説明

フライヤー

【課題】フライヤーにおける油高温部2aの対流を妨げることなく、また、油低温部2bまで加熱してしまう過剰な対流や下方への熱反射を抑制することによって理想的な熱効率の良いフライヤーを提供することを課題とする。
【解決手段】油を貯留する貯槽1と、貯槽内の油層2の中間位置に設けたヒーター4とを備えたフライヤーであって、上記ヒーター4の上面を覆い、ヒーター4で加熱された油が通過する多数個の小孔6を設けた多孔板5aと、この多孔板5aの両側縁部から上記ヒーター4の下方に向けて傾斜して差出されるとともに、鏡面状に形成されて上記ヒーター4からの輻射熱をほぼヒーター4方向に向けて反射する反射面5cを上面側に有する反射板とからなるヒーター被覆体5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した油を溜めた貯槽内で食材を揚げて天ぷらやフライにするフライヤーであって、特に、熱効率を向上させるとともに、油の劣化を低減させるようにしたフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
貯槽内の油を加熱して食材を揚げるフライヤーでは、油が高温になり、食材から流出する水分や空気に触れることで、酸化、加水分解、重合などの化学変化を起こして劣化し、使用に適さないものとなる。そのため、このような油の劣化を防止して油の寿命を長期化する工夫がなされていた。
【0003】
特許文献1には、貯槽内の油層中間部にヒーターを設けたフライヤーにおいて、底部にファンを配置して油に乱流を起こし、熱交換効率を向上させるとともに揚げカスなどのゴミを油面に浮かせるものが記載されている。
【0004】
また、貯槽内に油層と水層とを上下2層にして有し、油層と水層とが境界で接しており、揚げカスなどを水層に分離して、油層の清浄度を保つことのできるようにしている油水二層型のフライヤーがあった(特許文献2、3)。
【0005】
特許文献3には、油と水を上下2層にして1つの貯槽に貯留した油水二層型のフライヤーにおいて、水層及び油層を渦状に水平旋回させることにより、熱交換効率を高めるとともに、境界部で油が水にもまれて不純物を水中に落とすことで調理油の劣化を低減させることができるものが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−213437号公報
【特許文献2】特開平07−308260号公報
【特許文献3】国際公開公報2007/116882号パンフレット
【0007】
油層の中間部にヒーターを設けたフライヤーでは、加熱時にヒーター下部付近を境界として上方に油高温部が形成され、下方に油低温部が形成される。熱効率や油の劣化防止のためには、油高温部内では対流があり、油低温部では油高温部との間で対流が起こらず低温に保たれるのが望ましい。しかし、従来のフライヤーでは、油を加熱して食材を投入すると、食材から出る水分の沸騰などにより油高温部が沸き立って対流を起こし、高温の油が外側の貯槽内壁にぶつかって激しく下降する。この勢いによって油層下部にある油低温部の油が押し上げられ、油低温部と油高温部が攪拌、混和することがあった。
【0008】
油低温部と油高温部が混和すると、揚げ物調理に用いないにも関わらず油層下部でも加熱による油の劣化が進み油の無駄が発生するばかりでなく、ヒーターから生じる熱の多くが揚げ物調理に使われることなく浪費される。また、油水二層型のフライヤーにおいては、油層下部が高温になると、下面に接している水層上部の温度も高くなり、境界面で水の沸騰や油の加水分解が生じるおそれがあった。
【0009】
特許文献2のように、水層が加熱されるのを防ぐために、油層下部に冷却管を配設したり貯槽側壁に冷却用の凹み部を設けて、油低温部および水層を冷却したフライヤーもあるが、製造コストがかかり、また、この冷却管および凹み部が邪魔で貯槽底部付近の清掃が困難になっていた。さらに、ヒーターの熱の浪費という問題を充分には解決できていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、フライヤーにおける油高温部の対流を妨げることなく、また、油低温部まで加熱してしまう過剰な対流や下方への熱反射を抑制することによって理想的な熱効率の良いフライヤーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、油を貯留する貯槽と、貯槽内の油層の中間位置に設けたヒーターとを備えたフライヤーであって、上記ヒーターの上面を覆い、ヒーターで加熱された油が通過する多数個の小孔を設けた多孔板と、この多孔板の両側縁部から上記ヒーターの下方に向けて傾斜して差出されるとともに、鏡面状に形成されて上記ヒーターからの輻射熱をほぼヒーター方向に向けて反射する反射面を上面側に有する反射板とからなるヒーター被覆体を設けたことを特徴とする。
