説明

フルオロナフタレン誘導体及びこれを含有する液晶組成物。

【課題】 本願発明の解決課題はΔεが負の化合物において、より大きいΔεの絶対値を有し、より大きいΔnの値を有し、他の液晶材料との相溶性に優れ、高い液晶性を示すとともに粘度の低い化合物を提供し、また当該化合物を用いた実用的な液晶組成物を及び液晶表示素子を提供することである。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


で表されるフルオロナフタレン誘導体及びこれを含むネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用なフルオロナフタレン誘導体、及びこれを含有する液晶組成物、更にそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、低消費電力、薄型表示等の優れた特徴から現在広く用いられている。
液晶表示素子の表示方式にはTN(ねじれネマチック)、STN(超ねじれネマチック)、又はTNをベースにしたアクティブマトリックス(TFT:薄膜トランジスタ)等があり、これらはΔεが正の液晶組成物を利用するものである。しかし、これら表示方式の欠点の一つとして視野角の狭さがあり、液晶パネルの大型化の要求に伴い、その改善が大きな課題であった。
【0003】
この解決策として、垂直配向方式及びIPS(インプレインスイッチング)方式等の表示方式が実用化された。垂直配向方式は液晶分子を垂直配向させ、これをマルチドメイン化することにより視野角の改善を図った方式であり、誘電率異方性値(Δε)が負の液晶組成物を使用する。またIPS方式は、ガラス基板に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせることで視野角の改善を図った方法であり、Δεが正又は負の液晶組成物が使用される。このように、視野角改善のために有効な表示方式である垂直配向方式及びIPS方式にはΔεが負である液晶組成物が必要である。更に、こうした液晶表示素子は主に動画表示用途に用いられるため、表示品位を向上させるために応答速度を改良しなければならない。応答速度の向上には、液晶組成物のΔεの絶対値を大きくし、かつ粘度を小さくする必要がある。しかし、Δεの絶対値を増大させる化合物は、組成物の粘度も増大させる化合物が多く様々な化合物の開発が進められてきた。
【0004】
また、応答速度を上げる他の方法として、液晶表示素子のセル厚(d)を薄くするという方法があるが、表示品位を考慮した場合、屈折率異方性値(Δn)とセル厚の積であるレターデーション(d・Δn)の適正値を逸脱してはならない。すなわち屈折率異方性値とセル厚の積を一定に保ちながらセル厚を薄くすることが必要になり、液晶組成物の屈折率異方性値を大きくするため、大きなΔnを示す液晶材料が強く要望されている。しかし、Δnを増大させる効果を有する化合物もまた、組成物の粘度を増大させる傾向があり、従来の化合物はこれらの要求特性を満足するには至っていない。
【0005】
Δεは分子長軸方向の誘電率(ε‖)と分子短軸方向の誘電率(ε⊥)の差として定義される値(Δε=ε‖−ε⊥)であり、ε⊥の値を大きくするとΔεが負でその絶対値が大きくなる。誘電率の値を大きくするには分子内に電子吸引性基を導入することが有効である。このためε⊥の値を大きくするには、分子短軸方向に電子吸引性基を導入すればよい。Δεが負の液晶組成物構成成分として使用される液晶材料として、2,3−ジフルオロフェニレン基を有する式(A−1)で表される化合物(特許文献1)及び式(A−2)で表される化合物(特許文献2)が挙げられる。
【0006】
【化1】

【0007】
これら化合物は電子吸引性基であるフッ素原子を分子短軸方向に方向をそろえて導入した構造をとっている。これら化合物自体のΔεは記載されていないため不明であるが、これらを添加した液晶組成物のΔεは負の値を示している。しかし、その絶対値は十分大きいものではなかった。
【0008】
更に分子内にフッ素原子を導入し、3個のフッ素原子を分子中に持つ、2,2’,3’−トリフルオロビフェニル骨格を有する式(A−3)及び(A−4)
【0009】
【化2】

【0010】
で表される化合物が開発され、絶対値の大きい負のΔεを有する化合物として報告されている(特許文献3)。
【0011】
しかしながら、これらの化合物は他の液晶化合物との相溶性が低く、液晶組成物とした際に、液晶組成物から析出してしまう等の問題を有していた。また比較的高い粘度を示すことから、応答速度の低下を招くという問題点があった。
【0012】
また、更にΔεの絶対値を大きくするために分子内のフッ素原子数を4個とした式(A−5)
【0013】
【化3】

