説明

フライバック型スイッチング電源

【課題】制御ICを使用した電流臨界動作型フライバックコンバータにおいて、起動時の主スイッチング素子オンタイミング誤動作を防止することにより、起動時の主スイッチング素子への過剰なストレスが印加されることを防ぎ、より安全度の高いスイッチング電源を提供する。
【解決手段】電源起動時の制御巻線4電圧にはMOSFET2オフ時のリンギング電圧は発生するが、タイマー17によりMOSFET2がオフしてから一定時間の検出ブランク時間を設けて、MOSFET2OFF時の制御巻線4リンギング電圧による誤検出を防ぎ、主スイッチング素子への過剰なストレスを防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は制御ICを使用した一石式コンバータに関するもので電流臨界動作型フライバックコンバータと呼ばれる直流変換器の起動時誤動作を防止する回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来技術の回路例、図5はその動作図を示すもので、図中1は直流電源、2はMOSFET(主スイッチング素子)、7は巻線検出コンパレータ、9は巻線検出保護ツェナー、8はリファレンス電圧、6はIC制御部、5は抵抗、3は1次巻線、20は2次巻線、4は制御巻線、18はトランス、19は出力整流ダイオード、21は出力コンデンサ、CONTは制御回路である。又、図5において(a)は制御巻線4の電圧(VNC)(b)は巻線検出コンパレータ7の非反転入力電圧(Vc)、(c)はMOSFET2のゲート・ソース間電圧(VG)、(d)はMOSFET2のドレイン電流(ID)、(e)は出力整流ダイオード19の電流波形(IF)、(f)はMOSFET2のドレイン・ソース間電圧(VDS)である。
【0003】図4において直流電源1の電圧がオンするとIC制御部6よりMOSFET2をオンさせる信号が出力されMOSFET2がオンする。これによりMOSFET2のドレイン電流は図5(d)の様に時間とともに増加しトランス18にエネルギーを蓄積する。ドレイン電流がある値まで増加するとIC制御部6よりオフ信号が出力されMOSFET2はオフする。MOSFET2がオフするとトランス18に蓄えられていたエネルギーは、2次巻線20より出力整流ダイオード19を通し出力コンデンサ21を充電しはじめる。電源起動時に出力電圧が上がっていない状態で制御巻線フライバック電圧(VNC)は
【数1】


Nc:制御巻線4の巻数Ns:2次巻線20の巻数Vo:出力電圧VF:ダイオード19の順方向電圧
【0004】であらわされるが、Voが0に近いので、制御巻線4の電圧は非常に低い電圧となる。又、MOSFET2がオフするタイミングでドレイン電流変化とトランス18のリーケージインダクタンスによりMOSFET2のドレイン・ソース間電圧VDSにリンギング電圧(リンギング電圧は、サージ電圧の振動を示す)が発生し図5(a)の様に制御巻線4にもその電圧に比例した電圧が発生する。そのリンギング電圧は制御巻線の4フライバック電圧に収束する様に振動が起こるので起動時制御巻線4フライバック電圧が低いことによりMOSFET2OFF時に巻線検出コンパレータ7は非反転入力端子電圧が、リファレンス電圧8を下回る。よって、巻線検出コンパレータ7よりIC制御部6へオントリガ信号が出力され制御部6よりオン信号が出力されることによりMOSFET2がオンする。
【0005】トランス18のエネルギーが放出したのを検出してMOSFET2をオンするのでドレイン電流IDは0Aから流れ始めるが、誤動作によりMOSFET2オフ直後に再度オンするので、MOSFET2オフ期間が短くなる。MOSFET2再オン時の流れ始め電流値(ID■)は一波前のMOSFETドレイン電流ピーク値(ID■)からΔID分だけ下がる。
【数2】


