説明

フラビウイルス持続感染細胞株による抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法

【課題】本発明は、抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法を提供することにある。具体的には、本発明は、フラビウイルス持続性感染細胞株による抗フラビウイルスの天然化合物又は人工合成化合物をスクリーニングする方法に関する。
【解決手段】本発明のスクリーニング方法としては、下記の過程が含まれる。
(a)フラビウイルス持続性感染細胞株(persistent virus-infected cell lines)を調製し、(b)そのフラビウイルス持続性感染細胞株を用いてモノクローナル抗体を製造し、(c)あらかじめ選定された化合物とフラビウイルス持続感染細胞株とを接触(一緒に培養)させ、(d)そのモノクローナル抗体を用いて、免疫酵素法により先の選定された化合物のフラビウイルスにたいする抑制活性を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法に関する。具体的には、フラビウイルス持続性感染細胞株による抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラビウイルス科(Flaviviridae)は、フラビウイスル属(Flavivirus)、ペストウイルス属(Pestivirus)とヘパシウイルス属(Hepacivirus)を含むものである。フラビウイルスのゲノムは、一本の+性直鎖DNAによりなり、ゲノムの長さは約10000〜11000塩基であり、その構造としては、ほぼ5’−構造遺伝子-非構造遺伝子-3’からなる。その5’−末端には、メチル化ヌクレオチド キャップ(methylated nucleotide cap)、またはゲノム連鎖タンパク質(genome-linked protein)から構成されるが、3’-末端には、ポリA(poly A)がないものである。ウイルス構造遺伝子(C、prMとE遺伝子を含む)は5’−末端にあり、約ゲノムの1/4を占め、その他は非構造遺伝子(non-structural gene)より構成される。ウイルス型粒子は、扁円球形を示し、直径は約40〜65nmであり、以下の三種類の構造タンパクを含む:(1)エンベロープ タンパク突起(Eタンパク質);(2)タンパク(Mタンパク質)と、(3)キャプシド タンパク(Cタンパク質)。フラビウイルス感染細胞におけるウイルス非構造タンパク質の数は未だはっきりしないが、少なくとも三種類の非構造タンパク質がフラビウイルス感染細胞中に存在することが確認されており、これらの非構造タンパク質はウイルスRNAの複製に関連するものと考えられ、その内、少なくとも一つがタンパク分解酵素の作用を有するものとされている。エンベロープ Eタンパク質の表面突起は、ウイルスの凝集素(agglutinin)であり、感染された細胞に赤血球を吸着させることができる。その5’−UTRは、ウイルスゲノム中で最も高度に保留された部分であり、かつポリタンパク質翻訳作用の開始と調節にかかわる重要な部分である(Thurner C., et al., J Gen Virol. 2004 May;85(Pt5):1113-24;Henchal E.A. and Putnak J.R. Clin Microbiol Rev. 1990 October;3(4):376-396;Chambers T.J. et al., Annu Rev Microbiol. 1990;44:649-88参照)。
【0003】
フラビウイルス属には、少なくとも65種類の人、または人畜に共通する病原体(pathogens)が存在する。C型肝炎ウイルスが体液による接触感染する外は、すべてのその他のウイルスは、蚊は虱などの節股動物により媒介散播する。フラビウイルスに感染した場合、以下の三つの臨床症状が発生する。即ち、セントルイス脳炎ウイルス(St. Louis encephalitis)と日本脳炎(Japanese encephalitis)などにより引き起こされる中枢神経系疾病;黄熱ウイルス(yellow fever virus)の内臓侵入により引き起こされる全身性症状;およびウエストナイルウイルス(west nile virus)、デング熱ウイルス(dengue fever virus)などにより引き起こされる非常な筋肉痛(例えば、急性無力股体麻痺(ATP)、グィライン−バーレ症候群(Guillain-Barre Syndrome;GBS)、骨髄炎(anterior myelitisなど)と出血熱(hemorrhagic fever)が挙げられる。WHOの統計によると、単にデング熱ウイルスだけでも、毎年地球上で24万人近いの感染があり、平均2万4千人の死亡者が見られる。米国のCDCにより2004年11月8日に発表された統計によると、2004年1月〜11月中、西ナイルウイルスは、米国で2千餘名の感染ケースがあり、その内77名が死亡したと報告されている。このように、フラビウイルス感染は、世界的な公共流行病学上の一大課題となっている。
【0004】
