説明

フラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネス

【課題】非直線状の配線スペースにも折り曲げることなく蛇行させて、容易に配線が可能なフラットケーブルを提供する。
【解決手段】並列に配置された複数本の電線2と、電線2の並列方向に沿って複数本の電線2間を縫うように織り込まれた繊維部材3と、からなるフラットケーブル1において、電線2は、最外層が20%以上100%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さと、を有する層からなり、繊維部材3は、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維で形成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、ノートパソコン、液晶テレビ等の電子機器内に配線するのに好適なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ、ノートパソコン、液晶テレビ等の電子機器において、電子機器の操作等を行うための本体部と液晶ディスプレイ等の表示部とを繋ぐ連結部等に配線される信号伝送用の配線材には、従来、比較的可撓性があると共に、フラット状で薄型化された電子機器の内部に配置可能なフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit:FPC)がよく用いられている。
【0003】
また、FPCに替わる配線材として、複数の細径化された電線(例えば、同軸ケーブル)をフラット状に並べ、このフラット状に並べられた電線の長手方向に対して略直交するようにポリエステル製の繊維部材を、各電線間を縫うように織り込んだフラットケーブルがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
例えば、特許文献1には、中心導体とその外周に被膜された保護被膜層とを有するケーブルを、複数本、平面状に並置してフラット状に成形し、並置されて隣接するケーブルを、所定本数毎に横糸で織って集合したフラットケーブル(平型ケーブル)であって、並置されたケーブルの幅方向の側部に、縦糸が並置されており、横糸が縦糸と比較して伸び率が高いフラットケーブルが開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、フラットケーブルを所定の位置で180度に曲げてU字形状に変形させたときに、曲げた部分の横糸が伸長し、これに伴って曲げた部分のケーブルは、ケーブルと横糸との編み目から逃げることが可能になるため、フラットケーブルの平面状態を維持したまま湾曲変形させることができ、その形状を保持することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235024号公報
【特許文献2】特開2001−101934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カメラ等の電子機器内にフラットケーブルからなる配線材を配線する際には、フラットケーブルを電子機器内に配置された他の部材と重ならないように他の部材間の空いた配線スペースに配線することが多い。一方、最近の電子機器では小型化が望まれており、配線材の配線スペース(特に高さ)も制限される傾向にある。このため、このような配線ペースが制限される部分に配線する配線材として、図4に示すような他の部材30,31を避けるように幅方向(電線の並列方向)に蛇行させることで、配線方向を変えることもできるフラットケーブル32が強く望まれている。
【0008】
特許文献1,2に開示されているような従来のフラットケーブルでは、所定の位置を180度に折り曲げるような配線のときには有効であるが、蛇行させて配線したり、蛇行させたままの形状を保持させて配線したりするのは難しいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、非直線状の配線スペースに蛇行させて、容易に配線が可能なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、並列に配置された複数本の電線と、前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれた繊維部材と、からなるフラットケーブルにおいて、前記電線は、最外層が20%以上100%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さと、を有する層からなり、前記繊維部材は、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維で形成されているフラットケーブルである。
【0011】
前記最外層は、プラスチックテープからなるテープ層であると良い。
【0012】
前記テープ層は、前記プラスチックテープを螺旋状に巻き付けして形成された第1のテープ層と、前記第1のテープ層上に、前記第1のテープ層とは異なる巻き付け方向に前記プラスチックテープを螺旋状に巻き付けして形成された第2のテープ層と、を有していると良い。
【0013】
前記プラスチックテープは、延伸されて形成された薄型プラスチックテープであり、前記薄型プラスチックテープの内側に接着層が形成されていると良い。
