説明

フュージョン遺伝子マイクロアレイ

本発明は、フュージョン遺伝子の遺伝子間のエクソンとエクソンの結合を認識する一つのキメラプローブと、各遺伝子当たり少なくとも2つのフュージョン遺伝子の各パートナー遺伝子内プローブを含む、マイクロアレイに関する。この発明は、さらにフュージョン遺伝子を検出するための方法と、フュージョン遺伝子の検出に適したキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
癌遺伝子は、転座、欠失、逆位などの染色体構造が再配列された結果作られる、フュージョン遺伝子をしばしば含んでいる。フュージョン遺伝子は、通常血液癌で発見される。現在までの所、 ゲノムコピー数の不均衡が多数検出されていることとは対照的に、フュージョン遺伝子が固形腫瘍と関連付けられて発見されるのはごくまれである。しかし最近の報告により、フュージョン遺伝子の転写物が固形腫瘍の増殖にも寄与していることが証明されている(Mitelman et al., 2007, Teixeira, 2006, Tomlins et al., 2005)。主な課題は、固形腫瘍におけるフュージョン遺伝子検出のための技術的限界であった。
【0002】
特定のフュージョン遺伝子の同定は、現在は血液癌といくつかの稀な固形腫瘍の種類を鑑別診断する、もしくは治療方針を決定するために、行われている。現状では、通常診断の研究室では臨床標本中のフュージョン遺伝子の検出のために、労力をかけて非効率的な解析がなされている。テストは通常、細胞抽出した染色体を解析するテスト(染色体分析–通常はGiemsa結束による)、及び/または、個々の新奇な転写物における、最も一般的な切断点を覆っている最も一般的なフュージョン遺伝子を抽出し、リアルタイムPCRを行うテストである。染色体分析のための中期染色体を得るためには、かなりの量の新鮮な組織物質を必要とし、また生細胞と分裂細胞を必要とする。
【0003】
この手法はまた、時間がかかる上に労働集約的であり、まだ約70%の成功率しか挙げていない。さらに染色体を視覚的に調べるためには経験豊富で有能な人材が必要であり、また低解像度で主観的な結果が得られてしまう。リアルタイムPCR法は集中的な手法であり、一度に、1つの又は数少ないフュージョン遺伝子候補に対し、既知のフュージョン切断点での分析を可能とする。この手法の主な限界は、ゲノム規模ではない故に、ネガティブな結果の検出に向いていない点である。
【背景技術】
【0004】
特定の結合部の配列を標的とするオリゴマイクロアレイを用いて、既知のフュージョン遺伝子を特定しようと試みている報告はいくつかある。これらはリアルタイムPCRによるプローブの増幅を含む前述の手順に依るものであり、既知ののフュージョン遺伝子と、その中の個々の結合部の配列という、小さな標的を抽出する。同様に、同じ遺伝子内のエクソン間の結合オリゴは、選択的スプライシングの検出に使用されてきた。
【0005】
Nasedkina et al., 2002によると、多重リアルタイムPCRの後、特定のフュージョン転写物を含むPCR生成物を同定するためのマイクロアレイを使用していた。それらのマイクロアレイは、4種類のよく知られたフュージョン遺伝子のそれぞれのうち、多くて2つまでのフュージョン変異体の検出のために、プローブを含有していた。PCR増幅は、特定のプライマーとの、ネスト化した2ラウンドの多重反応として行われた。従って、その方法およびマイクロアレイは、数少ない、既知の遺伝子のみとの結合を同定するために考案された。
【0006】
Nasedkina et al., 2003は、もう一つの追加フュージョン遺伝子を標的とするプローブを含有するために、上記の発見についてさらに範囲を広げて調べ、小児白血病の247例を検査した。繰り返すが、既知のフュージョン遺伝子、より具体的には小児白血病の臨床に関連するフュージョン遺伝子の同定だけを目指した。
【0007】
著者らは、彼らの手法は、Nasedkina et al., 2002, Nasedkina et al., 2003.の手法とは対照的に、定量的だと主張した。さらに、Shi et al., 2003は、1069ページにおいて、「10から20のプライマー対を用いる多重リアルタイムPCRは理想的であるが、我々の予備的なデータは、20以上のプライマー対を使った多重リアルタイムPCRを達成するには、かなりの分析最適化の努力が必要であると示した。しかしながら、不特定のPCR生成物とプライマー−ダイマーの生成が、プライマー数の増加とともに増えてしまう可能性が、プライマー対の最大数を制限してしまう。」と言及した。
【0008】
したがって、彼らは、必要なより高い分析処理能力が満たされないことを認識しており、40以上のフュージョン転写物を網羅するために、複数の多重リアルタイムPCRが、考案され得ることを提案している。
【0009】
さらに、1072ページで著者は、「いくつかの転座フュージョンスプライス結合部は、mRNAの3’poly(A)端から数千塩基離れており、逆転写酵素はフュージョンスプライス結合部に届く程に十分長いcDNAを生成することが出来ないため、マイクロアレイ単独の分析は、現段階では不可能である。」と言及している。言い換えれば、配列に特異的なリアルタイムPCRが、分析が機能するためには必要であり、それは翻って上記で述べた理由のために、手法のスループットを限定する。
【0010】
pre−mRNAスプライシングパターン分析の中でのオリゴマイクロアレイの使用は、例えばBingham et al., 2006 Johnson et al., 2003によって、過去に記載されている。
【0011】
US 2006/0084105は、選択された遺伝子のpre−mRNAスプライシングによって生成される、遺伝子生成物の検出のための、プローブのセットを含むマイクロアレイを記述している。このアレイは、64遺伝子内に372のスプライス結合を、含む。
【0012】
US 2006/012952とWO 03/014295も、pre−mRNAのスプライス変異の検出のためのマイクロアレイの使用に関連している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US 2006/012952
【特許文献2】WO 03/014295
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Mitelman et al., 2007, Teixeira, 2006, Tomlins et al., 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第一の側面は、フュージョン遺伝子のエクソン−エクソン結合部に対応するキメラプローブを含むマイクロアレイを提供する。
【0016】
本発明の第二の側面はフュージョン遺伝子を検出する方法に関し、本発明の第三の側面は本発明のマイクロアレイを備えたキットに関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一の側面は、フュージョン遺伝子のエクソン−エクソン結合部に対応するキメラプローブを含むマイクロアレイである。
【0018】
本発明のマイクロアレイは、特に、前記フュージョン遺伝子のフュージョン遺伝子パートナーの、遺伝子内プローブを少なくとも2つ更に含む。
【0019】
