説明

フルオロポリマー溶融物の反応

最も都合よくは、押出機中の反応領域が溶融領域から隔離されている押出機中で、溶融フルオロポリマーとの化学反応を実行する。反応領域における反応物質と溶融フルオロポリマーとの間の接触および反応において本質的に物質移動制限がないように、溶融フルオロポリマーを反応領域において十分に細分化し、続いて、反応領域から隔離して揮発分を除去し、そして揮発分の除去されたフルオロポリマーを冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、不安定なポリマー末端基を減少させるための、溶融加工可能なフルオロポリマーの溶融物を伴う化学反応に関する。
【背景技術】
【0002】
重合直後のフルオロポリマーは、それらの末端基中に、不安定であるものとして指定される特定の種類を有する。不安定な末端基は、フルオロポリマーが溶融加工される温度で分解するか、または別の反応をし得、すなわち、それらは熱的に不安定である。加工されたフルオロポリマーにおいて、それらが気泡または空隙を引き起こす可能性がある。また例えば大気中湿分への物品の暴露によって、それらが、溶融加工の仕上げ物品におけるフッ化水素の供給源にもなり得る。すなわち、それらは加水分解的にも不安定である。これらの不安定な末端基の中には、加工温度で脱カルボキシル化し得、気泡および空隙の潜在的な供給源である二酸化炭素を発生する−COOH、より熱的に安定であるが、容易に−COOHおよびHFへと加水分解される−COF、−COFへと酸化される−CF=CF、ならびに−COOH末端基より高い熱安定性および−COF末端基より高い加水分解安定性のために特定の適用においては望ましいが、−COOH、−COFまたは−CF=CF基へと反応または分解し得、しばしば色形成を伴う−CONHがある。
【0003】
開示されるフルオロポリマー中の不安定な末端基の数を減少させる方法の中に、フッ素化がある。かかるフッ素化は、非過フッ素化不安定末端基を非常に安定な過フッ素化末端基−CFへと変換する。(特許文献1)は、固体フルオロポリマーとフッ素との接触を記載している。この系の固体および気体相の性質のために、粒径、および気体と固体との間の接触効率は、不安定な末端基の減少を達成するために必要とされる時間に影響を及ぼす。固体ポリマーのフッ素化においては、数時間の桁の接触時間が典型的である。
【0004】
米国特許公報(特許文献2)は、重合したままの、テトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)コポリマー(FEP)のような溶融加工可能なフルオロポリマーが、不安定性の追加的供給源、すなわちポリマー骨格鎖における隣接HFP単位に起因するポリマー骨格鎖における相対的に不安定な結合を有することを開示する。この特許は、好ましくは混練ブロックを含有する二軸スクリュー押出機において、高剪断力をフルオロポリマーに受けさせることによる、この不安定性の除去を教示している。この高剪断力処理後のフルオロポリマーの不安定な末端基および/またはフルオロポリマーにおけるいずれかの不良な色(暗色)の存在は、(特許文献1)に記載のフッ素化、または水(蒸気)が−CFCOOH末端基をより安定な−CFH末端基へと変換する米国特許公報(特許文献3)に記載のような湿潤比熱処理のようなフルオロポリマーの後処理によって排除される。フルオロポリマーの押出キューブのフッ素化によって、押出時のキューブの暗色は白色へと変化する。また米国特許公報(特許文献2)は、酸フッ化物末端基を加水分解するための二軸スクリュー押出機への1重量%の水の添加についても開示する(第7欄および第8欄に及ぶ文章)。この水の量は、水が添加されない場合の37の酸フッ化物基の存在/10炭素原子に対して751倍のモル過剰に相当する。
【0005】
(特許文献4)は、フルオロポリマーに溶融混練工程を受けさせることによる、フルオロポリマーからの不安定な末端基、フルオロポリマーのポリマー骨格鎖における不安定な結合、および不良な色の除去についてを開示している。この刊行物は、米国特許公報(特許文献2)における二軸スクリュー押出機の使用が、非常に短い滞留時間を提供して、そして不安定な末端基および不良な色を除去するために後処理を必要とすることを認めており、そして二軸スクリュー押出機よりも高い使用可能体積比(使用可能空間/実際の空間)を有し、かつ少なくとも10分間(フッ素の存在下での実施例においては40分〜60分間が使用される)、シャフト上に取り付けられたパドルを使用して溶融フルオロポリマーの混練を実行する混練機を使用することによって、この欠点を克服する。この溶融混練の間、溶融ポリマーは、安定化および脱色効果を達成することが開示される反応物質、例えば、フッ素、水または蒸気、塩または塩基あるいはアルコールのうちの少なくとも1つである反応物質に暴露される。
【0006】
(特許文献5)は、ペルフルオロビニル末端基の解重合およびフルオロポリマーの劣化を促進するものとして、(特許文献4)の溶融混練を批評している。また(特許文献5)は、表面更新型混練機によって必要とされる大型および長時間も批評している。(特許文献5)は、0.2分〜5分間(実施例においては2分間が使用される)、押出機内の処理領域に混練ブロックを備えた二軸スクリュー押出機におけるフルオロポリマーの溶融混練によって、この問題に取り組んでいる。水および酸素の両方は、処理領域に添加される反応物質であり、比較例1に示されるように、酸素を省略することによって不十分な結果が得られる。好ましくは塩、例えば炭酸カリウムも処理領域中に存在する。存在する酸素量は、存在するペルフルオロビニル基に対して少なくとも化学量論的であり、好ましくは過剰量であり、ペルフルオロビニル基1モルあたり少なくとも10モルの酸素、特に50〜500のモル過剰が開示される。存在する水のモル量は、安定化される不安定な末端基のモル数と同一であり得るが、好ましくは過剰量、特に少なくとも10倍過剰量である。超大気圧での2分間の溶融混練による実施例1において報告される安定化を達成するために、−COOH末端基に関する水および酸素のモル過剰は、それぞれ1337倍および198倍であると算出される。大気圧以下での実施例2において報告される安定化を達成するために、水および酸素のモル過剰は、それぞれ853倍および79倍であると算出される。表1および表2に報告される安定化の目標は、−COOH末端基を−CFHへと変換することである。
【0007】
また(特許文献5)は、(第5ページ、第17行〜第19行)の当該発明の安定化処理後、すなわち、安定化フルオロポリマーが二軸スクリュー押出機を出た後のフルオロポリマーのフッ素処理についても開示している。フッ素化によって、最高安定である末端基、すなわち−CFが提供される。
【0008】
その特徴を変化させるため、例えばフルオロポリマーを安定化させるための、フルオロポリマーのより効率的かつより有効な加工法が必要とされている。
【0009】
【特許文献1】英国特許第1,210,794号明細書
【特許文献2】米国特許第4,626,587号明細書
【特許文献3】米国特許第3,085,083号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第0 928 673 A1号明細書(国際公開第98/09784号パンフレット)
【特許文献5】欧州特許出願第1 170 303 A1号明細書
【特許文献6】米国特許第5,318,358号明細書
【特許文献7】米国特許第5,932,159号明細書
【特許文献8】米国特許第4,675,380号明細書
【特許文献9】米国特許第5,703,185号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶融加工可能なフルオロポリマーを安定化するため、ならびに一般的にフルオロポリマーとの化学反応を実行するための、より有効かつより効果的な方法を提供する。本発明の1つの発見は、−CFH末端基を形成するための水反応物質との溶融フルオロポリマーの安定化処理において、酸素は必要な反応物質ではなく、実際に、フルオロポリマー品質に有害な結果をもたらし得ること、そしてさらに得られた安定化フルオロポリマーは反応間に変色せず、従って、変色を除去するためのその次のフッ素処理を必要としないことである。本発明のもう1つの発見は、所望の安定化の効果が−CF末端基の形成である場合、(特許文献4)における最小10分よりさらに短時間で溶融フルオロポリマーにおいてフッ素化を実行することができ、そして(特許文献5)に記載のような押出機における加工後ではなく二軸スクリュー押出機において実行することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方法は、フルオロポリマーとの化学反応を実行するための方法として記載することができ、この方法は、
