説明

フランジ接合部のシール構造及びフランジ接合部のシール方法

【課題】簡略な構成によって、フランジ合わせ面の気密性を低下させることなく、ボルト穴から流体がリークするのを防止する手段を提供する。
【解決手段】本発明に係るフランジ接合部のシール構造1は、互いに当接し合う上フランジ7及び下フランジ9と、上フランジ7に設けられ上当接面711に開口する上ネジ穴721と、下フランジ9に設けられ、下当接面91に開口する下ネジ穴92と、上ネジ穴721から拡径し締付面712に開口する収容穴722と、上フランジ7と下フランジ9とを締め付けて一体化する締付手段6と、収容穴722の内部にボルト61を包囲して設けられるOリング111と、締付手段6の締め付け力を受けてOリング111を押圧することでボルト61の径方向に膨出させる押圧部材112と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ穴が形成された一対のフランジが締付手段によって一体化されるフランジ接合部のシール構造及びフランジ接合部のシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心力を利用して流体を圧縮する遠心圧縮機は、回転体であるロータをケーシングの内部に収容して構成されるが、そのケーシングは上下に2分割されてボルト固定によって一体化されるのが一般的である。図13は、上下のケーシングの従来の固定構造100を示す概略断面図である。上ケーシング101及び下ケーシング102には、側方へ突出するようにして上フランジ103及び下フランジ104がそれぞれ設けられ、各フランジ103,104には上ネジ穴105及び下ネジ穴106がそれぞれ形成されている。そして、このように構成される上下のケーシング101,102は、各フランジ103,104が互いに当接された状態で、固定用のボルト107がネジ穴105,106にそれぞれ螺合され、座金108を介してナット109を締め付けることによって固定される。
【0003】
ところで、遠心圧縮機の大型化が進む近年、全体としての重量が増加することを防止すべく、ケーシングの板厚を最小限に抑えた設計とし、低剛性化の傾向がある。従って、ケーシングの内部で流体の圧力が高まると、図13に示すように、上下のケーシング101,102がそれぞれ変形しやすい。そして、ケーシング101,102が変形した場合には、各フランジ103,104の互いに当接するフランジ当接面103A,104Aの間に隙間110が生じてしまう。そうすると、ケーシングの内部の流体Rが、この隙間110から外部へリークし、或いは隙間を通って上フランジ103に貫通形成された上ネジ穴105から外部へリークする場合がある。尚、このようなフランジ当接面103A,104Aにおける隙間110の発生及び流体のリークは、ボルト107の締め付け力が及びにくい遠い位置までフランジ103,104の当接面が内周面側に延びている箇所、すなわち図13において寸法Lが長くなる箇所において特に発生しやすい。
【0004】
このような流体のリークを防止するためのフランジ接合部のシール構造としては、上下のケーシングのフランジの合わせ面にガスケット材を配置する構造が従来用いられている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1では、各フランジの当接面に向かい合うようにして取付溝がそれぞれ形成され、リング状のガスケット材がこの取付溝に圧縮状態で取り付けられている。このような構成によれば、ケーシングの内部で圧力が高まって各フランジの間に隙間が生じても、ガスケット材の存在により、流体が隙間及びネジ穴から外部へリークすることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−227643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のフランジ接合部のシール構造では、上下のフランジの間にガスケット材を挟んで設けることにより、フランジの合わせ面における気密性が低下するという問題がある。