遺伝子内プローブを用いる利点は、偽陽性反応検出の可能性を減らす事である。遺伝子内プローブはエクソン遺伝子発現レベルのデータを提供し、潜在的なフュージョン遺伝子の潜在的パートナー遺伝子の、切断点候補の上流及び下流配列からの発現レベルを比較する事を可能とする。図1Cに示されるようにエクソン発現レベルが変化する点において、これは1つのフュージョン遺伝子が、パートナーである別のフェユージョン遺伝子に結合した点である。そのため、遺伝子プローブにより得られる結果を、キメラプローブで得られる結果を支持するために用いる事で、キメラのエクソンーエクソン結合プローブにより得られる偽陽性反応検出の可能性を減らす事ができる。
【0020】
遺伝子内プローブを用いる他の利点は、遺伝子プローブは過去に同定されなかったフュージョン遺伝子の存在を示すことができる点である。遺伝子内プローブは特に、フュージョン遺伝子のパートナー遺伝子における、エクソン内、エクソン−エクソン結合部、エクソン−イントロン結合部、及び、イントロンーエクソン結合部に対応している。このような遺伝子内プローブは、フュージョン遺伝子の、及び/又は、そのパートナー遺伝子の発現レベルを決定するために用いる事ができる。好ましい実施様態において、遺伝子内プローブは異なるスポット内で量や長さを変化させる事ができ、定量化と比較を可能とするために用いられる。
【0021】
好ましい実施様態において、この少なくとも2つの遺伝子内プローブは、フュージョン遺伝子の切断点の各側、つまりフュージョン遺伝子とそのパートナー遺伝子が結合する遺伝子内特定部位を、標的とする事ができる。
【0022】
本発明のマイクロアレイは、特に、少なくとも2つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも3つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも4つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも5つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも6つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも7つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも8つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも9つの遺伝子内プローブ、又は少なくとも10の遺伝子内プローブ、又は少なくとも20の遺伝子内プローブ、又は少なくとも30の遺伝子内プローブ、又は少なくとも40の遺伝子内プローブ、又は少なくとも50遺伝子内プローブ、又は少なくとも75の遺伝子内プローブ、又は少なくとも100の遺伝子内プローブ、又は少なくとも500の遺伝子内プローブ、又は少なくとも1,000の遺伝子内プローブを含む、マイクロアレイである。
【0023】
特に、本発明のマイクロアレイは、フュージョン遺伝子のフュージョン遺伝子パートナーに対応する、少なくとも二つの遺伝子内プローブを含む。本発明におけるマイクロアレイが1つ以上のフュージョン遺伝子を検出できるのであれば、前記マイクロアレイは、各フュージョン遺伝子に対応する異なる数の遺伝子内プローブを含む。例えば、前記マイクロアレイは、1つのフュージョン遺伝子の、両フュージョン遺伝子パートナーに対応する少なくとも2つの遺伝子内プローブを含み、別のフュージョン遺伝子の唯一のパートナーのための、少なくとも2つの遺伝子内プローブを含む。
【0024】
特に、本発明のマイクロアレイは、キメラプローブと、同じフュージョン遺伝子を標的とする、少なくとも2つの遺伝子内プローブを含む。特に本発明のマイクロアレイは、含まれているフュージョン遺伝子のそれぞれに対応する、少なくとも2つの遺伝子内プローブを含む。より詳細に、本研究のマイクロアレイは、含まれる各フュージョン遺伝子に対応する、少なくとも2つの遺伝子内プローブを含む。この文脈において、用語「含まれる」は前記マイクロアレイがキメラプローブを含む事により検出することが可能となることが意図されているフュージョン遺伝子又はそのパートナー遺伝子を意味するものである。
【0025】
本発明のある実施形態において、本発明のマイクロアレイは、含まれる各フュージョン遺伝子パートナーに対応する遺伝子内プローブを含む。特に本発明のマイクロアレイは、エクソン毎の3つの遺伝子内プローブ、及び、特にエクソンーエクソン結合を標的とした前記遺伝子プローブを含む。
【0026】
好ましくは、本マイクロアレイは、このマイクロアレイの個々のフュージョン遺伝子パートナーの全てのエクソン、エクソンーエクソン結合、エクソンーイントロン結合、及びイントロン−エクソン結合部に対応する、遺伝子内プローブを含む。
【0027】
より好ましくは、本マイクロアレイは、本マイクロアレイの個々のフュージョン遺伝子パートナーの、各エクソンに対応する、2つ、3つ、4つ、又は5つの遺伝子内プローブを含む。
【0028】
本明細書において使われている遺伝子内プローブは、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似物であって、配列に従って塩基対合できる。この遺伝子内プローブは、LNAモノマー(locked nucleic acid モノマー)、INAモノマー(intercalating nucleic acid モノマー)、又はPNAモノマー(peptide nucleic acid モノマー)等の、天然または非天然ヌクレオチドをからなる、又は含む。
【0029】
好ましくは、本発明のマイクロアレイは、1つ以上の、フュージョン遺伝子のパートナー遺伝子を標的とする遺伝子内プローブを含む。例えば、本発明のマイクロアレイは、少なくとも2つのフュージョン遺伝子、または少なくとも5つのフュージョン遺伝子、または少なくとも10のフュージョン遺伝子、または少なくとも20のフュージョン遺伝子、または少なくとも30のフュージョン遺伝子、または少なくとも50のフュージョン遺伝子、または少なくとも75のフュージョン遺伝子、または少なくとも100のフュージョン遺伝子、または少なくとも250のフュージョン遺伝子、または少なくとも500のフュージョン遺伝子、または少なくとも1,000のフュージョン遺伝子に対応する遺伝子内プローブを含む。そのため、好ましい実施形態において、本発明のマイクロアレイは、表1に記載の数多くのフュージョン遺伝子のための遺伝子内プローブを備え、フュージョン遺伝子は、少なくとも5つのフュージョン遺伝子、または少なくとも10のフュージョン遺伝子、または少なくとも20のフュージョン遺伝子、または少なくとも30のフュージョン遺伝子、または少なくとも40のフュージョン遺伝子、または少なくとも50のフュージョン遺伝子、または少なくとも75のフュージョン遺伝子、または少なくとも100のフュージョン遺伝子、または少なくとも150のフュージョン遺伝子、または少なくとも200のフュージョン遺伝子、または少なくとも250のフュージョン遺伝子、または少なくとも275のフュージョン遺伝子、または少なくとも316のフュージョン遺伝子から成る集まりから選ばれる。
【0030】
遺伝子内プローブは、mRNA、または二本鎖cDNAに交雑(ハイブリダイズ)するように配向したアンチセンスプローブか、又は、またはフュージョン遺伝子のcDNAに交雑するように配向したセンスプローブのいずれかである。そのため、本文に使用される「対応する」は、同じ配列、または相補配列のいずれかを指す。
【0031】
