フルイディック流量計
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、噴出ノズルから流路内に噴出されるガス等の流体の振動現象によって生じる交番圧力波を検出して流量を検出するフルイディック流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のフルイディック流量計は、例えば一般家庭等に設置されるものが知られている。このようなフルイディック流量計は、流路の入口側に噴出ノズルが設けられ、この噴出ノズルから流路内に流体を噴出すると、コアンダ効果によって噴出流体は、例えば右側の側壁に沿って流れる。この右側の側壁に流れた流体の一部は帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の側壁に沿って流れるようになり、今度は左側の側壁に流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の側壁に沿って流れるようになる。
【0003】このとき、噴出ノズルから流路内に噴出される流体の振動現象によって交番圧力波が生じる。この交番圧力波を圧力波センサによって検出し、この周波数から流量を算出して流体の流量を検出している。
【0004】ところで、交番圧力波を生じさせるフルイディック素子の形状は、従来、図9及び図10に示すようになっていた。
【0005】すなわち、図9はフルイディック流量計の全体を示し、11はケースである。このケース11は、矩形箱状のケース本体12と、このケース本体12の開口部を閉塞する蓋体(図示しない)とから構成されている。
【0006】ケース本体12の下部にはガス流入口体14とガス流出口体15が並設され、上部には表示窓16が設けられている。ケース11の内部における下部には後述するフルイディック素子17及び遮断弁18が設置され、上部には電池19、圧力スイッチ20、感震器21及び表示窓16に対向する積算表示基板22が設置されている。
【0007】前記フルイディック素子17について説明すると、23はダイキャスト等によって形成された流路本体であり、この流路本体23の開口部をパッキングを介して蓋体によって閉塞することにより、流路26が構成されている。
【0008】この流路26は隔壁27によって区画され、上流側流路28は前記ガス流入口体14に連通し、下流側流路29は前記ガス流出口体15に連通している。上流側流路28の途中には弁座30が設けられ、この弁座30には前記遮断弁18の弁体31が対向している。すなわち、前記圧力スイッチ20、感震器21が異常を感知したとき、遮断弁18によって流路26を遮断することができるように構成されている。
【0009】前記流路本体23の隔壁27には図10に示すように、噴出ノズル32が設けられている。この噴出ノズル32は流路本体23の奥行き方向全体に亘って開口するスリット状で、その長手方向の開口両側縁には上流側流路28に突出する突出部32a,32bを有し、ノズル通路長を延長させている。
【0010】この噴出ノズル32に対向する下流側流路29には流体の流動方向切換安定化を図るための左右対称に形成されたハート状の第1のターゲット33が設けられている。この第1のターゲット33は、その上流側が比較的大きな曲率半径を有する曲線で形成されるともに、下流側が下方に向けて凸となる鋭利な形状で構成されている。この第1のターゲット33を挟んで両側には側壁34a,34bが対称的に設けられている。
【0011】さらに、前記第1のターゲット33より下流側に位置する中央部には第2のターゲット35が設けられ、さらに下流側には下流側流路29の幅方向に延長するリターン壁36が設けられている。そして、前記側壁34a,34bの外側に帰還流路37a,37bが形成され、リターン壁36の両端外側に排出流路38a,38bが設けられている。
【0012】従って、前記噴出ノズル32から下流側流路29に向かって流体が噴出されると、この噴出流体は、ターゲット33の外形に沿って流れ、左右に振分けられてコアンダ効果により、例えば右側の側壁34aの内側に沿って流れる。
【0013】この右側の側壁34aに流れた流体の大部分は排出流路38aに向かうが、一部は帰還流体となり、帰還流路37aに向かう。この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が左側の側壁34bの内側に沿って流れるようになり、今度は左側の側壁34bに流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の側壁34aの内側に沿って流れるようになる。
【0014】このように、噴出ノズル32から下流側流路29内に噴出される流体の振動現象によって交番圧力波が生じるように構成され、この交番圧力波を噴出ノズル32の出口近傍に設けられた圧力波センサ39a,39bによって検出し、これを図11に示すような電気信号に変換してこの検出結果に基づいて流量測定を行っていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようなフルイディック流量計においては、フルイディック素子17を構成している部品が多く、これらの平面形状も複雑なため、このフルイディック素子17を成形する金型や製品の寸法管理が容易でないという問題があった。
【0016】また、フルイディック素子17を構成している部品が多いため、流量計自体の小型化の要請に応えることができないという問題もあった。
【0017】さらに、第2のターゲット35の下流側に下流側流路29の幅方向に延長するリターン壁36を設けることから、噴出ノズル32からの噴出流体はリターン壁36に当たり、この壁を沿って下流側から上流側に戻るため圧力損失が大きくなるという問題もあった。
