説明

フラット引戸を有する家具

【課題】フラット引戸を使用している家具において、その引戸の開閉を極力滑らかにすることのできる家具を提供する。
【解決手段】1組の引戸の各引戸H1,H1’に対応して夫々第1移動体12,12’を有し、左右方向に離隔した位置関係に配設され、対応する第1移動体に対して転動体16AR,16BRを介して夫々前後方向に直線移動可能な第2移動体16A,16Bが、第1移動体と共に移動するように配設されており、該左右方向に離隔した両第2移動体は対応する1つの引戸を保持しており、各第2移動体は上下方向に突出したガイド軸JA,JBを、該第2移動体と共に移動するように有しており、各ガイド軸は固定位置に設けたガイド溝GMに係合しており、前記ガイド軸が前記ガイド溝に案内されつつ当該引戸を前後方向にずらせる移動を伴うと共に、前記第1移動体と前記各第2移動体が夫々直線的に移動することにより引戸を開閉操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖状態における隣接した1対の引戸が、前後方向に相対位置をずらす動きを伴って家具の内部を開放させるフラット引戸を1組以上有する家具に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸を使用した家具においても、各引戸を前後に位置をずらせた機構が一般的である。しかし、引戸式の家具において更に見栄えを向上させるために、所謂、フラット引戸を採用することがある。こうしたフラット引戸を採用した構造の例が下記の特許文献1に開示されている。この公報開示の構造では、引戸の上側に、該引戸の移動方向を案内する傾斜状のガイド溝を有するガイド機構を設けている。一方、引戸の下側には、実際に引戸の重量を受けつつ該引戸を移動させるローラが設けられており、このローラの移動方向をガイドするローラ用のガイド溝も設けられている。
【特許文献1】特公平8−23245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のローラ用のガイド溝も、上側のガイド溝と同様に傾斜部分を有している。大きな荷重の作用するローラを案内するガイド溝が、途中においてその方向を変化させる(傾斜部分を有している)と、その方向変化部において、ローラ本来の滑らかに転動できる方向とは異なる横方向への滑りを強いられる。仮に、ボール状の転動体を使用したとしても、移動方向が変化する瞬間には抵抗が生ずる。このため、引戸の開閉移動が滑らかでなくなる。
従って解決しようとする課題は、フラット引戸を使用している家具において、その引戸の開閉を極力滑らかにすることのできる家具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明では、閉鎖状態における隣接した対の引戸が前後方向に相対位置をずらす動きを伴って家具の内部を開放させるフラット引戸を1組以上有する家具であって、前記隣接引戸の各引戸に対応して夫々第1移動体を有し、該各第1移動体は転動体を介して閉鎖状態の引戸面に沿った左右方向に直線移動可能であり、左右方向に離隔した位置関係に配設され、対応する第1移動体に対して転動体を介して夫々前後方向に直線移動可能な第2移動体が、該第1移動体と共に移動するように配設されており、該左右方向に離隔した両第2移動体は対応する1つの引戸を保持しており、各第2移動体は上下方向に突出したガイド軸を、該第2移動体と共に移動するように有しており、各ガイド軸は筐体に対する固定位置に設けたガイド溝に係合しており、前記ガイド軸が前記ガイド溝に案内されつつ当該引戸を前後方向にずらせる移動を伴うと共に、前記第1移動体と前記各第2移動体が夫々直線的に移動することにより引戸を開閉操作できることを特徴とするフラット引戸を有する家具を提供する。
後の実施の形態例における説明にも述べているように、各引戸に対応する各第1移動体は、隙間を設けた左右の2個に分離される形態でもよく、本第1発明はこの分割形態も含む。
【0005】