本マイクロアレイは、アンチセンスプローブとセンスプローブの両方を含む。つまり、本マイクロアレイは、cDNAとmRNAの両方と、又はPCR生成物の両鎖と、交雑する際に有用である。
【0032】
遺伝子内プローブは、エクソン配列に交雑できるプローブであって、またこのプローブは、遺伝子内結合部配列、つまりエクソン−エクソン結合部、エクソン−イントロン結合部、またはイントロン−エクソン結合部に交雑できる。遺伝子内プローブが遺伝子内結合部配列に対応する際、遺伝子内プローブは等温的に振る舞う事が好ましい。つまり結合部の両端に対応する遺伝子内結合配列プローブは、マイクロアレイで交雑を行う際の条件下で相補的DNA配列に交雑される際に、最大でもセ氏20度しか異ならない融点(Tm値)を持つように、長さが調節されている。他の実施形態において、Tm値は最大でもそれぞれ、セ氏40度、セ氏35度、セ氏30度、セ氏25度、セ氏15度、及びセ氏10度、しか異ならない。等温的なプローブは、マイクロアレイの全てのプローブ(オリゴヌクレオチド)に関して、好ましい交雑条件を与えられる事が望ましい。
【0033】
さらに、このような遺伝子内結合部配列プローブの第一部位と第二部位は、マイクロアレイで交雑を行う際の条件下で、最大でもTm値がセ氏10度しか異ならないように、長さを調節されていることが望ましい。他の実施形態において、Tm値は最大でもそれぞれ、セ氏16度、セ氏14度、セ氏12度、セ氏8度、セ氏6度、及びセ氏4度しか異ならない。
【0034】
プローブ、又はプローブの一部の持つTm値の調節は、下記に述べられるように、キメラのエクソン−エクソンプローブのとの関係を通して達成される。
【0035】
遺伝子内プローブのTm値は、好ましくは、セ氏45度以上、セ氏50度以上、セ氏55度以上、セ氏60度以上、セ氏65度以上、セ氏70度以上、及びセ氏75度以上のTm値の中から選ばれる。
【0036】
遺伝子内プローブの長さは、好ましくは、60ヌクレオチド以下、55ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、45ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、及び35ヌクレオチド以下の長さの中から選ばれる。
【0037】
本発明のマイクロアレイは特に、フュージョン遺伝子検出を目的としている。フュージョン遺伝子はあらゆるフュージョン遺伝子をも含む。好ましくは、少なくとも1つのフュージョン遺伝子パートナーは前述の検証されたフュージョン遺伝子の一部である。より好ましくは、フュージョン遺伝子は、以下に知られたフュージョン遺伝子の中から選ばれる。
【0038】
表1
フュージョン遺伝子、及びフュージョン遺伝子パートナーの316対のいずれに対応するアンサンブル(Ensembl)遺伝子ID
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【0039】
上記表1において、遺伝子Aはフュージョン遺伝子の上流パートナー遺伝子であり、遺伝子Bはフュージョン遺伝子の下流パートナー遺伝子である。
【0040】
本明細書におけるキメラプローブは、配列特異的な塩基対形成ができる核酸または核酸類似物であって、この核酸及び核酸類似物は、第一の遺伝子のエクソンに対応する第一配列と、第二の遺伝子のエクソンに対応する第二配列を含む。重要なことに、第一の遺伝子は第二の遺伝子と異なる。つまり、このプローブは遺伝子内エクソンーエクソン結合部(exon−to−exon junction)を含む(カバーする)。本文に使われるエクソン−エクソン結合部という言葉は、遺伝子内のエクソン−エクソン結合部を指している。キメラプローブは、LNAモノマー(locked nucleic acid モノマー)、INAモノマー(intercalating nucleic acid モノマー)、又はPNAモノマー(peptide nucleic acid モノマー)等の、非天然ヌクレオチドからなるか、又はこれを含む。
【0041】
本明細書におけるフュージョン遺伝子という言葉は、2つの異なる遺伝子が1つになることをもたらす、染色体転座、欠失、逆位などの、ゲノム異常の結果を指す。つまり、フュージョン遺伝子は、少なくとも1つのフュージョン遺伝子の上流パートナー遺伝子のエクソンと、少なくとも1つのフュージョン遺伝子の下流パートナー遺伝子のエクソンを含む。
【0042】
本明細書において、フュージョン遺伝子という言葉は、実験的には検証されていない、仮説上のフュージョン遺伝子をも含む。
【0043】
例えばHahn et al, 2004は、このような潜在的なフュージョン遺伝子を同定するためのバイオインフォマティクスによる方法を記述している。本発明により検出されるフュージョン遺伝子は、Hahn et al, 2004により記述される方法、又は潜在的フュージョン遺伝子を同定できる他の方法を用いて同定されるフュージョン遺伝子候補であろうと予想される。
【0044】
本明細書において用いられるフュージョン遺伝子パートナーは、少なくとも1つのエクソンをフュージョン遺伝子に提供する遺伝子を指す。上流フュージョン遺伝子パートナーのエクソンは、フュージョン遺伝子転写物の中の他のフュージョン遺伝子パートナーの上流部に配置され、また逆も同様である。
【0045】
本発明において特に、過去に癌を示唆したとされているフュージョン遺伝子パートナー、及びフュージョン遺伝子が、注目される。表1は、フュージョン遺伝子の上流フュージョン遺伝子パートナーである遺伝子Aに対して好ましいフュージョン遺伝子を、フュージョン遺伝子の下流フュージョン遺伝子パートナーである遺伝子Bに対して好ましいフュージョン遺伝子を列記したものである。
【0046】
フュージョン遺伝子の大部分は、フュージョン遺伝子を作るためにイントロン部位において結合され( Novo et al., 2007)、pre−mRNAフュージョン転写物のスプライシングは、フュージョン転写物の中に遺伝子内エクソン−エクソン結合部を作るエクソンを接続する。
【0047】
仮説上の遺伝子内エクソン−エクソン結合部は、仮説上のフュージョン遺伝子の2つのフュージョン遺伝子パートナーのエクソンーイントロン構造が分かっている時、予想できる。潜在的フュージョン遺伝子パートなのエクソンは、www.Biomart.orgのような様々なインターネット上のゲノムデータベースより探す事ができる。
【0048】
好ましい実施様態において、本発明のマイクロアレイは、フュージョン遺伝子の存在し得るエクソン−エクソン結合部の、少なくとも20%に対応するキメラプローブを含む。
【0049】
他の好ましい実施様態において、本発明のマイクロアレイは、存在し得るエクソン−エクソン結合部の、少なくとも30%の、又は少なくとも40%の、又は少なくとも50%の、又は少なくとも60%の、又は少なくとも70%の、又は少なくとも80%の、又は少なくとも90%に対応するキメラプローブを含む。
【0050】
さらに他の実施様態において、本発明のマイクロアレイは、同じ、又は異なるフュージョン遺伝子の、少なくとも20のエクソン−エクソン結合部に対応するキメラプローブを含む。
【0051】
さらに他の実施形態において、本発明のマイクロアレイは、同じ又は異なる、少なくとも30のフュージョン遺伝子の、又は少なくとも40のエクソン−エクソン結合部に、又は少なくとも50のエクソン−エクソン結合部に、又は少なくとも60のエクソン−エクソン結合部に、又は少なくとも70のエクソン−エクソン結合部に、又は少なくとも80のエクソン−エクソン結合部に、又は少なくとも100のエクソン−エクソン結合部に、対応するキメラプローブを含む。