【0018】そこで本発明は、フルイディック素子を成形する金型や製品の寸法管理を容易に行うことができ、また流量計自体の小型化を図ることができ、しかも圧力損失を低減することができるフルイディック流量計を提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、流路を構成する流路本体と、この流路本体に設けられたフルイディック素子と、流路内に流体を噴出する噴出ノズルとを備え、噴出ノズルから流路内に噴出される流体の振動現象によって生じる交番圧力波を検出して流量を検出するフルイディック流量計において、噴出ノズルの出口近傍に設けられ、流体の交番圧力波を検出する交番圧力検出手段と、噴出ノズルより下流側流路に設けられ、流体の流動方向の切換を安定化させるターゲットと、このターゲットを挟んで両側に対称的に設けられ、下流側流路の幅方向に延長したリターン側壁と、このリターン側壁の下流側に設けられた流体出口とを設け、リターン側壁は、噴出ノズルの出口近傍に向けて延出した上流側端部と、ターゲットの下流側で対向し、この対向部で流体出口への連通路を形成する下流側端部と、噴出ノズルからの噴出流体の一部を下流側端部から上流側端部まで交番圧力検出手段に向けて案内するとともに、噴出ノズルからの噴出流体の一部を流体出口への連通路に案内する流体案内部とを設けたものである。
【0020】請求項2記載の本発明は、ターゲットは、その上流側に曲率半径が比較的小さい円弧状の上流側凹部を有する請求項1記載のフルイディック流量計である。
【0021】
【作用】このような構成の本発明においては、流量測定を行う際、噴出ノズルから流路内に流体を噴出すると、この噴出ノズルからの流体は、ターゲットの外形に沿って流れ、コアンダ効果によって噴出流体は、例えば右側のリターン側壁に沿って流れる。この右側のリターン側壁に流れた流体の一部は帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側のリターン側壁に沿って流れるようになり、今度は左側のリターン側壁に流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側のリターン側壁に沿って流れる。これが繰返されて交番圧力波が生じるようになる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。なお、本実施例においてフルイディック素子以外の主要部は、図9に示す部分と同様であるため、フルイディック流量計全体の説明は省略する。また、フルイディック素子のうち、図10に示す部分と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0023】図1は、フルイディック流量計のフルイディック素子を示す図で、23はダイキャスト等によって形成された流路本体であり、この流路本体23の開口部をパッキングを介して蓋体(図示しない)によって閉塞することにより、流路26が構成されている。
【0024】この流路26は隔壁27によって区画されており、流路本体23の隔壁27には、噴出ノズル32が設けられている。この噴出ノズル32は流路本体23の奥行き方向全体に亘って開口するスリット状で、その長手方向の開口両側縁には上流側流路28に突出する突出部32a,32bを有し、ノズル通路長を延長させている。
【0025】この噴出ノズル32に対向する下流側流路29には流体の流動方向切換安定化を図るための左右対称に形成されたU字状のターゲット40が設けられている。具体的には、ターゲット40は、その上流側は比較的小さな曲率半径を有する凹曲線で形成されるとともに、下流側はその全体に亘って滑らかな凸曲線形状で形成されている。
【0026】上記ターゲット40は、例えば上流側曲線部41はその両側の突出部42a,42bの先端よりも下部に中心が位置する円弧から構成するとともに、下流側曲線部43は上流側曲線部41よりも大きい相似形の円弧から構成し、両側の突出部42a,42bを上方に延出して構成してもよく、また、上部曲線部は両側の突出部の先端よりも上部に中心が位置する円弧から構成するとともに、下部曲線部は、上部曲線部よりも大きい相似形の円弧から構成してもよい。
【0027】このターゲット40を挟んで両側にはリターン側壁45a,45bが対称的にターゲット40を覆うように設けられている。これらリターン側壁45a,45bは、下流側流路29の幅方向に延長して設けられ、その上流側端部46a,46bはそれぞれ噴出ノズル32の出口近傍に向けて延出しており、下流側端部47a,47bはターゲット40の下流側で対向し、この対向部で前記ガス流出口体15への連通路48を形成している。
【0028】また、リターン側壁45a,45bのターゲット40側には、噴出ノズル32からの噴出流体の一部を下流側端部47a,47bから上流側端部46a,46bまで噴出ノズル32の出口近傍、すなわち圧力波センサ39a,39bに向けて返すとともに、噴出ノズル32からの噴出流体の一部を連通路48に案内する流体案内面49a,49bが形成されている。
【0029】このような構成の本実施例においては、流量測定を行う際、図1に示すように前記噴出ノズル32から下流側流路29に向かって流体が噴出されると、この噴出流体は、ターゲット40の外形に沿って流れ、左右に振分けられる。そしてコアンダ効果により、例えば図2(a)に示すように右側のリターン側壁45aの流体案内面49aに沿って流れる。
【0030】そして、右側の流体案内面49aに流れた流体の一部は下流側に向けて流れ、連通路48を通って第1の排出流路38aに向かうが、一部は上流側に向かう。そして、この上流側に向かった流体の大部分は第2の排出流路50a,50bに向かうが、その一部は帰還流体となり、帰還流路37aに向かう。この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が左側の流体案内面49bに沿って流れるようになり、今度は図2R>2(b)に示すように左側の流体案内面49bに流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の流体案内面49aに沿って流れるようになる。
【0031】このように、噴出ノズル32から下流側流路29内に噴出される流体の振動現象によって交番圧力波が生じるようになり、この交番圧力波を圧力波センサ39a,39bによって検出し、この検出結果に基づいて流量を測定する。
【0032】このように、フルイディック素子17を簡素化したため、すなわちターゲット40及びリターン側壁45a,45bから構成するため、従来よりも部品点数を減少させることができ、平面形状も単純化できる。これにより、フルイディック素子17を成形する金型や製品の寸法管理を容易に行うことができ、従ってコスト低減を図ることもできる。また、流量計自体の小型化を図ることもできる。具体的には例えば、従来よりも幅方向に30%程度小さくすることができる。