第2の発明では、第1発明において、前記隣接した対の引戸が閉鎖状態にある場合に、前記各第1移動体に搭載した左右の第2移動体の有する各ガイド軸の係合している一方のガイド溝と他方のガイド溝は、共に少なくとも前後方向の成分を有するように延伸した前後方向部を有し、更に一方のガイド溝の前後方向部が、左右方向に延伸した左右方向部に連続しており、前記他方のガイド溝の前後方向部が前記左右方向部に交差して連通した交差連通部を有し、前記一方のガイド溝と他方のガイド溝の各ガイド溝幅及び/又はガイド溝深さ、及び、各ガイド溝に係合するガイド軸の太さ及び/又はガイド溝への係合深さを組み合わせて、他方のガイド溝に係合している他方のガイド軸が一方のガイド溝の前記左右方向部に侵入係合可能であるよう構成する。
少なくとも前後方向の成分を有するように延伸した前後方向部には、左右方向部に対して略直交する方向部の場合と、傾斜状の場合とが有る。
【0006】
第3発明では、第1発明において、前記各第1移動体の有する左右の第2移動体の有する各ガイド軸の係合している一方のガイド溝と他方のガイド溝は互いに連通することなく独立しており、共に少なくとも前後方向の成分を有するように延伸した前後方向部を有し、更に一方のガイド溝の前後方向部が、左右方向に延伸した左右方向部に連続しており、前記他方のガイド溝の前後方向部が、左右方向に延伸した他の左右方向部に連続しているように構成する。
【0007】
第4発明では、第2発明において、前記他方のガイド溝の一方のガイド溝への交差連通部において、一方のガイド溝に係合している一方のガイド軸を、該一方のガイド溝の左右方向部の延伸方向に沿って案内するガイド溝の側壁が途切れないよう構成する。
【0008】
第5発明では、第4発明において、前記一方のガイド溝が深さ方向に2段に構成されており、浅いガイド溝部が大幅であり、深いガイド溝部が小幅であり、前記他方のガイド溝の深さは前記浅いガイド溝部と同じであり、前記交差連通部において深いガイド溝部が途切れず、前記一方のガイド軸は前記深いガイド溝部に対して侵入しており、前記他方のガイド軸は前記浅いガイド溝部に侵入できるが、深いガイド溝部には侵入できない寸法形態であるよう構成する。
【0009】
第6発明では、第1〜5の発明において、少なくとも一方の第2移動体に突出したガイド軸の前後方向への移動範囲の途中位置において、1対の挟持部材が該ガイド軸を左右両側から弾力的に押圧するように筐体に対して直接又は間接に取り付けられており、該1対の挟持部材の前方側の間隔は後方に行くに従って小さくなり、挟持部材の後方側の間隔は後方に行くに従って漸次大きくなっているよう構成する。
筐体に対して直接又は間接にとは、筐体と呼ばれる部材に直接に取り付けてもよく、また、筐体に対して固定された他の部材に対して取り付けられてもよいことを意味する。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明のガイド軸とガイド溝の係合は、ガイド溝の溝壁が、(前後方向と左右方向とで規定できる)水平面内におけるガイド軸の動きを受け止めるものであり、この受け止めをしつつガイド軸を案内移動させるが、引戸の重量という上下方向の大きな荷重は受けず、小さな力を受けるのみである。引戸重量である上下方向の大きな荷重は第1移動体や第2移動体が受け持つ。引戸荷重を受け持つ第1や第2の移動体は、夫々独立した直線状に移動するため、転動体が本来滑らかに転動可能な方向にのみ移動し、その方向に対して交差する方向に無理に滑り移動をさせることはない。従って、その移動、即ち、引戸の移動が非常に滑らかとなる。このように、大きな荷重負荷を受けている転動体の移動は左右方向又は前後方向という単なる直線のみとし、これとは別に分けて、引戸の前後の位置変更を伴う移動全体の方向案内のガイド機構を別に設けているため、引戸の移動が滑らかとなる。
【0011】
閉鎖状態にある場合に、左右の第2移動体の有する各ガイド軸の係合するガイド溝が、一方のガイド溝と他方のガイド溝とである。一方のガイド溝は前後方向部と左右方向部を有しており、第2発明では、他方のガイド溝が前記左右方向部に交差連通する場合を規定したものである。
【0012】
第3発明では、第2発明と異なり、他方のガイド溝が一方のガイド溝とは独立している場合を規定したものである。
【0013】