【0052】
本発明者らは、既知のエクソン−エクソン結合部をもって、過去に分析された(実験的に検証された)フュージョン遺伝子を試験するだけでは十分では無い事を認識し、特定のフュージョン遺伝子の存在し得る全てのエクソン−エクソン結合部を試験する事が望ましい事を認識している。非常に良くある事に、エクソン−エクソン結合部の正確な位置は、フュージョン遺伝が発癌性であるかどうか、そうでなければ癌に関係するか予兆しているか、又は他の状況であるかを決定する際の、決定的因では無い場合がある。
【0053】
例えば、新しく同定された乳癌(Tomlins et al., 2005)に見られるTMPRSS2−ERGフュージョン遺伝子において、フュージョン転写物は既に、TMPRSS2の1、2、3、4及び5のエクソンの後の、ERGの2、3、4、5、及び6の前のエクソン結合によって、多数の異なる組み合わせに決定されている。このため、最も支配的な、1つ又は数少ない結合がかなりの確率で誤った陰性結果を生む。この特定のフュージョン遺伝子はまた、比較的小さな染色体の部分の欠失によって生成されるフュージョン遺伝子(3メガ塩基対)で、追従的な2つのフュージョン遺伝子パートナーを結合するフュージョン遺伝子の、一例である。
【0054】
発癌性は単にフュージョン遺伝子の下流部が過剰発現する事に起因している。そのため、本発明の1つの長所は、1つの又は数少ない既知のエクソン−エクソン結合部に依る検出ではなく、寄与するフュージョン遺伝子の存在し得る全てのエクソン−エクソン結合部を検出できる点にある。
【0055】
本発明の他の長所は、背景の欄に記述された染色体分析とは異なり、新鮮な細胞を必要としない点である。さらに、マイクロアレイ分析の結果を読み取る事は、高度に訓練された人材を必要とする染色体分析の結果を読み取る事より容易である。原則的に、マイクロアレイ上の1組の遺伝子内エクソン−エクソン結合部プローブは、フュージョン遺伝子転写物に存在するエクソン−エクソン結合部に対応する、一ヶ所での強いシグナルを生み出す。
【0056】
さらに、細胞遺伝学的な取り組みとは対照的に、生物標本である全ての細胞からのRNAを計測するため、本発明において細胞を選択する際のリスクは生じない。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明のマイクロアレイは、それぞれの存在し得るフュージョン遺伝子のエクソン−エクソン結合部に対応する、キメラプローブを含む。
【0058】
好ましくは、本発明のマイクロアレイは、1つ以上のフュージョン遺伝子に対応するキメラプローブを含む。例えば、本発明のマイクロアレイはキメラプローブを備え、キメラプローブは、少なくとも2つのフュージョン遺伝子、又は少なくとも5つのフュージョン遺伝子、又は少なくとも10のフュージョン遺伝子、又は少なくとも20のフュージョン遺伝子、又は少なくと30のフュージョン遺伝子、又は少なくとも50のフュージョン遺伝子、又は少なくとも75のフュージョン遺伝子、又は少なくとも100のフュージョン遺伝子、又は少なくとも250のフュージョン遺伝子、又は少なくとも500のフュージョン遺伝子、又は少なくとも1,000のフュージョン遺伝子に、対応している。そのため、好ましい実施様態において、本発明のマイクロアレイは、表1に記載の数多くのフュージョン遺伝子に対応するキメラプローブを備え、キメラプローブは、少なくとも1つのフュージョン遺伝子、又は少なくとも5つのフュージョン遺伝子、又は少なくとも10のフュージョン遺伝子、又は少なくとも20のフュージョン遺伝子、又は少なくとも30のフュージョン遺伝子、又は少なくとも40のフュージョン遺伝子、又は少なくとも50のフュージョン遺伝子、又は少なくとも七75のフュージョン遺伝子、又は少なくとも100のフュージョン遺伝子、又は少なくとも150のフュージョン遺伝子、又は少なくとも200のフュージョン遺伝子、又は少なくとも250のフュージョン遺伝子、又は少なくとも275のフュージョン遺伝子、又は少なくとも316のフュージョン遺伝子からなる群から、選ばれる。
【0059】
更により好ましい実施様態において、本発明のマイクロアレイは、表1に記載の数多くのフュージョン遺伝子における、存在し得る全ての遺伝子内エクソンーエクソン結合部に対応する、キメラプローブを備え、キメラプローブは、少なくとも5つのフュージョン遺伝子、又は少なくとも10のフュージョン遺伝子、又は少なくとも20のフュージョン遺伝子、又は少なくとも30のフュージョン遺伝子、又は少なくとも40のフュージョン遺伝子、又は少なくとも50のフュージョン遺伝子、又は少なくとも75のフュージョン遺伝子、又は少なくとも100のフュージョン遺伝子、又は少なくとも150のフュージョン遺伝子、又は少なくとも200のフュージョン遺伝子、又は少なくとも250のフュージョン遺伝子、又は少なくとも275のフュージョン遺伝子、又は少なくとも316のフュージョン遺伝子からなる群から、選ばれる。
【0060】
最も好ましくは、本発明のマイクロアレイは、表1に記載の全てのフュージョン遺伝子における、存在し得る全てのエクソン−エクソン結合部に対応する、キメラプローブを含むものである。さらに好ましいものは、本発明のマイクロアレイが、キメラプローブと表1に示されるすべてのフュージョン遺伝子についての少なくとも2つの遺伝子内プローブを有するものである。このようなマイクロアレイはあらゆる標本内のフュージョン遺伝子を同定する際に有用であり、またマイクロアレイは、例えば患者病歴や癌の性質に基づくような、特定のフュージョン遺伝子に対応する体内動態に関する予備知識を必要としない。
【0061】
本マイクロアレイにおけるキメラプローブの配列は、第一部位と第二部位を備え、そのうち第一部位は上流フュージョン遺伝子のエクソン遺伝子3’端に一致し、第二部位は下流フュージョン遺伝子のエクソン遺伝子の5’端に一致しており、そのうち前記キメラプローブは、mRNAまたは二本鎖cDNAに交雑するように配向したアンチセンスプローブ、又はフュージョン遺伝子の二本鎖cDNAに交雑するように配向したセンスプローブのいずれかである。そのため、本文に用いられる「一致する」という言葉は、同一配列又は相補配列のいずれかを指す。
【0062】
本発明のマイクロアレイは、それぞれのエクソンーエクソン結合部に対応するアンチセンス及びセンスプローブを含む。すなわち、本発明のマイクロアレイは、cDNA及びmRNA、またはPCR生成物の両鎖と交雑させる際に有用である。
【0063】
好ましくは、キメラプローブは等温的に振る舞う、つまりキメラプローブは、マイクロアレイで交雑を行う際の条件下で、相補的DNA配列に交雑される際に、最大でもセ氏20度しか異ならない融点(Tm値)を持つように、長さが調節されている。他の実施様態において、Tm値は最大でもそれぞれ、セ氏40度、セ氏35度、セ氏30度、セ氏25度、セ氏15度、及びセ氏10度、しか異ならない。等温的なプローブは、マイクロアレイの全てのプローブ(オリゴヌクレオチド)に関して、好ましい交雑条件を与えられる事が望ましい。
【0064】
さらに、キメラプローブの第一部位及び第二部位は、マイクロアレイで交雑を行う際の条件下において、最大でもセ氏10度しか異ならない融点(Tm値)を持つように、長さが調節されていることが望ましい。他の実施様態において、Tm値は最大でもそれぞれ、セ氏16度、セ氏14度、セ氏12度、セ氏8度、セ氏6度、及びセ氏4度しか異ならない。
