベリング剤の量は0.1重量ppm〜1重量%の範囲にある。一部の実施形態では、レベリング剤は少なくとも0.5ppm、5ppm、10ppm、又は20ppm、又はそれ以上であってよい。その他の実施形態では、レベリング剤は5ppmまで、10ppm、100ppmまで、あるいは1000ppmまでの量でさえ存在してもよい。
【0032】
一部の実施形態では、ワックスをさらに含むような、コーティング組成物は、床用仕上げ塗料、自動車又は船舶の仕上げ塗料としての使用に好適なバフ磨き可能な仕上げ(buffable finishes)を提供するために使用してもよい。このような実施形態では、被膜形成ポリマーは典型的には少なくとも1つの、より典型的には複数の、ペンダント架橋可能基(例えば、−CO2H又は−CO2-、−NH2、及び/又は−CH2OH)を有し、及び1つ以上の金属錯化剤類(例えば、Zn2+、Ca2+、Ti4+)が、例えばアミンとして存在する。
【0033】
一部の実施形態では、コーティング組成物は有機ポリマーのための架橋剤をさらに含んでもよい。例として、上に挙げた金属錯化剤などの多価金属カチオン類並びにMg2+、Zr4+、並びにAl3+カチオン類、ボレート類、ポリアルコキシシラン類、及びポリアジリジン類が挙げられる。
【0034】
一部の実施形態では、コーティング組成物は染料又は顔料のような1以上の着色剤類を含んでよい。そのようなコーティング組成物は塗料に使用できる。
別の態様において、本発明は、
【0035】
【化4】

【0036】

H−Q−(CH2aCO2
と反応させて得られる未分離の反応生成物に関する。式中、Rf、R、Q、M及びaは上述した。
【0037】
「未分離の反応生成物」は、上述したエーテル結合及び/又はエステル結合の有機化合物、及び実施例に示したような全ての反応生成物であって、エポキシ化合物と酸アルコール(又はメルカプタン)を反応させて得られ、互いから反応生成物を分離するためのさらなる措置をいずれも受ける前の反応生成物を意味する。例えば、エポキシ化合物がRf=C49、及びR=CH3を有し;並びに酸化合物は、aが1であり及びMがHである酸アルコールである場合には、「未分離反応生成物」には、1H及び13CのNMR測定により、C49SO2N(CH3)CH2CH(OH)CH2O−[C(=O)CH2O]n−H、式中nは1又は2;C49SO2N(CH3)CH2CH(O−[C(=O)CH2O]m−H)CH2O−[C(=O)CH2O]n−H、式中nは0〜4で及びmは1〜4;C49SO2N(CH3)CH2CH(OH)CH2O−[CH2CO2n−H、式中nは1〜4;及びC49SO2N(CH3)CH2CH(O−[C(=O)CH2O]m−H)CH2O−[CH2CO2n−H、式中n及びmの各々は独立して1〜4;が含まれる。
【0038】
本明細書で記載されるコーティング組成物は基材上にコーティングされてよい。従って、別の態様において、本発明は水、被膜形成有機ポリマー及びレベリング剤を含む組成物を基材に塗布することに関する。レベリング剤は、式、Rf−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−Xで表され、式中、Rf、R、Q、X、及びX’は上記に規定済みである。
【0039】
塗布工程は、刷毛塗り、モップがけ、バーコーティング、吹きつけ、ディップコーティング、グラビアコーティング、及びロールコーティングなどの好適な方法のいずれかであってもよい。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は基材及びコーティングを含むコーティングされた物品に関する。コーティングは水、被膜形成有機ポリマー、及びレベリング剤を含む。レベリング剤は、式、Rf−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X、で表され、式中、Rf、R、Q、X、及びX’は上記に規定済みである。
【0041】
好適な基材としては、木材、ガラス、金属、セラミックス、有機及び無機ポリマー類、しっくい、乾燥壁体、岩石、コンクリート、及びアスファルトが挙げられる。
【0042】
さらに別の態様において、本発明は、Rf−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X、を含む組成物に関し、式中、Rf、R、Q、X、及びX’は、上記に規定されたようであり、ただし、Xが−((CH2a−C(=O)−Q)b−Mである場合に、各々のbは2〜4から独立して選択される。即ち、組成物がいわゆる「エーテル結合」である場合、組成物は、2〜4個の−((CH2a−C(=O)−Q)b−の基を有する。
【0043】
本発明の対象物及び利点を以下の実施例でさらに例証するが、これらの実施例に記載の特定材料類及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細事項は、本発明を不当に制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0044】
