説明

フルオロオレフィンを製造するための統合方法

TCP(テトラクロロプロペン)を気相中でHCFC−1233xfにフッ化水素化し、次にHCFC−1233xfを液相中でHCFC−244bbにフッ化水素化し、次に液相又は気相中で脱塩化水素してHFO−1234yfを生成させることを含む3つの統合工程でTCPからHFO−1234yfを製造する方法を開示する。気相フッ化水素化は液相フッ化水素化よりも高い圧力で行い、それによって圧縮及び/又は中間体回収の必要性を排除する。また、この反応から生成するHClを液相フッ化水素化セクションに供給して撹拌及び混合を促進する。これによって、3工程を逐次的に行うことと対比して初期設備コスト及び運転コストの点からより経済的なプロセスが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]フルオロカーボン、特に1つの種類としてフッ素化オレフィンは、化学中間体及びモノマーなどとしての多くの多様な用途を有する。特に、水素化生成物は、冷媒、冷媒を製造するためのモノマー又は中間体、特に低い地球温暖化係数を有すると認められているものとして有用である。
【背景技術】
【0002】
[0002]本発明は、HFO−1234yfとしても知られており、化学式:CF−CF=CHによっても知られている2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペンの製造に関する。この化合物は、0のオゾン層破壊係数及び非常に低い地球温暖化係数を有しているので、冷却、フォーム発泡、及びHFC−134aとしても知られており、化学式:CHF−CFによっても知られている1,1,1,2−テトラフルオロエタンのようなフルオロカーボンが現在用いられている他の用途において用いられている既存の材料に関する代替物として有用且つ望ましい可能性がある。
【0003】
[0003]非統合3工程経路を用いて1,1,2,3−テトラクロロプロペン(TCP又はCCl=CCl−CHCl)からHFO−1234yfを製造することは当該技術において公知である。例えば、米国公開2007/0197842(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0004】
TCP+3HF → HCFC−1233xf+3HCl
(ここで、HCFC−1233xfはCH=CCl−CFである)
HCFC−1233xf → HCFC−244bb
(ここで、HCFC−244bbはCF−CFCl−CHである)
HCFC−244bb → HFO−1234yf+HCl
[0004]更に、他の方法が当該技術において教示されている。例えば、以下の参照文献(参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0005】
[0005]米国特許7,345,209においては、1,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234ze)の合成方法が開示されている。
[0006]米国公開2009/0099396においては、2,2,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yf)などのフッ素化オレフィンの合成方法が開示されている。
【0006】
[0007]米国公開2009/0043136においては、ハロゲン化炭化水素の接触脱水素ハロゲン化によってフッ素化オレフィンを製造する方法が開示されている。
[0008]米国公開2009/0030247においては、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yf)などのフッ素化有機化合物の製造方法が開示されている。
【0007】
[0009]米国公開2009/0030244においては、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFC−1233xf)の製造方法が開示されている。
[0010]PCT公開WO−2009035130においては、フッ素化オレフィンの製造方法が開示されている。
【0008】
[0011]PCT公開WO−2009035130においては、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yf)の製造方法が開示されている。
[0012]PCT公開WO−2008060614においては、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン(HFO−1234yf)の製造方法が開示されている。
【0009】
[0013]PCT公開WO−2008054782においては、フルオロプロパン及びハロプロパンの製造方法が開示されている。
