説明

フラッシュオーバー防止構造を有するPTC限流器

【課題】接触電極間のフラッシュオーバ現象の発生を防止することができるPTC限流器の提供を目的とする。
【解決手段】PTC特性を用いて電流を制限するPTC限流器において、PTC特性を有するPTC素子と、上記PTC素子を挟んで対向配置された上部及び下部の接触電極とを含み、上記上部の接触電極の端からPTC素子の端までの距離をa1(mm)、上記下部の接触電極の端からPTC素子の端までの距離をa2(mm)、PTC素子の厚さをb(mm)として、Lはa1+a2+b値の最小値とするとき、V/L<10及びV/B<50(但し、V(ボルト)はPTC限流器の定格電圧。)の条件を満たすことを特徴とするPTC限流器等を採用する。これによって、PTC限流器における電極間のフラッシュオーバー現象の発生を効果的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限流器に関するものであって、より詳しくは、PTC素子を用いた限流器において接触電極間のフラッシュオーバーが防止できるPTC限流器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、低圧、高圧系統の短絡電流に対する対策として、遮断機が広く用いられている。しかし、従来の遮断機は遮断時間が長くかかり予想事故電流値に対する限流機能がないため事故の波及効果の持続時間が相対的に長い。また、短絡電流遮断の失敗のときは、周辺の電力機器及び電力系統に与える影響がかなり大きい。従って、短時間内に系統短絡電流を有効に制限できる限流器に対する要求が益々高くなっている。
【0003】
限流器とは、電力系統で発生する過電流及び短絡電流を制限する機器であって、一般に、低圧、低電流領域においては、PTC(Positive temperature coefficient)特性を有する物質を用いてその機能を達成する場合がある。
【0004】
PTC特性を有する物質は常温においては相対的に抵抗が低くて電流をよく通過させる。しかし、周囲の温度が上昇したり許容値以上の電流が流入されて自体的に発熱する場合、抵抗が数百倍或いはその以上に急激に上昇するようになるので電流を制限することができる。従って、これを用いて回路素子を構成する場合、各種の回路を過電流から保護することができる。
【0005】
これと関連して、特許文献1(日本特許 公開平10‐321413号公報)には、PTCを用いた限流器が開示されている。この技術を図1に模式図として示した。従来のPTCを用いた限流器は、導電性粒子が混入されてPTC特性を有するPTCポリマー素子1、PTCポリマー素子1の両方の表面に溶着されて配置される第1電極2、3及び第1電極2、3の表面に電気的に接続された状態で配置される第2電極4、5から構成されている。
【0006】
このとき、上記限流器はPTCポリマー素子1の表面積が第1電極2、3の表面積より大きく、第1電極2、3の表面積は第2電極4、5の表面積より大きいか同じであるという条件を有する。このような構造により上記限流器は第1電極2、3の両端において発生する内部の短絡事故を有効に防止することができる。このようなPTC限流器は、PTC素子1の厚さによりPTC素子1の初期抵抗と素子がトリップされずに通電可能な電流密度が決定されるため、PTC限流器を高電圧、大電流の電力系統で用いるためには、厚さが厚すぎないPTC素子1を選択すべきである。しかし、PTC素子1の厚さが薄くなると、第1電極2、3間のフラッシュオーバーー(flashover)が起きやすくなる。従って、できる限り第1電極2、3間のフラッシュオーバーが起こらない範囲内で厚さが薄いPTC1素子を選択することが望ましい。即ち、PTC素子1の表面積と第1電極2、3の表面積を単純比較してPTC限流器を設計するのではなく、PTC素子1の厚さ要因まで考慮した最適の設計条件が提示される必要がある。
【0007】
【特許文献1】公開平10‐321413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するために創案されたものであって、PTC素子と接触電極間の接触面積の要因だけでなく、PTC素子の厚さ要因まで考慮し、PTC限流器においての接触電極間のフラッシュオーバの発生を防止することができるPTC限流器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明によるPTC限流器は、PTC特性を用いて電流を制限するPTC限流器において、PTC特性を有するPTC素子と、上記PTC素子を挟んで対向するように配置された上部及び下部の接触電極とを含み、上記上部の接触電極の端からPTC素子の端までの距離をa1、上記下部の接触電極の端からPTC素子の端までの距離をa2、PTC素子の厚さをbとして、Lはa1+a2+b値の最小値であると定義するとき、V/L<10及びV/b<50を満足することを特徴とする。ここで、VはPTC限流器の定格電圧であり、a1、a2、bの単位はmmであり、電圧Vの単位はボルトである。