Np:1次巻線3の巻数toff:MOSFET2のoff時間Lp:1次巻線3のインダクタンス
【0006】よって、Voが小さくtoffが短いとMOSFET2再オン時の流れはじめ電流はほとんど下がらずMOSFET2は再びオンすることになるので、ドレイン電流は図5(d)の様に増加していく。ドレイン電流の増加により仮に制御ICに過電流検出機能があり動作したとしても電流検出用コンパレータや制御ICの動作遅れ分の時間はMOSFET2がオンしてしまうのでドレイン電流はさらに増加し、それに比例して図5(f)の様にVDSサージ電圧も大きくなる。しかし発振が続くと出力電圧が徐々に上昇するので、MOSFET2オフ時の制御巻線4のフライバック電圧も上昇し制御巻線4のリンギング電圧は、巻線検出コンパレータ7の非反転入力端子電圧がリファレンス電圧8を下回らない様になるので、トランス18のエネルギーが放出されてからMOSFET2がオンする正常動作へと移行する。正常な動作では、2次巻線20によりエネルギーの放出が終わると、MOSFET2のオン期間に制御巻線4に発生していたフライバック電圧が下降し、その電圧が巻線検出コンパレータ7のリファレンス電圧8を下回るとコンパレータ7よりIC制御部6へオントリガ信号が出力されIC制御部6よりMOSFET2へオン信号が出力され再びMOSFET2がオンし発振を維持する。
【0007】
【解決すべき課題】図4従来回路において、起動時の制御巻線検出の誤検出によりMOSFET2のドレイン電流、ドレイン・ソース間電圧ストレスが大きくなる。これは最悪のケースにおいてMOSFET2の破損を引き起こす要因ともなりうるので何らかの対策が必要となる。本発明は、制御ICを使用した電流臨界動作型フライバックコンバータにおいて起動時の主スイッチング素子オンタイミング誤動作を防止し、サージ電圧によるMOSFETの破損を防止する。
【0008】
【課題を解決するための本発明の手段】上記課題を解決するため請求項1の発明は一次巻線、二次巻線および制御巻線を有するトランスと前記一次巻線に直列接続された半導体スイッチと、前記半導体スイッチをオン、オフ制御する制御回路と、前記二次巻線に接続された整流回路を備え該半導体スイッチのオン時に前記トランスに蓄積されたエネルギーを該半導体スイッチのオフ時に該二次巻線より整流回路に放出するようにしたフライバック型スイッチング電源において、前記制御回路は、該二次巻線の放出エネルギーがゼロになるタイミング検出するタイミング検出手段と、タイマー手段を有し、前記タイミング検出手段の出力信号と前記タイマー手段のタイマー信号との論理出力により該半導体スイッチをオン動作させるようにしたことを特徴とし、この構成により、主スイッチング素子がオフしてから一定時間の検出ブランク期間をおき制御巻線電圧検出を動作させることにより起動時の誤動作を防ぎ主スイッチング素子への過剰なストレスを防止する。
【0009】上記課題を解決するための請求項2の発明は、制御回路にスイッチング電源が起動時から定常動作に移行したことを検出する定常検出手段を設け前記定常検出手段の信号によりタイマー信号を解除するようにしたことを特徴とする。この構成により起動時から定常動作への移行を円滑にできる。
【0010】
【実施の態様】図1は本発明の第1実施例回路図、図2はその動作説明図で、従来型と同一符号は同等機能部分を示す。図中1は直流電源、2はMOSFET(主スイッチング素子)、7は巻線検出コンパレータ、9は巻線検出保護ツェナー、5は抵抗、8はリファレンス電圧、14はANDゲート、17はタイマー、6はIC制御部、3は一次巻線、4は制御巻線、20は2次巻線、18はトランス、2次整流平滑回路として19は出力整流ダイオード、21は出力コンデンサ、CONTは制御回路である。図2R>2において(a)は制御巻線4の電圧(VNC)、(b)は巻線検出コンパレータ7の非反転入力電圧(Vc)、(c)はタイマー17の出力(ANDゲート14入力)(VT)、(d)はMOSFET2のゲート・ソース間電圧(VG)、(e)はMOSFET2のドレイン電流(ID)、(f)は出力整流ダイオード19の電流(IF)、(g)はMOSFET2のドレイン電圧(VDS)である。
【0011】図1において、直流電源1の電圧がオンするとIC制御部6よりMOSFET2をオンさせる信号が出力されMOSFET2がオンする。これによりMOSFET2のドレイン電流は図2(e)の様に時間とともに増加しトランス18にエネルギーを蓄積する。ドレイン電流がある値まで増加するとIC制御部6よりオフトリガ信号が出力されMOSFET2はオフする。MOSFET2がオフするとトランス18に蓄えられていたエネルギーは、2次巻線20より出力整流ダイオ−ド19を通し出力コンデンサ21を充電しはじめる。従来回路と同様に電源起動時の制御巻線4電圧には図2(a)の様にMOSFET2オフ時のリンギング電圧は発生するが、タイマー17によりMOSFET2がオフしてから一定時間の検出ブランク時間を設けているのでMOSFET2のオフ時の制御巻線4リンギング電圧による誤検出は起こらない。即ちタイマー14の出力信号とコンパレータ7の出力信号はANDゲート14により論理構成されIC制御部6により、この間のMOSFET2のオン信号を停止する。
【0012】又、巻線検出コンパレータ7のリファレンス電圧8を

