説明

フラッシュランプ及びフラッシュランプ発光装置

【課題】両端に第1電極と第2電極を対向配置させた長尺状の発光管よりなるフラッシュランプにおいて、フラッシュランプを長尺化しても、パルス幅の伸びを抑制しつつ、充電電圧を小さくすることができる構造のフラッシュランプ及びフラッシュランプ発光装置を提供することである。
【解決手段】前記発光管内の中間部に第3電極が配設され、該第3電極は隣り合う電極に対向する放電端部を有し、当該隣り合う全ての電極間で個別かつ同時に閃光放電することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフラッシュランプ及びフラッシュランプ発光装置に関するものであり、特に、ガラス基板上の非晶質シリコン膜を多結晶化するために用いられるフラッシュランプ及びフラッシュランプ発光装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの用途において、薄膜トランジスタ製造時にガラス基板上の非晶質シリコン膜を多結晶化するために、フラッシュランプが用いられている。
例えば、特開2003−209054号公報(特許文献1)には、液晶ディスプレイ用として、スイッチング素子に多結晶シリコン薄膜トランジスタ(TFT)が用いられており、これを作製する際に例えば非晶質シリコンに光を照射して多結晶化することが記載されており、その光源としてフラッシュランプを利用することが開示されている。
また、特開2009−164080号公報(特許文献2)には、フラッシュランプの具体的な構成と、このフラッシュランプを発光させるための給電装置が開示されている。
【0003】
ところで、ガラス基板上の非晶質シリコンを多結晶化するとき、その多結晶シリコンの層が厚いとガラス基板が反ってしまうという問題が生じることがある。
この多結晶シリコンの層の厚さは、フラッシュランプのパルス幅によって決まり、例えばパルス幅が長いと非晶質シリコンの深いところまで温度上昇してしまい、その結果、厚い多結晶シリコンの層が形成されてしまう。この多結晶シリコンの層が厚くなるとガラス基板が反ってしまうので、フラッシュランプのパルス幅は短いほうが好ましい。
【0004】
一方で、ガラス基板は年々大型化しており、これに併せてフラッシュランプの長尺化が望まれているが、フラッシュランプを長尺にしてしまうと、パルス幅が伸びてしまい、その結果前述したように、ガラス基板に反りが生じてしまうという不具合が生じている。
【0005】
このように、フラッシュランプを長尺化するとパルス幅が伸びてしまう理由としては、フラッシュランプの長尺化に伴って必然的に、電極間の発光長も長くなってしまい、その結果、ランプインピーダンスが増え、パルス幅が伸びてしまうことにある。
このようなパルス幅の伸びを抑制しつつ、必要エネルギーを維持しながら発光するためには、充電電圧を上げ、コンデンサ容量を下げる方向が考えられるが、時定数の制約と大きな充電電圧とが必要となり、これを実現しようとすると非常に大掛かりな装置となってしまい現実的ではなかった。
【0006】
しかして、特許文献2でも開示されているように、フラッシュランプの一般的な構造が図8に示されており、フラッシュランプ30は、発光管31の両端に電極32、33を有し、該発光管31に沿ってトリガ電極34が配設され、該トリガ電極34はトリガ回路35に接続されている。
上記の構成において、その一具体例をあげると、両電極32、33の電極間距離が500mmであり、必要なエネルギーが1200Jであって、そのパルス幅を0.1ms以下にしようとすると、インダクタンス容量はL=10μHとなり、コンデンサ容量が70μFである場合、その充電電圧は、5.9kVと極めて大きな電圧が必要になってしまい、あまり現実的ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−209054号公報
【特許文献2】特開2009−164080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、両端に第1電極と第2電極が配置された長尺状の発光管よりなるフラッシュランプ及びフラッシュランプ発光装置において、フラッシュランプを長尺化しても、パルス幅の伸びを抑制しつつ、充電電圧を小さくすることができる構造のフラッシュランプ及びフラッシュランプ発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明に係るフラッシュランプは、両端に第1電極と第2電極を対向配置させた長尺状の発光管よりなるフラッシュランプにおいて、前記発光管内の中間部に第3電極が配設され、該第3電極は隣り合う電極に対向する放電端部を有し、当該隣り合う全ての電極間で個別かつ同時に閃光放電することを特徴とする。
