説明

フラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器

【課題】電子機器の小型化を達成し、機械的強度、装着作業性、及び、製造効率を向上させうるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】FC用コアは、コア基体部10と、フラットケーブル挿通孔11と、凸部12とを有する。コア基体部10は、扁平状であって、向かい合う第1及び第2の主面13を有している。フラットケーブル挿通孔11は、コア基体部10の内部を、第1及び第2の主面13と平行する方向に貫通している。凸部12は、第1及び第2の主面13の少なくとも一方に突設されている。FC用コア1は、フラットケーブルと組み合わされて電子機器に用いられる。フラットケーブルは、フラットケーブル挿通孔11に挿通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフラットケーブル用フェライトコア(FC用コア)は、フラットケーブルに装着されていることにより、電子機器内で発生し、または、外部で発生して、フラットケーブル内を伝播するノイズを吸収するために用いられるものであって、フラットケーブルに対する装着態様から、ケーブル挟持タイプと、ケーブル挿通タイプとに大別することができる。
【0003】
ケーブル挟持タイプのFC用コアは、例えば特許文献1に開示されているように、2つの半割状コアの組み合わせにより構成されている。半割状コアは、組み合わせ面に凹溝を有しており、この半割状コアの2つを組み合わせ面で接合することにより、向かい合う凹溝の間にスリット状のフラットケーブル挿通孔(FC挿通孔)が形成される。フラットケーブルは、半割状コアを組み合わせ前に予め凹溝に案内され、その後2つの半割状コアを組み合わせることにより、FC挿通孔内に挟持される。このフラットケーブルに対する2つの半割状コアの組み合わせ状態は、コア収納ケースやワイヤーハーネス等の止め具によって維持される。
【0004】
一方、ケーブル挿通タイプのFC用コアは、例えば特許文献2に開示されているように、コア基体部の内部にスリット状のFC挿通孔が貫通して形成されており、フラットケーブルは、このFC挿通孔に挿通される。上述したようにケーブル挿通タイプのFC用コアでは、コア基体部の内部をFC挿通孔が貫通しているから、安定したノイズ吸収特性が得られる点、及び、コア収納ケースやワイヤーハーネス等の止め具が不要となる点で、特許文献1のケーブル挟持タイプのFC用コアよりも優れている。
【0005】
ところで、近年、この種のFC用コアは、取り付けられる電子機器の小型化、及び、低背化の進展に対応するべく、さらなる低背化、及び、薄層化が要求されている。FC用コアを小型化、及び、低背化する場合、まずコア基体部分の薄層化を検討することとなるから、FC用コアは薄層化されたとしても機械的強度を充分に確保しうる構造であることが求められる。
【0006】
しかし、FC用コアは、フェライト焼成物であり、焼成工程における収縮変形が避けられないし、焼結後の成型品も脆いという特性を有する。このために、薄型化した場合に、変形が少なく、割れ難い機械的強度の大きなものを実現することが本質的に難しい。
【0007】
例えば、この種のFC用コアは、磁性材料粉末をバインダーとともに造粒したフェライト顆粒を金型成型してフェライト成型体を構成し、このフェライト成型体を焼成炉で焼成することによりセラミック焼結体(コア基体部)が製造される。
【0008】
上述した従来の一般的な製造工程において、焼結前のフェライト成型体には、焼成炉への搬入する時に生じる振動や、それにともなう相互衝突等により欠けや割れ、歪みや変形等の不具合が生じやすい。また、フェライト成型体には、焼成工程中の熱収縮に起因する欠けや割れ、歪みや変形等の不具合も生じる。従って、まず、これらの製造歩留まり損を回避する観点から、FC用コアの機械的強度の確保が重要となる。
【0009】
さらに、FC用コアの機械的強度は、信頼性を確保する点からも求められる。特に、ケーブル挿通タイプのFC用コアは、細長い扁平状であるから、長軸の中間付近に外部からの物理的衝撃(ストレス)や、このストレスに対する応力が集中し、コア基体部の欠けや割れ、歪みや変形等の不具合が生じやすい。このような変形等の不具合は、ノイズ吸収特性低下の原因となる。
【0010】
また、ケーブル挿通タイプのFC用コアでは、FC挿通孔に変形が生じると、フラットケーブルを挿通することができなくなり、無理に押し込もうとするとフラットケーブルの破損、さらにはFC用コアの破損を招くこととなる。
【0011】
さらに、FC用コアの小型化、及び、低背化を実現するにあたっては、FC用コアの回路基板実装の容易性についても考慮されなければならない。例えば、特許文献2に開示されているように、ビスを用いてFC用コアを回路基板に実装する構成では、FC用コアの小型化、及び、低背化に伴いビス止め台座に欠けや割れ、変形が生じやすくなる。
【特許文献1】特開平4−320306号公報