より低い値に設定すれば検出ブランク時間が経過後でも二次巻線20より出力整流ダイオード19を通し出力コンデンサ21を充電する電流が0Aになるまで制御巻線4のフライバック電圧は巻線検出コンパレータ7のリファレンス電圧8より高い値となり、発振1波目から2次巻線20より出力整流ダイオード19を通し出力コンデンサ21を充電する電流の0Aになるタイミングを検出することができる。この様に2次巻線20よりエネルギーが放出し終わると、MOSFET2のON期間に制御巻線4に発生していたフライバック電圧は下降し始める。その巻線検出コンパレータ7の非反転入力端子電圧がリファレンス電圧8以下になると巻線検出コンパレータ7はONトリガ信号を出力しその時点でタイマー17の検出ブランク時間が終わっていればMOSFET2へON信号が出力されMOSFET2がONする。これにより発振を継続する。
【0013】図3は、本発明の第二実施例回路図で、第一実施例回路図と同一符号は同等機能部分を示す。第一実施例回路図と異なる部分は、起動時誤動作防止回路を電源が定常動作に移行すると機能を停止する回路を有するところにある。10は起動/定常動作判定用コンパレータ、13はタイマー、12はANDゲート、15は起動/定常動作状態保持用RSフリップフロップ、16はNANDゲートにより構成される。
【0014】起動時の動作は第一実施例と同様の動作であり、MOSFET2OFF時の制御巻線4のフライバック電圧は

の式によりあらわされ、出力電圧Voにほぼ比例した値となる。つまり、出力電圧を制御巻線4のフライバック電圧をタイマー13で設定されたブランク時間の後で、検出することにより間接的に検出し起動/定常動作判定用コンパレータ10の非反転入力電圧がリファレンス電圧11以上になるのを検出し起動/定常動作状態保持用RSフリップフロップ15をセットする。一度起動/定常動作状態保持用RSフリップフロップ15がセットされるとリセットされるまでNANDゲート16とANDゲート14でタイマー17の出力状態に関係なく巻線検出コンパレータからのONトリガ信号をIC制御部6へ送る様に動作する。又、直流電源1がOFFし電源の発振が一旦停止してから直流電源1がONした場合IC制御部6より起動/定常動作状態保持用RSフリップフロップがリセットされる信号が送られ、起動誤動作防止回路は再び動作する。
【0015】
【発明の効果】本発明の電流臨界動作型フライバック電源では、起動時に電流臨界点の検出に主スイッチがOFFしてから一定期間のブランクを設ける回路を付加することにより起動時の誤動作を防ぎ、起動時の主スイッチへの過剰なストレスが加わるのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例回路図
【図2】本発明実施例回路図の動作説明図
【図3】本発明の第二実施例回路図
【図4】従来回路図
【図5】従来回路図の動作説明図
【符号の説明】
1:直流電源
2:MOSFET(メインスイッチング素子)
3:1次巻線
4:制御巻線
5:抵抗
6:制御IC制御部
7:巻線検出コンパレータ
8:リファレンス電圧(巻線検出コンパレータ7)
9:巻線検出保護ツェナー
10:起動/定常動作判定用コンパレータ
11:リファレンス電圧(起動/定常動作判定用コンパレータ10)
12:ANDゲート
13:タイマー(起動/定常動作判定用)
14:ANDゲート
15:起動/定常動作状態保持用RSフリップフロップ
16:NANDゲート
17:タイマー(巻線検出ブランク用)
18:トランス
19:出力整流ダイオード
20:2次巻線
21:出力コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】一次巻線、二次巻線および制御巻線を有するトランスと、前記一次巻線に直列接続された半導体スイッチと、前記半導体スイッチをオン、オフ制御する制御回路と、前記二次巻線に接続された整流回路を備え該半導体スイッチのオン時に前記トランスに蓄積されたエネルギーを該半導体スイッチのオフ時に該二次巻線より整流回路に放出するようにしたフライバック型スイッチング電源において、前記制御回路は、該二次巻線の放出エネルギーがゼロになるタイミングを検出するタイミング検出手段と、タイマー手段を有し、前記タイミング検出手段の出力信号と前記タイマー手段のタイマー信号との論理出力により該半導体スイッチをオン動作させるようにしたことを特徴とするフライバック型スイッチング電源。
【請求項2】制御回路にスイッチング電源が起動時から定常動作に移行したことを検出する定常検出手段を設け前記定常検出手段の信号によりタイマー信号を解除するようにしたことを特徴とする請求項1のフライバック型スイッチング電源。
【請求項2】定常検出手段は半導体スイッチのオフ時、制御巻線電圧が設定電圧に達し且つ所定時間継続することを確認する回路により構成されたことを特徴とする請求項2のフライバック型スイッチング電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−128449(P2001−128449A)
【公開日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−309055
【出願日】平成11年10月29日(1999.10.29)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】