説明

フリーアクセスフロアパネル

【課題】軽量で施工が容易で、ピンヒールを履いた女性の歩行の様な点荷重においても、表面仕上げ材が損傷することの無いフリーアクセスフロアパネルを提供すること。
【解決手段】床面上に設けられて二重床構造を構成するフリーアクセスフロアパネル1において、フリーアクセスフロアパネル1が床パネル2とそれを下方から支承する支持脚3とからなる構造に、合成樹脂で射出成形され、前記支持脚3の樹脂硬化の為の水抜きの孔が使用時の裏面から穿孔され、前記床パネル2の表面に最大径が5mm以下の孔が穿孔されていることを特徴とするフリーアクセスフロアパネル1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床面に二重床を形成するためのフリーアクセスフロアパネル関するものであり、特にこのフリーアクセスフロアパネルの表面からの局部への集中的な点荷重に対して、あらゆる部分においても十分な強度を有するフリーアクセスフロアパネルを提供することにある。
【背景技術】
【0002】
オフィスのOA化に伴ないフリーアクセスフロアパネルが汎く普及している。このフリーアクセスフロアパネルは、建築物の床面の上方に敷設されて、二重床を形成するために使用され、二重床を形成したフリーアクセスフロアパネルの下方空間にはコンピュータ等のOA機器のケーブルや電源用の配線等が収容される。
【0003】
フリーアクセスフロアパネルには、アルミニウム又はアルミニウム合金製、鋼製、コンクリート系等の無機質製、合成樹脂製、あるいは木製等がある。これらは方形に形成され、フロアー上へ直接又は支持脚により所定の高さに支持した状態で敷設されている。その上部にはタイルカーペットが施設される。
【0004】
形状には配線溝型パネルと支持脚一体型パネルがあり、配線溝型パネルは、例えば特開昭62−284854号に記載されているとおり、これは成形樹脂シートとコンクリートとでなる配線溝形成用ブロックで構成されているところから、耐荷重性はあるが、重量が重いことから、施工に手間がかかり、施工性を悪化させる要因となる問題があった。
【0005】
これに対し、支持脚一体型パネルは、方形の床パネルの下部に脚を一体に設けて簀の子状に形成し、その脚の先端に緩衝弾性カバーをはめて下地床面に敷き並べる置き敷きタイプのフリーアクセスフロアパネルである。しかし特開昭63−55256号公報に記載されているような鋼板製やアルミダイキャスト製のものは、物体が落下した時や、歩行時に発生する音が耳ざわりな金属音で、特に、鋼板製のものは、表面板と裏面板の間を中空にして軽量化しているため、中空部で音が反響してしまう難点があった。そこで実開平6−49635号に記載されているような射出成形による樹脂製のフリーアクセスフロアパネルが軽量であり、一般的な耐荷重性もあり、耳ざわりな金属音も無く、施工の容易さから需要が拡大している。
【0006】
一方ここ数年、若い女性の間ではピンヒールと呼ばれるヒール部が異常に細いハイヒールが流行している。ピンヒールの接地部分の直径は8mm程度であり、歩行時に極端な点荷重がかかることになる。ピンヒールで射出成形による樹脂製のフリーアクセスフロアパネル上を歩行した場合、射出成形時に樹脂硬化の為に必要な水抜きの孔の真上を踏むことがある。これが繰り返されると、表面仕上げ材のタイルカーペットが極端な点荷重に耐え切れずに破断することがあり、転倒事故に繋がりかねない問題が生じている。
【特許文献1】特開昭62−284854号公報
【特許文献2】特開昭63−55256号公報
【特許文献3】実開平6−49635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は上述のような背景技術に鑑み、軽量で施工が容易で、ピンヒールの様な点荷重にも、表面仕上げ材が損傷することの無いフリーアクセスフロアパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]床面上に設けられて二重床構造を構成するフリーアクセスフロアパネルにおいて、フリーアクセスフロアパネルが床パネルとそれを下方から支承する支持脚とからなる構造に、合成樹脂を用いて射出成形され、該床パネルの表面に最大径が5mm以下の孔が穿孔されていることを特徴とするフリーアクセスフロアパネル。
【0010】
[2]床面上に設けられて二重床構造を構成するフリーアクセスフロアパネルにおいて、フリーアクセスフロアパネルが床パネルとそれを下方から支承する支持脚とからなる構造であり、該床パネルの周囲及び中心部に5ケ所以上の該支持脚が設けられ、射出成形時における必要な樹脂硬化の為の水抜きの孔が使用時の裏面から穿孔され貫通していないことを特徴とする前項1に記載のフリーアクセスフロアパネル。
【発明の効果】
【0011】
[1]の発明によれば、本発明のフリーアクセスフロアパネルは、合成樹脂で成型されているので軽量で施工が容易となる。また、床パネルの表面に穿孔されている孔の最大径が5mm以下なので、ピンヒールでの歩行時に極端な点荷重がかかっても、フリーアクセスフロアパネルの上に施工される表面仕上げ材が損傷することの無いフリーアクセスフロアパネルとなる。
【0012】