【0014】
で表される化合物も記載されている(特許文献3)が、ΔεやΔnに関しての具体的な記載はなく、その特性は未知のものであった。
【0015】
以上のように、液晶組成物の粘度を低減し、かつΔε及びΔnを増大させる化合物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特表平2−503441号公報
【特許文献2】特開平10−176167号公報
【特許文献3】WO1999/21816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、Δεが負の化合物において、大きいΔεの絶対値を有し、大きいΔnの値を有し、他の液晶材料との相溶性に優れ、高い液晶性及び信頼性を示すとともに液晶組成物の粘度を低減する化合物を提供し、また当該化合物を用いた実用的な液晶組成物及び液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、種々のフルオロナフタレン誘導体、これを用いたネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子を検討した結果、本件発明を完成するに至った。
【0019】
本発明は、一般式(I)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R及びRは、それぞれ独立的に炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、炭素原子数1〜12のアルコキシル基又は炭素原子数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、それぞれの基中の1個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの基中の1個又は隣接していない2個以上の−CH−はそれぞれ独立的に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−に置換されていてもよく、
及びAは、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は無置換であるか1個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表し、
、X、X、X4、、X、X及びXは、それぞれ独立的に水素原子またはフッ素原子を表すが、X、X、X、X及びXのうち少なくとも4個はフッ素原子を表しかつX、X及びXは水素原子を表すか、あるいはX、X、X、X及びXのうち少なくとも4個はフッ素原子を表しかつX、X及びXは水素原子を表し、
、Y及びYは、それぞれ独立的に単結合、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−C−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し、
p及びqは、それぞれ独立的に0又は1を表すが、pが0を表す場合にはYは単結合を表し、qが0を表す場合にはYは単結合を表す。)で表されるフルオロナフタレン誘導体、一般式(I)で表されるフルオロナフタレン誘導体を1種又は2種以上含有する液晶組成物及びそれを使用した液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の一般式(I)で表される化合物は、Δεが負であって極めて大きい絶対値を有する。また、Δnが極めて大きい値を有するとともに低い粘度を示す。このため一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は高速応答が可能である。更に、熱、光及び水等に対し、化学的に安定であり、現在汎用されている液晶化合物あるいは液晶組成物との相溶性及び液晶性に優れているため、低電圧駆動が可能である実用的な液晶組成物の成分として適しており、これを用いた垂直配向方式及びIPS方式等の液晶表示素子は低電圧で駆動可能であり、更に表示特性も優れていることがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明において、一般式(I)におけるR及びRは、それぞれ独立的に炭素原子数1〜7の直鎖状のアルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状のアルケニル基、炭素原子数1〜7の直鎖状のアルコキシル基又は炭素原子数2〜7の直鎖状のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜7の直鎖状のアルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状のアルケニル基又は炭素原子数1〜7の直鎖状のアルコキシル基が好ましく、粘度を低くするにはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ビニル基、2-プロペニル基及び3-ブテニル基がより好ましく、誘電率異方性の絶対値を大きくするには炭素原子数1〜7の直鎖状のアルコキシル基が好ましく、更にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基及びペンチルオキシ基がより好ましい。
【0024】
及びAは、それぞれ独立的に、溶解性を改善するにはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、Δnを大きくするには1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基が好ましく、Δεの絶対値を大きくするには2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基が好ましい。
【0025】
、X、X、X、X、X、X及びXは、Δεの絶対値を大きくするにはX、X、X、X及びXがフッ素原子を表しかつX、X及びXが水素原子を表すか、X、X、X、X及びXがフッ素原子を表しかつX、X及びXが水素原子を表す構造であることが好ましい。
【0026】
、Y及びYは、溶解性を改善するには単結合、−C−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−CFO−、又は−OCF−が好ましく、粘度を低くするには単結合、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−が好ましく、単結合が更に好ましい。Δnを大きくするには−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−が好ましく、Δεの絶対値を大きくするには−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、―COO−又は−OCO−が好ましく、Yについては特に−CHO−、−CFO−、―COO−又は−OCO−が好ましく、Yについては特に−OCH−、−OCF−又は−OCO−が好ましく、信頼性を高めるためには、単結合、−C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−が好ましい。
pとqは、他の液晶との相溶性を改善するにはp+qが0または1を表す化合物が好ましい。
【0027】
一般式(I)で表される化合物は、具体的には下記の一般式(Ia−1)〜一般式(Ic−9)で表される化合物が特に好ましい。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
一般式(I)で表される化合物を一種又は二種以上用いた液晶組成物は特に共存させる化合物に制限はないが、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物の他の成分として、一般式(II)
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R21及びR22はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基を表し、それぞれの基中の1個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの基中の1個又は隣接していない2個以上の−CH−はそれぞれ独立的に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−に置換されていてもよく、
21、M22及びM23はそれぞれ独立的に
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基及び
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、
oは0、1又は2を表し、
21、及びL22はそれぞれ独立的に単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CH=CH−、−CH=N−N=CH−又は−C≡C−を表し、L22が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、M23が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良い。)
で表される化合物を含有していても良い。
【0034】
一般式(II)におけるR21及びR22はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基(これらの基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置換されたもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されたものも含む。)が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数3〜6のアルケニルオキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基が特に好ましい。
【0035】
21、M22及びM23はそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH2基又は隣接していない2個のCH基が酸素原子に置換されているものを含む)、1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の−CH=は−N=に置換されているものを含む)、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基が好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、又は1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基がより好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は1,4−フェニレン基が特に好ましい。oは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましい。L21、及びL22はそれぞれ独立的に単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−、−CH=CH−、−CH=N−N=CH−又は−C≡C−が好ましく、単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−又は−CHO−がより好ましく、単結合、又は−CHCH−が更に好ましい。更に詳述すると、一般式(II)は、具体的な構造として以下の一般式(II−A)から一般式(II−P)からなる群で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化9】

【0037】
(式中、R23及びR24は、それぞれ独立的に炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数3〜10のアルケニルオキシ基を表す。)
R23及びR24は、それぞれ独立的に炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基がより好ましく、炭素原子数1〜5の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数1〜5の直鎖状のアルコキシ基が更に好ましい。
【0038】
一般式(II−A)から一般式(II−P)で表される化合物中、一般式(II−A)、一般式(II−B)、一般式(II−C)、一般式(II−E)、一般式(II−H)、 一般式(II−I)、一般式(II−I)、又は一般式(II−K)で表される化合物が好ましく、一般式(II−A)、一般式(II−C)、一般式(II−E)、一般式(II−H)又は一般式(II−I)で表される化合物が更に好ましい。
【0039】
本願発明では一般式(II)で表される化合物を含有する場合、1種〜10種含有することが好ましく、2種〜8種含有することが特に好ましく、一般式(II)で表される化合物の含有率の下限値は5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることが更に好ましく、30質量%であることが特に好ましく、上限値としては80質量%が好ましく、70質量%が更に好ましく、60質量%が更に好ましい。
【0040】
更に一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)
【0041】
【化10】