[0014]PCT公開WO−2008054778においては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法、1−クロロ−2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造方法、及び1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとHFとの共沸組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国公開2007/0197842
【特許文献2】米国特許7,345,209
【特許文献3】米国公開2009/0099396
【特許文献4】米国公開2009/0043136
【特許文献5】米国公開2009/0030247
【特許文献6】米国公開2009/0030244
【特許文献7】PCT公開WO−2009035130
【特許文献8】PCT公開WO−2009035130
【特許文献9】PCT公開WO−2008060614
【特許文献10】PCT公開WO−2008054782
【特許文献11】PCT公開WO−2008054778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0015]本発明は、それぞれの個々のプロセス中間体を更なる反応にかける前に製造及び単離するための別々の装置が必要であった従来の設計手法と比較して、プロセスのために必要な処理装置の量が減少し、したがって設備投資及び運転コストが減少する統合プロセスを提供する。したがって、本発明は、設備及び運転の両方の観点から遙かにより経済的なプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0016](R−1)TCP(テトラクロロプロペン)を気相中でHCFC−1233xfにフッ化水素化し;
(R−2)HCFC−1233xfを、液相中、又は気相中、又は液相中で次に気相中でHCFC−244bbにフッ化水素化し;そして
(R−3)液相又は気相中で脱塩化水素してHFO−1234yfを生成させる;
ことを含む3つの統合工程でTCPからHFO−1234yfを製造する方法。
【0013】
[0017]好ましくは、気相フッ化水素化は、液相フッ化水素化よりも高い圧力において行う。有利には、第1のフッ化水素化反応から生成するHClを第2のフッ化水素化セクションに供給する。
【0014】
[0018]好ましくは、TCPのHCFC−1233xfへのフッ化水素化は、気相中、フッ素化触媒の存在下において、単一の反応器、多段階反応器、又は一連の複数の反応器からなる群から選択される反応器内で、再循環流、新しいHF、及び新しいTCPの組合せを用いて行う。フッ素化触媒は、Cr、Sb/C、FeCl、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、及びCoCl/AlFからなる群から選択されるものの少なくとも1つである。
【0015】
[0019]好ましくは、液相(又は液相で次に気相)中でのHCFC−1233xfのHCFC−244bbへのフッ化水素化は、HCFC−1233xf、HCl、過剰のHF、及び未反応のTCP、並びに中間体を含む反応器流出流を、未反応のTCP及び過剰のHFをプロセスの工程R−1において再循環使用するために分離するためのクエンチ/再循環カラム中に供給することによって処理することを更に含む。
【0016】
[0020]好ましくは、HCFC−1233xf、HCl、及びHFを、HCFC−1233xfを1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(HCFC−244bb)へフッ化水素化するためのSbCl、SbCl、SbF、TiCl、SnCl、及びこれらの組合せから選択される触媒を含む液相反応器に供給する。好ましくは、HCFC−244bb、HCl、未反応のHCFC−1233xf、及びHFの混合物は、未反応のHF及び触媒の殆どを反応器に再循環して戻すように用いる触媒ストリッパーを通して液体反応器システムから排出する。
【0017】
[0021]好ましくは、触媒ストリッパーからの流出流は、HCFC−1233xfをHCFC−244bbに更に転化させるためのSbCl/炭素触媒を含む床に通すことができる。有利には、触媒ストリッパーからの流出流、又はSbCl/C床からの流出流はHClカラムに供給して、HCFC−244bb、HCFC−1233xf、HF、及びHClの混合物から、実質的に純粋なHClを塔頂流中に分離する。
【0018】
[0022]好ましくは、プロセス中に生成するHClは、そのまま回収するか、或いは残留HFを除去するためにシリカゲルに通し、水中に吸収させて、塩酸を生成させる。