【0065】
プローブまたはプローブ部位のTm値は、プローブまたはプローブ部位のヌクレオチド配列内の、グアニン及びシトシンの占める長さ及び割合に依ってTm値が決まる事を用いて調整できる。キメラプローブはセ氏68度のTm値を持つべきである。最初に、一つ目及び第二部位の10ヌクレオチドのキメラプローブの持つTm値が使われる。もしこのプローブのTm値がセ氏68度以下の場合、バランス取りつつヌクレオチドが一つ目及び第二部位に足され、キメラプローブの全体的なTm値は約セ氏68度となる。そのため、第一部位が第二部位よりも多くのA、T、Uに構成される場合、より多くのヌクレオチドが第一部位に足される。この手順は、オリゴを設計するアルゴリズムを使って、実行される。
【0066】
好ましい本発明の実施様態において、キメラプローブのTm値は交雑時の温度よりも高く、キメラプローブの上流、又は/及び下流部の持つTm値は交雑時の温度よりも低い。
【0067】
キメラプローブのTm値は、好ましくは、セ氏45度以上、セ氏50度以上、セ氏55度以上、セ氏60度以上、セ氏65度以上、セ氏70度以上、及びセ氏75度以上のTm値の中から選ばれる。
【0068】
キメラプローブの長さは、好ましくは、60ヌクレオチド以下、55ヌクレオチド以下、50ヌクレオチド以下、45ヌクレオチド以下、40ヌクレオチド以下、及び35ヌクレオチド以下の長さの中から選ばれる。
【0069】
他の好ましい実施様態において、マイクロアレイはさらに、エクソン−エクソン結合部の一塩基多型(single nucleotide polymorphic, SNP)の変異を検出するキメラプローブを含む。このようなSNPは、表1に記載の全てのフュージョン遺伝子パートナーに関して、ゲノムデータベース(www.Biomart.orgような)より探す事ができる。
【0070】
本発明のマイクロアレイは、アジレント(Agilent)、イルミナ(Illumina)及びニンベルンゲン(Nimblegen)といった複数の製造者から購入する事ができる。マイクロアレイ上の陽性シグナルは、直接又は間接的に標本内のmRNA又はcDNAのヌクレオチドを標識する事で得られる、蛍光又は化学発光を測定して、検出するのが典型である。
【0071】
プローブ又はオリゴを準備する方法、及びこのようなプローブをマイクロアレイに用いる方法は、技術的に習熟した者には良く知られている。
【0072】
エクソンーエクソン結合部プローブの評点は比較的容易である。これは、何千ものスポットの大半が陰性であり、エクソンーエクソン結合部プローブに陽性である際にのみ、顕著な陽性シグナルが生み出されるためである。キメラプローブからの陽性シグナルを生むフュージョン遺伝子の存在は、対応している、2つのフュージョン遺伝子パートナーの遺伝子内プローブにより作られる規格化した時系列発現レベルの変化により、支持される。
【0073】
標本、特に未知のフュージョン遺伝子が存在する標本のデータ分析を容易にするために、「フュージョン評点」は存在し得る全てのイントロンの切断点のそれぞれに対して算出される。2つのこのようなフュージョン評点は、それぞれのキメラプローブに対しても算出できる。これらは、遺伝子内プローブによって得られる値、つまり、上流、または下流フュージョン遺伝子パートナーのいずれかから各々得られる時系列分析結果と、キメラプローブより得られる値とを組み合わせる。前記フュージョン評点は、次の式を用いて算出される。
【0074】
フュージョン評点 = キメラ結合評点*P(転写項)*P(エクソン項)
【0075】
キメラプローブ評点は、キメラプローブのシグナルを規格化した値であり、P(転写項)は、フュージョン遺伝子パートナーのエクソンの発現値が、予想されるフュージョン切断点の前後の別々の母集団に由来する確率であり、P(エクソン項)は、フュージョン遺伝子パートナーに非常に近い上流及び下流エクソンの、エクソン発現値が、別々の母集団に由来する確率である。本文にある「別々の母集団」という言葉は、同一の遺伝子だが、その遺伝子は異なる遺伝子に結合しているために、前記遺伝子の個々のエクソンの発現レベルに差を作る遺伝子を指す。
【0076】
P(転写項)とP(エクソン項)は、tテストに基づき算出され、tテストは、存在し得るフュージョン切断点の上流及び下流部における遺伝子内発現値を比べ、また、時系列分析結果が寄与の位置に切断点がある事を示すかどうかを調べるものである。
【0077】
フュージョン評点の算出は、寄与のエクソンーエクソン結合部におけるフュージョン結合部が起こる確率に対する値を読み取る簡単な方法を提供し、そのため非専門家による結果の分析及び読み取りを可能にする。値を一定内に収めるため、次の閾値が採用されうる。キメラプローブに対する規格化された値が10より大きい時、これらの値は10に設定される。同様に、時系列分析結果において切断点の確率が0.1より低い時、これらの値は0.10に設定される。下流フュージョン遺伝子パートナーのエクソンからの値が、下流フュージョン遺伝子パートナーのエクソンからの値よりも低い時、この確率は0.10に設定される。
【0078】
本発明の第二の側面は、フュージョン遺伝子を検出する方法であって、この方法は
a.標本を提供し、
b.RNAを標本から分離し、
c.本発明のマイクロアレイを用いて、標本からmRNAのエクソンーエクソン結合部を検出し、
d.それにより、標本内のフュージョン遺伝子を同定する
工程を含む。
【0079】
本発明の一つの実施形態において、本方法はさらに、本発明のマイクロアレイを用いてフュージョン遺伝子のフュージョン遺伝子パートナーの発現レベルを検出する段階に構成される。典型的に、上記方法のc工程において実行され、つまり 本発明のマイクロアレイを用い、mRNAのエクソンーエクソン結合部が標本から検出される際に、実行される。
【0080】
そのため、特定の実施形態において、工程cは
c.フュージョン遺伝子の遺伝子内エクソンーエクソン結合部に対応するキメラプローブを含むマイクロアレイ、及び前記フュージョン遺伝子のフュージョン遺伝子パートナーに対応する少なくとも2つの遺伝子内プローブを含むマイクロアレイを用いて、標本からmRNAのエクソンーエクソン結合部を検出する、となりうる。
【0081】
さらなる工程cの実施形態において、キメラプローブ、及び少なくとも2つの遺伝子内プローブは個々のマイクロアレイ内に存在し、又は、同じマイクロアレイ内に存在する。
【0082】
本発明の方法は、さらに、本発明のマイクロアレイを用い、キメラプローブにより検出されるフュージョン遺伝子のエクソンーエクソン結合と、遺伝子内プローブにより検出されるエクソンーエクソン結合とを比較する工程を含んでもよい。
【0083】
本発明の方法の工程cにおいて、マイクロアレイから画像を計測する際、陽性フュージョン遺伝子は以下を観察する事により、スコアリングされる
【0084】
1.キメラフュージョン遺伝子プローブに対応する強い明暗度は、特定のフュージョン遺伝子の存在を、フィージョン転写物内の特定のキメラのエクソンーエクソン結合の存在と共に、示唆する。
【0085】
