フラットケーブル
【課題】コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が良好なフラットケーブルを提供する。
【解決手段】接続部材21は、絶縁材からなる接続基材22と、接続基材22の一方の面に並列に配置された金メッキが施された複数の接続端子23とを備え、端部では第一絶縁フィルム3aが貼られているが第二絶縁フィルム3bが貼られていず、第二絶縁フィルム3bが貼られていない部分の導体が接続電極12とされ、接続電極12と接続端子23とが導電性ペースト15を介して導通接続され、第一絶縁フィルム3aと接続基材22とが接着剤16によって接着されてなり、接続電極12及び接続端子23はその幅寸法W1以下の範囲で導電性ペースト15に接触し、接着剤16は、その一部が接続電極12または接続端子23の導電性ペースト15が塗布されていない部分に接触している。
【解決手段】接続部材21は、絶縁材からなる接続基材22と、接続基材22の一方の面に並列に配置された金メッキが施された複数の接続端子23とを備え、端部では第一絶縁フィルム3aが貼られているが第二絶縁フィルム3bが貼られていず、第二絶縁フィルム3bが貼られていない部分の導体が接続電極12とされ、接続電極12と接続端子23とが導電性ペースト15を介して導通接続され、第一絶縁フィルム3aと接続基材22とが接着剤16によって接着されてなり、接続電極12及び接続端子23はその幅寸法W1以下の範囲で導電性ペースト15に接触し、接着剤16は、その一部が接続電極12または接続端子23の導電性ペースト15が塗布されていない部分に接触している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などの配線に用いられるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
限られたスペースで高密度の配線が可能な配線部材として、所定の間隔を隔てて配列された複数の錫メッキ軟銅箔からなる導体と、導体を両面から挟むように一体的に固定する絶縁性テープとからなる被覆部を有するフラットケーブルが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−208821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフラットケーブルは、その端部で導体が露出されて接続電極とされ、この導体からなる接続電極を有する接続部にコネクタが接続される。すると、コネクタの接続端子がフラットケーブルの導体からなる接続電極に押し付けられて電気的に導通される。
【0005】
ところで、錫メッキ軟銅箔からなる導体を露出させた接続電極にコネクタの接続端子が押し付けられると、電気接触のための圧縮応力を受けることに起因して接続電極の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生し、隣接する接続電極間で短絡が生じるおそれがある。
【0006】
この場合、金メッキを施した導体を絶縁性テープで挟持してフラットケーブルを作製すれば、端部で露出させた導体からなる接続電極でのウィスカの発生を防止し、コネクタとの電気接続の信頼性を向上させられる。しかし、導体の全長に金メッキを施してから絶縁フィルムでラミネートした場合はコネクタと接続する部分以外にも金メッキを施すため、金メッキの目付が増加する問題がある。導体の表裏に絶縁フィルムを貼り合わせるとともに導体の一部を露出させたフラットケーブルをメッキ槽へ浸漬して導体露出部分に金メッキを施す場合には、金メッキをしない部分のフラットケーブルをサプライするためのプロセス時間がかかるなど金メッキを効率よくできないためコストアップが免れなかった。
【0007】
本発明の目的は、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が良好なフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明のフラットケーブルは、平面上に配列された複数本の導体に第一絶縁フィルムと第二絶縁フィルムとが貼り合わされ、端部に接続部材が貼り付けられたフラットケーブルであって、
前記接続部材は、絶縁材からなる接続基材と、金メッキが施され前記接続基材の一方の面に並列に配置された複数の接続端子とを備え、
前記端部では前記第一絶縁フィルムが貼られているが前記第二絶縁フィルムが貼られていず、前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分の導体が接続電極とされ、前記接続電極と前記接続端子とが導電性ペーストを介して導通接続され、
前記第一絶縁フィルムと前記接続基材とが接着剤によって接着されてなり、
前記接続電極及び前記接続端子はその幅寸法以下の範囲で前記導電性ペーストに接触し、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極または前記接続端子の前記導電性ペーストが塗布されていない部分に接触していることを特徴とする。
【0009】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接着剤は、その一部が前記接続電極と前記接続端子との間に充填され、前記接続電極と前記接続端子とが前記接着剤で接着されていることが好ましい。
【0010】
本発明のフラットケーブルにおいて、補強材が前記第一絶縁フィルムおよび前記接続部材に貼られて、前記補強材が前記接続電極の端部と前記導電性ペーストの端部を覆っていることが好ましい。
【0011】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続基材の前記接続端子が並列されている前記一方の面と反対側の面に補強材が貼られていることが好ましい。
【0012】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続基材が透明であることが好ましい。
【0013】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分と前記第二絶縁フィルムが貼られている部分との境界を跨ぐ位置に前記接続部材が貼り付けられていることが好ましい。
【0014】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続部材の複数の前記接続端子のピッチが途中で変換されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフラットケーブルによれば、接続部材の接続端子に金メッキが施されているので、接続部材にコネクタを接続した際に、コネクタの接続端子から圧縮応力を受けても接続端子の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生することがない。そのため、隣接する接続端子間で短絡するような不具合をなくし、コネクタとの電気接続の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、接続部材の接続端子のみを効率よく金メッキすることができる。フラットケーブルの導体全体に金メッキを施して絶縁フィルムで挟んだものと比較して金メッキの無駄をなくすことができる。フラットケーブルをメッキ槽へ浸漬して金メッキを施したものと比較して、金メッキプロセス時間の短縮を図ることができる。これにより、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性を良好にすることができる。
【0017】
また、接続電極と接続端子とが導電性ペーストを介して導通されているので導通不良がなく、接続電極と接続端子との間の導電性ペーストがない部分に接着剤が充填されて接続電極と接続端子とが接着されているので接着不良がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フラットケーブルの一実施形態を示す平面図である。
【図2】フラットケーブルの側断面図である。
【図3】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の側断面図である。
【図4】フラットケーブルの一端における横断面図である。
【図5】端部に補強材を貼り付けたフラットケーブルとコネクタとの接続部分の側断面図である。
【図6】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図7】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図8】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図9】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の上面図である。
【図10】フラットケーブルの製造方法を示す斜視図である。
【図11】製造途中の長尺フラットケーブルの平面図である。
【図12】製造途中のフラットケーブルの平面図である。
【図13】製造途中のフラットケーブルの側断面図である。
【図14】フラットケーブルへの導電性ペースト及び接着剤の転写工程を説明する横断面図である。