【0010】
本発明に係るPTC限流器において、上記上部及び下部の接触電極とそれぞれ連結されて接触電極を系統回路と通電させる上部及び下部の電流リードをさらに含む事が好ましい。
【0011】
本発明に係るPTC限流器における、上記PTC素子は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エポキシ(EPOXY)、シリコーン(Silicon)及びポリビニルジフルオライド(PVDF)からなる群より選択される一つ以上のポリマーと、カーボン、金属及び金属酸化物からなる群より選択される一つ以上の電導性充填剤と、酸化防止剤とを含む事が好ましい。
【0012】
更に、本発明に係るPTC限流器においては、上記PTC素子は板状形態であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るPTC限流器において、上記接触電極をPTC素子の方に加圧する加圧手段をさらに含ませることが好ましい。
【0014】
そして、上記加圧手段の加圧力は大気圧(1bar)以上とすることが好ましい。
【0015】
本発明に係るPTC限流器における上記加圧手段は、上記PTC素子と、接触電極及び電流リードを受容するハウジングと、上記電流リードをPTC素子側に加圧できるように上記ハウジングの内側面に支持されて付勢された弾性部材とを含むことが好ましい。
【0016】
そして、上記加圧手段の異なる方法としては、上記PTC素子、接触電極及び電流リードを間に介在して配置された一対のプレートと、上記一対のプレートを相互締結して固定させる締結部材とを用いることが好ましい。より望ましくは、上記加圧手段は、上記電流リードをPTC素子側に加圧できるように上記プレートの内側面に支持されて付勢された弾性部材を用いる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるPTC限流器は、PTC素子と接触電極との間の接触界面面積を十分に確保した上で、接触電極の端部がPTC素子の端部から内側に位置するものとして、厚さ等の要因を考慮して所定の条件を満たすように設計することで、過電流等の流れた場合のフラッシュオーバ現象の発生を有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照しつつ、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。以下に説明を行うにあたり、本明細書及び請求範囲に用いられる用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者は自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されるべきである。従って、本明細書に記載された実施例と図面とに示された構成は本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願時点においてこれらに代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0019】
第1実施形態: 図2は、本発明の望ましい実施例によるPTC限流器を示す斜示図であり、図3は、図2のPTC限流器の断面図である。この図2及び図3を参照すると、本実施例によるPTC限流器は、PTC素子110、PTC素子110を間に介在して配置された一対の接触電極121、131とを含むことが理解できる。ここで言うPTC素子110は、上述したように、周囲温度の上昇につれて特定温度値で電気抵抗が急激に上昇して電力系統で過電流を抑制する素子である。
【0020】
このPTC素子110は、制限(遮断)しようとする電流値によって、物性の異なる構成素材から選択して用いるが、本実施例においては、25℃で比抵抗が100Ωm以下であり、電流供給によるジュール(Joule)熱が発生するスイッチング温度においての比抵抗は上記25℃比抵抗の10倍以上に上昇することが望ましい。また、PTC素子110は、電気的及び熱的安定性を保ちながら交流100V以上の電圧に耐えられ、1cm当り30kV以上の過電圧を印加するとき、フラッシュオーバーが発生しないように調節される必要がある。同時に、PTC素子110が、回路内に配されたとき、常時電流、例えば、1A前後の電流の通電が可能なことが要求される。従って、1A前後の電流の通電によってトリップしないようPTC素子材料を選択すべきである。また、正常運転電流の10倍以上の過電流が、通電時の1/2サイクル(周波数が60Hzである場合、1サイクルは16.7ms)以内に抵抗の上昇が起こり過電流を制限し短絡電流の大きさが大きくなるほど動作時間が速くなる特徴を有し、上記過電流の制限動作以後の数分以内に以前の状態に還元できるように作製されることが望ましい。