2.加えて、1つ又は2つのフュージョン遺伝子パートナーに対する転写物の、上流及び下流部の一般的な遺伝子発現レベルの間に、遺伝子内プローブから差を見いだす事ができる。典型的に、例えばエクソン毎に3つ存在するエクソン内プローブ(オリゴ)及びエクソンーエクソン結合部プローブ(オリゴ)を含むような、含まれる各フュージョン遺伝子パートナーに対応する遺伝子内プローブ(時系列プローブまたはオリゴとも呼ばれる)が存在する。典型的に、これらの転写物の5’端より3’端へと1つ動く際、上流フュージョン遺伝子パートナー(遺伝子A)における発現レベルの減少と、下流フュージョン遺伝子パートナー(遺伝子B)における発現レベルのシグナルの増加が見られる。これらの規格化された発現レベルの増減は、遺伝子内の、位置1に記述されている陽性遺伝子内/キメラ結合プローブ(オリゴ)に対応する位置において、起こるはずである。
【0086】
3.さらに、上記に記述されるそれぞれのキメラプローブに対して、「フュージョン評点」が算出される。このフュージョン評点は、キメラフュージョン遺伝子プローブ及び遺伝子内プローブの評点を組み合わせて得られる。このフュージョン評点は、フュージョン遺伝子転写物内に、特定のエクソンーエクソン結合が現れる可能性を、容易に表現する方法を提供する。
【0087】
フュージョン転写物と共にあるRNA標本において、1及び2の組み合わせが見られる(図1、図3に描写)。しかし、1及び3、2及び3又は1、2及び3、の組み合わせも本発明の想定内である。
【0088】
本方法においては、工程bにおいてオリゴ−dTプライミング、又は、ヘキサマーのようなランダムなプライマーを用いて、cDNAをRNAから用意する。この実施様態において、エクソンーエクソン結合は、cDNAレベルに従って検出される。
【0089】
本発明の方法は、標本の標識も含む。mRNAまたはcDNAを標識する方法は、技術的に熟練した者には良く知られており、実施例2に記述されるように、Cy3及び/又はCy5により修飾されたdNTPをcDNAに含ませる事でcDNA標識を標識する方法を含む。
【0090】
典型的に、本方法の工程cにおいて、エクソンーエクソン結合部の検出は、標本からマイクロアレイへ移す中で得られるmRNA又はcDNAを交雑させる事により、なされる。
【0091】
標本は、例えば癌の疑いのある患者から得られる血液や骨の髄といった、あらゆる生体物質である。他の標本の例は、固体腫瘍から得られる組織である。
本発明の特定の長所は、またはフュージョン遺伝子の検出の前の工程bにおいて得られる、 RNA上のリアルタイムPCRまたはcDNA上のPCRをせずに、実行できる事である。
【0092】
本発明の三つ目の側面は、本発明のマイクロアレイと、cDNA合成のためのランダムなプライマー及び/またはcDNA合成のためのオリゴdTプライマーを含む、キットである。好ましくは、このキットはさらに逆転写酵素とcDNA合成に必要な試薬を含む。
【0093】
特定の実施様態において、キットは、フュージョン遺伝子の遺伝子内エクソンーエクソン 結合部に対応するキメラプローブを含むマイクロアレイを備え、マイクロアレイはフュージョン遺伝子パートナーに対応する少なくとも二つの遺伝子内プローブと、cDNA合成のためのランダムなプライマー、及び/又はcDNA合成のためのオリゴdTプライマーを含む。
【0094】
キメラプローブと、キットの少なくとも2つの遺伝子内プローブは、個々のマイクロアレイ上に存在し、または同じマイクロアレイ上に存在する。
【実施例1】
【0095】
結合部プローブ(オリゴ)とマイクロアレイの作製
【0096】
結合プローブ(オリゴ)生成のために、我々は、公開ゲノムデータを自動的に処理する(プログラミング言語Pythonで書かれた)コンピュータースクリプトを作った。全ての遺伝子とその遺伝子の全ての転写物に対して、エクソン配列を検索した。我々は、インターネットのポータルサイトであるwww.Biomart.orgを使用した。それぞれのフュージョン遺伝子の組み合わせに対して、すべてのGeneAエクソンの終了配列(最後の30ヌクレオチド)とすべてのGeneBエクソンの開始配列について、全ての組み合わせを求めた。
【0097】
この方法で、275のフュージョン遺伝子に対応する47,427の結合プローブ(オリゴ)を設計した。
【0098】
感度と特異度を高めるために、遺伝子内のプローブ(ロンギチューディナルオリゴ)も設計された。これらは、個々のフュージョン遺伝子パートナーに対応する転写物を用いて、発現レベルを測定するプローブ(オリゴ)のセットである。
【0099】
それぞれのエクソン配列に対し、開始、中間、終了時点を標的とした3つのプローブ(オリゴ)が生成され、遺伝子内のエクソン−エクソン結合部を標的としたプローブも生成された。エクソン−イントロン結合とイントロン−エクソン結合も含まれていた。なぜなら、pre−mRNAの処理機構が、シス作用スプライシングの制御配列の除去や導入にともなって、スプライシングパターンを変化させる可能性があるためである。
【0100】
ハーフバインダー効果を減少させるために、我々のプロトタイプで使用されるプローブ(オリゴ)の長さはかなり短く(34−40mers)、我々は、結合部の各側が等しい融解温度を持つようにプローブを構築した。結合部の両側においてプローブの配列が短いため、一塩基多型(SNP)に対する感度が高い可能性がある。そのため、既知のSNPの位置において、我々は、それぞれのSNPの変異を捉える追加のプローブ集合を作った。また、より長いプローブ(オリゴ)(44−55mers)を使って2種類目のアレイを作製した。上述されたマイクロアレイは、275の既知のフュージョン遺伝子の存在し得るす全ての結合配列を標的とするキメラプローブ(オリゴ)と、また、100の遺伝子に対応する遺伝子内プローブ(時系列オリゴ)も含んで生成された。陽性対照のフュージョン遺伝子として含まれている、7つのフュージョン遺伝子に対応し、キメラのプローブ(オリゴ)は、4重に含まれる。それらの全てのフュージョン遺伝子パートナーはまた、遺伝子内プローブ(オリゴ)を対応させた、100の遺伝子に含まれる。結局、試験的なフュージョン遺伝子マイクロアレイは、Nimblegenマイクロアレイスライド上に合成された69,729プローブの設計を、含んでいた。そして、このNimblegenマイクロアレイスライドは、現在ではマイクロアレイ毎に210万の異なるオリゴ配列を含むことができる。
【実施例2】
【0101】
活動中のマイクロアレイ
原理を証明する実験では、1つのフュージョン遺伝子それぞれの既知の存在と共に、陽性対照の標本セットを分析した。試験的標本は、TMPRSS2:ERGフュージョン遺伝子に対して陽性である4つの前立腺癌組織の標本と、TCF3:PBX1とETV6:RUNX1フュージョン遺伝子の中の一つを持つことで知られる、2つの球性白血病細胞を含んでいた。
【0102】
試験的標本は、全体のRNAはキアゲン(Qiagen)のスピンカラムを使用して分離した。さらに、それらをmRNAのインビトロジェン(Invitrogen)社製リボソームのRNAの減数キット(RiboMinusTM Transcriptome Isolation Kit)で濃縮した。これらから、ランダムなプライマー(六量体)を用いて第一鎖のcDNAを合成し、また二本鎖のcDNAを作成し、ラベリング、洗浄、そしてマイクロアレイのスキャンのためにニンブレゲン(Nimblegen)社に送った。cDNAは、Cy3とCy5を修飾したdNTPを含有することで標識された。
【0103】
結果
陽性対照遺伝子の測定値を視覚化するために、我々は、いずれかのキメラプローブのセット、または遺伝子内(時系列)プローブセットを使用して、2つの独立した方法を辿った。全ての6つの標本は、フュージョン遺伝子の明確なパターンを備えていて、従ってコンセプトを有効化している。
