説明

フルオレン系樹脂重合体およびこれの製造方法

【課題】
【解決手段】本発明は、化学式1の反復単位を有するフルオレン系樹脂重合体およびこの製造方法に関し、前記フルオレン系樹脂重合体は、分子量が高いながら酸価が低く、現像性、接着性、および安定性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン系樹脂重合体およびこれの製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2007年2月20日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2007−17080号の出願日の利益を主張しており、その内容すべては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
一般的に、フルオレン系樹脂は、フルオレン基を含むジオール化合物と二酸無水物との縮合重合反応によって生成される構造であるため、酸価が低いと共に、分子量が高い重合体で生成するのが困難である。
【0004】
前記のような構造のフルオレン系樹脂がネガティブ型感光性樹脂組成物に用いられる場合、前記ネガティブ感光性樹脂組成物は、基板との接着性は優れているが、酸価が高くて分子量が低く、現像工程に脆弱であるという短所を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、前記した従来技術の問題点を解決するためのものであって、フルオレン系樹脂が有する優れた基板接着性は維持しながら、酸価が低くて分子量が高いフルオレン系樹脂重合体およびこれの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明は、下記化学式1の反復単位を有するフルオレン系樹脂重合体を提供する。
【0007】
【化1】

前記化学式1において、
Xは、炭素数1〜3のアルキレン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドからなる群から選択された1つであり、Yは、シクロヘキサン(cyclohexane)、シクロヘキセン(cyclohexene)、ベンゼン、および炭素数3〜10のアルキレンからなる群から選択された1つである。
【0008】
また、本発明は、
フルオレン基を含むジエポキシ化合物;および
ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および炭素数3〜10のアルカンのうちから選択された1つを間に置いて両端に酸が置換された構造を有する二酸化合物;を混合した後、縮合反応によって前記化学式1の反復単位を有するフルオレン系樹脂重合体を製造するフルオレン系樹脂重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、分子量が高いと同時に酸価が低く、現像性、接着性、および安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】合成例1のNMRグラフである。
【図2】合成例2のNMRグラフである。
【図3】合成例3のNMRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
前記化学式1は、例えば、Xがメチレンであり、Yがシクロヘキセン(cyclohexene)であるときに、下記化学式2で表わされることができる。
【0013】
【化2】