フラビウイルスの感染は、ウイルスを分離し、血清学の鑑定により行われ、その内、黄熱ウイルス、デング熱ウイルスと若干の虱により媒介される脳炎のみが、血液中よりウイルスを分離し、それぞれの血清型の交差抗体保護性が小さいので、ウイルスの血清学鑑定は、その治療にはあまり役立たない。又、日本脳炎に関して、すでにワクチンが長年使用されているが、これらは活性を弱くしたワクチンであり、その免疫力価の維持期間には限界がある。往年においては、ワクチン接種後、更に蚊に刺されて自然に免疫力を追加させる(natural boost)ことも可能であるが、衛生条件が大幅に改善されている今日では、上記のような自然的免疫力を追加する機会は少なく、そのためワクチンを接種した成人でも日本脳炎に感染した案例が存在する。現在、市販の抗ウイルス薬剤は、ほとんどが、HIV、ヘルペス ウイルス(例えば、唇に疱疹あるいは脳炎など異なる病気を引き起こす)、およびB型とC型肝炎ウイルス(両者とも肝癌を誘発する)に関するものであり、フラビウイルス感染の臨床治療上、これらの各ウイルスに対する有効な薬物はなく、大半は症状支持性療法に依存しているのが現状である。そこで、大量に存在する天然又は合成化合物ライブラリから、簡単で、かつ迅速にフラビウイルス感染疾患を治療し得る化合物をスクリーニングする方法が強く望まれ、これにより抗フラビウイルス感染に使用される薬物の開発が期待されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、抗ウイルス薬物のスクリーニング方法としては、細胞にウイルスを感染させ、その培地中でウイルスに感染した細胞を培養し、しかる後、培地にウイルス活性を阻害する可能性のある化学薬品を添加し、ウイルス増殖を減少させる薬物について、更に研究を進める方法がとられている。このような方法は経済的に効益が低く、研究者にとっては、絶えず細胞にウイルスを接種感染させるステップを重複する必要があり、しかもスクリーニングされた化合物は、細胞内のウイルス タンパクの表現を阻止できるものとは限らず、更に、スクリーニングした薬物が細胞内に入れるか、又は細胞毒性いかんなどの問題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような薬物又は薬物前駆化合物のスクリーニング方法の状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法を提供することにある。即ち、本発明に係る抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法は、
(a) フラビウイルス持続性感染細胞株(persistent flavivirus-infected cell lines)を調製する工程と、
(b)上記フラビウイルス持続性感染細胞株を用いてモノクローナル抗体を調製す
る工程と、
(c)あらかじめ選定した化合物とフラビウイルス持続性感染細胞を接触させる工程と、
(d)上記モノクローナル抗体を用い、免疫酵素法により、上記あらかじめ選定した化合物について、フラビウイルス抗原に対する抑制活性を測定する工程と、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のスクリーニング方法は、主に、ウイルス持続性感染細胞株とモノクローナル抗体に関する技術を結合させ、抗フラビウイルス感染に適する化合物のスクリーニングに応用したものである。本発明の方法を使用することにより、周知の技術におけるウイルスを細胞に重複感染させる操作を行う必要が免れられる。更に、モノクローナル抗体を調製し、免疫酵素法を用いてあらかじめ選定された化合物について、フラビウイルスに対する抑制活性を測定することは、通常、実験室に現存する免疫酵素法を適用することで十分であり、ことさら放射性物質を用いる必要はなく、かつ一般の実験室に現存する96ウェル自動操作設備を利用することで、改めて設備を購入する必要もなく、簡単でかつ迅速に大量なスクリーニングを行うことができる。
【0008】
上記の本発明のスクリーニング方法において、そのモノクローナル抗体としては、好ましくは、フラビウイルスの非構造性タンパク(NS1)抗原に対する抗体、又はエンベロープ タンパク(Eタンパク質)抗原に対する抗体を用い、特にこの二種類のモノクローナル抗体の混合液が最も好ましい。
【0009】
上記の方法によりスクリーニングされた化合物は、フラビウイルス感染の疾患の治療及び/又は予防に用いられる。本発明の具体的な一例として、抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング用キットが提供される。
【0010】
このキットには、(a)フラビウイルス持続性感染細胞株を調製するための物質と、(b)前記フラビウイルス持続性感染細胞株を用いてモノクローナル抗体を調製するための物質と、(c)あらかじめ選定した化合物と前記フラビウイルス持続性感染細胞株とを接触させるための指針と、(d)前記モノクローナル抗体を用いて、免疫酵素法により前記あらかじめ選定された化合物についてフラビウイルスに対する抑制活性を測定するための物質とが含まれる。
