説明

フルオロホスファゼン誘導体の製造方法

【課題】フルオロホスファゼンの安価で効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】メチルモノグライム、エチルモノグライム、プロピルモノグライム、ブチルモノグライム、メチルジグライム、エチルジグライム、プロピルジグライム、ブチルジグライム、メチルトリグライム、エチルトリグライム、メチルテトラグライムからなる群から選ばれる少なくとも1つのグライム類及び塩化合物の共存下、ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物と下記一般式[1]で表されるペルフルオロシクロポリホスファゼンとを反応させ、下記一般式[2]で表されるフルオロホスファゼン誘導体を得ることを特徴とするフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。
(PNF [1]
(式中、nは3〜14を表す。)
(PNR [2]
(式中、Rはそれぞれ互いに独立して、フッ素原子又はアルコキシ基であって、全Rの内少なくとも1つはアルコキシ基であり、nは3〜14である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロホスファゼン誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
N−P結合を有する化合物の中で、ホスファゼンと呼ばれる化合物は、難燃剤、耐熱材、触媒、分離剤や安定剤などに利用されている。中でも難燃剤や耐熱材に多く利用されており、近年では非水電解液にフルオロホスファゼン誘導体を添加し、非水電解液に難燃性を付与して、短絡等の非常時に電池が発火・引火する危険性を大幅に低減した非水電解液二次電池にも利用されている(特許文献1参照)。この特許文献によると、ペルフルオロシクロポリホスファゼンにアルコキシ基などを導入することで、フルオロホスファゼン誘導体を製造し、非水電解液に添加することで効果的な難燃剤になることを示している。上記特許文献1に開示のフルオロホスファゼンの製造方法は、ペルフルオロシクロポリホスファゼンにアルカリ金属アルコキシドを反応させるか、アルカリ金属塩化合物存在下でヒドロキシル基を有する化合物を反応させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/005479号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法においては、アルカリ金属アルコキシドを反応剤に用いた場合、反応の制御が難しく、複数箇所にアルコキシ基が導入され、目的物以外のフルオロホスファゼン誘導体も多数生成し、収率が低下するという問題があり、アルカリ金属塩化合物存在下でヒドロキシル基を有する化合物を反応剤に用いる場合も、得られるフルオロホスファゼン誘導体の沸点が反応溶媒に接近しているものも存在するため、その場合収率の低下が懸念される。また、導入するアルコキシ基の原料であるヒドロキシル基を有する化合物が常温で液体の場合は、それ自身が溶媒として使用できる可能性はあるが、反応の制御が困難になることが懸念される。そこで、本発明の目的は、フルオロホスファゼンの安価で効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる問題に鑑み鋭意検討の結果、ペルフルオロシクロポリホスファゼンから、フルオロホスファゼン誘導体を安価で効率的に製造する方法を見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、メチルモノグライム、エチルモノグライム、プロピルモノグライム、ブチルモノグライム、メチルジグライム、エチルジグライム、プロピルジグライム、ブチルジグライム、メチルトリグライム、エチルトリグライム、メチルテトラグライムからなる群から選ばれる少なくとも1つのグライム類、及び、塩化合物の共存下、分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物と下記一般式[1]で表されるペルフルオロシクロポリホスファゼンとを反応させ、下記一般式[2]で表されるフルオロホスファゼン誘導体を得ることを特徴とするフルオロホスファゼン誘導体の製造方法である。
(PNF [1]
(式中、nは3〜14を表す。)
(PNR [2]
(式中、Rはそれぞれ互いに独立して、フッ素原子、または、アルコキシ基であって、全Rのうち少なくとも1つはアルコキシ基であり、nは3〜14である。)
【0007】
また、前記アルコキシ基が、1級、2級、及び、3級のアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種類であるフルオロホスファゼン誘導体の製造方法である。
【0008】
また、前記塩化合物が、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、及び、硝酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種類であるフルオロホスファゼン誘導体の製造方法である。
【0009】
また、前記グライム類の添加量が、前記分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物の0.0005〜0.1倍モルであるフルオロホスファゼン誘導体の製造方法である。
【0010】
また、前記反応が、20〜80℃の温度条件において、1〜72時間行われるフルオロホスファゼン誘導体の製造方法である。
【0011】
また、分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物が、1級、2級または3級のアルコール類から選択される少なくとも一種類であるフルオロホスファゼン誘導体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、難燃剤として利用されているフルオロホスファゼン誘導体を迅速且つ効率的に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法は、メチルモノグライム、エチルモノグライム、プロピルモノグライム、ブチルモノグライム、メチルジグライム、エチルジグライム、プロピルジグライム、ブチルジグライム、メチルトリグライム、エチルトリグライム、メチルテトラグライムからなる群から選ばれる少なくとも1つのグライム類、及び、塩化合物の共存下、分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物と下記一般式[1]で表されるペルフルオロシクロポリホスファゼンとを反応させ、下記一般式[2]で表されるフルオロホスファゼン誘導体を得るものである。
(PNF [1]
(式中、nは3〜14を表す。)
(PNR [2]
(式中、Rはそれぞれ互いに独立して、フッ素原子、または、アルコキシ基であって、全Rのうち少なくとも1つはアルコキシ基であり、nは3〜14である。)
【0015】
前記一般式[1]で表されるペルフルオロシクロポリホスファゼンとしては、例えば、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、オクタフルオロシクロテトラホスファゼン等を挙げることができる。
【0016】
前記一般式[2]で表されるフルオロホスファゼン誘導体のRで表される有機基は、アルコキシ基であることが好ましい。前記有機基が、アルコキシ基であると、前記一般式[2]で表されるフルオロホスファゼン誘導体が液体として存在する温度範囲が広くなるため好ましい。