また、前記第3電極が複数設けられていることを特徴とする。
また、前記第3電極は、共通する電極軸の両端に設けられた2つの電極頭部を備え、前記電極軸には、前記発光管の外部に突出する外部リードが接続されていることを特徴とする。
また、前記第3電極は1つの電極頭部を備えるとともに、該電極頭部の両端に放電端部を有し、当該電極頭部には前記発光管の外部に突出する外部リードが接続されていることを特徴とする。
また、前記第3電極は、前記発光管に取り付けられた電極保持体によって保持されていることを特徴とする。
また、前記電極保持体には発光管内部空間を連通する貫通孔が穿設されていることを特徴とする。
また、前記第3電極は、該第3電極に接続された外部リードによって支持されていることを特徴とする。
更には、両端に第1電極と第2電極を対向配置させた長尺状の発光管よりなるフラッシュランプと、該フラッシュランプを内部に有する筐体と、を備えたフラッシュランプ発光装置において、前記発光管内の中間部に第3電極が配設され、該第3電極は隣り合う電極に対向する放電端部を有し、当該隣り合う電極間で個別かつ同時に閃光放電するとともに、前記第3電極が前記筐体に保持されていることを特徴とする。
また、前記フラッシュランプの背面には、反射鏡が設けられ、前記第3電極は、当該反射鏡を介して筐体に保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明のフラッシュランプによれば、両端に第1電極と第2電極を対向配置させた長尺状の発光管内の中間部に第3電極が配設され、該第3電極は隣り合う電極に対向する放電端部を有し、当該隣り合う全ての電極間で個別かつ同時に閃光放電することにより、ランプの全長を長尺化しても、電極間距離を小さくしてパルス幅を小さくでき、充電電圧を小さくすることができるという効果を奏するものである。
また、前記第3電極を複数個設けることにより、隣接する電極間の距離は更に短くなり、電極間のインピーダンスを下げることができて、低い充電電圧であってもパルス幅が伸びることを抑制できる。
また、前記第3電極を保持する電極保持体に発光管内部空間を連通する貫通孔が穿設されていることにより、発光管内において、第1電極と第3電極との電極間、及び、第2電極と第3電極との電極間の、それぞれ個別の電極間におけるガス圧を均一にすることができ、第1電極と第3電極との電極間、及び、第2電極と第3電極との電極間のそれぞれの閃光放電のパルス幅を均一にすることができる。
更には、一般的に、フラッシュランプは、閃光放電時に放電による振動が生じることが知られており、その振動が大きい場合、フラッシュランプの固定が不安定になり、被照射物に向かって落下・破損することや、フラッシュランプと被照射物の位置関係が変わってしまって、所望の処理ができなくなってしまうことがあるが、本発明に係るフラッシュランプ発光装置においては、第3電極が筐体に固定されていることで、その振動を抑制することができて、これらの不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフラッシュランプを備えた発光装置の概略図。
【図2】本発明のフラッシュランプの第3電極部分の拡大図。
【図3】本発明の第2の実施例。
【図4】本発明の第3の実施例。
【図5】本発明の第4の実施例。
【図6】本発明の第3電極を複数設けた例。
【図7】本発明のフラッシュランプを千鳥配置した例。
【図8】従来のフラッシュランプ発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のフラッシュランプを配置したフラッシュランプ発光装置の概略図である。
フラッシュランプ1は長尺の発光管2の両端部に第1電極3と第2電極4とが配置されており、発光管2の内部の中間部には、第3電極5が設けられている。この発光管2は、石英ガラス(SiO)などのガラス部材や、サファイア(単結晶アルミナ:Al)など透光性セラミックスを用いることができる。
そして、このフラッシュランプ1においては、前記第1電極3と第3電極5間と、および、前記第2電極4と第3電極5の間で、それぞれ個別かつ同時に閃光放電するものである。
図2に前記第3電極5部分の詳細が示されていて、該第3電極5は、共通する電極軸6と、その両端に設けられた電極頭部7、8とからなる。これらの電極頭部7、8は、それぞれ第1電極3と対向する放電端部10と、第2電極4と対向する放電端部11とを有する。
【0013】
前記発光管2内には、これに当接する電極保持体12が封止材13によって気密的に設けられており、前記電極軸6はこの電極保持体12を貫通して支持されている。この電極保持体12には貫通孔14が穿設されていて、その両端の発光空間を連通している。
