説明

フハイカビ免疫療法

P. insidiosumによって引き起こされる疾患以外の疾患を有する動物の免疫系を調節するための方法及びワクチンであって、当該方法は当該動物に対して免疫調節するのに有効な量のP. insidiosum, MTPI-04 株を投与することを含む。当該ワクチンは種々のヒト及び動物の疾患を効果的に処置し管理する免疫反応を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pythium insidiosumの継続的な診断、予防的及び治療的ワクチンのための抗原としての当該菌の使用、並びに、当該菌の単離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Dr. Alberto L. Mendoza及び彼の共同発明者らによる従来の発明においては、P. insidiosumのタンパク質は、ヒト及びその他の動物におけるP. insidiosum 感染を治療するために用いられていた。例えば、U.S. Patent Nos. 5,948,413(1999年9月7日); 6,287,573(2001年9月11日)及び6,833,136(2004年12月21日)を参照のこと。各例においては実際に、真菌様株を単独又は他の細胞と共に用いて、ヒト及びその他の動物におけるピシウム感染症を治療した。ここで用いられる当該真菌様株は、ブタベスト条約のもとATCC 74446及び/又はATCC 58643として、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託されていた。これら特許によって治療される動物には、ヒト、ウマ、イヌ及びネコが挙げられる。これらは、Pythium insidiosumよりワクチンを調製し、いずれの被験体においても、ピシウム感染症を治療又は予防するための有効な免疫反応を提供することを目的とした。U.S. Patents 5,948,413; 6,287,573及び6,833,136の開示内容は、本明細書中に援用される。
【0003】
Dr. Mendoza及びその共同研究者らは、彼らの初期の発明を改良するために、依然としてP. insidiosumに取り組んでいる。ワクチンに取り組み、様々な方法で改善が行われている。改善方法の一つは、特定の疾患に対する治療又は予防の有効性においてみられる。別の改善方法としては、ワクチンを用いて効果的に治療又は予防することができる疾患の範囲を広げることである。ワクチンを改善するためのさらなる方法としては、それを用いて処置することができる種の数を増やすことである。本発明の主な目的は、P. insidiosum タンパク質で治療することができる種の数を増やすこと、及び動物に免疫反応を調節することによって効果的に治療することができる疾患の範囲を広げることにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】U.S. Patent Nos. 5,948,413
【特許文献2】U.S. Patent Nos. 6,287,573
【特許文献3】U.S. Patent Nos. 6,833,136
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
言うまでもなく有効かつ効果的に変調された免疫応答を提供し、様々な種の種々の疾患を効果的に治療することができるワクチンが、依然として切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、Pythium insidiosum MTPI-04 株(Texas株)より可溶性タンパク質の単離及び濃縮によって得られる、フハイカビ(pythium)免疫治療薬を提供する。この株特異的フハイカビ免疫治療薬は、Dr. Mendozaの初期の特許の記載されるフハイカビアレルゲン抽出物(PAE)中に見出される全てのタンパク質を含むが、さらに他の様々なタンパク質(MTPI-04によって発現される28 kDaよりもはるかに大きなタンパク質を含む)も含む。すなわち、発現タンパク質のプロファイルは、本発明と全く異なる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、例えば、注射によって投与することができる、フハイカビ免疫治療薬に関する。
【0008】
本明細書において、Pythium insidiosum MTPI-04株 (Texas 株)とは、MTPI-04 株又はその変異体、誘導体若しくは類似株を意味する。当該変異体等はMTPI-04 株と同程度に免疫調節の効果的な応答を生じる。当該応答は、Pythium insidiosumによって引き起こされる疾患以外の疾患を治療又は管理するのに有効であるフハイカビ免疫療法を提供するために用いることができる。Pythium insidiosumによって引き起こされる疾患以外の疾患としては、例えば、サルコイド(ウマ科)、肥満細胞腫 (イヌ科)、アレルギー性疾患 (イヌ科、ネコ科、ウマ科、ヒト)、炎症性大腸炎(イヌ科)、粟状皮膚炎 (ネコ科)、肉芽の過増殖 (ウマ科)、クロモブラストミコーシス (ヒト)、ぜんそく (ネコ科)、外耳炎 (イヌ科、ネコ科)、関節炎 (イヌ科)、無汗症 (ウマ科)、並びに舟状骨の疾患及び蹄葉炎 (ウマ科)などが挙げられる。