【0042】
(式中R41、R42、R43、R44、R45及び、R46はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基を表し、それぞれの基中の1個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの基中の1個又は隣接していない2個以上の−CH−はそれぞれ独立的に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−に置換されていてもよく、
41、M42、M43、M44、M45、M46、M47、M48、及びM49はそれぞれ独立的に、
(g) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(h) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)及び、
(i) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及びデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(g)、基(h)又は基(i)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、
41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48、及びL49はそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−又は−C≡C−を表し、M42、M43、M45、M46、M48、M49、L41、L43、L44、L46、L47及び/又はL49が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、
41、X42はそれぞれ独立的にトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はフッ素原子を表し、X43、X44、X45、X46、X47、及びX48はそれぞれ独立的に水素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はフッ素原子を表すが、X41及びX42の何れか一つはフッ素原子を表し、X43、X44、及びX45の何れか一つはフッ素原子を表し、X46、X47、及びX48の何れか一つはフッ素原子を表すが、X46、及びX47、は同時にフッ素原子を表すことはなく、X46、及びX48は同時にフッ素原子を表すことはない、
Gは−CH−又は−O−を表し、
u、v、w、x、y、及びzはそれぞれ独立的に、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下である。)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を一種又は二種以上含有していても良い。
【0043】
一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)で表される化合物におけるR41、R42、R43、R44、R45及びR46はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数1〜15の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数2〜15のアルケニル基(これらの基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置換されているもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されているものも含む。)が好ましく、炭素原子数1〜10の直鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状のアルコキシ基又は炭素原子数2〜10の直鎖状のアルケニル基がより好ましく、炭素原子数1〜8の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシ基が特に好ましい。M41、M42、M43、M44、M45、M46、M47、M48及びM49はそれぞれ独立的に、トランス-1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の−CH−は−O−又は−S−に置き換えられているものも含む。)、1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられているものも含む)、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及びデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基で表す基(各々の基に含まれる水素原子がそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されているものも含む。)が好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基がより好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基が更に好ましく、トランス−1,4−シクロへキシレン基が特に好ましい。L41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48及びL49はそれぞれ独立的に単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCO−、−COO−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−又は−C≡C−が好ましく、単結合、−CHCH−、−OCH−、又は−CHO−がより好ましい。X41、X42、X43、X44、X45、X46、及びX47はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し、Gは−CH−又は−O−を表し、u、v、w、x、y及びzはそれぞれ独立的に、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下で表す。
【0044】
一般式(IIIa)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IIIa−1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0045】
【化11】

【0046】
(式中、R47及びR48はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、L50、L51及びL52はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−又は−C≡C−を表し、M50は1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、u及びvは、それぞれ独立して0又は1を表す。)
更に具体的には以下の一般式(IIIa−2a)〜一般式(IIIa−3i)
【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
(式中、R47及びR48は、それぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましく、R47及びR48がそれぞれ独立して炭素原子数1〜8の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数1〜8の直鎖状のアルコキシル基が更に好ましい。
【0050】
一般式(IIIb)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IIIb−1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0051】
【化14】

【0052】
(式中、R49及びR50はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、L52、L53及びL54はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−又は−C≡C−を表し、M51、M52及びM53は1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、w1及びx1は、独立して0、1又は2を表すが、w1+x1は2以下を表す。)
更に具体的には以下の一般式(IIIb−2a)〜(IIIb−3f)
【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
(式中、R49及びR50は、それぞれ独立して炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましく、R49及びR50がそれぞれ独立して炭素原子数1〜8の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数1〜8の直鎖状のアルコキシル基が更に好ましい。
【0056】
一般式(IIIc)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IIIc−1a)及び一般式(IIIc−1b)で示される構造を表すことが好ましい。
【0057】
【化17】

【0058】
(式中、R51及びR52はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、L56、L57及びL58はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−OCF−、−CFO−又は−C≡C−を表し、M54、M55及びM56は1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、y1及びz1は、独立して0、1又は2を表すが、y1+z1は2以下を表す。)
更に具体的には以下の一般式(IIIc−2a)〜(IIIc−2g)
【0059】
【化18】

【0060】
(式中、R51及びR52はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表す。)で示される構造を表すことが好ましく、R51及びR52がそれぞれ独立して炭素原子数1〜8の直鎖状のアルキル基又は炭素原子数1〜8の直鎖状のアルコキシル基が更に好ましい。
【0061】
本願発明で一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を含有する場合、2種〜10種含有することが好ましく、2種〜8種含有することが特に好ましく、含有率の下限値が5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることがより好ましく、上限値が80質量%であることが好ましく、70質量%であることが好ましく、60質量%であることが好ましく、50質量%であることが好ましい。
【0062】
本願発明の液晶組成物において、Δnは0.08〜0.25の範囲であることが好ましい。
【0063】
本願発明の液晶組成物は、広い液晶相温度範囲(液晶相下限温度と液晶相上限温度の差の絶対値)を有するが、液晶相温度範囲が100℃以上であることが好ましく、120℃以上がより好ましい。また、液晶相上限温度は70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましい。更に、液晶相下限温度は−20℃以下であることが好ましく、−30℃以下がより好ましい。
【0064】
本願発明の液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよい。更に、要求に応じて、光学活性化合物、安定剤、モノマー及び帯電防止剤等を添加することができる。
【0065】
本願発明の液晶組成物は、その複屈折を利用して光の透過光量を制御する本願発明の液晶表示素子に使用される。本願発明の液晶表示素子としては、TN−LCD(ネマチック液晶表示素子)、STN−LCD(超ねじれネマチック液晶表示素子)、OCB−LCD、TFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶表示素子)、VA−LCD(垂直配向液晶表示素子)、IPS−LCD(インプレーンスイッチング液晶表示素子)が好ましいが、TFT−LCD、VA−LCD及びIPS−LCDが特に好ましい。また、本願発明の液晶表示素子はPSA(Polymer Sustained Aligment)型液晶表示素子とすることもできる。
【0066】
本願発明の液晶表示素子に使用される液晶セルの2枚の基板はガラス、又はプラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
【0067】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0068】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。1.5から10μmが更に好ましく、偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0069】
2枚の基板間に液晶組成物を狭持させるに方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。
【0070】
本願発明において、一般式(I)で表される化合物について、製造例を以下に挙げる。勿論本願発明の主旨、及び適用範囲は、これら製造例により制限されるものではない。
【0071】
(製法1) アルコール(IX)
【0072】
【化19】