【特許文献2】特開平2−91903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、電子機器の小型化、及び、低背化を達成しうるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することである。
【0013】
本発明のもう1つの課題は、機械的強度を向上させ、欠けや割れ、歪みや変形等が生じないフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することである。
【0014】
本発明の更にもう一つの課題は、回路基板、又は、フラットケーブルへの装着作業を容易に、且、確実に行うことができるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することである。
【0015】
本発明の更にもう一つの課題は、部品点数が少なく、製造歩留まりが高く、組み立て工数が少なくて済み、さらに組み立てコストが安価であるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明に係るフラットケーブル用フェライトコア(FC用コア)は、コア基体部と、フラットケーブル挿通孔と、凸部とを有する。コア基体部は、扁平状であって、向かい合う2つの主面を有している。フラットケーブル挿通孔(FC挿通孔)は、コア基体部の内部を、主面と平行する方向に貫通している。凸部は、少なくとも一方の主面上に突設されている。
【0017】
上述したように、本発明に係るFC用コアにおいて、凸部は、少なくとも一方の主面上に突設されている。この構造によると、FC用コアは、FC用コアは、凸部の突出形状によりコア基体部の一部が肉厚化されているから、物理的衝撃に対抗しうる機械的強度を確保することができる。従って、コア基体部の欠けや割れ、さらにはFC挿通孔の歪みや変形を防止することができる。
【0018】
また、FC用コアは、凸部の突出形状によりコア基体部の一部が肉厚化されているから、焼成工程中の熱収縮に起因する欠けや割れ、歪みや変形等の不具合の発生を防止することができる。従って、製造歩留まりを向上させることができる。
【0019】
さらに、FC用コアは、C用コアは、凸部の突出形状によりコア基体部の一部が肉厚化されているから、コアの磁気特性を向上させ、ノイズ吸収特性を改善することができる。
【0020】
本発明に係るFC用コアは、フラットケーブルと組み合わされて電子機器に用いられる。即ち、本発明に係る電子機器は、フラットケーブルと、FC用コアとを有する。フラットケーブルは、FC挿通孔に挿通されている。本発明に係る電子機器によると、上述したFC用コアの利点を全て有することができる。例えば、本発明に係るFC用コアは、コア基体部をFC挿通孔が貫通するケーブル挿通タイプであるから、フラットケーブルへの掛止に際し、コア収納ケースやワイヤーハーネス等の止め具が不要である。従って、止め具の分だけ部品点数、及び、組み付け工数を削減することができる。
【0021】
しかも、FC用コアにおいて、主面上に凸部が突設されているから、凸部によって、FC挿通孔に対するフラットケーブルの挿通作業が阻害されていることはない。従って、フラットケーブルへの装着作業を容易に、且、確実に行うことができる。
【0022】
また、FC用コアにおいて、主面上に凸部が突設されているから、凸部によって、FC挿通孔に挿通されたフラットケーブルにストレスが加えられることはない。従って、フラットケーブルの破損事故、さらにはコア基体部の破損事故などを回避し、信頼性を向上することができる。
【0023】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)電子機器の小型化、及び、低背化を達成しうるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することができる。
(2)機械的強度を向上させ、欠けや割れ、歪みや変形等が生じないフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することができる。
(3)回路基板、又は、フラットケーブルへの装着作業を容易に、且、確実に行うことができるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することができる。
(4)部品点数が少なく、製造歩留まりが高く、組み立て工数が少なくて済み、さらに組み立てコストが安価であるフラットケーブル用フェライトコア、及び、これを用いた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係るフラットケーブル2用フェライトコア(FC用コア)の斜視図、図2は図1に示したFC用コアの平面図、図3は図2の3−3線に沿った断面図である。図1乃至図3に示すFC用コアは、コア基体部10と、フラットケーブル挿通孔11と、凸部12とを有する。
【0026】
