説明

フラーレン構造を有するフタロシアニン化合物

【課題】ドナーとアクセプターが電荷移動に理想的な一次元配列を自発的に形成することができ、有機薄膜太陽電池材料として有用な新規化合物の提供。
【解決手段】フタロシアニン骨格の炭素環に結合した側鎖の末端に、少なくとも1つ、C60フラーレン((C60−Ih)[5,6]フラーレン)誘導体を含有するフタロシアニン化合物。化合物は、ドナー化合物として作用し得るフタロシアニン化合物に、アクセプター化合物として作用し得るフラーレン構造が導入されている。そのため、ドナーとアクセプターが電荷移動に理想的な一次元配列を形成することにより、有機薄膜太陽電池材料として優れた電子移動特性や光電変換特性を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン構造を有するフタロシアニン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機系太陽電池は、材料コストが低く、製造過程が簡便であり、かつ、フレキシブルな基板上に層を形成できるという利点があるため、研究が進められている。
【0003】
有機系太陽電池において、ドナー化合物としてフタロシアニン誘導体が、アクセプター化合物としてフラーレン系化合物が知られている。例えば非特許文献1には、式(X)で表されるフタロシアニン化合物が記載されている。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】初坂一輝、太田和親、山本巌、白井汪芳著、「遷移金属錯体のディスコティック液晶(30):オクタキス(ジアルコキシフェノキシ)フタロシアニン銅(II)錯体の自発的な一様なホメオトロピック配向」(Discotic liquid crystals of transition metal complexes, Part 30: spontaneous uniform homeotropic alignment of octakis (dialkoxyphenoxy) phthalocyaninatocopper (II) complexses)、物質化学(Journal of Materials Chemistry)、英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)、2001年、11巻、p.423-433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ドナーとアクセプターが電荷移動に理想的な一次元配列を自発的に形成することができ、有機薄膜太陽電池材料として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明のフラーレン構造を有するフタロシアニン化合物は、式(1)で表されることを特徴とする。
【0008】
【化2】


[式(1)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はC1-20アルコキシ基を表す。
1及びX2は、それぞれ独立に、水素原子又は式(2)で表される基を表し、X1及びX2のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。
m及びnは、それぞれ独立に、6〜20の整数を表す。
Mは、2個の水素原子又は1個若しくは2個の長周期型周期表における第1族〜第15族の金属原子、金属酸化物、金属水酸化物或いは金属ハロゲン化物を表す。
式(2)中、*は結合位置を示す。]
【0009】
前記R1〜R18は、炭素数6以上のアルコキシ基であることが好ましい。また、前記R1〜R18のうち、6個〜12個がC1-20アルコキシ基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ドナーとアクセプターが電荷移動に理想的な一次元配列を自発的に形成することができ、有機薄膜太陽電池材料として有用な化合物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】化合物(1−4)の加熱電子スペクトルである。
【図2】化合物(1−18)の加熱電子スペクトルである。
【図3】化合物(1−46)の加熱電子スペクトルである。
【図4】化合物(1−4)の室温における広角XRDパターンである。
【図5】化合物(1−18)の50℃における広角XRDパターンである。
【図6】化合物(1−46)の室温における広角XRDパターンである。
【図7】化合物(1−4)の小角XRDパターンである。
【図8】化合物(1−18)の小角XRDパターンである。
【図9】化合物(1−46)の小角XRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフラーレン構造を有するフタロシアニン化合物は、式(1)で表されることを特徴とする。
【0013】
【化3】


[式(1)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はC1-20アルコキシ基を表す。
1及びX2は、それぞれ独立に、水素原子又は式(2)で表される基を表し、X1及びX2のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。
m及びnは、それぞれ独立に、6〜20の整数を表す。
Mは、2個の水素原子又は1個若しくは2個の長周期型周期表における第1族〜第15族の金属原子、金属酸化物、金属水酸化物或いは金属ハロゲン化物を表す。
式(2)中、*は結合位置を示す。]
【0014】
式(2)で表される基を与える式(3)で表される化合物は、C60フラーレン((C60−Ih)[5,6]フラーレン)である。
【0015】
【化4】