【0021】
そして、図2に示すように上記PTC素子110は板状構造であることが好ましく、板状である限り、円形、楕円形、または多角形等の状態で使用可能である。但し、本発明がこれに限定して解釈されるものでないことを明記しておく。また、その面積と厚さとは、PTC素子110の使用条件、即ち、常時電流と制限しようとする過電流、動作時間などの要因を考慮した設計が行われるので、これに対する詳細な説明は後述する。
【0022】
本実施例によると、PTC素子110は、PTC特性を有するポリマーから構成されることが望ましい。より具体的に言えば、PTC素子110は、ポリマーに電導性粒子を分散含有させた構造を有する。
【0023】
上記ポリマーは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エポキシ(EPOXY)、シリコーン(Silicon)及びポリビニルジフルオライド(PVDF)からなる群より選択された何れか1種以上のポリマーを用いることが好ましい。また、上記電導性粒子は、カーボン、金属及び金属酸化物からなる群より選択される1以上の材料で構成されたものであることが好ましい。更に、当該PTCポリマーの酸化を防止するために酸化防止剤をさらに追加添加することも好ましい。
【0024】
さらに望ましくは、上記PTCポリマーに、無機添加剤をさらに追加添加して常温での低抵抗特性及び高温での高抵抗特性をより向上させることも好ましい。
【0025】
そして、上記接触電極121、131は、PTC素子110の上下の接触面に設けられ、上部の接触電極121及び下部の接触電極131から構成され、接触抵抗を最小化するためにできる限りPTC素子110に密着されて設けられる。
【0026】
当該接触電極121、131は、銅箔またはその他の金属系列素子を用いて構成することが可能である。また、接触電極121、131は、例えば、ラミネーションまたはフリーコンタクト(free contact)方式などのなるべく接触抵抗を減らす形態で設けられることが望ましい。
【0027】
短絡事故のとき、電子反発力によって、PTC素子110と接触電極121、131間の界面が分離し、アーク及び異音が発生する場合もある。このようにアークが発生すると、PTC素子110が一部気化されて導電路を形成し両端の接触電極121、131間にフラッシュオーバーが起こる可能性がある。これを防止するためにPTC素子110の表面積、接触電極121、131の表面積及びPTC素子110の厚さと定格電圧との関係を考慮する製品設計が必要である。以下、これに関して詳しく説明する。
【0028】
まず、接触電極121、131の表面積は、PTC素子110の表面積より小さく設計する事が好ましい。これによって、接触電極121と接触電極131との両端の絶縁距離を長くしてフラッシュオーバーを防止することができる。
【0029】
また、本発明によるPTC限流器は、上記のような条件の他に、V/L<10(以下、単に「数1」と称する。)及びV/B<50(以下、単に「数2」と称する。)の条件を満たすことを特徴とする設計を行う。但し、ここでV(ボルト)は、PTC限流器の定格電圧を意味する。
【0030】
上記数1及び数2で用いた符号の意味は、図3に示したように、Lは、上部の接触電極121の端からPTC素子110の端までの距離であるa1(単位:mm)、下部の接触電極131の端からPTC素子110の端までの距離であるa2(単位:mm)、及びPTC素子110の厚さであるb(単位:mm)の総合の最小値を意味する。即ち、現実に測定したa1、a2、bの各測定値には、一定のバラツキがあるのが通常であり、この測定値の最小値を合計した値をLとして用いるという意味、又は、PTC素子の層が楕円形状で、接触電極が円形状をしている場合等は、PTC素子の端部と接触電極の端部との距離が測定位置による異なるため、この測定値の最小値を合計した値をLとして用いるという意味の双方を含むのである。また、VはPTC限流器の定格電圧(単位:ボルト)を意味する。
【0031】
PTC素子110及び接触電極121、131が、上記数1及び数2を満足するように設計すると、後述する実験例を通じてわかるように、PTC限流器が電極間フラッシュオーバーを発生することなく、効果的に限流作用を発揮する。
【0032】
より望ましくは、上記PTC限流器は、接触電極121、131を電力系統と通電させるための電流リード122、132をさらに含む。そして、電流リード122、132は、その一端が接触電極に電気的に連結され、他端は外部回路と連結されるように延長形成される。また、電流リード122、132は、金属系物質を用いて作製され、系統電流の通電容量に合う面積及び厚さを有することが望ましい。