コア基体部10は、扁平状であって、向かい合う2つの第1及び第2の主面13、14を有している。図1乃至図3に示すコア基体部10は、両端が半円弧状で、その間が直線状(トラック状)の筒状体であって、第1の主面13と、第2の主面14と、第1の開口端面15と、第2の開口端面16とを有している。第1及び第2の開口端面15、16は、矢印Sで示す短軸方向と、矢印Lで示す長軸方向とを有する楕円形形状であって、矢印Aで示すコア基体部10の中心軸方向で向かい合っている。第1及び第2の主面13、14は、コア基体部10の周面の一部であって、短軸方向Sに向かい合っている。
【0027】
コア基体部10は、第1及び第2の主面13、14が、長軸方向Lで側面により連続していることにより、円筒状の周面を形成している。なお、本発明に係るFC用コアは、必ずしも図1乃至図3に示すようなトラック状に限らず、例えば扁平角筒状であってもよい。
【0028】
第1及び第2の開口端面15、16は、それぞれ端面の周縁部分にテーパー面を有しており、このテーパー面により区画された内面が中心軸方向Aに突出する突出面となっている。このテーパー面は、物理的衝撃に対するコア基体部10の機械的強度を確保し、角部における欠けや割れなどの破損事故を防止する。
【0029】
フラットケーブル挿通孔(FC挿通孔)11は、コア基体部10の内部を、第1及び第2の主面13、14と平行する中心軸方向Aに貫通しており、第1及び第2の開口端面15、16の面内において、それぞれ開口している。FC挿通孔11の内面形状、及び、内径寸法は、フラットケーブルの外形形状、及び、外形寸法に追従して自由に設定することができる。
【0030】
本発明に係るFC用コアは、上述したFC用コアの基本的構成に加え、少なくとも一方の第1及び第2の主面13、14上に、凸部12が突設されている点に特徴の一つがある。特に、図1乃至図3に示すFC用コアでは、凸部12は、少なくとも第1又は第2の主面13、14上において、FC挿通孔11の貫通方向(A)に交差する短軸方向Sの両端側、及び、長軸方向Lの両端側の合計4方向に備えられ、コア基体部10の周面に沿って帯状、又は、リング状に突設されている。即ち、凸部12は、コア基体部10のほぼ全周に渡って帯状、又は、リング状に形成されている。
【0031】
また、凸部12は、中心軸方向Aの一端側において、第2の開口端面16の面位置にあわせて配置されている。この構成により、第2の開口端面16は、コア基体部10の開口端面の面積に、凸部12の突出形状分の拡張面積とを合算した端面面積を有している。
【0032】
上述したように、図1乃至図3を参照して説明したFC用コアにおいて、凸部12は、コア基体部10のほぼ全周に渡って帯状、又は、リング状に形成されている。この構造によると、FC用コアは、少なくとも外部からの物理的衝撃(ストレス)や、このストレスに対する応力が集中する長軸方向Lの中間付近が、凸部12の突出形状により肉厚化されている。従って、外部からの物理的衝撃に対する機械的強度を確保し、コア基体部10の欠けや割れ等の破損事故、さらにはFC挿通孔11の歪みや変形等の破損事故の発生を回避することができる。
【0033】
また、FC用コアは、凸部12の突出形状により肉厚化されているから、例えば、焼成工程中の熱収縮に起因する欠けや割れ、歪みや変形等の不具合も回避することができる。従って、製造歩留まりを向上することができる。
【0034】
さらに、FC用コアは、凸部12の突設部分で肉厚化されているから、コアの磁気特性を向上させ、ノイズ吸収特性を改善することができる。しかも、第1及び第2の主面13、14上に凸部12が突設される構成は、量産化が可能な形状であるから、高い製造効率を維持することができる。
【0035】
図1乃至図3に示すFC用コアにおいて、凸部12は、第2の開口端面16の面位置にあわせて配置されている。この構成により、第2の開口端面16は、コア基体部10の開口端面の面積に、凸部12の突出形状分の拡張面積を合算した端面面積を有しているから、例えば、焼成工程において第2の開口端面16を底面として、FC用コアを立てて搬送することができる。従って、大量搬送、及び、大量焼成が可能となり焼結効率が向上する。
【0036】
また、凸部12が第2の開口端面16の面位置にあわせて配置されている構成によると、第2の開口端面16を底面として、FC用コアを安定的に立てて焼成することができる。従って、搬送中の相互衝突の危険、さらには相互衝突による変形事故を防止することができる。また、FC用コアを安定的に立てて焼成することにより、FC用コアが、その自重により変形してしまう不具合を防止することができる。
【0037】
図1乃至図3を参照して説明したFC用コアは、フラットケーブル等と組み合わされて、電子機器を構成する。次に、本発明に係るFC用コアを用いた電子機器について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す斜視図である。図4において、図1乃至図3で示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0038】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る電子機器は、FC用コア1と、フラットケーブル2とを有し、このフラットケーブル2は、接続端21を有し、FC挿通孔11に挿通されている。