特に注記しない限り、本明細書の実施例及びその他の部分において、部、百分率、及び比率は、全て重量によるものであり、実施例中の溶媒類及び試薬類の全ては、シグマ・アルドリッチ社(セントルイス、ミーズリ州)などの一般的な化学薬品供給元から購入又は入手でき、又は従来の方法で合成してもよい。
【0045】
実施例で、用語「C49」は、96部の−CF2CF2CF2CF3、2部の−CF2CF(CF3)CF3、2部の−CF2CF(CF3)CF3、及び1〜3部の−CF2CF2CF2CF2Hの混合物を指す。
【0046】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド(C49SO2F)は、シモンズ(Simons)電解フッ素化(ECF)により調製した。この技術を記述する初期特許は、米国特許第2.519,953号(シモンズ)である。シモンズ法によるECFはまた、S.ナガセにより「フッ素化学総説」1巻(1)77〜106頁(1967年)に、及びT.アベらによりR.E.バンクス(Banks)編集「有機フッ素化合物の調製、特性、及び工業用途」(Ellis Horwood 社、Hoisted Press、1982年)の1章に、記載されている。
【0047】
表面張力
脱イオン水で、全生成物を表示された濃度に希釈した。静的表面張力をクルス(Kruss)K−12テンショメーター及びデュヌーイ(Du Nouy)環法を用いて20℃で測定した。動的表面張力を同濃度でセンサダイン5000最高泡圧力テンショメーター(Sensadyne 5000 Maximum Bubble Pressure Tensiometer)(データフィズィクス(Data Physics)インスツルメンツ社、ドイツから入手可能)を用いて4バブル/秒のバブル速度で、20℃で測定した。
【0048】
床用仕上げ塗料の実施例の評価
水性スチレン−アクリルエマルションをクック・コンポジッツ・アンド・ポリマー社(Cook Composites and Polymers)(カンサスシティ、ミーズリ州)から、クック・コンポジッツ・アンド・ポリマー社によって商品名「シールド(SHIELD)−8」で販売されるものを入手したが、フッ素化界面活性剤(E.I.デュポン・ド・ヌムール社、ウィリミントン、デラウェア州、より商品名「ZONYL FSN」で入手可能)(以後「ゾニール」とする)とヒドロゾルエマルションレベラー(hydrosol emulsion leveler)(クック・コンポジッツ・アンド・ポリマー社より商品名「エズクリル(ESI-CRYL)842」で入手可能)が除かれていること以外は同一であった。この床用仕上げ塗料(即ち、FF1)の試料を、試験用に200ppmのGS−1、又は床用仕上げ塗料に商業的に使用されている比較用フッ素化界面活性剤(即ち、3M社の「フルオラッド(FLUORAD)FC−120」)を添加して調製した。
【0049】
200ppmのフッ素性化学物質界面活性剤を含有する、5MLの液状の床用仕上げ塗料を30.48cm×30.48cm(12インチ×12インチ)の洗浄済み黒色ビニル合成物の床タイルの中央部に塗布し、次いでガーゼ又はチーズクロスの片を用いてタイルの表面積全体を被覆するようして均一なコーティングが得られるまで広げた。コーティングは、均一なコーティングが得られるまでタイルの表面積全体に8の字形状の線を引いた図形を作製するようにして塗布した。次いでタイルの対角線上に対置された角部の間で「X]を床用塗料を拭いて作製した。重ね塗りの前に各コーティング層を少なくとも25〜30分間乾燥させて、合計で5層のコーティングが塗布されるまでこの工程を繰り返した。
【0050】
床タイルを床仕上げ塗料の5種類のコースによってコーティングし、コーティングしたタイルは少なくとも7日間風乾させた。商品名ミクロ−トリ−グロスメーター(MICRO-TRI-GLOSS METER)として、ポール・エヌ・ガードナー(Paul N. Gardner)社(ポンパノビーチ、フロリダ州)から入手可能なビック−ガードナー(BYK-Gardner)光沢計を用いて、タイルのコーテングされた表面全体で6点の個別測定を行い平均を採るようにしながら、60°光沢度を測定した。光沢度測定値は表I(下記)に報告する。「FS−1」は、商品名フロラッド「フロラッド FC−120」として3M社(セントポール、ミネソタ州)から得られるフッ素化界面活性剤を示す。
【0051】
一般用の耐水性アクリル木材コーティング樹脂における界面活性剤の性能