[2]の発明によれば、支持脚が該床パネルの周囲及び中心部に5ケ所以上設けられているので、歩行時または重量のある机、棚等を上に乗せても、撓むことのないフリーアクセスフロアパネルとなる。また支持脚の構造が射出成形時における樹脂硬化の為の必要な水抜きの孔が使用時の下方から穿孔され貫通していないために、最大径が5mmを超える孔が存在しない床パネルの表面となり、局部的な点荷重によってフリーアクセスフロアパネルの上に施工される表面仕上げ材が損傷するという問題が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下この発明に係わるフリーアクセスフロアパネルの一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態のフリーアクセスフロアパネルは、床パネルとそれを下方から支承する支持脚とからなる構造に合成樹脂で成型されている。図1は、本実施形態のフリーアクセスフロアパネルを示す表面から見た概略図である。図2は、本実施形態のフリーアクセスフロアパネルを示す裏面から見た概略図である。
【0014】
本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)は、天板となる上部の床パネル(2)と、該床パネル(2)の下部に直角に設けられた支持脚(3)からなり、熱可塑性樹脂を用いて、射出成型にて一体で成型されている。したがって、重量が500〜700g/個と軽く施工時の取り扱いが非常に容易となる。
【0015】
前記熱可塑性樹脂は、PP(ポリプロピレン系)樹脂が強度的に望ましいが、PET(ポリエチレンテレフタレート系)樹脂、ABS樹脂、PE(ポリエチレン系)樹脂、PC(ポリカーボネット系)樹脂、硬質塩ビ樹脂、スチレン樹脂等の適度に可撓性のある材料が用いられる。さらにこれらの樹脂にゴム質、繊維質などを含ませた吸音性、衝撃吸収性のある素材も利用できる。ただし、これらの樹脂の一部は単体では比重が軽いため、比重を上げる目的で、炭酸カルシウム等の増量材を添加してもよく、増量剤を加えた状態で比重1.1以上であればよい。例えば、PP(ポリプロピレン系)樹脂の比重は0.9程度であるが、PP(ポリプロピレン系)樹脂50重量部に炭酸カルシウム50重量部を添加することにより、樹脂混合物の比重を1.6に上げることができる。また、例えば、ABS樹脂は単体で比重1.2程度であるため、そのままでも使用できるだけでなく、床暖房用床材に用いても、高温状態での寸法安定が優れている。
【0016】
本発明における床パネル(2)は一辺が250〜500mm、厚み5〜10mmの矩形または正方形であり、その床パネル(2)の下面側に側枠(6)と格子状リブ(7)によって等寸の格子空間が形成されている。その側枠(6)と格子状リブ(7)が裏面に成型された構成により、重量のある什器を設置した場合や、歩行時の床パネル(2)の撓みを防ぐことができる。
【0017】
さらに床パネル(2)の周辺部に方形など適宜形状の最大径が5mm以下の透孔(5)が開口されている。該透孔(5)により敷設後、フリーアクセスフロアパネル(1)の下に配線されたケーブル等を簡単に目視で確認することができる。該透孔(5)の最大径が5mmを超えると、歩行時における小さな面積の極端な点荷重により、フリーアクセスフロアパネル(1)の上に施工される表面仕上げ材が損傷するという問題が生じる可能性がある。
【0018】
本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)の材質が可撓性ないし弾性を有する熱可塑性樹脂を使用しているのでフリーアクセスフロアパネル(1)の跡型が表面仕上げ材の表面に現れることがなく、表面仕上げ材の施工後は平坦で美しい床を仕上げることができる。
【0019】
本発明における支持脚(3)は床パネル(2)のの周囲及び中心部に5ケ所以上設けられている。フリーアクセスフロアパネル(1)の耐荷重性能を維持するためには、最細部分でも直径15mm以上の円形または方形の支持脚(3)が必要である。
【0020】
熱可塑性樹脂を使用して射出成形する場合、本発明の直径15mm以上の円形または方形の支持脚(3)のような他の部分と比べて肉厚部分を有する形状は、冷却硬化に時間を要し、強度的にもバラツキが生じる。それを防ぐために肉厚部分に樹脂硬化の為の水抜きの孔を穿孔する。従来は成形型の作成時の便宜性から樹脂部分の多い面、本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)で言えば表面から穿孔している。その結果、床パネル(2)の表面に最大径が5mmを超える孔が穿孔された表面となり、それより小さな面積の極端な点荷重に耐えることができなくなる。
【0021】
本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)においては、支持脚(3)の水抜きの孔を下面から穿孔している。その結果、冷却硬化に時間を要せず、強度的にもバラツキが生じない成型が可能であり。床パネル(2)の表面は最大径が5mmを超える孔が穿孔されていない平坦な面となっており、床パネル(2)上であれば、どの部分でも、極端な点荷重がかかっても、フリーアクセスフロアパネル(1)の上に施工されるタイルカーペット等の表面仕上げ材が損傷することの無いフリーアクセスフロアパネル(1)となる。
【0022】
因みに、ピンヒールと呼ばれる、ヒール部が異常に細いハイヒールの接地部分は直径が8mm程度のものであり、体重80kgの女性がピンヒールを履いて歩行した場合、片足に体重すべてかかったとして、約490N/50mmの力が床に加わることになる。しかし本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)は、JIS A1450−2003に準じた耐荷重試験において、2000N時の荷重変形が4.0mm以下を満足しており、この様な点荷重でどの部分を踏まれてもフリーアクセスフロアパネル(1)の上に施工されるタイルカーペット等の表面仕上げ材の損傷は発生することは無い。