【0033】
また、さらに望ましくは、上記限流器は、接触電極121、131と電流リード122、132間に介在する連結電極(図示を省略)が設けられる。上記連結電極は、相対的に電気抵抗が小さい金属から構成され、電力系統から限流器への通電がより円滑になるように機能する。
【0034】
第2実施形態: 図4には、本発明に係るPTC限流器の他の実施形態を示している。図4におけるPTC限流器の構成部材で、図2等の他の図面と同一の符号を用いた部材は、同一の機能をする部材であるので、上述の説明と重複した説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0035】
ここで、図4を参照すると、当該PTC限流器は、接触電極121、131をPTC素子110側に向けて加圧密着させる加圧手段をさらに含む。そして、上記加圧手段はハウジング440、及び弾性部材451、452を含む。
【0036】
ここで言うハウジング160は、PTC素子110、接触電極121、131の全部と、電流リード122、132の一部とを収容するためのものである。従って、電流リード122、132の一部は、ハウジング440を貫通して外部に延長されて電力系統と連結される。
【0037】
そして、弾性部材451、452は、上記ハウジング440の内側面によって支持され、電流リード122、132の外周部を包むように配され、電流リード122、132を接触電極121、131側に向けて加圧する。これによって、接触電極121、131が、PTC素子110側に加圧され密着性(接触性)が向上する。図4では、2つの弾性部材451、452を用いているが、一対の電流リード122、132の内、少なくとも一方の電流リードに設ければよい。
【0038】
一方、弾性部材451、452の加圧力は、短絡事故のときに発生する電子反発力によるPTC素子110と接触電極121、131との界面分離を防止するため、1bar以上での接触圧を得られるようにすることが望ましい。また、持続的な限流作用により、PTC素子110の厚さが1/2に減少したときにも前記界面分離を防止するため1bar以上の加圧力を保つことができるようにすることが望ましい。
【0039】
そして、弾性部材451、452には、例えば、電流リード(122及び/または132)の外周面を包む事の可能なスプリングコイルを採用することが好ましい。しかし、本発明に係るPTC限流器では、この弾性部材は、スプリングコイルに限定されて解釈されるものではなく、本発明の目的を達成するための範囲内で当業者により多様に変形した手段を採用することも可能である。
【0040】
第3実施形態: 図5には、本発明に係るPTC限流器の他の実施形態を示している。図5におけるPTC限流器の構成部材で、図2等の他の図面と同一の符号を用いた部材は、同一の機能をする部材であるので、上述の説明と重複した説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0041】
図5を参照すると、本発明に係るPTC限流器の加圧手段は、上部プレート571及び下部プレート572と、上部プレート571及び下部プレート572を締結する締結部材とを含む。上部プレート571と下部プレート572と間には、PTC素子110、接触電極121、131及び電流リード122、132が配置されて、電流リード122、132が外部回路と連結されるように、その中心部に貫通孔575を備える。
【0042】
上部プレート571及び下部プレート572の周辺には、締結孔573、574が備えられて締結部材が、締結孔573、574を通して上部プレート571と下部プレート572を相互固定させる。より具体的に言えば、締結孔573、574には、ボルト581を貫通させ、ナット582を用いてボルト581により上部プレート571と下部プレート572とを連結させ相互固定する。
【0043】
そして、上記加圧手段として、電流リード122、132の周囲に弾性部材451、452をさらに配することが好ましい。この弾性部材451、452は、上記プレート571、572の内側面に支持され、電流リード122、132の外周面に沿って長さ方向に圧縮して付勢する。これによって、接触電極121、131が、PTC素子110に対し加圧され密着性が向上し、電子反発力によるPTC素子110と接触電極121、131との界面分離を防止する。このときの弾性部材451、452の加圧力は、上述の第2実施形態と同様である。
【0044】
なお、図5において、弾性部材451、452は、両電流リード122、132の両方に配置されているが、少なくとも一方の電流リードにのみ配置される場合もあることを明記しておく。
