説明

フルオロビニル誘導体、液晶組成物及び液晶表示素子

【課題】液晶性化合物に必要な一般的物性、すなわち熱、光などに対する安定性、小さな粘度、適切大きさの屈折率異方性値、適切な大きさの誘電率異方性値および急峻な電気光学特性、ネマチック相の広い温度範囲、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物、特に広いネマチック温度範囲を有する液晶性化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物。


式中、Rは炭素数2〜20のアルケニルであり;環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−、または−OCH−であり;nは0または1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な広いネマチックレンジを有することを特長とする液晶化合物および液晶組成物に関する。更に詳しくは広いネマチック温度範囲、低い粘性、他の液晶化合物との良好な相溶性を持ち、加えて適切な大きさの屈折率異方性値および誘電率異方性値を有し、液晶表示素子に使用した場合には高速な応答特性を得ることができる新規液晶性化合物、これを含有する液晶組成物および該液晶組成物を含むことからなる。
【背景技術】
【0002】
液晶性化合物(本願において、液晶性化合物なる用語は、液晶相を示す化合物および液晶相を示さないが液晶組成物の構成成分として有用である化合物の総称として用いられる。)を用いた表示素子は、時計、電卓、ワ−プロなどのディスプレイに広く利用されている。これらの表示素子は液晶性化合物の屈折率異方性、誘電率異方性などを利用したものである。
【0003】
液晶相には、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相があるが、ネマチック液晶相を利用したものが最も広く用いられている。また表示方式としては動的散乱(DS)型、配向相変形(DAP)型、ゲスト/ホスト(GH)型、ねじれネマチック(TN)型、超ねじれネマチック(STN)型、薄膜トランジスタ(TFT)型、垂直配向(VA)型、インプレ−ンスイッチング(IPS)型、高分子支持配向(PSA)型などがある。
【0004】
これらの表示方式で用いられる液晶性化合物は、室温を中心とする広い温度範囲で液晶相を示し、表示素子が使用される条件下で十分に安定であり、さらに表示素子を駆動させるに十分な特性を持たなくてはならないが、現在のところ単一の液晶性化合物でこの条件を満たすものは見いだされていない。
【0005】
このため数種類から数十種類の液晶性化合物を混合することにより要求特性を備えた液晶組成物を調製しているのが実状である。これらの液晶組成物は、表示素子が使用される条件下で通常存在する水分、光、熱、空気に対して安定であり、また電場や電磁放射に対しても安定であるうえ、混合される化合物に対し化学的にも安定であることが要求される。また、液晶組成物には、その屈折率異方性値(Δn)および誘電率異方性値(Δε)などの諸物性値が表示方式や表示素子の形状に依存して適当な値をもつことが必要とされる。さらに液晶組成物中の各成分は、相互に良好な溶解性を持つことが重要である。
【0006】
良好な液晶表示を行うためにはそれを構成する液晶表示素子のセル厚みと使用される液晶材料のΔnの値は一定であることが好ましい(E.Jakemanら、Pyhs.Lett.,39A.69(1972))。また、液晶表示素子の応答速度は用いられるセルの厚みの二乗に反比例する。それ故、動画等の表示にも応用できる高速応答可能な液晶表示素子を製造するには大きなΔnの値を有する液晶組成物を持ちなくてはならない。大きなΔnの値を有する液晶単体成分として種々の化合物開発がおこなわれたが、一般的に、かような大きなΔnを有する化合物は高度に共役した分子構造を有するが、その他の液晶材料との相溶性が悪い傾向があり、良好な電気特性を有する液晶組成物の構成要素として用いにくい。さらに、薄膜トランジスタ方式の液晶表示素子等の高い絶縁性(比抵抗)を要求される液晶組成物の構成要素として用いられる液晶化合物には高い安定性を要求される。
【0007】
これらの問題を解決すべく液晶表示素子に用いることができる化合物として、側鎖にフルオロビニル基、ジフルオロビニル基、アルケニル基を持つ化合物が種々合成されている。例えば、特許文献1に式(S−1)〜(S−3)で示される化合物が、特許文献2には式(S−4)示される化合物が、特許文献3には式(S−5)で示される化合物が、特許文献4には式(S−6)で示される化合物が、また、特許文献5には式(S−7)で示される化合物が開示されている。
【0008】
しかし、式(S−1)、(S−2)、(S−4)、および(S−6)で示される化合物は、ネマチック温度範囲が最も大きいものでも46℃であり、式(S−3)および(S−7)で示される化合物はネマチック相が発現しない。式(S−5)で示される化合物の物性は開示されていない。いづれにしても、これらの既知化合物では、広いネマチック温度範囲、低い粘性、及び他の液晶化合物との良好な相溶性を同時に満足できない。
【0009】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平02−184642号公報
【特許文献2】特開平09−291048公報
【特許文献3】特開平10−45639公報
【特許文献4】特開昭59−176221公報
【特許文献5】特開2003−286208公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、広いネマチック温度範囲、低い粘性、他の液晶化合物との良好な相溶性を持ち、加えて適切な大きさの屈折率異方性値および誘電率異方性値を有し、液晶表示素子に使用した場合には高速な応答特性を得ることができる新規液晶性化合物と、これを含有する液晶組成物および該液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記従来技術の欠点を解消するために鋭意研究を遂行した結果、フルオロビニルとアルケニルを両末端に有するシクロヘキサン化合物(1)が極めて広いネマチック温度範囲、低い粘性、他の液晶化合物との良好な相溶性を持つことを見出した。従って、上記化合物は液晶表示素子、特に現在広く利用されているTN、STN、TFTなどの液晶表示素子に好適であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
具体的には、式(1)で表される化合物。