耐水性木材コーティング樹脂を調製し、界面活性剤の性能を評価した。その樹脂は、全アクリル系ベース樹脂であるネオクリル(Neocryl)(登録商標)A−6092(ネオレジン社、ウィルミントン、マサチューセッツ州、より提供された)をベースに用いた。ベース樹脂及びその他の配合成分はWB−4041原液の中に配合した。WB−4041の配合は、100重量部(pbw)のネオクリル(登録商標)A−6092、20重量部の水、1重量部の水酸化アンモニウム、1.1重量部のKP−140(登録商標)(グレートレーク・ケミカル社、ラフィーエット、インディアナ州)、13重量部の「カービトール(CARBITOL)」、(ユニオンカーバイド社、ダンベリー、コネティカット州、から入手可能)、0.34重量部のコロイド770(登録商標)(ローディア、クランベリー、ニュージャージー州、より入手可能)を有する。
【0052】
原液の試料を取り出し、試験のために1000又は2,500ppmの試験用界面活性剤(固形分に基づいて)と混和した。本発明の界面活性剤は、攪拌しながら水性開始点配合物(the aqueous starting point formulation)を加える前に、カービトールに25重量%になるように事前希釈した。比較用の商業的界面活性剤は受領状態で使用した。
【0053】
発泡体刷毛を用いて、試験用配合の均一なコーティングを30.48cm×30.48cm(12インチ×12インチ)のカエデ合板パネルに塗布し、少なくとも8時間乾燥させた。この方式を用いて合計3つのコーティングを塗布した。第1のコーティングは150〜200粒度のサンドペーパーで軽く研磨した。コーティング中の泡立ちの度合いを観察した(1〜5ランク:5が最良、即ち泡が最少量)。
【0054】
第3番目のコーティングを乾燥した後、このコーティングについて、クレータ、ピンホール(濡れ不良)、刷毛目、筋跡(レベリング性)を評価した。また、60°光沢度を上記の方式で測定した。
【0055】
パネルは、上記の試験方法を用いて濡れ性、レベリング性及び光沢度について1〜5の間でランク付けし、記録した。残りの樹脂溶液の表面張力をテンショメーターを用いて測定した。
【0056】
ビニルフロア、木材及びプラスチックのトップコートに使用される耐水性ポリカーボネート−ウレタン分散物における界面活性剤性能
耐水性ポリカーボネート−ウレタン樹脂を調製し界面活性剤性能を評価した。ベース樹脂は、フッ素化界面活性剤を除去してあるスタール(Stahl)のRU−40−415配合物(スタール社、ピーボディ、マサチューセッツ州、から得た)であった。この保存用樹脂分散物(stock resin dispersion)のサンプルを試験用の実験的界面活性剤の50ppm(固形分に基づいて)と混和した。試験した界面活性剤は、攪拌しながらポリカーボネート−ウレタン樹脂に添加する前に、水又はDPMと水の混合物中に1.0重量%になるように事前希釈した。
【0057】
上記の耐水性アクリル系木材コーティング樹脂の評価に使用したのと同じ方式を、耐水性ポリカーボネート−ウレタンコーティング樹脂の評価に対して使用した。
【0058】
濡れ性(0〜5ランク付け)
濡れ性の性能は最終コーティングの乾燥中及び乾燥後の表面欠陥に関してコーティングを目視検査して決定した。不良の濡れ性は、一般的にクレータ、ピンホール、及びタイルの端部からのコーティングの引き込みの形で表面欠陥を呈する。濡れ性能値を以下のようにして求めた。
【0059】
【表1】

【0060】
レベリング性(1〜5のランク付け)
また、レベリング性能は最終コーティングの乾燥中又は乾燥後のコーティングを目視観察して決定した。レベリング不良は、工程の間に適用される8の字形状の線引き動作及び「X」の観察を介して決定できる。コーティングは不均一な外観になるか又は線引き動作適用による筋を有するようになる可能性がある。レベリング性は以下の基準を用いて評価した。
【0061】
【表2】

【0062】
N−グリシジル−N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミド(MeFBSG)の調製
【0063】
【化5】

【0064】
N−メチルペルフルオロブタンスルホンアミド(MeFBSA、313g、1.0モル;米国特許第6,664,354号、サウ(Savu)ら実施例1、パートAに記載される調製物)を、220gのNaOCH3(1.02モル;MEOH中の25%NaOMe)の攪拌した混合物に添加した。溶媒を真空下で(容器温度80℃;6.67kPa(50mmHg)除去した。結果として得られたペーストを250mLのTHFに溶解し、473g(5.11モル)のエピクロロヒドリンで処理し4時間還流下、攪拌した。GLC分析によりMeFBSAの完全な転化が示された。スラリーを冷却し、水(300mL)で洗浄し、得られた下層を塩化メチレン中に受け入れ、水(300mL)で再洗浄し、MgSO4で乾燥した。生成物はストリップし、一段蒸留して無色液体のMeFBSG主留分(260.8g、沸点95〜105℃/0.04kPa(0.3mmHg)を得た。
【0065】
MeFBSGから及びグリコール酸からの付加物(以後GS−1)の調製