[0023]有利には、HCFC−244bb、HCFC−1233xf、HFの混合物は、HFに富む流れ、並びにHCFC−244bb及びHCFC−1233xfに富む他の流れを回収して再循環するためのHF回収セクションに供給する。1つのかかる方法は、HCFC−244bb、HCFC−1233xf、HFの混合物を冷却し、相分離にかけて有機層とHF層を分離することである。他の方法は、(米国特許7,371,363に開示されているようにして)HCFC−244bb、HCFC−1233xf、HFの混合物を、HSOの溶液で処理することである。好ましくは、最小量のHFを含む有機層は、脱塩化水素反応器に直接供給するか、或いは更に処理して残留HFを除去する。好ましくは、粗HCFC−244bb流は、脱塩化水素触媒を含む気相反応器を用いて脱塩化水素する。触媒は、Cr、Sb/C、FeCl、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、及びこれらの組合せから選択される。場合によっては、粗HCFC−244bb流は、液相反応器内において、塩基水溶液の存在下で脱塩化水素する。塩基水溶液は、好ましくはNaOH又はKOHのいずれかであるが、他の塩基水溶液を本発明において同様に用いることができる。図中の式2を参照。
【0019】
[0024]好ましくは、HFO−1234yf、HCl、及び未反応のHCFC−244bbを含む流出流は、吸収装置において脱酸し、乾燥し、圧縮し、蒸留系列に供給して、そこでHFO−1234yfを回収し、未反応のHCFC−244bbは脱塩化水素反応器に再循環する。有利には、未反応のHCFC−244bbの一部は、HCFC−1233xfをパージするために液相反応器に再循環する。有利には、HFO−1234yf、未反応のHCFC−244bb、及び水蒸気を含む流出流は、乾燥し、圧縮し、蒸留系列に供給して、そこでHFO−1234yfを回収し、未反応のHCFC−244bbは脱塩化水素反応器に再循環する。好ましくは、未反応のHCFC−244bbの一部は、HCFC−1233xfをパージするために液相反応器に再循環する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】[0025]図1は、TCPからHFO−1234yfを製造するために用いる処理工程を有するブロックフロー図(式1)を示す。
【図2】図2は、TCPからHFO−1234yfを製造するために用いる処理工程を有するブロックフロー図(式2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0026]本発明は、概して、第1の反応を第2の反応よりも高い圧力において行う3つの反応工程でTCPからHFO−1234yfを製造するための統合プロセスとして記載することができる。
【0022】
[0027]本発明の統合プロセスの重要な特徴としては、その後の液相フッ素化反応器のために中間体の圧縮又は単離を必要としないように十分に高い圧力において第1工程気相フッ素化反応器を運転することが挙げられる。また、第1工程において生成するHClガスは、第2工程に直接供給して、混合の促進、及び第2の液相フッ化水素化反応器における過フッ素化の抑制の両方を行う。2つのフッ素化反応器は、大過剰、通常は1モルの有機物質に対して20モルのHFのオーダーのHFを用いて運転し、これによって、第1工程においてTCPの気化を促進させ且つ副生成物の形成を最小にし、第2工程において副生成物の形成を最小にする。「統合プロセス」という用語は、中間体反応物質の単離が必要ないようにどのようにして複数のプロセス工程を組み合わせるかを示す。これによって、非統合プロセスよりも良好な収率が与えられ、プロセスの運転コストが減少する。
【0023】
[0028]図の式1は、(R−1)TCP(テトラクロロプロペン)を、気相中で、その後の工程よりも高い圧力においてHCFC−1233xfにフッ化水素化し、次に(R−2)HCFC−1233xfを、液相中、又は液相中で次に気相中でHCFC−244bbにフッ化水素化し、次に(R−3)液相又は気相中で脱塩化水素してHFO−1234yfを生成させることを含む3つの統合工程でTCPからHFO−1234yfを製造する方法を示す。
【0024】
[0029]好ましくは、式1のプロセスにおいて、気相フッ化水素化は液相フッ化水素化よりも高い圧力において行う。有利には、式1のプロセスにおいては、TCP、HF、及び再循環流を、Cr、Sb/C、FeCl、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlFからなる群から選択される触媒、又はかかる複数の触媒の混合物を含む気相反応器に供給する。式1において示すように、反応から生成するHClは液相フッ化水素化セクションに供給する。気相中でTCPをHCFC−1233xfにフッ化水素化するために用いる反応器は、単一の反応器、多段階反応器、又は一連の複数の反応器からなる群から選択される反応器であり、再循環流、新しいHF、及び新しいTCPの組合せを用いる。
【0025】