【0073】
(式中、X1、X2、Y1、A1及びR1は一般式(I)におけるX1、X2、Y1、A1及びR1と同じ意味を表し、pは0又は1を表す。)に、ピリジン、トリエチルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、ジアザビシクロオクタンなどの塩基存在下、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p-トルエンスルホニル、塩化メタンスルホニル又は塩化トリフルオロメタンスルホニルなどを作用させるか、あるいは硫酸酸性下、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を作用させるか、あるいは塩化チオニル、臭化チオニルを作用させるか、あるいは三塩化リン、五塩化リン、三臭化リンを作用させるか、あるいはトリフェニルホスフィン存在下、四塩化炭素、四臭化炭素を作用させるなどして、一般式(X)
【0074】
【化20】

【0075】
(式中、X1、X2、Y1、A1及びR1は一般式(I)におけるX1、X2、Y1、A1及びR1と同じ意味を表し、pは0又は1を表し、Wは塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基又はトリフルオロメタンスルホニル基などの脱離基を表す。)で表される化合物を得る。得られた一般式(X)で表される化合物と一般式(XI)
【0076】
【化21】

【0077】
(式中、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y3、A2及びR2は一般式(I)におけるX3、X4、X5、X6、X7、X8、Y3、A2及びR2と同じ意味を表し、qは0又は1を表す。)で表されるフェノールを金属ナトリウム、金属カリウム、金属セシウム、あるいはその炭酸塩、水酸化物、水素化物などの存在下、反応させることにより、一般式(I−1)
【0078】
【化22】

【0079】
(式中、A1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3は一般式(I)におけるA1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3と同じ意味を表し、p及びqは0又は1を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0080】
(製法2) 一般式(IX)
【0081】
【化23】

【0082】
(式中、X1、X2、Y1、A1及びR1は一般式(I)におけるX1、X2、Y1、A1及びR1と同じ意味を表し、pは0又は1を表す。)で表される化合物と一般式(XI)
【0083】
【化24】

【0084】
(式中、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y3、A2及びR2は一般式(I)におけるX3、X4、X5、X6、X7、X8、Y3、A2及びR2と同じ意味を表し、qは0又は1を表す。)で表される化合物をアゾジカルボン酸エステル、トリフェニルホスフィン存在下、反応させることにより、一般式(I−1)
【0085】
【化25】

【0086】
(式中、A1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3は一般式(I)におけるA1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3と同じ意味を表し、p及びqは0又は1を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0087】
(製法3) 一般式(XII)
【0088】
【化26】

【0089】
(式中、X1、X2、Y1、A1及びR1は一般式(I)におけるX1、X2、Y1、A1及びR1と同じ意味を表し、pは0又は1を表し、Zは塩素、臭素及びヨウ素などの脱離基を表す。)で表されるカルボン酸誘導体と一般式(XI)で表されるフェノールを塩基存在下に反応させ、一般式(I−2)
【0090】
【化27】

【0091】
(式中、A1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3は一般式(I)におけるA1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3と同じ意味を表す。)で表されるエステルを得る。これをローソン試薬で処理し、更にN-ブロモスクシンイミド等の酸化剤の存在下、フッ化水素-ピリジン等のフッ素化剤によりフッ素化して一般式(I−3)
【0092】
【化28】

【0093】
(式中、A1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3は一般式(I)におけるA1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3と同じ意味を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0094】
(製法4) 一般式(XIII)
【0095】
【化29】

【0096】
(式中、R1は一般式(I)におけるR1と同じ意味を表す。)で表されるシクロヘキサノンに一般式(XIV)
【0097】
【化30】

【0098】
(式中、A2、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y2及びY3は一般式(I)におけるA2、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y2及びY3と同じ意味を表す。)で表されるグリニア反応剤を作用させた後、酸触媒による脱水、水素添加により一般式(I−4)
【0099】
【化31】

【0100】
(式中、R1、A2、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y2及びY3は一般式(I)におけるR1、A2、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y2及びY3と同じ意味を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0101】
(製法5) 一般式(XV)
【0102】
【化32】

【0103】
(式中、X1、X2、Y1、A1及びR1は一般式(I)におけるX1、X2、Y1、A1及びR1と同じ意味を表し、pは0又は1を表す。)で表されるアルデヒドに、一般式(XVI)
【0104】
【化33】

【0105】
(式中、A2、R2、X3、X4、X5、X6、X7、X8及びY3は一般式(I)におけるA2、R2、X3、X4、X5、X6、X7、X8及びY3と同じ意味を表す。)で表されるグリニア反応剤を作用させた後、酸触媒による脱水、水素添加により一般式(I−5)
【0106】
【化34】

【0107】
(式中、A1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3は一般式(I)におけるA1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3と同じ意味を表し、pは0又は1を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【0108】
(製法6) 一般式(XVII)
【0109】
【化35】

【0110】
(式中、X1、X2、Y1、A1及びR1は一般式(I)におけるX1、X2、Y1、A1及びR1と同じ意味を表し、pは0又は1を表し、Wは塩素、臭素、ヨウ素、ベンゼンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基又はトリフルオロメタンスルホニル基などの脱離基を表す。)で表されるベンゼン誘導体と一般式(XVIII)
【0111】
【化36】