式中、Rは炭素数2〜20のアルケニルであり;環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−、または−OCH−であり;nは0または1である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、公知の同様な構造の化合物に比べ、広いネマチック温度範囲をもち、他の液晶材料との相溶性に優れかつ低粘度である。また、類似の化合物と比較し、低いしきい値電圧を有するうえ比較的低粘度を示す。さらに本発明化合物は液晶表示素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に十分安定であり、ネマチック液晶組成物の構成成分として極めて優れ、TN型、STN型、TFT型、VA型、IPS型、およびPSA型用の液晶組成物の構成成分として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、以下の項[1]〜項[14]などである。
[1] 式(1)で表される化合物。


式中、Rは炭素数2〜20のアルケニルであり;環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−、または−OCH−であり;nは0または1である。
【0016】
[2] 式(1)において、Rが炭素数2〜20のアルケニルであり、環Aが1,4−シクロヘキシレンであり、Zが単結合であり、そしてnが0である、項[1]に記載の化合物。
【0017】
[3] 項[1]または[2]に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【0018】
[4] 式(2)、(3)および(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項[3]に記載の液晶組成物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素である。
【0019】
[5] 式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[3]に記載の液晶組成物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環B、環Bおよび環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
は、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素であり;
qは、0、1または2であり、rは0または1である。
【0020】
[6] 式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[3]に記載の液晶組成物。


式中、RおよびRは独立して炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
環C、環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、6−ピラン−2,5−ジイルまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;
およびLは独立してフッ素または塩素であり;
j、k、l、m、n、およびpは独立して、0または1であり、k、l、m、およびnの和は、1または2である。
【0021】
[7] 式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[3]に記載の液晶組成物。


式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよいが、−CH=CHFを除く;
環D、環Dおよび環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−または単結合である。
【0022】
[8] 項[5]に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[4]に記載の液晶組成物。
【0023】
[9] 項[7]に記載の式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[4]に記載の液晶組成物。
【0024】
[10] 項[7]に記載の式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[5]に記載の液晶組成物。
【0025】
[11] 項[7]に記載の式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する項[6]に記載の液晶組成物。
【0026】
[12] 少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する項[3]〜[11]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0027】
[13] 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含有する項[3]〜[12]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0028】
[14] 項[3]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0029】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)から式(14)において、六角形で囲んだB、D、Eなどの記号はそれぞれ環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。環A、X、環Bなど複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらで選択される基は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0030】
化学式(1)のうち、Rによって示されるアルケニルとして具体的には、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどのアルケニル、ブタジエニルなどのアルカジエニルなどを挙げることができる。
【0031】
本発明の化合物(1)は、該式中のRに所定の基を導入することにより得られるが、このような基の導入は公知の一般的な有機合成法により行い得る。代表的な合成例は、新実験化学講座 14 有機化合物の合成と反応(1978年)丸善、第四版 実験化学講座 19〜26 有機合成I〜VIII(1991)丸善などに記載の方法をあげることができる。
【0032】
フルオロビニル基を生成する方法の一例に関して、最初にスキームを示し、次に項(I)〜項(II)でスキームを説明する。このスキームにおいて、Rは前記と同じ定義である。