【0016】
前記C1-20アルコキシ基とは、炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、ノニロキシ基、デシロキシ基、ウンデシロキシ基、ドデシロキシ基、トリデシロキシ基、テトラデシロキシ基、ペンタデシロキシ基、ヘキサデシロキシ基、ヘプタデシロキシ基、オクタデシロキシ基、ノナデシロキシ基、イコシロキシ基等が挙げられる。
【0017】
前記R1〜R18は、炭素数6以上のアルコキシ基が好ましく、特に炭素数10〜16のアルコシキ基が好ましい。前記R1〜R18は、直鎖状のアルコキシ基が好ましい。
【0018】
前記R1〜R18の組合せとしては、R1〜R18のうち6個〜12個がアルコキシ基であることが好ましく、より好ましくは8個〜12個である。特に、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R10、R11、R13、R14、R16及びR17がアルコキシ基である態様、R1、R4、R7、R10、R13及びR16がアルコキシ基である態様が好ましい。また、R1〜R18のいずれかがアルコキシ基の場合には、それらは同一のアルコキシ基であることが好ましい。同一のアルコキシ基である場合には合成上も有利である。
【0019】
前記元素の長周期型周期表における第1族〜第15族の金属原子とは、IUPAC1990年規則による長周期型周期表において、第1族〜第15族に分類される金属原子である。これらの中でも、金属元素としては、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が好ましい。金属酸化物としては、VO、GeO等が好ましい。金属水酸化物としては、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2等が好ましい。金属ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が好ましい。これらの中でも、Cu、Ni、Zn、Al等の金属原子がより好ましく、最も好ましくはCuである。
【0020】
また、式(1)で表される化合物としては、式(4)で表される態様も好適である。
【0021】
【化5】


[式(4)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はC1-20アルコキシ基を表す。
1及びX2は、それぞれ独立に、水素原子又は式(2)で表される基を表し、X1及びX2のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。
m及びnは、それぞれ独立に、6〜20の整数を表す。
Mは、2個の水素原子又は1個若しくは2個の長周期型周期表における第1族〜第15族の金属原子、金属酸化物、金属水酸化物或いは金属ハロゲン化物を表す。]
【0022】
式(1)で表される化合物としては、具体的には式(1−1)〜式(1−56)で表される化合物が挙げられる。以下の表中、(2)は、式(2)で表される基を表す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

【0029】
【表7】

【0030】
【表8】

【0031】
本発明の式(1)で表される化合物の合成法の一例を説明する。式(1)で表される化合物の合成は、式(5)で表される化合物を出発原料として用いる。
【0032】
【化6】


[式(5)中、m、nは、それぞれ独立に、6〜20の整数を表す。]
【0033】
式(5)で表される化合物は、式(6)で表され化合物に、炭素数6〜20の1−ブロモアルカノールを反応させることで得られる。なお、式(6)で表される化合物は、例えば4,5−ジクロロフタロニトリルに、レゾルシノール、ヒドロキノン又はカテコールを反応させることで得られる。
【0034】
【化7】

【0035】
そして、式(5)で表される化合物に、式(7)で表される化合物及び必要に応じて金属源化合物を反応させて、式(8)で表される化合物を得る。なお、式(7)で表される化合物は、特開2000−119652号公報(段落[0057]〜[0059])、参考文献1(Ichihara Masahiro; Suzuki Ayumi; Hatsusaka Kazuaki; Ohta Kazuchika、「Discotic liquid crystals of transition metal complexes 38:peripheral chain substituent position effect on columnar mesophase and stacking structures of novel phthalocyaninebased liquid crystal」、Journal of Porphyrins and Phthalocyanines、2007年、11巻、p.504-507、Synthesis)、参考文献2(Ichihara Masahiro; Suzuki Ayumi; Hatsusaka Kazuaki; Ohta Kazuchika、「Discotic liquid crystals of transition metal complexes 37: a thermotropic cubic mesophase having Pn.hivin.3m symmetry exhibited by phthalocyanine-based derivatives.」、Liquid Crystals、2007年、34(5),p.555-567)を参考に合成すればよい。
【0036】
【化8】