(a)前記フルオロポリマーを溶融させる工程と、
(b)前記溶融工程から隔離して、前記溶融フルオロポリマーを反応物質と接触させる工程であって、自由体積を有する反応領域において前記接触が実行される工程と、
(c)前記反応物質と前記溶融フルオロポリマーとの間の化学反応を実行するために、前記反応領域において前記溶融フルオロポリマーを細分化して、前記反応物質が前記溶融フルオロポリマーと有効に接触することを可能にする工程と、
(d)(b)および(c)から隔離して、得られた溶融フルオロポリマーの揮発分を除去する工程と、
(e)揮発分の除去されたフルオロポリマーを冷却する工程と
を含む。
【0012】
従って、本発明の方法は、フルオロポリマーとの反応を効率的かつ有効に実行するための操作的方法である。−CFHおよび−CF末端基の形成は、本発明の方法によって達成され得る多くの異なる末端基または反応結果の中の2つであり、本明細書において、以下に、より詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の方法におけるフルオロポリマーの溶融が起こる領域、および反応領域は、互いに分離されており、この方法を連続的に実行することを可能にし、すなわち、ポリマーが溶融されると、それは反応領域に入って、そして反応領域を通り加工工程(d)および(e)へと進行し得る。好ましくは、相対的に低い使用可能体積比を典型的に有する二軸スクリュー押出機のような押出機において、この方法を実行する。しかしながら、本発明に従って、フルオロポリマーの溶融は押出機の溶融領域において起こり、そして押出機の使用可能体積を完全に充填している溶融フルオロポリマーによって、この溶融領域は反応領域から隔離される。押出機の使用可能体積は、胴体内で押出機のスクリューによって占有されない押出機胴体の体積である。従って、溶融領域と反応領域との間の移行において、溶融ポリマーは、押出機胴体内で「プラグ」または「シール」を形成する。しかしながら、反応領域においては、使用可能体積は、ポリマーによって完全に充填されない。本明細書において自由体積と称される十分な体積が残り、これによって、反応物質がオープンスペース、すなわち、溶融フルオロポリマー、および反応領域における溶融フルオロポリマーの細分化を達成するスクリュー素子によって占有されていない空間を有することが可能となる。
【0014】
反応領域における溶融フルオロポリマーの細分化によって、溶融フルオロポリマーの新しい表面が迅速に再生され、フルオロポリマーの表面における利用可能な所望の反応部位が生じ、それによって、反応物質が反応部位へ接近するために生じる物質移動の必要性が最小化される。従って、反応領域で起こる反応物質と溶融フルオロポリマーとの有効な接触は、末端基への反応物質の拡散速度によるよりも、むしろ反応物質と不安定な末端基(反応部位)との間の反応速度によって反応速度が主に支配されることを可能にするものである。溶融フルオロポリマーを繰返し細分化することによって、この表面再生を達成することができる。反応部位に到達するために物質移動に依存せずに反応物質が反応領域内で循環することが可能となる自由体積と、細分化された溶融フルオロポリマーとの組み合わせは、この有効な接触が起こることを可能にしており、ここでは全反応速度は、本質的に、反応物質と反応部位との間の反応が進行する速度であり、すなわち、本質的に、化学反応を完了するための溶融フルオロポリマーの表面からその内部への反応物質の物質移動に関する必要条件によって制限されない。
【0015】
反応領域における反応物質と溶融フルオロポリマーとの間の接触の有効性の例によって、フルオロポリマーが変色せずに、−COOH末端基に起因するフルオロポリマーの不安定性が除去される。この不安定部位における脱カルボキシル化によって、−COOH末端基の代わりに−CF(フルオロカーボンアニオン)末端基が残る。かかるアニオン構造は、フルオロポリマー溶融物においてきわめて短命であり、反応物質が末端基のすぐ近くに存在しない場合、迅速にフッ化物アニオンを失い、そして、不安定な−CF=CF(ペルフルオロビニル)末端基の形成が生じる。本発明に従う反応領域における水反応物質と溶融フルオロポリマーとの有効な接触は、ペルフルオロビニル末端基を形成する反応が起こり得る前に、−CFを、より安定な−CFH末端基へと変換し、すなわち、不安定なペルフルオロビニル末端基の形成が回避され、そして(特許文献5)に記載の、かかる基に関連する解重合の問題を回避する。末端基が−COOH以外であり、そして反応物質が水以外である場合、異なる反応が起こるが、細分化工程(c)において、同一(同等)の有効な接触が存在する。
【0016】
溶融ポリマーの細分化は、同時かつ反復的である。従って、溶融フルオロポリマーは、反応領域において1回で多数の別々の流れへと細分化され、そしてこの細分化は反応領域内で複数回繰返されて、溶融フルオロポリマーの新しい表面が反応物質へと暴露される。混練ブロックは、バイローバル幾何学に関しては多くとも3部分、またはトリローバル幾何学に関しては5部分へと溶融フルオロポリマーを細分化する。本発明において使用される細分化は、好ましくは、溶融ポリマーを少なくとも6部分、好ましくは少なくとも8部分へと分割し、そしてこの細分化は反応領域内で少なくとも2回繰返される。反応領域内で押出スクリューに沿って配置されるギアまたはタービン型混合素子を使用することによって、二軸スクリュー押出機において、かかる細分化を達成することができる。かかる混合素子の例は、コペリオン コーポレイション(Coperion Corporation)から市販品として入手可能であるSME、TMEおよびZMEスクリュー素子であり、ここでは、スクリューフライトが、それらの周囲にノッチの形態の中断を含有し、各周囲の1回転につき少なくとも6つの中断がある。ZME素子は米国特許公報(特許文献6)に記載されており、そして図4において複数素子として描写されている。図1に示されるように、ZME素子は、押出スクリューによって押出機を通して進行されるポリマーに関して逆ポンピングである。従って、素子の周囲のノッチ(スロット)が、溶融フルオロポリマーのわずかな流れがスロットを通して前方へ進行することを可能にしながら、ZME素子は、押出機の供給端部に向かって後方に(向流)、溶融ポリマーをポンピングし、従って、図4に示される各ZME素子に対して少なくとも10の小部分への溶融フルオロポリマーの細分化が得られる。これは本発明においても使用可能である。SME素子はZME素子と同様であるが、その周囲のスロットが向流ポンピング作用において形成される溶融ポリマーのわずかな流れを生じながら、溶融ポリマーを前方にポンピングする。TME素子は、ポンピング作用に関して中立であり、すなわち、それらはギアと同様であり、それによって、周囲スロットが、溶融ポリマーのわずかな流れがTME素子を通過することを可能にしながら、この素子の中立フライトは溶融ポリマーの流動を滞留させる傾向がある。望ましくない副反応またはポリマー分解が起こることなく起こる反応物質との反応のために必要な表面再生を達成するために、反応領域内で連続して、これらの素子を使用することができる。これらの種類の素子の1つのみが連続素子において使用されなければならないか、またはそれらの組み合わせを使用することができる。反応領域内における所望の自由体積を提供するために、前方ポンピング搬送素子によって、それらを分離することができる。これらの素子と組み合わせて、またはそれらの代わりに、米国特許公報(特許文献7)の図2Aおよび2Dに示されるような溶融ポリマーの流れを分裂させ、それによって反応物質との反応のためにポリマーの新しい表面を暴露させる、押出機スクリューから延在しているピンまたはスタッドを含有する混合素子のような他の種類の混合素子を使用することができる。コペリオン コーポレイション(Coperion Corporation)によって製造されるバス ニーダー(Buss Kneader)(登録商標)におけるように、対応するレリーフがスクリュー中に作られる場合、胴体にピンまたはスタッドを配置することも可能である。使用できるもう1つの代替は、米国特許公報(特許文献7)の図2Fに示されるような、スクリューチャンネルおよび押出胴体の一方/または両方に切り込まれたキャビティもしくはレリーフである。反応領域における溶融フルオロポリマーの中断および分裂は、フルオロポリマーの細分化を表し、これは溶融フルオロポリマーの合流を含み、これは反応領域内で複数回生じ、各回において溶融フルオロポリマーの新しい表面の暴露は、反応物質へのそれらの接近を容易にする。
【0017】