【0033】さらに、フルイディック素子17が形成された流路本体23の平面形状は、ターゲット40とリターン側壁45a,45bとで流体の流れを構成しているため、自由度のある設計が可能となる。
【0034】また、リターン側壁45a,45bの上流側端部46a,46bを噴出ノズル32に向けて延出して形成するため、流体エネルギの伝達が滑らかに行われ、帰還流体によるフィードバック効果を高めることができる。これにより、流体の振動現象によって生じた交番圧力波の振幅をより大きくすることができ、周波数も大きくなる。
【0035】このため、流量が少ないため交番圧力波の振幅、周波数がともに小さくて、従来では計測できなかった部分においても、計測可能な程度の振幅や周波数の交番圧力波が生じるようになり、流量測定可能範囲を広げることができる。
【0036】また、ターゲット33の上流側は、比較的曲率半径が小さい円弧で構成しているため、帰還流体によるフィードバック効果をより一層高めることができる。これにより、流体の振動現象によって生じた交番圧力波の振幅をより大きくすることができる。さらに、ターゲット33の下流側は、円弧状をなすため、左右に振分けられた流体は、従来のようなハート形状のターゲット33を使用した場合に比して、より滑らかに流れるようになる。
【0037】これにより、リターン壁36からの帰還流体の流体エネルギの伝達をさらに滑らかに行うことができ、流体の振動現象によって生じた交番圧力波の振幅をさらに大きくすることができる。このため、最小流量の測定範囲をさらに広くすることができる。
【0038】図3は、本実施例にかかるフルイディック流量計で流量測定を行った場合の測定流量と実際に流れた流量との器差をグラフに表したものである。この測定結果から明らかなように、最小流量測定範囲を図12に示す従来の計測結果である1/40Qmax から1/70Qmax まで大幅に広げることができる。また、例えば1/20Qmax の流量を計測する際の交番圧力波の周波数は、従来のフルイディック流量計で流量計測を行った場合の周波数4.73Hzに対して、本実施例にかかるフルイディック流量計で流量計測を行った場合の周波数は5.048Hzと大きくなる。
【0039】また、本実施例にかかるフルイディック流量計で流量計測を行った場合の交番圧力波のピーク間電圧は、図4に示すように160.57mVとなり、図11R>1に示す従来のフルイディック流量計で流量計測を行った場合の交番圧力波のピーク間電圧75.46mVより大きくなることがわかる。
【0040】また、従来は噴出ノズル32からの噴出流体の圧力損失が大きくなるとの理由から噴出ノズル32とターゲット33との距離を短くすることができなかったが、本実施例においてはリターン側壁45a,45bの下流側端部47a,47bをターゲット40の下流側で対向させてこの対向部でガス流出口体15への連通路48を形成することから、噴出流体の圧力損失を減少させることができる。
【0041】これにより、噴出流体の圧力損失が増加することなく、噴出ノズル32とターゲット40との距離を短くすることもできる。従って、圧力損失を許容範囲に抑制しつつ、流量測定可能範囲をさらに拡大することができる。
【0042】なお、本実施例においては、リターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49bを円弧状に形成し、外側面をL字状に形成するものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば図5R>5(a)に示すようにリターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49bのみならず、外側面をも全体を円弧状に形成したものであってもよく、同図(b)に示すようにリターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49b及び外側面を隅角部が小さい円弧状の矩形に形成してもよい。
【0043】さらに、同図(c)に示すように、同図(a)に示すリターン側壁45a,45bの下流側端部47a,47bになるに連れて厚みが大きくなるように形成してもよく、同図(d)に示すようにリターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49b及び外側面を台形状に形成したものでもよい。このようにリターン側壁45a,45bを形成しても上記同様の効果を奏することができる。
【0044】また、本実施例においては、ターゲット40の上流側端部42a,42bを平面状にしたものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上流側端部を図5(a)に示すように両側に傾斜面を有し、その先端がとがった形状のものでもよく、また同図(b)に示すように上流側端部の両縁部を面取りしたものであってもよい。さらに同図(c)に示すように内側上縁部だけを面取りしたものでもよく、また同図(d)に示すように外側上縁部だけを面取りしたものでもよい。このようにすることによって、噴出ノズル32からの噴出流体の流れをより滑らかにすることができ、上流側端部に発生する渦を抑制することができる。これにより、交番圧力波の雑音発生や、圧力損失を低減することができる。 また、本実施例においては、ターゲット40の厚みが一定のものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、厚みが異なるものでもよい。すなわち例えばターゲット40の上流側曲線部41の中心O1 に対して下流側曲線部43の中心O2 を下流側にずらして形成した図6(a)に示すような形状のものであってもよい。またターゲット40の上流側曲線部41の中心O3 に対して下流側曲線部43の中心O4 を下流側にずらして形成した同図(b)に示すような形状のものであってもよい。さらに、同図(c)に示すように逆三角形の上辺部を削り、3つの円弧O5 ,O6 ,O7 で上流側曲線部41を形成してもよい。