【0033】
(I)ジフルオロビニル基の生成
公知の方法で合成されるアルケニル化合物(1A)とジブロモジフルオロメタンとを、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィンの存在下で反応させて化合物(1B)を合成する。
【0034】
(II)フルオロビニル基の生成
ジフルオロビニル化合物(1B)に水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムを反応させてフルオロビニル化合物(1)を得る。
【0035】
本発明の液晶組成物は、本発明の化合物(1)を成分Aとして含む必要がある。この成分Aのみの組成物、または成分Aと本明細書中で特に成分名を示していないその他の成分との組成物でもよいが、この成分Aに以下に示す成分B、C、DおよびE成分から選ばれた成分を加えることにより種々の特性を有する本発明の液晶組成物が提供できる。
【0036】
成分Aに加える成分として、式(2)、(3)および(4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分B、および/または式(5)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分C、および/または式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Dを混合したものが好ましい。さらに式(12)、(13)および(14)からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物からなる成分Eを混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値および粘度等を調整することができる。
【0037】
また、本発明に使用される液晶組成物の各成分は、各元素の同位体元素からなる類縁体でもその物理特性に大きな差異がない。
【0038】
上記成分Bのうち、化合物(2)の好適例として、化合物(2−1)〜(2−16)、化合物(3)の好適例として、化合物(3−1)〜(3−112)、化合物(4)の好適例として化合物(4−1)〜(4−54)を挙げることができる。
【0039】

【0040】


















































【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】


式中、RおよびXは前記と同じ定義である。
【0047】
これらの化合物(2)〜(4)すなわち成分Bは、誘電率異方性値が正であり、熱安定性や化学的安定性が非常に優れているので、TFT用およびPSA用の液晶組成物を調製する場合に用いられる。本発明の液晶組成物における成分Bの含有量は、液晶組成物の全重量に対して、1〜99重量%の範囲が適し、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また化合物(12)〜(14)(成分E)をさらに含有させることにより粘度調整をすることができる。
【0048】
化合物(5)すなわち成分Cのうちの好適例として、化合物(5−1)〜(5−64)を挙げることができる。

【0049】

【0050】


式中、RおよびXは前記と同じ定義である。
【0051】
これらの化合物(5)すなわち成分Cは、誘電率異方性値が正でその値が非常に大きいのでSTN用、TN用、PSA用の液晶組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Cを含有させることにより、組成物のしきい値電圧を小さくすることができる。また、粘度の調整、屈折率異方性値の調整および液晶相温度範囲を広げることができる。さらに急峻性の改良にも利用できる。
【0052】
STNまたはTN用の液晶組成物を調製する場合には、成分Cの含有量は0.1〜99.9重量%の範囲が適用でき、好ましくは10〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%である。また、後述の成分を混合することによりしきい値電圧、液晶相温度範囲、屈折率異方性値、誘電率異方性値及び粘度などを調整できる。
【0053】
化合物(6)〜(11)からなる成分Dは、垂直配向モ−ド(VAモ−ド)、高分子支持配向モード(PSAモ−ド)などに用いられる誘電率異方性が負の本発明の液晶組成物を調製する場合に、好ましい成分である。
【0054】
この化合物(6)〜(11)(成分D)の好適例として、化合物(6−1)〜(6−6)、(7−1)〜(7−15)、(8−1)、(9−1)〜(9−3)、(10−1)〜(10−11)、および(11−1)〜(11−10)を挙げることができる。
【0055】


【0056】


式中、RおよびRは前記と同じ定義である。
【0057】
これら成分Dの化合物は主として誘電率異方性の値が負であるVAモ−ド、PSAモード用の液晶組成物に用いられる。その含有量を増加させると組成物のしきい値電圧が低くなるが、粘度が大きくなるので、しきい値電圧の要求値を満足している限り含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、誘電率異方性値の絶対値が5程度であるので、含有量が40重量%より少なくなると電圧駆動ができなくなる場合がある。
【0058】
成分Dのうち化合物(6)は2環化合物であるので、主としてしきい値電圧の調整、粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果がある。また、化合物(7)および(8)は3環化合物であるので、透明点を高くする、ネマチックレンジを広くする、しきい値電圧を低くする、屈折率異方性値を大きくするなどの効果が得られる。また、化合物(9)、(10)および(11)はしきい値電圧を低くするなどの効果が得られる。
【0059】
成分Dの含有量は、VAモ−ド、PSAモード用の組成物を調製する場合には、組成物全量に対して、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50〜95重量%である。また、成分Dを混合することにより、弾性定数をコントロ−ルし、組成物の電圧透過率曲線を制御することが可能となる。成分Dを誘電率異方性値が正である組成物に混合する場合はその含有量が組成物全量に対して30重量%以下が好ましい。
【0060】
化合物(12)、(13)および(14)(成分E)の好適例として、化合物(12−1)〜(12−11)、(13−1)〜(13−19)、および(14−1)〜(14−6)を挙げることができる。
【0061】