【0023】
(耐荷重試験)JIS A1450−2003に準じて、各フリーアクセスフロアパネルにタイルカーペットを乗せて、温度20±5℃、湿度65±10%RHで24時間放置後、荷重計を用いて、各フリーアクセスフロアパネルの中央位置及び辺中心位置を載点とし、役々に載荷しながら変形が4.0mmを越える荷重を測定した。測定は、3サンプル行い、その平均値を求めた。
【0024】
さらに本発明における支持脚(3)の先端には、軟質PVC、アタクチツクポリプロビレン、ゴムなどからなる緩衝弾性カバー(4)が取り付けられている。該緩衝弾性カバー(4)を取り付けることにより、上方からの器物落下等による衝撃にたいする緩衝材となり、また床下地と支持脚(3)の密着性を高めて本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)が床下地上をずれて移動することを防止する効果がある。
【0025】
したがって、本発明のフリーアクセスフロアパネル(1)は材質として可撓性ないし弾性を有する熱可塑性樹脂を使用し、構成として、下面側に側枠(6)と格子状リブ(7)によって等寸の格子空間が形成された床パネル(2)、最細部分でも直径15mm以上の円形または方形の支持脚(3)が床パネル(2)の周囲及び中心部に5ケ所以上設けられ、さらに前記支持脚(3)の先端には、緩衝弾性カバー(4)が取り付けられているため、物体が落下した時の床衝撃音や歩行音の吸収が可能となる耐荷重性能をゆうするフリーアクセスフロアパネル(1)となる。
【0026】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>PP(ポリプロピレン系)樹脂を材料とし、射出成型にて一辺が250mmの正方形の床パネル及びその下面側に側枠と格子状リブによって等寸の格子空間が形成し、床パネルの四隅、辺中央、および中心部の9ケ所に支持脚を設けたフリーアクセスフロアパネルを作成した。尚成型時の冷却硬化のための支持脚における水抜きの孔を裏面側から穿孔した。
【0028】
<比較例1>成型時の冷却硬化のための支持脚における水抜きの孔を表面側から穿孔したこと以外実施例1と全く同様にして、フリーアクセスフロアパネルを作成した。
【0029】
上記のようにして得られた各フリーアクセスフロアパネルを不陸の無いコンクリート床の上に、タテ8枚、横8枚、計64枚を敷き詰めて、その上の全面に表面仕上げ材としてタイルカーペットを置き敷きにて施工を行い歩行試験用フロアーを作成した。その歩行試験用フロアーの上を実際のピンヒールを履いた、体重60KGの女性が全面を30分間歩行し、歩行の快適性、表面仕上げ材に与える影響を確認する歩行テストを行なった。
【0030】
前記歩行テストの結果、実施例1のフリーアクセスフロアパネルは、あらゆる部分を歩行しても、ピンヒールの踵が孔に入り込む様な現象は起きず、快適に歩行のできるフリーアクセスフロアパネルを得た。
【0031】
これに対し、比較例1のフリーアクセスフロアパネルは、支持脚における水抜きの孔の上を歩行した時に、ピンヒールの踵が前期水抜きの孔に入り込む現象が生じ、不安定な歩行となり、表面仕上げ材のタイルカーペットが前記水抜きの孔に押し込まれる状態となり、損傷していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係わるフリーアクセスフロアパネルの表面から見た概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるフリーアクセスフロアパネルの裏面から見た概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1………フリーアクセスフロアパネル2………床パネル3………支持脚4………緩衝弾性カバー5………透孔6………側枠7………格子状リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に設けられて二重床構造を構成するフリーアクセスフロアパネルにおいて、フリーアクセスフロアパネルが床パネルとそれを下方から支承する支持脚とからなる構造に、合成樹脂を用いて射出成形され、該床パネルの表面に最大径が5mm以下の孔が穿孔されていることを特徴とするフリーアクセスフロアパネル。
【請求項2】
床面上に設けられて二重床構造を構成するフリーアクセスフロアパネルにおいて、フリーアクセスフロアパネルが床パネルとそれを下方から支承する支持脚とからなる構造であり、該床パネルの周囲及び中心部に5ケ所以上の該支持脚が設けられ、射出成形時における必要な樹脂硬化の為の水抜きの孔が使用時の裏面から穿孔され貫通していないことを特徴とする請求項1に記載のフリーアクセスフロアパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−280767(P2008−280767A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126303(P2007−126303)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【出願人】(591150225)紀陽産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】