【0045】
上述した第3実施形態において、加圧手段の構成が具体的に開示されたが、本発明に係るPTC限流器では、この加圧手段は、この実施形態に記載の内容に限定されて解釈されるものではなく、結果的にPTC素子110と接触電極121、131との間に付勢力を付加できる手段であれば良い。従って、本発明の目的を達成するための範囲内で当業者により変形した他の等価の手段を採用することも可能である。
【0046】
[実験例]
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実験例を挙げて説明する。PTC素子110の直径、PTC素子110の厚さ、接触電極121、131の直径を多様に変化させてPTC限流器を製造し、試験電圧を100V〜500Vに変化させた。本実験例の具体的な条件は下記表1に表した。なお、PTC素子としては、ポリエチレン樹脂100重量部に対して110重量部のカーボンブラック粒子を分散含有させたPTCシートを用いた。そして、接触電極は、通常の防錆処理を施した銅箔をPTCシートにラミネートした後、当該銅箔上にエッチングレジスト層を設け、接触電極を形成するためのエッチングレジストパターンを形成し、エッチング処理してレジスト剥離することにより形成したものである。
【0047】
【表1】

【0048】
そして、以下の表2には、上記各々の実験例の限流器が数1及び数2を満足するか否かとともに、上記表1と同じ条件で製造されたPTC限流器を作動させたときにフラッシュオーバーが発生するか否かを調べた結果を掲載した。
【0049】
【表2】

【0050】
上記表2から分かるように、数1及び数2を満足する場合にのみ電極間フラッシュオーバーが発生していないことが分かる。
【0051】
ここで図6には、フラッシュオーバーが発生した場合のPTC限流器の動作波形を表したグラフを掲載し、図7には、フラッシュオーバーが発生しなかった場合のPTC限流器の動作波形を表したグラフを掲載した。
【0052】
ここで、図6を参照すると、事故発生以後のPTC素子がトリップ動作をして事故電流が瞬時に減少し、その後急激に増加することがわかる。このような現象は、PTC素子の両端に発生した過度電圧によって、二つの電極間でフラッシュオーバーが発生し、大部分の事故電流が、このフラッシュオーバーを媒介として流れるために発生するものである。このようにフラッシュオーバーが発生すれば、瞬時に減少した事故電流が、その後急激に増加するため限流作用を良好に発揮しない。
【0053】
次に、図7を参照すると、事故が発生した一定時間以後に、PTC素子がトリップ動作をして事故電流を制限し、両電極間の絶縁が確保されているため、電極間フラッシュオーバーが発生せず、図6に見られた事故発生以降の電流の急激な上昇現象が起こらないことがわかる。従って、PTC素子の限流動作が有効に持続でき、事故電流を非常に小さい値に制限することができる。
【0054】
上述した実験例を通じて数1及び数2を満足するようにPTC限流器を設計すれば、接触電極間のフラッシュオーバーが防止され、PTC素子の限流作用が正常に動作する事になるのである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上での説明のように、本発明によるPTC限流器は、PTC素子と接触電極との間の接触界面面積の要因だけでなく、PTC素子の厚さ等の要因まで考慮し、高電圧、大電流の電力系統における現実のフラッシュオーバ現象が発生することを防止できる。このため送配電系統等の電路に流れる短絡電流、過負荷電流等の過電流の流れるのを効果的に防止して、送配電系統等の電路内に配置した各種機器が損傷を受けることもなくなる。即ち、限流器としての信頼性が向上することで、本発明に係るPTC限流器を用いた送配電系統等の使用信頼性も向上する
【0056】
なお、本発明は、限定された実施形態、図面、実験例とによって説明したが、これらによって本発明は限定を受けるものではなく、本発明の属する技術分野において通常の知識を有した者によって、本発明の技術思想と特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能なことを明記しておく。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来技術によるPTC限流器を示す断面図である。
【図2】本発明に係るPTC限流器(第1実施形態)を示す斜示図である。
【図3】図2のPTC限流器の断面図である。
【図4】本発明に係るPTC限流器(第2実施形態)を示す斜示図である。
【図5】本発明に係るPTC限流器(第3実施形態)を示す斜示図である。
【図6】限流作用が良好に動作しない場合のPTC限流器の動作波形を示すグラフである。