【0112】
(式中、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y3、A2及びR2は一般式(I)におけるX3、X4、X5、X6、X7、X8、Y3、A2及びR2と同じ意味を表し、qは0又は1を表す。)で表されるボロン酸誘導体を、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(II)等のパラジウム、あるいはニッケル系遷移金属触媒存在下、塩基性条件にてカップリング反応を行うことにより、一般式(I−6)
【0113】
【化37】

【0114】
(式中、A1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3は一般式(I)におけるA1、A2、R1、R2、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、Y1及びY3と同じ意味を表し、pは0又は1を表す。)で表される化合物を得ることができる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例を挙げて本願発明を更に詳述するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。化合物の構造は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量スペクトル(MS)等により確認した。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0116】
化合物記載に下記の略号を使用する。
Me : メチル基
Et : エチル基
Pr : プロピル基
Bu : ブチル基
Pen : ペンチル基
THF : テトラヒドロフラン
(実施例1) 6-ブトキシ-2-(4-プロピルオキシ-2,3-ジフルオロフェニル)-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−A)の製造
【0117】
【化38】

【0118】
6-ブトキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフトール47.0gをジクロロメタン150mLに溶解させた後5℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物32mL及びピリジン17.5mLを20℃以下で滴下した。この反応溶液を10℃で1時間攪拌した後、水200mLを加えた。水層からジクロロメタンで抽出し、集めた有機層を3M塩酸、水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、トリフルオロメタンスルホン酸=6-ブトキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフチルを微黄色の固体として得た(76g)。
【0119】
【化39】

【0120】
ジイソプロピルアミン30.5gをTHF 240mLに溶解させた。この溶液を-10℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.6 mol/L ヘキサン溶液)170mLを-3℃以下を保ちながら滴下した後、30分撹拌した。この反応溶液に対し、2,3-ジフルオロプロピルオキシベンゼン35g 及びホウ酸トリイソプロピル56.5gをTHF100mLに溶かした溶液を-4℃以下を保ちながら滴下し、-10℃で1時間撹拌した。この反応溶液を0℃に昇温し、10%塩酸500mLを滴下した。有機層を分離した後、更に有機相を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機相に無水硫酸ナトリウムを加え脱水した後、固形分をろ取し得られた溶液から減圧下溶媒を留去し、2,3-ジフルオロ-4-プロピルオキシフェニルホウ酸を薄黄色の固体として得た(48g)。
【0121】
次に、得られたトリフルオロメタンスルホン酸=6-ブトキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフチル20.0g及び2,3-ジフルオロ-4-プロピルオキシフェニルホウ酸10.5gとともに、トリフェニルホスフィン0.53g、炭酸カリウム10.4g,及び水37mLをTHF60mLに溶解した。得られた溶液に酢酸パラジウム(II)217mgを加え、更に5時間加熱還流した後に室温に冷却した。10%塩酸50mL及びトルエン60mLを加え有機相を分取した。水層から更にトルエンで2回抽出し、得られた有機層を併せ、水、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムにより脱水した後、溶媒を減圧留去し、得られた固形分をトルエンに溶解し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ/シリカゲル、トルエン)を用いて精製し、溶媒を減圧留去し、更に再結晶(アセトン/メタノール)することにより白色結晶として6-ブトキシ-2-(4-プロピルオキシ-2,3-ジフルオロフェニル)-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I-A)を得た(13.23g)。
相転移温度(℃) Cry 107 Iso
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ: 1.01 (t, J=7.2Hz, 3H), 1.09 (t, J=7.2Hz, 3H), 1.52-1.59 (m, 2H), 1.81-1.92 (m, 4H), 4.07 (t, J=6.4Hz, 2H), 4.22 (t, J=6.4Hz, 2H), 6.82-6.86 (m, 1H), 7.1-7.54 (m, 2H), 7.56 (m, 2H),
EI-MS:424[M+]
(実施例2) 6-ブトキシ-2-(4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチルオキシ)-2,3-ジフルオロフェニル)-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−B)の製造
【0122】
【化40】

【0123】
4-ブロモ-2,3-ジフルオロ-1-(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチルオキシ)ベンゼン15gをTHF 75mLに溶解させた後-50℃に冷却し、n-ブチルリチウム(1.6 mol/L ヘキサン溶液)31mLを-50℃以下を保ちながら滴下した後、-50℃で30分撹拌した。この反応溶液に対し、ホウ酸トリメチル5.6gをTHF15mLに溶かした溶液を-50℃以下を保ちながら滴下した後、-50℃で30分撹拌した。反応溶液を0℃まで昇温させ、6M塩酸18mLを加えて反応を停止した後、室温で1時間撹拌した。有機層を分離し、さらに水層からトルエンで抽出した。集めた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、2,3-ジフルオロ-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチルオキシ)フェニルホウ酸を薄黄色固体として得た(14.5g)。
【0124】
次に、実施例1で得られたトリフルオロメタンスルホン酸=6-ブトキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフチル15.5g及び2,3-ジフルオロ-4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)メチルオキシフェニルホウ酸12.7gとともに、トリフェニルホスフィン0.40g、炭酸カリウム8.0g,及び水29mLをTHF60mLに溶解させ、この溶液に酢酸パラジウム(II)170mgを加えた。反応溶液を8時間加熱還流した後に室温に冷却した。10%塩酸50mL及びトルエン60mLを加え有機相を分離した後、更に水層からトルエンで2回抽出し、集めた有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒を減圧留去し、得られた固体をトルエンに溶解した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ/シリカゲル、トルエン)を用いて精製し、溶媒を減圧留去し、再結晶(アセトン/メタノール)することにより白色結晶として6-ブトキシ-2-(4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシルメチルオキシ)-2,3-ジフルオロフェニル)-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−B)を得た(13.04g)。
相転移温度(℃) Cry 114 N 167 Iso
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ: 0.97-1.35 (m, 15H), 1.52-1.59 (m, 2H), 1.80-1.86 (m, 5H), 1.92-1.95 (m, 2H), 3.89 (d, J=6.4Hz, 2H), 4.22 (t, J=6.4Hz, 2H), 6.81-6.84 (m, 1H), 7.16-7.31 (m, 2H), 7.52-7.56 (m, 2H),
EI-MS:520[M+]
(実施例3) 2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)フェニルジフルオロメチルオキシ)-6-プロピルオキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−C)の合成
【0125】
【化41】