反応領域において起こる細分化は、分散混合より分配混合と同様である。分配混合において、相対的に低い剪断力を使用して混合を達成する装置を使用し、同様の溶融粘度を有する2つ以上の溶融ポリマーが一緒に混合される。対照的に、分散混合のために使用される装置は、溶融ポリマーに高剪断力を受けさせて、ゲル粒子のようなポリマー凝集体を分解する。分散混合に関連する高剪断力には、溶融フルオロポリマーを過度に分解する不都合があり、分散混合が多く使用される場合には不安定末端基および変色が生じる。米国特許公報(特許文献7)は、様々な分配混合デバイスおよび分散混合デバイスを開示および描写しており、分散混合を達成するための混練ブロックの使用を記載している(第3欄、第47行〜第48行)。本発明の方法において実行される細分化は、分配混合と同様であるが、かかる細分化は、異なる結果、すなわち、物質移動のために必要とされる距離を最小化する表面積の再生を提供し、異なるポリマーを単に一緒に混合するよりも、反応物質と溶融フルオロポリマーとの間の迅速かつ効率的な化学反応を可能にする。
【0018】
反応領域における溶融フルオロポリマーの広範囲にわたる細分化にもかかわらず、そして向流の間隔を繰返し含む溶融フルオロポリマーの部分の可能性さえ含むにもかかわらず、反応領域は、全反応領域内またはその一部内で自由体積を有する。二軸スクリュー押出機のような押出機において、反応領域は溶融領域の延長であり、すなわち、押出機胴体は、両領域において同一横断面積を有するが、反応領域は、溶融プラグによって溶融領域から分離され、かつ自由体積を含有する。領域を分離する溶融プラグは、限定されないが、溶融領域端部における逆ピッチ素子の利用、ポリマー流動を制限する素子の利用、横断自由面積の減少および/または減少ピッチ素子の使用を含む多くの技術によって達成され得る。反応領域内での溶融プラグから下流の自由体積の生成は、通常、反応領域中の溶融物の体積よりも大きい体積までの自由体積の増加によって達成される。素子の前方ピッチを増加するために最も一般的であるいくつかの技術によって、これを達成することができるが、自由面積を増加するスクリューの横断幾何学を変化させることによっても達成することができる。いずれの技術またはそれらの組み合わせも、本発明の実行において使用することができる。
【0019】
更に詳細に、加工工程(a)に関して、反応のために使用される同一押出機または別々のデバイスのいずれかにおいて、フルオロポリマーの溶融を実行することができる。溶融および反応のために同一押出機を使用することは、通常、最も経済的であり、かつ本明細書において例証される。反応と同一の押出機において溶融が起こる場合、フルオロポリマーの溶融が起こるために十分な時間で、十分な熱、通常、フルオロポリマーの溶融温度より少なくとも約40℃高い温度の適用、および機械的エネルギー入力による従来の手段によって、通常、溶融が起こる。溶融フルオロポリマーは、一般的に高粘度を有するため、溶融物の温度がフルオロポリマーの融点より少なくとも約30℃高いことが好ましい。フルオロポリマーの融点は、ASTM 3159の手順に従って、熱分析を使用して得られる吸熱ピークである。この方法が押出機において実行される場合、スクリューの配置は、押出機が二軸スクリュー押出機である場合、フルオロポリマーを溶融領域を通して進行させる押出スクリューからの入力加熱および機械的エネルギーからフルオロポリマーの溶融が起こりながら、押出機の供給端部から反応領域の方へフルオロポリマーを搬送するための従来のものであり得る。溶融領域を通る溶融フルオロポリマーの搬送は、反応領域中へと続き、すると、反応領域に存在しているスクリュー素子が、上記細分化を達成しながら、反応領域を通して押出機の出口の方へと溶融フルオロポリマーの搬送を続ける。
【0020】
加工工程(b)に関して、溶融フルオロポリマーと反応物質との接触は、好ましくは、反応領域中への溶融フルオロポリマーの供給から独立して、反応領域中に反応物質を供給することによって起こる。これは、溶融領域からの反応領域の隔離と一緒に、反応物質の量の制御、および加工装置の供給端部からの隔離を可能にする。使用される特定の反応物質に依存して、加工装置の供給端部が大気から隔離され続ける限り、この隔離は、反応物質が反応領域から加工装置の供給端部へ、次いで大気へと漏洩することを防止することによる安全性の理由に関しても重要である。
【0021】
反応物質の供給を、単一または複数のインレットポートから反応領域中へ入れることができ、そして反応物質は、好ましくは流体の形態であり、これは、反応温度、すなわち溶融フルオロポリマーの温度において、反応物質の臨界温度より高いか、またはそれ未満であり得、そして気体、あるいは気体へと分解する液体または固体であり得る。少なくとも溶融領域から反応領域に入る溶融ポリマーの温度である反応領域の温度は、必ずではなくてよいが、反応物質の相(蒸発または溶融)の変化を生じることができるか、または反応物質の化学反応(分解)を起こすことができる。本発明の方法は、多くの好ましい条件を有し、これは、使用される特定の反応物質に依存して別々に、または一緒に使用され得る。例えば、酸素は、フルオロポリマー中の炭素汚染物質をCOへと変換して色を改善する反応物質であり得るが、酸素は、より安定な−CFHへの−COOH末端基の変換において必要な反応物質ではない。水のようなプロトン(水素)源は、より安定な水素化物末端基を形成するための必須の反応物質である。(特許文献5)において使用されるような、化学量論的レベルより桁違いで大きい過剰量の水のような試薬は、物質移動または動力学制限のいずれかを有する方法を示唆する。大過剰の水は、過度の腐食および廃水の生成の誘導を含むいくつかの不都合を有する。過剰量の水によってさえも、まだ反応は、脱カルボキシル化から得られるフルオロカーボンアニオンを安定な水素化物へと直接的に変換するために十分に効率的ではない。その代わりとして、フルオロカーボンイオンの多くはフッ化物アニオンを失い、−CF=CF(ペルフルオロビニル)末端基を形成する。−CF=CF末端基を排除するために、ペルフルオロビニル末端基を酸フッ化物−COF末端基へと変換するために酸素を添加しなければならない。これは次に、水反応物質と反応して−COOH基を形成し、これは、水と反応する末端基の一部のみと上記サイクルを通して反応し続け、いずれのサイクルにおいても安定な水素化物末端基を形成する。従って、ポリマー末端基と水との間の低い接触効率は、出発−COOH末端基の多数の形成を通して末端基反応のサイクルを促進し、そして−COOHへ再変換可能であるように、ペルフルオロビニル末端基を−COFへと変換するための必須の反応物質である酸素を必要とする。十分大過剰の量の水反応物質は、最後に、最初に存在した、および途中で形成した、ほとんどの−COOH(−COOHは脱カルボキシル化されている)を−CFHへと首尾よく変換する。(特許文献5)の方法における酸素反応物質に関する必要条件は、ポリマー分解および不安定なペルフルオロビニル末端基の解重合によって生じる炭素の形成を示し、後者の形成は、水反応物質と溶融ポリマーとの間の不十分な接触の指示であり、それによって、脱カルボキシル化反応部位に到達する水反応物質に関する物質移動の必要によって生じる遅れの効力によって、−CFHを形成する水素化物末端キャッピングの前にペルフルオロビニル末端基へのフルオロカーボンアニオンの変換が生じる。
【0022】
本発明における反応物質と溶融フルオロポリマーとの間の非常に高い接触効率は、(特許文献5)における処理領域中へのフルオロポリマーの供給から分離して、反応物質として反応領域中へ酸素を供給しなくても、水素化物末端キャッピングの実行を可能にする。しなしながら、水/−COOH反応系において、酸素が反応領域から排除されなければならない必要はなく、これは、吸収酸素のフレーク表面を除去するために、一般的にフレークの形態である加工装置へのフルオロポリマー供給が脱酸素される必要がないことを意味する。この少量の吸収酸素さえも、溶融加工によって、押出機の供給端部へと後方に向かう溶融フルオロポリマーから大部分は除去され、それによって、存在する場合は、反応領域に到達する酸素量は、存在する−COOH末端基のモルより低いモル量である。従って、反応領域中へのフルオロポリマーの供給から分離された反応領域中への酸素供給の不在はいずれも、本質的に酸素が存在しない反応を実行するものとして考慮される。迅速に表面積を再生させる能力および物質移動の制限を排除する能力のため、溶融フルオロポリマー中の反応性部分、フルオロポリマー中に存在する末端基または汚染物質あるいは両方のモル量に関して10倍未満、好ましくは5倍未満である反応物質のモル量で、反応を迅速かつ完全に続行することができる。水および−COOH末端基を伴う反応において、−COOH末端基の水素から入手可能である少量の水素の効力によって−CFH末端基による−COOH末端基の置換を得るために、存在する−COOH末端基のモルより少量のモルの反応物質を使用することさえも可能である。上記の通り、水/−COOH反応系(溶融フルオロポリマーの−COOH末端基)の場合、過剰量の水は、水素化物末端基の形成を生じるようなものであるべきであり、それによって、酸素は、反応領域へと添加される必要がない。水反応物質のモル量が、ポリマー中に存在する−COOH末端基のモル未満である場合でさえも、優れた結果が得られる。加工装置に供給されたフルオロポリマーフレークの表面上で吸収される酸素の可能な存在は、添加工程が、加工装置へのフレークの供給から独立している作用であるという意味で、反応領域への酸素の添加ではない。