[式(7)中、R61〜R66は、それぞれ独立に、水素原子又はC1-20アルコキシ基を表す。]
【0037】
【化9】


[式(8)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はC1-20アルコキシ基を表す。
m及びnは、それぞれ独立に、6〜20の整数を表す。
Mは、2個の水素原子又は1個若しくは2個の長周期型周期表における第1族〜第15族の金属原子、金属酸化物、金属水酸化物或いは金属ハロゲン化物を表す。]
【0038】
最後に、上記で得られた式(8)で表される化合物に、p−ホルミル安息香酸を反応させ、さらにフラーレンC60及びN−メチルグリシンを反応させることにより、上記式(1)で表される化合物が得られる。なお、上記の合成法は一例に過ぎず、他の方法により合成してもよい。また、合成時には溶媒、触媒などを用いてもよく、得られた化合物を精製してもよい。
【0039】
本発明の化合物は、ドナー化合物として作用し得るフタロシアニン化合物に、アクセプター化合物として作用し得るフラーレン構造が導入されている。そのため、本発明の化合物は、ドナーとアクセプターが電荷移動に理想的な一次元配列を形成することにより、有機薄膜太陽電池材料として優れた電子移動特性や光電変換特性を持つことが期待される。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下において、「%」及び「部」は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
【0041】
1.評価方法
1−1.化合物の同定
実施例において合成した化合物は、1H−NMR測定、赤外吸収スペクトル測定及びMALDI−TOF(Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization-Time of Flight)マススペクトル測定により同定した。
1H−NMR測定は、重クロロホルム(CDCl3)を用いて、核磁気共鳴装置(Bruker社製、「DRX−400」)により測定した。化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS)から低磁場側での100万分の1(ppm;δスケール)として記録し、テトラメチルシラン(δ=0)を参照とした。
赤外吸収スペクトル測定は、フーリエ交換赤外分光装置(Thermo Nicolet社製、「NEXUS 670 FT−IR spectrometer」)を用いて、溶液法(CHCl3)、錠剤法(KBr)により測定を行った。測定値は、波数(cm-1)で記載した。
MALDI−TOFマススペクトル測定は、飛行時間型質量分析装置(Applied Biosystems社製、「Voyager−DETMPro spectrometer」)を用いて行った。マトリックスにはジスラノールを用いた。
【0042】
1−2.相転移挙動
化合物の相転移挙動は、偏光顕微鏡観察、示差走査熱量計測定によって同定した。
偏光顕微鏡観察は、ホットステージ(METTLER TOLEDO社製、「FP−90 Central Processor」)を備えた偏光顕微鏡(NIKON社製、「E−600 POL」)を用いた。
示差走査熱量計測定は、示差走査熱量計(島津製作所社製、「DSC−50」)を用いた。
【0043】
1−3.会合構造
化合物の会合構造は、加熱電子スペクトル測定によって同定した。
加熱電子スペクトル測定は、加熱装置とコントローラーとを備え付けた分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−4100 spectrophotometer」)を用いて測定した。測定溶媒にはCHCl3を用いた。
【0044】
1−4.相構造
化合物の相構造同定は、加熱広角X線回折、及び加熱小角X線回折測定によって行った。
加熱広角X線回折は、加熱装置とコントローラーとを備え付けたX線回折装置(リガク社製、「RAD」)を用いた。
【0045】
加熱小角X線回折は、新規に構成した加熱小角X線回折装置を用いて測定した。該加熱小角X線回折装置の構成は、X線源としてX線発生装置(Bruker社製、「MO6X」)、光学系には小角X線散乱装置(MAC Science社製、「SAXS」)、検出器として2次元検出器(Bruker社製、「Hi−STAR」)を用いた。なお、小角X線散乱測定に必要なX線ビーム強度を得るため、湾曲させたゲルマニウム結晶を用いて、X線源から鉛直方向ないし水平方向に発散するX線ビームを集光させ、ポイントビームとして検出器上に収束させた。また、試料台には、サンプル加熱装置(METTLER TOLEDO社製、「FP−82HT HOT Stage」)を用いた。そして、スライドガラス(METTLER TOLEDO社製)に直径1.5mm程度の穴を開け、この中に測定試料を約1mg詰めて、前記サンプル加熱装置に設置したものをX線測定用試料とした。
【0046】
2.中間体の合成
中間体(e)及び(f)を以下のスキームで合成した。
【0047】
【化10】