【0017】
また、前記アルコキシ基は、1級、2級、及び、3級のアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。中でも、トルフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロプロポキシ基が特に好ましい。
【0018】
前記反応は、塩化合物存在下、メチルモノグライム、エチルモノグライム、プロピルモノグライム、ブチルモノグライム、メチルジグライム、エチルジグライム、プロピルジグライム、ブチルジグライム、メチルトリグライム、エチルトリグライム、メチルテトラグライムからなる群から選ばれる少なくとも1つのグライム類を触媒量添加することにより行われることが好ましい。前記塩化合物が存在することによりエーテル化反応が進行するため好ましく、また、グライム類を添加することにより反応速度が増すため好ましい。
【0019】
前記塩化合物は、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、及び、硝酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸セシウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸セシウム等を挙げることができる。これらの中で特に、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムが好ましい。また、上記の塩化合物は、一種類を単独で用いても良く、二種類以上を組合せて任意の割合で混合して用いても良い。
【0020】
前記塩化合物の使用量は、特に限定するものではないが、本発明における反応により発生するフッ化水素をフッ化物塩として除去できるので、ペルフルオロシクロポリホスファゼン一分子が有するフッ素原子のうち、反応で除去したいリン原子上のフッ素原子の数をm、アルカリ金属塩化合物一分子が有するアルカリ金属原子の数をnとすると、前記塩化合物の使用量は、ペルフルオロシクロポリホスファゼンに対し、m/n倍モル〜5m/n倍モル、好ましくは1.5m/n倍モル〜3m/n倍モルの範囲である。m/n倍モルより少ない場合は、反応が最後まで進行しないため好ましくない。一方5m/n倍モルより多い場合は、経済的でなく、固形廃棄物も多くなるという問題がある。
【0021】
前記グライム類は、メチルモノグライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、エチルモノグライム(エチレングリコールジエチルエーテル)、プロピルモノグライム(エチレングリコールジプロピルエーテル)、ブチルモノグライム(エチレングリコールジブチルエーテル)、メチルジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、プロピルジグライム(ジエチレングリコールジプロピルエーテル)、ブチルジグライム(ジエチレングリコールジブチルエーテル)、メチルトリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルトリグライム(トリエチレングリコールジエチルエーテル)、メチルテトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0022】
上記の鎖状グリコールエーテル類の中でも、エチレングリコールジメチルエーテル(メチルモノグライム)トリエチレングリコールジメチルエーテル(メチルトリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(メチルテトラグライム)を用いると、フルオロホスファゼン誘導体を短時間かつ高収率で得ることができるため特に好ましい。
【0023】
また、前記グライム類の他に、触媒量の、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、鎖状エステル、または、環状エーテルを付加的に添加してもよい。上記の具体例として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6等の環状エーテル等を挙げることができる。
【0024】
前記グライム類の使用量は、ヒドロキシル基を有する化合物の0.0005〜0.1倍モルの触媒量で良く、好ましくは0.01〜0.05倍モルである。0.0005倍モルより少ない場合は、反応の進行が非常に遅くなり、効率的でないため好ましくない。0.1倍モルより多い場合は、想定以上にアルコキシ基が導入され、収率が低下するため好ましくない。
【0025】
前記反応は、20〜80℃の温度条件において、1〜72時間行われることが好ましい。20℃未満の場合、ペルフルオロシクロポリホスファゼンが固体となりやすく反応が困難になる傾向があるため好ましくなく、80℃超の場合、反応の制御が困難になる傾向があるため好ましくない。製造効率の点から20〜80℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。前記反応時間としては生産性の観点から1〜72時間が好ましく、1〜60時間がより好ましい。また、本発明のフルオロホスファゼン誘導体の収率は、生産性の観点から、50%以上が好ましく、60%以上が特に好ましい。
【0026】
また、前記反応は、密閉系で行われ、圧力は特に限定されないが、常圧が好ましい。また、原料のペルフルオロシクロポリホスファゼンや、生成したフルオロホスファゼン誘導体が、塩化合物と水の作用によって加水分解されることを避けるために、前記反応は、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0027】
分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物は、1級、2級または3級のアルコール類であることが好ましい。
【0028】
前記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物としては、特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(n−プロパノール、2−プロパノール等)、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ブタノール(n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等)、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ビニル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニル−2−プロパノールのようなアルコール類を挙げることができる。また、上記のヒドロキシル基を有する化合物は、一種類を単独で用いても良く、二種類以上を組合せて任意の割合で混合して用いても良い。
【0029】
前記ヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物の量は、特に限定するものではないが、ペルフルオロシクロポリホスファゼンのフッ素原子1つと反応させたい場合は、ペルフルオロシクロポリホスファゼンに対し1/6〜1/2倍モルが好ましく、等モル以上になると二置換以上のものの生成量が多くなるため好ましくない。この際、過剰のペルフルオロシクロポリホスファゼンは蒸留により回収され、再利用することができる。
【0030】
また、前記の1級、2級または3級のアルコール類の他に、下記一般式[4]で表されるフェノール類を付加的に添加してもよい。