【0104】
寄与のフュージョン遺伝子の変化を評価するために、モデルとして前立腺癌の中のTMPRSS2:ERGフュージョン遺伝子を使用した。ここでは、4つの個々の腫瘍から悪性前立腺の組織標本を分析した。図2は、これらの標本のうち、1つから得られた結果を示している。図2の左端の写真は、キメラのエクソン−エクソンプローブとの交雑から得られた結果を示している。TMPRSS2とERG遺伝子の個々のエクソンは、それぞれX軸とY軸に沿って描かれ、キメラのエクソン−エクソンプローブに交雑された標本量は、陰影密度によって視覚化される。この写真からは、TMPRSS2エクソン1とERGエクソン4に対応するキメラプローブは高い密度を有することが見受けられる。これは、標本素材の中でTMPRSS2のエクソン1とERGエクソン4の間に融合されたTMPRSS2:ERGの存在を示している。図2の右端のグラフは、遺伝子内ERGプローブによって検出された時のERG遺伝子の個々のエクソンの発現レベルを示している。このグラフからも分かるように、エクソン1から3の平均発現レベルは、エクソン4から11よりも低く、ERG遺伝子がフュージョン遺伝子として発現することと、遺伝子のエクソン4から11だけがフュージョン転写物の中に含まれていることを示している。したがって、キメラと遺伝子内プローブによって得られた結果は一致し、結果を組み合わせる事で、前立腺癌の標本がTMPRSS2:ERG遺伝子を備え、TMPRSS2:ERG遺伝子において、フュージョン結合はTMPRSS2のエクソン1とERGのエクソン4の間に位置している、という強力な証拠をもたらす。cDNAの配列によって、我々はまた、ヌクレオチドのレベル(データは示されていない)で、この正確なフュージョン結合部を確認している。
【0105】
図2から分かるように、キメラプローブで得られた結果もまた、より弱くはあるが、TMPRSS2エキソン1とERGエキソン4以外のスポットで信号強度を有している。これらは例えば、TMPRSS2エクソンからERGエクソンの信号強度や、TMPRSS2エキソン2からエルグエクソン2への信号強度である。しかし、これらのフュージョン結合部候補が、ERGの時系列分析結果に反映されていないことが分かる。したがってこれは、遺伝子内プローブ(オリゴ)の含有が、どのように偽陽性の得点の可能性を低減するかを明らかにしている。
【0106】
図3は得られた結果を示しており、そのデータは、図2に関して述べられているデータと類似している。TCF3とPBX1に対応する遺伝子内プローブがもたらす結果は、図の左下および右下のグラフで示されており、キメラプローブで得られた結果は、一番上の画像に示されている。上流または下流フュージョン遺伝子パートナー(左下および右下のグラフ)のエクソンの数に従って、それらの強度をプロットすることにより、我々はキメラのエクソン−エクソンプローブ(一番上の画像)によって得られた画像と同じ画像を得られる。(遺伝子内プローブで得られた)時系列分析データは、キメラプローブによって検出された、同じフュージョン切断点の存在を裏づける。すなわち、この細胞株の中のTCF3:PBX1フュージョン遺伝子は、PBX1の4−8と結合するするTCF3のエクソン1−15を含む。さらに、この細胞株から連鎖しているcDNAは、フュージョン遺伝子マイクロアレイによって決定されたフュージョン転写物の切断点が、単一ヌクレオチドのレベルまで正しかったということを証明した。
【0107】
RUNX1はヒト白血病における染色体再配列の中で、最も頻繁に見られる標的の1つである。これまで、RUNX1を含む21種類の転座が報告されており、12のパートナー遺伝子は、クローン化され識別されている(14)。ここで分析されている標本の1つであるREH細胞株に、ETV6:RUNX1フュージョン遺伝子を導入した。これは、TMPRSS2:ERGとTCF:PBX1遺伝子に対して上記で述べられたように、キメラのエクソン−エクソンプローブと、ETV6遺伝子のエクソンを標的にする遺伝子内プローブを用いることによって、検出された。そのデータは、REH細胞株がETV6:RUNX1フュージョン遺伝子を備え、フュージョン遺伝子において、ETV6遺伝子のエクソン5の末端がRUNX1遺伝子のエクソン2の開始端と結合されることを示した。
【0108】
フュージョン遺伝子の存在や識別に関する前知識なしでフュージョン遺伝子を検出する我々の能力を決定するために、我々はまた、恣意の入らないデータ分析を実施した。
この中では、フュージョン事象の確率は、全ての潜在的なフュージョン遺伝子の結合部において算出された。これらの分析において、キメラプローブの値を規格化した値から算出したフュージョン評点は、時系列分析データから見られるように、上流または下流フュージョン遺伝子パートナーでのフュージョン切断点の確率と共に増加する。フュージョンパートナー遺伝子の時系列データにおける、各エクソン−エクソン結合について、2つの確率が計算される。転写物項の確率はtテストの基づいており、tテストは、全ての上流エクソン及び下流エクソンからの値が、別々のの母集団に由来する可能性が高いかどうかを判断する。エクソン項の確率はtテストに基づいており、tテストは、直近の上流エクソンまたは下流エクソンからの値が、別々の母集団に由来する可能性が高いかどうかを判断する。
各キメラ結合プローブのために、このような2つのフュージョン評点が算出された。これらは、キメラプローブ(オリゴ)による値と、上流または下流のいずれかのフュージョン遺伝子パートナーの時系列分析結果の値を、組み合わせた。
【0109】
[融合スコア=キメラ結合スコア*P(転写項)*P(エクソン項)]
【0110】
図2と図3で見られる両方の標本において、有効なフュージョン事象は、試験データの中で検証された10,297のフュージョン転写物候補の中で、最も高いフュージョン評点を有した。
【0111】
値を一定内に維持するために、次の閾値を適用した。キメラプローブの規格化した値が10より大きい時、これらは10に設定された。同様に時系列分析結果において、分断点に対する確率が0.10より小さい時、これらの値は0.10に設定された。下流のフュージョン遺伝子のパートナーエクソンが、上流のフュージョン遺伝子のパートナーエクソンよりも低い時、確率も同様に0.10に設定された。
【0112】
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【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】フュージョン遺伝子検出におけるマイクロアレイのデータパターンA) この例に描かれたフュージョン遺伝子は、遺伝子A内のイントロン2と遺伝子B内のイントロン3の間に、交差事象を有する。遺伝子内のエクソン−エクソン結合部のプローブ(A2−B4、オリゴ)は、フュージョン転写物を検出する。B) もし遺伝子A及び遺伝子Bが共に10のエクソンを有するのであれば、本マイクロアレイは10x10=100のプローブ(オリゴ)により、各フュージョン遺伝子に対応する全てのエクソンーエクソン結合の組み合わせを満たす。A2−B4プローブ(オリゴ)はA部よりフュージョン転写物を検出する。 C) 各エクソン、及びエクソン−エクソン結合部に対応する遺伝子内プローブからの時系列分析結果は、フュージョン事象を確実に支持する。