【0023】
溶融フルオロポリマーを伴う多種多様な反応は、本発明によって考察されており、以下の通りである。
(i)末端基が酸末端基−COFまたは−COOHであり、かつ反応物質がアンモニアであり、より安定なアミド末端基−CONHを形成する。
(ii)末端基が酸末端基−COFまたは−COOHであり、かつ反応物質が、ジメチル、ジエチルまたはプロピルアミンのような第一級または第二級アミンであり、アミド末端基−CONRHまたは−CONR(式中、Rは、アミンのアルキル基であり、Rに関しては、アルキル基は同一または異なる)を形成する。
(iii)末端基が酸末端基−COFまたは−COOHであり、かつ反応物質が、メタノール、エタノール、プロパノールまたはフッ素含有アルコールのようなアルコールを含有し、より安定なエステル−COR’(式中、R’は、アルコールによって供給されるアルキル基である)を形成する。
(iv)反応物質がフッ素を含有し、−COOH、アミド、水素化物、−COFおよび他の非過フッ素化末端基またはペルフルオロビニルのような末端基を−CF末端基へと変換する。
(v)反応物質が酸素またはフッ素を含有し、酸化可能汚染物質を気体状化合物、例えば、炭素をCOまたはCFへと変換する。
(vi)末端基が酸末端基−COFまたは−COOH、あるいはカルボン酸塩末端基、好ましくはカルボン酸アルカリ金属塩であり、かつ反応物質がプロトン源であり、より安定な−CFH末端基を形成する。
【0024】
これらの反応は、フルオロポリマーの反応および意図される使用に依存して、所望の完了度まで実行される。
【0025】
反応(iv)および(v)に関して、フッ素は、窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、二酸化炭素または他の不活性気体によって希釈されていてもよいフッ素気体の形態であり得、あるいは(特許文献1)に記載のフッ化物化合物のいずれかのような、反応条件下でフッ素を供給するフッ素化剤の形態であり得る。不活性気体によるフッ素の希釈は、反応容器における過剰な、または過度に急速なフッ素化を回避するための得策である。過剰な反応は、過熱および/または過圧の危険な条件をもたらす可能性がある。20モル%以上の濃度において、フッ素は、炭化水素と自然発熱反応する可能性もある。20%より高いフッ素濃度をフルオロポリマーに対して使用することができるが、フッ素濃度は、好ましくは、偶然的な炭化水素または水の汚染の場合に十分な安全要因を提供する15モル%以下である。反応(v)において使用される酸素反応物質は、そのまま、または希釈された形態での酸素気体の形態であり得、あるいは、限定されないが、反応間に利用可能な酸素を生じる過酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩および過マンガン酸塩のような酸化剤の形態であり得る。反応(vi)に関して、プロトン源はHの形態である水素であり、これは、脱カルボキシル化後に残っている−CFと反応する。反応条件下で水は最も経済的なプロトンの供給源であるため、反応物質としてのこのプロトン源は、主に、本明細書において水として記載されている。液体として反応領域へと水を添加することができ、すると、それは直ちに蒸気となるか、または蒸気として反応領域へと添加してもよい。反応物質として水が開示される場合はいずれも、かかる水をプロトン源であるものとして考えることができる。
【0026】
これらの反応、(i)〜(iv)および(vi)は、明示される出発末端基に限定されない。複数の末端基が明示される場合、それら全てが存在してもよく、または他の明示されていない末端基も存在してもよい。
【0027】
加工工程(c)に関して、その中で起こる細分化は上記されている。反応領域における溶融フルオロポリマーの滞留時間である反応時間に関して、反応は、本質的に、完了まで5分以内で、好ましくは120秒以内で、より好ましくは60秒以内で実行され得る。本発明に従う反応領域における滞留時間は、次のように決定される:ZME素子は、ポリマーによって完全に充填されるものと考えられ、そしてZME素子における滞留時間Θは、Θ=V/qであり、式中、Vは素子の使用可能体積であり、qは体積処理量率である。完全に充填されない搬送ブッシングに関しては、Θ=2L/ZNであり、式中、Lは、ブッシングを含有する反応領域の長さであり、Zは、ピッチ(スクリューの単一回転のために必要とされる軸の距離)であり、そしてNはスクリュー速度である。ZME素子およびブッシングに関する滞留時間は、反応領域における全滞留時間を得るために合計される。1mmのスペーサーは無視される。それらは、本明細書に開示される実施例における反応領域の長さの約1%のみを含む。
【0028】
短い反応時間と、反応領域における溶融フルオロポリマーの分配型混合によるような細分化との組み合わせは、分散型混合におけるような溶融物に高剪断力を受けさせる時、または溶融物の高溶融温度への長時間の暴露時に起こるような望ましくない副反応が起こらずに短時間で反応が完了することを可能にする。本発明に従って加工されたフルオロポリマーは、通常、60より高い白色度を有する優れた色を有する。米国特許公報(特許文献2)において、ポリマーの色は、緑色光の反射率によって測定され、高%Gは高レベルの白色を示す。実施例の前に詳述される白色度は、白色の改善された決定を提供する。例えば、上記反応(vi)によって加工されたFEPに対する少なくとも60の白色度は、ポリマーのフッ素化後の米国特許公報(特許文献2)の表IVにおいて報告される%G値と同じぐらい良好な白色である。
【0029】
反応領域における反応温度は、典型的に約400℃以下、そしてフルオロポリマーの融点より少なくとも約30℃高く、典型的に少なくとも約300℃であり、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーのようなより低温度で溶解するフルオロポリマーに適用可能である。
【0030】
工程(d)および(e)に関して、反応の揮発性生成物、いずれかの未反応試薬およびいずれかの不活性物を除去するために、1つまたは複数の除去ポートが提供される。押出機において、これらは、真空ポートまたはベントポートとして既知であり、反応領域の端部に配置される。反応領域から揮発分が除去されたものを隔離するために、反応領域と除去ポートとの間に溶融シールが好ましくは提供される。かかる溶融シールを、既知の手段によって提供することができる。押出機において反応が起こる場合、溶融シール(プラグ)を生じる押出機スクリュー素子は、減少前方ピッチの逆ポンピングであり得るか、または増加スクリュー体積を有するかのいずれかであり得、そのようにしてシールが達成される。除去ポートの前に、未反応試薬または反応生成物の除去を促進するために、不活性気体を溶融ポリマーに添加してもよい。これは、当該分野で広く報告されるストリッピングとして既知の方法である。
【0031】
加工工程(e)に関して、溶融フルオロポリマーは、しばしば、溶融フィルター、次いでダイを通り抜け、最終的な所望の形状を達成する。これらの操作を通しての圧力低下に依存して、この方法は、もう1つの押出機(通常、一軸スクリュー押出機)、ギアポンプまたは他のポンピングデバイスの形態であり得る追加的なポンプを使用してもよい。仕上げ、または半仕上げ生成物を製造するように、ダイを設計することができる。いくつかの例としては、フィルム、プロフィール、チューブ、ワイヤーコーティング、繊維および他の物品が挙げられる。また、ペレットまたはキューブを製造するように、ダイを設計することもできる。ストランドを押出し、それをチョッピングまたは溶融切断することのいずれかによって、後者を達成する。一旦、生成物がダイを離れると、迅速に冷却されて、所望の形状を維持する固体が形成される。
【0032】
加えて、冷却後のフルオロポリマーをスパージングして、存在する場合、凝固時にフルオロポリマーに残る分解生成物を除去することが好ましい。スパージングは、通常、押出生成物の周囲で気体(空気および窒素は、最も一般的な気体である)を通すことによって達成される。気体は、周囲条件であり得、または融点より少なくとも約10℃低い温度まで加熱され得る。温度が高いほど、より短いスパージング時間を可能にする傾向がある。スパージング温度の標準範囲は、1時間と24時間との間のスパージング時間で約25℃と250℃との間であるが、溶解気体の十分な除去を確実にするために、正確な条件を変更することができる。