【図15】フラットケーブルへの導電性ペースト及び接着剤の転写工程を説明する横断面図である。
【図16】フラットケーブルへの接続部材の接続方法について説明する横断面図である。
【図17】フラットケーブルへの接続部材の接続方法について説明する側断面図である。
【図18】接続電極と接続端子との接続箇所における導体ペースト及び接着剤を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ拡大断面図である。
【図19】接続部材の作製方法を説明する斜視図である。
【図20】接続部材の他の作製方法を説明する斜視図である。
【図21】接続部材の作製方法を説明する平面図である。
【図22】フラットケーブルへの接続部材の他の接続方法を説明する横断面図である。
【図23】フラットケーブルへの接続部材の他の接続方法を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るフラットケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、フラットケーブル1は、例えば、銅(メッキされた銅を含む)または銅合金の圧延銅箔からなる複数本の平角導体2を備えている。これらの平角導体2は、所定の並列ピッチで平面上に配列されており、平角導体2に第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bが貼着(ラミネート)されている。なお、図1では平角導体2を4本有する例を示しているが、平角導体2の本数は適宜変更される。例えば、平角導体2を20本とすることもできる。また、平角導体2の幅寸法、厚さ寸法及び並列ピッチは、要求される電流値等に合わせて設定される。
【0020】
第一絶縁フィルム3a及び第二絶縁フィルム3bは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリイミドあるいはポリフェニレンサルファイド等の樹脂から形成された基材部分とポリエステル系接着剤または難燃ポリ塩化ビニル系の絶縁性接着剤や、難燃ポリオレフィンなどからなる接着層を有している。平角導体2に対して、接着層の面を対向させて第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bが貼り合わされている。これにより、平角導体2同士の電気的絶縁を図っている。第一絶縁フィルム3a及び第二絶縁フィルム3bの厚さは、それぞれ0.02mm以上0.15mm以下とすることが好ましい。
【0021】
図1から図3に示すように、フラットケーブル1の長手方向の両端部は、接続部11とされている。
フラットケーブル1の接続部(端部)11では、第一絶縁フィルム3aが基材とされ、第二絶縁フィルム3bのない部分を設けることにより平角導体2の第一絶縁フィルム3aと反対側の一部が露出されており、これらの露出された平角導体2が接続電極12とされている。
【0022】
図3及び図4に示すように、接続部11には、接続部材21が接続されている。この接続部材21は、例えば、フラットケーブル、フレキシブルプリント基板あるいは硬質基板等からなるものであり、絶縁材から形成された接続基材22と、この接続基材22に設けられた複数の接続端子23とを備えている。フラットケーブルからなる接続部材21では、接続基材22として、例えば、厚さ0.25mm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムに、ポリエステル系接着剤を厚さ0.03mm程度に塗布したものが用いられる。接続端子23は、接続部11の接続電極12と略同一幅寸法W1で同一ピッチに配列されている。これらの接続端子23は、銅または銅合金の圧延銅箔からなるもので、その表面には、金メッキが施されている。
【0023】
この接続部材21は、フラットケーブル1の接続部11に重ね合わされることにより、接続電極12と接続端子23とが導電性ペースト15によって導通され、また、第一絶縁フィルム3aと接続基材22とが接着剤16によって接着されている。導電性ペースト15は、接続電極12及び接続端子23の配列方向の幅寸法W2が接続電極12及び接続端子23の幅寸法W1よりも小さくなるように塗布されている。これにより、接続電極12または接続端子23の幅方向の端部(肩部12a,23a)は導電性ペースト15が塗布されていない。接着剤16の一部は、導電性ペースト15が塗布されていない肩部12aまたは23aにも行き渡る。これにより、接続電極12及び接続端子23が導電性ペースト15と接触する部分は、それぞれの幅寸法以下の範囲となる。そして、接続電極12間および接続端子23間には接着剤が充填され、それらが導電性ペースト15を介して短絡することがない。
【0024】
導電性ペースト15は、導電粒子と接着剤とから構成されている。導電粒子としては、例えば、銀粉末、カーボン粉末、銅粉末、ニッケル粉末、あるいはこれらの混合粉末などが使用可能である。この導電性ペースト15を構成する接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等のいずれかが使用可能である。特に、導電性ペースト15としては、平均粒径0.5〜5μmの鱗片状銀粉末と、表面に有機物がコーティングされた、平均粒径20nm以下の球状銀粉末とを含む銀ペーストを採用するのが好ましい。銀ペースト中にナノ銀粒子を含有させることにより、接続抵抗が下がり、また、表面の凹凸も小さくなって接続面積が大きくなる。このため、電気的接続の信頼性が向上する。
【0025】
また、接着剤16としては、例えば、約100〜170℃の溶融温度を備えるポリエステル系やポリアミド系のホットメルト接着剤や熱硬化性接着剤が用いられている。この接着剤16としては、十条ケミカル株式会社製JELCONAD−HM6、東亜合成株式会社製PES310S30、同社製PES375S40等を採用することができる。
【0026】
上記実施形態に係るフラットケーブル1では、図3に示すように、接続部11に接続された接続部材21をコネクタ27へ挿し込むことにより、コネクタ27のハウジング28内に収容された接続端子29が接続部材21の接続端子23に圧接して導通する。
【0027】
そして、このフラットケーブル1では、接続部材21の接続端子部23に金メッキが施されているので、コネクタ27の接続端子29から圧縮応力を受けても接続端子23の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生して隣接する接続端子23間で短絡するような不具合は発生しない。つまり、コネクタ27との電気接続の信頼性が良好である。
【0028】
従来、フラットケーブルの両端で露出させた平角導体の一部からなる接続電極自体が金メッキされていた。
このようなフラットケーブルは、金メッキを施した平角導体の表裏に絶縁フィルムを貼り合わせて作ることができる。または、フラットケーブルをメッキ槽へ浸漬し、接続電極を金メッキして作ることができる。前者の場合、絶縁フィルムに挟まれた平角導体の部分における金メッキが無駄となる。後者の場合、金メッキしない部分のフラットケーブルをメッキ槽にサプライするための余計な時間がかかる。
【0029】
これに対して、本実施形態に係るフラットケーブル1によれば、金メッキを施した接続端子23を有する接続部材21をフラットケーブル1に接続したので、接続端子23のみ効率よく金メッキできる。これにより、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性を維持することができる。
【0030】
接着剤16の一部が、接続電極12と接続端子23との間に充填されると、接続電極12及び接続端子23の導電性ペースト15がない肩部12a,23a同士が接着剤16によって接着されているので、フラットケーブル1と接続部材21の接着不良をなくすことができる。
【0031】
なお、図5に示すように、第一絶縁フィルム3aの外面側に補強材14を貼り付けて接続部11を補強してもよい。このように、補強材14で接続部11を補強すれば、コネクタ27への挿し込み時における接続部11の変形を防止することができる。
【0032】
また、図6に示すように、補強材14を第一絶縁フィルム3aおよび接続部材21に貼って、補強材14で接続電極12の端部と導電性ペースト15の端部を覆い、それらを保護してもよい。それにより、導電性ペースト15の剥離を防ぐことができる。この補強材14としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等からなる絶縁樹脂フィルムが用いられる。また、第一絶縁フィルム3aと接着させる接着剤としては、ポリエステル系接着剤が用いられる。第一絶縁フィルム3a、補強材14、接着剤とも透明なものを使用すれば各接続電極12を透視することができて、各接続電極12と各接続端子23との位置合わせが容易にできる。
【0033】
さらに、図7に示すように、接続部材21に補強材14を貼ってもよい。補強材14の厚さを調整して接続部材21の厚さをコネクタ27の開口の厚さに合わせる。これにより接続部材21がコネクタ27にしっかりと嵌合されるようになる。
【0034】