【0011】
この具体例において、そのモノクローナル抗体としては、好ましくはフラビウイルスの非構造性タンパク(NS1)抗原に対する抗体、又はエンベロープ タンパク(E タンパク質)抗原に対する抗体を用い、特にこの二種類のモノクローナル抗体の混合液が最も好ましい。上記の具体例によりスクリーニングされた化合物は、フラビウイルスに感染した疾患の治療及び/又は予防に用いられる。
【0012】
本発明は、更に一種の製剤を提供し、フラビウイルスに感染した疾患を治療及び/又は予防に使用するものである。この製剤は本発明のスクリーニング方法によりスクリーニングされた化合物を用いて調製されるものである。
【0013】
本発明のスクリーニング方法に適用されるフラビウイルスは、フラビウイルス科(Flaviviridae)のフラビウイルス属(Flavivirus)に属するものであり、ダニ媒介ウイルス(Tick-borne viruses、例えば、ロシア春夏ウイルス(Russian spring-summer virus)、オムスク出血熱ウイルス(Omsk hemorrhagic fever virus)、ポワッサンウイルス(Powassan virus)、ロイヤル ファーム ウイルス(Royal Farm virus)、カルシーウイルス(Karshi virus)、ダニ媒介脳炎ウイルス(Tick-borne encephalitis virus)、ニュードルフウイルス(Neudoerfl virus)跳躍病ウイルス(Louping ill virus)、海鳥ダニ媒介ウイルス(Seabird tick-borne virus)等);蚊媒介ウイルス(Mosquito-borne viruses(例えば、アロアウイルス(Aroa virus)、バスカラウイルス(Bussuguara virus)、イグェイプウイルス(Iguape virus)、デングウイルス(Dengue virus、1〜4型を含む)、ケロッグウイルス(Kedougou virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、カシパコールウイルス(Cacipacore virus)、マレーバレー脳炎ウイルス(Murray valley encephalitis virus)、アルフィウイルス(Alfuy virus)、セントルイス脳炎ウイルス(St. Louis encephalitis virus)、ウスツウイルス(Usutu virus)、ウエストナイルウイルス(West Nile virus)、クンジンウイルス(Kunjin virus)、ヤオンデウイルス(Yaounde virus)、ココベラウイルス(Kokobera virus)、ストラットホードウイルス(Stratford virus)、タヤウイスル(Ntaya virus)、バガザウイルス(Bagaza virus)、イレウスウイルス(Ilheus virus)、ロシオウイルス(Rocio virus)、イスラエルトルコ脳膜脳脊髄炎ウイルス(Israel turkey meningoencephalomyelitis virus)、テムブスウイルス(Tembusu virus)、スポンドウェニィウイルス(Spondweni virus)、ジカウイルス(Zika virus)、黄熱ウイルス(Yellow fever virus)、バンジウイルス(Banzi virus)、ボウボウィウイルス(Bouboui virus)、エッジヒールウイルス(Edge Hill virus)、ジュグラウイルス(Jugra virus)、サボヤウイルス(Saboya virus)、ポチスカムウイルス(Potiskum virus)、セピクウイルス(Sepik virus)、ウガンダSウイルス(Uganda S ウイルス)、ウェッセルスブロンウイルス(Wesselsbron virusなど);未知の節足動物媒介ウイルス(Viruses with no known arthropod vector)(例えば、エンテベコウモリウイルス(Entebbe bat virus)、ソコルクウイルス(Sokoluk virus)、ヨコセウイルス(Yokose virus)、モドックウイルス(Modoc virus)、アポイウイルス(Apoi virus)、牛骨髄ウイルス(Cowbone Ridge virus)、ジュチアパウイルス(Jutiapa virus)、サンペーリタウイルス(San Perlita virus)、リオブラボーウイルス(Rio Bravo virus)、ブカラサコウモリウイルス(Bukalasa bat virus)、カーレー島ウイルス(Carey Island virus)、ダカーコウモリウイルス(Dakar bat virus)、モンタナミオチス白質脳炎ウイルス(Montana myotis leukoencephalitis virus)、フノンペンコウモリウイルス(Phnom-Penh bat virus)、バツケーブウイルス(Batu Cave virus)等)が挙げられる。
【0014】