[0030]示されているように、液相中でのHCFC−1233xfのHCFC−244bbへのフッ化水素化は、HCFC−1233xf、HCl、過剰のHF、及び未反応のTCP、並びに中間体を含む反応器流出流を、未反応のTCP及び過剰のHFをプロセスの工程(R−1)において再循環使用するために分離するためのクエンチ/再循環カラム中に供給することによって処理することを更に含む。HCFC−1233xf、HCl、及びHFを、HCFC−1233xfを1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(HCFC−244bb)へフッ化水素化するためのSbCl、SbCl、SbF、TiCl、SnClから選択される触媒を含む液相反応器に供給する。液相中でのHCFC−1233xfのHCFC−244bbへのフッ化水素化は、HCFC−1233xf及びHCFC−244bbを含む反応器流出流を、HCFC−1233xfをプロセスの工程(R−2)において再循環使用するために分離するためのクエンチ/再循環カラム中に供給することによって処理することを更に含む。
【0026】
[0031]示されているように、HCFC−244bb、HCl、未反応のHCFC−1233xf及びHFの混合物を、未反応のHF及び触媒の殆どを反応器に再循環して戻すように用いる触媒ストリッパーを通して液体反応器システムから排出する。触媒ストリッパーからの流出流は、HCFC−1233xfをHCFC−244bbに更に転化させるための触媒を含む床に通すことができる。この転化のための1つの好ましい触媒は、炭素上に担持されているSbClである。好ましくは、触媒ストリッパーからの流出流、又は炭素上に担持されているSbClを含む床からの流出流は、HClカラムに供給して、HCFC−244bb、HCFC−1233xf、HF、及びHClの混合物から、実質的に純粋なHClを塔頂流中に分離する。実質的に純粋なHCl生成物は、そのまま回収するか、又は残留HFを除去するためにシリカゲルに通して水中に吸収させる。HCFC−244bb、HCFC−1233xf、及びHFの混合物からHFを回収する。HFを回収するための1つの方法は、冷却及び相分離させて有機物質に富む層とHFに富む層を分離することによる。この方法は、相分離及び共沸蒸留によってHFを回収することを更に含む。HF回収のための更に他の方法は硫酸中に吸収させることによる。HF回収のためのこれらのオプションのそれぞれは、単独か又は互いと組み合わせて用いることができる。
【0027】
[0032]本発明方法においては、最小量のHFを含む有機層は、脱塩化水素反応器に直接供給するか、或いは脱酸する。粗HCFC−244bb流を脱塩化水素する場合には、Cr、Sb/C、FeCl、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、及びこれらの組合せから選択される脱塩化水素触媒を含む気相反応器を用いる。
【0028】
[0033]図の式2に示すように、粗HCFC−244bb流を液相反応器内で脱塩化水素する場合には、塩基水溶液を用いる。塩基水溶液は、好ましくはNaOH又はKOHのいずれかである。HFO−1234yf、HCl、及び未反応のHCFC−244bbを含む流出流を吸収装置内で脱酸し、乾燥し、圧縮して蒸留系列に供給する場合には、HFO−1234yfが回収され、未反応のHCFC−244bbは脱塩化水素反応器に再循環する。好ましくは、未反応のHCFC−244bbの一部は、HCFC−1233xfをパージするために液相反応器に再循環する。HFO−1234yf、未反応のHCFC−244bb、及び水蒸気を含む流出流を乾燥し、圧縮し、蒸留系列に供給する場合には、HFO−1234yfが回収され、未反応のHCFC−244bbは脱塩化水素反応器に再循環する。好ましくは、未反応のHCFC−244bbの一部は、HCFC−1233xfをパージするために液相反応器に再循環する。
【0029】
[0034]本発明の統合プロセスの1つの好ましい態様の詳細な記載を以下に与える。
(1)図(式1)において「R−1工程1反応器」と示される、触媒を含む単一の反応器、又は多段階反応器、又は一連の複数の反応器を用い、気相中において、1つ又は複数の再循環流、新しいHF、及び新しいTCPの組合せを用いて、TCPを2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFC−1233xf)にフッ化水素化する。好ましい態様においては、反応は、TCPのHCFC−1233xfへの少なくとも50%の転化率、好ましくは80〜85%の転化率を与えるのに有効な条件下において行い、HFとTCPとのモル比は約20:1であり、反応温度は約300℃であり、圧力は約120psigである。
【0030】
(2)HCFC−1233xf、HCl、過剰のHF、及び未反応のTCP、並びに中間体を含む上記(1)の反応器の流出流を冷却し、この流れを、未反応のTCP及び中間体並びに過剰のHFを(1)に再循環するために分離するためのクエンチ/再循環カラム中に供給し;HCFC−1233xf、HCl、及びHFを、図(式1)において「R−2工程2反応器」と示される液相反応器に供給する(3)。
【0031】
(3)HCFC−1233xf、HCl、及びHFを、HCFC−1233xfを1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(HCFC−244bb)にフッ化水素化するための触媒(上記に列記した触媒の選択肢を参照)を含む液相反応器に供給する。好ましい態様においては、反応は、HCFC−1233xfのHCFC−244bbへの少なくとも96%の転化率、好ましくは98%の転化率を与えるのに有効な条件下において行い、HFとTCPとのモル比は約20:1であり、反応温度は約85℃であり、圧力は約100psigである。