【0009】
免疫系を効果的に調節し、Pythium insidiosumによって引き起こされる疾患以外の疾患に対する免疫療法を提供することが可能であるP. insidiosum MTPI-04 株 (Texas 株)について、何が特異及び特有であるのか知られていなかった。本発明者は何ら理論に拘束されることなく、本発明者の以前の特許にて用いられた当該株によって発現されるタンパク質以外の発現タンパク質、及び/又は、タンパク質の異なる比率が要因となり得ることを示した。例えば、顕著に大量の28 kDaタンパク質が存在すること、及び、およそ124 kDaにおけるタンパク質の発現はMTPI-04 株 (Texas 株)に特有でありうることが見出されている(Chindamporn et al., Clinical Vaccine Immunology, Antibodies in the Sera of Host Species with Pythiosis Recognize a Variety of Unique Immunogens in Geographically Divergent Pythium insidiosum Strains, Vol. 16, No. 3, pp. 330-36, Table 3 MTPI-04 at page 334 参照のこと)。
【0010】
P. insidiosum, MTPI-04 株について、本件出願人らは、本発明が認められた際に、出願当初の明細書中に記載されているとおり、P. insidiosum, MTPI-04 株を寄託し、必要に応じて、請求項にATCC登録番号を挿入することとする。本件出願人らはさらに、以下の点を保証する:
a) 本願継続中、長官は要求に応じて発明を入手することができる;
b) 一般公衆利用の際の全ての制限は、特許が認められた際に完全に取り除かれる;
c) 寄託物は公の受託機関に30年間、又は最新の請求から5年間のいずれか長いほうの期間にわたって維持される;
d) 寄託時の生物学的材料について、生存試験が行われる(37 C.F.R. § 1/807参照);ならびに
e) 寄託物が生存していない場合には、当該寄託物を再寄託する。
【0011】
本件出願人らはPythium insidiosum, MTPI-04 株について、寄託に関する上記申し入れを受け入れ、35 U.S.C. § 112の要件を具備した。そして37 C.F.R. §§ 1.801-1.809の全ての要件を満たす。
【0012】
以下の記載は主に、滅菌した水溶液中にある注射可能なワクチンに関連するが、当該ワクチンは他の方法(例えば、無針注射、固形用量インプラント、局所投与、経口投与、眼内投与、吸引投与、又は坐薬投与)により投与することもできる。
【0013】
ワクチンの製造プロセスは、培地中にてPythium insidiosum MTPI-04 株の細胞を増殖させることから開始する。保存培養物、接種材料、及び最終生成物は以下の方法で作製することができる。便宜上、各工程を分類及び番号付けする。
【0014】
培養物の増殖
1. MTPI-04 株の培養物は以下の3つのいずれかの形態で保存/維持する:
a. 凍結乾燥
b. 冷凍
c. コーンミール寒天培地 (CMA)又はサブローデキストロース寒天培地(SDA)上で維持された菌糸培養。
【0015】
2. SDAプレートに上記のいずれか一つを接種し、37℃にておよそ24時間インキュベートする。これを生産培養物 #1と示す。
【0016】
3. 菌糸コロニーの一部を別のSDAプレートに移し、さらに24時間、37℃にてインキュベートする。これを生産培養物 #2と示す。
【0017】
4. 菌糸コロニーの一部を別のSDAプレートに移し、さらに24時間、37℃にてインキュベートする。これを生産培養物 #3と示す。この三番目の培養までに、菌糸は正常であり、かつ液体培地への接種が可能な状態でなければならない。
【0018】
5. 滅菌したサブローデキストロースブロス(SDB)をその容積の半分まで入れた振とうフラスコを準備する。
【0019】
6. 暖めた(37℃) SDBを含むフラスコに生産培養物 #3の一部を接種する。当該フラスコを回転式振とう器上、37℃、およそ150 rpmにて、5〜7日間、培養物がコンフルエントな菌糸マットを形成するまで、インキュベートする。
【0020】
タンパク質の抽出
1. 浄化用フィルターを備える、滅菌した真空/ボトルトップフィルター装置のフィルターハウジングに無菌的に培養液を移す。レシーバーボトルキャップアームを真空とすると、菌糸はフィルター上に留まり、可溶性の細胞外タンパク質を含む液体(ろ液)はレシーバーボトルの下に回収される。ろ液の量を記録して、2〜7℃に保存する。