本発明のスクリーニング方法において、ウイルス持続性感染細胞株の調製に使用される方法としては、本発明の発明者により発表された文献(例えば、Virology, 217:220, J.V. 71:5963, J.V. 72:9844)、又はその他の周知のウイルス持続性感染細胞株の調製方法を参照することができる。本発明のウイルス持続性感染細胞株の懸濁性培養には、K562細胞株を用い、吸着性培養にはBHK-21細胞株、又はB2-5細胞株とBc1-2表現BHK-21細胞株を使用して、フラビウイルスと接触させて感染を行う。細胞病原性効果(cytopathogenic effect;CPE)細胞が消失した後、残餘の増殖性細胞(Proliferating cells)が増加し、そのフラビウイルス感染の持続性は、フラビウイルス特異性モノクローナル抗体(下記にその調製方法を示す)を一次抗体(primary antibody)とし、FITC−結合体(fluorescent isothiocyanate-conjugate)、又はHPR−結合体(horse radish peroxidase-conjugate)のヤギ抗マウスIg抗体を二次抗体とし、間接蛍光抗体試験法(indirect fluorescent antibody test, IFA)と酵素結合抗体免疫吸着アッセイ法(enzyme-linked immunoadsorbent assay;ELISA)により測定する。
【0015】
本発明のスクリーニング方法において、モノクローナル抗原としては、フラビウイルスの任意なエピトープ(epitope)、抗Eタンパク質、Cタンパク質、構造性と非構造性タンパク質を含むものが挙げられる。本発明において、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ方法を用いて調製され、下記に示す工程により行われる:
(1) フラビウイルスのエピトープと担体との結合体を調製し、免疫反応を引き起こすことが可能の結合体を形成して、体内で免疫を施した後、フラビウイルス抗原エピトープの抗体を得る工程と、
(2) 分析方法(IFAとELISA)を確立して免疫反応を測定し、すでに免疫反応を引き起こした動物血清、又はひぞう細胞を測定し、スクリーニングする工程と、
(3) ハイブリドーマを調製、スクリーニングする:フラビウイルスのエピトープに対して、特異性を有するマウスひぞう細胞と骨髄腫細胞とのハイブリドーマをスクリーニングする工程と、
(4) ハイブリドーマを用いて大量にモノクローナル抗体を生産し、純化を行う工程。
【0016】
本発明の方法において使用される免疫酵素法としては、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)(下記にELISAと略称する)、直接又は間接的酵素結合抗体免疫吸着アッセイ、特に好ましくは、サンドイッチ酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(sandwich enzyme-linked immunosorbent assay)が挙げられる。モノクローナル抗体のそれぞれのサンドイッチELISAの測定条件は、すべて最適化する必要がある。
【0017】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
実施方法
ウイルス持続性感染細胞株の確立
フラビウイルス持続性感染細胞株を確立する方法としては、任意の周知又は常用の方法、或いは本発明者らがすでに発表した文献に記載の方法(Virology. 217:220;J.V. 71:5963;J.V. 72:9844 を参照)などが用いられる。B2-5細胞株とBc1-2表現BHK-21細胞株について、第1表に示されるフラビウイルスの感染を行う。細胞病原性効果(cytopathogenic effect;CPE)細胞が消失した後、残餘の増殖性細胞(Proliferating cells)が増加し、そのフラビウイルス感染の持続性は、フラビウイルス特異性モノクローナル抗体(下記にその調製方法を示す)を一次抗体とし、FITC−結合体(fluorescein isothiocyanate-conjugate)、又は、HRPー結合体(horseradish peroxidase-conjugate)のヤギ抗マウスIg抗体を二次抗体とし、間接蛍光抗体試験法(indirect fluorescent antibody test, IFA)と酵素結合抗体免疫吸着アッセイ法(enzyme-linked immunosorbent assay ; ELISA)を用いて測定を行う。
第1表 免疫反応と持続姓感染に用いられるフラビウイルス
ウイルス ウイルス株名称 来源
デングウイルス−1型 HAWAII ATCC
デングウイルス−2型 PLO46 ATCC
デングウイルス−3型 H−87 ATCC
デングウイルス−4型 H−241 ATCC
ウエストナイルウイルス VR−1510 ATCC
日本脳炎ウイルス RP9 本発明者の実験室
黄熱ウイルス 17D ATCC
【0019】
ハイブリドーマ方法によるフラビウイルス特異性モノクローナル抗体の調製