また、遠心圧縮機が大型化する近年、リング状のガスケット材をフランジの全周に渡って設けるためには、直径数メートルという特殊な形状のガスケット材が必要になり、その作成が困難であるという問題もある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、簡略な構成によって、フランジ当接面103A,104Aの気密性を低下させることなく、ボルト穴から流体がリークするのを防止する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係るフランジ接合部のシール構造は、互いの当接面で当接し合う一対のフランジと、一方のフランジに設けられ、前記当接面に開口する第1のネジ穴と、他方のフランジに設けられ、前記当接面に開口する第2のネジ穴と、前記一方のフランジに設けられ、前記第1のネジ穴から拡径し前記当接面と反対側の締付面に開口する収容穴と、前記第1のネジ穴及び前記第2のネジ穴に螺合されるボルトを有し、前記一対のフランジを締め付けて一体化する締付手段と、該収容穴の内部に前記ボルトを包囲して設けられるガスケット部材と、前記収容部の内部に設けられ、前記締付手段の締め付け力を受けて前記ガスケット部材を押圧することで前記ボルトの径方向に膨出させる押圧部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、一対のフランジを備えたケーシングの内部で流体の圧力が高まり、当接面同士の間に隙間が生じてしまった場合、ケーシングの内部の流体がこの隙間を通り、ボルトと上ネジ穴との間の間隙に浸入することになる。しかし、上ネジ穴の収容穴に連通する側の端部開口は、押圧部材に押圧されてボルトの径方向に膨出したガスケット部材によって封止されている。従って、間隙に浸入した流体はネジ穴まで浸入してしまったとしてもガスケット部材によって堰き止められ、収容穴には流入しない。従って、間隙に浸入した流体は、収容穴を通って締付面の側へはリークしない。
【0010】
また、本発明に係るフランジ接合部のシール構造は、前記一方のフランジは、挿入穴が形成された本体部と、前記第1のネジ穴及び前記収容穴が設けられて前記挿入穴に挿入された治具と、を有することを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ガスケット部材及び押圧部材を収容するための収容穴を治具に形成し、この治具を一方のフランジに対して挿入するので、収容穴を一方のフランジに直接形成する場合と比較して、収容穴の加工作業を容易化することができる。
【0012】
また、本発明に係るフランジ接合部のシール構造は、前記治具は、前記本体部に対して溶接によりその全周が固定されることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、治具は、一方のフランジの本体部に対して溶接によりその全周が固定されており、治具と本体部との間の隙間が溶接部によって封止されている。従って、ケーシングの内部の流体は、治具と本体部との間の隙間を通って締付面の側へはリークしない。
【0014】
また、本発明に係るフランジ接合部のシール構造は、前記押圧部材が、前記ボルトの軸方向に弾性変形可能であることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、締付手段の締め付け力を受けた押圧部材がボルトの軸方向に弾性変形する。そして、この押圧部材が元の形状に復元しようとする弾性力を利用することにより、ガスケット部材を押圧してボルトの径方向に確実に膨出させることができる。
【0016】
また、本発明に係るフランジ接合部のシール方法は、フランジ接合部のシール構造を有する構造体におけるフランジ接合部のシール方法において、前記締付手段の仮締めを行う仮締め工程と、前記構造体の内部を真空引きする排気工程と、前記締付手段の増し締めを行う増し締め工程と、前記構造体の内部を大気圧に戻す空気導入工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
このような方法によれば、仮締め工程によってボルトがガタつかない程度にある程度締め付けられる。そして、排気工程によって一対のフランジの当接面における面圧が上昇し、両者が強固に密着することにより、締付手段に締め代が生じる。更に、増し締め工程によって排気工程で生じた締め代の分だけ締付手段が締め付けられる。その後、空気導入工程によって当接面の面圧が低下し、一対のフランジが離間しようとすることにより、締付手段が強く締め付けられる。これにより、一対のフランジが互いに強固に接合される。
【0018】
また、本発明に係るフランジ接合部のシール方法は、一対のフランジを互いに当接させて締付手段で締め付けることによって一体化する構造体におけるフランジ接合部のシール方法であって、前記締付手段の仮締めを行う仮締め工程と、前記構造体の内部を真空引きする排気工程と、前記締付手段の増し締めを行う増し締め工程と、前記構造体の内部を大気圧に戻す空気導入工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