125mLパイレックス(登録商標)管に17.9g(48.5ミリモル)のMeFBSG及び3.69g(48.5ミリモル)のHOCH2CO2H固体及び電磁攪拌棒を装填し、密封し、120〜140℃で4時間加熱した。透明溶液が得られた。混合物のNMR分析により以下の結果が得られた。
【0066】
約10%(モル)以下ののエーテル結合の付加物、C49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−O−(CH2CO2bH(b=1,2)、及び約90%(モル)以下のエステル結合の付加物、C49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−O−((C=O)CH2O)bH(b=1、2、3)。
【0067】
LC−MS分析から、以下の付加物を同定した。
【0068】
主組成物は、C49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−O−((C=O)CH2O)bH[b=1(MW=445g/モル)、b=2(MW503g/モル)、b=3(MW=561g/モル)]で、比率が3/2/1である。
【0069】
副組成物は、C49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−O−((C=O)CH2O)b−CH2(OH)CH2NMeSO249[b=1(MW=814g/モル)、b=2(MW=872g/モル)]である。
【0070】
主組成物と副組成物の比率は約4/1である。
【0071】
表1に水の表面張力対GS−1濃度を示す。
【0072】
表2に樹脂含有試料の表面張力に対するGS−1添加効果を例示する。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
* 全ての界面活性剤は水系試料に対し0.5%で試験した。
【0076】
MeFBSG及びHSCH2CO2H(SAA)の付加物(以後GS−2)の調製
125mLのパイレックス(登録商標)管に、17.9g(47.6ミリモル)のMeFBSG及び4.37g(48.5ミリモル)のHSCH2CO2Hの固体及び電磁攪拌棒を装填し、密封し、120〜140℃で4時間加熱した。透明溶液が得られた。混合物のLC−MS分析により以下の付加物の生成を確認した。
【0077】
49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−SCH2CO2H(MW=461)、及び
49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−SCH2CO2−CH2CH(OH)CH2NMeSO249(MeFBSG−SAA−MeFBSG、MW=830)が3/1の比率である。
【0078】
加えて、少量のMeFBSG−(SAA)2−MeFBSGもMW=904で同定された。
【0079】
MeFBSGから及びHOCH2CH2CO2Hからの付加物(以後GS−3)の調製
125mLのパイレックス(登録商標)管に18.45g(50.0ミリモル)のMeFBSG及び4.5g(48.5ミリモル)のHOCH2CH2CO2H固体、3滴のCF3SO3H触媒、及び電磁攪拌棒を装填し、密封し、110℃で4時間加熱した。透明溶液が得られる。混合物のLC−MS分析により以下の主付加物を同定した。
【0080】
49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−O(CH2CH2CO2bH(b=1、MW=459g/モル;b=2、531g/モル)及び
49SO2NMeCH2CH(OH)CH2−O(C(=O)CH2CH2aH(a=1、MW=459g/モル)が1/1の比率である。
【0081】
表3にレベリング性、濡れ性、及び60°光沢度に対する、本発明の実施例によるフッ素系界面活性剤及び比較例の添加効果を示した。
【0082】
【表5】

【0083】
ネオ=ネオレジン(NeoResins)WB−4041
スパルタン=トリリンク(TriLinc)(登録商標)床用仕上げ塗料
スタール=スタール(Stahl)RU−40−415
CCP−1=B367−169
CCP−2=B413−079
当業者により本発明の範囲と精神から乖離することなく本発明の様々な変形及び変更を実施することができるが、本発明は示した実施例に不当に限定されるものではない点を理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水と、
b)被膜形成有機ポリマーと、
c)下式、
f−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X
で表されるレベリング剤と、を含むコーティング組成物であって、式中、RfはC2〜C6のペルフルオロアルキル基からなる群から選択され、
RはH及びC1〜C18のアルキル基からなる群から選択され、
各々のQは、O及びSからなる群から独立して選択され、
Xは、−(C(=O)−(CH2a−Q)b−M、