【0014】
前記繊維部材は、前記電線の長手方向における長さ10mmあたり20本以上30本以下の割合で織り込まれていると良い。
【0015】
前記繊維部材は、複数本のモノフィラメントからなる繊維糸を複数本縦添えして形成されていると良い。
【0016】
また、本発明は、前記のいずれかのフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末部分に接続された接続端子と、を有しているケーブルハーネスである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非直線状の配線スペースに蛇行させて、容易に配線が可能なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフラットケーブルを用いたケーブルハーネスを 示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るフラットケーブルに用いられる電線の一例を示す断面図である。
【図3】実施例における並列方向へのスライド特性の評価方法を説明する図である。
【図4】フラットケーブルの配線方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るフラットケーブルを用いたケーブルハーネスを示す平面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係るフラットケーブル1は、並列に配置された複数本の電線2と、電線2の並列方向(電線2の長手方向に対して略直交する方向)に沿って複数本の電線2間を縫うように織り込まれた繊維部材3と、からなる。
【0022】
このフラットケーブル1は、複数本の電線2を並列に配置させる工程と、繊維部材3を電線2の並列方向に沿って複数本の電線2間を縫うように織り込む工程と、繊維部材3を加熱する工程と、を含む製造方法にて製造される。
【0023】
この繊維部材3を加熱する工程は、例えば、100℃以上120℃以下の温度で加熱する。このとき、繊維部材3は、その表面が水分を含有した状態で、100℃以上120℃以下の温度で加熱する熱処理が行われることが望ましい。
【0024】
なお、フラットケーブル1を得るための熱処理の方法としては、例えば、繊維部材3が電線2間に織り込まれて形成されたフラットケーブル本体に、繊維部材3の表面に水分を含ませる処理を施した後、100℃以上120℃以下に加熱された加熱ロールを用いて、その加熱ロールを繊維部材3の表面に沿わせるようにフラットケーブル本体の長手方向に移動させることで、繊維部材3を加熱する方法、或いは恒温槽などの加熱処理装置内にフラットケーブル本体を配置させた後、繊維部材3の表面に水蒸気(スチーム)等を噴霧して繊維部材3の表面に水分を含ませながら100℃以上120℃以下の温度で加熱する方法などがある。また、前述の方法において、水蒸気を噴霧する機能を有する加熱ロールを使用して繊維部材3の表面に水分を含ませながら加熱するようにしても良い。この熱処理により、繊維部材3が収縮されて各電線2が綺麗に整列された状態で保持される。この熱処理により、フラットケーブル本体の幅が、例えば、15mm程度から11mm程度まで収縮してフラットケーブル1が得られる。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係るフラットケーブル1に用いられる電線2の一例を示す断面図である。
電線2は、複数本の銅線を撚り合わせて形成された内部導体21と、内部導体21の外周に設けられた絶縁体22と、絶縁体22の外周に複数本の導体をスパイラル状に横巻きして形成された外部導体23と、外部導体23の外周に設けられたジャケット24とからなる同軸ケーブル20で構成される。
【0026】
絶縁体22は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて形成されたものからなる。
【0027】
また、外部導体23は、軟銅線などの金属線(表面がめっき処理されているものを含む)からなる導体(単線又は撚線)を用いて形成される。
【0028】
最外層としてのジャケット24は、20%以上100%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さと、を有する層からなる。これは、ジャケットの伸び率が20%未満となるとフラットケーブルとしたときの可撓性が大きく低下してしまい、幅方向にフラットケーブルの一部を平行移動させて蛇行させることが難しくなる。また、ジャケットの伸び率が100%超となるとフラットケーブルの一部を平行移動させて蛇行させる際に、フラットケーブルの変形した部分が平行移動させた方向と反対の方向へ反発する力を、変形した部分に効果的に付与することができないためである。これら特性を満足する材料としては、例えば、PETがある。
【0029】
この最外層は、プラスチックテープからなるテープ層であり、テープ層は、プラスチックテープを螺旋状に巻き付け(例えば、ラップ巻)して形成された第1のテープ層25と、第1のテープ層25上に、第1のテープ層25とは異なる巻き付け方向にプラスチックテープを螺旋状に巻き付け(例えば、ラップ巻)して形成された第2のテープ層26と、を有している。なお、最外層はテープ層とする以外にも上述した伸び率、引張強さを有する層であれば、PETなどの樹脂を押出被覆するなどして形成された層であっても良い。