このような方法によれば、仮締め工程によってボルトがガタつかない程度にある程度締め付けられる。そして、排気工程によって一対のフランジの当接面における面圧が上昇し、両者が強固に密着することにより、締付手段に締め代が生じる。更に、増し締め工程によって排気工程で生じた締め代の分だけ締付手段が締め付けられる。その後、空気導入工程によって当接面の面圧が低下し、一対のフランジが離間しようとすることにより、締付手段が強く締め付けられる。これにより、一対のフランジが互いに強固に接合される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るフランジ接合部のシール構造によれば、簡略な構成によって、フランジ合わせ面の気密性を低下させることなく、ボルト穴から流体がリークするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造を備えた圧縮機を示す概略斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造を示す概略断面図である。
【図3】第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造を示す概略斜視図である。
【図4】第1実施形態の変形例を示す概略断面図である。
【図5】押圧部材の外観を示す概略斜視図である。
【図6】Oリングの上に押圧部材を配置した状態を示す概略断面図である。
【図7】第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造の作用効果を示す説明図である。
【図8】第2実施形態に係るフランジ接合部のシール構造を示す概略断面図である。
【図9】第3実施形態に係るフランジ接合部のシール構造を示す概略断面図である。
【図10】実施形態に係るフランジ接合部のシール方法を適用する圧縮機プラントの全体構成を示す模式図。
【図11】圧縮機におけるフランジ接合部の概略断面図である。
【図12】下ケーシングの下フランジを示す概略斜視図である。
【図13】上下のケーシングの従来の固定構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造について説明する。図1は、第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造1を備えた圧縮機2を示す概略斜視図である。圧縮機2は、略円筒形状のケーシング3と、このケーシング3の内部に収容された回転体であるロータ(不図示)と、ケーシング3に適宜接続された複数の配管4と、を備えるものである。
【0023】
ケーシング3は、図1に示すように、上下に2分割して構成されたケーシング本体5と、2分割されたケーシング本体5を締め付けて固定する複数の締付手段6と、を具備している。
【0024】
ケーシング本体5は、図1に示すように、断面略半円形状を有して上フランジ7が側方へ突出して設けられた上ケーシング8と、同じく断面略半円形状を有して下フランジ9が側方へ突出して設けられた下ケーシング10と、を有している。そして、上ケーシング8の上フランジ7と下ケーシング10の下フランジ9とが締付手段6によって互いに接合され、このフランジ接合部には、ケーシング3の内部に収容される流体(不図示)が外部へリークするのを防止するためのシール構造が設けられている。
【0025】
ここで、図2及び図3は、第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造1を示す図であり、図2は概略断面図、図3は分解斜視図である。フランジ接合部のシール構造1は、上ケーシング8の上フランジ7と、下ケーシング10の下フランジ9と、上フランジ7に設けられるシール手段11と、上フランジ7及び下フランジ9を締め付けて一体化する締付手段6と、を備えるものである。
【0026】
上フランジ7は、図2及び図3に示すように、下フランジ9に当接する上当接面711からその反対側の締付面712に達するように挿入穴713が貫通形成された本体部71と、この本体部71の挿入穴713に挿入された治具72と、を有している。
一方、下フランジ9は、上フランジ7に当接する下当接面91に形成された下ネジ穴92(第2のネジ穴)を有している。尚、この下ネジ穴92を、下フランジ9を貫通するように形成してもよい。
【0027】
治具72は、シール手段11を収容するためのものである。この治具72は、図2及び図3に示すように、略円筒形状の部材であって、その高さ寸法は上フランジ7の厚みと略等しく形成されている。そして、この治具72の底面には、下フランジ9の下ネジ穴92と略同径の上ネジ穴721(第1のネジ穴)が形成されている。この上ネジ穴721は、その内周面に雌ネジが切られたものであり、上フランジ7の厚み方向中間部まで延びている。一方、治具72の上面には、上ネジ穴721より大径の収容穴722が形成されている。この収容穴722は、上フランジ7の厚み方向中間部まで延び、その下端は上ネジ穴721の上端に連通している。これにより、収容穴722と上ネジ穴721との連結部には、収容穴722と上ネジ穴721の径の違いによる段差面723が形成されている。