【0033】
本発明の方法において使用されるフルオロポリマーの1つの群は、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは全ての一価の原子をハロゲンとして、好ましくはフッ素として有することを特徴とする。すなわち、ポリマーは、好ましくはペルハロゲン化されており、より好ましくは過フッ素化されている。ポリマーは、結晶性であっても、または非晶質であってもよい。結晶性によって、ポリマーがいくらかの結晶化度を有し、そしてASTM D 3418に従って測定される検知可能な融点および少なくとも約3J/gの溶融吸熱を特徴とすることが意味される。前記定義に従って結晶性ではない溶融加工可能なポリマーは、非晶質である。非晶質ポリマーはエラストマーを含み、これは、ASTM D 3418に従って測定されるように約20℃未満のガラス転移温度を有することによって識別される。用語「溶融加工可能」によって、従来の溶融加工手段によってポリマーを加工することができる(すなわち、フィルム、繊維、チューブ、ワイヤーコーティング等のような成形物品を製造することができる)ことが意味される。かかる加工性は、加工温度における溶融粘度が10Pa・s以下であることを必要とする。好ましくは、それは、約10Pa・s〜10Pa・sの範囲内であり、最も好ましくは約10Pa・s〜10Pa・sの範囲内である。本発明の方法において使用することができる溶融加工可能なフルオロポリマーのもう1つの群は、ポリマー鎖中に炭化水素基を含むものであり、それにもかかわらずフルオロポリマーは、少なくとも約35重量%のフッ素を含有する。
【0034】
溶融加工可能なペルフルオロポリマーの溶融粘度を、ASTM D 1238−52Tに従って測定し、次のように変更した:シリンダー、オリフィスおよびピストンチップは、耐腐食性合金、ヘインズ ステライト カンパニー(Haynes Stellite Co.)製のヘインズ ステライト(Haynes Stellite)19製である。5.0gの試料を、過フッ素化ポリマーに関してASTM D 2116およびASTM D 3307において開示されるような、372℃±1℃に維持される内径9.53mm(0.375インチ)のシリンダーに充填する。試料をシリンダーに充填した5分後、それを、5000グラムの負荷(ピストンと重量)下で直径2.10mm(0.0825インチ)、長さ8.00mm(0.315インチ)のスクエアエッジオリフィスを通して押出する。これは、44.8kPa(1平方インチあたり6.5ポンド)の剪断応力に相当する。Pa・s単位の溶融粘度は、10分あたりのグラム単位の観察された押出速度によって除算された53170として算出される。ポリマー鎖中に炭化水素基を含有するフルオロポリマーの溶融粘度を、ASTM D 3159およびASTM D 5575のような、これらの特定のポリマーに関するASTM手順に従って決定することができる。
【0035】
本発明において使用される溶融加工可能なポリマーの例は、ポリクロロトリフルオロエチレン、ならびにヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)およびペルフルオロジメチルジオキソール(PDD)のような1つもしくは複数のコポリマーとのテトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマーである。TFE/HFPコポリマーは、FEPとして一般的に既知である。TFE/PAVEコポリマーは、PFAまたはMFAとして一般的に既知である。PAVEとしては、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)またはそれらの混合物のような、アルキル基が1〜8の炭素原子、好ましくは1〜3の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が挙げられる。ペルフルオロポリマーの追加的な例は、ヘキサフルオロプロピレンを任意に含有するテトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデンコポリマー、およびアルキル基が上記で定義された通りであるテトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーのようなエラストマーである。ポリマー鎖中に炭化水素基を含有するフルオロポリマーの例は、エチレンとのテトラフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンのコポリマー、およびTHVとして既知であるテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデンのコポリマーである。上記コポリマーは、フルオロポリマーの特性を改善するために1つまたは複数の追加的なコモノマーを少量含み得る。末端基は、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献8)に記載の方法によって測定される。
【0036】
反応工程(vi)は、FEPによって実行され、HFPの二連続構造および三連続構造(隣接HFP単位)のポリマー除去によってポリマー骨格鎖を安定させるだけではなく、それらを−CFH末端基へと変換することによって末端基を安定させ、続いて、ポリマーの色を改善するためのフッ素化は不必要である。HFPの二連続構造および三連続構造の除去は、骨格鎖安定化方法において生じる分子量におけるわずかな変化によって示される通り、新しい末端基の形成よりも、主に原子の再配列である。本方法に従って水と反応するFEPは、少なくとも60の白色度によって示されるような優れた色を有し、そして骨格鎖が安定化されているFEPを提供する。骨格鎖安定化が生じる間、本発明の方法はFEPポリマーの分解を促進しない。溶解気体の除去のための、150℃で12時間のエアオーブン中での加熱によるようなスパージング後、FEPは、22未満のバックボーンボラタイルスインデックス(backbone volatiles index)および30未満の総ボラタイルスインデックスを示し、ポリマー骨格鎖ならびに末端基の安定化を示す。FEPのこの骨格鎖安定化および上記反応(v)を除き、本発明の方法は、一般的に、非反応性の化学的に不活発なフルオロポリマーに存在するほとんどの反応性部分、すなわちフルオロポリマーの末端基に関する。従って、フルオロポリマー自体の組成、すなわち末端基を除く組成は、反応に関与しないため、一般的に重要でない。好ましくは、不安定な末端基を含有する過フッ素化ポリマーにおいて反応(iv)のフッ素処理が実行され、そのため反応はこれらの末端基によって主に起こる。
【0037】
ボラタイルスインデックスは、フルオロポリマーに、特定の時間で高温加熱を受けさせ、かかる加熱の結果として生じる気泡形成を決定することによるフルオロポリマーの安定性の尺度である。本明細書で報告されるボラタイルスインデックスを決定する手順は、前加熱処理が使用されないこと、ポリマー試料径が18.5gであること、装置体積が124mlであること、ポリマー加熱温度が360℃であること、および次の等式を使用することを除き、米国特許公報(特許文献2)に開示される方法と同様である。
バックボーンボラタイルスインデックス=P40−P10
総ボラタイルスインデックス=P40−P0
式中、P0、P10およびP40は、加熱ブロック中での0、10および40分以後のmm Hg単位での試料圧力である。バックボーンボラタイルスインデックスを得るために、10分加熱時間および40分加熱時間におけるポリマーから放出された(気泡形成)揮発性物質の圧力を比較する。総ボラタイルスインデックスは、バックボーンボラタイルスインデックスと同一の様式で算出されるが、0分加熱時間および40分加熱時間におけるポリマーから放出された揮発性物質の圧力を使用する。ボラタイルスインデックスの決定が、本発明の方法の実行後にフルオロポリマーに存在する溶解気体の存在によって歪められないように、ボラタイルスインデックスの決定前に、フルオロポリマーに上記の商業的スパージング法、または実験室試料においては、それに続く加熱処理のいずれかを受けさせ、すなわち、フルオロポリマーを12時間、150℃でエアオーブン中で加熱(スパージング)する。本発明に従って加工されるフルオロポリマーの総ボラタイルスインデックスは、30以下である。バックボーンボラタイルスインデックスは、22以下である。この22のバックボーンボラタイルスインデックスは、米国特許公報(特許文献2)に引用された10の値に匹敵し、これは、試験装置および試験条件の差異の調整後、気泡のない生成物に限定される。これらのボラタイルスインデックスは、TFE/HFPコポリマーに関するよりもほとんど存在しない不安定な末端基の効力、およびTFE/HFPコポリマー中のHFPの二連続構造に関連する不安定性の欠如のため、反応(iv)に従う安定化処理をしていないTFE/PAVEコポリマーによっても示され得る。これらのTFE/PAVEコポリマーはいくつかの適用に関しては十分であるが、それらは、これらに限定されないが、反応(iv)にコポリマーを暴露することによって排除することができる、色形成、HF発生および抽出性イオン含有量を含む問題のために他の適用において欠陥を示し得る。