【0030】
最外層がテープ層からなる場合、プラスチックテープは、延伸されて形成された伸び率が30%以上140%以下の薄型プラスチックテープ(例えば、幅2〜3mm、厚さ5μm以下)であることが好ましい。これは、伸び率が30%未満、あるいは140%超となると繊維部材3を加熱する工程の際の熱によって電線2の最外層が上述した伸び率、引張強さの範囲を満たさなくなってしまうおそれがあるためである。なお、最外層をテープ層とする場合、最外層の伸び率、及び引張強さは、使用するテープの厚さやテープを巻き付けるときのピッチなど適宜調整することにより変更が可能である。
【0031】
また、第1のテープ層25は、薄型プラスチックテープ25bの内側(外部導体側)に金属層25aを蒸着(例えば、銅を0.1〜0.3μmの厚さで蒸着)させてなるシールドテープで形成されていることが好ましく、第2のテープ層26は、薄型プラスチックテープ26bの内側(第1のテープ層25側)に接着層26aを形成してなる接着テープで形成されていることが好ましい。なお、テープ層を1層で形成する場合、シールドテープ、接着テープを単独で使用することができる。また、シールドテープの最内側に接着層を有していても良い。また、第1のテープ層25、第2のテープ層26を共に接着テープで形成しても良い。
【0032】
通常、同軸ケーブルなどの電器電線分野においては、同軸ケーブルが屈曲した場合に伝送特性が低下しないようにするために、フッ素樹脂を外部導体の外周に押出被覆する押出成形や、PETなどからなるプラスチックテープを巻き付けすることで、最外層としてのジャケットを柔らかい層(所謂、伸び率が大きく、かつ引張強さが小さい層)とし、同軸ケーブルに優れた可撓性を付与する。
【0033】
このような従来の最外層では、電線に優れた可撓性を付与することができるものの、このような電線を用いてフラットケーブルとした場合に、フラットケーブルを蛇行させて配線したり、蛇行させたままの形状を保持させて配線したりすることは難しい。
【0034】
そこで本発明者らは、電線2の最外層の硬さに注目し、最外層を、20%以上100%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さとを有する従来に比べて硬い層とすることで、このような電線を用いて形成したフラットケーブルの一部を変形させて幅方向へ平行移動させた場合に、変形させた部分(変形部)に平行移動させた方向と反対の方向へ反発する力(反発力)を、フラットケーブルの平行移動を阻害することなく効果的に付与することができることを見出した。この知見に基づき、非直線状の配線スペースに蛇行させて配線したり、蛇行させたままの形状を保持させて配線したりすることができるフラットケーブルの提供に至った。
【0035】
電線2の外径は、カメラ、ノートパソコン、液晶テレビ等の連結部へ通すことを考慮すると、0.35mm以下であることが好ましい。
【0036】
繊維部材3は、各電線2間をフラットケーブル1の長手方向の一端から他端(図示左側から右側)まで幅方向の一側から他側(図示下側から上側)へジグザグに往復しながら、複数本の電線2を長手方向でフラット状に固定するように織り込まれる。
【0037】
このとき、繊維部材3は、フラットケーブル1の幅方向(電線2の並列方向)の中央部において、2本以上の電線2を1ユニットとして縫うように織り込まれると共にフラットケーブル1の幅方向の端部において、1本の電線を1ユニットとして縫うように織り込まれると良い。なお、フラットケーブル1の幅方向の中央部とは、フラットケーブル1の中心軸上に限られず、その近傍も含まれる。また、フラットケーブル1の幅方向の端部とは、フラットケーブル1の幅方向の最外位置に限られず、その近傍も含まれる。
【0038】
このような構成とすることにより、繊維部材3が1本の電線2を1ユニットとして縫うように織り込まれる場合に比べて、織り込まれる回数が少なくて済むと共にフラットケーブル1の幅を小さくすることができる。
【0039】
この繊維部材3は、フラットケーブル1の全長に亘って織り込まれるが、機器側と接続するための接続端子4の取り付けを容易にするために、フラットケーブル1の長手方向の両端部の繊維部材3は除去される。
【0040】
繊維部材3の織り込まれる割合は、フラットケーブル1の全長に亘って一定、又は、フラットケーブル1の長手方向の中央部よりも両端部において小さくすると良い。繊維部材3の織り込まれる割合を、フラットケーブル1の長手方向の中央部よりも両端部において小さくすることで、フラットケーブル1の形状をフラット状に保持すると共に、ケーブルハーネスとするためにフラットケーブル1の端末部分に接続端子4を取り付ける際の繊維部材3の除去作業が容易になる。
【0041】
なお、繊維部材3の織り込まれる割合は、フラットケーブル1(電線2)の長手方向の所定長さ(Lmm)の範囲内に織り込まれている繊維部材3の本数(N本)に基づいて得られる関係式「(d×N)/L」(dは、繊維部材の外径)で表され、好ましくは電線2の長手方向における長さ10mmあたり20本以上30本以下の割合で繊維部材3が織り込まれていると良い。これにより、フラットケーブル1を折り曲げたり、蛇行させたりしたときに、繊維部材3の編み目から電線2が露出することがなく、また、あまり逃げることがなくなるので、フラットケーブル1の一部を変形させて幅方向へ平行移動させた場合に、フラットケーブル1の変形部に発生する反発力を効率良く得ることができる。