【0048】
2−1.式(a)で表される化合物(以下、「化合物(a)」)の合成
レゾルシノール(東京化成工業株式会社製、5.00g,45.5mmol)を、蒸留したジメチルアセトアミド(DMAA)(35ml)に溶解させ、炭酸カリウム(10g,72.4mmol)を加えて110℃に加熱し、窒素をバブリングしながら25分間攪拌した。さらに4,5−ジクロロフタロニトリル(東京化成工業株式会社製、2.00g,10.2mmol)を加えて2時間加熱した。放冷後、塩酸水溶液で中和し、ジエチルエーテルで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し、溶媒を減圧留去した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル30g,クロロホルム;Rf=0.10)で精製し、ジクロロメタンで再結晶して白色固体1.33gを得た。なお、4,5−ジクロロフタロニトリルからの化合物(a)の収率は38mol%であった。
【0049】
得られた白色固体の1HNMRデータを以下に示す。
1H−NMR(DMSO−d6:TMS)δ6.43−6.51(4H,m,2,6−Ar−H),6.61−6.65(2H,m,4−Ar−H),7.70(2H,t,J=8.2,5−Ar−H),7.76(2H,s,CN−Ar−H),9.78(2H,s,−OH)。
【0050】
2−2.式(b)で表される化合物(以下、「化合物(b)」)の合成
化合物(a)(0.500g,1.45mmol)を、蒸留したジメチルホルムアミド(DMF)(10ml)に溶解させ、炭酸カリウム(1.0g,7.2mmol)及び1−ブロモドデカノール(東京化成工業株式会社製、0.846g,3.19mmol)を加えて、あらかじめ100℃に加熱しておいた油浴で2時間還流した。放冷後、クロロホルムで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。さらにジエチルエーテルで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去し、0.790gの固体を得た。なお、化合物(a)からの化合物(b)の収率は77mol%であった。
【0051】
得られた固体の赤外吸収スペクトル測定結果、1HNMRデータを以下に示す。
IR(CHCl3,KBr,cm-1)3401(−OH)。
1H−NMR(CDCl3:TMS)δ1.28(32H,br s,−CH2CH2CH2OH),1.41−1.49(4H,m,−CH2CH2OH),1.74−1.83(4H,m,−CH2CH2O),3.61−3.68(4H,m,−CH2OH),3.95(4H,t,J=6.5,−CH2OH),6.60−6.65(4H,m,2,6−Ar−H),6.79−6.83(2H,m,4−Ar−H),7.20(2H,s,5−Ar−H),7.30−7.35(2H,m,CN−Ar−H)。
【0052】
2−3.式(c)で表される化合物(以下、「化合物(c)」)の合成
式(c)で表される化合物は、特開2000−119652号公報(段落[0057]〜[0059])に従って合成した。
【0053】
2−4.式(d)で表される化合物(以下、「化合物(d)」)の合成
式(d)で表される化合物は、参考文献(Masahiro Ichihara,Ayumi Suzuki, Kazuaki Hatsusaka, Kazuchika Ohta、「Discotic liquid crystals of transition metal complexes 38:peripheral chain substituent position effect on columnar mesophase and stacking structures of novel phthalocyaninebased liquid crystal」、Journal of Porphyrins and Phthalocyanines、2007年、11巻、p.504-507、Synthesis)に従って合成した。
【0054】
2−5.式(e)で表される化合物(以下、「化合物(e)」)の合成
化合物(c)(0.501g,0.477mmol)に、化合物(b)(0.127g,0.178mmol)、1−ヘキサノール(5ml)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)(7滴)を加えて30分間攪拌し、さらに塩化銅(II)(0.041g,0.305mmol)を加えて18時間還流した。放冷後、メタノールを過剰に加えて沈殿させろ過した後、ろ物をメタノール、エタノール、アセトンでそれぞれ洗浄しクロロホルムに溶かして回収し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g,クロロホルム:テトラヒドロフラン(THF)=9:1;Rf=0.75)で精製した。熱アセトンで固液抽出した後、酢酸エチルで2回再結晶し窒素乾燥させ、化合物(e)を0.146g得た。なお、化合物(b)からの化合物(e)の収率は20mol%であった。
【0055】
得られた、化合物(e)のUVスペクトルデータ、マススペクトルデータを以下に示す。
UV(クロロホルム4.01×10-6mol/L,nm(logε))ソーレーバンド286.5(4.84),340.7(4.86),Qバンド615.5(4.60),652.6(4.56)
MS(MALDI−TOF mass)3927.43(計算値3925.29)