【0039】
図4に示した電子機器は、図1乃至図3を参照して説明したFC用コア1を含むから、上述したFC用コア1の利点を全て有することができる。例えば、本発明の一実施形態に係る電子機器において、FC用コア1は、コア基体部10をFC挿通孔11が貫通するケーブル挿通タイプであるから、安定したノイズ吸収特性が得られるとともに、コア収納ケースやワイヤーハーネス等の止め具が不要となる。従って、止め具の分だけ部品点数、及び、組み付け工数を削減することができる。
【0040】
従来、ケーブル挿通タイプのFC用コアでは、FC挿通孔に変形が生じると、フラットケーブルをFC用コアに挿通することができなくなる。また、変形したFC挿通孔に対してフラットケーブルを無理に押し込もうとすると、FC用コア、及び、フラットケーブルの破損事故を招くなどの問題点があったことは、既に述べたとおりである。
【0041】
上述した従来技術に係る問題に対して、本発明に係るFC用コア1では、第1及び第2の主面13、14上に凸部12が突設されており、この凸部12の突出形状によりコア基体部10が肉厚化され、機械的強度が確保されているから、FC挿通孔11に歪みや変形等の破損事故は生じない。従って、フラットケーブル2への装着作業を容易に、且、確実に行うことができるとともに、コア基体部10の破損事故の発生を回避し、電子機器の信頼性を改善することができる。
【0042】
また、凸部12は、第1及び第2の主面13、14上に突設されているから、凸部12によって、FC挿通孔11に挿通されたフラットケーブル2にストレスが加えられることはない。従って、FC用コアの装着後に、フラットケーブル2の破損事故や、さらにはコア基体部10の破損事故が生じる危険などを回避し、信頼性を向上することができる。
【0043】
図4を参照して説明した電子機器は、さらに回路基板3を含むことができる。次に、本発明に係る電子機器について、FC用コア1を回路基板3と組み合わせた実施形態について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す側面図である。図5において、図1乃至図4で示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0044】
図5に示す電子機器は、FC用コア1と、フラットケーブル2と、回路基板3を有している。FC用コア1は、接着剤4により回路基板3の一面31上に固定されている。接着剤4は、好ましくは合成樹脂系接着剤であって、FC用コア1の主面13と、回路基板3の一面31との相対向面間に充填されており、凸部12の周囲を回りこんだ状態で、両者を接着している。
【0045】
図5に示す電子機器は、図4を参照して説明した電子機器を含むから、図1乃至図4を参照して説明したFC用コア1の利点を全て有することができる。例えば、本発明に係るFC用コア1において、凸部12は、少なくとも一方の第1及び第2の主面13、14上に突設されている。この構造によると、FC用コア1は、コア基体部10の主面13、14上に突出する凸部12を有するから、回路基板3への接合面積を拡張することができるとともに、接着剤4の接触面積、及び、回りこみ空間を確保することができる。従って、接着剤4を介したFC用コア1と回路基板3との接合強度が向上する。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す部分断面図である。図6において、図1乃至図5で示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0047】
図6に示す電子機器は、FC用コア1が回路基板3上に立設されている点で、図5とは異なる。即ち、図6に示す電子機器の実施において、回路基板3は、貫通孔33と、係止具34とを有している。貫通孔33は、回路基板3の面内において、一面31から他面32に貫通している。係止具34は、例えばフック状であって、回路基板3の一面31上において、貫通孔33の周囲に配置されている。FC用コア1は、FC挿通孔11と、貫通孔33と位置あわせした状態で、回路基板3の一面31上に固定されている。フラットケーブル2は、FC挿通孔11と、貫通孔33とを貫通して、他面32から一面31へ引き出されている。
【0048】
図6に示す電子機器は、図5を参照して説明した電子機器を含むから、図1乃至図5を参照して説明したFC用コア1の利点を全て有することができる。例えば、本発明に係るFC用コア1において、凸部12は、第2の開口端面16の面位置にあわせて配置されており、第2の開口端面16は、第1の開口端面15と比較して、凸部12の突設形状の分だけ拡張された面積を有しているから、第2の開口端面16を底面として、FC用コア1を回路基板3上に安定して立設することができる。なお、FC用コア1を回路基板3上に立設する場合は、凸部12を広く形成しておくことが好ましい。
【0049】