【0062】


式中、RおよびRは前記と同じ定義である。
【0063】
化合物(12)〜(14)(成分E)は、誘電率異方性値の絶対値が小さく、中性に近い化合物である。化合物(12)は主として粘度調整または屈折率異方性値の調整の効果があり、また化合物(13)および(14)は透明点を高くするなどのネマチックレンジを広げる効果、または屈折率異方性値の調整の効果がある。
成分Eである化合物の含有量を増加させると液晶組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が低くなるので、液晶組成物のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが望ましい。TFT用、PSA用の液晶組成物を調製する場合に、成分Eの含有量は、組成物全量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。また、TN用、STN用またはPSA用の液晶組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物全量に対して、好ましくは30%以上、より好ましくは40重量%以上である。
本発明の液晶組成物は、本発明の化合物(1)の少なくとも1つを0.1〜99重量%の割合で含有することが、優良な特性を発現せしめるために好ましい。
本発明の液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法などにより一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物を添加して、例えばつぎに述べるような光学活性化合物、または重合可能な化合物、重合開始剤を含む本発明の液晶組成物、染料を添加したGH型用の液晶組成物を調製することができる。通常、添加物は当該業者によく知られており、文献などに詳細に記載されている。
本発明の液晶組成物は、前述の本発明の液晶組成物にさらに1つ以上の光学活性化合物を含有してもよい。
光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加する。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を調整し、逆ねじれを防ぐといった効果を有する。キラルド−プ剤の例として以下の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0064】

【0065】
本発明の液晶組成物は、通常これらの光学活性化合物を添加して、ねじれのピッチを調整する。ねじれのピッチはTFT用およびTN用の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STN用の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。また、双安定TN(Bistable TN)モ−ド用の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で2種以上の光学活性化合物を添加しても良い。
【0066】
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH型用の液晶組成物として使用することもできる。
本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAPや、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)例えばポリマ−ネットワ−ク液晶表示素子(PNLCD)用をはじめ、複屈折制御(ECB)型やDS型用の液晶組成物としても使用できる。
【0067】
また、本発明の液晶組成物は重合可能な化合物を添加してPSA(Polymer sustained alignment)型用の液晶組成物として使用することもできる。重合可能な化合物の例はアクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、ビニルケトン、およびオキセタンなどの重合可能な基を有する化合物である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合される。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、またはDarocure1173(登録商標)(Ciba Japan K.K.)がラジカル重合に対して適切である。
[実施例]
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例によって制限されない。得られた化合物はNMRスペクトル、質量スペクトルなどで構造を同定した。これらによる測定方法は後述する方法に従った。なお、各実施例中において、Cは結晶を、SはスメクチックA相を、SはスメクチックB相を、SXは相構造未解析のスメクチック相を、Nはネマチック相を、Isoは等方相を示し、相転移温度の単位はすべて℃である。
【0069】
H−NMR分析:測定は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)製)を用いた。CDClなど重水素化されたサンプルが可溶な溶媒に溶解させた溶液を、室温にて核磁気共鳴装置を用いて測定した。なお、δ値のゼロ点の基準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0070】
ガスクロマトグラフ分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2ml/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μlを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R6A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【実施例1】
【0071】
4−((E)−2−フルオロビニル)−4’−((E)−プロぺ−1−エン−1−イル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)(1−1)を下記に示す合成スキームに従って合成した。