【0056】
2−6.式(f)で表される化合物(以下、「化合物(f)」)の合成
化合物(d)(0.600g,0.881mmol)に、化合物(b)(0.234g,0.329mmol)、1−ヘキサノール(6ml)、ジアザビシクロウンデセン(10滴)を加えて30分間攪拌し、さらに塩化銅(II)(0.073g,0.543mmol)を加えて18時間還流した。放冷後、メタノールを過剰に加えて沈殿させろ過した後、ろ物をメタノール、エタノール、アセトンでそれぞれ洗浄しクロロホルムに溶かして回収し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g,クロロホルム:THF=19:1;Rf=0.08)で精製した。アセトンで1回再結晶し窒素乾燥させ、化合物(f)を0.185g得た。なお、化合物(b)からの化合物(f)の収率は20mol%であった。
【0057】
得られた、化合物(f)のUVスペクトルデータ、マススペクトルデータを以下に示す。
UV(クロロホルム3.95×10-6mol/L,nm(logε))ソーレーバンド283.3(4.72),342.0(4.80),Qバンド613.6(4.55),650.7(4.52)
MS(MALDI−TOF mass)2818.08(計算値2819.38)
【0058】
3.実施例1
式(1−4)で表される化合物(以下、「化合物(1−4)」)を下記のスキームで合成した。
【0059】
【化11】

【0060】
3−1.式(g)で表される化合物(以下、「化合物(g)」)の合成
化合物(e)(0.100g,0.0255mmol)にp−ホルミル安息香酸(東京化成工業株式会社製、0.0153g,0.102mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(0.105g,0.510mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)(0.036g,0.30mmol)、ジクロロメタン(20ml)を加え、約50℃で一晩攪拌した。ジクロロメタンで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル70g,クロロホルム;Rf=0.25)で精製した。アセトンで熱ろ過した後、酢酸エチルで1回再結晶した。さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させることにより、化合物(g)を0.0652g得た。なお、化合物(e)からの化合物(g)の収率は61mol%であった。
【0061】
得られた、化合物(g)のUVスペクトルデータ、マススペクトルデータを以下に示す。
UV(クロロホルム3.94×10-6mol/L,nm(logε))ソーレーバンド289.2(4.80),340.9(4.84),Qバンド615.1(4.57),652.4(4.54)
MS(MALDI−TOF mass)4191.41(計算値4189.52)
【0062】
3−2.化合物(1−4)の合成
化合物(g)(30mg,0.0072mmol)を蒸留したトルエン(30ml)に溶解させ、フラーレンC60(東京化成工業株式会社製、20.6mg,0.0286mmol)を加えて窒素をバブリングしながら室温で2時間攪拌し、試薬を完全に溶解させた。さらにN−メチルグリシン(東京化成工業株式会社製5.2mg,0.058mmol)を加えて100℃で3日間加熱した。放冷後、トルエンを減圧留去し、直接カラムクロマトグラフィー(シリカゲル80g,トルエン;Rf=0)にかけ、未反応のフラーレン(Rf=1.0)を完全に流去させた後、原点の化合物をTHFで回収した。ジエチルエーテルで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。残渣をメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチルでそれぞれ固液抽出し、残りをTHFに溶かして回収し溶媒を減圧留去した。少量のTHFに溶かし、これに酢酸エチルを濁るまで加え沸点まで加熱した後で氷冷することで再沈殿させ、上澄みをパスツールピペットで除去するという操作を2回繰り返し真空乾燥させた。さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させることで化合物(1−4)を24mg得た。なお、化合物(g)からの化合物(1−4)の収率は59mol%であった。
【0063】
得られた、化合物(1−4)のUVスペクトルデータ、マススペクトルデータを以下に示す。
UV(クロロホルム4.00×10-6mol/L,nm(logε))C60253.4(5.18),ソーレーバンド287.8(5.07),341.0(4.95),Qバンド616.7(4.57),652.6(4.58)
MS(MALDI−TOF mass)5685.80(計算値5686.88),4965.05(M+−C60
【0064】
4.実施例2
式(1−18)で表される化合物(以下、「化合物(1−18)」)を下記のスキームで合成した。
【0065】
【化12】

