説明

フライヤ

【課題】従来の構成では、油を保温する機構が設けられていないため、油を所定温度に維持するためには、電気ヒータを頻繁に発熱させなければならず、電気ヒータの電力消費量が増大するおそれがある。加熱手段の電力を節約可能なフライヤを提供する。
【解決手段】油槽2と、この油槽2内に配置されて油を加熱する加熱手段3とを備えたフライヤ1において、油槽2内の底部2Aに、油温を所定時間、所定温度に維持する熱容量を有する蓄熱体51を配置し、この蓄熱体51の上に加熱手段3を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油温を所定温度に維持するフライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油を貯留する油槽内に電気ヒータ(加熱手段)を配置し、電気ヒータにより加熱した油で食材を揚げて調理するフライヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−252726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、あらかじめ揚げて置いた食品を客に提供するのではなく、客の注文を受けてから調理を開始し、揚げたての食品を客に提供する販売形態が要求されるようになってきている。客の注文を受けてから短時間で調理するためには、油温を揚げ物に最適な所定温度に維持しておく必要がある。
しかしながら、上記従来の構成では、油を保温する機構が設けられていないため、油を所定温度に維持するためには、電気ヒータを頻繁に発熱させなければならず、電気ヒータの電力消費量が増大するおそれがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、加熱手段の電力を節約可能なフライヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、油槽と、この油槽内に配置されて油を加熱する加熱手段とを備えたフライヤにおいて、前記油槽内の底部に、油温を所定時間、所定温度に維持する熱容量を有する蓄熱体を配置し、この蓄熱体の上に前記加熱手段を配置したことを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記油槽の外側に断熱材を設けてもよい。
【0007】
上記構成において、前記蓄熱体に温度センサを設け、前記温度センサが測定した前記蓄熱体の温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油槽内の底部に、油温を所定時間、所定温度に維持する熱容量を有する蓄熱体を配置したため、加熱手段による加熱を停止しても、蓄熱体の熱により油温を所定時間、所定温度に維持できるので、加熱手段を頻繁に発熱させることを防止し、加熱手段の電力を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るフライヤを示す斜視図である。
【図2】フライヤの上部を示す斜視図である。
【図3】油槽を示す斜視図である。
【図4】本発明の変形例に係る蓄熱体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係るフライヤを示す斜視図であり、図2はフライヤの上部を示す斜視図である。
フライヤ1は、本体10と、油を貯留する油槽2と、油槽2内に配置され油槽2内の油を加熱する電気ヒータ(加熱手段)3と、電気ヒータ3を昇降する昇降装置30とを備えている。本体10は油槽2の前面、両側面、及び背面を覆う外装11を有し、外装11の前面には、コントロールパネル41が設けられている。このコントロールパネル41は、フライヤ1の各部の制御を行う制御装置(制御手段)40に接続され、フライヤ1の電源のオン/オフや、調理温度(所定温度)、調理時間等の入力を受け付けるとともに、入力された調理温度を表示する。制御装置40は、外装11の前面内側に設けられている。
【0011】
本体10の上面12には、図示しない開口が設けられており、この開口に油槽2が収容される。油槽2は、例えばステンレス材を用いて、上方に開口する箱状に形成されている。油槽2内には、食材(不図示)を収容するバスケット4が配置される。油槽2の開口部には、図示しない油槽蓋が設けられてもよく、油槽蓋を設ける場合には、バスケット4は油槽2から取り出される。
油槽2の底部2Aには排油バルブ(不図示)を有する排油管7が接続され、排油管7の下方には、油缶9が配置されている。油槽2内の油を排油する際には、排油バルブを開くことで、劣化した油や油カス等の不純物が油缶9に収集される。本体10の油缶9の前面側には、油缶9を取り出すための扉13が設けられている。