上述したように、凸部12が第2の開口端面16の面位置にあわせて配置されている構成によると、第2の開口端面16を底面として、FC用コア1を回路基板3上に安定して立設することができる。この利点の1つは、回路基板3上に、係止具34などを配置するだけで、コア基体部10の内部構成である凸部12と、係止具34との結合により、FC用コア1を回路基板3へ取り付けることができるなど、基板3への装着作業が容易となる点にある。
【0050】
さらに、図6に示す電子機器では、FC用コア1を、FC挿通孔11と、貫通孔33と位置あわせした状態で回路基板3上に立設されている。この構成によると、フラットケーブル2を、FC挿通孔11と、貫通孔33とを貫通させ、他面32から一面31へ引き出すことができるから、フラットケーブル2の引き回し長さを短縮し、もって電子機器の小型化、回路展開の容易化、及び、フラットケーブル2の破断事故の回避による信頼性の向上を図ることができる。
【0051】
図7は、本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す部分断面図である。図7において、図1乃至図6で示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0052】
図7に示す電子機器は、FC用コア1自体が回路基板3を貫通して配置されている点で、図6とは異なる。即ち、図7に示す電子機器の実施において、回路基板3は、面内に貫通孔33を有している。貫通孔33は、回路基板3を一面31から他面32に貫通している。FC用コア1は、他面32側から貫通孔33に挿通されて回路基板3を貫通しており、他面32において貫通孔33の周縁に凸部12が掛け止められている。貫通孔33の周縁と、凸部12との掛け止め部分には、好ましくは接着剤4が充填され、両者の掛止状態が維持される。
【0053】
図7に示す電子機器は、図6を参照して説明した電子機器を含むから、図1乃至図6を参照して説明したFC用コア1の利点を全て有することができる。例えばFC用コア1は、他面32側から貫通孔33に挿通されて回路基板3を貫通しており、他面32において貫通孔33の周縁に凸部12が掛け止められているから、コア収納ケースやワイヤーハーネス等の止め具が不要であり、基板3への装着作業が容易である。
【0054】
FC用コア1は、コア基体部10の外周面上に突出する凸部12を有するから、回路基板3への接合面積を拡張することができるとともに、接着剤4の接触面積、及び、回りこみ空間を確保することができる。しかも貫通孔33の周縁に凸部12が掛け止められている。従って、接着剤4を介したFC用コア1と回路基板3との接合強度が向上する。
【0055】
凸部12の形状は、成型が容易であると共に、機械的強度に優れているから、例えばコア基体10の周縁にビス止め台座を形成し、ビスを用いてコアを回路基板に実装する構成(特許文献2)とは異なり、製造歩留まりを向上することができる。
【0056】
さらに、図7に示す基板貫通型の電子機器では、FC用コア1が回路基板3を貫通しており、他面32において貫通孔33の周縁に凸部12が掛け止められている。この構成によると、一面31上におけるコア基体部10の突出距離H2は、凸部12の突出距離H3が他面32の側に位置する分だけ、図6に示した実施例におけるコア基体部10の突出距離H1よりも小さくすることができる。従って、電子機器について、より一層の低背化を図ることができる。
【0057】
図8及び図9は、本発明のもう一つの実施形態に係るFC用コア1の平面図である。また、図10乃至図12は本発明の更にもう一つの実施形態に係るFC用コア1の平面図である。図8乃至図12において、図1乃至図7で示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0058】
図8に示すFC用コア1では、凸部12は、短軸方向Sに向かい合う第1及び第2の主面13、14上であって、第2の開口端面(16)の面位置に合わせて配置されており、長軸方向Lに沿って条状に伸びている。
【0059】
図9に示すFC用コア1では、凸部12は、短軸方向Sに向かい合う第1及び第2の主面13、14上であって、第2の開口端面(16)の面位置に合わせて配置されており、長軸方向Lの中間付近に突設されている。
【0060】
図10に示すFC用コア1では、凸部12は、第1及び第2の開口端面15、16との間の中心軸方向Aの中間部分において、コア基体部10のほぼ全周に渡ってリング状に形成されている。
【0061】
図11に示すFC用コア1では、凸部12は、第1及び第2の開口端面15、16の面位置に合わせて2つが形成されており、それぞれの凸部12は、コア基体部10のほぼ全周に渡ってリング状に形成されている。
【0062】
図12に示すFC用コア1では、凸部12は、第1及び第2の主面13、14上において、コア基体部10の周面において、長軸方向Lの中間部付近において、中心軸方向Aに沿って条状に突設されている。
【0063】