【0066】
4−1.式(h)で表される化合物(以下、「化合物(h)」)の合成
化合物(e)(233mg,0.0594mmol)に、安息香酸(東京化成工業株式会社製、7.2mg,0.0594mmol)、DCC(123mg,0.594mmol)、DMAP(29mg,0.238mmol)、ジクロロメタン(10ml)を加え、室温で一晩攪拌した。ジクロロメタンで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル70g,クロロホルム;Rf=0.28)で精製した。酢酸エチルで1回再結晶し、さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させて、化合物(h)を94mg得た。なお、化合物(e)からの化合物(h)の収率は39mol%であった。得られた、化合物(h)のマススペクトルデータを以下に示す。
MS(MALDI−TOF mass)4031.01(計算値4029.39)
【0067】
4−2.式(i)で表される化合物(以下、「化合物(i)」)の合成
化合物(h)(94mg,0.0232mmol)に、p−ホルミル安息香酸(14mg,0.0926mmol)、DCC(96mg,0.464mmol)、DMAP(23mg,0.186mmol)、ジクロロメタン(10ml)を加え、室温で一晩攪拌した。ジクロロメタンで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g,クロロホルム;Rf=0.95)で精製した。酢酸エチルで1回再結晶し、さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させて、化合物(i)を49mg得た。なお、化合物(h)からの化合物(i)の収率は51mol%であった。得られた、化合物(i)のマススペクトルデータを以下に示す。
MS(MALDI−TOF mass)4163.33(計算値4161.50)
【0068】
4−3.化合物(1−18)の合成
化合物(i)(49mg,0.012mmol)を蒸留したトルエン(50ml)に溶解させ、フラーレンC60(34mg,0.047mmol)を加えて窒素をバブリングしながら室温で2時間攪拌し、試薬を完全に溶解させた。さらにN−メチルグリシン(5.0mg,0.056mmol)を加えて100℃で17時間加熱した。放冷後、トルエンを減圧留去し、直接カラムクロマトグラフィー (シリカゲル80g,トルエン;Rf=0)にかけ、未反応のフラーレン(Rf=1.0)を完全に流去させた後、原点の化合物をTHFで回収した。クロロホルムで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。熱アセトンで固液抽出し、THFに溶かして回収し溶媒を減圧留去した。酢酸エチルで1回再結晶した。さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させて、化合物(1−18)を28mg得た。なお、化合物(i)からの化合物(1−18)の収率は49mol%であった。
【0069】
得られた、化合物(1−18)のUVスペクトルデータ、マススペクトルデータを以下に示す。
UV(クロロホルム4.00×10-6mol/L,nm(logε))C60255.6(5.21),ソーレーバンド286.4(5.08),339.9(5.01),Qバンド615.9(4.65),652.6(4.64)
MS(MALDI−TOF mass)4911.66(計算値4910.18),4189.64(M+−C60
【0070】
5.実施例3
式(1−46)で表される化合物(以下、「化合物(1−46)」)を下記のスキームで合成した。
【0071】
【化13】