持続性フラビウイルス(第1表を参照)感染細胞株の培養上澄液を用いて、BALB/cマウスの免疫を行い、培養上澄液中で分泌されたフラビウイルス タンパク質に対するモノグローナル抗体を得る機会を増大させる。免疫を行った後、ハイブリッド前にIFAとELISAにより感作した血清中の特異性抗体の力価を測定する。しかる後、抗体(B細胞)と骨髄癌細胞(ミエローマ)とをハイブリッドさせる。通常、B細胞は培養皿中で長く生存できないが、骨髄癌はリンパ癌細胞の一つであり、B細胞とのバック グランドが似ていても、培養皿中で永久継代(passage)が可能である。そこで、この二つの細胞を混合し、化学試薬のPEG(ポリエチレン グリコール)で、そのハイブリッド形成を誘導し、二組の染色体が混合した後、組換えする可能性があり、細胞が数回分裂した後、染色体数は正常にもどり、同時に抗体を分泌し、かつ永久継代できるという二つの特性を有する次の世代の細胞ができる可能性があり、この種類の細胞特性を有する細胞がハイブリドーマ(hybridoma)と称する。目的とするこのフラビウイルス特異性モノクローナル抗体にハイブリドーマが発生した場合、そのモノクローナル抗体の特性にもとづきスクリーニングレて得た後、ホストのモウス由来の自然免疫グロブリンの汚染率が最も低いため、抗体の大量生産は、NOD/SCIDマウス中で腹水を誘発して完了する。腹水の純特異性モノクローナル抗体は、ELISAのイソタイプ情報にもとづくため、Aタンパク又はGタンパクカラムにより行われる。モノクローナル抗体が目的抗原を認識する特性によって、ウェスタンブロット法(Western blotting)における着色バントの分子量により推定される。
【0020】
サンドイッチELISA反応条件の最適化
サンドイッチELISAに用いられるモノクローナル抗体の選択性は、モノクローナル抗体がフラビウイルス持続性感染細胞株の上澄液中で、ウイルスタンパクを捕そくすることができる情報にもとづくものである。一次抗体と二次抗体の対合を決定するため、競合アッセイを行い二つの抗体が認識するエピトープが異なることを確定する必要がある。一種類以上のフラビウイルスタンパクが、培養上澄液中に分泌された場合、サンドイッチELISAに用いられる一次抗体としては、オリゴクロータル抗体(oligoclonal antibodies)の反応混液(cocktail)であっても良い。サンドイッチELISAを用いる二次抗体のスクリーニングにも同様な原則が適用される。
【0021】
サンドイッチELISAの詳しい過程を下記のように述べる。抗フラビウイルスEタンパク質と抗NS1タンパク質などのモノクローナル混合物を、分泌されるフラビウイルス抗原の一次抗体として用い、4℃下で、ELISA−マイクロプレートのウェル内に一夜かぶせる。ブロック用の1%BSA(bovine serum albumine)のPBS(phosphate buffer saline)を用いて3回洗浄した後、持続性感染細胞株の培養上澄液をウェル中に加え、37℃下90分インキュベートする。1%BSAを含むPBSで3回洗浄した後、対合したビオチン結合の二次抗体の混合物を加え、37℃下、90分インキュベートする。更に、HRP−streptavidin(ストレプトアビジン)をウェル中に加え、室温下で30分インキュベートした後、PBSで3回洗浄する。TMB基質(substrate)を用い、室温で30分反応した後、PBSを用いて3回洗浄し、更にELISAリーダーによりO.D.405nmを測定する。試験に用いられる陰性又は陽性対照としては、それぞれ模擬(mock)又はフラビウイルス感染の細胞病変性BHK−21細胞の培養上澄液を用いて測定した。
【0022】
フラビウイルス持続性感染細胞株の上澄液におけるウイルス抗原の一致的スクリーニング
ウイルス持続性感染細胞株の上澄液において、ウイルス抗原分泌の一致的連続性は長期間(6ヶ月と長く)にわたり、培養された持続性フラビウイルス感染細胞株より、培養上澄液にウイルス抗原が分泌され、最初に用いたサンドイッチELISAにより測定することで明らかになる。更に、一週間凍結保存と2週間解凍する培養過程を連続5回繰り返した後サンドイッチELISAより、持続性フラビウイルス感染細胞株は当初と同量のウイルス抗原を分泌することが判る。本発明で確立したウイルス持続性感染細胞株の培養上澄液中に含まれるウイルス抗原は、ウイルス抗原の分泌濃度を増大させることが明らかとなった。
【0023】
細胞賦活評価試験(MTT assay)
本発明の方法において、培養上澄液を用いてサンドイッチELISAを行う時、同時に、培養細胞を用いてMTT assayを行い、化合物の細胞毒性を測定することができる。
MTTとは、3−(4,5−ジメチルチアゾ−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾブロミド化合物の略称であり、テトラゾール塩還元の測定のためで製造して用いられる高反応性試薬である。
【0024】