第2発明では、他方のガイド溝は一方のガイド溝の左右方向部に交差連通している。従って、一方のガイド軸が該一方のガイド溝の左右方向部の長さ方向に沿って移動中、この交差箇所を通過する際、他方のガイド溝の方向に僅かながらも吸い込まれるように移動する可能性がある。このようになれば、この交差箇所の通過の際に、引戸の移動に抵抗を生じ、滑らかな移動が妨げられる。しかし、この第4発明では、一方のガイド軸を該一方のガイド溝の左右方向部の延伸方向に沿って案内するガイド溝側壁が途切れないように構成しているので、他方のガイド溝方向への移動は全く発生せず、引戸移動の滑らかさが担保される。
【0014】
第5発明では、深いガイド溝部の側壁が途切れないため、引戸が滑らかに移動できる。また、他方のガイド溝の深さが一方のガイド溝の浅いガイド溝部の深さと同じであるため、他方のガイド溝と一方のガイド溝の左右方向部の浅いガイド溝との交差連通部の溝底に段差は無く、更には他方のガイド軸は深いガイド溝部には侵入できないため、引戸の開閉に伴って、他方のガイド軸が交差連通部を通過する際に、その軸先が溝底に引っ掛ることがなく、確実に方向転換できる。従って、滑らかな引戸の移動が可能である。
【0015】
第6発明は、自動引き込み機構を構成したものである。閉じた状態から引戸を引き出し開放した後、再び引戸を閉じる途中(終端に近い途中)において、少なくとも一方の第2移動体に突出したガイド軸が、その左右両側から弾力的に押圧されるように配設された1対の挟持部材の間を通過するが、該ガイド軸がその1対の挟持部材の後方側に至れば、この部位の挟持部材は後方に漸次大きくなっているため、自動的に後方に引き込まれる。従って、引戸の閉鎖最終段階では、引戸を人の手で最後まで押し込まなくても自動的に閉鎖できる。また、閉鎖した状態において、この1対の挟持部材の存在により、引戸が不用意に開放方向に動くことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。図1は本発明に係るフラット引戸を有する家具として、隣接した1対の引戸H1,H1’をフラット状に設けたキャビネットの正面図である。図2は図1の矢視線B−Bによる平面視によるフラット引戸の機構概念を図示しており、図3はその機構の組み立てを説明する斜視図である。キャビネットの上部Uには引戸を吊り方式によって吊りつつ各引戸を開閉させる機構が収納されており、下部Dには、図4に示す各引戸の下方部の揺れを防止すべく案内する機構が収納されている。
【0017】
図2の(a)は、各引戸の移動を案内するガイド溝GMを設けたガイド板18を上方から透視した概略図である。(b)は図1に示す閉鎖状態に対応した図、(c)は右側引戸H1の一方の取手(図1の左側の取手)を手前に引き、該引戸H1を傾斜状にした図、(d)は(c)の状態から引戸H1を幾分左方向に移動させて両引戸が互いに平行になった状態の図、(e)は該引戸H1を完全に左側まで移動させ、キャビネットを開放させた状態の図である。以上では、右側の引戸H1を開放させたが、同様に左側の引戸H1’を移動させて、両引戸が右側において前後に重合するようにキャビネットを開放させることもできる。従って、以下では、右側引戸H1の移動機構のみを説明するが、左側引戸についても同様である。
【0018】
横断面が図3に図示され、底部の大きく開放された略矩形状の第1レール体10の内部に第1移動体12が配設されている。第1レール体は、キャビネット筐体に対して固定状態である。第1移動体には前後左右に合計4個のローラ12Rが装着されており、第1レール体はそのガイドレール部10Gがキャビネットの左右方向一直線に延伸している。第1移動体12はガイドレール部10G上にローラ12Rを載せ、これに沿って左右方向に滑らかに移動可能である。この第1移動体12の長さは、引戸H1の幅寸法の半分よりも幾分小さな寸法である。
【0019】
この第1移動体の横断面は、図3に示されるように、底部にフランジ部を残して大きく開放された略矩形状であり、この第1移動体のフランジ部上であって、左右端近くに第2レール体14Bと14Aを夫々配設固定している。この各第2レール体は、図3に示されるように、底部の大きく開放された略矩形状の横断面形状であり、第1移動体に対して固定された状態で、前記左右方向に対して直交する前後方向に一直線に延伸したガイドレール部14Gが設けられている。
【0020】