【図2】TMPRSS2:ERG遺伝子が構成する乳癌標本におけるマイクロアレイのデータパターン最も左の図はキメラのエクソンーエクソン結合プローブにより得られる結果を示す。図の中の、X軸はTMPRSS2遺伝子の夫々のエクソンを示し、Y軸はERG遺伝子の夫々のエクソンを示している。そのため最も左の図は、TMPRSS2遺伝子のエクソン1とERG遺伝子のエクソン2との間のフュージョン遺伝子転写物に対応する、キメラのエクソンーエクソン結合プローブが強いシグナルを生成している事を示している。最も右の図は、遺伝子内プローブにより検出されているように、ERG遺伝子内の夫々のエクソンの発現レベルを示している。
【図3】TCF3:PBX1フュージョン遺伝子を含む事で知られる細胞ラインRCH−ACVにおけるマイクロアレイデータ図2に似たこの図は、TCF3:PBX1フュージョン遺伝子(上図)に交雑する事ができるキメラのエクソンーエクソン結合プローブにより得られる結果を示し、また夫々のための遺伝子内プローブにより検出されている、TCF3及びPBX1遺伝子(下側、それぞれ左及び右図)の個々のエクソンの相対的な発現レベルに関する結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子内におけるフュージョン遺伝子のエクソン−エクソン結合を標的とするキメラプローブ、及び前記フュージョン遺伝子に含まれたフュージョン遺伝子パートナーを標的とする少なくとも2つの遺伝子内プローブ、を有するマイクロアレイ。
【請求項2】
前記の遺伝子内プローブの標的が、前記フュージョン遺伝子パートナーの、エクソン内配列、エクソン−エクソン結合部、エクソン−イントロン結合部、又はイントロン−エクソン結合部からなる群より選択される、請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項3】
前記フュージョン遺伝子が、以下のフュージョン遺伝子からなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロアレイ。
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表2−5】

【表2−6】

【表2−7】

【表2−8】

【表2−9】

ここにおいて、遺伝子Aは前記フュージョン遺伝子の上流フュージョン遺伝子パートナーであり、遺伝子Bは前記フュージョン遺伝子の下流フュージョン遺伝子パートナーである。
【請求項4】
前記フュージョン遺伝子の、存在し得る遺伝子内エクソン−エクソン結合部の少なくとも20%に対応するキメラプローブを含む、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項5】
前記フュージョン遺伝子の、少なくとも20個の遺伝子内エクソン−エクソン結合部に対応するキメラプローブを含む、請求項1又は2に記載のマイクロアレイ。
【請求項6】
フュージョン遺伝子の、存在し得る各遺伝子内エクソンーエクソン結合部に対応するキメラプローブを含む、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項7】
請求項2に記載のフュージョン遺伝子のうち少なくとも20に対応するキメラプローブを含む、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項8】
請求項2に記載の全てのフュージョン遺伝子に対応するキメラプローブを含む、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項9】
前記キメラプローブは、第一部位及び第二部位を含み、前記第一部位は上流フュージョン遺伝子パートナーのエクソン3’端に対応し、前記第二部位は下流フュージョン遺伝子パートナーのエクソン5’端に対応し、前記キメラプローブは、mRNAまたはcDNAに交雑するように配向されたアンチセンスプローブか、又は前記フュージョン遺伝子のcDNAに交雑するセンスプローブである、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項10】
前記マイクロアレイは、各遺伝子内エクソン−エクソン結合部に対応するアンチセンス及びセンスプローブを含む、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項11】
前記キメラプローブのTm値が最大でもセ氏5度までしか異ならないように長さを調節されている、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項12】
前記キメラプローブの前記第一および前記第二部位はTm値が最大でもセ氏5度までしか異ならないように長さを調節されている、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項13】
前記キメラプローブの前記Tm値は交雑の際の温度より高く、前記キメラプローブの上流または下流部位のTm値は交雑の際の温度より低い、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項14】
前記マイクロアレイは、エクソン−エクソン結合部の一塩基多型変異体を標的とするキメラプローブをさらに含む、前記いずれかの請求項に記載のマイクロアレイ。
【請求項15】
フュージョン遺伝子を検出する方法であって、
a.標本を提供し、
b.RNAを前記標本から抽出し、
c.請求項1〜13のいずれか1項に記載のマイクロアレイを用いて、前記標本からmRNAのエクソンーエクソン結合部を検出し、
d.それにより、前記標本内のフュージョン遺伝子を同定する
方法。
【請求項16】
前記工程cにおける前記キメラプローブ及び前記少なくとも2つの遺伝子内プローブが、同じマイクロアレイに存在する、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項17】
オリゴdTプライマー、又はランダムヘキサマーのようなランダムなプライマーのいずれかを使った、cDNAを調整する工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
フュージョン遺伝子の遺伝子内エクソンーエクソン結合部に対応するキメラプローブを含むマイクロアレイを含むキットであって、
前記マイクロアレイは、フュージョン遺伝子パートナーに対応する少なくとも2つの遺伝子内プローブと、cDNA合成のためのランダムなプライマー、及び/又は、cDNAのためのオリゴdTプライマーとを含み、
前記遺伝子内プローブは、センスまたはアンチセンスプローブである、キット。
【請求項19】
請求項18に記載のキットであって、工程cにおけるキメラプローブ、及び少なくとも2つの遺伝子内プローブが同じマイクロアレイに存在する、キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−531147(P2010−531147A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513936(P2010−513936)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058272
【国際公開番号】WO2009/000912
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509344777)オスロ ユニヴェルジテットサイケフス エイチエフ (1)
【氏名又は名称原語表記】OSLO UNIVERSITETSSYKEHUS HF
【Fターム(参考)】