(式[4]中Aはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲンで置換された低級アルキル基、及び、ハロゲンで置換された低級アルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を示し、mは0または1〜5の正の整数である)
【0031】
前記フェノール類としては、特に制限はないが、例えば、フェノール、アセチルフェノール(4−アセチルフェノール等)、メトキシフェノール(4−メトキシフェノール等)、ニトロフェノール(4−ニトロフェノール等)、ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸等)、フルオロフェノール(4−フルオロフェノール等)、クロロフェノール(4−クロロフェノール等)、ブロモフェノール(4−ブロモフェノール等)、ヨードフェノール(4−ヨードフェノール等)、クレゾール(p−クレゾール等)、エチルフェノール(4−エチルフェノール等)、プロピルフェノール(4−プロピルフェノール等)、トリフルオロメチルフェノール(4−トリフルオロメチルフェノール等)を挙げることができる。
【0032】
本発明のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法では、得られるフルオロホスファゼン誘導体の目的を阻害しない範囲で、例えば、溶媒、触媒、難燃剤の成分を原料に添加してもよい。ただし、溶媒が存在すると、原料、反応生成物、溶媒と3成分となり、分離の効率が低下する傾向があるため、前記溶媒成分は少ないほど好ましく、無溶媒でフルオロホスファゼン誘導体の製造が行われることがより好ましい。
【0033】
また、前記反応の後に反応液を蒸留精製することによりフルオロホスファゼン誘導体を得ることができる。該蒸留精製は蒸留精製用の釜にヴィグリューカラムまたは充填塔などの蒸留塔、ならびに分留塔を備え付け、常圧で行われることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
[フルオロホスファゼン誘導体の合成]
1L三つ口ガラスフラスコに三方コックを備え付け、フラスコに(PNF(750mmol)、2,2,2−トリフルオロエタノール(250mmol)、炭酸ナトリウム(塩化合物:NaCO、375mmol)、メチルトリグライム(2.5mmol)の順に添加し、窒素雰囲気下、常圧、25℃で24時間反応させ、蒸留精製にて初留の(PNFを分離除去し、主留の下記構造式で表されるフルオロホスファゼン誘導体1を収率81%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成はNMRスペクトルで確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。