また、当該電極保持体12は、例えばアルミナなどのセラミックス材料や、アルミニウムなどの金属材料が用いられ、前記封止材13は、電極保持体12がセラミックス材料の場合、例えばフリットガラスなどのガラス部材を用いることができ、電極保持体12が金属材料の場合、ロウ材を用いることができ、このロウ材を採用する場合は、ロウ材と発光管との接合強度を高めるため、発光管2のロウ材が塗布される部分をあらかじめメタライズしておくことが好ましい。
【0014】
前記電極軸6には外部リード15が接続され、該外部リード15は電極保持体12を貫通して、発光管2の外部に延出している。
図1も参照して、このフラッシュランプ発光装置では、フラッシュランプ2の上方に配設された反射鏡20が、反射鏡支持体21、21によって筐体22に支持されている。この反射鏡20の開口部22にはボルト23aとナット23bとからなる固定部材23が取り付けられている。
前記外部リード15は、この固定部材23を貫通して伸び、先端のネジ部にナット24が螺合し、該ナット24により給電線25の先端の圧着端子26が挟持されていて、前記外部リード15には該圧着端子26を介して図示しない給電装置から給電される。
【0015】
図1を参照して、筐体22の外部には、前記第1電極3と第3電極5間、および、第3電極5と第2電極4間を結ぶ配線中には、それぞれ第1コンデンサAと第2コンデンサBが配設されている。
上記構成において、第1〜3電極は、不図示の電源に接続され、例えば第1電極3及び第2電極4が高圧側、第3電極5が低圧側としてコンデンサA、Bに接続され、これらコンデンサA、Bに所定のエネルギーが蓄えられた状態で、第1〜3電極3、4、5をまたがって設けられる不図示のトリガによって、第1電極3と第3電極5の電極間、及び、第2電極4と第3電極5の電極間のそれぞれ個別の電極間に、同時に閃光放電が生じ、被照射物(ワーク)Wに対してフラッシュランプからの光を照射することができる。
ここにおいて、一般的に、フラッシュランプは、閃光放電時に放電による振動が生じることが知られているが、本発明に係るランプにおいては、第3電極5が反射鏡20を介して筐体22に固定されていることで、その振動を抑制することができる。
【0016】
ところで、前記発光管2内には、キセノンガスなどの発光ガスが封入されているが、この種フラッシュランプにおいては、電極間におけるパルス幅は、発光ガスのガス圧によって変動する。
本発明においては、電極保持体12に貫通孔14が穿設されているので、該電極保持体12の両側の放電空間はこの貫通孔14によって連通され、そのガス圧を均一化することができる。図1の例でいえば、第1電極3と第3電極5間、および、第3電極5と第2電極4間の放電空間のガス圧を均一化でき、従って、各電極間の閃光放電のパルス幅を均一にすることができるものである。
【0017】
また、本発明に係るフラッシュランプ装置においては、各電極への給電のためのコンデンサが必要になるが、コンデンサと高圧側の電極との距離が離れてしまうと、パルス幅が伸びてしまうという問題がある。
このため、図1においては、第1電極3及び第2電極4を高圧側の電極としたとき、該第1電極3と第3電極5との間での閃光放電のためのコンデンサAと、第2電極4と第3電極5との間での閃光放電のためのコンデンサBとを設け、各コンデンサは低圧側の第3電極5よりも高圧側の第1電極3及び第2電極4に近接させて配置される。
このように、各電極間に対応するコンデンサを個別に設け、その電極間における高圧側にコンデンサを近接させることにより、各電極間での閃光放電のパルス幅が伸びることを抑制できる。
【0018】
上記実施例においては、電極保持体12は、発光管2の内面に設けられているが、図3に示すものでは、発光管2の外面において当接されるようにしてもよい。即ち、電極保持体12には、発光管2の外部に位置してフランジ12aが形成され、該フランジ12aが発光管2の外面に封止材13によって密閉封止されている。その他の構成については図2の構成と同様である。
なお、前記図2、図3における電極保持体12は、金属部材など電気伝導性を有する部材で構成することで、電極軸6と外部リード15と直接接続することなく、両者を電気的に接続する機能を持たせることもできる。
【0019】
上記の実施例では、いずれも電極保持体12によって第3電極5を支持する構成としたが、図4では、該電極保持体12を設けることなく、外部リード15によって直接第3電極5を支持することもできる。即ち、外部リード15が発光管2を貫通して、第3電極5の電極軸6に接続され、これを支持するものである。この場合、前記外部リード15は、発光管2に封止材13によって密閉封止される。
こうすることにより、電極保持体を別途用意する必要がなく、発光管2には、外部リード15が貫通する1つの貫通孔を設けるだけでよい。
【0020】
更には、第3電極5を1つの電極頭部のみで構成することもできる。