【0012】
電気ヒータ3は、昇降シャフト31を介して軸部32に支持されている。軸部32は、本体10の幅方向に延び、その両端が軸受33により本体10の上面12に回動自在に支持されている。軸部32の側面には、操作レバー34が設けられている。これら昇降シャフト31、軸部32、軸受33、及び操作レバー34は昇降装置30を構成している。電気ヒータ3は、操作レバー34によって軸部32を中心に略90°回動する。電気ヒータ3は、通常使用時には、水平状態で油槽2内に収容され、油槽2内の油かすを取り出す場合や、電気ヒータ3や油槽2内の手入れなどが必要な場合には、操作レバー34を押し上げることにより、電気ヒータ3が油槽2から取り出される。
【0013】
図3は、油槽2を示す斜視図である。なお、図3では、油槽2の前面及び右側面を省略している。
本実施の形態の油槽2は、例えば長さLが略250mm(ミリメートル)、幅Wが略200mm、及び高さH1が略250mm程度の寸法に構成され、この油槽2には、約8リットルの油が貯留される。なお、油槽2は、大きさや形状は特に限定されるものではなく、使用者が所望する油槽2の大きさや形状を使用することができる。
油槽2の外側には、耐熱性のある断熱材料で形成された断熱材21が取り付けられている。本実施の形態の断熱材21には、厚さtが約20mmのグラスウールを用いているが、断熱材21の種類及び厚さは、これに限定されず、必要な断熱性能に応じで設定される。また、本実施の形態では、断熱材21を油槽2の底部2Aのみに設けることとしているが、必要な断熱性能に応じて油槽2の側面にも断熱材21を取り付けてもよい。
【0014】
油槽2内の底部2Aには、蓄熱体51が配置されている。蓄熱体51は、油槽2の底部2Aの面積とほぼ同じ広さ(やや狭い程度)を有するブロックであり、熱容量が大きく、熱伝導率の高い材料で形成される。本実施の形態では、蓄熱体51の全側面と油槽2の側面との間に例えば約10mmの隙間δ1を形成するように蓄熱体51の面積を設定している。
蓄熱体51の材料及び大きさは、所定量の油を所定時間、所定温度に維持できる程度の所定の熱容量を有するように設定される。例えば、約8リットルの油を約15分間、約170℃に維持するためには、上記面積を有する蓄熱体51を高さH2が約30〜50mmのアルミニウムインゴットで形成するのが望ましく、本実施の形態では蓄熱体51を高さH2が約50mmのアルミニウムインゴットで形成している。
【0015】
蓄熱体51の表面には、加熱されると遠赤外線を放射する遠赤外線放射皮膜52(例えば、セラミック)が形成されている。本実施の形態では、アルミ製の蓄熱体51の表面に酸化チタンを溶射することで遠赤外線放射皮膜52を形成しているが、遠赤外線放射皮膜52の種類はこれに限定されない。
蓄熱体51は、下面に複数(本実施の形態では、3つ)の突出部53を備えており、油槽2の底部2A上に置かれると、蓄熱体51の全側面と油槽2の側面との間の隙間δ1に加え、突出部53の高さ分だけ蓄熱体51の下面と油槽2の底部2Aとの間に隙間δ2が生じる。本実施の形態では、突出部53にビスを用いており、突出部53を略均等に配置するとともに、突出部53を蓄熱体51の下面から例えば約10mm突出させることにより、隙間δ2を約10mmとしている。油槽2の底部2A上に置かれた蓄熱体51は、図2に示すように、調理位置Aに配置された電気ヒータ3と接触する。蓄熱体51に例えば把手(不図示)を設け、蓄熱体51を油槽2から容易に取り外せるようにしてもよい。
蓄熱体51には、図3に示すように、複数の貫通孔51Aが形成されている。本実施の形態では、直径15mmの貫通孔51Aが等間隔に12個形成されているが、貫通孔51Aの大きさ及び個数はこれに限定されない。排油の際には、油や油カス等の不純物が貫通孔51Aを通り排油管7(図2)に流れる。
【0016】
蓄熱体51には、温度センサ42が設けられている。本実施の形態では、蓄熱体51の前面に溝51Bを形成し、この溝51Bに温度センサ42を挿入することで、蓄熱体51の温度を測定できるようにしている。温度センサ42の配置構成は、蓄熱体51の温度を測定できるものであれば、これに限定されるものではない。温度センサ42は、電気ヒータ3の動作を制御する制御装置40(図1)に接続されている。
【0017】
制御装置40は、温度センサ42により測定された温度に基づいて電気ヒータ3(図2)を発熱させ、或いは電気ヒータ3の発熱を停止する。例えば、調理を行う使用者が、油の温度を170℃(調理温度)に設定すると、この温度が制御装置40に入力される。制御装置40は、温度センサ42により測定された測定温度と調理温度とを比較する。測定温度が調理温度よりも高ければ、制御装置40は、電気ヒータ3の発熱を停止する。また、測定温度が調理温度よりも基準温度(例えば、1℃)以上低ければ、制御装置40は、電気ヒータ3を発熱させる。このようにして、油の温度を制御する。