また、第二絶縁フィルム3bが貼られた部分と第二絶縁フィルム3bが剥離されて接続電極12が露出された部分との境界Bは、外力により折れ曲がりやすい。このため、図8に示すように、この境界Bを跨ぐ位置に接続部材21を貼り付けて、接続部材21によって境界Bを保護してもよい。この場合は、接続部材21に導電性ペースト15と接着剤16を塗布しておき、その後接続部材21を貼り付けることが好ましい。
さらに、図8に示したように、接続部11および接続部材21が互いに端部から剥離することを防止するために、それぞれの端部に接着剤16を塗布してもよい。さらに、接続部11および接続部材21それぞれの端部を覆うように保護フィルム17,18を貼り付けて、より強固にそれぞれの端部からの剥離を防止してもよい。
【0035】
また、接続部材21としてフレキシブルプリント基板を採用する場合には、接続基材22として、ポリイミドからなるベースフィルムにPETフィルムを貼り合わせたもの、あるいはポリエステル系フィルムを採用することができる。この接続基材22の上に接続端子23として銅箔を貼り合わせ、さらにその表面に金メッキを施したものを接続部材21として使用できる。
【0036】
さらに、接続部材21としてポリイミドからなるベースフィルムを有するフレキシブルプリント基板を採用した場合には、ベースフィルムと銅箔(接続端子21)とを接着する接着剤として、熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。後述するように、接続部材21を接続部11に接続する際には、加熱しながら接続部材21を接続部11に貼り合わせる。このときに、熱硬化性接着剤は軟化しないので接続端子23が熱硬化性接着剤に沈み込むことがなく、この熱硬化性接着剤に支持された接続端子23を導電性ペースト15に押し付けて、接続部11の接続電極12と確実に導通させることができる。
【0037】
さらに、図9に示したように、接続部材21は、接続電極22のピッチがフラットケーブル1側とコネクタ27側の途中で変換するように形成された、ピッチ変換型の接続部材21としてもよい。これにより、フラットケーブル1の平角導体2の並列ピッチと、コネクタ27の端子のピッチとが異なっている場合でも、接続部材21によって両者を電気的に接続することができる。なお、図9ではフラットケーブル1から接続部材21にかけてピッチが狭くなる例を図示したが、フラットケーブル1から接続部材21にかけてピッチが広くなるように構成してもよい。
【0038】
次に、上記構造のフラットケーブル1を製造する方法について説明する。
図10に示すように、それぞれ長尺の平角導体2が巻き取られている複数のリール30から平角導体2を送り出して所定の並列ピッチで同一平面上に配列する。そして、これらの平角導体2の配列面の表裏に、リール31から長尺の第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bを送り出してヒータローラ32間に通して第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bを加熱すると同時に圧着して貼り合わせて長尺フラットケーブルとする。この長尺フラットケーブルを巻き取りローラ33に巻き取る。第二絶縁フィルム3bの長手方向の一部には、窓部35が形成されている。こうしてできたフラットケーブルの窓部35が接続部11になる。
【0039】
次に、図11に示すように、第一絶縁フィルム3a及び第二絶縁フィルム3bの幅方向の余剰部分(耳と呼ばれる部分)を除去するために、長尺フラットケーブルの鎖線C1で示す位置で切断する。これにより、窓部35の幅方向両端部で第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bとが長手方向に繋がった箇所を除去する。
【0040】
さらに、長尺フラットケーブルを、窓部35の中央を通る鎖線C2で示す位置で切断し、図12及び図13に示すように、所定の長さとされ、両端で平角導体2の第一絶縁フィルム3aと反対側が露出されて接続電極12とされたフラットケーブル1とする。なお、接続部11を補強する場合は、両端における第一絶縁フィルム3aの外面側に補強材14を貼り付ける。
【0041】
さらに、平角導体2からなる接続電極12に、上方側から導電性ペースト15を塗布し、接続電極12の両側方における第一絶縁フィルム3a上に接着剤16を塗布する。これらの導電性ペースト15及び接着剤16は、直接印刷により塗布したり、転写によって接続部11に塗布したりすることができる。
【0042】
次に、導電性ペースト15及び接着剤16をフラットケーブル1の接続部11へ転写する転写工程を説明する。
図14に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂から形成された転写用の離型フィルム51に、所定のピッチで導電性ペースト15を塗布するとともに、離型フィルム51の導電性ペースト15の側部に接着剤16を塗布した転写フィルム52を用意する。
【0043】
フラットケーブル1の接続部11に、転写フィルム52を重ね合わせ、クッション材53を介して定盤54上に載置させ、上方からヒートツール55を軽く押し付けて加熱する。このようにすると、導電性ペースト15の頂部が接続電極12へ押し付けられて潰されて偏平化し、また、熱によって転写フィルム52側の接着剤16が軟化して離型フィルム51から剥がれてフラットケーブル1の第一絶縁フィルム3a上または接続電極12上に降下する。
【0044】
このように転写プレスを行った後に、フラットケーブル1を取り出し、図15に示すように、転写フィルム52の離型フィルム51を剥がす。
【0045】
すると、導電性ペースト15が第一絶縁フィルム3aと反対方向へ突出するように接続電極12に設けられ、また、接着剤16の一部が接続電極12の肩部12a上にも塗布されたフラットケーブル1が得られる。
【0046】
このとき、接続電極12の一方の面は第一絶縁フィルム3aで覆われているので、この第一絶縁フィルム3aが下方側となるように配置して導電性ペースト15及び接着剤16を塗布すれば、これらの導電性ペースト15及び接着剤16が流れ落ちることが防止される。
【0047】
次に、フラットケーブル1の接続部11に、接続部材21を接続する。この接続部材21は、接続基材22と、この接続基材22に接着された複数の接続端子23とを備えている。接続端子23は、フラットケーブル1の接続電極12と略同一幅寸法で同一ピッチに配列されており、金メッキが施されている。
【0048】
図16及び図17に示すように、接続部材21をフラットケーブル1の端部に重ね合わせる。接続電極12が接続端子23で完全に覆われるように重ね合わせる。接続電極12と接続端子23とが導電性ペースト15によって導通され、また、第一絶縁フィルム3aと接続基材22とが接着剤16によって接着される。また、接着剤16は、その一部が接続電極12と接続端子23との間に行き渡り、これにより、これらの接続電極12と接続端子23とが接着剤16によって接着される。
【0049】
なお、接続部材21の接続基材22が透明であるときは、フラットケーブル1と接続部材21を接続する際には、フラットケーブル1に対して、上方から、接続部材21を被せるように重ね合わせるのが好ましい。このようにすると、上方側から透明な接続部材21を通して、接続端子23と接続電極12との位置を目視であるいは画像データとして電子機器で自動的に判断して位置合わせすることが可能となる。
【0050】
第一絶縁フィルム3aが透明であるときは、フラットケーブル1と接続部材21とを接続する際には、この接続部材21に対して上方からフラットケーブル1を被せるように重ね合わせるのが好ましい。このようにすると、上方側からフラットケーブル1の透明な第一絶縁フィルム3aを通して接続電極12と接続端子23との位置を目視であるいは画像データとして電子機器で自動的に判断して位置合わせすることができる。
【0051】
また、透明な第一絶縁フィルム3aに透明な補強材14を貼り付けた場合でも、透明な補強材14及び透明な第一絶縁フィルム3aを通して接続電極12と接続端子23との位置を目視等で位置合わせすることができる。なお、接続部材21を接続した後に、第一絶縁フィルム3aへ補強材14を貼り付けてもよい。
【0052】
フラットケーブル1の端部に接続部材21を貼り合わせる際には、図18(a)に示すように、まず、接着剤16よりも突出した導電性ペースト15に接続部材21の接続端子23が接触して接続電極12と接続端子部23との導通が確保される。さらに、フラットケーブル1の接続部11へ接続部材21を押し付けると、図18(b)に示すように、導電性ペースト15が接続電極12と接続端子23とによって挟持されて押し潰される。これにより、導電性ペースト15は、接続端子23に対して良好に接触した状態となる。このとき、導電性ペースト15の幅寸法W2が接続電極12及び接続端子23の幅寸法W1よりも小さい(図4参照)ので、導電性ペースト15が押し潰されて側方へ広がったとしても、接続電極12または接続端子23の幅の範囲内にあるか、多少はみ出たとしても接着剤16に押さえ込まれて隣接する接続電極12または接続端子23に至らない。つまり、隣接する接続電極12間や隣接する接続端子23間を導電性ペースト15が短絡させるような不具合も防止される。
【0053】