【0021】
2. 菌糸を液体窒素を含む、予め冷やした滅菌乳鉢に無菌的に移す。この急速な凍結は、Pythium insidiosum培養物を不活性化するのに有効である。滅菌した乳棒を用いて細胞を破壊し、塊を粉末にする。この粉末を滅菌した脱イオン水に懸濁し、よく混ぜ、そして2〜7℃にて1時間インキュベートする。水懸濁液中の細かくされた菌糸には、可溶性の細胞内タンパク質及び不溶性の菌糸断片が含まれる。
【0022】
3. 上記懸濁液をおよそ750 x gにて1時間遠心分離し、次いで可溶性細胞内タンパク質を含む上清を回収し、2〜7℃にて保存する。
【0023】
4. 上記工程1に由来するろ液と上記工程3に由来する上清を組み合わせ、三角フラスコに注ぎ入れ、そして懸濁液が乳白色を示すまでアセトンを加える。この懸濁液を2〜7℃に透明になるまで置いておき、細胞外タンパク質をフラスコの底に集める。
【0024】
5. アセトン上清を丁寧に取り出し、沈殿物をドラフトのもと、室温にて20分間風乾し、残留するアセトンを全て揮発させる。
【0025】
6. 沈殿物を溶解させるのに十分な量の滅菌した脱イオン水を用いて沈殿したタンパク質を回収し、2〜7℃にて24時間保持し、可溶性タンパク質を溶解させる。
【0026】
7. 可溶性の細胞内タンパク質及び細胞外タンパク質の混合物を750 x gにて30分間遠心分離する。可溶性タンパク質のみを含む上清を回収し、可溶性タンパク質中の残留物を含む沈殿物は捨てる。
【0027】
8. 10,000 MWCO 非タンパク質結合フィルターを備える、滅菌したフィルターハウジングを使用して、冷却しながら上記上清を濾過する。ろ液は捨て、濃縮液(retentate)は、最終生成物を調製するまで、2〜7℃に冷却して保管するか、冷凍して保管する。
【0028】
9. 濃縮物(concentrate)を保管する前に、細胞外/細胞内タンパク質の組み合わせ物の全てを、サンプリング、測定及び記録する。.
最終生成物の調製
1. 滅菌した生理食塩水で濃縮物を所望のタンパク質レベルになるまで希釈し、もう一度測定し、確認する。
【0029】
2. 複数又は単一単位用量の滅菌したバイアルを最終生成物で満たす。0.2ミクロンのフィルターを直列に組み入れ、産物の滅菌が確実に行えるようにする。
【0030】
3. バイアルに滅菌した栓をして、アルミニウムシールで固定する。
【0031】
本発明 の株を製造及び単離する方法と、従前のMendozaらによる特許にて用いられた方法とは異なり、新製品の製造方法は従前の特許の方法とは以下の点で異なっている:
1. MTPI-19株 (ATCC 74446及び/又はATCC 58643)ではなく、MTPI-04株を用いること;並びに
2. 化学物資を使用するのではなく、菌糸を極低温にて破壊し、フハイカビ培養物を不活性化すること。
【0032】
好ましくは、免疫治療薬は1用量あたり約20 mcg〜5.0 mgのタンパク質を含む濃度である。免疫治療薬の服用量は、一部の動物に対しては、約20 mcg/mL〜40 mcg/mLが好ましい。
【0033】
本発明の免疫治療薬は好ましくは、筋肉内注射される。ワクチンはまた、針を用いた又は針を用いない方法によって、皮内又は皮下投与することができる。
【0034】
滅菌担体は本発明の免疫治療薬に用いられる。好ましい担体としては、特にヒトにおいては、水又は食塩水が挙げられる。
【0035】
本発明の免疫治療薬は、他の疾患に対する免疫成分と組み合わせて、多価ワクチンを製造することができる。
【0036】
以下の実施例において、改善された免疫治療薬は前述の通り培養、単離、抽出及び保存されたP. insidiosum MTPI-04 株より調製され、使用するまで2〜7℃にて保管されていた。
【0037】
以下の全ての実施例において、担体は生理食塩水であり、そして実施例3、4及び6-12にける各用量は40 mcgとした。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
ヒト
A.クロモブラストミコーシス
74歳のブラジル人男性は、54年もの間、右腕にクロモブラストミコーシス真菌性感染を有していた。患者はその間、Itraconazole、Ketoconazole及びAmphotericin Bを含む抗真菌薬で治療されたが、効果はなかった。彼の腕の病変部の大きさが大きくなったために、彼はブラジルのベロオリゾンテにある皮膚病研究所(ISMD)を訪れた。従来の抗真菌薬を用いた治療では長期にわたって効果が得られなかったことから、治療はMTPI-04 株に由来するフハイカビ免疫治療用産物を20 mcg/用量にて、1週間間隔で一カ月間、皮下注射することより開始した。最初の7ヶ月間の治療期間に病変部の大きさは顕著に縮小した。ISMD は、患者が最後に訪れた2009年12月11日おいて、残りの小さな病変部に依然として「硬化部」を確認したことから、感染は低レベルで依然として存在するが、治療により疾患の進行は減少及び制御されているようだと示した。免疫療法は再開され、患者は2010年2月中にISMDを訪れる予定となっている。