【0038】
カラリメーター(Colorimeter)によって提供される指示に従って、ハンターラボ トリスティミュラス カラリメーター モデル D25M−9(Hunterlab Tristimulus Colorimeter,Model D25M−9)を使用して、白色度を決定する。この決定は、光学的に透明な円筒形試料ホルダー(内径6.35cm)に、ポリマーのキューブを充填する工程と、試料ホルダーの周囲を白色光(カラリメーター(Colorimeter)によって提供される光源)に暴露する工程と、4つのケイ素ダイオード検出器を使用して反射光を測定する工程とを伴う。この決定の前に、カラリメーター(Colorimeter)製造業者によって供給される標準白色プラークを使用してカラリメーター(Colorimeter)をキャリブレーションする。
【0039】
FEPに反応(vi)を受けさせることによって達成される少なくとも約60の白色度は、好ましくは、他の各フルオロポリマーにおける他の各反応によっても達成される。本発明の方法は、ポリマー分解による色形成を生じない。ボラタイルスインデックスおよび白色度は、独立して変化し得る。従って、フルオロポリマーは低ボラタイルスインデックスを有して、かつ約60の所望の最小白色度より低い不良な色を示す可能がある。
【0040】
好ましくは、末端基−COOH、−COFおよび−CONHの合計量が、約80/10炭素原子未満、より好ましくは約30/10炭素原子未満、そして最も好ましくは約6/10炭素原子未満であるように、反応(iv)が実行される。
【実施例】
【0041】
以下の実験で報告される白色度値およびボラタイルスインデックス値は、上記の通りに決定される。非常に高い温度への暴露によって測定されるポリマーの安定化を、溶解した揮発性物質が妨害しないように、上記の特定の条件でポリマーをスパージングした後、ボラタイルスインデックスを決定する。
【0042】
反応領域における押出機胴体の表面と同一表面である長軸方向ボア開口を有するロッドであるインジェクションプローブと、ダイを備えた120mm一軸スクリュー押出機中へ供給されるフッ素/フッ化水素酸スクラビング系に連結された真空ポートとを備えた57mm二軸スクリュー押出機を使用して、全実験を実行する。二軸スクリュー押出機は、樹脂溶融器および末端基反応器として機能し、ここでは、所望の末端基、およびFEPの場合、骨格鎖の安定化が実行される。一軸スクリュー押出機は、任意のスクリーンパックおよびダイを通して樹脂を移動させるために必要な圧力を発生するための溶融ポンプとして機能する。
【0043】
上記の押出装置は、コペリオン コーポレイション(Coperion Corporation)からの「コンビプラスト(Kombiplast)」押出機である。ポリマー溶融物およびフッ素化剤と接触するそれらの部品のために、耐腐食性材料を使用する。二軸スクリュー押出機は、並列配置された2つの同時回転スクリューを有する。スクリュー配置は、噛み合いプロフィールおよび密的間隙を有するように設計され、それらの自己ワイピングを引き起こす。スクリュー配置は、混練ブロック、混合素子および搬送スクリューブッシングを含む。押出機の第1の15の長さ/直径(L/D、Dは、ブッシングの直径である)は、溶融領域である。これは、供給、固体搬送および混練ブロックセクションを含有する。混練ブロックセクションは、高剪断力を提供し、そしてポリマーの適切な溶融を保証する。溶融セクションは、溶融シールを形成し、そして最終混練ブロックの完全な充填を保証する左手系(left handed)ブッシング(後方ポンピング)を端部に有する。
【0044】
このセクションの直後に、試薬をインジェクションする。次の11L/Dは、複数の混合素子を有する、インジェクション、混合および反応セクションを含有し、そして押出機の反応領域を構成する。実施例1〜8において使用される1つの有効な設計のため、使用される混合素子およびそれらの配列は、次の通り:2つのZME素子、2つの40mm搬送ブッシング(40mmは、素子、および素子の1回転あたりのヘリカルフライトのピッチの両方の長さである)、単一のZME素子、2つの40mm搬送ブッシング、2つのZME、2つの40mm搬送ブッシングおよび左手系ブッシングであり、これは、揮発分が除去された領域に関して溶融シールを提供する。もう1つの有効なデザインのため、実施例10において使用される混合素子およびそれらの配列は、次の通り:2つのZME素子、1つの40mm搬送ブッシング(40mmは、素子、および素子の1回転あたりのヘリカルフライトのピッチの両方の長さである)、3つのZME素子、1つの40mm搬送ブッシング、2つのZME、1つの40mm搬送ブッシング、2つのZME、1つの40mm搬送ブッシング、1つの30mm搬送ブッシングおよび左手系ブッシングであり、これは、揮発分が除去された領域に関して溶融シールを提供する。厚さ1mmのスペーサーリングは、搬送ブッシングとZME素子との間に存在する。次の5L/Dは、実行される反応に依存して、F、HFおよび他の反応生成物を中和するように設計されたスクラビング系に連結されている真空抽出セクション(揮発分が除去された領域)を含有する。真空抽出セクションは、反応性および腐食性の気体が大気中に漏洩しないように溶融ポリマーを大気圧以下に暴露するように、自由体積のために提供される溶融フォワーディング素子を含む、従来の設計に従う。真空を、0.2psiaと14.6psiaとの間(絶対1.4kPa〜101kPa)、より好ましくは5psiaと14psiaとの間(絶対34kPa〜97kPa)、そして最も好ましくは8psiaと13psiaとの間(絶対55kPa〜90kPa)で操作することができる。実施例において、真空は、約10psia(絶対69.2kPa)である。アンダーカットブッシング(SK)は、押出機の真空抽出セクションにおいてフォワーディング素子を提供する有効な方法であり、これらは、実施例に記載の押出において、真空抽出セクションにおいて使用される。最終的な2L/Dは、真空シールを提供するため、および溶融ポリマーを一軸スクリュー押出機中にポンピングするために使用される。末端基の反応は、インジェクションノズルと真空ポートとの間のセクションにおいて主に生じ、これは、混合セクションを含有する。FEPの場合、骨格鎖安定化は、混練ブロックセクションおよび混合セクションの両方において生じる。驚くべきことに、この骨格鎖安定化は、溶融領域と同程度に迅速であり、FEPの変色を伴わない。
【0045】
二軸スクリュー押出機の内容物を、濾過およびペレット形成のために低剪断速度において圧力を生じるように設計されている一軸スクリュー溶融ポンプへと移す。押出された溶融物は、250の2.5mmダイホールを有するダイによって溶融切断される。水流によってペレットを冷却させる。
【0046】
二軸スクリュー押出機は、約300℃〜380℃の胴体温度で操作される。一軸スクリュー押出機は、約300℃〜350℃の胴体温度で操作される。
【0047】
(実施例1(反応なし))
過硫酸アンモニウム(APS)開始剤によって重合された、PFAとして一般に既知である、テトラフルオロエチレン(TFE)および3.7重量%のペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)のコポリマーの締固めフレークを供給材料として使用する。このポリマーは、14.0の初期溶融流れ速度(MFR)を有する。ポリマー末端基は、ほぼ等しく−CFHおよび−CFCHCH末端基の間に分かれる炭素−水素結合を有する459の末端基、180の−COOH末端基、0の−COF末端基および19の−CONH末端基からなる。エチル末端基は、コポリマーを製造する共重合過程におけるエタン連鎖移動剤の使用から生じる。他の連鎖移動剤によって、末端基は異なり、特徴的である。例えば、メタンでは、末端基は−CF−CHである。
【0048】
上記の押出装置を通してフレークを加工し、そして試薬を押出機中にインジェクションしない。反応領域において33秒の滞留時間が得られるように、スクリュー速度を調整する。
【0049】
押出ペレットは14.1のMFRを有する。ポリマー末端基は、ほぼ等しく−CFHおよび−CFCHCH末端基の間に分かれる炭素−水素結合を有する377の末端基、68の−COOH末端基、38の−COF末端基および20の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは8.7であり、そして総ボラタイルスインデックスは18.7であり、そして白色度は58.38である。