【0045】さらに、同図(d)に示すようなターゲット40を逆三角形状に形成したものでもよく、同図(e)に示すように上流側曲線部41の大きな径の凸円弧及び下流側の小さな径の凸円弧をずらして重ね合わせ、その共通接線で結んだ外側形状に形成したものでもよく、また同図(f)に示すように流路の幅方向に延長した矩形状に形成したものでもよい。また、同図(g)に示すように、ターゲット40をハート形状にしたものでもよい。
【0046】また、本実施例においては、第1のターゲット40の突出部42a,42bを平面状にしたものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、突出部42a,42bを図7(a)に示すように両側に傾斜面を有し、その先端がとがった形状にしたものでもよく、また同図(b)に示すように突出部42a,42bのそれぞれの両縁部を面取りしたものであってもよい。
【0047】さらに同図(c)に示すように突出部42a,42bの内側上縁部だけを面取りしたものでもよく、また同図(d)に示すように突出部42a,42bの外側上縁部だけを面取りしたものでもよい。このように構成することによって、噴出ノズル32からの噴出流体の流れをより滑らかにすることができ、突出部42a,42bに発生する渦を抑制することができる。これにより、交番圧力波の雑音発生や、圧力損失を低減することができる。
【0048】また、図8(a)に示すように突出部42a,42bの全体を円弧状に加工したものであってもよく、また同図(b)に示すように突出部42a,42bの両縁部を小さい半径の円弧状に加工したものであってもよい。さらに同図(c)に示すように突出部42a,42bの内側上縁部だけを小さい半径の円弧状に加工したものであってもよく、また同図(d)に示すように突出部42a,42bの外側上縁部だけを小さい半径の円弧状に加工したものであってよい。このようにすることによって、噴出ノズル32からの噴出流体の流れをさらに滑らかにすることができ、突出部42a,42bに発生する渦をさらに抑制できる。これにより、交番圧力波の雑音発生や、圧力損失をさらに低減することができる。
【0049】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、フルイディック素子を成形する金型や製品の寸法管理を容易に行うことができ、また流量計自体の小型化を図ることができ、しかも圧力損失を低減することができるフルイディック流量計を提供できるものである。
【0050】また、圧力損失を許容範囲に抑制しつつ、流体振動の発振力を強くすることができ、従って流量測定可能範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるフルイディック流量計の要部の縦断正面図。
【図2】同実施例における作用を説明する図。
【図3】同実施例にかかるフルイディック流量計で測定した場合の流量に対する器差を示す図。
【図4】同実施例にかかるフルイディック流量計で測定した場合の交番圧力波を測定した結果を示す図。
【図5】図1に示すリターン側壁の変形例を説明する図。
【図6】図1に示す第1のターゲットの変形例を説明する図。
【図7】図1に示す第1のターゲットの変形例を説明する図。
【図8】図1に示す第1のターゲットの変形例を説明する図。
【図9】従来のフルイディック流量計の縦断正面図。
【図10】従来のフルイディック流量計の一部を示す縦断正面図。
【図11】従来のフルイディック流量計で計測した場合の交番圧力波を測定した結果を示す図。
【図12】従来のフルイディック流量計で測定した場合の流量に対する器差を示す図。
【符号の説明】
15…ガス流出口体
17…フルイディック素子
23…流路本体
28…上流側流路
29…下流側流路
32…噴出ノズル
40…ターゲット
45a,45b…リターン側壁
46a,46b…上流側端部
47a,47b…下流側端部
48…連通路
49a,49b…流体案内部
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、噴出ノズルから流路内に噴出されるガス等の流体の振動現象によって生じる交番圧力波を検出して流量を検出するフルイディック流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のフルイディック流量計は、例えば一般家庭等に設置されるものが知られている。このようなフルイディック流量計は、流路の入口側に噴出ノズルが設けられ、この噴出ノズルから流路内に流体を噴出すると、コアンダ効果によって噴出流体は、例えば右側の側壁に沿って流れる。この右側の側壁に流れた流体の一部は帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の側壁に沿って流れるようになり、今度は左側の側壁に流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の側壁に沿って流れるようになる。
【0003】このとき、噴出ノズルから流路内に噴出される流体の振動現象によって交番圧力波が生じる。この交番圧力波を圧力波センサによって検出し、この周波数から流量を算出して流体の流量を検出している。
【0004】ところで、交番圧力波を生じさせるフルイディック素子の形状は、従来、図9及び図10に示すようになっていた。
【0005】すなわち、図9はフルイディック流量計の全体を示し、11はケースである。このケース11は、矩形箱状のケース本体12と、このケース本体12の開口部を閉塞する蓋体(図示しない)とから構成されている。
【0006】ケース本体12の下部にはガス流入口体14とガス流出口体15が並設され、上部には表示窓16が設けられている。ケース11の内部における下部には後述するフルイディック素子17及び遮断弁18が設置され、上部には電池19、圧力スイッチ20、感震器21及び表示窓16に対向する積算表示基板22が設置されている。
【0007】前記フルイディック素子17について説明すると、23はダイキャスト等によって形成された流路本体であり、この流路本体23の開口部をパッキングを介して蓋体によって閉塞することにより、流路26が構成されている。
【0008】この流路26は隔壁27によって区画され、上流側流路28は前記ガス流入口体14に連通し、下流側流路29は前記ガス流出口体15に連通している。上流側流路28の途中には弁座30が設けられ、この弁座30には前記遮断弁18の弁体31が対向している。すなわち、前記圧力スイッチ20、感震器21が異常を感知したとき、遮断弁18によって流路26を遮断することができるように構成されている。