【0072】
(E)−4−(2,2−ジフルオロビニルl)−4’−(プロぺ−1−エン−1−イル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)(1−B)の合成
ジフルオロジブロモメタン(29.9g)をTHF(100ml)に溶解させ、氷浴窒素雰囲気下トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン(63.4g)THF(20ml)溶液、(E)−4’−(プロピ−1−レン−1−イル)−[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−4−カルバルデヒド(20.0g)THF(20ml)溶液の順に滴下した。反応終了後一規定塩酸を加え、トルエンにて抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および水にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して無色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン)、及びソルミックスA−11(登録商標)(日本アルコール販売株式会社)にて再結晶することにより、(1−B)を白色針状結晶として(7.7g)得た。
【0073】
4−((E)−2−フルオロビニル)−4’−((E)−プロぺ−1−エン−1−イル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)(1−1)の合成
上記操作で得られた化合物(1−B)(5.0g)をトルエン(50ml)に溶解させ、65%水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムトルエン溶液(8.0ml)を滴下した。反応終了後一規定塩酸を加え、トルエンにて抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および水にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して無色油状物を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン)、及びソルミックスA−11(登録商標)(日本アルコール販売株式会社)にて低温再結晶することにより、(1−1)を無色油状物として(1.2g)得た。
1H NMRδ 6.48 (1H, dd, J = 11.5, 86.4 Hz), 5.38-5.36 (2H, m), 5.29 (1H, ddd, J = 8.0, 11.2, 19.5 Hz), 1.83-1.63 (13H, m), 1.09-1.01 (10H, m); 19F NMR δ 134.77 (1F, dd, J = 20.1 85.9 Hz);
相転移温度は、C 0.1 N 101.9 Isoであった。
【0074】
物性値は下記組成例の項に記載した様に、15重量%の化合物および85重量%の母液晶を混合することによって試料を調製し、測定によって得られた値から外挿法によって算出した。外挿値=(試料の測定値−0.85×母液晶の測定値)/0.15。物性値は、NI=93.0℃,Δε=3.43,Δn=0.077,η=−7.7mPa・sであった。
【実施例2】
【0075】
(E)−4−(2−フルオロビニル)−4’−ビニル−1,1’−ビ(シクロヘキサン)(1−2)を実施例1に示した方法および記載した合成法と同様にして、無色針状結晶として(3.1g)得た。
1H NMR δ 6.49 (1H, dd, J = 11.7, 98.1 Hz), 5.77 (1H, ddd, J = 6.0, 10.0, 17.0 Hz), 5.29 (1H, ddd, J = 8.0, 11.0, 19.5 Hz), 4.95 (1H, d, J = 16.0 Hz), 4.87 (1H, d, J = 9.0 Hz), 1.88-1.73 (10H, m), 1.11-1.00 (10H, m); 19F NMR δ 134.72 (1F, dd, J = 20.2 85.9 Hz);
相転移温度は、C 1.0 N 61.3 Isoであった。
物性値は、NI=60.4℃,Δε=1.97,Δn=0.0637,η=−17.1mPa・sであった。
【実施例3】
【0076】
実施例1と同様な方法により、以下の化合物が製造できる。
化合物(1−3):(E)−4−(ブテ−3−エン−1−イル)−4’−(2−フルオロビニル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)
化合物(1−4):4−((E)−2−フルオロビニル)−4’−((E)−ペンタ−3−エン−1−イル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン)
【実施例4】
【0077】
本発明の代表的な組成物を組成例2〜11にまとめた。最初に、組成物の成分である化合物とその量(重量%)を示した。化合物は表1の取り決めに従い、左末端基、環構造、結合基、および右末端基の記号によって表示した。1,4−シクロヘキシレン、テトラヒドロピラニル−2,5−ジイルおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスである。末端基の記号がない場合は、末端基が水素であることを意味する。次に組成物の物性値を示した。
【0078】