【0039】
(実施例2)
ウマ科
A. サルコイド
ウマ科のサルコイドは、世界中のウマにおいて最も一般的な皮膚腫瘍である。これらの局所進行性の良性腫瘍は、ウシパピローマウイルスに関連することが広く認識されている。4名の獣医が、6件のウマ科のサルコイドに対しフハイカビ免疫治療薬(20 mcg/用量)を皮下注射したところ、4件においてサルコイド病変部が消え、そして残りの2件においては病変部が50%縮小したことを報告した。
【0040】
(実施例3)
B. 肉芽の過増殖 (“肉芽組織”)
30歳のメス馬は、右後ろ足、近位側中足骨よりも上部を怪我し、その後過剰肉芽組織を治療したことが、組織病理学的に確認された。10 cmの腫瘍をきっちりと切除した後、週に4回、フハイカビ免疫治療薬を筋肉注射した。補助的な治療を用いることなく、病変部は5ヶ月の期間をかけて完全に治癒した。当該ウマはその後、極端に厚い冬毛(winter coat)を生やし、何年も何もなかった。
【0041】
(実施例4)
C. 蹄葉炎
舟状骨の疾患に起因する軽度の跛行を有するウマはまた、蹄葉炎と診断された。患者には週に3回、フハイカビ免疫治療薬を注射した。各処置後24時間以内には、跛行の解消が見られたが、処置後6日までには跛行が再び現れた。週に3回注射を行うさらなる治療を施したが、治療期間にウマが苦しめられることは無かった。およそ90%の臨床的回復が見られ、そして患者は改善し続けた。
【0042】
(実施例5)
D. アレルギー
アトピーの兆候及び複数のアレルゲンに対して同時に高い血清IgE抗体レベルを有するウマを、フハイカビ免疫治療薬の皮下注射(20 mcg/用量)並びに様々なアレルゲン抽出物の注射(1日目、14日目、及び30日目)の組み合わせを用いて治療した。当該処置において用いられたアレルゲンに特異的な血清IgEのレベルは、30日目には顕著に減少した。60日目までには、血清IgEは正常値内となり、アトピーの臨床的兆候は解消した。
【0043】
(実施例6)
E. 無汗症
臨床無汗症 (発汗できない)の2年の病歴を有するウマにフハイカビ免疫治療薬(40 mcg/用量)を皮下注射にて3回(1日目、7日目、及び21日目)与えた。3回目の処置から7日後には、ウマは運動時に正常に発汗していた。主治医である獣医は、患者は3回目の注射から90日後の運動時においても正常に発汗していることを報告する。
【0044】
(実施例7)
イヌ科
A. 肥満細胞腫
避妊手術を受けた雑種雌イヌ(12歳)は、2年間にわたって6つの肥満細胞腫 (MCT) が外科的に切除されている。新たなMCTは直径が4-5 cmあり、やわらかく、当該イヌの背側き甲に現れた。飼い主はさらなる外科手術を断った。皮下フハイカビ免疫療法を開始し、2回目の処置を施してから1週間後には、腫瘍は2 x 3 cmとなり、硬くなった。3回目の処置時(1週間後)には、腫瘍は円形(直径が1.5 cm、厚さが0.5 cm)となり、非常に硬くなった。4回目の処置時(1週間後)には、腫瘍の直径は1.25 cm、厚さは0.5 cmとなり、非常に硬く、かつ痛みを伴わなくなった。投与は皮下注射にて行った。4回目の処置から1週間後、腫瘍は直径が1.0 cm まで縮小し続け、その後消失した。さらなるMCTは再発しなかった。
【0045】
(実施例8)
B. アレルギー & 外耳炎
8歳のコッカースパニエルはその生涯のほとんどの時期において重篤な皮膚アレルギーを患っていた。耳が特にひどく、膿性分泌物が溜まっていた。胸部には治療を阻む大きな皮膚病変部を有していた。当該イヌに対し、フハイカビ免疫治療薬を皮下注射によって、毎週、4週間に亘って投与した。最初の処置から1週間後には改善が見られた。胸部の病変部が治癒され、耳は臨床的に正常(すなわち、炎症、分泌物、及び臭いのいずれも無い)であった。4回目の注射時においても、耳は正常であるように見えた。
【0046】
(実施例9)
C. 関節炎
去勢されたシェットランド・シープドッグ(5歳、オス)は先天的股異形成を有し、極度の再発性皮膚アレルギーを有していた。当該イヌに対して、週に4回皮下注射を行った。フハイカビ免疫治療薬を最初に皮下注射してから5日後に、イヌは全くかゆがらなくなり、臀部は気にならないかのように振舞った。最後の注射時には、休んでいるところから起き上がるのに多少時間はかかるものの、非常に活発な動きを見せ続けた。アレルギー性の皮膚疾患は見られなかった。一年後の飼い主からの報告によれば、当該イヌは、抗ヒスタミン薬を要するような軽度のアレルギー性疾患を有するものの、以前より良い状態であり、関節炎は改善されたままである。
【0047】
(実施例10)
D. 炎症性大腸炎