この第2レール体14A,14Bの各内部に、夫々第2移動体16A,16Bが配設されている。各第2移動体には前後左右に合計4個のローラ16AR(16BR)が装着されている。このローラをガイドレール部14G上に載せ、これに沿って前後方向に滑らかに移動可能である。この前後に可能な移動量Lは、(c)に図示するように、その後の左方向への引戸H1の移動に際して、隣接した引戸H1’と干渉しないだけの距離である。
【0021】
一方,この第2移動体16A,16Bには、夫々上部ブラケットUBRを介して引戸H1を取り付けて吊している。取付構造は、上部ブラケットには、その上側水平面部に対して軸芯を上下方向にした円筒部CRを設けており、相対回転可能な円柱部Cを有してその上部に雄ネジ部Nを設け、更にその上部にガイド軸JA(又はJB)を有する締結軸20を前記円筒部内に下方から挿入する。この円筒部から突出した雄ネジ部Nを、第2移動体の中央部に設けたネジ孔16Nに螺合させて上部ブラケットを該第2移動体に対して装着させる。この上部ブラケットの第2移動体に対する作動では、第2移動体に固定状態となった締結軸20の円柱部Cを枢軸とした回転のみ可能であり、第2移動体の移動に伴って移動する。
【0022】
引戸H1は、上部ブラケットの下側水平面部Fにネジ部材を介して固定される。一方、締結軸20の雄ネジ部Nの上部であるガイド軸JA(JB)は、第2移動体のネジ孔16Nから突出して、前記各第2レール体14A,14B上面部に設けられた前後方向に長い長孔14Hと、夫々の第2レール体固定位置に対応する第1移動体12の左右各端部に近い位置に設けられて前記長孔14Hに対応する他の長孔12Hとを介して上方に突出している。
【0023】
第1移動体12の上であって、第1レール体10の内側には、下面側にガイド溝GMを設けたガイド板18が固定されている。前記各ガイド軸JA,JBは、このガイド溝GMに係合しており、ここでは特許請求の範囲に言う一方のガイド溝と他方のガイド溝とを総称してガイド溝という。従って、引戸H1は、第2レール体のガイドレール部14Gに沿う第2移動体の前後方向移動に伴って移動すると共に、第1レール体のガイドレール部10Gに沿う第1移動体の左右方向移動に伴って移動するが、その前後左右の動きは上記ガイド溝GMの形状によって規定される。引戸H1の重量荷重は、第2移動体のローラ16AR(16BR)と、第1移動体のローラ12Rとを介して各レール体に作用している。しかし、これらの各移動体は直線運動のみ行うのであり、また、これらの互いに直交する各直線運動の合成軌跡はガイド溝GMの形状によって規定されるが、ガイド溝と各ガイド軸JA,JBとの係合は水平面内の動きのみの係合であり、引戸重量の影響を受けずに滑らかな動きが可能である。
【0024】
一方、引戸の下部の振れを防止すべく、図4に示すガイド機構が設けられている。即ち、引戸H1(H1’)の下方部には下部ブラケットDBRが固定されており、その端部には、枢軸を上下方向とするローラRが水平に設けられている。キャビネットの下部Dには、このローラRの水平面内の動きを規制しつつ案内する下部ガイド溝GM’が形成されている。この下部ガイド溝とローラRとの係合にも引戸荷重は作用しないため、下部ガイド溝によるローラR案内における水平面内の方向変化部でも動きは滑らかである。
【0025】
以上を前提にして図2の説明に戻る。(b)の閉鎖状態において、第1移動体12は引戸H1の右側半分に取り付けられており、該第1移動体の右端寄りに位置する第2移動体16Aの上方に突出しているガイド軸JAはガイド溝GMの内の一方のガイド溝の位置A1に位置している。一方、第1移動体の左端寄りに位置する第2移動体16Bの上方に突出しているガイド軸JBはガイド溝GMの内の他方のガイド溝の位置B1に位置している。この位置B1を通って前後方向に延伸した他方のガイド溝である前後方向部MBは、前記位置A1を通って傾斜状に形成された一方のガイド溝の前後方向部MAが連続する左右方向部SMに直交状に交差すると共に連通した交差連通部(B2で示す部位)を有している。
【0026】