【0079】
本発明の代表的組成の一例を以下に示す。物性値の測定方法は後述する方法に従った。
【0080】
[組成例1]
4つの化合物を混合して、ネマチック相を有する組成物A(母液晶)を調製した。
4つの化合物は、
4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(24%)、
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(36%)、
4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(25%)、
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−シアノビフェニル(15%)である。
【0081】
組成物Aの物性値は次のとおりであった。上限温度(NI)=71.7℃;粘度(η20)=27.0mPa・s;光学異方性(Δn)=0.137;誘電率異方性(Δε)=11.0。
【0082】
この組成物Aに実施例1に記載の4−((E)−2−フルオロビニル)−4’−((E)−プロピ−1−レン−1−イル)−1,1’−ビ(シクロヘキサン) (1−1)を15重量%添加して物性値を測定した。
その結果、上限温度(NI)=74.9℃;光学異方性(Δn)=0.128;誘電率異方性(Δε)=10.8であった。
【0083】
[比較例1]
組成例1に記載した組成物Aの85%と(E)−4−(2−フルオロビニル)−4’−プロピル−1,1’−ビ(シクロヘキサン) (S−1)の15%とからなる組成物を調製し、物性値の測定を行った。
物性値は、上限温度(NI)=72.1℃;光学異方性(Δn)=0.125;誘電率異方性(Δε)=9.8であった。また、化合物(S−1)の相転移温度は,C −10 S 43.6 N 78.4 Isoであった。この値は、化合物(1−1)の物性値と比較して、ネマチック温度範囲が狭く、上限温度が低く、誘電率異方性が小さい。
【0084】
[比較例2]
組成例1に記載した組成物Aの85%と4−(2,2−ジフルオロビニル)−4’−プロピル−1,1’−ビ(シクロヘキサン) (S−4)の15%とからなる組成物を調製し、物性値の測定を行った。
物性値は、上限温度(NI)=68.2℃;光学異方性(Δn)=0.124;誘電率異方性(Δε)=9.8であった。また、化合物(S−4)の相転移温度は、S 39.5 N 42.6 Isoであった。この値は、化合物(1−1)の物性値と比較して、ネマチック温度範囲が狭く、上限温度が低く、誘電率異方性が小さい。
【0085】
[比較例3]
組成例1に記載した組成物Aの85%と4−プロピル−4’−ビニル−1,1’−ビ(シクロヘキサン) (S−5)の15%とからなる組成物を調製し、物性値の測定を行った。
物性値は、上限温度(NI)=68.3℃;光学異方性(Δn)=0.122;誘電率異方性(Δε)=9.5であった。また、化合物(S−5)の相転移温度は、C −23.9 S 33.9 N 48.6 Isoであった。この値は(1−1)の物性値と比較して、ネマチック温度範囲が狭く、上限温度が低く、誘電率異方性が小さい。
【0086】
[比較例4]
組成例1に記載した組成物Aの85%と(E)−4−(プロペ−1−エン−1−イル)−4’−ビニル−1,1’−ビ(シクロヘキサン) (S−6)の15%とからなる組成物を調製し、物性値の測定を行った。
物性値は、上限温度(NI)=69.9℃;光学異方性(Δn)=0.126;誘電率異方性(Δε)=9.8であった。また、化合物(S−6)の相転移温度は、C −17.8 S 51.5 Isoであった。この値は、化合物(1−1)の物性値と比較して、ネマチック相が存在せず、上限温度が低く、誘電率異方性が小さい。
【0087】
特性値の測定は下記の方法にしたがって行うことができる。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0088】
転移温度(℃):次のいずれかの方法で測定した。1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料が相変化したときの温度を測定した。2)パーキンエルマー社製走査熱量計DiamondDSCシステムを用い3℃/分速度で測定した。
【0089】
結晶はCと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。スメクチック相はSと表した。結晶はNと表した。液体(アイソトロピック)はIsoと表した。ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、スメクチックC相またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれS、SまたはSと表した。転移温度の表記として、「C 92.9 N 196.9 Iso」とは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が92.9℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(NI)が196.9℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0090】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0091】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、Tを<−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0092】
化合物の相溶性:類似の構造を有する幾つかの化合物を混合してネマチック相を有する母液晶を調製した。測定する化合物とこの母液晶とを混合した組成物を得た。混合する割合の一例は、15%の化合物と85%の母液晶である。この組成物を−20℃、−30℃のような低い温度で30日間保管した。この組成物の一部が結晶(またはスメクチック相)に変化したか否かを観察した。必要に応じて混合する割合と保管温度とを変更した。このようにして測定した結果から、結晶(またはスメクチック相)が析出する条件および結晶(またはスメクチック相)が析出しない条件を求めた。これらの条件が相溶性の尺度である。
【0093】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0094】
粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):
1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルトから19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0095】
2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0096】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって光学異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと光学異方性を測定した。化合物の光学異方性は外挿値である。
【0097】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0098】
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0099】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した光学異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
【0100】
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0101】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0102】
成分または液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶性化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶性化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。