より詳細には、フラットケーブル1の第一絶縁フィルム3aは、基層3a2と基層3a2の上に設けられた接着剤層3a1とが積層されている。フラットケーブル1の接続部11に接続部材21が貼り合わされる時に全体が加熱される。フラットケーブル1の接続部11の接着剤層3a1が加熱により柔らかくなり、接続部材21が貼り合わされる力を受けて接続部11の導体12が接着剤層3a1に沈み込む。その分接続部11の導体12間では接着剤16が盛り上がり、接着剤16が接続部材21の接続端子23同士の間に入り込み、接続部材21の接続基材22に接触する。これにより、フラットケーブル1は、接続部材21が接着不良や短絡などの不具合なく良好に接続される。
【0054】
次に、フラットケーブル1の接続部11に接続する接続部材21の作製方法の一例を説明する。
図19に示すように、接続端子23となる複数本の長尺の平角導体61が巻き取られている複数のリール62から平角導体61を送り出して所定の並列ピッチで同一平面上に配列する。
【0055】
そして、これらの平角導体61の一方側に、リール63からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の絶縁フィルムに接着剤層が重ねられた(例えば、PET厚み0.25mm、接着剤層0.03mm)長尺の接続基材22を送り出してヒータローラ64間に通して接続基材22を加熱すると同時に平角導体61へ圧着して貼り付け、長尺接続部材65を作製し、この長尺接続部材65を巻き取りローラ66に巻き取る。
【0056】
なお、この長尺接続部材65を作製する際に、図20に示すように、平角導体61の他方側に、リール67から長尺の離型フィルム68を送り出してヒータローラ64間へ通し、その後、長尺接続部材65から剥離させて回収用リール69に巻き取るようにしても良い。このようにすると、ヒータローラ64間において、接着剤が溶け出してヒータローラ64に付着したり平角導体61の露出面に付着したりすることがない。接続基材22への平角導体61の圧着を円滑かつ良好に行うことができる。
【0057】
平角導体61は、接続基材22へ貼り付ける前に金メッキを施しておいてもよいし、接続基材22へ貼りつけた後に金メッキをしても、導体露出部が連続的に形成されているので、連続的に効率よく金メッキすることができる。
【0058】
その後、図21に示すように、長尺接続部材65を所定長さ毎にカッタで切断することにより、接続部材21とする。
【0059】
なお、上記の接続部材21の作製方法は一例であって、他の作製方法で作製しても良い。例えば、フレキシブルプリント基板や硬質基板から接続部材21を作製する場合には、エッチング処理等によって接続端子23となる導体パターンを形成し、その後、導体パターンに金メッキを施すこととなる。
【0060】
上記の製造方法によれば、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が高く、接続部材21との接着不良などの不具合のないフラットケーブル1を製造することができる。
【0061】
なお、上述の製造方法では、導電性ペースト15および接着剤16を、導電性ペースト15が接着剤16よりも突出するように接続部11に塗布する例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0062】
なお、絶縁フィルム3aと接続基材22および隣接する一対の接続電極12および一対の接続端子23および一対の導電性ペースト15で囲まれた空間に収容し切れなかった接着剤16は、接続電極12および接続端子23の長手方向(図1,2の左右方向)に沿って流れ出る。したがって、フラットケーブル1に接続部材21を貼り合わせる際に、接着剤16が導電性ペースト15と接続電極23との導通を妨げることがない。
【0063】
また、上述の製造方法では、フラットケーブル1の接続部11に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、図22に示すように、接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布してもよい。接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する方法は、転写または直接印刷を用いることができる。
なお、図22の例では、第二絶縁フィルム3bの境界Bを跨ぐ位置に接続部材21を貼り合せる。これにより、図8に示したように、折れ曲がりやすい第二絶縁フィルム3bの境界B近傍を補強することができる。
【0064】
また、図22、図23に示したように、導電性ペースト15はフラットケーブル1側の端部まで塗布せず、接続部材21のフラットケーブル1側の端部には接着剤16を塗布することが好ましい。接続部材21のフラットケーブル1側の端部が接着剤16を介してフラットケーブル1の第二絶縁フィルム3bの上面に接着され、接続部材21がフラットケーブル1から剥がれにくくすることができる。
【0065】
また、接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する場合は、接続基材22を透明にすると、接続電極23と接続端子12との位置合わせが容易となるので好ましい。
【0066】
上記の製造方法によりフラットケーブルおよび接続部材を作成し、両者を貼り合せたものについて高温試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材を85℃の恒温槽に500時間おいて、その抵抗値の変化を測定した。その結果、500時間経過しても抵抗値は上昇しなかった。フラットケーブルの接続部と接続部材とが高温に曝らされて貼り合わされている部分が互いに離間すると抵抗値が上昇するところ、この抵抗値の上昇が確認されなかったことから、高温環境下に曝されても接続部材がフラットケーブルに確実に貼り合わされていることが確認できた。
【0067】
また、上記フラットケーブルおよび接続部材について高温高湿度試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材を60℃、相対湿度95%RH中に500時間おいて、その抵抗値の変化を測定した。その結果、500時間経過しても抵抗値の上昇は20mΩ未満であった。これにより、高温高湿度の環境下に曝されても、接続部材がフラットケーブルに確実に貼り合わされた状態が維持されることが確認された。
【0068】
さらに、上記フラットケーブルおよび接続部材について熱衝撃試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材を−40℃で0.5時間保持した直後に、85℃で0.5時間保持し、これを500サイクル繰り返し、その抵抗値の変化を測定した。その結果、500サイクル繰り返しても、抵抗値の上昇は20mΩ未満であった。これにより、熱衝撃が繰り返し作用しても、接続部材がフラットケーブルに貼り合わされた状態が保持されることが確認できた。
【0069】
さらに、上記フラットケーブルおよび接続部材について線間耐圧試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材に交流500Vの電圧を1分間印加したところ、絶縁破壊が生じなかった。これにより、フラットケーブルおよび接続部材は実用上十分な線間耐圧を備えていることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
1:フラットケーブル、2:平角導体(導体)、3a:第一絶縁フィルム(基材)、3b:第二絶縁フィルム、11:接続部、12:接続電極、15:導電性ペースト、16:接着剤、21:接続部材、22:接続基材、23:接続端子、W1:幅寸法
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などの配線に用いられるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
限られたスペースで高密度の配線が可能な配線部材として、所定の間隔を隔てて配列された複数の錫メッキ軟銅箔からなる導体と、導体を両面から挟むように一体的に固定する絶縁性テープとからなる被覆部を有するフラットケーブルが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−208821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフラットケーブルは、その端部で導体が露出されて接続電極とされ、この導体からなる接続電極を有する接続部にコネクタが接続される。すると、コネクタの接続端子がフラットケーブルの導体からなる接続電極に押し付けられて電気的に導通される。
【0005】
ところで、錫メッキ軟銅箔からなる導体を露出させた接続電極にコネクタの接続端子が押し付けられると、電気接触のための圧縮応力を受けることに起因して接続電極の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生し、隣接する接続電極間で短絡が生じるおそれがある。
【0006】
この場合、金メッキを施した導体を絶縁性テープで挟持してフラットケーブルを作製すれば、端部で露出させた導体からなる接続電極でのウィスカの発生を防止し、コネクタとの電気接続の信頼性を向上させられる。しかし、導体の全長に金メッキを施してから絶縁フィルムでラミネートした場合はコネクタと接続する部分以外にも金メッキを施すため、金メッキの目付が増加する問題がある。導体の表裏に絶縁フィルムを貼り合わせるとともに導体の一部を露出させたフラットケーブルをメッキ槽へ浸漬して導体露出部分に金メッキを施す場合には、金メッキをしない部分のフラットケーブルをサプライするためのプロセス時間がかかるなど金メッキを効率よくできないためコストアップが免れなかった。
