説明

フューエルタンクガード

【課題】効率良くフューエルタンクの中の燃料を回収する。
【解決手段】フューエルタンク12とフューエルタンクガード100の底部102とは間隔があいているので、フューエルタンク12の孔14から流出した燃料の一部は、燃料抜取用孔106の周囲の内面102Bに当たる。内面102Bに当たった燃料は、燃料抜取用孔106の周囲に設けられた凸部122によって、これ以上、外側に流れることが防止される。そして、燃料抜取用孔106の縁から外側に向かって突出するガイド部124を燃料が伝って流れ落ちる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられているフューエルタンクの少なくとも底面を覆うフューエルタンクガードに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を解体処理する際には、環境の汚染防止や作業の安全性確保のために、ガソリンや軽油などの燃料が入ったフューエルタンクから燃料の抜き取りが行われている。燃料の抜き取り方法としては、穴あけ工具を用いて燃料タンクの底面に穴あけを行い、その穴から燃料を流出させて適当なタンクに回収するのが一般的である。
【0003】
また、燃料タンクの底面に、穴あけ工具による穴あけ位置を示す刻印を設け、作業者の熟練度に左右されることなく、適切な箇所への穴あけを容易に且つ確実に行うことができる構成が提案されている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
さて、四輪駆動車等には、フューエルタンクを保護するために、フューエルタンクをフューエルタンクガードで覆った構成のものがある。(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
このようにフューエルタンクをフューエルタンクガードで覆っている構成の場合、フューエルタンクガードの肉抜き孔から燃料回収治具を挿し込んでフューエルタンクに孔をあけ、肉抜き孔から燃料を流れ落として回収している。
【特許文献1】特開2004−9827号公報
【特許文献2】特開2003−285393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フューエルタンクにあけた孔から燃料が流出すると、フューエルタンクガードのフューエルタンク側の内面に燃料が当たり、内面を伝って流れてしまう。このため、フューエルタンクにあけた孔に対応した肉抜き孔以外からも燃料が流れ落ちてしまう。よって、燃料を効率良く回収できない。
【0007】
また、フューエルタンクガードを取り外してからフューエルタンクに孔をあけると、このようなことは無いが、作業効率が低下する。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、車両に取り付けられているフューエルタンクの少なくとも底面を覆うフューエルタンクガードを備えていても、効率良くフューエルタンクの中の燃料を回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載のフューエルタンクガードは、車両に取り付けられているフューエルタンクの底面を覆うと共に、前記底面に対して前記フューエルタンク高さ方向に間隔をあけて配置された底部と、前記底部に設けられた燃料抜取用孔と、前記底部の前記燃料抜取用孔の周囲に設けられ、前記フューエルタンク側に突出する凸部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載のフューエルタンクガードでは、車両に取り付けられているフューエルタンクの底面を覆う底部に燃料抜取用孔が設けられている。この底部の燃料抜取用孔の周囲には、フューエルタンク側に凸部が突出している。
【0011】
さて、フューエルタンクから燃料の抜き取りを行なう際には、フューエルタンクガードの底部の燃料抜取用孔から治具を差し込み、フューエルタンクに孔をあけ、この孔から燃料を流出させる。流出した燃料は、燃料抜取用孔から流れ落ち、受け皿等の回収容器に回収する。
【0012】
このとき、フューエルタンクの底面に対してフューエルタンク高さ方向に間隔をあけてフューエルタンクガードの底部が配置されているので、フューエルタンクにあけた孔から流出した燃料の一部は、フューエルタンクガードの底部の燃料抜取用孔の周囲に当たる。燃料抜取用孔の周囲に当たった燃料は、燃料抜取用孔の周囲に設けられた凸部によって、これ以上、外側に流れることが防止される。
【0013】
したがって、フューエルタンクに孔から流出した燃料は、フューエルタンクとフューエルタンクガードの底部との間に流れることなく、燃料抜取用孔から流れ落ちる。よって、フューエルタンクガードを取り外すことなく、しかも、燃料をもらすことなく回収できる。つまり、効率良くフューエルタンクの中の燃料を回収できる。
【0014】