【0103】
特性値の測定において、化合物単体をそのまま試料として用いる場合、化合物を母液晶に混合し試料として用いる場合、そして組成物をそのまま試料として用いる場合の3通りの方法がある。化合物を母液晶に混合する場合は、次の方法をとる。15重量%の化合物および85重量%の母液晶を混合することによって試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。外挿値=(試料の測定値−0.85×母液晶の測定値)/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。
【0104】
測定で得られた値のうち、化合物単体をそのまま試料として用い得られた値と、組成物をそのまま試料として用いて得られた値は、そのままの値を実験データとして記載する。化合物を母液晶に混合し試料として用い得られた値は、そのままの値を実験データとして記載する場合もあるし、外挿法で得られた値を記載する場合もある。
【0105】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリーカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。成分化合物の重量%は各ピークの面積比と完全には同一ではない。しかし、本発明においては、これらのキャピラリーカラムを用いるときは、成分化合物の重量%は各ピークの面積比と同一であると見なしてよい。成分化合物における補正係数に大きな差異がないからである。
【0106】
[比較例5]
根拠は、この組成物が化合物(1−1)類似の化合物を含有するからである。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
3−HH−V (S−6) (1−1)類似 8%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HH−4 (12−1) 9%
3−HH−EMe (12−2) 15%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
4−HGB(F,F)−F (3−103) 5%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
2−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
3−H2GB(F,F)−F (3−106) 5%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 7%
NI=77.2℃;Δn=0.064;Δε=5.8.
【0107】
[組成例2]
[比較例5]の組成物の化合物(S−1)を化合物(1−1)に置き換えたところ、この[組成例2]の組成物は、[比較例1]の組成物と比較して、高い上限温度(NI)、大きな誘電率異方性(Δε)を有している点で優れていることがわかった。
1V−HH−VF (1−1) 8%
5−HB−CL (2−2) 3%
7−HB(F)−F (2−3) 7%
3−HH−4 (12−1) 9%
3−HH−EMe (12−2) 15%
3−HHEB−F (3−10) 8%
5−HHEB−F (3−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (3−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (3−12) 5%
4−HGB(F,F)−F (3−103) 5%
5−HGB(F,F)−F (3−103) 6%
2−H2GB(F,F)−F (3−106) 4%
3−H2GB(F,F)−F (3−106) 5%
5−GHB(F,F)−F (3−109) 7%
NI=80.0℃;Δn=0.066;Δε=6.1.
【0108】
[組成例3]
1V−HH−VF (1−1) 3%
V−HH−VF (1−2) 5%
2−BEB(F)−C (5−14) 5%
3−BEB(F)−C (5−14) 4%
4−BEB(F)−C (5−14) 12%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 14%
3−HB−O2 (12−5) 4%
3−HH−4 (12−1) 3%
3−HHB−F (3−1) 3%
3−HHB−1 (13−1) 8%
3−HHB−O1 (13−1) 4%
3−HBEB−F (3−37) 4%
3−HHEB−F (3−10) 7%
5−HHEB−F (3−10) 7%
3−H2BTB−2 (13−17) 4%
3−H2BTB−3 (13−17) 4%
3−H2BTB−4 (13−17) 4%
3−HB(F)TB−2 (13−18) 5%
NI=93.5℃;Δn=0.141;Δε=26.9;η=37.8mPa・s.
【0109】
[組成例4]
1V−HH−VF (1−1) 5%
V−HH−VF (1−2) 3%
1V2−BEB(F,F)−C (5−15) 5%
3−HB−C (5−1) 18%
2−BTB−1 (12−10) 10%
5−HH−VFF (12−1) 23%
3−HHB−1 (13−1) 4%
VFF−HHB−1 (13−1) 8%
VFF2−HHB−1 (13−1) 11%
3−H2BTB−2 (13−17) 5%
3−H2BTB−3 (13−17) 4%
3−H2BTB−4 (13−17) 4%
NI=84.3℃;Δn=0.131;Δε=6.0;η=11.1mPa・s.
【0110】
[組成例5]
1V−HH−VF (1−1) 3%
V−HH−VF (1−2) 3%
2−HB−C (5−1) 5%
3−HB−C (5−1) 12%
3−HB−O2 (12−5) 12%
2−BTB−1 (12−10) 3%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−1 (13−1) 8%
3−HHB−O1 (13−1) 5%
3−HHB−3 (13−1) 14%
3−HHEB−F (3−10) 4%
5−HHEB−F (3−10) 4%
2−HHB(F)−F (3−2) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 7%
5−HHB(F)−F (3−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (3−3) 5%
NI=102.2℃;Δn=0.100;Δε=4.5;η=16.6mPa・s.
【0111】
[組成例6]
1V−HH−VF (1−1) 4%
V−HH−VF (1−2) 3%
5−HB−CL (2−2) 10%
3−HH−4 (12−1) 12%
3−HH−5 (12−1) 4%
3−HHB−F (3−1) 4%
3−HHB−CL (3−1) 3%
4−HHB−CL (3−1) 4%
3−HHB(F)−F (3−2) 10%
4−HHB(F)−F (3−2) 9%
5−HHB(F)−F (3−2) 9%
7−HHB(F)−F (3−2) 8%
5−HBB(F)−F (3−23) 4%
1O1−HBBH−5 (14−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (4−6) 2%
5−HHBB(F,F)−F (4−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (4−15) 3%
NI=118.7℃;Δn=0.090;Δε=3.5;η=18.1mPa・s.
【0112】
[組成例7]
1V−HH−VF (1−1) 5%
V−HH−VF (1−2) 5%
3−HB−O1 (12−5) 14%
3−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 10%
2−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
3−HHB−1 (13−1) 4%
NI=87.6℃;Δn=0.091;η=33.4mPa・s;Δε=−3.0.
【0113】
[組成例8]
1V−HH−VF (1−1) 3%
V−HH−VF (1−2) 5%
3−H2B(2F,3F)−O2 (6−4) 22%