【0007】
本発明の目的は、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が良好なフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明のフラットケーブルは、平面上に配列された複数本の導体に第一絶縁フィルムと第二絶縁フィルムとが貼り合わされ、端部に接続部材が貼り付けられたフラットケーブルであって、
前記接続部材は、絶縁材からなる接続基材と、金メッキが施され前記接続基材の一方の面に並列に配置された複数の接続端子とを備え、
前記端部では前記第一絶縁フィルムが貼られているが前記第二絶縁フィルムが貼られていず、前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分の導体が接続電極とされ、前記接続電極と前記接続端子とが導電性ペーストを介して導通接続され、
前記第一絶縁フィルムと前記接続基材とが接着剤によって接着されてなり、
前記接続電極及び前記接続端子はその幅寸法以下の範囲で前記導電性ペーストに接触し、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極または前記接続端子の前記導電性ペーストが塗布されていない部分に接触していることを特徴とする。
【0009】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接着剤は、その一部が前記接続電極と前記接続端子との間に充填され、前記接続電極と前記接続端子とが前記接着剤で接着されていることが好ましい。
【0010】
本発明のフラットケーブルにおいて、補強材が前記第一絶縁フィルムおよび前記接続部材に貼られて、前記補強材が前記接続電極の端部と前記導電性ペーストの端部を覆っていることが好ましい。
【0011】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続基材の前記接続端子が並列されている前記一方の面と反対側の面に補強材が貼られていることが好ましい。
【0012】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続基材が透明であることが好ましい。
【0013】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分と前記第二絶縁フィルムが貼られている部分との境界を跨ぐ位置に前記接続部材が貼り付けられていることが好ましい。
【0014】
本発明のフラットケーブルにおいて、前記接続部材の複数の前記接続端子のピッチが途中で変換されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフラットケーブルによれば、接続部材の接続端子に金メッキが施されているので、接続部材にコネクタを接続した際に、コネクタの接続端子から圧縮応力を受けても接続端子の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生することがない。そのため、隣接する接続端子間で短絡するような不具合をなくし、コネクタとの電気接続の信頼性を高めることができる。
【0016】
また、接続部材の接続端子のみを効率よく金メッキすることができる。フラットケーブルの導体全体に金メッキを施して絶縁フィルムで挟んだものと比較して金メッキの無駄をなくすことができる。フラットケーブルをメッキ槽へ浸漬して金メッキを施したものと比較して、金メッキプロセス時間の短縮を図ることができる。これにより、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性を良好にすることができる。
【0017】
また、接続電極と接続端子とが導電性ペーストを介して導通されているので導通不良がなく、接続電極と接続端子との間の導電性ペーストがない部分に接着剤が充填されて接続電極と接続端子とが接着されているので接着不良がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フラットケーブルの一実施形態を示す平面図である。
【図2】フラットケーブルの側断面図である。
【図3】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の側断面図である。
【図4】フラットケーブルの一端における横断面図である。
【図5】端部に補強材を貼り付けたフラットケーブルとコネクタとの接続部分の側断面図である。
【図6】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図7】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図8】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の側断面図である。
【図9】フラットケーブルとコネクタとの接続部分の他の例の上面図である。
【図10】フラットケーブルの製造方法を示す斜視図である。
【図11】製造途中の長尺フラットケーブルの平面図である。
【図12】製造途中のフラットケーブルの平面図である。
【図13】製造途中のフラットケーブルの側断面図である。
【図14】フラットケーブルへの導電性ペースト及び接着剤の転写工程を説明する横断面図である。
【図15】フラットケーブルへの導電性ペースト及び接着剤の転写工程を説明する横断面図である。
【図16】フラットケーブルへの接続部材の接続方法について説明する横断面図である。
【図17】フラットケーブルへの接続部材の接続方法について説明する側断面図である。
【図18】接続電極と接続端子との接続箇所における導体ペースト及び接着剤を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ拡大断面図である。
【図19】接続部材の作製方法を説明する斜視図である。
【図20】接続部材の他の作製方法を説明する斜視図である。
【図21】接続部材の作製方法を説明する平面図である。
【図22】フラットケーブルへの接続部材の他の接続方法を説明する横断面図である。
【図23】フラットケーブルへの接続部材の他の接続方法を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るフラットケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、フラットケーブル1は、例えば、銅(メッキされた銅を含む)または銅合金の圧延銅箔からなる複数本の平角導体2を備えている。これらの平角導体2は、所定の並列ピッチで平面上に配列されており、平角導体2に第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bが貼着(ラミネート)されている。なお、図1では平角導体2を4本有する例を示しているが、平角導体2の本数は適宜変更される。例えば、平角導体2を20本とすることもできる。また、平角導体2の幅寸法、厚さ寸法及び並列ピッチは、要求される電流値等に合わせて設定される。
【0020】
第一絶縁フィルム3a及び第二絶縁フィルム3bは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリイミドあるいはポリフェニレンサルファイド等の樹脂から形成された基材部分とポリエステル系接着剤または難燃ポリ塩化ビニル系の絶縁性接着剤や、難燃ポリオレフィンなどからなる接着層を有している。平角導体2に対して、接着層の面を対向させて第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bが貼り合わされている。これにより、平角導体2同士の電気的絶縁を図っている。第一絶縁フィルム3a及び第二絶縁フィルム3bの厚さは、それぞれ0.02mm以上0.15mm以下とすることが好ましい。
【0021】
図1から図3に示すように、フラットケーブル1の長手方向の両端部は、接続部11とされている。
フラットケーブル1の接続部(端部)11では、第一絶縁フィルム3aが基材とされ、第二絶縁フィルム3bのない部分を設けることにより平角導体2の第一絶縁フィルム3aと反対側の一部が露出されており、これらの露出された平角導体2が接続電極12とされている。
【0022】
図3及び図4に示すように、接続部11には、接続部材21が接続されている。この接続部材21は、例えば、フラットケーブル、フレキシブルプリント基板あるいは硬質基板等からなるものであり、絶縁材から形成された接続基材22と、この接続基材22に設けられた複数の接続端子23とを備えている。フラットケーブルからなる接続部材21では、接続基材22として、例えば、厚さ0.25mm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムに、ポリエステル系接着剤を厚さ0.03mm程度に塗布したものが用いられる。接続端子23は、接続部11の接続電極12と略同一幅寸法W1で同一ピッチに配列されている。これらの接続端子23は、銅または銅合金の圧延銅箔からなるもので、その表面には、金メッキが施されている。