栄養性因子(trophic factors)、成長阻害剤(growth inhibitors)、又はアポトシス(apoptosis)の誘発又は阻止による活性増生細胞に関する変化は、上記のMTT定量分析を用いて測定することが可能である。MTTは、関連する代謝活性のミトコンドソアのデヒドロゲナーゼ還元により、水に不溶性の黄色ホルマアザン染料(Formazan dye)となる。MTTの還元は、主として細胞内の解糖系活性(glycolytic activity)に由来し、しかもNADHとNADPHの存在に依存する。ホルマザン染料は、イソプロパノールに溶解し、分光光度法により570nmの波長で測定することができる。活性増生細胞内におけるMTTの転化は多いため、測定量値高くなる。試験に用いられる陰性又は陽性対照としては、それぞれ模擬(mock)又はフラビウイルス感染の細胞病変性BHK−21細胞の培養上澄液を用いて測定した。
【0025】
化合物のスクリーニング体系の設計
天然或いは合成化合物ライブラリーから、細胞を主とした抗ウイルス薬物の開発にかかわる本発明のスクリーニング体系を第1図に示すが、二つの部分より構成される。その中、一つはウイルス感染部分であり、持続性フラビウイルス感染細胞培地に添加された候選薬物n効果の測定に用いられ、ウイルス持続性感染細胞株の確立をも含むものである。本体系の別の部分としては、エピトープ特異性モノクローナル抗体ハイブリドーマの調製およびそのモノクローナル抗体の大量生産と純化が挙げられる。持続性フラビウイルス感染細胞の培養上澄液を収集し、かつ上澄液中のウイルスタンパクの生産には、エピトープ特異性のモノクロナール抗体を用いて、サンドイッチELISAを行う。候選薬物の細胞毒性には、MTT assayにより、残存細胞中の残存率を測定して解析した。
【0026】
本発明のスクリーニング体系としては、下記の優処が挙げられる:
放射性アイソトープを用いないので、放射性廃棄物質の後処理問題がないこと;次に、一般実験室で常用される自動化マイクロプレート操作装置が使用され、新たに自動化実験装置を購入せずにも済むこと;ウイルス持続性感染細胞株の確立には、毎度試験の際に、再度ウイルス感染の繁瑣な操作をくりかえす必要がなく、ウイルス不安定性の問題が免かれること;化合物の細胞毒性試験を、MTT assayにより同時に一次進行が可能であり、別に測定する必要がないこと;ウイルス持続性感染細胞を基礎とする測定方法により、スクリーニングされた化合物で、細胞内ウイルスタンパク表現を抑制するものは、更に化合物を修飾して細胞内に導入する必要がないこと;ウイルスのエピトープ特異性モノクローナル抗体により、化合物のウイルス抑制効果を測定するので、感度が高く、しかもその他の要素に干渉されないこと;本発明ではモノクローナル抗体の反応混液(cocktail)を用いてサンドイッチELISAで測定するので、同時に異なるウイルス抗原タンパクを測定し、抗ウイルス化合物の精度を高めることなどが挙げられる。
【0027】
スクリーニング結果の解析
本発明のスクリーニング結果に対する解析は難しくないが、有効である結論を決定する前にそれぞれの特殊条件を帰納する必要があり、添加された化合物が引起す抗原−抗体結合により発生する可能性の誤読が避けられる。これらの条件は、サンドイッチELISAを行う前に、可能性を覚える化合物を陰性対照に添加して引起されるOD値の減低により校正される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の化合物のスクリーニングシステムの設計を示す。
【図2】図2は、本発明のサンドイッチELISAの概略を示す。
【図3】図3は、デングウイルスー2型の持続性感染細胞培養の上澄液に含まれる分泌されたウイルス抗原をサンドイッチELISAにより測定した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法において、(a)フラビウイルス持続性感染細胞株(persistent flavivirus-infected cell lines)を調製する工程と、(b)前記フラブウイルス持続性感染細胞株を用いてモノクローナル抗体を調製する工程と、(c)あらかじめ選定した化合物とフラビウイルス持続性感染細胞株とを接触させる工程と、(d)前記モノクローナル抗体を用い、免疫酵素法により前記あらかじめ選定された化合物についてフラビウイルス抗原に対する抑制活性を測定する工程とを含むことを特徴とする抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記化合物は、天然化合物から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記化合物は、合成化合物から選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記フラビウイルス持続性感染細胞株は、懸濁性細胞株を用いて調製してなることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記懸濁性細胞株は、K562細胞株であることを特徴とする請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記フラビウイルス持続性感染細胞株は、吸着性細胞株を用いて調製してなることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