【0028】
このように構成される治具72は、図2に示すように、上フランジ7の挿入穴713に対して挿入され、その底部の全周が、上フランジ7の本体部71に対して溶接により固定されている。これにより、上フランジ7の本体部71と治具72との間の隙間73が溶接部74によって封止され、この隙間73を通ってケーシング3の内部の流体が外部へリークすることが防止されている。
【0029】
尚、上フランジ7の本体部71と治具72とを固定する手段としては、溶接に限られず従来公知の任意の方法を用いることができる。また、本実施形態では、シール手段11を収容するための収容穴722を治具72に形成し、この治具72を上フランジ7に装着したが、これに代えて、図4に示すように、上ネジ穴721及び収容穴722を上フランジ7に直接形成してもよい。しかし、本実施形態のように収容穴722を治具72に形成する方が、収容穴722を上フランジ7に形成する場合と比較して、収容穴722の加工作業を容易化できるという利点がある。
【0030】
締付手段6は、図2及び図3に示すように、外周面に雄ネジが切られたボルト61と、内周面に雌ネジが切られてボルト61に螺合可能なナット62と、このナット62と上フランジ7との間に介在される座金63と、を有している。このように構成される締付手段6は、図2に示すように、上ネジ穴721及び下ネジ穴92に対してボルト61がそれぞれ螺合され、上フランジ7の上に座金63が載置された後、ナット62がボルト61に螺合されて締め付けられる。尚、締付手段6の構成は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能であり、例えば座金63のない構成や、ナット62の代わりに頭部付きのボルト61を用いた構成であってもよい。
【0031】
シール手段11は、図2及び図3に示すように、断面略O型の形状を有するOリング111(ガスケット部材)と、板状の部材である複数の押圧部材112と、を有している。
【0032】
Oリング111は、ゴム等の弾性部材からなるリング状の部材であって、図2及び図3に示すように、その内径はボルト61の外径より若干大きく形成されるとともに、その外径は収容穴722の穴径より若干小さく形成されている。このように構成されるOリング111は、収容穴722の内部に、段差面723の上に載置して設けられる。尚、本発明に係るガスケット部材は、本実施形態のようにOリング111に限定されず、その材質や断面形状等を適宜設計変更することができる。
【0033】
押圧部材112は、Oリング111を押圧して弾性変形させるためのものである。ここで、図5は、押圧部材112の外観を示す概略斜視図である。押圧部材112は、弾性変形可能な部材からなる板状の部材であって、略矩形形状の基片112aと、この基片112aの長手方向一端部から鈍角をなして延びる座金当接片112bと、基片112aの長手方向他端部から鈍角をなして延びるOリング当接片112cと、を有している。そして、座金当接片112b及びOリング当接片112cは、外力の作用を受けると、図5に点線で示すように、基片112aに対して略90°の角度をなす程度の位置まで弾性変形可能となっている。
【0034】
このように構成される押圧部材112は、図6に示すように、収容穴722の内部におけるOリング111の上方に配置される。より詳細には、図6に示すように段差面723の上にOリング111を載置した状態において、Oリング当接片112cを下にして、且つ、基片112aをボルト61の軸部に沿わせるようにして、押圧部材112がOリング111の上に配置される。この時、押圧部材112は、そのOリング当接片112cの一部がOリング111に当接するとともに、その座金当接片112bが収容穴722の開口から外部に突出した状態となる。このようにして、Oリング111の周方向に沿って所定間隔で、複数個の押圧部材112が配置される。
【0035】
そして、図6に示すように押圧部材112をOリング111の上に配置した状態において、その上に座金63を載置した後、ナット62をボルト61に螺合させて締め付ける。そうすると、座金63に押圧された押圧部材112は、図5に一点鎖線で示すように、基片112aに対して座金当接片112b及びOリング当接片112cが略直交する略コの字型に弾性変形する。そして、この弾性変形した押圧部材112が図5に実線で示す元の形状に復元しようとすることにより、座金当接片112bが座金63を上方へ押圧する一方、Oリング当接片112cがOリング111を下方へ押圧する。そして、Oリング当接片112cに押圧されたOリング111は押し潰されるように弾性変形し、収容穴722とボルト61の軸部との間がOリング111によって充填される。これにより、上ネジ穴721は、収容穴722に連通する側の端部開口がOリング111によって封止された状態になる。