【0023】
この接続部材21は、フラットケーブル1の接続部11に重ね合わされることにより、接続電極12と接続端子23とが導電性ペースト15によって導通され、また、第一絶縁フィルム3aと接続基材22とが接着剤16によって接着されている。導電性ペースト15は、接続電極12及び接続端子23の配列方向の幅寸法W2が接続電極12及び接続端子23の幅寸法W1よりも小さくなるように塗布されている。これにより、接続電極12または接続端子23の幅方向の端部(肩部12a,23a)は導電性ペースト15が塗布されていない。接着剤16の一部は、導電性ペースト15が塗布されていない肩部12aまたは23aにも行き渡る。これにより、接続電極12及び接続端子23が導電性ペースト15と接触する部分は、それぞれの幅寸法以下の範囲となる。そして、接続電極12間および接続端子23間には接着剤が充填され、それらが導電性ペースト15を介して短絡することがない。
【0024】
導電性ペースト15は、導電粒子と接着剤とから構成されている。導電粒子としては、例えば、銀粉末、カーボン粉末、銅粉末、ニッケル粉末、あるいはこれらの混合粉末などが使用可能である。この導電性ペースト15を構成する接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等のいずれかが使用可能である。特に、導電性ペースト15としては、平均粒径0.5〜5μmの鱗片状銀粉末と、表面に有機物がコーティングされた、平均粒径20nm以下の球状銀粉末とを含む銀ペーストを採用するのが好ましい。銀ペースト中にナノ銀粒子を含有させることにより、接続抵抗が下がり、また、表面の凹凸も小さくなって接続面積が大きくなる。このため、電気的接続の信頼性が向上する。
【0025】
また、接着剤16としては、例えば、約100〜170℃の溶融温度を備えるポリエステル系やポリアミド系のホットメルト接着剤や熱硬化性接着剤が用いられている。この接着剤16としては、十条ケミカル株式会社製JELCONAD−HM6、東亜合成株式会社製PES310S30、同社製PES375S40等を採用することができる。
【0026】
上記実施形態に係るフラットケーブル1では、図3に示すように、接続部11に接続された接続部材21をコネクタ27へ挿し込むことにより、コネクタ27のハウジング28内に収容された接続端子29が接続部材21の接続端子23に圧接して導通する。
【0027】
そして、このフラットケーブル1では、接続部材21の接続端子部23に金メッキが施されているので、コネクタ27の接続端子29から圧縮応力を受けても接続端子23の表面に針状結晶体(ウィスカ)が発生して隣接する接続端子23間で短絡するような不具合は発生しない。つまり、コネクタ27との電気接続の信頼性が良好である。
【0028】
従来、フラットケーブルの両端で露出させた平角導体の一部からなる接続電極自体が金メッキされていた。
このようなフラットケーブルは、金メッキを施した平角導体の表裏に絶縁フィルムを貼り合わせて作ることができる。または、フラットケーブルをメッキ槽へ浸漬し、接続電極を金メッキして作ることができる。前者の場合、絶縁フィルムに挟まれた平角導体の部分における金メッキが無駄となる。後者の場合、金メッキしない部分のフラットケーブルをメッキ槽にサプライするための余計な時間がかかる。
【0029】
これに対して、本実施形態に係るフラットケーブル1によれば、金メッキを施した接続端子23を有する接続部材21をフラットケーブル1に接続したので、接続端子23のみ効率よく金メッキできる。これにより、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性を維持することができる。
【0030】
接着剤16の一部が、接続電極12と接続端子23との間に充填されると、接続電極12及び接続端子23の導電性ペースト15がない肩部12a,23a同士が接着剤16によって接着されているので、フラットケーブル1と接続部材21の接着不良をなくすことができる。
【0031】
なお、図5に示すように、第一絶縁フィルム3aの外面側に補強材14を貼り付けて接続部11を補強してもよい。このように、補強材14で接続部11を補強すれば、コネクタ27への挿し込み時における接続部11の変形を防止することができる。
【0032】
また、図6に示すように、補強材14を第一絶縁フィルム3aおよび接続部材21に貼って、補強材14で接続電極12の端部と導電性ペースト15の端部を覆い、それらを保護してもよい。それにより、導電性ペースト15の剥離を防ぐことができる。この補強材14としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル等からなる絶縁樹脂フィルムが用いられる。また、第一絶縁フィルム3aと接着させる接着剤としては、ポリエステル系接着剤が用いられる。第一絶縁フィルム3a、補強材14、接着剤とも透明なものを使用すれば各接続電極12を透視することができて、各接続電極12と各接続端子23との位置合わせが容易にできる。
【0033】
さらに、図7に示すように、接続部材21に補強材14を貼ってもよい。補強材14の厚さを調整して接続部材21の厚さをコネクタ27の開口の厚さに合わせる。これにより接続部材21がコネクタ27にしっかりと嵌合されるようになる。
【0034】
また、第二絶縁フィルム3bが貼られた部分と第二絶縁フィルム3bが剥離されて接続電極12が露出された部分との境界Bは、外力により折れ曲がりやすい。このため、図8に示すように、この境界Bを跨ぐ位置に接続部材21を貼り付けて、接続部材21によって境界Bを保護してもよい。この場合は、接続部材21に導電性ペースト15と接着剤16を塗布しておき、その後接続部材21を貼り付けることが好ましい。
さらに、図8に示したように、接続部11および接続部材21が互いに端部から剥離することを防止するために、それぞれの端部に接着剤16を塗布してもよい。さらに、接続部11および接続部材21それぞれの端部を覆うように保護フィルム17,18を貼り付けて、より強固にそれぞれの端部からの剥離を防止してもよい。
【0035】
また、接続部材21としてフレキシブルプリント基板を採用する場合には、接続基材22として、ポリイミドからなるベースフィルムにPETフィルムを貼り合わせたもの、あるいはポリエステル系フィルムを採用することができる。この接続基材22の上に接続端子23として銅箔を貼り合わせ、さらにその表面に金メッキを施したものを接続部材21として使用できる。
【0036】
さらに、接続部材21としてポリイミドからなるベースフィルムを有するフレキシブルプリント基板を採用した場合には、ベースフィルムと銅箔(接続端子21)とを接着する接着剤として、熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。後述するように、接続部材21を接続部11に接続する際には、加熱しながら接続部材21を接続部11に貼り合わせる。このときに、熱硬化性接着剤は軟化しないので接続端子23が熱硬化性接着剤に沈み込むことがなく、この熱硬化性接着剤に支持された接続端子23を導電性ペースト15に押し付けて、接続部11の接続電極12と確実に導通させることができる。
【0037】
さらに、図9に示したように、接続部材21は、接続電極22のピッチがフラットケーブル1側とコネクタ27側の途中で変換するように形成された、ピッチ変換型の接続部材21としてもよい。これにより、フラットケーブル1の平角導体2の並列ピッチと、コネクタ27の端子のピッチとが異なっている場合でも、接続部材21によって両者を電気的に接続することができる。なお、図9ではフラットケーブル1から接続部材21にかけてピッチが狭くなる例を図示したが、フラットケーブル1から接続部材21にかけてピッチが広くなるように構成してもよい。
【0038】
次に、上記構造のフラットケーブル1を製造する方法について説明する。
図10に示すように、それぞれ長尺の平角導体2が巻き取られている複数のリール30から平角導体2を送り出して所定の並列ピッチで同一平面上に配列する。そして、これらの平角導体2の配列面の表裏に、リール31から長尺の第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bを送り出してヒータローラ32間に通して第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bを加熱すると同時に圧着して貼り合わせて長尺フラットケーブルとする。この長尺フラットケーブルを巻き取りローラ33に巻き取る。第二絶縁フィルム3bの長手方向の一部には、窓部35が形成されている。こうしてできたフラットケーブルの窓部35が接続部11になる。
【0039】
次に、図11に示すように、第一絶縁フィルム3a及び第二絶縁フィルム3bの幅方向の余剰部分(耳と呼ばれる部分)を除去するために、長尺フラットケーブルの鎖線C1で示す位置で切断する。これにより、窓部35の幅方向両端部で第一絶縁フィルム3aと第二絶縁フィルム3bとが長手方向に繋がった箇所を除去する。
【0040】