【0072】
5−1.式(j)で表される化合物(以下、「化合物(j)」)の合成
化合物(f)(100mg,0.0351mmol)に、安息香酸(4.3 mg,0.0351mmol)、DCC(72.4mg,0.351mmol)、DMAP(17.2mg,0.140mmol)、ジクロロメタン(10ml)を加え、室温で一晩攪拌した。ジクロロメタンで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル70g,クロロホルム;Rf=0.25)で精製した。アセトンで1回再結晶し、さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させることにより、化合物(j)を31mg得た。なお、化合物(f)からの化合物(j)の収率は30mol%であった。得られた、化合物(j)のマススペクトルデータを以下に示す。
MS(MALDI−TOF mass)2925.91(計算値5686.88),2923.48(M+−C60
【0073】
5−2.式(k)で表される化合物(以下、「化合物(k)」)の合成
化合物(j)(42mg,0.0142mmol)に、p−ホルミル安息香酸(8.5mg,0.0569mmol)、DCC(59mg,0.284mmol)、DMAP(14mg,0.114mmol)、ジクロロメタン(10ml)を加え、室温で一晩攪拌した。ジクロロメタンで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g,クロロホルム;Rf=0.68)で精製した。さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させることにより、化合物(k)を26mg得た。なお、化合物(j)からの化合物(k)の収率は59mol%であった。得られた、化合物(k)のマススペクトルデータを以下に示す。
MS(MALDI−TOF mass)3058.05(計算値3055.59)
【0074】
5−3.化合物(1−46)の合成
化合物(k)(26mg,0.0084mmol)を蒸留したトルエン(26ml)に溶解させ、フラーレンC60(24mg,0.034mmol)を加えて窒素をバブリングしながら室温で2時間攪拌し、試薬を完全に溶解させた。さらにN−メチルグリシン(3.6mg,0.041mmol)を加えて100℃で17時間加熱した。放冷後、トルエンを減圧留去し、残渣を直接カラムクロマトグラフィー(シリカゲル50g,トルエン;Rf=0)にかけ、未反応のフラーレン(Rf=1.0)を完全に流去させ、THFで回収した。クロロホルムで抽出、水で洗浄し、有機層を芒硝で乾燥し溶媒を減圧留去した。熱アセトンで固液抽出し、残渣をTHFに溶かして回収し溶媒を減圧留去した。酢酸エチルで1回再結晶した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル60g,クロロホルム:n−ヘキサン=1:1;Rf=0.30)で精製し、酢酸エチルで再度再結晶し、さらに少量のジクロロメタンに溶かし自然乾燥させることで化合物(1−46)を19mg得た。なお、化合物(k)からの化合物(1−46)の収率は59mol%であった。
【0075】
得られた、化合物(1−46)のUVスペクトルデータ、マススペクトルデータを以下に示す。
UV(クロロホルム4.01×10-6mol/L,nm(logε))C60256.2(5.29),ソーレーバンド277.3(5.21),340.3(5.08),Qバンド615.5(4.74),650.5(4.77)
MS(MALDI−TOF mass)3805.59(計算値3804.27),3084.55(M+−C60
【0076】
6.相転移挙動
化合物(1−4)は示差走査熱量計測定(DSC)で113.6℃に明確なTg点を示した。偏光顕微鏡観察では、化合物(1−4)は、室温において、深緑色の硬い薄膜状の固体であり、直交ニコル下で複屈折は全く見られなかった。そして、化合物(1−4)を昇温するとTg点で粘性のある等方性液体に転移した。さらに、化合物(1−4)を再び室温まで冷却しても、直交ニコル下でテクスチャーや複屈折は全く見られなかった。このことから、化合物(1−4)は、Tg点以下ではガラス状等方相であると判断した。
【0077】
化合物(1−18)はDSCで118.9℃(6.56kJ/mol)と143.7℃(5.20kJ/mol)に吸熱ピークが見られた。偏光顕微鏡観察では、化合物(1−18)は、室温において、深緑色であり、ディスコティック液晶性物質に特徴的に見られるように押し潰すと粘性のある柔らかい状態であった。しかし、直交ニコル下では、室温から等方相の領域において複屈折は全く見られなかった。
【0078】
化合物(1−46)はDSCで約63℃にTg点を示した。偏光顕微鏡観察では、化合物(1−46)は、室温において、深緑色の硬い薄膜状の固体であり、直交ニコル下で複屈折は全く見られなかった。この化合物(1−46)を昇温するとTg点で粘性と流動性のある相に転移した。さらに、化合物(1−46)を再び室温まで冷却しても直交ニコル下でテクスチャーや複屈折は全く見られなかった。なお、後述するように化合物(1−46)は柱状ネマチック相であるが、直交ニコル下でテクスチャーや複屈折は全く見られないのは、ホメオトロピック配向をしているためである。
【0079】
7.会合構造
図1は化合物(1−4)の加熱電子スペクトルである。図中、2aは室温における不定形等方相固体のスペクトル、2bは160℃における等方相液体のスペクトルを表す。
図2は化合物(1−18)の加熱電子スペクトルである。図中、3aは室温における秩序正方柱状相のスペクトル、3bは130℃における無秩序正方柱状相のスペクトル、3cは170℃における等方相液体のスペクトルを表す。
【0080】
図3は化合物(1−46)の加熱電子スペクトルである。図中、4aは室温における柱状ネマチック相のスペクトル、4bは80℃における柱状ネマチック相のスペクトル、4cは160℃における等方相液体のスペクトルを表す。
【0081】