前記フルオレン系樹脂重合体は、a)フルオレン基を含むジエポキシ化合物;およびb)ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および炭素数3〜10のアルカンのうちから選択された1つを間に置いて両端に酸が置換された構造を有する二酸化合物を混合して縮合反応によって製造することができる。
【0014】
従来のフルオレン系樹脂重合体は、ジオール化合物と二酸無水物とが反応して生成されるため、生成される重合体の分子量が高いほどそれだけ酸価が高い重合体が得られるようになる。したがって、前記従来のフルオレン系樹脂重合体は、分子量が高く、ネガティブ型感光性樹脂組成物に用いるのに適する反面、ジオール基と二酸無水物基が互いに会合して反応をすればするほど酸基が生じるようになるため、酸価が過度に高く、ネガティブ型感光性樹脂組成物内の他の化合物との相溶性や現像性などに問題があった。
【0015】
したがって、本発明者は、前記問題点を改善するために、ジエポキシ化合物と二酸化合物とを反応させて酸基が形成されないようにすることで、分子量が高いながらも酸価は高くない新規のフルオレン系樹脂重合体を製造するようになった。
【0016】
一般的に、縮合重合反応によって得られる高分子の場合、分子量を高めるために、反応に参加する2つのモノマーの割合を約1:1で用いながら触媒や温度などの最適条件を探し、2つのモノマーが互いに100%反応するようにする条件を提供することで、分子量を高めることができる。
【0017】
しかしながら、従来のフルオレン系樹脂重合体は、ジオール化合物に対比する二酸無水物の比率を約1:0.8までしか用いないが、その理由は、反応が非常に多く進められれば、分子量だけでなく酸価も共に大きく増加し、これに伴って酸価が120以上に大きくなれば、感光性組成物として好ましくないためである。また、二酸無水物は、反応溶媒、例えばPGMEA(Propylene Glycol Methyl Ether Acetate)に対する溶解度が良くなく、0.8以上の割合で用いればこれ以上反応せずに白い固体としてそのまま残るようになる。
【0018】
反面、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、分子量が増加しても酸価が大きくなるシステムではないため、分子量を所望するとおりに高めることができ、エポキシ化合物および二酸化合物の溶解度も優れているため、2つの化合物の反応割合を高め、分子量が高いバインダー樹脂を得ることができる。
【0019】
従来のフルオレン系樹脂重合体は、反応に用いられた二酸無水物の一部が反応が終わった後にも微量残るようになり、これを含むネガティブ型感光性樹脂組成物の安定性を大きく低下させるという短所を有している。
【0020】
反面、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、反応に無水物基をまったく用いないため、反応後に得たフルオレン系樹脂重合体自体も安定しており、これを含むネガティブ型感光性樹脂組成物の安定性も優れている。
【0021】
また、従来のフルオレン系樹脂重合体がネガティブ型感光性樹脂組成物に用いられるとき、前記フルオレン系樹脂重合体は、低い分子量に対比して高い酸価、例えば約4,000〜7,000g/molの分子量に対比して約120の酸価であるとき、現像性を調節するのが容易でなく、現像時にパターンの下部が削られるという短所を有している。
【0022】
反面、本発明に係る前記フルオレン系樹脂重合体がネガティブ型感光性樹脂組成物に用いられるとき、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、酸価が低いながらも既存のフルオレン系樹脂に比べて分子量が高いため、適切な水準で現像性を確保することができる。
【0023】
また、本発明のフルオレン系樹脂重合体は、露光後の現像工程段階で生じる恐れがあるパターン下部が削られる現象を改善させることができる。前記パターン下部が削られる現象は、現像溶液によってパターンの下部が削られながら、ポスト−ベイク(post−bake)段階を経た後にパターンの上部が下が陥没し、最終的にはパターン模様が階段形態になる現象をいう。また、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、フルオレン系化合物が有する長所である基板との接着性をそのまま維持しながら現像性を改善させたため、現像接着性が優れいている。ここで、現像接着性は、パターンが現像工程を経る間に基板の上に付着する性質を意味する。一般的に、フルオレン系化合物は、他の化合物に比べて現像工程時に基板上によく付着するものと知られている。このようなフルオレン系化合物で生成された既存の高分子は、付着性が優れいる方ではあるが、酸価が高いためにパターンの下部が多く削られるようになるという短所がある。
【0024】
前記のように、本発明のフルオレン系樹脂重合体は、優れた基板接着性を維持しながら、分子量が高くて酸価が低く、現像性および安定性が改善された重合体を合成するのに重点を置いた。
【0025】
本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、フルオレン基を含むジエポキシ化合物を含んで重合されるが、これは下記化学式3で表わされることができる。
【0026】
【化3】

前記化学式3において、Xは、炭素数1〜3のアルキレン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドからなる群から選択された1つである。
【0027】
例えば、前記化学式3において、Xがプロピレンオキシドである場合、下記化学式4で表わされることができる。
【0028】
【化4】

また、本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、二酸化合物を含んで重合されるが、これは、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および炭素数3〜10のアルカンのうちから選択された1つを間に置いて両端に酸が置換された構造であって、現像接着性の向上のために環形基を有する化合物を有することが好ましい。
【0029】
例えば、前記二酸化合物としては、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸(cis−4−cyclohexene−1,2−dicarboxylic acid)、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−フェニレンアセト酢酸、1,2−フェニレンジオキシアセト酢酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などであることが好ましく、これらは下記のような化合物で表わされることができる。
【0030】
【化5】