【0032】
(4)HCFC−244bb、HCl、未反応のHCFC−1233xf、及びHFの混合物を、未反応のHF及び触媒の殆どを反応器に再循環して戻すように用いられる触媒ストリッパーを通して液体反応器システムから排出する。
【0033】
(5)触媒ストリッパーからの流出流は、上記(3)において示すように合計で98%の転化率を達成するために、HCFC−1233xfをHCFC−244bbに更に転化するためのSbCl/C触媒を含む床に通すことができる。
【0034】
(6)触媒ストリッパー(4)からの流出流、又はSbCl/C床(5)からの流出流をHClカラムに供給して、HCFC−244bb、HCFC−1233xf、HF、及びHClの混合物から実質的に純粋なHClを塔頂流中に分離する。
【0035】
(7)上記(6)からの実質的に純粋なHCl生成物は、そのまま回収するか、或いは残留HFを除去するためにシリカゲルに通して水中に吸収させることができる。
(8)上記(6)からのHCFC−244bb、HCFC−1233xf、HFの混合物をHF回収システムに供給して、有機物質に富む流れ及びHFに富む流れを分離する。かかる方法には、相分離及びHFの硫酸中への選択的吸収が含まれる。
【0036】
(9)最小量のHFを含む有機流は、脱塩化水素反応器に直接供給するか、或いは更に脱酸した後に下記の脱塩化水素反応器(10)に供給する。
(10)HCFC−244bb流を、脱塩化水素触媒を含む気相反応器を用いて脱塩化水素する。好ましい態様においては、反応は、HCFC−244bbのHFO−1234yfへの少なくとも20%の転化率、好ましくは少なくとも50%の転化率を与えるのに有効な条件下において行い、反応温度は約400℃であり、圧力は約15psigである。場合によっては、この流れは、液相反応器において、NaOH又はKOHのような塩基水溶液の存在下、約50℃の温度で脱塩化水素することができる。図の式2を参照。
【0037】
(11)気相脱塩化水素反応器を用いる場合には、HFO−1234yf、HCl、及び未反応のHCFC−244bbを含む上記(10)からの流出流は、吸収装置(KOH又はNaOHスクラビング)内で脱酸し、3Aモレキュラーシーブ又は他の好適な乾燥剤を用いて乾燥し、圧縮し、蒸留系列に供給して、そこでHFO−1234yfを回収し、未反応のHCFC−244bbを上記の脱塩化水素反応器(10)に再循環する。未反応のHCFC−244bbの一部は、HCFC−1233xfのこの部分をパージするために液相反応器(3)に再循環することができる。
【0038】
(12)液相脱塩化水素反応器を用いる場合には、HFO−1234yf、未反応のHCFC−244bb、及び水蒸気を含む上記(10)からの流出流は、好適な乾燥剤によって乾燥し、圧縮し、蒸留系列に供給して、ここでHFO−1234yfを回収し、未反応のHCFC−244bbを上記の脱塩化水素反応器(10)に再循環する。未反応のHCFC−244bbの一部は、HCFC−1233xfのこの部分をパージするために液相反応器(3)に再循環することができる。
【実施例】
【0039】
[0035]以下の非限定的な実施例は予測であり、本発明を示すための標準的なプロセスシミュレーション及び物理特性予測法から得られた結果を示す。下表において、
「R−1入口」は、第1のフッ化水素化反応器へ供給される流れである。
【0040】
「R−1出口」は、好ましい条件下で運転する反応器によって得られる流出流である。
「塔頂クエンチ」及び「R−1再循環」は、それぞれ、蒸留塔(その主目的は、第1のフッ化水素化反応器に再循環して戻すために反応生成物からTCP及びHFを分離することである)から排出される塔頂及び塔底流である。
【0041】
【表1】

【0042】
[0036]下表において、
「R−2入口」は、第2のフッ化水素化反応器に供給される流れである。
「R−2出口」は、好ましい条件下で運転する反応器によって得られる流出流である。
【0043】
「回収HCl」は、蒸留塔(その主目的は反応物質及び反応生成物の混合物からHClを分離することである)からの塔頂流である。
「R−2再循環」は、プロセスのHF回収セクションから得られる流れである。これは、上記の蒸留塔の塔底流をHF回収にかけることによって得られる流れである。
【0044】
【表2】

【0045】
[0037]下表において、
「R−3入口」は、脱塩化水素反応器へ供給される流れである。
「R−3出口」は、好ましい条件下で運転する反応器によって得られる流出流である。
【0046】
「1234yf生成物」は、精製系列から回収される生成物である。
「R−3再循環」は、精製系列から得られる流れである。この実施例においては、この流れは脱塩化水素反応に再循環する。場合によっては、その一部(又はその全部)を第2のフッ化水素化反応器に再循環してHCFC−1233xf含量を減少させることができる。