この反射板は、上面側の全体を鏡面状の反射面にしたものでもよいが、一部に鏡面状でない部分を含むものであってもよい。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記多孔板の下面と上記ヒーターとの間に間隙を有することを特徴とする。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、上記多孔板の下面と、上記反射面を除く上記反射板の内外両面との全部または一部に熱吸収率の高い材料のコーティングを施したことを特徴とする。
【0014】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、上記多孔板の下面と、上記反射面を除く上記反射板の内外両面との全部または一部に油劣化防止作用のある触媒のコーティングを施したことを特徴とする。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、貯槽内の油層の下方に水層を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、上記ヒーターの上面を覆い、ヒーターで加熱された油が通過する多数個の小孔を設けた多孔板を配設したことにより、投入される食材がヒーターに触れるのを防止することができるとともに、多孔板を上下に行き来する油の流れが小孔で細分化されて、油高温部で良好な対流が行われる。また、食材が投入されて油面付近の油が沸き立っても、油は多孔板の小孔を通過する細分化された流れになって下降するから、貯槽内壁に沿って過大な勢いで下降し油低温部の油を攪拌することがなく、油低温部が低温に保たれる。
【0017】
また、多孔板の両側縁部から上記ヒーターの下方に向けて傾斜して差出されるとともに、鏡面状に形成されて上記ヒーターからの輻射熱をほぼヒーター方向に向けて反射する反射面を上面側に有する反射板により、ヒーターからの輻射熱を上方へ反射して油高温部の加熱を促進するとともに、油低温部が加熱されることを防止することができる。また、反射板同士の間隔が下になるほど狭くなっているから、ヒーター被覆体内側の油が下方へ流れづらく、油低温部を一層低温に保つことができる。
さらに、ヒーター被覆体が油高温部の相当範囲を覆っているから、調理の一時中断の際にも、油高温部の温度が油低温部との対流により低下しないように遮蔽して、保温性能を向上させることができる。
また、調理により発生した揚げカスは多孔板の小孔を通過し、反射板の傾斜にそって底部に落下するから、揚げカスの沈下を妨げることなく上記効果を達成することができる。
【0018】
第2の発明によれば、上記多孔板の下面と上記ヒーターとの間に間隙を有することにより、ヒーターに加熱された油が上記間隙に滞留して、小孔を通して多孔板上方との間で行き来しやすくなる。このため、食材を投入しても、側壁にぶつかって下降する大きな油の流れを生じることがなく、油低温部に高温の油が流れ入ることなく低温に保たれる。
【0019】
第3の発明によれば、上記多孔板の下面と、上記反射面を除く上記反射板の内外両面との全部または一部に熱吸収率の高い材料のコーティングを施したことにより、コーティングされた面が輻射熱をよく吸収して、周囲の油高温部の油を加熱することができるとともに、下方への熱反射を防いで油低温部を加熱されにくくすることができる。
【0020】
第4の発明によれば、上記多孔板の下面と、上記反射面を除く上記反射板の内外両面との全部または一部に油劣化防止作用のある触媒のコーティングを施したことにより、触媒の塗付された面に触れた油の分子の熱重合を防止し、揚げ物調理に伴う油の劣化を抑えることができる。
【0021】
第5の発明によれば、貯槽内の油層の下方に水層を設けたことにより、揚げ物調理において生じる揚げカス、熱分解や加水分解などによって生じる水溶性の極性化合物を水層に転移させて分離することができ、油の劣化を一層防止することができる。
また、ヒーター被覆体により油低温部が低温に保たれるから、油低温部およびその下面に接している水層の温度が上昇して油と水の境界面で水の沸騰および油の加水分解が生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るフライヤーの実施形態を、図面に沿って説明する。
第1実施形態に係るフライヤーは、図1、2に示すように、油を溜めて食材を揚げる貯槽1を有し、貯槽1の中間位置には油を加熱するヒーター4を有している。貯槽1の上部は四角筒状に、下部は下方に凸な四角錐状に形成され、貯槽1の底部には油や揚げカスなどを排出するための排出口を備えている。
この貯槽1に油を注いで油層2を形成し、ヒーター4に通電して加熱すると、油層2のヒーター4上方には油高温部2aが形成され、油層下部には油低温部2bが形成される。