さらに、長尺フラットケーブルを、窓部35の中央を通る鎖線C2で示す位置で切断し、図12及び図13に示すように、所定の長さとされ、両端で平角導体2の第一絶縁フィルム3aと反対側が露出されて接続電極12とされたフラットケーブル1とする。なお、接続部11を補強する場合は、両端における第一絶縁フィルム3aの外面側に補強材14を貼り付ける。
【0041】
さらに、平角導体2からなる接続電極12に、上方側から導電性ペースト15を塗布し、接続電極12の両側方における第一絶縁フィルム3a上に接着剤16を塗布する。これらの導電性ペースト15及び接着剤16は、直接印刷により塗布したり、転写によって接続部11に塗布したりすることができる。
【0042】
次に、導電性ペースト15及び接着剤16をフラットケーブル1の接続部11へ転写する転写工程を説明する。
図14に示すように、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂から形成された転写用の離型フィルム51に、所定のピッチで導電性ペースト15を塗布するとともに、離型フィルム51の導電性ペースト15の側部に接着剤16を塗布した転写フィルム52を用意する。
【0043】
フラットケーブル1の接続部11に、転写フィルム52を重ね合わせ、クッション材53を介して定盤54上に載置させ、上方からヒートツール55を軽く押し付けて加熱する。このようにすると、導電性ペースト15の頂部が接続電極12へ押し付けられて潰されて偏平化し、また、熱によって転写フィルム52側の接着剤16が軟化して離型フィルム51から剥がれてフラットケーブル1の第一絶縁フィルム3a上または接続電極12上に降下する。
【0044】
このように転写プレスを行った後に、フラットケーブル1を取り出し、図15に示すように、転写フィルム52の離型フィルム51を剥がす。
【0045】
すると、導電性ペースト15が第一絶縁フィルム3aと反対方向へ突出するように接続電極12に設けられ、また、接着剤16の一部が接続電極12の肩部12a上にも塗布されたフラットケーブル1が得られる。
【0046】
このとき、接続電極12の一方の面は第一絶縁フィルム3aで覆われているので、この第一絶縁フィルム3aが下方側となるように配置して導電性ペースト15及び接着剤16を塗布すれば、これらの導電性ペースト15及び接着剤16が流れ落ちることが防止される。
【0047】
次に、フラットケーブル1の接続部11に、接続部材21を接続する。この接続部材21は、接続基材22と、この接続基材22に接着された複数の接続端子23とを備えている。接続端子23は、フラットケーブル1の接続電極12と略同一幅寸法で同一ピッチに配列されており、金メッキが施されている。
【0048】
図16及び図17に示すように、接続部材21をフラットケーブル1の端部に重ね合わせる。接続電極12が接続端子23で完全に覆われるように重ね合わせる。接続電極12と接続端子23とが導電性ペースト15によって導通され、また、第一絶縁フィルム3aと接続基材22とが接着剤16によって接着される。また、接着剤16は、その一部が接続電極12と接続端子23との間に行き渡り、これにより、これらの接続電極12と接続端子23とが接着剤16によって接着される。
【0049】
なお、接続部材21の接続基材22が透明であるときは、フラットケーブル1と接続部材21を接続する際には、フラットケーブル1に対して、上方から、接続部材21を被せるように重ね合わせるのが好ましい。このようにすると、上方側から透明な接続部材21を通して、接続端子23と接続電極12との位置を目視であるいは画像データとして電子機器で自動的に判断して位置合わせすることが可能となる。
【0050】
第一絶縁フィルム3aが透明であるときは、フラットケーブル1と接続部材21とを接続する際には、この接続部材21に対して上方からフラットケーブル1を被せるように重ね合わせるのが好ましい。このようにすると、上方側からフラットケーブル1の透明な第一絶縁フィルム3aを通して接続電極12と接続端子23との位置を目視であるいは画像データとして電子機器で自動的に判断して位置合わせすることができる。
【0051】
また、透明な第一絶縁フィルム3aに透明な補強材14を貼り付けた場合でも、透明な補強材14及び透明な第一絶縁フィルム3aを通して接続電極12と接続端子23との位置を目視等で位置合わせすることができる。なお、接続部材21を接続した後に、第一絶縁フィルム3aへ補強材14を貼り付けてもよい。
【0052】
フラットケーブル1の端部に接続部材21を貼り合わせる際には、図18(a)に示すように、まず、接着剤16よりも突出した導電性ペースト15に接続部材21の接続端子23が接触して接続電極12と接続端子部23との導通が確保される。さらに、フラットケーブル1の接続部11へ接続部材21を押し付けると、図18(b)に示すように、導電性ペースト15が接続電極12と接続端子23とによって挟持されて押し潰される。これにより、導電性ペースト15は、接続端子23に対して良好に接触した状態となる。このとき、導電性ペースト15の幅寸法W2が接続電極12及び接続端子23の幅寸法W1よりも小さい(図4参照)ので、導電性ペースト15が押し潰されて側方へ広がったとしても、接続電極12または接続端子23の幅の範囲内にあるか、多少はみ出たとしても接着剤16に押さえ込まれて隣接する接続電極12または接続端子23に至らない。つまり、隣接する接続電極12間や隣接する接続端子23間を導電性ペースト15が短絡させるような不具合も防止される。
【0053】
より詳細には、フラットケーブル1の第一絶縁フィルム3aは、基層3a2と基層3a2の上に設けられた接着剤層3a1とが積層されている。フラットケーブル1の接続部11に接続部材21が貼り合わされる時に全体が加熱される。フラットケーブル1の接続部11の接着剤層3a1が加熱により柔らかくなり、接続部材21が貼り合わされる力を受けて接続部11の導体12が接着剤層3a1に沈み込む。その分接続部11の導体12間では接着剤16が盛り上がり、接着剤16が接続部材21の接続端子23同士の間に入り込み、接続部材21の接続基材22に接触する。これにより、フラットケーブル1は、接続部材21が接着不良や短絡などの不具合なく良好に接続される。
【0054】
次に、フラットケーブル1の接続部11に接続する接続部材21の作製方法の一例を説明する。
図19に示すように、接続端子23となる複数本の長尺の平角導体61が巻き取られている複数のリール62から平角導体61を送り出して所定の並列ピッチで同一平面上に配列する。
【0055】
そして、これらの平角導体61の一方側に、リール63からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の絶縁フィルムに接着剤層が重ねられた(例えば、PET厚み0.25mm、接着剤層0.03mm)長尺の接続基材22を送り出してヒータローラ64間に通して接続基材22を加熱すると同時に平角導体61へ圧着して貼り付け、長尺接続部材65を作製し、この長尺接続部材65を巻き取りローラ66に巻き取る。
【0056】
なお、この長尺接続部材65を作製する際に、図20に示すように、平角導体61の他方側に、リール67から長尺の離型フィルム68を送り出してヒータローラ64間へ通し、その後、長尺接続部材65から剥離させて回収用リール69に巻き取るようにしても良い。このようにすると、ヒータローラ64間において、接着剤が溶け出してヒータローラ64に付着したり平角導体61の露出面に付着したりすることがない。接続基材22への平角導体61の圧着を円滑かつ良好に行うことができる。
【0057】
平角導体61は、接続基材22へ貼り付ける前に金メッキを施しておいてもよいし、接続基材22へ貼りつけた後に金メッキをしても、導体露出部が連続的に形成されているので、連続的に効率よく金メッキすることができる。
【0058】
その後、図21に示すように、長尺接続部材65を所定長さ毎にカッタで切断することにより、接続部材21とする。
【0059】
なお、上記の接続部材21の作製方法は一例であって、他の作製方法で作製しても良い。例えば、フレキシブルプリント基板や硬質基板から接続部材21を作製する場合には、エッチング処理等によって接続端子23となる導体パターンを形成し、その後、導体パターンに金メッキを施すこととなる。
【0060】
上記の製造方法によれば、コストを極力抑えつつ電気接続の信頼性が高く、接続部材21との接着不良などの不具合のないフラットケーブル1を製造することができる。
【0061】
なお、上述の製造方法では、導電性ペースト15および接着剤16を、導電性ペースト15が接着剤16よりも突出するように接続部11に塗布する例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0062】
なお、絶縁フィルム3aと接続基材22および隣接する一対の接続電極12および一対の接続端子23および一対の導電性ペースト15で囲まれた空間に収容し切れなかった接着剤16は、接続電極12および接続端子23の長手方向(図1,2の左右方向)に沿って流れ出る。したがって、フラットケーブル1に接続部材21を貼り合わせる際に、接着剤16が導電性ペースト15と接続電極23との導通を妨げることがない。
【0063】