請求項2に記載のフューエルタンクガードは、請求項1に記載の構成において、前記凸部は、前記燃料抜取用孔の全周に設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載のフューエルタンクガードでは、凸部が燃料抜取用孔の全周に設けられている。よって、燃料抜取用孔の周囲に当たった燃料が外側に流れることが、より確実に防止される。
【0016】
請求項3に記載のフューエルタンクガードは、請求項1、又は請求項2に記載の構成において、前記底部は板金からなり、前記底部の前記フューエルタンクと反対側の外面に凹部を形成することで、前記フューエルタンク側に突出する前記凸部を形成したことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載のフューエルタンクガードでは、底部のフューエルタンクと反対側の外面に凹部を形成することで、容易にフューエルタンク側に突出する凸部を形成している。
【0018】
更に、この凹部が燃料抜取用孔の目印となる。
【0019】
請求項4に記載のフューエルタンクガードは、車両に取り付けられているフューエルタンクの底面を覆うと共に、前記底面に対して前記フューエルタンク高さ方向に間隔をあけて配置された底部と、前記底部に設けられた燃料抜取用孔と、前記底部の前記燃料抜取用孔の縁に設けられ、前記フューエルタンクと反対側に突出するガイド部と、を備えることを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載のフューエルタンクガードでは、車両に取り付けられているフューエルタンクの底面を覆う底部に燃料抜取用孔が設けられている。この底部の燃料抜取用孔の縁には、フューエルタンクと反対側に突出するガイド部を備えている。
【0021】
さて、フューエルタンクから燃料の抜き取りを行なう際には、フューエルタンクガードの底部の燃料抜取用孔から治具を差し込み、フューエルタンクに孔をあけ、この孔から燃料を流出させる。流出した燃料は、燃料抜取用孔から流れ落ち、受け皿等の回収容器に回収する。
【0022】
このとき、流出した燃料は、燃料抜取用孔の縁からフューエルタンクと反対側に突出するガイド部を伝って流れ落ちる。よって、流れ落ちる燃料を効率よく回収容器に回収できる。
【0023】
更に、このガイド部が燃料抜取用孔の目印となる。
【0024】
請求項5に記載のフューエルタンクガードは、請求項4に記載の構成において、前記ガイド部は、前記燃料抜取用孔の全周に設けられていることを特徴としている。
【0025】
請求項5に記載のフューエルタンクガードでは、ガイド部が燃料抜取用孔の全周に設けられている。よって、燃料が確実にガイド部を伝って流れ落ちる。
【0026】
請求項6に記載のフューエルタンクガードは、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の構成において、前記底部には、複数の肉抜き孔が設けられ、複数の前記肉抜き孔の一つ以上を、前記燃料抜取用孔とすることを特徴としている。
【0027】
請求項6に記載のフューエルタンクガードでは、底部には、例えば、軽量化などのため、複数の肉抜き孔が設けられている。そして、複数の肉抜き孔の一つ以上を、燃料抜取用孔としている。
【0028】
なお、燃料抜取用孔の周囲に凸部を形成することで、フューエルタンクの孔から流出した燃料が、フューエルタンクとフューエルタンクガードの底部との間に流れ、燃料抜取用孔で無い他の肉抜き孔から燃料が流れ落ちることが防止される。
【0029】
また、燃料抜取用孔の周囲の凹部や縁のガイド部が目印となるので、複数の肉抜き孔があっても、目的とする燃料抜取用孔であることを容易に判別できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明によれば、上記構成としたので、フューエルタンクの燃料を効率良く回収できる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を説明する。なお、各図において、矢印UPは車両の上方を示している。
【0032】
図1に示すように、ガソリンや軽油などの液状の燃料が入ったフューエルタンク12が、四輪駆動車等の車体のフレーム10に取り付けられている。そして、このフューエルタンク12の外側を覆うように、本発明の実施形態に係るフューエルタンクガード100がフレーム10に取り付けられる。なお、フューエルタンクガード100は、フューエルタンク12を保護する目的で取り付けられる。
【0033】
図2に示すように、フューエルタンクガード100は、上部が開口した箱形状をしている。フューエルタンクガード100の上端部には、フレーム10(図1参照)に取り付けるためのフランジ152,154が形成されている。なお、フューエルタンクガード100は、板金をプレス成形して造られる。また、図4に示すように、フューエルタンク12の底面12Aに対して、フューエルタンク12の高さ方向に間隔をあけてフューエルタンクガード100の底部102が配置さている。(フューエルタンク12とフューエルタンクガード100との間には間隔があいている)。