【0009】前記流路本体23の隔壁27には図10に示すように、噴出ノズル32が設けられている。この噴出ノズル32は流路本体23の奥行き方向全体に亘って開口するスリット状で、その長手方向の開口両側縁には上流側流路28に突出する突出部32a,32bを有し、ノズル通路長を延長させている。
【0010】この噴出ノズル32に対向する下流側流路29には流体の流動方向切換安定化を図るための左右対称に形成されたハート状の第1のターゲット33が設けられている。この第1のターゲット33は、その上流側が比較的大きな曲率半径を有する曲線で形成されるともに、下流側が下方に向けて凸となる鋭利な形状で構成されている。この第1のターゲット33を挟んで両側には側壁34a,34bが対称的に設けられている。
【0011】さらに、前記第1のターゲット33より下流側に位置する中央部には第2のターゲット35が設けられ、さらに下流側には下流側流路29の幅方向に延長するリターン壁36が設けられている。そして、前記側壁34a,34bの外側に帰還流路37a,37bが形成され、リターン壁36の両端外側に排出流路38a,38bが設けられている。
【0012】従って、前記噴出ノズル32から下流側流路29に向かって流体が噴出されると、この噴出流体は、ターゲット33の外形に沿って流れ、左右に振分けられてコアンダ効果により、例えば右側の側壁34aの内側に沿って流れる。
【0013】この右側の側壁34aに流れた流体の大部分は排出流路38aに向かうが、一部は帰還流体となり、帰還流路37aに向かう。この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が左側の側壁34bの内側に沿って流れるようになり、今度は左側の側壁34bに流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の側壁34aの内側に沿って流れるようになる。
【0014】このように、噴出ノズル32から下流側流路29内に噴出される流体の振動現象によって交番圧力波が生じるように構成され、この交番圧力波を噴出ノズル32の出口近傍に設けられた圧力波センサ39a,39bによって検出し、これを図11に示すような電気信号に変換してこの検出結果に基づいて流量測定を行っていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようなフルイディック流量計においては、フルイディック素子17を構成している部品が多く、これらの平面形状も複雑なため、このフルイディック素子17を成形する金型や製品の寸法管理が容易でないという問題があった。
【0016】また、フルイディック素子17を構成している部品が多いため、流量計自体の小型化の要請に応えることができないという問題もあった。
【0017】さらに、第2のターゲット35の下流側に下流側流路29の幅方向に延長するリターン壁36を設けることから、噴出ノズル32からの噴出流体はリターン壁36に当たり、この壁を沿って下流側から上流側に戻るため圧力損失が大きくなるという問題もあった。
【0018】そこで本発明は、フルイディック素子を成形する金型や製品の寸法管理を容易に行うことができ、また流量計自体の小型化を図ることができ、しかも圧力損失を低減することができるフルイディック流量計を提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、流路を構成する流路本体と、この流路本体に設けられたフルイディック素子と、流路内に流体を噴出する噴出ノズルとを備え、噴出ノズルから流路内に噴出される流体の振動現象によって生じる交番圧力波を検出して流量を検出するフルイディック流量計において、噴出ノズルの出口近傍に設けられ、流体の交番圧力波を検出する交番圧力検出手段と、噴出ノズルより下流側流路に設けられ、流体の流動方向の切換を安定化させるターゲットと、このターゲットを挟んで両側に対称的に設けられ、下流側流路の幅方向に延長したリターン側壁と、このリターン側壁の下流側に設けられた流体出口とを設け、リターン側壁は、噴出ノズルの出口近傍に向けて延出した上流側端部と、ターゲットの下流側で対向し、この対向部で流体出口への連通路を形成する下流側端部と、噴出ノズルからの噴出流体の一部を下流側端部から上流側端部まで交番圧力検出手段に向けて案内するとともに、噴出ノズルからの噴出流体の一部を流体出口への連通路に案内する流体案内部とを設けたものである。
【0020】請求項2記載の本発明は、ターゲットは、その上流側に曲率半径が比較的小さい円弧状の上流側凹部を有する請求項1記載のフルイディック流量計である。
【0021】
【作用】このような構成の本発明においては、流量測定を行う際、噴出ノズルから流路内に流体を噴出すると、この噴出ノズルからの流体は、ターゲットの外形に沿って流れ、コアンダ効果によって噴出流体は、例えば右側のリターン側壁に沿って流れる。この右側のリターン側壁に流れた流体の一部は帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側のリターン側壁に沿って流れるようになり、今度は左側のリターン側壁に流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側のリターン側壁に沿って流れる。これが繰返されて交番圧力波が生じるようになる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。なお、本実施例においてフルイディック素子以外の主要部は、図9に示す部分と同様であるため、フルイディック流量計全体の説明は省略する。また、フルイディック素子のうち、図10に示す部分と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0023】図1は、フルイディック流量計のフルイディック素子を示す図で、23はダイキャスト等によって形成された流路本体であり、この流路本体23の開口部をパッキングを介して蓋体(図示しない)によって閉塞することにより、流路26が構成されている。