本発明に係るフルオレン系樹脂重合体は、1,000〜50,000の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0031】
また、本発明は、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および炭素数3〜10のアルカンのうちから選択された1つを間に置いて両端に酸が置換された構造を有する二酸化合物とフルオレン基を含むジエポキシ化合物とを混合した後、縮合反応によって前記化学式1の反復単位を有するフルオレン系樹脂重合体を製造するフルオレン系樹脂重合体の製造方法を提供する。本発明は、当業界で知られている縮合反応によって製造される。
【0032】
前記フルオレン系樹脂重合体をアルカリ可溶性樹脂として含むネガティブ型感光性樹脂組成物を製造することができる。
【0033】
前記ネガティブ型感光性樹脂組成物は、通常、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、光重合開始剤、溶媒などを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記ネガティブ型感光性樹脂組成物は、カラーフィルタ製造用感光材、オーバーコート感光材、またはカラムスペイサーに用いられることが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を通じて、本発明について詳細に説明する。しかしながら、本発明の実施例は、様々な形態に変形することができ、本発明の範囲が下記で詳述する実施例によって限定される式で解釈されてはいけない。本発明の実施例は、当業界において通常の知識を有する者に本発明をより一層完全に説明するために提供されるものである。
【0036】
<実施例1>フルオレン系樹脂重合体の合成
9,9−ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル122gと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸45gを150gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと共に攪拌した。反応器内部に窒素を流して反応器を110℃で加熱した。10時間後に反応を終了し、200gの反応溶媒を追加してフルオレン系樹脂重合体を得て、図1にNMRグラフで示した(固形分29.19重量%、酸価25、分子量13000)。
【0037】
<実施例2>
9,9−ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル124gとフタル酸44gを150gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと共に攪拌した。反応器内部に窒素を流して反応器を110℃で加熱した。10時間後に反応を終了し、200gの反応溶媒を追加してフルオレン系樹脂重合体を得て、図2にNMRグラフで示した(固形分28.80重量%、酸価32、分子量10300)。
【0038】
<実施例3>
9,9−ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル107gと5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸42gを150gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと共に攪拌した。反応器内部に窒素を流して反応器を110℃で加熱した。10時間後に反応を終了し、200gの反応溶媒を追加してフルオレン系樹脂重合体を得て、図3にNMRグラフで示した(固形分31.65重量%、酸価25、分子量4000)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の反復単位を有するフルオレン系樹脂重合体。
【化6】

前記化学式1において、
Xは、炭素数1〜3のアルキレン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドからなる群から選択された1つであり、
Yは、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、および炭素数3〜10のアルキレンからなる群から選択された1つである。
【請求項2】
重量平均分子量が1,000〜50,000であることを特徴とする請求項1に記載のフルオレン系樹脂重合体。
【請求項3】
a)下記化学式3で表わされるフルオレン基を含むジエポキシ化合物;および
b)ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および炭素数3〜10のアルカンのうちから選択された1つを間に置いて両端に酸が置換された構造を有する二酸化合物の縮合反応によって製造されることを特徴とする請求項1に記載のフルオレン系樹脂重合体:
【化7】

前記化学式3において、
Xは、炭素数1〜3のアルキレン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドからなる群から選択された1つである。
【請求項4】
前記二酸化合物は、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−フェニレンアセト酢酸、1,2−フェニレンジオキシアセト酢酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択された1種以上の化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載のフルオレン系樹脂重合体。
【請求項5】
フルオレン基を含むジエポキシ化合物;および
ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルネン、および炭素数3〜10のアルカンのうちから選択された1つを間に置いて両端に酸が置換された構造を有する二酸化合物を混合した後、縮合反応によって下記化学式1の反復単位を有するフルオレン系樹脂重合体を製造することを特徴とするフルオレン系樹脂重合体の製造方法:
【化8】

前記化学式1において、
Xは、炭素数1〜3のアルキレン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドからなる群から選択された1つであり、
Yは、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、および炭素数3〜10のアルキレンからなる群から選択された1つである。
【請求項6】
前記フルオレン系樹脂重合体は、重量平均分子量が1,000〜50,000であることを特徴とする請求項5に記載のフルオレン系樹脂重合体の製造方法。
【請求項7】
前記フルオレン基を含むジエポキシ化合物は、下記化学式3で表わされることを特徴とする請求項5に記載のフルオレン系樹脂重合体の製造方法:
【化9】

前記化学式3において、
Xは、炭素数1〜3のアルキレン、エチレンオキシド、およびプロピレンオキシドからなる群から選択された1つである。
【請求項8】
前記二酸化合物は、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−フェニレンアセト酢酸、1,2−フェニレンジオキシアセト酢酸、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のフルオレン系樹脂重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519378(P2010−519378A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550788(P2009−550788)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000365
【国際公開番号】WO2008/102953
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】