【0018】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
電気ヒータ3を油槽2の油内に降下させ、フライヤ1の電源をオンにすると、電気ヒータ3が発熱して油が加熱される。油槽2内には、熱伝導率の高いアルミニウム製の蓄熱体51が油槽2の底部2A略全体に亘って設けられているため、蓄熱体51が電気ヒータ3の熱を油に効率良く伝達し、油の温度が速やかに調理温度に到達する。しかも、蓄熱体51と油槽2との間に隙間δ1,δ2を設けているため、油が蓄熱体51の側面及び底面にも回り、蓄熱体51の熱が油により効率良く伝達する。これに加え、蓄熱体51の表面には遠赤外線放射皮膜52が形成されているため、遠赤外線放射皮膜52が加熱されることにより遠赤外線放射皮膜52が遠赤外線を放射するので、油が効率良く加熱され、油の温度は速やかに上昇する。
【0019】
油の温度が調理温度に達した後、食材を収容したバスケット4を油内に配置すれば、食材のフライ調理が始まる。蓄熱体51を設けない従来のフライヤでは、食材が油中に入ると油の温度が低下し、特に食材が冷凍されたものであれば、油の温度低下は顕著である。本実施の形態では、冷凍された食材を一度に沢山投入しても、蓄熱体51の蓄熱効果により、温度低下が比較的少ない上、食材の投入により油の温度が低下しても、油の温度が所定温度に復帰するまでの時間が、蓄熱体51の蓄熱効果により短くなるので、食材を十分に高い油温で調理できる。しかも、遠赤外線放射皮膜52が放射する遠赤外線により、食材の芯部まで効果的に加熱できる。
【0020】
本実施の形態のフライヤ1は、食材を調理しない場合にも、油の温度を調理温度に維持するように構成されており、温度センサ42により測定された蓄熱体51の温度が調理温度よりも高ければ、電気ヒータ3による加熱は停止される。ここで、油槽2内には、熱容量が大きく熱伝導率の高い蓄熱体51が設けられているため、電気ヒータ3の発熱を停止しても、蓄熱体51の熱により油温を所定時間、所定温度に維持できる。これにより、電気ヒータ3を頻繁に加熱することを防止し、電気ヒータ3の電力を節約できる。しかも、蓄熱体51には、複数(12個)の貫通孔51Aが等間隔に形成されているため、蓄熱体51の表面積が広く、蓄熱体51の熱が油に効率良く伝達される。
また、温度センサ42は蓄熱体51に設けられているため、温度センサ42が油内に配置されないので、温度センサ42が、電気ヒータ3や油槽2内のメンテナンス、調理等の妨げにならない。
【0021】
さらに、油槽2の外側には断熱材21が取り付けられているため、油槽2から周囲への放熱を低減できるので、電気ヒータ3による加熱を頻繁に行うことを防止し、電気ヒータ3の消費電力を節約できる。また、断熱材21で周囲への放熱を低減することにより、室温の上昇を抑制して作業環境を改善することができ、また、冷房にかかる電力を節減することができる。
【0022】
蓄熱体及び断熱材を設けていない従来のフライヤでは、油温を175℃まで上昇させた後ヒータを停止すると、油温は約40分で100℃まで下降する。これに対し、本実施の形態のフライヤ1では、油温が175℃から100℃まで効果するのに約3時間掛かり、フライヤ1の保温性が従来に比べ著しく向上している。本実施の形態では、蓄熱体51の蓄熱効果及び断熱材21の断熱効果により、従来用いていた定格消費電力が3.2kWの電気ヒータを、定格消費電力が1.6kWの電気ヒータに変更することが可能となる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態によれば、油槽2内の底部2Aに、油温を所定時間、所定温度に維持する熱容量を有する蓄熱体51を配置し、この蓄熱体51の上に電気ヒータ3を配置する構成とした。このため、電気ヒータ3による加熱を停止しても、蓄熱体51の熱により油温を所定時間、所定温度に維持できるので、電気ヒータ3を頻繁に発熱させることを防止し、電気ヒータ3の電力を節約できる。また、食材を投入することで油温が低下しても、蓄熱体51の熱により、油温が所定温度に至るまでの時間を短くできる。
【0024】