【0126】
マグネシウムをTHFに懸濁した溶液に、4-ブロモメチル-2,3-ジフルオロ-1-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)ベンゼンのTHF溶液を、撹拌しながら滴下した後、更に撹拌し、グリニヤール試薬を調製した。この溶液に二硫化炭素を滴下した。更に攪拌した後、希塩酸を加えて反応を停止させ、トルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して、2,3-ジフルオロ-4-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)チオカルボキシベンゼンを得た。
【0127】
水素化ナトリウムのTHF懸濁液に、3-ジフルオロ-4-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)チオカルボキシベンゼンのテトラヒドロフラン溶液を滴下し、更に撹拌した。この反応液に6-プロピルオキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフトールのテトラヒドロフランの溶液を滴下し、更に撹拌した。この反応液に、ヨウ素のTHF溶液を滴下し、更に撹拌した後、室温まで戻し同温度で一晩撹拌した。反応液を、希塩酸に注ぎ、トルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、6-プロピルオキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフチル=2,3-ジフルオロ-4-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)チオベンゾエートを得た。
【0128】
N−ブロモスクシンイミドのジクロロメタン懸濁液を−78℃に冷却し、フッ化水素−ピリジンを滴下し、撹拌した。この反応液に上記の6-プロピルオキシ-3,4,5-トリフルオロ-2-ナフチル=2,3-ジフルオロ-4-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)チオベンゾエートのジクロロメタン溶液を滴下し、更に撹拌した。反応液を飽和炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ反応を終了させ、ジクロロメタン相を分離し、亜硫酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、溶媒を留去して2-(2,3-ジフルオロ-4-(2-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)エチル)フェニル)ジフルオロメチルオキシ-6-プロピルオキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−C)を得た。
EI-MS:570[M+]
(実施例4) 2-(2-(2,3-ジフルオロ-4-ペンチルオキシフェニル)エテニル)-6-プロポキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−D)の製造
【0129】
【化42】

【0130】
窒素雰囲気下、攪拌しながら2-ブロモ-6-プロポキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレンから調製したグリニア反応剤を2,3-ジフルオロ-4-ペンチルオキシフェニルアセトアルデヒドのTHF溶液に滴下した。反応終了後、トルエンで抽出し、水及び飽和食塩水で洗滌した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。溶媒を留去後に得られたアルコールをトルエンに溶解し、p-トルエンスルホン酸を加え、水の留出がなくなるまで加熱還流した。水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2-(2-(2,3-ジフルオロ-4-ペンチルオキシフェニル)エテニル)-6-プロポキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−D)を得た。
EI-MS:464[M+]
(実施例5) 2-(2-(2,3-ジフルオロ-4-ペンチルオキシフェニル)エチル)-6-プロポキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−E)の製造
【0131】
【化43】

【0132】
実施例4で得られた(I−D)を酢酸エチルに溶解し、Pd/Cを加え、水素加圧下で攪拌した。Pd/Cを濾別後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2-(2-(2,3-ジフルオロ-4-ペンチルオキシフェニル)エチル)-6-プロポキシ-3,4,5-トリフルオロナフタレン(I−E)を得た。
EI-MS:466[M+]
(実施例6) 液晶組成物の調製(1)
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H−A)
【0133】
【化44】

【0134】
を調製した。ここで(H−A)の物性値は以下の通りであった。
【0135】
ネマチック相上限温度(TN-I): 103.2℃
誘電率異方性(Δε): 0.03
屈折率異方性(Δn): 0.099
粘度(η20): 16.1 mPa/sec
このホスト液晶組成物(H−A)95%と実施例1で得られた式(I−A)で表される化合物5%からなる液晶組成物(M−A)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りであった。
【0136】
ネマチック相上限温度(TN-I): 100.6℃
誘電率異方性(Δε): −0.46
屈折率異方性(Δn): 0.105
粘度(η20): 17.0 mPa/sec
本願発明の式(I−A)で表される化合物を含有する液晶組成物(M−A)は、ホスト液晶組成物(H−A)に比べ、Δεは大きく減少して負の値となった。このことから、本願発明の式(I−A)で表される化合物は、Δεが負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかった(Δε:−9.77(外挿値))。また、Δnはホスト液晶組成物(H−A)に比べて大きくなったことから、本願発明の式(I−A)で表される化合物は、そのΔnが大きいことが分かった(Δn:0.218(外挿値))。
【0137】
また、液晶組成物(M−A)を-20℃で1週間放置したが、ネマチック相を示してこのことから本願発明の式(I−A)で表される化合物は他の液晶材料に対する優れた相溶性を有することがわかった。ネマチック相上限温度(TN-I)も100.6℃と高い液晶性を示すことがわかった。
【0138】
更に、液晶組成物(M−A)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H−A)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから、本願発明の化合物(I−A)は信頼性の面からも液晶材料として十分使用可能であることがわかった。
【0139】
(実施例7) 液晶組成物の調製(2)
実施例6で調製したホスト液晶組成物(H−A)95%と実施例2で得られた式(I−B)で表される化合物5%からなる液晶組成物(M−B)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りであった。
【0140】
ネマチック相上限温度(TN-I): 105.4℃
誘電率異方性(Δε): -0.41
屈折率異方性(Δn): 0.104
粘度(η20): 17.1 mPa/sec
本願発明の式(I−B)で表される化合物を含有する液晶組成物(M−B)は、ホスト液晶組成物(H−A)に比べ、Δεは大きく減少して負の値となった。このことから、本願発明の式(I−B)で表される化合物は、Δεが負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかった(Δε:−8.77(外挿値))。また、Δnはホスト液晶組成物(H−A)に比べて大きくなったことから、本願発明の式(I−B)で表される化合物は、そのΔnが大きいことが分かった(Δn:0.198(外挿値))。
【0141】
また、(M−B)を-20℃で1週間放置したがネマチック相を示しており、結晶の析出等は見られなかった。このことから本発明の式(I−B)で表される化合物は他の液晶材料に対する優れた相溶性を有することがわかった。ネマチック相上限温度(TN-I)も105.4℃と高い液晶性を示すことがわかった。
【0142】
更に、(M−B)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H−A)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから本願発明の化合物(I−B)は信頼性の面からも液晶表示材料として十分使用可能であることがわかった。
(実施例8) 液晶組成物の調製(3)
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H−B)
【0143】
【化45】