【0024】この流路26は隔壁27によって区画されており、流路本体23の隔壁27には、噴出ノズル32が設けられている。この噴出ノズル32は流路本体23の奥行き方向全体に亘って開口するスリット状で、その長手方向の開口両側縁には上流側流路28に突出する突出部32a,32bを有し、ノズル通路長を延長させている。
【0025】この噴出ノズル32に対向する下流側流路29には流体の流動方向切換安定化を図るための左右対称に形成されたU字状のターゲット40が設けられている。具体的には、ターゲット40は、その上流側は比較的小さな曲率半径を有する凹曲線で形成されるとともに、下流側はその全体に亘って滑らかな凸曲線形状で形成されている。
【0026】上記ターゲット40は、例えば上流側曲線部41はその両側の突出部42a,42bの先端よりも下部に中心が位置する円弧から構成するとともに、下流側曲線部43は上流側曲線部41よりも大きい相似形の円弧から構成し、両側の突出部42a,42bを上方に延出して構成してもよく、また、上部曲線部は両側の突出部の先端よりも上部に中心が位置する円弧から構成するとともに、下部曲線部は、上部曲線部よりも大きい相似形の円弧から構成してもよい。
【0027】このターゲット40を挟んで両側にはリターン側壁45a,45bが対称的にターゲット40を覆うように設けられている。これらリターン側壁45a,45bは、下流側流路29の幅方向に延長して設けられ、その上流側端部46a,46bはそれぞれ噴出ノズル32の出口近傍に向けて延出しており、下流側端部47a,47bはターゲット40の下流側で対向し、この対向部で前記ガス流出口体15への連通路48を形成している。
【0028】また、リターン側壁45a,45bのターゲット40側には、噴出ノズル32からの噴出流体の一部を下流側端部47a,47bから上流側端部46a,46bまで噴出ノズル32の出口近傍、すなわち圧力波センサ39a,39bに向けて返すとともに、噴出ノズル32からの噴出流体の一部を連通路48に案内する流体案内面49a,49bが形成されている。
【0029】このような構成の本実施例においては、流量測定を行う際、図1に示すように前記噴出ノズル32から下流側流路29に向かって流体が噴出されると、この噴出流体は、ターゲット40の外形に沿って流れ、左右に振分けられる。そしてコアンダ効果により、例えば図2(a)に示すように右側のリターン側壁45aの流体案内面49aに沿って流れる。
【0030】そして、右側の流体案内面49aに流れた流体の一部は下流側に向けて流れ、連通路48を通って第1の排出流路38aに向かうが、一部は上流側に向かう。そして、この上流側に向かった流体の大部分は第2の排出流路50a,50bに向かうが、その一部は帰還流体となり、帰還流路37aに向かう。この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が左側の流体案内面49bに沿って流れるようになり、今度は図2R>2(b)に示すように左側の流体案内面49bに流れた流体の一部が帰還流体となり、この帰還流体の流体エネルギが噴出流体に付与され、噴出流体が再び右側の流体案内面49aに沿って流れるようになる。
【0031】このように、噴出ノズル32から下流側流路29内に噴出される流体の振動現象によって交番圧力波が生じるようになり、この交番圧力波を圧力波センサ39a,39bによって検出し、この検出結果に基づいて流量を測定する。
【0032】このように、フルイディック素子17を簡素化したため、すなわちターゲット40及びリターン側壁45a,45bから構成するため、従来よりも部品点数を減少させることができ、平面形状も単純化できる。これにより、フルイディック素子17を成形する金型や製品の寸法管理を容易に行うことができ、従ってコスト低減を図ることもできる。また、流量計自体の小型化を図ることもできる。具体的には例えば、従来よりも幅方向に30%程度小さくすることができる。
【0033】さらに、フルイディック素子17が形成された流路本体23の平面形状は、ターゲット40とリターン側壁45a,45bとで流体の流れを構成しているため、自由度のある設計が可能となる。
【0034】また、リターン側壁45a,45bの上流側端部46a,46bを噴出ノズル32に向けて延出して形成するため、流体エネルギの伝達が滑らかに行われ、帰還流体によるフィードバック効果を高めることができる。これにより、流体の振動現象によって生じた交番圧力波の振幅をより大きくすることができ、周波数も大きくなる。
【0035】このため、流量が少ないため交番圧力波の振幅、周波数がともに小さくて、従来では計測できなかった部分においても、計測可能な程度の振幅や周波数の交番圧力波が生じるようになり、流量測定可能範囲を広げることができる。
【0036】また、ターゲット33の上流側は、比較的曲率半径が小さい円弧で構成しているため、帰還流体によるフィードバック効果をより一層高めることができる。これにより、流体の振動現象によって生じた交番圧力波の振幅をより大きくすることができる。さらに、ターゲット33の下流側は、円弧状をなすため、左右に振分けられた流体は、従来のようなハート形状のターゲット33を使用した場合に比して、より滑らかに流れるようになる。
【0037】これにより、リターン壁36からの帰還流体の流体エネルギの伝達をさらに滑らかに行うことができ、流体の振動現象によって生じた交番圧力波の振幅をさらに大きくすることができる。このため、最小流量の測定範囲をさらに広くすることができる。
【0038】図3は、本実施例にかかるフルイディック流量計で流量測定を行った場合の測定流量と実際に流れた流量との器差をグラフに表したものである。この測定結果から明らかなように、最小流量測定範囲を図12に示す従来の計測結果である1/40Qmax から1/70Qmax まで大幅に広げることができる。また、例えば1/20Qmax の流量を計測する際の交番圧力波の周波数は、従来のフルイディック流量計で流量計測を行った場合の周波数4.73Hzに対して、本実施例にかかるフルイディック流量計で流量計測を行った場合の周波数は5.048Hzと大きくなる。
【0039】また、本実施例にかかるフルイディック流量計で流量計測を行った場合の交番圧力波のピーク間電圧は、図4に示すように160.57mVとなり、図11R>1に示す従来のフルイディック流量計で流量計測を行った場合の交番圧力波のピーク間電圧75.46mVより大きくなることがわかる。