また、本実施の形態によれば、油槽2の外側に断熱材21を設ける構成とした。この構成により、油槽2から周囲への放熱を低減できるので、電気ヒータ3を頻繁に発熱させることを防止し、電気ヒータ3の消費電力を節約できる。また、周囲への放熱を低減することにより、室温の上昇を抑制して作業環境を改善することができ、冷房にかかる電力を節減することができる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、蓄熱体51に温度センサ42を設け、温度センサ42が測定した蓄熱体51の温度に基づいて電気ヒータ3を制御する制御装置40を備える構成とした。この構成により、温度センサ42が油内に配置されないので、温度センサ42が調理等の妨げにならない。
【0026】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、電気ヒータ3と蓄熱体51とが固定されていなかったが、電気ヒータ3と蓄熱体51とを固定してもよい。この場合、操作レバー34の操作により、電気ヒータ3及び蓄熱体51を一体に油槽2から引き出すことができる。
また、上記実施の形態では、蓄熱体51の側面及び底面と油槽2との間の両方に隙間δ1,δ2を形成したが、蓄熱体51と油槽2との間に設ける隙間の箇所は任意であり、また、蓄熱体51と油槽2との間に隙間を形成しなくともよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、蓄熱体51をブロック状に形成していたが、蓄熱体51の形状はこれに限定されるものではない。本発明の変形例に係る蓄熱体を図4に示す。図4では、図3と同一部分には同一符号を付して示し、その説明を省略する。蓄熱体151は、複数の蓄熱片151Aを連結部材155で連結して構成されている。蓄熱片151Aは、熱容量が大きく熱伝導率の高い材料で形成される。蓄熱片151Aの個数、大きさ、及び材料は、蓄熱体51と同様に、必要とする所定の熱容量に応じて設定される。本実施の形態では、蓄熱片151Aを、例えばアルミニウムを用いて直径が約30mm、肉厚が約10mm、長さが約75mmの円筒状に形成し、複数個(図では18個)の蓄熱片151Aに紐状の連結部材155を通すことで環状の蓄熱体151を構成している。なお、蓄熱体151を複数設け、複数の151全体で所定の熱容量を満たすようにしてもよい。蓄熱片151Aの表面には、遠赤外線放射皮膜52と同様に、加熱されると遠赤外線を放射する遠赤外線放射皮膜152(例えば、セラミック)が形成されている。
【0028】
蓄熱体151には、温度センサ42が設けられている。本実施の形態では、一の蓄熱片151Aに溝151Bを形成し、この溝151Bに温度センサ42を挿入することで、蓄熱体51の温度を測定できるようにしている。
この構成においても、上記実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。これに加え、蓄熱体151を複数の蓄熱片151Aで構成したため、蓄熱片151Aの個数を変更することで、蓄熱体151の蓄熱容量や重さを容易に変更できる。
【0029】
また、上記実施の形態では、油槽の外側に断熱材を設けたが、断熱材を設けなくともよい。
また、上記実施の形態では、蓄熱体に遠赤外線放射皮膜を形成したが、遠赤外線放射皮膜を形成しなくともよい。
【0030】
また、上記実施の形態では、蓄熱体に温度センサを設け、温度センサが測定した蓄熱体の温度に基づいて電気ヒータを制御していたが、油槽の油内に温度センサを配置して油温に基づいて電気ヒータを制御してもよい。
また、上記実施の形態では、加熱手段として電気ヒータを例に挙げたが、加熱手段は、これに限定されるものではなく、例えばガス式や電磁誘導式の加熱手段であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 フライヤ
2 油槽
2A 底部
3 電気ヒータ(加熱手段)
21 断熱材
40 制御装置(制御手段)
42 温度センサ
51,151 蓄熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽と、この油槽内に配置されて油を加熱する加熱手段とを備えたフライヤにおいて、
前記油槽内の底部に、油温を所定時間、所定温度に維持する熱容量を有する蓄熱体を配置し、この蓄熱体の上に前記加熱手段を配置したことを特徴とするフライヤ。
【請求項2】
前記油槽の外側に断熱材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のフライヤ。
【請求項3】
前記蓄熱体に温度センサを設け、
前記温度センサが測定した前記蓄熱体の温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフライヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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