5−H2B(2F,3F)−O2 (6−4) 22%
2−HHB(2F,3CL)−O2 (7−12) 2%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (7−12) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (7−12) 2%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (7−12) 2%
3−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 9%
V−HHB−1 (13−1) 6%
3−HHB−3 (13−1) 6%
3−HHEBH−3 (14−6) 3%
3−HHEBH−4 (14−6) 3%
3−HHEBH−5 (14−6) 3%
NI=96.6℃;Δn=0.100;η=28.5mPa・s;Δε=−3.8.
上記組成物100重量部に光学活性化合物(Op−5)を0.25重量部添加したときのピッチは60.8μmであった。
【0114】
[組成例9]
1V−HH−VF (1−1) 4%
V−HH−VF (1−2) 3%
3−HB−O1 (12−5) 15%
3−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 10%
2−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
6−HEB(2F,3F)−O2 (6−6) 6%
NI=83.9℃;Δn=0.089;η=33.0mPa・s;Δε=−3.4.
【0115】
[組成例10]
1V−HH−VF (1−1) 14%
V−HH−VF (1−2) 8%
3−HB−O2 (12−5) 12%
3−H2B(2F,3F)−O2 (6−4) 15%
5−H2B(2F,3F)−O2 (6−4) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (7−12) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (7−7) 9%
3−HHB−1 (13−1) 3%
3−HHB−3 (13−1) 4%
3−HHB−O1 (13−1) 3%
NI=80.5℃;Δn=0.102;η=17.9mPa・s;Δε=−3.5.
【0116】
[組成例11]
1V−HH−VF (1−1) 3%
V−HH−VF (1−2) 6%
3−HB−O1 (12−5) 12%
3−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (6−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (7−1) 11%
3−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (7−1) 13%
3−HHB−1 (13−1) 6%
NI=88.4℃;Δn=0.092;η=34.2mPa・s;Δε=−3.2.
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、広いネマチック温度範囲を持ち、低い粘度、他の液晶材料との相溶性に優れる新規フルオロビニル化合物からなる液晶化合物を提供する。
また、本発明は、この液晶化合物を成分として、その化合物を構成する置換基などを適当に選択することにより、所望の物性を有する上記の特徴を備えた新たな液晶組成物を提供し、さらにこの液晶組成物を用いて構成した液晶表示素子を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式中、Rは炭素数2〜20のアルケニルであり;環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;ZおよびZは独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−CHO−、または−OCH−であり;nは0または1である。
【請求項2】
式(1)において、Rが炭素数2〜20のアルケニルであり、環Aが1,4−シクロヘキシレンであり、Zが単結合であり、そしてnが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【請求項4】
式(2)、(3)および(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項3に記載の液晶組成物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素である。
【請求項5】
式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項3に記載の液晶組成物。


式中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環B、環Bおよび環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1−ピラン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
は、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−C≡C−、−CHO−、または単結合であり;
およびLは独立して水素またはフッ素であり;
qは、0、1または2であり、rは0または1である。
【請求項6】
式(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項3に記載の液晶組成物。


式中、RおよびRは独立して炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、アルキルおよびアルケニルにおいて少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
環C、環C、環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、6−ピラン−2,5−ジイルまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、−(CH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、−OCF(CH−、または単結合であり;
およびLは独立してフッ素または塩素であり;
j、k、l、m、n、およびpは独立して、0または1であり、k、l、m、およびnの和は、1または2である。
【請求項7】
式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項3に記載の液晶組成物。


式中、RおよびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよいが、−CH=CHFを除く;
環D、環Dおよび環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−または単結合である。
【請求項8】
請求項5に記載の式(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項11】
請求項7に記載の式(12)、(13)および(14)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する請求項3〜11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含有する請求項3〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
請求項3〜13のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−236780(P2012−236780A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105027(P2011−105027)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)JNC石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】