−((CH2a−C(=O)−Q)b−M、及び−(C(=O)−(CH2a−Q)b−CH2CH(OX’)−CH2N(R)SO2fからなる群から選択され、
式中、MはH及びカチオンからなる群から選択され、各々のaは1〜5から独立して選択され、及び各々のbは1〜4から独立して選択され、及び
X’はH及びXからなる群から選択される、コーティング組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマーが少なくとも1つのポリマーラテックス又は乳化ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマーがアクリルポリマー、ウレタンポリマー、ポリビニルアルコール、アクリレートコポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記RがC1〜C8のアルキル基から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記Rがメチル、エチル、及びプロピルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ワックスをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
金属錯化剤をさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記有機ポリマー用の架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤が、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Zr4+、Al3+、及びこれらの組み合わせから選択される多価金属カチオンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
顔料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1のコーティング組成物を基材に塗布することを含むコーティング方法。
【請求項12】
a)基材と、
b)請求項1のコーティング組成物、とを含むコーティングされた物品。
【請求項13】
下式、
【化1】

の化合物を、
H−Q−(CH2aCO2
と反応させることによって得られる未分離反応生成物を含む組成物であって、式中、RfはC2〜C6のペルフルオロアルキル基からなる群から選択され、
RはH及びC1〜C18のアルキル基からなる群から選択され、
QはO及びSからなる群から選択され、
MはH及びカチオンからなる群から選択され、及び
aは1〜5から選択される、組成物。
【請求項14】
下式、
f−SO2−N(R)−CH2CH(OX’)CH2−Q−X
を含む組成物であって、
式中、RfはC2〜C6のペルフルオロアルキル基からなる群から選択され、
RはH及びC1〜C18のアルキル基からなる群から選択され、
各々のQはO及びSからなる群から独立して選択され、
Xは、−(C(=O)−(CH2a−Q)b−M、
−((CH2a−C(=O)−Q)b−M、及び−(C(=O)−(CH2a−Q)b−CH2CH(OX’)−CH2N(R)SO2f;からなる群から選択され、
式中、MはH及びカチオンからなる群から選択され、各々のaは1〜5から独立して選択され、及び各々のbは1〜4から独立して選択され、ただし、Xが−((CH2a−C(=O)−Q)b−Mである場合に、各々のbは2〜4から独立して選択され、及び
X’がH及びXからなる群から選択される、組成物。
【請求項15】
前記Xが、
−(C(=O)−(CH2a−Q)b−M 及び−(C(=O)−(CH2a−Q)b−CH2CH(OX’)−CH2N(R)SO2fからなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記Xは−(C(=O)−(CH2a−Q)b−M であり、前記bは1及び2からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記RfはC49であり、前記RはCH3であり、前記QはOであり、前記Xは
−(C(=O)−(CH2a−Q)b−Mであり、前記bは1であり、及び前記X’はHである、請求項14に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−521544(P2009−521544A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547265(P2008−547265)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/046383
【国際公開番号】WO2007/075271
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】