【0036】
尚、押圧部材112の形状は、本実施形態に限定されず適宜設計変更が可能である。例えば、図に詳細は示さないが押圧部材112を平面視でリング状に形成し、この1この押圧部材112をボルト61の軸部を包囲するように配置してもよい。
【0037】
次に、第1実施形態に係るフランジ接合部のシール構造1の作用効果について説明する。ケーシング3の内部で流体の圧力が上昇し、ケーシング3に作用する力が大きくなると、図7に示すように、上ケーシング8の上フランジ7と下ケーシング10の下フランジ9との間に、若干の隙間12が生じる場合がある。この場合、ケーシング3の内部の流体Rが、この隙間12を通って、上ネジ穴721とボルト61との間の間隙13に浸入する。しかし、前述のように上ネジ穴721の収容穴722に連通する側の端部開口はOリング111によって封止されているので、間隙13に浸入した流体RはOリング111によって堰き止められ、収容穴722には流入しない。従って、間隙13に浸入した流体Rが外部へリークすることはない。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るフランジ接合部のシール構造について説明する。図8は、第2実施形態に係るフランジ接合部のシール構造20を示す概略断面図である。第2実施形態に係るフランジ接合部のシール構造20は、第1実施形態と比較すると、シール手段11を構成する押圧部材21の構成だけが異なっている。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるため、図8では図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0039】
押圧部材21は、図8に示すように、いわゆるコイルバネであって、治具72の収容穴722の内部に圧縮状態で収容され、その一端部がOリング111に当接し、他端部が座金63に当接している。このような構成によれば、圧縮状態の押圧部材21が自然長状態に復元しようとすることにより、押圧部材21の他端部がOリング111を下方へ押圧する。これにより、押圧部材21に押圧されたOリング111が弾性変形し、上ネジ穴721の端部開口がOリング111によって封止されるので、第1実施形態と同じ作用効果が奏される。更に、押圧部材21が単一の部材で構成されるので、複数個の押圧部材112をOリング111の上に配置する第1実施形態と比較すると、押圧部材21の設置作業を容易且つ確実に行うことができるという利点がある。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るフランジ接合部のシール構造について説明する。図9は、第3実施形態に係るフランジ接合部のシール構造30を示す概略断面図である。第3実施形態に係るフランジ接合部のシール構造30も、第1実施形態と比較すると、シール手段11を構成する押圧部材31の構成だけが異なっている。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるため、図9では図2と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0041】
押圧部材31は、弾性変形不能な部材からなり、図9に示すように、断面略コの字型に形成されている。この押圧部材31は、第1実施形態の押圧部材112と同様に、基片31aと、この基片31aの長手方向一端部から略直交して延びる座金当接片31bと、基片31aの長手方向他端部から略直交して延びるOリング当接片31cと、を有している。
【0042】
このように構成される押圧部材31は、図9に示すように、段差面723の上にOリング111を載置した状態において、Oリング当接片31cを下にして、且つ、基片31aをボルト61の軸部に沿わせるようにして、押圧部材31がOリング111の上に配置される。この時、押圧部材31は、そのOリング当接片31cの全体がOリング111に当接するとともに、その座金当接片31bが収容穴722の開口から外部に突出した状態となる。
【0043】