【0036】
【表1】

【0037】
(実施例2)
実施例1の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、2,2,2−トリフルオロエタノールを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールに代えたほかは、実施例1と同様にして、下記構造式で表されるフルオロホスファゼン誘導体2を収率77%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。

【0038】
(実施例3)
実施例1の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、2,2,2−トリフルオロエタノールを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノールに代えたほかは、実施例1と同様にして、下記構造式で表されるフルオロホスファゼン誘導体3を収率76%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。

【0039】
(実施例4)
実施例1の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、2,2,2−トリフルオロエタノールを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ビニル−2−プロパノールに代えたほかは、実施例1と同様にして、下記構造式で表されるフルオロホスファゼン誘導体4を収率73%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。

【0040】
(実施例5)
実施例1の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、メチルトリグライムをメチルテトラグライムに代えたほかは、実施例1と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体1を収率82%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例6)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、メチルトリグライムをメチルテトラグライムに代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率79%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例7)
実施例1の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、2,2,2−トリフルオロエタノールを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−フェニル−2−プロパノールに、メチルトリグライムをメチルモノグライムに代えたほかは、実施例1と同様にして、下記構造式で表されるフルオロホスファゼン誘導体5を収率80%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。

【0043】
(実施例8)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、反応時間24時間を12時間に、炭酸ナトリウムを炭酸カリウム(塩化合物:KCO)に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率68%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例9)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、反応時間24時間を48時間に、炭酸ナトリウムを炭酸リチウム(塩化合物:LiCO)に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率71%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例10)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、反応温度25℃を40℃に、反応時間24時間を2時間に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率66%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例11)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、メチルトリグライム0.01倍モルを0.001倍モルに、反応時間24時間を48時間に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率75%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例12)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、メチルトリグライム0.01倍モルを0.05倍モルに、反応時間24時間を6時間に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率70%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できた。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例13)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、メチルトリグライム0.01倍モルを0.0001倍モルに、反応時間24時間を72時間に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率52%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できたが、反応に長時間を要した。
【0049】
(実施例14)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、メチルトリグライム0.01倍モルを1倍モルに、反応時間24時間を1時間に代えたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率50%で得た。なお、不純物は未反応原料、及び、目的物以外の多置換体であった。
【0050】
(比較例1)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、反応温度25℃を80℃に、反応時間24時間を5時間に変更し、メチルトリグライムを添加せず、ヘキサンを溶媒として用いたほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率40%で得た。なお、不純物は未反応原料、及び、目的物以外の多置換体であったことから、反応制御性が悪かった。結果を表1に示す。
【0051】
(比較例2)
実施例2の「フルオロホスファゼン誘導体の合成」において、反応温度25℃を40℃に、反応時間24時間を14日間に変更し、メチルトリグライムを添加しなかったほかは、実施例2と同様にして、フルオロホスファゼン誘導体2を収率76%で得た。なお、不純物は未反応原料であり、目的物以外の多置換体の生成は確認されなかったことから、優れた反応制御性を示すことが確認できたが、反応に長時間を要し、生産性が悪かった。結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルモノグライム、エチルモノグライム、プロピルモノグライム、ブチルモノグライム、メチルジグライム、エチルジグライム、プロピルジグライム、ブチルジグライム、メチルトリグライム、エチルトリグライム、メチルテトラグライムからなる群から選ばれる少なくとも1つのグライム類、及び、塩化合物の共存下、分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物と下記一般式[1]で表されるペルフルオロシクロポリホスファゼンとを反応させ、下記一般式[2]で表されるフルオロホスファゼン誘導体を得ることを特徴とするフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。
(PNF [1]
(式中、nは3〜14を表す。)
(PNR [2]
(式中、Rはそれぞれ互いに独立して、フッ素原子、または、アルコキシ基であって、全Rのうち少なくとも1つはアルコキシ基であり、nは3〜14である。)
【請求項2】
前記アルコキシ基が、1級、2級、及び、3級のアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記塩化合物が、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、及び、硝酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記グライム類の添加量が、前記分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物の0.0005〜0.1倍モルであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記反応が、20〜80℃の温度条件において、1〜72時間行われる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。
【請求項6】
分子構造中にヒドロキシル基を少なくとも1つ有する化合物が、1級、2級または3級のアルコール類から選択される少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフルオロホスファゼン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2012−126650(P2012−126650A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276633(P2010−276633)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】