図8乃至図12に示したFC用コアの実施形態は、いずれも図1乃至図7を参照して説明した全ての利点を有することができる。例えば、図8乃至図12に示したFC用コアにおいても、第1及び第2の主面13、14上において、少なくとも長軸方向Lの中間付近が、凸部12によって肉厚化されているから、外部からの物理的衝撃(ストレス)や、このストレスに対する応力が長軸方向Lの中間部付近に集中した場合に、凸部12によってこれら物理的衝撃に対抗し、コア基体10の破損事故や、FC挿通孔11の変形事故の発生が防止される。
【0064】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係るフラットケーブル用フェライトコア(FC用コア)の斜視図である。
【図2】図1に示したFC用コアの平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す部分断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る電子機器について一部を省略して示す部分断面図である。
【図8】本発明のもう一つの実施形態に係るFC用コアの平面図である。
【図9】本発明の更にもう一つの実施形態に係るFC用コアの平面図である。
【図10】本発明の更にもう一つの実施形態に係るFC用コアの斜視図である。
【図11】本発明の更にもう一つの実施形態に係るFC用コアの斜視図である。
【図12】本発明の更にもう一つの実施形態に係るFC用コアの斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 FC用コア
10 コア基体部
11 フラットケーブル挿通孔
12 凸部
13、14 第1、第2の主面
2 フラットケーブル
3 回路基板
31、32 一面、他面
33 貫通孔
A コア基体部の中心軸方向
L 開口端面の長軸方向
S 開口端面の短軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基体部と、フラットケーブル挿通孔と、凸部とを有するフラットケーブル用フェライトコアであって、
前記コア基体部は、扁平状であって、向かい合う2つの主面を有しており、
前記フラットケーブル挿通孔は、前記コア基体部の内部を、前記主面と平行する方向に貫通しており、
前記凸部は、少なくとも一方の前記主面上に突設されている、
フラットケーブル用フェライトコア。
【請求項2】
請求項1に記載されたフラットケーブル用フェライトコアであって、
前記凸部は、前記主面上において、前記フラットケーブル挿通孔の貫通方向に直交する長軸方向の中間付近に突設されている、
フラットケーブル用フェライトコア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたフラットケーブル用フェライトコアであって、
前記凸部は、前記長軸方向に沿って伸びている、
フラットケーブル用フェライトコア。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載されたフラットケーブル用フェライトコアであって、
前記凸部は、前記コア基体部のほぼ全周に渡ってリング状に形成されている、
フラットケーブル用フェライトコア。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載されたフラットケーブル用フェライトコアであって、前記凸部は、不連続である、
フラットケーブル用フェライトコア。
【請求項6】
フラットケーブル用フェライトコアと、フラットケーブルとを有する電子機器であって、
前記フラットケーブル用フェライトコアは、請求項1乃至5の何れかに記載されたものでなり、
前記フラットケーブルは、前記フラットケーブル挿通孔に挿通されている、
電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載された電子機器であって、さらに回路基板を有しており、
前記フラットケーブル用フェライトコアは、前記回路基板の一面上に固定されている、
電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載された電子機器であって、前記回路基板は、面内に貫通孔を有しており、前記貫通孔は、前記回路基板を一面から他面に貫通しており、
前記フラットケーブル用フェライトコアは、前記フラットケーブル挿通孔と、前記貫通孔とを位置あわせした状態で、前記回路基板の前記一面上に載置されている、
電子機器。
【請求項9】
請求項6に記載された電子機器であって、さらに回路基板を有しており、
前記回路基板は、面内に貫通孔を有しており、前記貫通孔は、前記回路基板を一面から他面に貫通しており、
前記フラットケーブル用フェライトコアは、前記他面側から前記貫通孔に挿通されて前記回路基板を貫通しており、前記他面において前記貫通孔の周縁に、前記凸部が掛け止められている、電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−159611(P2008−159611A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343161(P2006−343161)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】