【0042】
この繊維部材3には、複数本の繊維を束ねて形成された繊維糸を複数本撚り合わせ、又は縦添えして形成されるウーリー糸(嵩高加工糸)を用いることが好ましい。例えば、30〜40本のモノフィラメントからなる70〜80デニールの繊維糸を2本縦添えして形成すると良い。縦添えとすることで、電線2を過度に締め付けることなく、電線2に加わる応力を緩和することができる。
【0043】
繊維としては、1−3プロバンジオールとテレフタル酸の重縮合体からなるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)の繊維(例えば、ソロテックス株式会社製のソロテックス(登録商標)、東レ株式会社製のT400など)を用いると良い。
【0044】
通常、繊維部材を織り込むとその繊維部材は伸びきった状態で織り込まれ、織り込み後のフラットケーブルの可撓性を低下させてしまう。また、電線を強く締め付けるため折り曲げたときに断線してしまう虞もある。
【0045】
これに対し、PTTからなる繊維部材3を用いることで、織り込み後であっても加熱によって更に繊維部材3が10%〜50%程度伸びるようになるため、フラットケーブルの可撓性を低下させることなく、また、電線2を強く締め付けるようなこともない。そのため、この繊維部材3は、フラットケーブル1が並列方向へスライドされたときに、その並列方向への電線2の移動に追従して伸び、その位置が変化する。
【0046】
また、複数本のPTT繊維を束ねて形成された繊維糸を複数本縦添えして形成された繊維部材3を用いることで、1本の繊維糸で形成された繊維部材を用いる場合に比べて、フラットケーブル1をスライドさせたときに電線2に加わる応力を緩和することができ、結果として、折り曲げや蛇行等に対する耐性を向上させることができる。
【0047】
このような構成とすることにより、フラットケーブル1を蛇行させた形状に変形させつつ配線したときに、フラットケーブル1の変形部に所望の反発力を効果的に発生させることができ、繊維部材3の蛇行方向への可動を適度に抑制する力を付与することができる。
【0048】
即ち、フラットケーブル1を蛇行させた形状としたときに、繊維部材3の蛇行方向への可動する力と、その可動を抑制する力とのバランスをとることができる。このため、フラットケーブル1によれば、非直線状の配線スペースに配線する場合であっても、配線材の長手方向の一部を折り曲げることをせずに、他の部材を避けるように蛇行させることで、配線材の配線方向を変えることができると共に、蛇行させたままの形状を保持したりすることができる。
【0049】
以上要するに、並列に配置された複数本の電線と、前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれた繊維部材と、からなるフラットケーブルにおいて、前記電線は、最外層が20%以上100%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さと、を有する層からなり、前記繊維部材は、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維で形成されているフラットケーブル1とすることにより、非直線状の配線スペースにも折り曲げることなく蛇行させて、容易に配線が可能なフラットケーブルを提供することができる。
【0050】
また、フラットケーブル1の端末部分に接続端子4を接続することで、非直線状の配線スペースにも折り曲げることなく蛇行させて、容易に配線が可能な図1に示したようなケーブルハーネス10を得られる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を説明する。
【0052】
(実施例1〜4、及び比較例1〜3)
試料に用いた電線としては、外径0.025mmの銅合金線を7本より合わせて形成された内部導体の外周に、PFAを押出被覆して形成された絶縁体と、複数本の錫めっき銅合金線を絶縁体の外周に螺旋状に横巻きして形成された外部導体とを有し、さらに外部導体の外周に、薄型プラスチックテープ(材質:PET、厚さ:0.004mm、幅:2mm)の内側に接着層が設けられている接着テープを接着層が外部導体に接着するように螺旋状に巻き付けして形成された第1のテープ層と、薄型プラスチックテープ(材質:PET、厚さ:0.004mm、幅:2mm)の内側に接着層が設けられている接着テープを接着層が第1のテープ層に接着するように螺旋状に巻き付けして形成された第2のテープ層とからなる最外層を有する同軸ケーブル(外径0.305mm)を用いた。
【0053】
上記の同軸ケーブルを40本並列に配置し、これらの同軸ケーブル間を表1に示す繊維部材で縫うようにフラット状に織り込んだ後、繊維部材の表面に水分が含有した状態で120℃の温度で加熱処理を施すことで、厚さ0.4mm、幅10.5mmのフラットケーブルを作製し試料とした。
【0054】
(従来例)
従来例では、試料に用いた電線として、PFAを押出被覆して形成された最外層を有する同軸ケーブルを用いた以外は、実施例1〜4、及び比較例1〜3と同様の方法でフラットケーブルを作製し試料とした。