(c)は右側引戸H1の一方の取手(図1の左端の取手)を手前に引き、該引戸H1を傾斜状にした図であり、左側の第2移動体16Bのみが距離Lだけ前方に移動している。この場合、左右の第2移動体の各ガイド軸JB,JA間距離が僅かに長くなるが、これは各第2移動体と第2レール体の側壁との間に僅かな余裕隙間を設けていて、これで吸収している。第1移動体12(12’)を左右2個に分割して、互いの間隔を(僅かに)設けておくこともでき、この場合、前記の余裕隙間は不要となる。更には、第2移動体16Bが前方移動するこの前後方向に対して、他方のガイド溝である前後方向部MBを厳密に同一方向に設定する場合、ガイド軸JBと前後方向部MBとの間に僅かな余裕隙間を設ける。また、(b)から(c)に至る際に、図2で説明した各締結軸20の円柱部Cを枢軸として各円筒部CRを介して上部ブラケットが引戸H1と共に適宜角度回動する。(c)における第2移動体16Bの上に突出しているガイド軸JBの位置は前記B2位置である。
【0027】
(c)の状態から、右側の第2移動体16Aが前方に移動しつつ、第1移動体12が左方向に移動すると(d)の状態になる。この場合のガイド軸JAの位置がA3であり、ガイド軸JBの位置がB3である。
(e)は、(d)の状態から右側引戸H1を左方向に移動させ、引戸幅の約半分の長さの第1移動体12が、左側引戸H1’の左側半分に設けられている第1移動体12’に、図示しないゴム緩衝板を介して当接して停止した状態、即ち、キャビネットが開放された状態を示す。ガイド軸JAはA4の位置であり、ガイド軸JBはB4の位置である。
【0028】
図5は、図2において説明していない自動引き込み機構の平面視による説明図である。ガイド板に設けたガイド溝GMの前後方向部MBに隣接して、筐体に対して固定されたガイド板18等の部材に設けた上下方向の枢軸22J周りに回動自在なL型部材22の一端部に、水平面内で回転自在にローラ26を装着させている。L型部材の他端部には引張コイルバネ24の一端を取り付けており、コイルバネの他端は、ガイド板18等の筐体に対して固定された部材に取り付ける。上記前後方向部MBに対して左右対称な位置に、同様な枢軸22J’を枢軸として回動自在なL型部材22’と、ローラ26’と、引張コイルバネ24’とが配設されている。
【0029】
上記1対のローラ26,26’は、前後方向部MBを通過するガイド軸JBを押圧挟持するように互いの間隔を狭める方向に付勢されている。こうした対の挟持部材の構造は、図5のものに限らず任意である。従って、引張コイルバネも、他の付勢手段で構成してもよい。
【0030】
開放状態から閉鎖状態にさせる場合、図2における位置B4に位置していたガイド軸JBは、位置B3,B2を経由して前後方向部MBを後方に移動する。この場合、その前後方向部MBの途中に位置している1対のローラは、ローラであるためその間隔は、前方部は前方が広く開放されていて後方が狭くなっている。従って、ガイド軸JBはその1対のローラ間に円滑に侵入でき、コイルバネの付勢力に抗しつつローラ間隔を押し広げてローラの後方部に進むことができる。後方部のローラ間隙間は後方に向かって漸次拡大しているため、ローラ間の最も狭い位置を過ぎれば、コイルバネの付勢力によってローラ間を狭く閉じる方向に各ローラを付勢する。この力によって、ガイド軸JBは自動的に後方に押しやられる。即ち、自動的に引戸H1を閉じるのである。また、図5に図示する位置に位置したガイド軸JBは、1対のローラの存在によって不用意に前方に移動できない。即ち、引戸H1が不用意に開放されることが防止される。
【0031】
図5の矢視線F−Fによる横断面図を図6(a)に示す。前後方向部MAが連続する左右方向部SMは前後方向部MAと共に図示の如く2段の溝に形成されている。前後方向部MBと同じ深さの幅広溝部WMと、その上方に突出形成された幅狭溝部NMとを有している。ガイド軸JAも2段に形成されており、2点鎖線で示す状態でガイドされつつ前後方向部MAと左右方向部SMとを移動する。図2(a)のB2位置の交差連通部において、図5から明らかであり、幅広溝部WMの側壁は一端途切れるが幅狭溝部NMは途切れない。従って、ガイド軸JAは、この交差連通部を通過する際にも幅狭溝部の側壁の連続性によって滑らかにガイドされ、移動中に一切の引っ掛りも生じない。一方、ガイド軸JBは前後方向部MBから左右方向部SMに侵入すれば、その幅広溝部WMによって滑らかにガイドされる。戻る際も同様であり、交差連通部において問題無く前後方向部MBに戻ることができる。