また、上述の製造方法では、フラットケーブル1の接続部11に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限られない。例えば、図22に示すように、接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布してもよい。接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する方法は、転写または直接印刷を用いることができる。
なお、図22の例では、第二絶縁フィルム3bの境界Bを跨ぐ位置に接続部材21を貼り合せる。これにより、図8に示したように、折れ曲がりやすい第二絶縁フィルム3bの境界B近傍を補強することができる。
【0064】
また、図22、図23に示したように、導電性ペースト15はフラットケーブル1側の端部まで塗布せず、接続部材21のフラットケーブル1側の端部には接着剤16を塗布することが好ましい。接続部材21のフラットケーブル1側の端部が接着剤16を介してフラットケーブル1の第二絶縁フィルム3bの上面に接着され、接続部材21がフラットケーブル1から剥がれにくくすることができる。
【0065】
また、接続部材21に導電性ペースト15および接着剤16を塗布する場合は、接続基材22を透明にすると、接続電極23と接続端子12との位置合わせが容易となるので好ましい。
【0066】
上記の製造方法によりフラットケーブルおよび接続部材を作成し、両者を貼り合せたものについて高温試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材を85℃の恒温槽に500時間おいて、その抵抗値の変化を測定した。その結果、500時間経過しても抵抗値は上昇しなかった。フラットケーブルの接続部と接続部材とが高温に曝らされて貼り合わされている部分が互いに離間すると抵抗値が上昇するところ、この抵抗値の上昇が確認されなかったことから、高温環境下に曝されても接続部材がフラットケーブルに確実に貼り合わされていることが確認できた。
【0067】
また、上記フラットケーブルおよび接続部材について高温高湿度試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材を60℃、相対湿度95%RH中に500時間おいて、その抵抗値の変化を測定した。その結果、500時間経過しても抵抗値の上昇は20mΩ未満であった。これにより、高温高湿度の環境下に曝されても、接続部材がフラットケーブルに確実に貼り合わされた状態が維持されることが確認された。
【0068】
さらに、上記フラットケーブルおよび接続部材について熱衝撃試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材を−40℃で0.5時間保持した直後に、85℃で0.5時間保持し、これを500サイクル繰り返し、その抵抗値の変化を測定した。その結果、500サイクル繰り返しても、抵抗値の上昇は20mΩ未満であった。これにより、熱衝撃が繰り返し作用しても、接続部材がフラットケーブルに貼り合わされた状態が保持されることが確認できた。
【0069】
さらに、上記フラットケーブルおよび接続部材について線間耐圧試験を行った。フラットケーブルおよび接続部材に交流500Vの電圧を1分間印加したところ、絶縁破壊が生じなかった。これにより、フラットケーブルおよび接続部材は実用上十分な線間耐圧を備えていることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
1:フラットケーブル、2:平角導体(導体)、3a:第一絶縁フィルム(基材)、3b:第二絶縁フィルム、11:接続部、12:接続電極、15:導電性ペースト、16:接着剤、21:接続部材、22:接続基材、23:接続端子、W1:幅寸法
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に配列された複数本の導体に第一絶縁フィルムと第二絶縁フィルムとが貼り合わされ、端部に接続部材が貼り付けられたフラットケーブルであって、
前記接続部材は、絶縁材からなる接続基材と、金メッキが施され前記接続基材の一方の面に並列に配置された複数の接続端子とを備え、
前記端部では前記第一絶縁フィルムが貼られているが前記第二絶縁フィルムが貼られていず、前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分の導体が接続電極とされ、前記接続電極と前記接続端子とが導電性ペーストを介して導通接続され、
前記第一絶縁フィルムと前記接続基材とが接着剤によって接着されてなり、
前記接続電極及び前記接続端子はその幅寸法以下の範囲で前記導電性ペーストに接触し、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極または前記接続端子の前記導電性ペーストが塗布されていない部分に接触していることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のフラットケーブルであって、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極と前記接続端子との間に充填され、前記接続電極と前記接続端子とが前記接着剤で接着されていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフラットケーブルであって、
補強材が前記第一絶縁フィルムおよび前記接続部材に貼られて、前記補強材が前記接続電極の端部と前記導電性ペーストの端部を覆っていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続基材の前記接続端子が並列されている前記一方の面と反対側の面に補強材が貼られていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続基材が透明であることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分と前記第二絶縁フィルムが貼られている部分との境界を跨ぐ位置に前記接続部材が貼り付けられていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続部材の複数の前記接続端子のピッチが途中で変換されていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項1】
平面上に配列された複数本の導体に第一絶縁フィルムと第二絶縁フィルムとが貼り合わされ、端部に接続部材が貼り付けられたフラットケーブルであって、
前記接続部材は、絶縁材からなる接続基材と、金メッキが施され前記接続基材の一方の面に並列に配置された複数の接続端子とを備え、
前記端部では前記第一絶縁フィルムが貼られているが前記第二絶縁フィルムが貼られていず、前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分の導体が接続電極とされ、前記接続電極と前記接続端子とが導電性ペーストを介して導通接続され、
前記第一絶縁フィルムと前記接続基材とが接着剤によって接着されてなり、
前記接続電極及び前記接続端子はその幅寸法以下の範囲で前記導電性ペーストに接触し、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極または前記接続端子の前記導電性ペーストが塗布されていない部分に接触していることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載のフラットケーブルであって、
前記接着剤は、その一部が前記接続電極と前記接続端子との間に充填され、前記接続電極と前記接続端子とが前記接着剤で接着されていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフラットケーブルであって、
補強材が前記第一絶縁フィルムおよび前記接続部材に貼られて、前記補強材が前記接続電極の端部と前記導電性ペーストの端部を覆っていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続基材の前記接続端子が並列されている前記一方の面と反対側の面に補強材が貼られていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続基材が透明であることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記第二絶縁フィルムが貼られていない部分と前記第二絶縁フィルムが貼られている部分との境界を跨ぐ位置に前記接続部材が貼り付けられていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のフラットケーブルであって、
前記接続部材の複数の前記接続端子のピッチが途中で変換されていることを特徴とするフラットケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−20950(P2013−20950A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125686(P2012−125686)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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