そして、図9に示すように押圧部材31をOリング111の上に配置した状態において、その上に座金63を載置した後、ナット62をボルト61に螺合させて締め付ける。そうすると、座金63に押圧された押圧部材31は、弾性変形することなくそのまま下方へ沈み込み、その全体が収容穴722の内部に収容された状態となる。これにより、押圧部材31が下方へ沈み込んだ分、Oリング当接片31cがOリング111を下方へ押圧する。これにより、押圧部材31に押圧されたOリング111が弾性変形し、上ネジ穴721の端部開口がOリング111によって封止されるため、第1実施形態と同じ作用効果が奏される。更に、押圧部材31が弾性変形不能な部材からなるので、押圧部材112が弾性変形する第1実施形態と比較すると、Oリング当接片31c及び座金当接片31bをOリング111及び座金63に対してより確実に密着させることができるという利点がある。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係るフランジ接合部のシール方法について説明する。図10から図12は、本実施形態に係るフランジ接合部のシール方法を説明するための図であって、図10は本実施形態に係るシール方法を適用する圧縮機プラント40の全体構成を示す模式図、図11はフランジ接合部の概略断面図、図12は下ケーシング51の下フランジ52を示す概略斜視図である。
【0045】
圧縮機プラント40は、図10に示すように、ケーシング3の内部にロータ(不図示)が収容されてなる圧縮機41と、この圧縮機41に接続された排気配管42と、この排気配管42に接続されたロータリーポンプ43及び真空ポンプ44と、排気配管42を開放または閉止する第1排気バルブ45及び第2排気バルブ46と、圧縮機41に接続された吸気配管47と、この吸気配管47を開放または閉止するリークバルブ48と、を有している。
【0046】
また、図11及び図12に示すように、圧縮機41を構成する上ケーシング49の上フランジ50には、上ネジ穴501が貫通形成されている。一方、圧縮機41を構成する下ケーシング51の下フランジ52には、その表面に下ネジ穴521が複数形成されるとともに、これら下ネジ穴521を包囲するようにしてリング収容溝522が形成されている。
【0047】
上ケーシング49の上フランジ50と下ケーシング51の下フランジ52との接合作業を行う場合、作業者は、まず、締付手段6の仮締め工程を行う。すなわち、作業者は、下フランジ52のリング収容溝522の内部にOリング53を収容する。この時、図に詳細は示さないが、Oリング53はその頂部がリング収容溝522から突出した状態となっている。そして、作業者は、この下フランジ52に対して上フランジ50を当接させる。これにより、下フランジ52の上面から突出したOリング53は、上フランジ50によって押し潰され、リング収容溝522の内部に充填される。
【0048】
この状態において、作業者は、ボルト54を上ネジ穴501と下ネジ穴521とにそれぞれ螺合させ、このボルト54に座金55を挟んでナット56を螺合させた後、トルクレンチ等を用いることにより、ボルト54がガタつかない程度までナット56を仮締めする。
【0049】
次に、作業者は、圧縮機41の内部を真空引きする排気工程を行う。すなわち、作業者は、図10に示すリークバルブ48及び第2排気バルブ46を閉止した状態で第1排気バルブ45を開放し、ロータリーポンプ43を用いて圧縮機41の内部についていわゆる粗引きを行う。その後、圧縮機41の内部が所定の真空度に達すると、作業者は、第1排気バルブ45を閉止するとともに第2排気バルブ46を開放し、真空ポンプ44を用いて圧縮機41の内部についていわゆる本引きを行う。これにより、圧縮機41の内部が高真空状態になる。
【0050】
次に、作業者は、締付手段6の増し締め工程を行う。すなわち、排気工程によって圧縮機41の内部が高真空状態になると、上フランジ50と下フランジ52との面圧が上昇して両者がより強く密着することにより、ナット56に締め代が生じる。従って、作業者は、ナット56を手で掴んで回すことにより、この締め代の分だけナット56を増し締めする。
【0051】
最後に、作業者は、圧縮機41の内部を大気圧に戻す空気導入工程を行う。すなわち、作業者は、図10に示す第1排気バルブ45及び第2排気バルブ46を閉止した状態でリークバルブ48を開放する。これにより、圧縮機41の内部と外部との圧力差によって、吸気配管47を通して圧縮機41の外部から内部へ空気が流入する。そうすると、圧縮機41の内部の圧力が大気圧に戻り、上フランジ50と下フランジ52との面圧が低下して両者が離間しようとすることにより、ナット56が強く締め付けられる。これにより、上フランジ50と下フランジ52とが互いに強固に接合される。
【0052】
尚、本実施形態では、図11に示すフランジ接合部について、上フランジ50と下フランジ52との接合作業時に本シール方法を適用する場合を例に説明した。しかし、これに限られず、第1〜第3実施形態に係るフランジ接合部のシール構造1,20,30について、上フランジ7と下フランジ9との接合作業時に本シール方法を適用することも可能である。