【0144】
を調製した。ここで(H−B)の物性値は以下の通りであった。
【0145】
ネマチック相上限温度(TN-I): 80℃
誘電率異方性(Δε): -3.5
屈折率異方性(Δn): 0.087
このホスト液晶組成物(H−B)90%と実施例1で得られた式(I−A)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−C)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りであった。
【0146】
ネマチック相上限温度(TN-I): 76.7℃
誘電率異方性(Δε): -4.1
屈折率異方性(Δn): 0.099
本願発明の式(I−A)で表される化合物を含有する液晶組成物(M−C)は、ホスト液晶組成物(H−B)に比べ、Δεは大きく減少して負の値となった。このことから、本願発明の式(I−A)で表される化合物は、Δεが負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかった。また、Δnはホスト液晶組成物(H−B)に比べて大きくなったことから、本願発明の式(I−A)で表される化合物は、そのΔnが大きいことが分かった。
【0147】
また、液晶組成物(M−C)を-20℃で1週間放置したが、ネマチック相を示していた。このことから本願発明の式(I−A)で表される化合物は他の液晶材料に対する優れた相溶性を有することがわかった。ネマチック相上限温度(TN-I)も76.7℃と高い液晶性を示すことがわかった。
【0148】
更に、液晶組成物(M−C)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H−B)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから、本願発明の化合物(I−A)は信頼性の面からも液晶材料として十分使用可能であることがわかった。
(実施例9) 液晶組成物の調製(4)
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H−C)
【0149】
【化46】

【0150】
を調製した。ここで(H−C)の物性値は以下の通りであった。
【0151】
ネマチック相上限温度(TN-I): 85℃
誘電率異方性(Δε): -3.4
屈折率異方性(Δn): 0.094
このホスト液晶組成物(H−C)90%と実施例1で得られた式(I−A)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−D)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りであった。
【0152】
ネマチック相上限温度(TN-I): 81.6℃
誘電率異方性(Δε): -4.0
屈折率異方性(Δn): 0.103
本願発明の式(I−A)で表される化合物を含有する液晶組成物(M−D)は、ホスト液晶組成物(H−C)に比べ、Δεは大きく減少して負の値となった。このことから、本願発明の式(I−A)で表される化合物は、Δεが負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかった。また、Δnはホスト液晶組成物(H−C)に比べて大きくなったことから、本願発明の式(I−A)で表される化合物は、そのΔnが大きいことが分かる。
【0153】
また、液晶組成物(M−D)を-20℃で1週間放置したが、ネマチック相を示していた。このことから本願発明の式(I−A)で表される化合物は他の液晶材料に対する優れた相溶性を有することがわかった。ネマチック相上限温度(TN-I)も81.6℃と高い液晶性を示すことがわかった。
【0154】
更に、液晶組成物(M−D)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H−C)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから、本願発明の化合物(I−A)は信頼性の面からも液晶材料として十分使用可能であることがわかった。
(実施例10) 液晶組成物の調製(5)
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H−D)
【0155】
【化47】

【0156】
を調製した。ここで(H−D)の物性値は以下の通りであった。
【0157】
ネマチック相上限温度(TN-I): 72℃
誘電率異方性(Δε): -3.3
屈折率異方性(Δn): 0.086
このホスト液晶組成物(H−D)90%と実施例1で得られた式(I−A)で表される化合物10%からなる液晶組成物(M−E)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りであった。
【0158】
ネマチック相上限温度(TN-I): 69.9℃
誘電率異方性(Δε): -3.9
屈折率異方性(Δn): 0.096
本願発明の式(I−A)で表される化合物を含有する液晶組成物(M−E)は、ホスト液晶組成物(H−D)に比べ、Δεは大きく減少して負の値となった。このことから、本発明の式(I−A)で表される化合物は、Δεが負であり、その絶対値が極めて大きいことがわかった。また、Δnはホスト液晶組成物(H−D)に比べて大きくなったことから、本発明の式(I−A)で表される化合物は、そのΔnが大きいことが分かった。
【0159】
また、液晶組成物(M−E)を-20℃で1週間放置したが、ネマチック相を示していた。このことから本願発明の式(I−A)で表される化合物は他の液晶材料に対する優れた相溶性を有することがわかった。ネマチック相上限温度(TN-I)も69.9℃と高い液晶性を示すことがわかった。
【0160】
更に、液晶組成物(M−E)の電圧保持率を80℃で測定したところ、ホスト液晶組成物(H−D)の電圧保持率に対して98%以上と高い値を示した。このことから、本願発明の化合物(I−A)は信頼性の面からも液晶材料として十分使用可能であることがわかった。
【0161】
(比較例1)
式(A−3)及び式(A−4)
【0162】
【化48】