前記吸着性細胞株は、BHK−21細胞株、B2−5細胞株、又はBcl−2表現BHK−21細胞株より選ばれるものであることを特徴とする請求項6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記免疫酵素法において用いられる抗体は、単一なモノクローナル抗体或いは多くのモノクローナル抗体の混合物よりなることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体は、前記フラビウイルスの抗原に対する抗体であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記フラビウイルス抗体は、前記フラビウイルスの非構造性タンパク(NS1)抗原に対する抗体であることを特徴とする請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記フラビウイルス抗体は、前記フラビウイルスのエンベロープタンパク(Eタンパク質)抗原に対する抗体であることを特徴とする請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
スクリーニングされた化合物は、フラビウイルス感染疾患の治療及び/又は予防に用いられることを特徴とする請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項13】
抗フラブウイルス感染製剤であって、請求項1〜12のいずれか一つに記載のスクリーニング方法によりスクリーニングされた化合物を用いて調製してなることを特徴とする抗フラビウイルス感染製剤。
【請求項14】
抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング用キットにおいて、
(a)フラビウイルス持続性感染細胞株を調製するための物質と、
(b)前記フラビウイルス持続性感染細胞株を用いてモノクローナル抗体を調製するための物質と、
(c)あらかじめ選定した化合物と前記フラビウイルス持続性感染細胞株とを接触させるための指針と、
(d)前記モノクローナル抗体を用いて、免疫酵素法により前記あらかじめ選定された化合物についてフラビウイルスに対する抑制活性を測定するための物質と、
を含むことを特徴とする抗フラビウイルス感染化合物のスクリーニング用キット。
【請求項15】
前記化合物は、天然化合物から選ばれたことを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記化合物は、合成化合物から選ばれたことを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項17】
前記フラビウイルス持続性感染細胞株は、懸濁性細胞株を用いて調製してなることを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項18】
前記懸濁性細胞株は、K562細胞株であることを特徴とする請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記フラビウイルス持続性感染細胞株は、吸着性細胞株を用いて調製してなることを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項20】
前記吸着性細胞株は、BHK−21細胞株、B2−5細胞株、又はBcl−2表現BHK−21細胞株より選ばれたものであることを特徴とする請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記免疫酵素法において用いられる抗体は、単一なモノクローナル抗体或いは多くのモノクローナル抗体の混合物よりなることを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体は、前記フラビウイルスの抗原に対する抗体であることを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項23】
前記フラビウイルス抗体は、前記フラビウイルスの非構造性タンパク(NS1)抗原に対する抗体であることを特徴とする請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記フラビウイルス抗体は、前記フラビウイルスのエンベロープタンパク(Eタンパク質)抗原に対する抗体であることを特徴とする請求項22に記載のキット。
【請求項25】
スクリーニングされた化合物は、フラビウイルス感染疾患の治療及び/又は予防に用いられることを特徴とする請求項14に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−230397(P2006−230397A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373225(P2005−373225)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(504187858)財團法人佛教慈濟総合醫院 (7)
【Fターム(参考)】