【0053】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 フランジ接合部のシール構造
2 圧縮機
3 ケーシング
4 配管
5 ケーシング本体
6 締付手段
7 上フランジ
8 上ケーシング
9 下フランジ
10 下ケーシング
11 シール手段
12 隙間
13 間隙
20 フランジ接合部のシール構造
21 押圧部材
30 フランジ接合部のシール構造
31 押圧部材
40 圧縮機プラント
41 圧縮機
42 排気配管
43 ロータリーポンプ
44 真空ポンプ
45 第1排気バルブ
46 第2排気バルブ
47 吸気配管
48 リークバルブ
49 上ケーシング
50 上フランジ
51 下ケーシング
52 下フランジ
53 Oリング
54 ボルト
55 座金
56 ナット
61 ボルト
62 ナット
63 座金
71 本体部
72 治具
73 隙間
74 溶接部
91 下当接面
92 下ネジ穴
100 固定構造
101 上ケーシング
102 下ケーシング
103 上フランジ
103A フランジ当接面
104 下フランジ
104A フランジ当接面
105 上ネジ穴
106 下ネジ穴
107 ボルト
108 座金
109 ナット
110 隙間
111 Oリング
112 押圧部材
501 上ネジ穴
521 下ネジ穴
522 リング収容溝
711 上当接面
712 締付面
713 挿入穴
721 上ネジ穴
722 収容穴
723 段差面
112a 基片
112b 座金当接片
112c Oリング当接片
31a 基片
31b 座金当接片
31c Oリング当接片
R 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの当接面で当接し合う一対のフランジと、
一方のフランジに設けられ、前記当接面に開口する第1のネジ穴と、
他方のフランジに設けられ、前記当接面に開口する第2のネジ穴と、
前記一方のフランジに設けられ、前記第1のネジ穴から拡径し前記当接面と反対側の締付面に開口する収容穴と、
前記第1のネジ穴及び前記第2のネジ穴に螺合されるボルトを有し、前記一対のフランジを締め付けて一体化する締付手段と、
該収容穴の内部に前記ボルトを包囲して設けられるガスケット部材と、
前記収容部の内部に設けられ、前記締付手段の締め付け力を受けて前記ガスケット部材を押圧することで前記ボルトの径方向に膨出させる押圧部材と、
を備えることを特徴とするフランジ接合部のシール構造。
【請求項2】
前記一方のフランジは、挿入穴が形成された本体部と、前記第1のネジ穴及び前記収容穴が設けられて前記挿入穴に挿入された治具と、を有することを特徴とする請求項1に記載のフランジ接合部のシール構造。
【請求項3】
前記治具は、前記本体部に対して溶接によりその全周が固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフランジ接合部のシール構造。
【請求項4】
前記押圧部材が、前記ボルトの軸方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のフランジ接合部のシール構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のフランジ接合部のシール構造を有する構造体におけるフランジ接合部のシール方法において、
前記締付手段の仮締めを行う仮締め工程と、
前記構造体の内部を真空引きする排気工程と、
前記締付手段の増し締めを行う増し締め工程と、
前記構造体の内部を大気圧に戻す空気導入工程と、
を含むことを特徴とするフランジ接合部のシール方法。
【請求項6】
一対のフランジを互いに当接させて締付手段で締め付けることによって一体化する構造体におけるフランジ接合部のシール方法であって、
前記締付手段の仮締めを行う仮締め工程と、
前記構造体の内部を真空引きする排気工程と、
前記締付手段の増し締めを行う増し締め工程と、
前記構造体の内部を大気圧に戻す空気導入工程と、
を含むことを特徴とするフランジ接合部のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−102802(P2012−102802A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251882(P2010−251882)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(310010564)三菱重工コンプレッサ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】