【0040】また、従来は噴出ノズル32からの噴出流体の圧力損失が大きくなるとの理由から噴出ノズル32とターゲット33との距離を短くすることができなかったが、本実施例においてはリターン側壁45a,45bの下流側端部47a,47bをターゲット40の下流側で対向させてこの対向部でガス流出口体15への連通路48を形成することから、噴出流体の圧力損失を減少させることができる。
【0041】これにより、噴出流体の圧力損失が増加することなく、噴出ノズル32とターゲット40との距離を短くすることもできる。従って、圧力損失を許容範囲に抑制しつつ、流量測定可能範囲をさらに拡大することができる。
【0042】なお、本実施例においては、リターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49bを円弧状に形成し、外側面をL字状に形成するものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば図5R>5(a)に示すようにリターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49bのみならず、外側面をも全体を円弧状に形成したものであってもよく、同図(b)に示すようにリターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49b及び外側面を隅角部が小さい円弧状の矩形に形成してもよい。
【0043】さらに、同図(c)に示すように、同図(a)に示すリターン側壁45a,45bの下流側端部47a,47bになるに連れて厚みが大きくなるように形成してもよく、同図(d)に示すようにリターン側壁45a,45bの流体案内面49a,49b及び外側面を台形状に形成したものでもよい。このようにリターン側壁45a,45bを形成しても上記同様の効果を奏することができる。
【0044】また、本実施例においては、ターゲット40の上流側端部42a,42bを平面状にしたものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上流側端部を図5(a)に示すように両側に傾斜面を有し、その先端がとがった形状のものでもよく、また同図(b)に示すように上流側端部の両縁部を面取りしたものであってもよい。さらに同図(c)に示すように内側上縁部だけを面取りしたものでもよく、また同図(d)に示すように外側上縁部だけを面取りしたものでもよい。このようにすることによって、噴出ノズル32からの噴出流体の流れをより滑らかにすることができ、上流側端部に発生する渦を抑制することができる。これにより、交番圧力波の雑音発生や、圧力損失を低減することができる。 また、本実施例においては、ターゲット40の厚みが一定のものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、厚みが異なるものでもよい。すなわち例えばターゲット40の上流側曲線部41の中心O1 に対して下流側曲線部43の中心O2 を下流側にずらして形成した図6(a)に示すような形状のものであってもよい。またターゲット40の上流側曲線部41の中心O3 に対して下流側曲線部43の中心O4 を下流側にずらして形成した同図(b)に示すような形状のものであってもよい。さらに、同図(c)に示すように逆三角形の上辺部を削り、3つの円弧O5 ,O6 ,O7 で上流側曲線部41を形成してもよい。
【0045】さらに、同図(d)に示すようなターゲット40を逆三角形状に形成したものでもよく、同図(e)に示すように上流側曲線部41の大きな径の凸円弧及び下流側の小さな径の凸円弧をずらして重ね合わせ、その共通接線で結んだ外側形状に形成したものでもよく、また同図(f)に示すように流路の幅方向に延長した矩形状に形成したものでもよい。また、同図(g)に示すように、ターゲット40をハート形状にしたものでもよい。
【0046】また、本実施例においては、第1のターゲット40の突出部42a,42bを平面状にしたものについて述べたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、突出部42a,42bを図7(a)に示すように両側に傾斜面を有し、その先端がとがった形状にしたものでもよく、また同図(b)に示すように突出部42a,42bのそれぞれの両縁部を面取りしたものであってもよい。
【0047】さらに同図(c)に示すように突出部42a,42bの内側上縁部だけを面取りしたものでもよく、また同図(d)に示すように突出部42a,42bの外側上縁部だけを面取りしたものでもよい。このように構成することによって、噴出ノズル32からの噴出流体の流れをより滑らかにすることができ、突出部42a,42bに発生する渦を抑制することができる。これにより、交番圧力波の雑音発生や、圧力損失を低減することができる。
【0048】また、図8(a)に示すように突出部42a,42bの全体を円弧状に加工したものであってもよく、また同図(b)に示すように突出部42a,42bの両縁部を小さい半径の円弧状に加工したものであってもよい。さらに同図(c)に示すように突出部42a,42bの内側上縁部だけを小さい半径の円弧状に加工したものであってもよく、また同図(d)に示すように突出部42a,42bの外側上縁部だけを小さい半径の円弧状に加工したものであってよい。このようにすることによって、噴出ノズル32からの噴出流体の流れをさらに滑らかにすることができ、突出部42a,42bに発生する渦をさらに抑制できる。これにより、交番圧力波の雑音発生や、圧力損失をさらに低減することができる。
【0049】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、フルイディック素子を成形する金型や製品の寸法管理を容易に行うことができ、また流量計自体の小型化を図ることができ、しかも圧力損失を低減することができるフルイディック流量計を提供できるものである。
【0050】また、圧力損失を許容範囲に抑制しつつ、流体振動の発振力を強くすることができ、従って流量測定可能範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるフルイディック流量計の要部の縦断正面図。