【0034】
さて、図1から図4に示すように、フューエルタンク12の底面12Aを覆うフューエルタンクガード100の底部102には、軽量化などのため、複数の肉抜き孔104が形成されている。そして、この肉抜き孔104の一つが、燃料抜取用孔106となっている。
【0035】
図1から図3に示すように、フューエルタンクガード100の底部102には、フューエルタンクガード100の長手方向に沿ったリブ110が形成されている。
【0036】
また、図1、図3、図4に示すように、フューエルタンクガード100の底部102の、フューエルタンク12と反対側の外面102Aの、燃料抜取用孔106の周囲には、燃料抜取用孔106と同心円状に凹部120が形成されている。
【0037】
よって、図2、図4に示すように、フューエルタンクガード100の底部102の、フューエルタンク12側の内面102Bには、外面102Aの凹部120に対応した凸部122が形成される。つまり、フューエルタンクガード100の底部102の内面102Bの、燃料抜取用孔106の周囲には、燃料抜取用孔106と同心円状に凸部122が形成される。
【0038】
更に、図1から図4に示すように、フューエルタンクガード100の底部102の燃料抜取用孔106の縁には、フューエルタンク12と反対側に突出したガイド部124が形成されている。ガイド部124は、燃料抜取用孔106の全周に形成されている。
【0039】
なお、燃料抜取用孔106でない肉抜き孔104には、周囲に凹部120及び凸部122はなく、また、縁にガイド部124もない。
【0040】
つぎに、車両の解体処理におけるフューエルタンク12からの燃料の抜き取り作業について説明する。
【0041】
図1に示すように、燃料抜取用孔106の孔径より小さい径の、先端が尖ったタップネジ状の燃料抜取治具160を、フューエルタンクガード100の底部102の燃料抜取用孔106に差し込み、図5に示すように、フューエルタンク12の底面12Aに突き刺して孔14をあける。なお、専用の治具でなくても、ステップドリルやホールソーなどを燃料抜取治具として用いても良い。
【0042】
さて、このとき、燃料抜取用孔106の周囲には凹部120が形成されていると共に、燃料抜取用孔106の縁にはガイド部124が突出している(図1、図3も参照)。よって、他の肉抜き孔104に間違えて燃料抜取治具160を差し込んでしまうことはない。
【0043】
なお、フューエルタンク12内には、燃料ポンプ(図示略)や遮音用のバッフル(図示略)等が設けてある。燃料の抜き取りを良好に行なうためには、燃料ポンプやバッフル等を避けた位置となるように、フューエルタンク12の底面12Aの適切な位置に孔14をあける必要がある。
【0044】
よって、燃料抜取用孔106をこのような燃料ポンプやバッフル等を避けた適切な箇所とすることで、フューエルタンク12内の燃料ポンプやバッフル等と何ら干渉することなく、フューエルタンク12の底面12Aの適切な箇所に孔14をあけることができる。
【0045】
また、前述したように、凹部120とガイド部124が目印となるので、他の肉抜き孔104に間違えて燃料抜取治具160を差し込み、適切でないフューエルタンク12の底面12Aに孔14をあけてしまうことはない。
【0046】
なお、目印として燃料抜取用孔106の周囲に、例えば、シールや塗料などで印(しるし)をつけても、経年劣化や汚れ等によって認識しにくくなることがある。これに対し、凹部120及びガイド部124は、ほぼ永久に表示機能を維持することができる。
【0047】
図5に示すように、燃料抜取治具160は、フューエルタンク12の底面12Aに、突き刺した後に引き抜くことで、フューエルタンク12の孔14から燃料が流出する。流出した燃料は、燃料抜取用孔106から流れ落ち、受け皿等の回収容器(図示略)に回収される。
【0048】
このとき、フューエルタンク12とフューエルタンクガード100の底部102とは間隔があいているので、フューエルタンク12の孔14から流出した燃料の一部は、燃料抜取用孔106の周囲の内面102Bに当たる。内面102Bに当たった燃料は、燃料抜取用孔106の周囲に設けられた凸部122によって、これ以上、外側に流れることが防止される。そして、燃料抜取用孔106の縁から外側に向かって突出するガイド部124を燃料が伝って流れ落ちる。
【0049】
したがって、フューエルタンク12の孔14から流出した燃料が、フューエルタンクガード100の内面102Bに当たり、内面102Bを伝って流れてしまうことが防止される。よって、フューエルタンクガード100の底部102の他の肉抜き孔104からも燃料が流れ落ちたり、フューエルタンクガード100の中に溜まったりすることが防止される。また、ガイド部124を燃料が伝って流れ落ちるので、受け皿等の回収容器(図示略)に回収しやすい。