等方性液体を含む全ての相において、化合物(1−4)は635nm、化合物(1−18)は619nm、化合物(1−46)は627nmに会合バンドが観察された。会合バンドは分子が柱状構造を形成していることに由来するものである。この結果から、これらの化合物は液晶相ばかりか等方性液体においてさえも分子が完全にバラバラに独立しているわけではなく、会合して短い一次元カラムの形を保持していることを示している。
【0082】
8.相構造
図4は化合物(1−4)の室温における広角XRDパターンである。化合物(1−4)の室温におけるXRDパターンは約4.5Å、約10Å、32.9Å及び67.6Åにブロードで強度の弱い4つのピークだけを示した。さらに、上記相転移挙動のとおり、DSCでTg点を示したという結果と合わせると、化合物(1−4)は室温ではガラス状等方相を示すことがわかった。また、化合物(1−4)の等方相液体(I.L.)での広角XRDパターン(図示せず)では、67.6Åの強度の弱いピークは強度がさらに減少したがわずかに認められた。
【0083】
図5は化合物(1−18)の50℃における広角XRDパターンである。図中、挿入図はピークを明確にするために縦軸を3倍に拡大したものである。化合物(1−18)の33.2Åと21.0Åのピークは、その強度比が1/√2:1/√5であり、二次元テトラゴナル格子のミラー指数の(1 1 0)と(1 2 0)に一致し、室温から一量体の秩序正方柱状相(Coltet.o)を発現したことを示している。また、化合物(1−18)の130℃におけるXRDパターン(図示せず)では、3.5Åのカラム内スタッキング距離に相当するピークが消失したため無秩序正方柱状相(Coltet.d)と同定した。
【0084】
さらに、偏光顕微鏡観察で透明点(クリアリングポイント)から室温まで冷却しても直交ニコル下でテクスチャーや複屈折は見られず、配向欠陥のない全く均一なモノドメインを形成したことから、秩序正方柱状相及び無秩序正方柱状相は室温から自発的に完璧なホメオトロピック配向を示すことが確認された。したがって、化合物(1−18)は3.5Åという短距離積層と、室温から自発的に完全なホメオトロピック配向を同時に示すことがわかる。
【0085】
図6は化合物(1−46)の室温における広角XRDパターンである。図中、挿入図はピークを明確にするために縦軸を3倍に拡大したものである。化合物(1−46)は、カラム同士のパッキングに由来する二次元格子のピークが見られなかったが、3.5Åのカラム内スタッキング距離に相当するピークを示すため、柱状ネマチック相(Nc)であることがわかる。
【0086】
図7は化合物(1−4)の小角XRDパターンである。図中、8aは室温における不定形等方相固体のスペクトル、8bは170℃における等方相液体のスペクトルを表す。図8は化合物(1−18)の小角XRDパターンである。図中、9aは室温における秩序正方柱状相のスペクトル、9bは130℃における無秩序正方柱状相のスペクトル、9cは160℃における等方相液体のスペクトルを表す。図9は化合物(1−46)の小角XRDパターンを示す図である。図中、10aは室温における柱状ネマチック相のスペクトル、10bは80℃における柱状ネマチック相のスペクトル、10cは160℃における等方相液体のスペクトルを表す。
【0087】
図7〜9で観察された化合物(1−4)、化合物(1−18)、化合物(1−46)の室温における67.6Å、58.0Å及び74.2Åのピークは、フラーレンを持たない前駆体では見られないものである。従って、これらのピークはフラーレン由来のピークであり、一次元カラムの周囲に規則正しく配列したフラーレンのらせん構造に起因するピッチのピークであると考えられる。また、これらのピークは化合物(1−4)、化合物(1−18)、化合物(1−46)の等方性液体(図4〜図6参照)においても、わずかに認められた。
【0088】
以上のことから、本発明の化合物は一次元カラムの周囲に規則正しく配列したフラーレンのらせん構造を形成する。つまり、フタロシアニン(ドナー)とフラーレン(アクセプター)が電荷移動に理想的な一次元配列を形成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の化合物は、ドナー化合物として作用し得るフタロシアニン化合物に、アクセプター化合物として作用し得るフラーレン構造が導入されている。そのため、本発明の化合物は、ドナーとアクセプターが電荷移動に理想的な一次元配列を形成することにより、有機薄膜太陽電池材料として優れた電子移動特性や光電変換特性を持つことが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されることを特徴とするフラーレン構造を有するフタロシアニン化合物。


[式(1)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はC1-20アルコキシ基を表す。
1及びX2は、それぞれ独立に、水素原子又は式(2)で表される基を表し、X1及びX2のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。
m及びnは、それぞれ独立に、6〜20の整数を表す。
Mは、2個の水素原子又は1個若しくは2個の長周期型周期表における第1族〜第15族の金属原子、金属酸化物、金属水酸化物或いは金属ハロゲン化物を表す。
式(2)中、*は結合位置を示す。]
【請求項2】
前記R1〜R18は、炭素数6以上のアルコキシ基である請求項1に記載のフラーレン構造を有するフタロシアニン化合物。
【請求項3】
前記R1〜R18のうち、6個〜12個がC1-20アルコキシ基である請求項1又は2に記載のフラーレン構造を有するフタロシアニン化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−132180(P2011−132180A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293501(P2009−293501)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「2009年日本液晶学会討論会講演予稿集」 発行日:2009年 9月 7日 発行所:日本液晶学会
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】