【0050】
(実施例2(本発明))
実施例1と同一の締固めフレーク供給原料を上記の押出装置を通して加工し、そしてN中10モル%Fからなるフッ素化剤を押出機中にインジェクションする。ポリマーに対するフッ素の比率は、重量で2500ppm(非フッ素化末端基の全モルに関して1.5倍モル過剰)である。反応領域において33秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。押出ペレットは、15.1のMFRを有する。ポリマー末端基は、0の−CFH末端基、0の−CFCHCH末端基、0の−COOH末端基、0の−COF末端基および0の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは1.9であり、総ボラタイルスインデックスは11.0であり、そして白色度は76.89である。フッ素化剤がN中5モル%Fである場合、同様の結果が得られる。
【0051】
(実施例3(反応なし))
混合過硫酸アンモニウム/カリウム(APS/KPS)開始剤によって重合された、FEPとして一般に既知である、11.6重量%のヘキサフルオロプロピレン(HFP)および1.3重量%のペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)とのテトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマーの締固めフレークを供給材料として使用する。このポリマーは、21.9の初期溶融流れ速度(MFR)を有する。ポリマー末端基は、0の−CFH末端基、599の−COOH末端基、0の−COF末端基および0の−CONH末端基からなる。
【0052】
上記の押出装置を通してフレークを加工し、そして試薬を押出機中にインジェクションしない。反応領域において30秒の滞留時間が得られるように、スクリュー速度を調整する。
【0053】
押出ペレットは23.9のMFRを有する。ポリマー末端基は、546の−CFH末端基、0の−COOH末端基、1の−COF末端基および6の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは12.6であり、総ボラタイルスインデックスは21.4であり、そして白色度は14.70であり、これは極めて不良である。押出機における(共重合過程からの)過硫酸カリウム開始剤からの残留物のような塩を伴うFEPの加工は、−COOH末端基から−CFH末端基への変化を生じるが、その不良な色によって示されるように、化学的性質は炭素の形成を伴う。従って、−COOH末端基の脱カルボキシル化は、熱へのさらなる暴露時に分解して炭素原子(およびCF)を生じることが既知である−CF=CF末端基の形成を含む他の反応を伴う。
【0054】
(実施例4(本発明))
実施例3と同一の締固めフレーク供給原料を上記の押出装置を通して加工し、そして重量で145ppmのHO(−COOH末端基の0.7倍モル)を蒸気として押出機中にインジェクションする。反応領域において30秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。
【0055】
押出ペレットは、24.2のMFRを有する。ポリマー末端基は、511の−CFH末端基、0の−COOH末端基、0の−COF末端基および16の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは12.9であり、そして総ボラタイルスインデックスは22.9である。色は良好であり、すなわち、白色度は63.88である。反応領域における溶融FEPと水との間の有効な接触とともに、少量の水反応物質が存在することによって、ポリマーの変色を生じる付随の反応が起こらずに安定な水素化物末端基を生じる脱カルボキシル化反応が導かれる。
【0056】
(実施例5(実施例4との比較))
実施例3と同一の締固めフレーク供給原料を上記の押出装置を通して加工し、そして重量で125ppmのHO(−COOH末端基の0.6倍モル)および重量で2288ppmの空気(536ppmの酸素、または−COOH末端基の1.2倍モル)を押出機中にインジェクションする。反応領域において30秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。
【0057】
押出ペレットは、25.9のMFRを有する。ポリマー末端基は、0の−CFH末端基、50の−COOH末端基、209の−COF末端基および0の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは24.8であり、そして総ボラタイルスインデックスは52.0であり、そして色は不良であり、すなわち、白色度は26.83である。反応領域への酸素反応物質の添加は、水反応物質から所望される水素化物末端キャッピングを妨害し、不良なボラタイルスインデックスおよび色を与える。
【0058】
(実施例6(本発明))
実施例1と同一の締固めフレーク供給原料を上記の押出装置を通して加工し、そしてアンモニア気体(NH)を押出機中にインジェクションする。ポリマーに対するアンモニアの比率は、重量で982ppm(−COOH末端基の2倍モル)である。反応領域において33秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。
【0059】
ポリマー末端基は主に−CONH末端基である。アンモニア気体を等量モルのジメチルアミンによって置き換えた場合、同様の結果が達成され、そして得られる末端基は主に−CON(CHである。
【0060】
(実施例7(本発明))
過酸化物開始剤による非水系媒体中での重合から−COF末端基が得られることを除き、実施例1と同一の締固めフレーク供給原料を上記の押出装置を通して加工し、そして液体ゾニル(Zonyl)(登録商標)BAを押出機中にインジェクションする。ゾニル(Zonyl)(登録商標)BAは次式:
R”−CHCHOH
(式中、R”は、
1%〜2%のC
27%〜34%のC13
29%〜34%のC17
17%〜21%のC1021
6%〜9%のC1225
2%〜5%のC1429
1%〜2%のC1633であり、
全ての%は重量による)を有する。
【0061】
ポリマーに対するゾニル(Zonyl)(登録商標)BAの比率は、重量で24,000ppm(−COF末端基の2倍モル)である。反応領域において33秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。
【0062】
ポリマー末端基は主に−COR”末端基からなり、R”の比率はゾニル(Zonyl)(登録商標)BAと同様である。
【0063】
(実施例8(本発明))
PFAとして一般に既知である、テトラフルオロエチレン(TFE)および3.7重量%のペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)のコポリマーのスクラップフィルムを押出し、キューブを形成する。このキューブは、極めて不良な色を有する(0.8のWI)。このキューブを上記の押出装置を通して加工し、そしてN中10モル%Fからなるフッ素化剤を押出機中にインジェクションする。ポリマーに対するフッ素の比率は、重量で3000ppmである。反応領域において33秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。押出ペレットは、白色度が62の良好な色を有する。
【0064】
フッ素化剤の代わりに空気を押出機の反応領域中にインジェクションすることを除き、この実験を繰返す。ポリマーに対する空気の比率は、10重量%(100,000ppm)である。反応領域において33秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。押出ペレットは、白色度が60の良好な色を有する。
【0065】
(実施例9(反応なし))
過硫酸アンモニウム(APS)開始剤によって重合された、FEPとして一般に既知である、12.2重量%のヘキサフルオロプロピレン(HFP)および1.2重量%のペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)とのテトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマーの締固めフレークを供給材料として使用する。このポリマーは、33.7の初期溶融流れ速度(MFR)を有する。ポリマー末端基は、0の−CFH末端基、728の−COOH末端基、0の−COF末端基および28の−CONH末端基からなる。
【0066】