【0050】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0051】
今まで説明したように、自動車の解体処理において燃料の抜き取りを行う際、フューエルタンクガード100を外すことなく、しかも、凸部122及びガイド部124によって、燃料をもらすことなく、容易且つ確実に回収できる。
【0052】
しかも、凸部122及びガイド部124は、燃料抜取用孔106の全周に形成されているので、燃料抜取用孔106の周囲に当たった燃料が外側に流れることを、凸部122がより確実に防止すると共に、確実にガイド部124を伝って燃料が流れ落ちる。
【0053】
更に、ガイド部124と凸部122を形成するための凹部120とが目印となるので、作業者の熟練度に左右されることなく(他の肉抜き孔104と間違えることなく)、フューエルタンク12の底面12Aの適切な箇所に孔14をあけることができる。
【0054】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0055】
例えば、本実施形態では、フューエルタンクガード100の底部102には、凸部122とガイド部124の両方を設けていたが、いずれか一方のみを設けた構成であっても良い。
【0056】
また、例えば、上記実施形態では、燃料抜取用孔106は一つであったが、二つ以上であっても良い。
【0057】
また、例えば、上記実施形態では、フューエルタンクガード100は板金をプレス成形して造られていたが、これに限定されない。材質や製造方法は、どのようなものであっても良い。例えば、鋳造成形されたものであっても良いし、金属以外、例えば、樹脂成形品であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係るフューエルタンクガードが取り付けられる車両を下からみた分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフューエルタンクガードの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフューエルタンクガードの底部の外面の平面図である。
【図4】図3のA−A断面の図である。
【図5】図4の燃料抜取用孔付近の拡大図である。
【符号の説明】
【0059】
12 フューエルタンク
12A 底面
100 フューエルタンクガード
102 底部
102A 外面
104 肉抜き孔
106 燃料抜取用孔
120 凹部
122 凸部
124 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられているフューエルタンクの底面を覆うと共に、前記底面に対して前記フューエルタンク高さ方向に間隔をあけて配置された底部と、
前記底部に設けられた燃料抜取用孔と、
前記底部の前記燃料抜取用孔の周囲に設けられ、前記フューエルタンク側に突出する凸部と、
を備えることを特徴とするフューエルタンクガード。
【請求項2】
前記凸部は、前記燃料抜取用孔の全周に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフューエルタンクガード。
【請求項3】
前記底部は板金からなり、
前記底部の前記フューエルタンクと反対側の外面に凹部を形成することで、前記フューエルタンク側に突出する前記凸部を形成したことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のフューエルタンクガード。
【請求項4】
車両に取り付けられているフューエルタンクの底面を覆うと共に、前記底面に対して前記フューエルタンク高さ方向に間隔をあけて配置された底部と、
前記底部に設けられた燃料抜取用孔と、
前記底部の前記燃料抜取用孔の縁に設けられ、前記フューエルタンクと反対側に突出するガイド部と、
を備えることを特徴とするフューエルタンクガード。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記燃料抜取用孔の全周に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のフューエルタンクガード。
【請求項6】
前記底部には、複数の肉抜き孔が設けられ、
複数の前記肉抜き孔の一つ以上を、前記燃料抜取用孔とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフューエルタンクガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−276545(P2007−276545A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102386(P2006−102386)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】