【0032】
図6の(b)は、(a)でのガイド軸は2段に形成されていたが、これを細い先部の太さのみのガイド軸JAとした場合の図である。この場合もガイド軸JAは細幅溝部NMによって滑らかに案内される。また、ガイド軸JBは、交差連通部以降において、幅広溝部WMによって滑らかに案内される。戻る場合も問題無い。
【0033】
(c)は前後方向部MAとその連続する左右方向部SMとは、幅広溝部のみで形成されているが、深さは、(a)や(b)の細幅溝部の底面までと同じ深さである。この場合、ガイド軸も(a)の場合の太い基部のガイド軸JAとしており、左右方向部SMは、交差連通部においても前後方向部MBの底面よりも深いため、その深い部分SMの側壁が途切れることなく連続している。このため、滑らかに案内される。一方、ガイド軸JBは図の閉鎖位置から出ていく場合は、交差連通部においても問題無く滑らかに左右方向部SMに侵入移行できる。戻りの場合も理論的には問題がないのであるが、何等かの原因で、ガイド軸JBの頂面が、閉鎖位置における(c)図の場合よりも高くなると、交差連通部において引っ掛り、前後方向部MBに戻れなくなることがある。
【0034】
(d)の場合は、ガイド軸JBが細い軸になると共に、前後方向部MBがこの細軸のガイド軸は通過できるが、太軸のガイド軸は通過できない幅狭溝に形成されている。更には、前後方向部MAとその連続する左右方向部SMとが幅広溝部のみで形成されているが、深さは前後方向部MBと同じ深さである。この場合は、交差連通部において、左右方向部の側壁が途切れているため、ガイド軸JAがこの交差連通部を通過する際に、僅かに前後方向部MBの方向に振れ、ガイド軸移動に対して小さなガタ抵抗を生じる。そのため、真に滑らかな移動とは言えない。
請求項4に係る発明は、(a)〜(d)の形態の内、(d)を除外している。
【0035】
以上の説明は、ガイド溝GMが図7の(a)の形態の場合の作動であるが、その他として、ガイド溝の前後を逆にしてもよい。即ち、図7の(a)とは図の上下を逆にしたガイド溝とすることもできる。この場合は、右側引戸H1が左側引戸H1’の後側位置に移動できる。このことは、本発明が含める以下の形態の場合も同様である。
(b)は、右側引戸H1を傾斜させることなく左側引戸H1’に平行のまま前方に引き出し、その後、左方向に移動させて開放させる場合のガイド溝形態である。
(c)は、右側引戸H1を傾斜させることなく左側引戸H1’に平行のままであるが、斜め前方に引き出し、その後、左方向に移動させて開放させる場合のガイド溝形態である。
【0036】
(d),(e),(f)は、夫々、引戸H1が(a),(b),(c)に対応した動きをするガイド溝形態であり、前後方向溝MBが、ガイド軸JAの案内される左右方向部SMとは交差連通しないで、ガイド軸JBが案内される他方のガイド溝を独立して有するガイド溝形態を示す。
また、フラット引戸が1組以上ある家具であれば本発明範囲内であり、例えば、フラット引戸1組と、他の引戸等、他の形式の扉を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、フラット引戸を1組以上有する家具に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は本発明に係る家具の正面図である。
【図2】図2は図1の矢視線B−Bによるフラット引戸の機構説明図である。
【図3】図3は図2の機構を構成する構造体の組立を示す斜視図である。
【図4】図4は引戸の下部の揺れを防止する案内機構の図である。
【図5】図5は自動引き込み機構の説明図である。
【図6】図6はガイド溝とガイド軸との変形形態の説明図である。
【図7】図7はガイド溝の変形形態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0039】
10 第1レール体
12 第1移動体
14A,14B 第2レール体
16A,16B 第2移動体
18 ガイド板
GM ガイド溝
MA 前後方向部(一方のガイド溝)
MB 前後方向部(他方のガイド溝)
SM 左右方向部(一方のガイド溝)
H1,H1’ 1対の引戸
JA 第2移動体16Aに設けたガイド軸