【0163】

で表される化合物と実施例1で得られた本願発明の式(I−A)で表される液晶化合物ののΔε及びΔnを外挿値により比較を行った。
【0164】
特許文献3の記載より式(A−3)のΔεは−7.37であり、Δnは0.155であった。また、式(A−4)のΔεは−6.84であり、Δnは0.176であった。
【0165】
これに対して、実施例1で得られた本願発明の式(I−A)で表される液晶化合物のΔεは実施例6に示したように−9.77であることから、本願発明の液晶化合物のΔεの絶対値は従来公知の化合物と比較して、1.33倍も大きな値であることがわかった。
【0166】
また、実施例1で得られた本願発明の式(I−A)で表される液晶化合物のΔnは実施例6に示したように0.218であることから、本願発明の液晶化合物のΔεの絶対値は従来公知の化合物と比較して、1.24倍も大きな値であることがわかった。
【0167】
(比較例2)
式(A−5)
【0168】
【化49】

【0169】
で表される化合物と実施例1で得られた本願発明の式(I−A)で表される液晶化合物ののΔε及びΔnを外挿値により比較を行った。
【0170】
式(A−5)で表される化合物を製造し、実施例6で調製したホスト液晶組成物(H−A)95%と式(A−5)で表される化合物5%からなる液晶組成物(M−F)を調製した。この組成物の物性値は以下の通りである。
【0171】
ネマチック相上限温度(TN-I): 103.0℃
誘電率異方性(Δε): -0.31
屈折率異方性(Δn): 0.102
粘度(η20): 17.6 mPa/sec
上記結果から式(A−5)で表される化合物のΔεは−6.8であり、Δnは0.158であることがわかる。これに対して、本願発明の式(I−A)で表される液晶化合物のΔεの値は−9.8であり、Δnの値は0.218であることから、本願発明の液晶化合物のΔεの絶対値は式(A−5)で表される化合物と比較して、1.44倍も大きく、また、Δnも1.38倍も大きな値を示した。
【0172】
更に、液晶組成物(M−F)は実施例6記載の液晶組成物(M−A)及び実施例7記載の液晶組成物(M−B)と比べ、粘度が大きいことがわかる。このことから、本願化合物を液晶組成物に添加すると粘度を増大させずに、Δε及びΔnを改善できることがわかった。
【0173】
比較例1及び比較例2の結果を比較すると、上記の式(A−5)で表される化合物のΔεの値(−6.8)は、比較例で示した式(A−3)及び(A−4)で表される化合物のΔεの値と同程度の値である。このため、ビフェニル系化合物に3個以上フッ素原子を導入しても結局は負のΔεの絶対値はそれ以上大きくならないということがわかった。これに対して、本願化合物のようにナフタレン化合物においては、フッ素原子を導入することで、更にΔεの絶対値を大きくすることが出来るということがわかった。ナフタレン骨格は、3個以上のフッ素原子を同一環上に導入することが出来ることからΔεの絶対値を大きくすることが出来ると考えられる。このように本願化合物は非常に有用な化合物であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立的に炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、炭素原子数1〜12のアルコキシル基又は炭素原子数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、それぞれの基中の1個以上の水素原子はそれぞれ独立的にフッ素原子に置換されていてもよく、またそれぞれの基中の1個又は隣接していない2個以上の−CH−はそれぞれ独立的に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−に置換されていてもよく、
及びAは、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又は無置換であるか1個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表し、
、X、X、X4、、X、X及びXは、それぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表すが、X、X、X、X及びXのうち少なくとも4個はフッ素原子を表しかつX、X及びXは水素原子を表すか、あるいはX、X、X、X及びXのうち少なくとも4個はフッ素原子を表しかつX、X及びXは水素原子を表し、
、Y及びYは、それぞれ独立的に単結合、−OCH−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−C−、―COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し、
p及びqは、それぞれ独立的に0又は1を表すが、pが0を表す場合にはYは単結合を表し、qが0を表す場合にはYは単結合を表す。)で表されるフルオロナフタレン誘導体。
【請求項2】
一般式(I)において、A及びAが、それぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基又は2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基を表す請求項1記載のフルオロナフタレン誘導体。
【請求項3】
一般式(I)において、Y、Y及びYが、単結合、−C−、−OCH−、−CHO−、−CFO−又は−OCF−を表す請求項1又は2記載のフルオロナフタレン誘導体。
【請求項4】
一般式(I)において、X、X、X、X及びXがフッ素原子を表しかつX、X及びXが水素原子を表すか、あるいはX、X、X、X及びXがフッ素原子を表しかつX、X及びXが水素原子を表す請求項1〜3のいずれか1項に記載のフルオロナフタレン誘導体。
【請求項5】
p+qが0または1を表す請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルオロナフタレン誘導体。
【請求項6】
が、単結合を表す請求項1〜5のいずれか1項に記載のフルオロナフタレン誘導体。
【請求項7】
及びRが、それぞれ独立的に炭素原子数1〜7の直鎖状のアルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状のアルケニル基、炭素原子数1〜7の直鎖状のアルコキシル基又は炭素原子数2〜7の直鎖状のアルケニルオキシ基を表す請求項1〜6のいずれか1項に記載のフルオロナフタレン誘導体。
【請求項8】
請求項1〜7記載の一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項9】
請求項8記載の液晶組成物を使用する液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−25667(P2012−25667A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162765(P2010−162765)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】