【図2】同実施例における作用を説明する図。
【図3】同実施例にかかるフルイディック流量計で測定した場合の流量に対する器差を示す図。
【図4】同実施例にかかるフルイディック流量計で測定した場合の交番圧力波を測定した結果を示す図。
【図5】図1に示すリターン側壁の変形例を説明する図。
【図6】図1に示す第1のターゲットの変形例を説明する図。
【図7】図1に示す第1のターゲットの変形例を説明する図。
【図8】図1に示す第1のターゲットの変形例を説明する図。
【図9】従来のフルイディック流量計の縦断正面図。
【図10】従来のフルイディック流量計の一部を示す縦断正面図。
【図11】従来のフルイディック流量計で計測した場合の交番圧力波を測定した結果を示す図。
【図12】従来のフルイディック流量計で測定した場合の流量に対する器差を示す図。
【符号の説明】
15…ガス流出口体
17…フルイディック素子
23…流路本体
28…上流側流路
29…下流側流路
32…噴出ノズル
40…ターゲット
45a,45b…リターン側壁
46a,46b…上流側端部
47a,47b…下流側端部
48…連通路
49a,49b…流体案内部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 流路を構成する流路本体と、この流路本体に設けられたフルイディック素子と、前記流路内に流体を噴出する噴出ノズルとを備え、前記噴出ノズルから流路内に噴出される流体の振動現象によって生じる交番圧力波を検出して流量を検出するフルイディック流量計において、前記噴出ノズルの出口近傍に設けられ、流体の交番圧力波を検出する交番圧力検出手段と、前記噴出ノズルより下流側流路に設けられ、流体の流動方向の切換を安定化させるターゲットと、このターゲットを挟んで両側に対称的に設けられ、下流側流路の幅方向に延長したリターン側壁と、このリターン側壁の下流側に設けられた流体出口とを設け、前記リターン側壁は、前記噴出ノズルの出口近傍に向けて延出した上流側端部と、前記ターゲットの下流側で対向し、この対向部で流体出口への連通路を形成する下流側端部と、前記噴出ノズルからの噴出流体の一部を前記下流側端部から前記上流側端部まで前記交番圧力検出手段に向けて案内するとともに、前記噴出ノズルからの噴出流体の一部を流体出口への連通路に案内する流体案内部とを設けたことを特徴とするフルイディック流量計。
【請求項2】 前記ターゲットは、その上流側に曲率半径が比較的小さい円弧状の上流側凹部を有することを特徴とする請求項1記載のフルイディック流量計。
【請求項1】 流路を構成する流路本体と、この流路本体に設けられたフルイディック素子と、前記流路内に流体を噴出する噴出ノズルとを備え、前記噴出ノズルから流路内に噴出される流体の振動現象によって生じる交番圧力波を検出して流量を検出するフルイディック流量計において、前記噴出ノズルの出口近傍に設けられ、流体の交番圧力波を検出する交番圧力検出手段と、前記噴出ノズルより下流側流路に設けられ、流体の流動方向の切換を安定化させるターゲットと、このターゲットを挟んで両側に対称的に設けられ、下流側流路の幅方向に延長したリターン側壁と、このリターン側壁の下流側に設けられた流体出口とを設け、前記リターン側壁は、前記噴出ノズルの出口近傍に向けて延出した上流側端部と、前記ターゲットの下流側で対向し、この対向部で流体出口への連通路を形成する下流側端部と、前記噴出ノズルからの噴出流体の一部を前記下流側端部から前記上流側端部まで前記交番圧力検出手段に向けて案内するとともに、前記噴出ノズルからの噴出流体の一部を流体出口への連通路に案内する流体案内部とを設けたことを特徴とするフルイディック流量計。
【請求項2】 前記ターゲットは、その上流側に曲率半径が比較的小さい円弧状の上流側凹部を有することを特徴とする請求項1記載のフルイディック流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図12】
【特許番号】特許第3467095号(P3467095)
【登録日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【発行日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−280866
【出願日】平成6年11月15日(1994.11.15)
【公開番号】特開平8−145746
【公開日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【審査請求日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000142425)株式会社金門製作所 (40)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【出願人】(000156813)関西ガスメータ株式会社 (8)
【出願人】(000150109)株式会社竹中製作所 (6)
【出願人】(000222211)東洋ガスメーター株式会社 (34)
【参考文献】
【文献】特開 平4−58111(JP,A)
【登録日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【発行日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成6年11月15日(1994.11.15)
【公開番号】特開平8−145746
【公開日】平成8年6月7日(1996.6.7)
【審査請求日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000142425)株式会社金門製作所 (40)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【出願人】(000156813)関西ガスメータ株式会社 (8)
【出願人】(000150109)株式会社竹中製作所 (6)
【出願人】(000222211)東洋ガスメーター株式会社 (34)
【参考文献】
【文献】特開 平4−58111(JP,A)
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