去勢されたテリアミックス(10歳、オス)は炎症性大腸炎(IBD)を罹患しており、吐気と下痢の継続的な発作を有していた。当該イヌに対して、週に4回、皮下注射を行い処置した。フハイカビ免疫治療薬の最初の皮下注射の後、臨床的兆候は顕著に改善され、消化管における症状の発症はもはや見られず、3回目の処置を受けた際には、以前より落ち着いており、1.7ポンド太っていた。
(実施例11)
ネコ科
A. ぜんそく
避妊手術を受けたシャムネコ(10歳、メス)は、ネコ科のぜんそくに合致する呼吸器疾患を約2年間患っていた。当該ネコに対して、週に4回皮下注射を行い処置した。フハイカビ免疫治療薬の最初の注射時には、当該ネコは重篤な呼気性呼吸困難を有していた。2回目の注射時には、当該ネコは軽度の呼吸困難を有してはいたが、重篤ではなかった。3回目の注射を受けた際には、当該ネコは呼吸困難を有さず、臨床的に正常であった。
【0048】
(実施例12)
B. 粟状皮膚炎
去勢されたマンクスネコ(10歳、オス)は、極度の粟状皮膚炎病変を示していた。当該ネコは脱毛し、体の約70%にわたって非常にかゆみがあり、乾燥し、ぱさついた皮膚を有していた。そこで皮下フハイカビ免疫療法を開始した。2回目の処置時には、脱毛症が解消しはじめ、皮膚はひりひりせず、また炎症も起こしていなかった。週に合計8回の処置の後、毛は再び成長し、皮膚は正常となり、当該ネコは全く引っ掻かなくなった。尾側腹部にわずかな脱毛症が残っていた。
【0049】
本発明の好ましい態様を、上記のとおり示したが、本発明が意図する精神と範囲の中で、多くの改良、置換及び付加を行い得ることは理解することができる。上記より、本発明は少なくとも述べた目的の全てを達成できたことはわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P. insidiosumによって引き起こされるものではない疾患を治療するために免疫系を調節する方法であって
P. insidiosum による感染又はアレルギーを有さない動物にP. insidiosum MTPI-04, ATCC ______にて発現されるタンパク質を注入し、該動物にて治療反応を生じさせることを含み、該動物の免疫系はP. insidiosumによって引き起こされるものではない疾患を治療するために調節される、上記方法。
【請求項2】
注入されるべき動物が、ウマ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、フェレット、ミンク及びヒトからなる群から選択される哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質が滅菌担体中にあるP. insidiosum, MTPI-04より発現されたタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
滅菌担体が食塩水である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
与えられる各用量が約20 mcg〜5 mgの前記発現されたタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動物に与えられる用量レベルが約20 mcg/mL〜約40 mcg/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
動物の免疫系を調節してP. insidiosumによって引き起こされるものではない疾患を治療するための、注射可能な免疫治療薬であって、
P. insidiosum MTPI-04, ATCC ______ 株より発現されるタンパク質の滅菌注射剤を含む、上記免疫治療薬。
【請求項8】
P. insidiosum MTPI-04のタンパク質が、約20 mcg〜5.0 mgのレベルにてある、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
P. insidiosum MTPI-04の細胞内タンパク質及び細胞外タンパク質の組合せである、請求項7に記載のワクチン。
【請求項10】
担体が食塩水である、請求項7に記載のワクチン。
【請求項11】
アジュバントを含む、請求項7に記載のワクチン。
【請求項12】
多価ワクチンの一部である、請求項11に記載のワクチン。

【公表番号】特表2013−515772(P2013−515772A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547086(P2012−547086)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058554
【国際公開番号】WO2011/081765
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512168308)ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステイト ユニバーシティー (1)
【Fターム(参考)】