上記の押出装置を通してフレークを加工し、そして試薬を押出機中にインジェクションしない。反応領域において22秒の滞留時間が得られるように、スクリュー速度を調整する。
【0067】
押出ペレットは29.1のMFRを有する。ポリマー末端基は、0の−CFH末端基、697の−COOH末端基、0の−COF末端基および9の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは65.2であり、そして総ボラタイルスインデックスは84.3であり、これは、押出ワイヤーコーティングに有用ではない非常に不安定なポリマーを示す。白色度は62.67である。
【0068】
(実施例10(本発明))
実施例9と同一の締固めフレーク供給原料を上記の押出装置を通して加工し、そして重量で1100ppmのフッ素で、N中10モル%Fからなるフッ素化剤を押出機中にインジェクションする。反応領域において22秒の滞留時間を得るために、スクリュー速度を調整する。
【0069】
押出ペレットは、28.7のMFRを有する。ポリマー末端基は、0の−CFH末端基、7の−COOH末端基、2の−COF末端基および1の−CONH末端基からなる。バックボーンボラタイルスインデックスは11.9であり、そして総ボラタイルスインデックスは21.9である。色は良好であり、すなわち、白色度は72.32である。
【0070】
(実施例11(ワイヤーコーティング))
本実施例において、フルオロポリマーに反応(iv)のフッ素化処理を受けさせることによって得られた、改善された押出ワイヤーコーティングを示す。本実施例において、実施例10のフッ素処理コポリマーを使用する。押出物によってオリフィスから定期的に取り除かれ、ワイヤーコーティング中に塊状物を形成するダイオリフィスにおいて形成されるコポリマー流涎の減少によって、コポリマーの改善された押出性が示される。絶縁の直径の変化をレーザー測定することによって、光学的に塊状物を測定する。少なくとも50%の直径増加は、塊状物であると考えられる。塊状物のための試験は、絶縁導体と直列で実行される。各塊状物の決定のために、平均3回のワイヤーコーティングの実行(3×長さ13.7km)を使用する。銅導体の溶融ドローダウン押出コーティングのための押出機を使用する一連の押出/溶融ドローダウン実験を実行することによって、押出ワイヤーコーティングを実行する。全て、米国特許公報(特許文献9)の実施例10に記載の通りである。長さ45,000ft(13.7km)のフルオロポリマー絶縁銅導体が製造され、次いで、塊状物に関して試験する。この一連の実験において、不良なワイヤーコーティングを製造する条件を含むワイヤーコーティング産業において見出される変形の範囲に及ぶように、次の条件を変化させる:ドローダウン比、ライン速度、円錐長さ、溶融温度および色濃度。変数に対する制限は、極度の条件では、最良の市販品として入手可能であるTFE/HFPコポリマーによって、この方法が高レベルの塊状物を経験することを保証するように十分広く設定される。産業的な目標は、長さ13.7kmの絶縁ワイヤーあたり、2以下の塊状物を有することである。これら全押出ワイヤーコーティングに関する塊状物の平均数は、0.4/13.7kmである。これは、4.5の塊状物/13.7kmの平均を与える最良の市販品として入手可能なTFE/HFPコポリマーを使用して実行される同一連の押出ワイヤーコーティングよりも非常に良好な性能を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーとの化学反応またはフルオロポリマー中の汚染物質との化学反応を実行する方法であって、
(a)前記フルオロポリマーを溶融させる工程と、
(b)前記溶融工程から隔離して、前記溶融フルオロポリマーを反応物質と接触させる工程であって、自由体積を有する反応領域において前記接触が実行される工程と、
(c)前記反応物質と前記溶融フルオロポリマーとの間の前記化学反応を実行するために、前記反応領域において溶融フルオロポリマーを細分化して、前記反応物質が前記溶融フルオロポリマーと有効に接触することを可能にする工程と、
(d)(b)および(c)から隔離して、得られた溶融フルオロポリマーの揮発分を除去する工程と、
(e)揮発分の除去されたフルオロポリマーを冷却する工程と
を含むことを特徴する方法。
【請求項2】
前記揮発分の除去されたフルオロポリマーをスパージングする工程を追加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の前記溶融フルオロポリマーが酸末端基または−カルボン酸塩末端基を含有し、かつ前記反応物質がプロトン源を含有し、前記反応が前記プロトン源と前記末端基との間で起こり、工程(c)の前記溶融フルオロポリマーに、安定な水素化物末端基(−CFH)を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応物質が水であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応領域が添加された酸素を含まないことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)の前記溶融フルオロポリマーが非過フッ素化末端基を含有し、かつ前記反応物質がフッ素を含有し、前記反応が前記フッ素と前記末端基との間で起こり、安定なフルオロメチル基(−CF)を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の前記溶融フルオロポリマーが酸末端基を含有し、かつ前記反応物質がアミンを含有し、アミド末端基を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の前記溶融フルオロポリマーが酸末端基を含有し、かつ前記反応物質がアンモニアを含有し、−CONH末端基を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の前記溶融フルオロポリマーが酸末端基を含有し、かつ前記反応物質がアルコールを含有し、エステル末端基を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)の前記溶融フルオロポリマーが汚染物質を含有し、かつ前記反応物質が前記汚染物質を揮発性物質の形態へと変換することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応物質がフッ素を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記反応物質が元素状のフッ素を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記反応物質が酸素を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細分化工程が、前記反応領域における前記溶融フルオロポリマーの流れの向流を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細分化工程が、前記反応領域における前記溶融フルオロポリマーを、前記反応領域内で複数回、少なくとも6つの溶融フルオロポリマーの流れへと分割する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細分化工程が、前記フルオロポリマーが−COOH末端基を含有し、かつ前記反応物質が水であり、前記フルオロポリマーが分解されずに、安定な−CFH末端基が得られることと同等であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
得られたフルオロポリマーが、少なくとも約60の白色度を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーであり、かつ前記コポリマーをスパージングして、約30以下のバックボーンボラタイルスインデックス(backbone volatiles index)を有する前記コポリマーが得られることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細分化工程が分散混合の特性を示す請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2006−505680(P2006−505680A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552014(P2004−552014)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/035836
【国際公開番号】WO2004/044014
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】