油高温部2aでは、金網等で成形されたバスケットに載せた食材が投入され、所定温度にて揚げられる。油低温部2bは、油高温部2aで発生した揚げカスなどを受け取るとともに油高温部2aに清浄な油を適宜供給して、油高温部2aの油の劣化を防止する役割を果たす。
【0023】
このフライヤーには、ヒーター4の周囲を取り囲むように着脱可能なステンレス製のヒーター被覆体5が取り付けられている。ヒーター被覆体5は、図1、4に示すように、貯槽1の上部の開口よりも一回り小さく水平に設置された多孔板5aと、多孔板5aの両側縁部から下方に延びた反射板とからなる。さらに、この反射板は、接続部5bと、接続部5bの下端部から貯槽1の下方内側へ傾斜して延びる反射部5cとからなる。
ヒーター被覆体5の側縁部と貯槽内壁との間には、わずかに隙間が設けられている。
【0024】
多孔板5aは、貯槽1の開口よりも一回り小さな四角形に形成され、多数の小孔6を有している。この小孔6の直径はおよそ8mmに設定され、小孔6どうしの間隔は2mm程度に設定されている。図4では省略してあるが、小孔6は多孔板5aの全面に設けられている。
貯槽1内に設置したときに、多孔板5aとヒーター4の上面との間にはスペーサー7を介在させて5〜15mmの間隙を設けておくのが望ましい。このように間隙を設けることにより、ヒーター4周辺で加熱された油がこの間隙部に滞留し、小孔6から多孔板5aを通過しやすくなるため、食材を投入しても、貯槽内壁にぶつかって下降する大きな油の流れを生じることがなく、油低温部に高温の油が流れ入ることなく低温に保たれる。
【0025】
反射板の接続部5b、5bは多孔板5aの両側縁部から垂下している。接続部5b、5bは垂直に差出したものでもよいが、図4のようにやや内側に傾斜させておくと、ヒーター4を上下に回動させる際に貯槽1の内壁とぶつかったり擦れたりすることがない。
【0026】
反射板の反射部5c、5cは、接続部5b、5bの下端から、ヒーター4下方(貯槽1の内側)に向かって次第に互いの間隔を狭めるように傾斜して差出され、下端部どうしの間には揚げカスなどが沈下する充分な隙間を設けてある。反射部5cとしては、上方のヒーター4の輻射熱を反射するように、上面が鏡面状のステンレス板を用いる。反射部5c、5cの傾斜は水平面に対し45度程度に設定されており、フライヤー正面からみて左右対称になっている。
【0027】
ヒーター被覆体5のうち、多孔板5aの下面と、反射部5cの下面と、接続部5bの内外両面には、熱吸収率の高い材料でコーティングを施してある。この材料としては、黒体に物理的性質が近いものを用いる(以下、黒体コーティングという)。
これにより、コーティングされた面が輻射熱をよく吸収して、周囲の油高温部2aの油を加熱することができ、ヒーターから発生した熱の多くを揚げ物調理に用いることができる。
多孔板5aの上面および反射部5cの上面では、輻射熱を上方へ反射して上方の油を加熱するのが望ましいので、黒体コーティングを施していない。
【0028】
この黒体コーティングとともに、または黒体コーティングの代わりに、触媒を塗付して加熱硬化してもよい。触媒には銀を含むコーティング剤、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、銀等を含むコーティング剤、あるいは銀塩またはコロイダル銀を固着したゼオライト、シリカゲル、アルミノ珪酸塩鉱物およびアルミノ−シリカゲルの群から選ばれた少なくとも1種の無機化合物を用いるコーティング剤などを用いて、触媒の塗付された面に接した油の分子の酸化重合・熱重合を防止し、揚げ物調理に伴う油の劣化や粘度上昇を抑えられるようにする。
【0029】
多孔板5aの下面には、スペーサー7が4個所に配置されている。このスペーサー7は幅方向中央部を下方に切り欠いて、ヒーター4の上端が嵌まる溝を設けている。
【0030】
図3に示すように、ヒーター4は、フライヤー上部の筐体8に接続される基部4aと、基部4aから垂下した2本の足と、この足の先に設けられた加熱部4bとからなる。加熱部4bは、四角形の平面内にて繰り返し蛇行させた形状に形成されている。
ヒーター4は、筐体8側部から突き出たレバー8aを上方へ操作すると、基部4aが接続された筐体8を軸心として水平姿勢と直立姿勢の間を回動するように設置されている。ヒーター4を回動して直立させると、筐体8下部に取り付けられたストッパー8bが自重で筐体の下に回り、留め具で固定されてヒーター4を直立姿勢で支持固定できるようになっている(図5)。このストッパー8bを前方に回動させてヒーター4の固定を解除すると、ヒーター4を直立姿勢から水平姿勢に戻すことができる。
筐体8はこのようにヒーター4を回動させる機能を有するとともに、内部に配線を備え、接続されるヒーター4の加熱部4bに電力を供給する。
【0031】