【0047】
【表3】

【0048】
[0038]好ましい態様を参照して本発明を特に示し且つ記載したが、発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことができることは、当業者に容易に認められるであろう。特許請求の範囲は、開示されている態様、上記で議論したそれらの代替物、及びそれらの全ての均等物をカバーするように解釈すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R−1)TCP(テトラクロロプロペン)を、気相中で、その後の工程よりも高い圧力においてHCFC−1233xfにフッ化水素化し、次に(R−2)HCFC−1233xfを、液相中、又は液相中で次に気相中でHCFC−244bbにフッ化水素化し、次に(R−3)液相又は気相中で脱塩化水素してHFO−1234yfを生成させることを含む3つの統合工程でTCPからHFO−1234yfを製造する方法。
【請求項2】
気相フッ化水素化を液相フッ化水素化よりも高い圧力で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TCP、HF、及び再循環流を、Cr、Sb/C、FeCl、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/C、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、及びCoCl/AlFからなる群から選択される触媒を含む気相反応器に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応から生成するHClを液相フッ化水素化セクションに供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
気相中でのTCPのHCFC−1233xfへのフッ化水素化を、単一の反応器、多段階反応器、又は一連の複数の反応器からなる群から選択される反応器内において、再循環流、新しいHF、及び新しいTCPの組合せを用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液相中でのHCFC−1233xfのHCFC−244bbへのフッ化水素化が、HCFC−1233xf、HCl、過剰のHF、及び未反応のTCP、並びに中間体を含む反応器流出流を、未反応のTCP及び過剰のHFをプロセスの工程(R−1)において再循環使用するために分離するためのクエンチ/再循環カラム中に供給することによって処理することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
HCFC−1233xf、HCl、及びHFを、HCFC−1233xfを1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパン(HCFC−244bb)へフッ化水素化するためのSbCl、SbCl、SbF、TiCl、SnClから選択される触媒を含む液相反応器に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
液相中でのHCFC−1233xfのHCFC−244bbへのフッ化水素化が、HCFC−1233xf及びHCFC−244bbを含む反応器流出流を、HCFC−1233xfをプロセスの工程(R−2)において再循環使用するために分離するためのクエンチ/再循環カラム中に供給することによって処理することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
HCFC−244bb、HCl、未反応のHCFC−1233xf及びHFの混合物を、未反応のHF及び触媒の殆どを反応器に再循環して戻すように用いる触媒ストリッパーを通して液体反応器システムから排出する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒ストリッパーからの流出流を、HCFC−1233xfをHCFC−244bbに更に転化させるための触媒を含む床に通してもよい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
触媒が炭素上に担持されているSbClである、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510148(P2013−510148A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537902(P2012−537902)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053486
【国際公開番号】WO2011/056441
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】