【図7】限流作用が良好に動作した場合のPTC限流器(本発明によるPTC限流器)の動作波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
110 PTC素子
121、131 接触電極
122、132 電流リード
440 ハウジング
451、452 弾性部材
571、572 プレート
581、582 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC特性を用いて電流を制限するPTC限流器において、
PTC特性を有するPTC素子と、
上記PTC素子を挟んで対向するように配置された上部及び下部の接触電極とを含み、
上記上部の接触電極の端からPTC素子の端までの距離をa1(mm)、上記下部の接触電極の端からPTC素子の端までの距離をa2(mm)、PTC素子の厚さをb(mm)として、Lはa1+a2+b(mm)値の最小値であると定義するとき、
V/L<10及びV/B<50(但し、V(ボルト)はPTC限流器の定格電圧。)の条件を満たすことを特徴とするPTC限流器等
【請求項2】
上記上部及び下部の接触電極とそれぞれ連結されて接触電極を系統回路と通電させる上部及び下部の電流リードをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のPTC限流器。
【請求項3】
上記PTC素子は、板状形態であることを特徴とする請求項1に記載のPTC限流器。
【請求項4】
上記PTC素子は、
高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エポキシ(EPOXY)、シリコーン(Silicon)及びポリビニルジフルオライド(PVDF)からなる群より選択される一つ以上のポリマーと、
カーボン、金属及び金属酸化物からなる群より選択される1以上の成分で構成した電導性粒子と、
酸化防止剤とを含むことを特徴とする請求項1に記載のPTC限流器。
【請求項5】
上記接触電極を上記PTC素子の方に加圧する加圧手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のPTC限流器。
【請求項6】
上記加圧手段の加圧力は、大気圧以上であることを特徴とする請求項5に記載のPTC限流器。
【請求項7】
上記上部及び下部の接触電極とそれぞれ連結されて接触電極を系統回路と通電させる上部及び下部の電流リードをさらに含み、
上記加圧手段は、上記PTC素子、上記接触電極及び上記電流リードを受容するハウジングと、
上記電流リードをPTC素子側に加圧できるように上記ハウジングの内側面に支持されて付勢された弾性部材とを含むことを特徴とする請求項5に記載のPTC限流器。
【請求項8】
上記上部及び下部の接触電極とそれぞれ連結されて接触電極を系統回路と通電させる上部及び下部の電流リードをさらに含み、
上記加圧手段は、上記PTC素子、上記接触電極及び上記電流リードを間に介在して配置された一対のプレートと、
上記一対のプレートを相互締結して固定させる締結部材とが含まれることを特徴とする請求項5に記載のPTC限流器。
【請求項9】
上記電流リードをPTC素子側に加圧できるように上記プレートの内側面に支持されて付勢された弾性部材をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のPTC限流器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−196901(P2006−196901A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4681(P2006−4681)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(505297002)エルエス ケーブル リミテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】LS Cable Ltd.
【住所又は居所原語表記】19−20F ASEM Tower 159 Samsung−dong, Gangnam−gu, Seoul 135−090 Republic of Korea
【出願人】(506013623)エルエス インダストリアル システム カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】LS Industrial Systems Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84−11, Namdaemunno5(o)−ga, Jung−gu, Seoul 100−801 Republic of Korea
【Fターム(参考)】