調理前に、フライヤーにヒーター被覆体5を取り付けるには、上記レバー8aを操作してヒーター4を直立姿勢に回動させ(図5)、ヒーター4の先端側からヒーター被覆体5を挿し込んだ後で、ヒーター4を倒し再び水平姿勢にセットする(図2)。
逆に、調理後にヒーター被覆体5を取り外す際には、レバー8aを操作してヒーター4を回動させて直立させ、ヒーター被覆体5を上方に抜き取る。
このように、ヒーター被覆体5はフライヤーから安全かつ容易に取り外すことができるから、貯槽1内およびヒーター被覆体5の清掃を容易に行うことができる。
【0032】
ヒーター被覆体5を取り付けた状態でヒーター4に通電すると、ヒーター4の周囲の油が加熱されて、多孔板5a下面との間隙およびその下方のヒーター被覆体5の内側に滞留するとともに、一部が多孔板5aの小孔6から上方に供給される。
【0033】
これにより、高温の油は食材が揚げられる多孔板5a上方に適宜供給されて、投入した食材を充分に加熱する。一方、油低温部2bは油高温部2aとの対流がヒーター被覆体5によって抑えられ、低温に保たれる。
また、反射部5cでヒーター4からの輻射熱を上方のヒーター4方向へ反射して油高温部2aの加熱を促進するとともに、油低温部2bが加熱されるのを防止することができる。
【0034】
さらに、多孔板5aの下面、反射部5cの下面、および接続部5bの内外両面に、黒体コーティングを施したことにより、コーティングされた面が輻射熱をよく吸収して、周囲の油高温部2aの油を加熱することができるとともに、下方への熱反射を防ぎ油低温部2bを加熱されにくくすることができる。
その結果、油高温部2aのみを高温にして油低温部2bを低温に保つことができるので、油の劣化を抑えて油を節約することができるとともに、ヒーター4の熱を効率良く揚げ物調理に利用できるので、熱量の消費を低減させることができる。
【0035】
油高温部2aが充分に加熱された状態で食材を投入して揚げると、食材から出る水分の沸騰などにより油面付近の油は沸き立つが、その高温の油は、外側の貯槽内壁に沿って下降する大きな流れを作ることはなく、多孔板5aの小孔6を通過して下降する細分化された流れとなる。
油の流れが細分化されることで流れの勢いが強くならず、油高温部2aには充分な対流があるが、油低温部2bは対流の影響を受けない平穏な状態を保つことができて、低温に保たれる。また、反射部5c同士の間隔が下になるほど狭くなっているから、ヒーター被覆体5内側の油が下方へ流れづらく、油低温部2bを一層低温に保つことができる。
【0036】
また、食材を揚げる際に大量の揚げカスが発生するが、揚げカスは多孔板5aの小孔6を通過して自然落下する。その際、反射部5cを傾斜させてあるので、反射部5cに達した揚げカスは反射部5cの表面を滑って貯槽1底部へ沈下することができる。
【0037】
さらに、多孔板5aの下面、反射部5cの下面、および接続部5bの内外両面に、油劣化防止作用のある触媒を塗付したことにより、触媒の塗付された面に触れた油の分子の酸化重合・熱重合を防止し、揚げ物調理に伴う油の劣化や粘度上昇を抑えることができる。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態として、図6に示すように、貯槽1内に水を入れ、水と油の比重差により、油層2の下方に水層3を形成した油水二層型フライヤーに上記ヒーター被覆体5を用いてもよい。
このフライヤーには、油層2の下面に接して水層3が設けられており、ヒーター4および上記ヒーター被覆体5は油層2の高さ中央に配置されている。このため、ヒーター4によって加熱を開始すると、貯槽中には下から順に水層3、油低温部2b、油高温部2aの3層が形成される。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0039】
この場合には、揚げ物調理において油層2で生じる揚げカスや、熱分解や加水分解によって生じる水溶性の極性化合物を水層3に転移させて分離することができ、油の劣化を一層防止することができる。
また、この油水二層型フライヤーにヒーター被覆体5を用いると、ヒーター被覆体5により油低温部2bが低温に保たれるから、油低温部2bおよび水層3の温度が上昇することにより油と水の境界面で水の沸騰および油の加水分解が生じるのを防止することができる。
【0040】
<別態様>
触媒の種類は上記実施形態で示したものに限らず、たとえば、チタンまたはチタン合金をショットブラスト法により上記所定の面に吹き付けて、酸化チタンの被膜を形成してもよい。この場合には、酸化チタンの光触媒としての作用により、油の酸化を防止し、酸化した油を還元することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、多孔板5aの両側縁部から接続部5bと反射部5cとからなる反射板を垂下したヒーター被覆体5を用いたが、多孔板5aの両側縁部に加え、正面側(ヒーター4先端側)の縁部からも反射板を垂下したヒーター被覆体を用いてもよい。