【0055】
なお、本実施例では、以下の方法にて、並列方向へのスライド特性の評価を行った。
【0056】
先ず、作製した各フラットケーブルの長手方向の両端末部分に接続端子(コネクタ)を取り付けて、ケーブルハーネス(試料)を各々作製した。
【0057】
次いで、各々のフラットケーブルについて、図3(a)に示すように、フラットケーブルの一端側に関して、繊維部材で被覆された部分をその端から長手方向に沿って約15mmの位置(A点)まで固定して固定部とした。
【0058】
その後、図3(b)に示すように、固定部の端(A点)からフラットケーブルの長手方向に沿って約20mmの位置(B点)を保持し、保持したB点をフラットケーブルの並列方向(幅方向)へ平行移動(スライド)させて変形させた。
【0059】
そして、点Aから30mm離れた点C’の平行移動距離dが5mmとなったときに、フラットケーブルの変形部(点Aから点B’までの間の部分)が平面上から浮いていないもの、電線にうねりが発生していないもの、および最外層に座屈の発生がないものを「○(合格の意味)」とし、平面上から浮いているもの、電線にうねりが発生しているもの、或いは最外層に座屈の発生があるものを「×(不合格の意味)」として評価した。
【0060】
最外層の伸び率、引張強さについては、JIS C 2151「電気用プラスチックフィルムの試験方法」に準拠して評価した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示す結果より、最外層の伸び率が20%未満(15%)である比較例1では、スライドさせたときに座屈が発生してしまった。また、最外層の伸び率が100%超(110%)である比較例2では、スライドさせたときに浮き、うねりが発生してしまった。さらに、最外層の材質をPFA(引張強さ35MPa)として最外層の引張強さを150MPa未満とした従来例では、スライドさせたときに浮き、うねりが発生してしまった。
【0063】
これに対し、最外層の伸び率が20%以上100%以下、引張強さが150MPa以上であり、且つ、繊維部材がポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維で形成されている実施例1〜4では、座屈や浮き、うねりの発生はなく良好な結果が得られた。
【0064】
以上に示した結果から、本発明の構成によれば、非直線状の配線スペースにも折り曲げることなく蛇行させて、容易に配線が可能なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを得られることが証明された。
【符号の説明】
【0065】
1 フラットケーブル
2 電線
3 繊維部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数本の電線と、前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれた繊維部材と、からなるフラットケーブルにおいて、
前記電線は、最外層が20%以上100%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さと、を有する層からなり、
前記繊維部材は、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維で形成されていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記最外層は、プラスチックテープからなるテープ層である請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記テープ層は、前記プラスチックテープを螺旋状に巻き付けして形成された第1のテープ層と、前記第1のテープ層上に、前記第1のテープ層とは異なる巻き付け方向に前記プラスチックテープを螺旋状に巻き付けして形成された第2のテープ層と、を有している請求項2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記プラスチックテープは、延伸されて形成された薄型プラスチックテープであり、
前記薄型プラスチックテープの内側に接着層が形成されている請求項2又は3に記載のフラットケーブル。
【請求項5】
前記繊維部材は、前記電線の長手方向における長さ10mmあたり20本以上30本以下の割合で織り込まれている請求項1〜4のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項6】
前記繊維部材は、複数本のモノフィラメントからなる繊維糸を複数本縦添えして形成されている請求項1〜5のいずれかに記載のフラットケーブル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末部分に接続された接続端子と、を有していることを特徴とするケーブルハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94499(P2012−94499A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210046(P2011−210046)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】