JB 第2移動体16Bに設けたガイド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖状態における隣接した対の引戸が前後方向に相対位置をずらす動きを伴って家具の内部を開放させるフラット引戸を1組以上有する家具であって、
前記隣接引戸の各引戸に対応して夫々第1移動体を有し、該各第1移動体は転動体を介して閉鎖状態の引戸面に沿った左右方向に直線移動可能であり、
左右方向に離隔した位置関係に配設され、対応する第1移動体に対して転動体を介して夫々前後方向に直線移動可能な第2移動体が、該第1移動体と共に移動するように配設されており、該左右方向に離隔した両第2移動体は対応する1つの引戸を保持しており、
各第2移動体は上下方向に突出したガイド軸を、該第2移動体と共に移動するように有しており、各ガイド軸は筐体に対する固定位置に設けたガイド溝に係合しており、前記ガイド軸が前記ガイド溝に案内されつつ当該引戸を前後方向にずらせる移動を伴うと共に、前記第1移動体と前記各第2移動体が夫々直線的に移動することにより引戸を開閉操作できる
ことを特徴とするフラット引戸を有する家具。
【請求項2】
前記隣接した対の引戸が閉鎖状態にある場合に、前記各第1移動体に搭載した左右の第2移動体の有する各ガイド軸の係合している一方のガイド溝と他方のガイド溝は、共に少なくとも前後方向の成分を有するように延伸した前後方向部を有し、更に一方のガイド溝の前後方向部が、左右方向に延伸した左右方向部に連続しており、前記他方のガイド溝の前後方向部が前記左右方向部に交差して連通した交差連通部を有し、
前記一方のガイド溝と他方のガイド溝の各ガイド溝幅及び/又はガイド溝深さ、及び、各ガイド溝に係合するガイド軸の太さ及び/又はガイド溝への係合深さを組み合わせて、他方のガイド溝に係合している他方のガイド軸が一方のガイド溝の前記左右方向部に侵入係合可能である
請求項1記載のフラット引戸を有する家具。
【請求項3】
前記各第1移動体の有する左右の第2移動体の有する各ガイド軸の係合している一方のガイド溝と他方のガイド溝は互いに連通することなく独立しており、共に少なくとも前後方向の成分を有するように延伸した前後方向部を有し、更に一方のガイド溝の前後方向部が、左右方向に延伸した左右方向部に連続しており、前記他方のガイド溝の前後方向部が、左右方向に延伸した他の左右方向部に連続している
請求項1記載のフラット引戸を有する家具。
【請求項4】
前記他方のガイド溝の一方のガイド溝への交差連通部において、一方のガイド溝に係合している一方のガイド軸を、該一方のガイド溝の左右方向部の延伸方向に沿って案内するガイド溝の側壁が途切れない
請求項2記載のフラット引戸を有する家具。
【請求項5】
前記一方のガイド溝が深さ方向に2段に構成されており、浅いガイド溝部が大幅であり、深いガイド溝部が小幅であり、前記他方のガイド溝の深さは前記浅いガイド溝部と同じであり、前記交差連通部において深いガイド溝部が途切れず、
前記一方のガイド軸は前記深いガイド溝部に対して侵入しており、前記他方のガイド軸は前記浅いガイド溝部に侵入できるが、深いガイド溝部には侵入できない寸法形態である
請求項4記載のフラット引戸を有する家具。
【請求項6】
少なくとも一方の第2移動体に突出したガイド軸の前後方向への移動範囲の途中位置において、1対の挟持部材が該ガイド軸を左右両側から弾力的に押圧するように筐体に対して直接又は間接に取り付けられており、該1対の挟持部材の前方側の間隔は後方に行くに従って小さくなり、挟持部材の後方側の間隔は後方に行くに従って漸次大きくなっている
請求項1〜5の何れか1記載のフラット引戸を有する家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−32177(P2007−32177A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219937(P2005−219937)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000162054)共栄工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】