また、接続部5bを設けることなく、上面側の全体が鏡面状の反射面に形成された反射板を、多孔板5aの両側縁部からヒーター4下方へ差出すように構成したヒーター被覆体を用いてもよい。
【0042】
<実験結果>
ヒーター被覆体5を設けた油水二層型フライヤーにおいて、スペーサー7を用いてヒーター4とヒーター被覆体5との間に10mmの間隙を設けた場合と、間隙を設けずヒーター被覆体5をヒーター4の上に直置きにした場合とで、油低温部2bの温度を比較する実験を行った。それぞれの場合で、ヒーター4に通電して油層2を加熱してから、6分間揚げ物調理を行い、その間油低温部2bの温度を計測した。
図7はその結果を示すグラフである。
【0043】
どちらの場合も油高温部2aが所定温度に達した時点で調理を開始したが、間隙を設けた場合では直置き(間隙なし)の場合に比べて、油高温部2aの温度が所定温度まで加熱されても、油低温部2bの温度が若干低いことがわかる(直置きでは84.4℃、間隙10mmでは82.9℃)。
また、食材を投入して調理を開始すると、直置きの場合では油低温部2bの温度が調理前から8.4℃上昇した。一方、間隙を設けた場合では、食材を投入しても油低温部2bの温度は4.8℃しか上昇しなかった。油低温部2bの最高温度は、直置きの場合で92.8℃、間隙を設けた場合で87.7℃であった。
【0044】
ヒーター被覆体5を設けない場合には調理に伴い油低温部2bの温度が100℃以上になることもあるため、間隙なしでヒーター被覆体5を設けた場合でも油低温部2bが加熱されるのを防ぐ効果が認められる。ヒーター被覆体5下面とヒーター4との間に間隙を設けた場合には、さらに顕著に油低温部2bを低温に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフライヤーの正面断面図である。
【図2】同フライヤーの側面断面図である。
【図3】同フライヤーに用いるヒーターおよび筐体を示す斜視図である。
【図4】同フライヤーに用いるヒーター被覆体を示す斜視図である。
【図5】同フライヤーにおけるヒーターの直立姿勢時の側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るフライヤーの正面断面図である。
【図7】ヒーター被覆体とヒーターとの間に間隙を設けた場合と設けない場合における、油低温部の温度の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 貯槽
2 油層
2a 油高温部
2b 油低温部
3 水層
4 ヒーター
4a 基部
4b 加熱部
5 ヒーター被覆体
5a 多孔板
5b (反射板の)接続部
5c (反射板の)反射部
6 小孔
7 スペーサー
8 筐体
8a レバー
8b ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を貯留する貯槽と、
貯槽内の油層の中間位置に設けたヒーターとを備えたフライヤーであって、
上記ヒーターの上面を覆い、ヒーターで加熱された油が通過する多数個の小孔を設けた多孔板と、
この多孔板の両側縁部から上記ヒーターの下方に向けて傾斜して差出されるとともに、鏡面状に形成されて上記ヒーターからの輻射熱をほぼヒーター方向に向けて反射する反射面を上面側に有する反射板とからなるヒーター被覆体を設けたことを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
上記多孔板の下面と上記ヒーターとの間に間隙を有することを特徴とする請求項1に記載のフライヤー。
【請求項3】
上記多孔板の下面と、上記反射面を除く上記反射板の内外両面との全部または一部に熱吸収率の高い材料のコーティングを施したことを特徴とする請求項1または2に記載のフライヤー。
【請求項4】
上記多孔板の下面と、上記反射面を除く上記反射板の内外両面との全部または一部に油劣化防止作用のある触媒のコーティングを施したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフライヤー。
【請求項5】
貯槽内の油層の下方に水層を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフライヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−294(P2010−294A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163378(P2008−163378)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(506091241)株式会社マーメード (16)
【Fターム(参考)】