図5に示されるように、第3電極5は1つの電極頭部から構成され、その両端が放電端部10、11を構成し、それぞれ、第1電極3と第2電極4に対向配置される。これによれば、電極軸を省いたので、その分だけ電極の短尺化が図られる。
なお、その他の構成は図4の構成と同様である。
【0021】
上記実施例では、第3電極5が1つのものを例示したが、図6に示すように、更に、発光管2が長尺化する場合には、複数の第3電極5、5を設けることもできる。その場合は、当然ながら、閃光放電は各隣接する電極間でなされ、即ち、第1電極3とこれに隣接する第3電極5間、第2電極4とこれに隣接する第3電極5間、及び、隣接する各第3電極間5において放電が生成されるものである。
【0022】
また、大型のワークに対してフラッシュランプを配置する場合、図7に示すように、複数のフラッシュランプ1、1を千鳥状に配置して対応することができる。このとき、各隣接するランプ1では、第3電極5が同じ位置に横並びしないようにずらせて配設することが好適である。これにより、第3電極5下方での照度低下が重ならないようにできる。
なお、この実施例では、発光管2の材料としてサファイア(単結晶アルミナ:Al)などの透光性セラミックスを用いたものを示したが、この場合には、両端の封止部のバーナー加工が困難であることから、発光管2の端部にフリットガラスなどの封着剤27を介したベース28によって封止構造を形成すればよい。
【0023】
以上説明したように、本発明に係るフラッシュランプおよびフラッシュランプ発光装置によれば、両端に電極を備えた発光管内部の中間部に第3電極を配設し、全ての隣り合う電極間で個別に且つ同時に閃光放電することにより、ランプの全長を長尺化しても、電極間距離を小さくしてパルス幅を小さくでき、充電電圧を小さくすることができるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0024】
1 フラッシュランプ
2 発光管
3 第1電極
4 第2電極
5 第3電極
6 電極軸
7、8 電極頭部
10、11 放電端部
12 電極保持体
13 封止材
14 貫通孔
15 外部リード
20 反射鏡
21 反射鏡支持体
22 筐体
23 固定部材
25 給電線
26 圧着端子
27 封着剤
28 ベース
W ワーク




【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に第1電極と第2電極を対向配置させた長尺状の発光管よりなるフラッシュランプにおいて、
前記発光管内の中間部に第3電極が配設され、該第3電極は隣り合う電極に対向する放電端部を有し、当該隣り合う電極間で個別かつ同時に閃光放電することを特徴とするフラッシュランプ。
【請求項2】
前記第3電極が複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフラッシュランプ。
【請求項3】
前記第3電極は、共通する電極軸の両端に設けられた2つの電極頭部を備え、前記電極軸には、前記発光管の外部に突出する外部リードが接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフラッシュランプ。
【請求項4】
前記第3電極は1つの電極頭部を備えるとともに、該電極頭部の両端に放電端部を有し、当該電極頭部には前記発光管の外部に突出する外部リードが接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフラッシュランプ。
【請求項5】
前記第3電極は、前記発光管に取り付けられた電極保持体によって保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフラッシュランプ。
【請求項6】
前記電極保持体には発光管内部空間を連通する貫通孔が穿設されていることを特徴とする請求項5に記載のフラッシュランプ。
【請求項7】
前記第3電極は、該第3電極に接続された外部リードによって支持されていることを特徴とする請求項3または4に記載のフラッシュランプ。
【請求項8】
両端に第1電極と第2電極を対向配置させた長尺状の発光管よりなるフラッシュランプと、該フラッシュランプを内部に有する筐体と、を備えたフラッシュランプ発光装置において、
前記発光管内の中間部に第3電極が配設され、該第3電極は隣り合う電極に対向する放電端部を有し、当該隣り合う電極間で個別かつ同時に閃光放電するとともに、前記第3電極が前記筐体に保持されていることを特徴とするフラッシュランプ発光装置。
【請求項9】
前記フラッシュランプの背面には、反射鏡が設けられ、前記第3電極は、当該反射鏡を介して筐体に保持されていることを特徴とする請求項7に記載のフラッシュランプ発光装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate