説明

フルオロポリマー組成物

【課題】高い温度および苛酷な化学環境に対する著しい耐性を示すフルオロポリマーを製造する方法、誘導時間を増加する方法、および硬化性または硬化したフルオロポリマー組成物を含有するフルオロポリマー物品もまた提供する。
【解決手段】(a)窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を有するフルオロポリマーと、(b)一般式:{RA}(-){QR’k}(+)を有する化合物、あるいはそれらの前駆物質を含有する非フッ素化触媒組成物;および任意には(c)式R2−OHのアルコールからなる組成物を含有するフルオロポリマー物品で達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有硬化部位成分を有する硬化フルオロポリマー組成物、およびかかる
フルオロポリマーを硬化するための触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有ポリマー(「フルオロポリマー」としても知られている)は、商業的に有用
な材料の種類である。フルオロポリマーには、例えば、架橋フルオロエラストマー、未架
橋フルオロエラストマーゴム、および半結晶性フッ素樹脂が含まれる。フルオロエラスト
マーは、高い温度および苛酷な化学環境に対する著しい耐性を示す。その結果、それらは
特に、シール、ガスケット、および高温および/または腐食性化学物質にさらされるシス
テムにおける他の成形成形品として使用するために上手く適応されている。かかる部品は
、中でも自動車産業、化学処理産業、半導体産業、航空宇宙産業、および石油産業で広く
使用されている。
【0003】
【特許文献1】WO00/09569号パンフレット
【特許文献2】WO00/09603号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,259,463号明細書
【特許文献4】米国特許第3,752,787号明細書
【特許文献5】米国特許第5,767,204号明細書
【特許文献6】米国特許第5,700,879号明細書
【特許文献7】米国特許第5,621,145号明細書
【特許文献8】米国特許第5,565,512号明細書
【特許文献9】米国特許第4,281,092号明細書
【特許文献10】米国特許第5,554,680号明細書
【特許文献11】WO99/48939号パンフレット
【特許文献12】米国特許第5,585,449号明細書
【特許文献13】EP 0 661 304 A1号明細書
【特許文献14】EP 0 784 064 A1号明細書
【特許文献15】EP 0 769 521 A1号明細書
【特許文献16】米国特許第5,268,405号明細書
【特許文献17】米国特許出願第09/495,600号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フルオロエラストマーは、触媒の存在下にて硬化を促進するための硬化部位成分を含む
場合が多い。有用な硬化部位成分の種類には、ニトリル基含有モノマーが含まれ、それに
は有機スズ触媒が硬化成分として使用されている。かかる触媒によって、硬化された製品
中に望ましくない抽出性金属残留物が残る可能性があり、環境的な理由から望ましくない
。アンモニア生成化合物もまた、硬化系成分として使用されている。これらの硬化系は、
加工時のレオロジー調節の望ましいレベルに達していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、(a)窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単
位を有するフルオロポリマーと、(b)一般式:
{RA}(-){QR’k(+) (1)
を有する化合物、または場合により個々にもしくは混合物として添加されるそれらの前駆
物質を含む非フッ素化触媒組成物と、任意には(c)一般式R2−OH(式中、R2は炭素
原子1〜20個を有するアルキル基であり、かつR2は一部フッ素化することが可能であ
る)のアルコールと、を含む組成物に関する。
【0006】
式1において:
Rは、水素または炭素原子1〜20個を有するアルキルもしくはアルケニル、炭素原子
3〜20個を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、または炭素原子6〜20
個を有するアリールもしくはアルカリルである。Rは、少なくとも1つのヘテロ原子、つ
まりO、P、S、もしくはNなどの非炭素原子を含有し得る。Rを置換することも可能で
あり、例えば、その基の1つ以上の水素原子がCl、Br、またはIで置換される。
【0007】
Aは、酸アニオンまたは酸誘導体アニオンであり、例えばAは、COO、SO3、SO2
、SO2NH、PO3、CH2OPO3、(CH2O)2PO2、C64O、OSO3、O(Rが
水素、アリール、またはアルキルアリールである場合)、
【化2】

好ましくはCOO、O、C64O、SO3、OSO3、または
【化3】

最も好ましくはCOO、O、SO3、およびOSO3であることが可能であり;R’はR(
上記)として定義され、R’の特定の選択は、Aに結合したRと同一または異なり、1つ
以上のA基がRに結合することが可能であり;
【0008】
Qはリン(phosphorous)(P)、硫黄(S)、窒素(N)、ヒ素(As)、またはアン
チモン(Sb)であり、kはQの原子価である。
【0009】
R’はそれぞれ独立して、水素、または炭素原子1〜20個を有する、置換もしくは非
置換アルキル、アリール、アラルキル、またはアルケニル基であり、ただしQが窒素であ
り、かつ組成物中のフルオロポリマーが、TFEと、パーフルオロビニルエーテルと、お
よびニトリル基を含むパーフルオロビニルエーテル硬化部位モノマーとのターポリマーか
ら本質的になる場合には、R’すべてがHではない。つまり、指定のターポリマーが組成
物中の唯一のフルオロポリマーである場合、QR’k基はNH4ではなく、しかしNR’4
、NHR’3、およびNH3R’2であり、すべて本発明の特定の実施形態の範囲内に含ま
れる。例えば硬化部位モノマーが、窒素を含有する部分フッ素化ビニルエーテルである場
合には、QR’k基はNH4であることが可能である。
【0010】
適切な置換基の例には、フッ素を除くハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素)、シア
ノ、OR3、およびCOOR3基(R3は、水素、アルカリ金属またはアルカリ土類金属か
ら選択され、そのうち、H、K、Na、およびNH4が好ましい)、C1〜C20アルキル、
アリール、アラルキル、アルケニル、およびR(上述の)基が含まれる。さらに、前記R
’基の任意の対が、互いに、およびQ原子と結びつき、複素環を形成することが可能であ
る。
【0011】
他の態様において、本発明は、上述の組成物を提供し、混合し、造形し、硬化し(つま
り、プレス加硫および任意には後硬化する)、任意に組成物を熱老化させることを含む、
フルオロポリマー組成物を製造する方法を提供する。本発明は、硬化性フルオロポリマー
における耐スコーチ性(スコーチ安全性)を高める方法であって、窒素含有硬化部位モノ
マーから誘導される共重合単位を含有するフルオロポリマーを提供するステップと、その
フルオロポリマーに、一般式:{RA}(-){QR’k(+)(式中、R、A、Q、R’、
およびkは、式(1)に関して上記で定義されているとおりである)を有する化合物、ま
たは個々にもしくは混合物として添加されるそれらの前駆物質を含有する非フッ素化触媒
組成物を組み込むステップと、を含む方法もまた提供する。本発明は、ホース、ガスケッ
ト、およびOリングなどの、硬化性または硬化した組成物を含有する物品もまた提供する

【0012】
その組成物は、有機スズ化合物またはアンモニア生成化合物をかかる硬化部位モノマー
と共に触媒系として使用した場合に通常達成される高温性能特性など、窒素含有硬化部位
モノマー(例えば、ニトリル基含有硬化部位モノマー)の使用の利点を有する。同時に、
その組成物は、有機スズ化合物を使用して製造した材料と比較して、圧縮永久ひずみ値な
どの向上した特性を示す。
【0013】
さらに、本発明の組成物は、通常考えられる早期加硫(スコーチ)を懸念することなく
、様々な成形または押出しなどの加工作業が可能であるような、調節可能な硬化開始時間
(誘導時間とも呼ばれる)、および硬化温度を有する。このように、本発明は、公知のア
ンモニア生成硬化系、例えば特許文献1および特許文献2に記載の硬化系に有効なより良
い耐スコーチ性を提供する。本発明の後硬化した組成物が、本発明の組成物を使用せず製
造された同等のフルオロポリマー化合物の物理的性質と少なくとも同じ程度の物理的性質
を示す限り、これらの利点は達成される。
【0014】
本発明の組成物は、高温での暴露および/または苛酷な化学物質暴露が考えられる用途
で有用である。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明で示される。本発明の他の特徴、目
的、および利点は、その説明および特許請求の範囲から明らかであるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の組成物は、フルオロポリマー、式(1)の触媒組成物、任意にアルコールを含
有する。
【0017】
適切なフルオロポリマーには、窒素含有モノマー、好ましくは少なくとも2種類の主要
なモノマーから誘導される共重合単位が含まれる。その主要なモノマーの適切な候補の例
には、パーフルオロオレフィン(例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキ
サフルオロプロピレン(HFP))、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフ
ルオロビニルエーテル(例えば、パーフルオロアルキルビニルエーテルおよびパーフルオ
ロアルコキシビニルエーテル)、および任意にはオレフィン(例えば、エチレン、プロピ
レン等)などの水素含有モノマー、およびフッ化ビニリデン(VDF)が含まれる。かか
るフルオロポリマーには、例えばフルオロエラストマーゴムおよび半結晶性フッ素樹脂が
含まれる。
【0018】
フルオロポリマーが、過ハロゲン化、好ましくは過フッ素化されている場合、それは、
TFEおよび/またはCTFE(任意にHFPを含む)から誘導されるその共重合単位を
少なくとも50モルパーセント(モル%)含有する。フルオロポリマーに対する共重合単
位のバランス(10〜50モル%)は、1つ以上のパーフルオロビニルエーテルおよび適
切な窒素含有硬化部位モノマー(例えば、ニトリル含有ビニルエーテルまたはビニルエー
テルを含有するイミデート)から成り立つ。その硬化部位モノマーは、エラストマーの約
0.1〜約5モル%(さらに好ましくは、約0.3〜約2モル%)を占める。
【0019】
フルオロポリマーが過フッ素化されていない場合、それは、TFE,CTFE、および
/またはHFPから誘導されるその共重合単位を約5〜約90モル%、VDF、エチレン
、および/またはプロピレンから誘導されるその共重合単位を約5〜約90モル%、ビニ
ルエーテルから誘導されるその共重合単位を約40モル%まで、適切な窒素含有硬化部位
モノマーを約0.1〜約5モル%(さらに好ましくは、約0.3〜約2モル%)含有する

【0020】
適切な過フッ素化ビニルエーテルには、次式:
CF2=CFO(R2fO)a(R3fO)b4f (2)
(式中、R2fおよびR3fは、同一または異なる、炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝
鎖状パーフルオロアルキル基であり;aおよびbは独立して、0または1〜10の整数で
あり;R4fは、炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基である)のビニルエーテルが
含まれる。
【0021】
パーフルオロアルキルビニルエーテルの好ましい種類には、次式:
CF2=CFO(CF2CFXO)d4f (3)
(式中、XはFまたはCF3であり;dは0〜5であり、R4fは炭素原子1〜6個のパ
ーフルオロアルキル基である)の組成物が含まれる。
【0022】
最も好ましいパーフルオロアルキルビニルエーテルは、上記の式(2)または(3)の
いずれかを参照して、式中、dが0または1であり、R2f、R3f、およびR4fそれぞれが
炭素原子1〜3個を含有するものである。かかる過フッ素化エーテルの例には、パーフル
オロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、およびパーフルオロプ
ロピルビニルエーテルが含まれる。
【0023】
他の有用な過フッ素化モノマーには、次式:
CF2=CFO[(CF2e(CFZ)gO]h4f (4)
(式中、R4fは炭素原子1〜6個を有するパーフルオロアルキル基であり、eは1〜5
であり、gは0〜5であり、hは0〜5であり、ZはFまたはCF3である)の化合物が
含まれる。この種類の好ましいメンバーは、式中、R4fがC37であり、eが1または2
であり、gが0または1であり、hが1であるメンバーである。
【0024】
本発明において有用なその他のパーフルオロアルキルビニルエーテルモノマーには、次
式:
CF2=CFO[(CF2CF(CF3)O)k(CF2pO(CF2q]CrF2r+1(5)
(式中、kは0〜10であり、pは1〜6であり、qは0〜3であり、rは1〜5であ
る)のモノマーが含まれる。この種類の好ましいメンバーには、式中、kが0または1で
あり、pが1〜5であり、qが0または1であり、rが1である化合物が含まれる。
【0025】
本発明において有用なパーフルオロアルコキシビニルエーテルには、次式:
CF2=CFO(CF2t[CF(CF3)]uO(CF2O)wx2x+1 (6)
(式中、tは1〜3であり、uは0〜1であり、wは0〜3であり、xは1〜5、好ま
しくは1である)のビニルエーテルが含まれる。有用なパーフルオロアルコキシビニルエ
ーテルの特定の代表的な例には、CF2=CFOCF2OCF2CF2CF3、CF2=CFO
CF2OCF3、CF2=CFO(CF23OCF3、およびCF2=CFOCF2CF2OC
3が含まれる。パーフルオロアルキルビニルエーテルとパーフルオロアルコキシビニル
エーテルとの混合物もまた使用することができる。
【0026】
本発明で有用なパーフルオロオレフィンには、次式:
CF2=CF−R5f, (7)
(式中、R5fはフッ素、または炭素原子1〜8個、好ましくは1〜3個のパーフルオロ
アルキルである)のオレフィンが含まれる。
【0027】
さらに、フルオロポリマーを過フッ素化しない場合には、部分フッ素化モノマーまたは
オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等)などの水素含有モノマー、およびフッ化
ビニリデンを本発明のフルオロポリマーにおいて使用することができる。
【0028】
有用なフルオロポリマーの一例は、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のパーフ
ルオロアルキルビニルエーテルの主要なモノマー単位で構成される。かかるコポリマーに
おいて、共重合した過フッ素化エーテル単位は、ポリマー中に存在する全モノマー単位の
約10〜約50モル%(さらに好ましくは、15〜35モル%)を占める。
【0029】
1種または複数種の他のフルオロポリマーを、窒素含有硬化部位モノマーから誘導され
る共重合単位を有するフルオロポリマーに組み込むことが可能である。さらに、1種また
は複数種の他のフルオロポリマー(1種または複数種のコポリマーを含むことが可能であ
る)を、窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を有するフルオロポリマー
(コポリマーを含むことが可能である)とブレンドしてもよい。ブレンドおよび/または
コポリマーにおいて有用な、他のかかるフルオロコポリマーには、上述の列挙全体が含ま
れ、ホモポリマーおよび上記の共重合単位を含有するコポリマーが含まれる。例えば、ポ
リテトラフルオロエチレン(PTFE)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフ
ルオロビニルエーテル)が有用である。他のフルオロポリマー(1種または複数種)は、
窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を含まないこと、かつ/または選択
される硬化剤系に適合する反応性部位を含むことが可能である。例えば、ニトリル基を含
むモノマーなど、窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位をそれぞれ有する
、2種類の異なるフルオロポリマーをブレンドして、本発明にフルオロポリマーを提供す
ることが可能である。
【0030】
別のフルオロポリマーを、以下に記述するような別の硬化剤と共に含有させて、特定の
特性を提供することができる。例えば、過酸化物硬化および過酸化物硬化剤に適したフル
オロポリマーを含ませて、化学安定性を改善することができる。かかるブレンドは、得ら
れたブレンドの熱安定性と化学安定性のバランスがとれており、経済上の利点もまた提供
する。これらの他の硬化剤を使用して、窒素含有硬化部位モノマーを含まないフルオロポ
リマーを含ませる必要なく、窒素含有フルオロポリマーのブレンドを硬化することもでき
る。
【0031】
窒素含有硬化部位を有するフルオロポリマー(1種または複数種)は、全フルオロポリ
マーに対して、本発明の組成物を含まない比較用フルオロポリマーよりも高い熱安定性を
提供するのに十分な量を占める。この量は一般に、本発明における全フルオロポリマーに
対して、少なくとも25重量パーセント(重量%)、さらに好ましくは少なくとも50重
量%である。一部の実施形態では、そのフルオロポリマーは、全体的に窒素含有共重合単
位から構成される。
【0032】
そのフルオロポリマーは当技術分野で公知の方法によって製造することができる。例え
ば、その重合プロセスは、水性乳化重合または有機溶媒中での溶液重合として、モノマー
のラジカル重合によって行うことができる。フルオロポリマーのブレンドが望ましい場合
には、組み込むのに好ましい経路は、選択された比でフルオロポリマーラテックスをブレ
ンドし、続いて凝固および乾燥させることによる経路である。
【0033】
末端基の性質および量は、本発明のフルオロエラストマーの硬化の成功には重要ではな
い。例えば、そのポリマーは、APS/亜硫酸系によって生成されたSO3(-)末端基を含
有するか、またはそのポリマーは、APS開始剤系によって生成されたCOO(-)末端基
を含有することが可能であり、またはそのフルオロエラストマーは、「中性」末端基、例
えばフルオロスルフィナート開始剤系もしくは有機過酸化物の使用によって生成された基
を有することができる。任意の種類の連鎖移動剤によって、末端基の数をかなり減らすこ
とができる。所望の場合には、例えば処理を改善するために、SO3(-)などの強い極性の
末端基の存在を最小限にし、COO(-)末端基の場合には、その量を後処理(例えば、脱
カルボキシル化)によって低減することができる。
【0034】
その硬化部位成分によって、フルオロポリマーを硬化させることが可能となる。硬化部
位成分は一部または完全にフッ素化することができる。少なくとも1種類のフルオロポリ
マーの少なくとも1種類の硬化部位成分は、窒素含有基を含む。本発明の硬化部位モノマ
ーにおいて有用な窒素含有基の例には、ニトリル、イミデート、アミジン、アミド、イミ
ド、およびアミンオキシド基が含まれる。有用なニトリル基含有硬化部位モノマーには、
以下に記述するような、ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビ
ニルエーテルが含まれる:
CF2=CFO(CF2LCN (8)
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]q(CF2O)yCF(CF3)CN (9)
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]rO(CF2tCN (10)
CF2=CFO(CF2uOCF(CF3)CN (11)
上記の式を参照して、式中、L=2〜12;q=0〜4;r=1〜2;y=0〜6;t
=1〜4;およびu=2〜6である。かかるモノマーの代表的な例には、CF2=CFO
(CF23OCF(CF3)CN、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジ
オキサ−1−オクテン)、およびCF2=CFO(CF25CNが含まれる。
【0035】
本発明において有用な他の適切な硬化部位成分は、過酸化物の硬化反応に関与すること
ができる水素を含有するフルオロポリマーまたはフッ素化モノマー材料である。かかるハ
ロゲンは、フルオロポリマー鎖に沿って、かつ/または末端位置に存在する。通常、ハロ
ゲンは臭素またはヨウ素である。フルオロポリマー鎖に沿った位置にハロゲンを導入する
のには、共重合が好ましい。この経路において、上記のフルオロポリマー成分の選択は、
適切なフッ素化硬化部位モノマーと組み合わされる。かかるモノマーは、例えば、一般式
Z−Rf−Ox−CF=CF2(式中、ZはBrまたはIであり、Rfは、過フッ素化される
か、または1つ以上のエーテル酸素原子を含有することが可能である、置換または非置換
1〜C12フルオロアルキレンであり、xは0または1である)から選択することができ
る。xが0である場合、ブロモまたはヨード−フルオロオレフィンの例には、ブロモジフ
ルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、1−ブロ
モ−2,2−ジフルオロエチレン、および4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ
ブテン−1等が含まれる。xが1である場合には、ブロモまたはヨード−フルオロビニル
エーテルの例には、BrCF2OCF=CF2、BrCF2CF2OCF=CF2、BrCF2
CF2CF2OCF=CF2、CF3CF(Br)CF2OCF=CF2等が含まれる。さらに
、非フッ素化ブロモまたはヨード−オレフィン、例えば臭化ビニルおよび4−ブロモ−1
−ブテンを使用することができる。
【0036】
フルオロポリマーの側鎖位置にある硬化部位成分の量は一般に、約0.05〜約5モル
%(さらに好ましくは、0.1〜2モル%)である。
【0037】
その硬化部位成分は、フルオロポリマー鎖の末端位置に存在することも可能である。連
鎖移動剤または開始剤を使用して、末端位置にハロゲンを導入する。一般に、適切な連鎖
移動剤は、ポリマー製造中に反応媒体中で導入されるか、または適切な開始剤から誘導さ
れる。
【0038】
有用な連鎖移動剤の例には、式Rfx(式中、Rfは、過フッ素化することが可能な、
未置換または非置換C1〜C12フルオロアルキルラジカルであり、ZはBrまたはIであ
り、xは1または2である)を有するものが含まれる。臭素を含有する詳細な例には、C
2Br2、Br(CF22Br、Br(CF24Br、CF2(Cl)Br、CF3CF(
Br)CF2Br等が含まれる。
【0039】
有用な開始剤の例には、NaO2S(CF2nX(式中、XはBrまたはIであり、n
は1〜10である)が含まれる。
【0040】
フルオロポリマーの末端位置にある硬化部位モノマーの量は一般に、約0.05〜約5
モル%(さらに好ましくは、0.1〜2モル%)である。
【0041】
硬化部位成分の組み合わせもまた有用である。例えば、過酸化物の硬化反応に関与する
ことができる水素を含有するフルオロポリマーは、ニトリル基含有硬化部位成分などの窒
素含有硬化部位成分も含有することが可能である。一般に、硬化部位成分全体の約0.1
〜約5モル%(さらに好ましくは、約0.3〜約2モル%)がフルオロポリマーに組み込
まれる。
【0042】
本発明のフルオロポリマー組成物は、オルガノ−オニウム(ハロゲン化物、水酸化物、
アルコキシド等)と酸もしくは酸性塩との反応生成物である、非フッ素化オルガノ−オニ
ウム触媒組成物を使用して、少なくとも一部が硬化される。その触媒組成物は、次式:
{RA}(-){QR’k(+)
(式中、R、A、Q、R’、およびkは上述の通りである)を有する化合物を含む。好
ましいアニオンには、式中、Rがアルキル、ベンジル、およびフェニルから選択され、A
がCOO、SO3から選択され、Rがアリールまたはアルカリルである場合には、Aが0
である、アニオンが含まれる。
【0043】
本発明の触媒組成物は、水和しているか、または無水であることが可能である。その触
媒は、水および/アルコールと錯体の形をとることが可能である。その触媒は、いずれか
の公知の手段によって製造することができる。触媒を製造するための一例は、市販の水酸
化物前駆物質を安息香酸または酢酸の錯体に転化することを含む。別の例は、溶媒中でハ
ロゲン化オニウムを酸金属塩と反応させ、沈殿したハロゲン化金属を濾過し、溶媒を除去
することを含む。その他の経路は当業者には明らかだろう。
【0044】
さらに詳細には、本発明の触媒におけるRAアニオンは、カルボン酸塩、アルコキシド
、硫酸塩、スルホン酸塩、またはフェノラートであることが可能である。本明細書で使用
される「置換」とは、所望の生成物に干渉しない置換基によって置換されることを意味し
、「Ph」はフェニルである。適切なアニオンには、一般式:
x−Phy−(−(CH2n−D)m
(式中、xとmの合計が6以下であり、かつxとyがどちらも0ではないという条件で
、各Rxは、置換または非置換であることが可能である炭素原子1〜10個の同一または
異なるアルケニルまたはアルキルであり、xは0〜5であり、yは0または1であり、n
は0〜10であり、mは1〜5であり、DはCOO、OSO3、SO3、およびO(yが1
である場合)から選択される)の非過フッ素化アニオンが含まれる。
【0045】
有用なアニオンの例には、Ph−COO、Ph−O、CH3−(CH2p−O−SO3
式中、pは1〜10である)および一般式R−COO(Rは、炭素原子1〜10個のアル
ケニル、アルキル、または炭素原子6〜20個のアリールである)のカルボキシレート、
例えばアセテート、プロピオネートが含まれる。多価カルボキシレート、多価スルフェー
ト、多価スルホネート、およびそれらの組み合わせもまた有用であり、例えば、(-)OO
C−(CH2p−COO(-)および(-)OOC−(CH2n−OSO3(-)(式中、pは0〜
10である)およびPh−((CH2p−COO(-)q(式中、pおよびqは独立して、
1〜4である)である。二官能カルボン酸の好ましい種類はシュウ酸である。上記の2種
類以上の化合物の組み合わせを式1のRAに用いることができる。
【0046】
代表的な芳香族ポリオキシ化合物には、非過フッ素化ジ、トリ、およびテトラオキシベ
ンゼン、ナフタレン、およびアントラセン、および次式:
(-)z−Ph−Gy−Ph−Oz(-)
(式中、Gは結合、または炭素原子1〜13個の二官能脂肪族、脂環式、もしくは芳香
族ラジカル、またはチオ、オキシ、カルボニル、スルフィニル、またはスルホニルラジカ
ルであり、Gおよび/またはPhは任意に、少なくとも1つの塩素またはフッ素原子で置
換され、yは0または1であり、zはそれぞれ独立して、1または2であり、ポリオキシ
化合物のいずれかの芳香環が任意に、塩素もしくは臭素原子の少なくとも1つの原子、ま
たはカルボキシルまたはアシルラジカル(例えば、−COR、式中、RはHまたはC1
8アルキル、アリールまたはシクロアルキル基である)または例えば炭素原子1〜8個
を有するアルキルラジカルで置換される)のビスフェノールが含まれる。上記のビスフェ
ノールの式では、酸素基がどちらかの環の任意の位置(1位以外)で結合することができ
る。2種類以上のかかる化合物のブレンドもまた使用することができる。Rx−Ph−O
−QR’kのモノおよびビス錯体もまた有用である。これらの材料の好ましい種類には、
一般式:(-)O−Ph−C(CX32−Ph−O(-)(式中、XはHまたはClである)を
有するビスフェノールなどが含まれる。多官能の酸を使用する場合、QR’kとのモノ、
ビス、およびマルチ錯体を使用することができる。
【0047】
当技術分野で公知のように、オルガノ−オニウムは、ルイス塩基(例えば、ホスフィン
、アミン、スルフィド)の共役酸であり、適切なアルキル化剤(例えば、ハロゲン化アル
キルまたはハロゲン化アシル)と前記ルイス塩基を反応させることによって形成すること
ができ、その結果、ルイス塩基の電子供与原子の原子価およびオルガノ−オニウム化合物
上の正の電荷が増大する。本発明において好ましいオルガノ−オニウム化合物は、少なく
とも1つのヘテロ原子、つまり有機部位に結合したP、S、またはNなどの非炭素原子を
含有する。
【0048】
本発明において特に有用な第4級オルガノ−オニウム化合物の1つの種類は、相対的に
正および相対的に負のイオンを広く含み、リン、硫黄、または窒素は一般に、正イオンの
中心原子を含み、負イオンは非フッ素化アルキルまたはシクロアルキル酸アニオンである

【0049】
Qがリンである場合、適切な前駆物質化合物の例には、テトラメチルホスホニウム、ト
リブチルアリルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、ジブチルジフェニルホ
スホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリブチル(2−メトキシ)プロピルホスホニ
ウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、およびテトラフェニルホスホニウムが含まれ
る。これらのホスホニウムは、水酸化物、塩化物、臭化物、アルコキシド、フェノキシド
等であることが可能である。テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラアル
キルホスホニウムアルコキシドが好ましい。
【0050】
第4級オルガノ−オニウム化合物は無機塩として使用することもできる。例えば、Aを
酸素として、QR’kと同一または同様な種としてRを選択する場合、(QR’4+)(C
32-)R、(QR’4+2CO32-、(QR’42+SO42-など、{QR’k(+){AR
(-)または{QR’k(+){AQR’k(-)の形の塩が有用である。同様に、(QR’4
+OH-などの{QR’k(+){OR}(-)の形の塩が有用である。したがって、基{R
A}(-)は、炭酸塩、硫酸塩、および他の無機酸のアニオンのような物質、およびQR’
と同一または同様な種を含む。このパラグラフにおいて、式1を参照して、R、R’、A
、Q、kは上述のとおりである。さらに詳細には、(PR’4+2CO32-、(PR’4+
OH-、(PR’42+SO42-などのホスホニウム塩を本発明において使用することがで
きる。これらの物質の中で、炭酸塩が好ましい。
【0051】
他の種類のホスホニウム化合物には、アミノ−ホスホニウム、ホスホラン(例えば、ト
リアリールホスホラン)、およびリン含有イミニウム化合物からなる群から選択される化
合物が含まれる。
【0052】
本発明で有用なアミノ−ホスホニウム化合物には、当技術分野において、例えば特許文
献3(Moggiら)に記述されている化合物が含まれる。
【0053】
本発明において有用なリン化合物の種類には、ホスホラン化合物、例えばトリアリール
ホスホラン化合物が含まれ、後者の化合物のいくつかは公知であり、例えばその開示内容
が参照により本明細書に組み込まれる、特許文献4(de Brunner)を参照のこ
と。かかるホスホラン化合物は最初に、酸と反応して塩を形成し、次いでその塩は硬化剤
成分として使用される。本発明で有用なトリアリールホスホラン化合物のいくつかは、一
般式:
【化4】

(式中、Arはアリールであり、例えばフェニル、置換フェニル、例えばメトキシフェ
ニル、クロロフェニル、トリル、および他の公知の基、例えばナフチルから選択される)
を有する。R3およびR4は、(1)(a)R3の場合には、水素、メチル、エチル、プロ
ピル、およびカルバルコキシ(C1〜C6アルキル)、(b)R4の場合には、カルバルコ
キシ(C1〜C6アルキル)シアノ、および−CONH2から個々に選択される別々の基;
および(2)その単一の基が結合して、その炭素原子と共に、次式:
【化5】

から選択される環状基を形成する単一の基;からなる群から選択される。
【0054】
代表的なホスホニウム化合物には、ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムク
ロライド、およびビス(ベンジルジフェニルホスフィン)イミニウムクロライドが含まれ
る。
【0055】
本発明において有用なスルホニウム化合物は、アニオンとイオン会合し、かつ炭素−硫
黄二重結合によって3つの有機部位(R’)に二重結合する、少なくとも1つの硫黄原子
を有する。前記有機部位は同一または異なる。スルホニウム化合物は、相対的に正の複数
の硫黄原子、例えば[(C652+(CH24+(C652]2Cl-を有すること
が可能であり、炭素−硫黄二重結合のうち2つは、二価有機部位の炭素原子間にあること
が可能である。つまり、その硫黄原子は環状構造におけるヘテロ原子である。
【0056】
本発明で有用なスルホニウム化合物の種類は、次式:
【化6】

(式中、かかる基の少なくとも1つが芳香族であるという条件で、R5、R6、およびR7
は同一または異なることが可能であり、かかる基は、C4〜C20芳香族ラジカル(例えば
、置換および非置換フェニル、チエニル、およびフラニル)およびC1〜C20アルキルラ
ジカルから選択することができる)を有する塩を含む。そのアルキルラジカルには、置換
アルキルラジカル(例えば、フッ素以外のハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリール
などの置換基)が含まれる。Zは、酸素;硫黄;>S=O;>C=O;−−SO2−−;
−−NR8−−(R8はアリールまたはアシル(アセチル、ベンゾイルなど)である);炭
素−炭素結合;−CR910−−(R9およびR10は、水素、C1〜C4アルキルラジカル、
およびC2〜C4アルケニルラジカルからなる群から選択される)から選択される。
【0057】
そのスルホニウム化合物は、R’に少なくとも1つのアリール基を有することが好まし
い。
【0058】
Qが窒素である場合には、好ましい正イオンは、NR’4またはHNR’3の一般式(式
中、R’は上述のとおりである)を有する。前駆物質化合物として有用な、代表的な第4
級オルガノ−オニウムには、フェニルトリメチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニ
ウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアン
モニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベンジル
アンモニウム、トリブチルアリルアンモニウム、テトラベンジルアンモニウム、テトラフ
ェニルアンモニウム、ジフェニルジエチルアミノアンモニウム、トリフェニルベンジルア
ンモニウム、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エニ
ウム、ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム、およびビス(ベンジルジフェニ
ルホスフィン)イミニウムが含まれる。これらのアンモニウムは、水酸化物、塩化物、臭
化物、アルコキシド、フェノキシド等であることが可能である。これらの正イオンの中で
は、テトラブチルアンモニウムおよびテトラフェニルアンモニウムが好ましい。QがAま
たはSbである場合には、好ましい正イオンには、テトラフェニルアルソニウムクロライ
ドおよびテトラフェニルスチボニウムクロライドが含まれる。全体的に、テトラアルキル
ホスホニウム化合物が、触媒の正イオンに対してさらに好ましい。
【0059】
オルガノ−オニウム化合物の混合物もまた、本発明で有用である。
【0060】
上述の前駆物質は一般に市販されているが(例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキー
のアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals,Milwauke
e,WI)から)、当技術分野で公知の手順によって製造することができる。
【0061】
本発明の触媒を製造するのに有用な炭化水素の酸または塩は、一般式RCOOM、RS
3M、ROSO3M、またはROMを有する。これらの式中、Rは式(1)について上述
のとおりであり、Mは水素、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属である。Rに
ついて代表的な物質は、上述されるカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、お
よびフェノラートである。
【0062】
さらに、2つ以上のRA基および/または2つ以上のQR’k基のブレンドを含む、上
述の2種類以上の触媒化合物のブレンドを使用することができる。
【0063】
本発明の触媒組成物は、任意の適切な方法によって製造することができる。例えば、本
発明において触媒組成物として使用される活性錯体の2成分、{RA}(-){QR’k(+
)を酸または塩として、例えばRAX(Xは、水素、またはアルカリ金属もしくはアルカ
リ土類金属から選択され、その中でH、K、Na、およびNH4が好ましい)およびQR
kZ(Zは、有機または無機であることが可能であるアニオンから選択され、好ましく
はCl、Br、OH、OR3、またはSO4である)として、別々に組み込むことができる
。その2成分は、本発明のエラストマーゴムに別々に、または混合物として添加すること
ができる。この方法では、活性錯体が、処理、加熱、および硬化中にその場で形成される
。清浄な用途(例えば、半導体)に特に重要である、汚染および抽出物の含有を防ぐため
に、フルオロエラストマー組成物に組み込む前に、錯体を製造すべきであり、活性錯体を
エラストマーゴムに組み込む前に、得られた塩XZを濾過または洗浄すべきである。触媒
組成物を製造するために、当業者に公知の他の適切な方法もまた使用することができる。
例えば、得られた塩XZを沈殿させ、濾過する前に、その触媒組成物の2つの成分を適切
な溶媒(例えば、アルコール)に溶解することができる。塩の形成は、オニウム−ヒドロ
キシドまたはオニウム−アルコキシドとしてオニウム成分を触媒組成物の酸性成分と反応
させる(例えば、Bu4NOHをRCOOHと反応させる)ことによって防ぐことができ
る。溶媒中に溶解した場合に、または乾燥した化合物として、その活性錯体をエラストマ
ーゴムに組み込むことができる。過剰なQR’k物質(例えば、テトラアルキルホスホニ
ウムクロライド)または遊離酸(例えば、RAH)は、ポリマーの特性に悪影響を及ぼさ
ない。
【0064】
有効量の選択された硬化剤化合物({RA}(-){QR’k(+))を使用して、フルオ
ロポリマーを架橋させる。硬化剤の量が少なすぎる場合には、フルオロポリマーは、所望
の物理的性質を得るのに十分に架橋せず、かつ/または望まれるよりもゆっくりと架橋す
る可能性がある。硬化剤の量が多すぎる場合には、フルオロポリマーは、望ましい程度よ
りも適合性が低い物質へと架橋し、かつ/または所望のプロセス条件に対して急速に架橋
しすぎる可能性がある。特定の組成物を選択することによって、望ましい硬化剤の量に影
響が及び得る。例えば、選択される充填剤の種類および/または量によって、充填剤を添
加されていないが同様な組成物に比べて、硬化が抑制されるか、または促進される場合が
あり、当業者に公知の硬化剤の量を適切に調節する必要がある。
【0065】
フルオロポリマーの組成は、1種または複数種の硬化剤の量にも影響を及ぼす。例えば
、ニトリル含有フルオロポリマーとニトリル硬化部位を含有しない別のフルオロポリマー
とのブレンドを使用する場合、選択された有効量の第1硬化剤化合物を使用して、他のフ
ルオロポリマーを架橋するのに使用される、選択された有効量の第2硬化剤化合物と共に
ニトリル基含有モノマーから誘導される共重合単位を有するフルオロポリマーを架橋する
。選択された第1および第2の硬化剤は、同一または異なる組成を有する。つまり、選択
された硬化剤のいずれか一方または両方が、いずれか一方または両方のフルオロポリマー
を架橋するように作用する。
【0066】
一般に、2種類以上の組成物を含むことが可能である、有効量の硬化剤は、硬化剤0.
2〜10ミリモル/ゴム100部(mmhr)(さらに好ましくは、0.5〜5mmhr
)の範囲である。
【0067】
本発明の利点の1つは、調節可能な硬化レオロジーである。トルクの最初の降下後、物
質の温度の上昇に対応して、トルクが最終値または最大値に急速に上昇した後、比較的長
い時間(「誘導時間」)使用できる。それは架橋するため、トルクの急速な上昇は、組成
物の粘度の急速な上昇に対応する。その誘導時間は、数秒から数分まで調節可能である。
これによって、特定の本発明の組成物を硬化開始前に形成または成形するのに十分な長さ
の誘導時間が可能となる。また、このレオロジーによって、硬化開始後の硬化サイクルが
迅速に完了し、その結果、硬化サイクルを延長する必要はない。このように、本発明の組
成物は、それが損傷なく取り扱うことができる状態にまで完全に形成または成形され、迅
速に硬化することでき、金型から除去することができる。
【0068】
フルオロポリマー組成物の硬化は、本発明の触媒と共に他の種類の硬化剤を使用するこ
とによって改良することもできる。かかる硬化剤の例は公知であり、ビス−アミノフェノ
ール(例えば、特許文献5および特許文献6に記載されている)、ビス−アミドオキシム
(例えば、特許文献7に記載されている)、およびアンモニウム塩(例えば、特許文献8
に記載されている)が含まれる。さらに、例えば特許文献9、特許文献10に記載されて
いる、ヒ素、アンチモンおよびスズの有機金属化合物を使用することができる。特定の例
には、アリル−、プロパルギル−、トリフェニル−、アレニル、およびテトラフェニルス
ズおよびトリフェニルスズヒドロキシドが含まれる。
【0069】
本発明のフルオロエラストマー組成物は、上述の触媒と共に1種または複数種のアンモ
ニア発生化合物を使用して硬化させることができる。「アンモニア発生化合物」には、周
囲条件で固体または液体であるが、硬化条件下でアンモニアを発生する化合物が含まれる
。かかる化合物には、例えばヘキサメチレンテトラアミン(ウロトロピン)、ジシアンジ
アミド、および次式:
w+(NH3xw- (15)
(式中、Aw+は、Cu2+、Co2+、Co3+、Cu+、およびNi2+などの金属カチオン
であり;wは金属カチオンの原子価に等しく;Yw-は対イオン、通常ハロゲン化物、硫酸
、硝酸、酢酸イオン等であり;xは1〜約7の整数である)の金属含有化合物が含まれる

【0070】
アンモニア発生化合物として、次式:
【化7】

(式中、Rは水素、または炭素原子1〜約20個を有する置換もしくは非置換アルキル
、アリール、またはアラルキル基である)などの、置換および非置換トリアジン誘導体も
また有用である。特定の有用なトリアジン誘導体には、ヘキサヒドロ−1,3,5−s−
トリアジンおよびアセトアルデヒドアンモニア三量体が含まれる。
【0071】
窒素含有硬化部位モノマー−含有フルオロポリマーを単独で含む、本発明のフルオロエ
ラストマー組成物は、上述の触媒と共に1種または複数種の硬化剤を用いて硬化させるこ
とができる。適切な過酸化物硬化剤は一般に、その開示内容が参照により本明細書に組み
込まれる(特許文献11)に記述されているように、硬化温度で遊離基を生成するもので
ある。それぞれが50℃を超える温度で分解する、過酸化ジアルキルおよびビス(過酸化
ジアルキル)が特に好ましい。多くの場合には、ペルオキシ酸素原子に結合する第3級炭
素原子を有するジ−t−ブチルペルオキシドを使用することが好ましい。この種類の最も
有用な過酸化物は、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−
3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンである。他の
過酸化物は、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、a,a’−
ビス(t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン)、およびジ[1,3−ジメチル
−3−(t−ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネートなどの化合物から選択すること
ができる。一般に、パーフルオロエラストマー100部当たり過酸化物約1〜3部を使用
する。
【0072】
本発明で有用な別の硬化剤は、一般式:
CH2=CH−R−CH=CH2
(式中、1つ以上のH原子を、F以外のハロゲン原子で置換することが可能であり、R
はC1〜C8直鎖状または分枝鎖状のアルキレン、シクロアルキレン、またはオキシアルキ
レンである)を有する。同様に、CH2=CHR−の側基を含有するポリマーもまた、本
発明において硬化剤として有用である。かかる硬化剤は、例えば(特許文献12)に記載
されている。
【0073】
触媒と硬化剤との組み合わせは一般に、全フルオロポリマー量の約0.01〜約10モ
ル%(さらに好ましくは、約0.1〜約5モル%)である。
【0074】
このフルオロポリマー組成物は、硬化性フルオロポリマー配合物に通常用いられる補助
剤のいずれかを含有することができる。例えば、硬化剤系の一部としてフルオロポリマー
組成物とブレンドされることが多い、ある材料は、有用な硬化を提供する過酸化物硬化剤
と協力することができる多価不飽和化合物から構成される硬化助剤(時に、共硬化剤とも
呼ばれる)である。これらの硬化助剤は、過酸化物硬化剤との組み合わせにおいて特に有
用である。硬化助剤(1種または複数種)は一般に、フルオロポリマー100部当たり硬
化助剤0.1〜10部(phr)、好ましくは1〜5phrに等しい量で添加することが
できる。本発明のオルガノ−オニウム化合物で有用な硬化助剤の例には、トリアリルシア
ヌレート;トリアリルイソシアヌレート;トリ(メチルアリル)イソシアヌレート;トリ
ス(ジアリルアミン)−s−トリアジン;亜リン酸トリアリル;N,N−ジアリルアクリ
ルアミド;ヘキサアリルホスホルアミド;N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフ
タルアミド;N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレ
ート;2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン;およびトリ(5−ノルボルネン−
2−メチレン)シアヌレートが含まれる。トリアリルイソシアヌレートが特に有用である
。他の有用な硬化助剤には、特許文献13、特許文献14、特許文献15、および特許文
献12に開示のビス−オレフィンが含まれる。
【0075】
任意のアルコールは、一般式R2−OH(式中、R2は炭素原子1〜20個、さらに好ま
しくは炭素原子6〜12個を有するアルキル基である)を有する。R2は、フッ素化する
ことが可能であり、例えばRf−CH2−OHまたはRf−CH2CH2−OH(式中、Rf
パーフルオロアルキル、例えばCn2n+1(nは1〜20である)、またはパーフルオロ
シクロアルキル、例えばCm2m-1(mは3〜20である)、またはC1〜C20フルオロア
ルケニルである。Rfもまた部分フッ素化することができる。本明細書で使用される「部
分フッ素化」とは、少なくとも1つのF原子が残ることを条件として、アルキル基中の1
つ以上のF原子がH、Cl、Br、またはIで置換されることを意味する。Rfはまた、
少なくとも1つのヘテロ原子、つまりO、P、S、またはNなどの非炭素原子を含有する
ことができる。
【0076】
アルコールの添加は必要ではないが、組成物の粘度および硬化特性を改善するのに役立
つ場合がある。アルコールは、全組成物に相溶性であるように選択される。そのアルコー
ルはまた、練り操作中にフルオロポリマーと触媒との混合物中に残存するほうがよい。ア
ルコールは、後硬化操作中など、高温でのその後の処理中に蒸発することが好ましい。本
発明で好ましいアルコールの例には、オクタノールおよびデカノールが含まれる。有効量
のアルコールが硬化剤系に使用される。この量は、アルコールと触媒との望ましい比、選
択される特定のアルコール、および練り温度を含む、いくつかの因子によって決定される
。選択される組成物についての特定のレベルは一般に、通常の実験の問題である。一般的
に、この量は、フルオロポリマー100重量部当たりアルコール0.01〜10(さらに
好ましくは、0.5〜5)重量部の範囲である。
【0077】
このように、本発明の特定の組成物は、2種類以上のフルオロポリマー(少なくとも1
種類のフルオロポリマーが、窒素含有モノマーから誘導される共重合単位を含むことを条
件として)、式(1)の触媒組成物、フルオロポリマーの1種または複数種以上を架橋す
るように選択される過酸化物硬化剤、任意にトリアリルイソシアヌレートなどの硬化助剤
、および任意にアルコールを含むことが可能である。
【0078】
カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤、およびフルオロポリマーの配合
で通常用いられる加工助剤などの添加剤を、それらが意図される使用条件に適した安定性
を有するという条件で、組成物に組み込むことができる。特に、パーフルオロポリエーテ
ルを組み込むことによって、低温性能を高めることができる。特許文献16を参照のこと

【0079】
カーボンブラック充填剤は通常、組成物のモジュラス、引張強さ、伸び、硬度、耐摩耗
性、伝導率、および加工性のバランスをとる手段として、フルオロポリマー中にも使用さ
れる。その適切な例には、N−991、N−990、N−908、およびN−907とし
て示されるMTブラック(中間のサーマルブラック);FEF N−550;大きな粒径
のファーネスブラックが含まれる。大きな粒径のブラックを使用する場合、フルオロポリ
マー100部当たり充填剤1〜70部(phr)が一般に十分な量である。
【0080】
フルオロポリマー充填剤はまた、該組成物中に存在していてもよい。一般に、1〜50
phrのフルオロポリマーが用いられる。フルオロポリマー充填剤は細かく分割され、本
発明の組成物の製造および硬化で使用される最高温度で固体として容易に分散させること
ができる。固体とは、充填剤材料が、一部結晶である場合に硬化性組成物(1種または複
数種)の加工温度(1つ以上)を超える結晶融解温度を有すると考えられることを意味す
る。フルオロポリマー充填剤を組み込むのに好ましい方法は、ラテックスをブレンドする
ことによる方法である。様々な種類のフルオロポリマー充填剤を含むこの手順は、その開
示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2000年2月1日出願の特許文献17に
記述されている。
【0081】
1種または複数種の酸受容体もまた、本発明の組成物に添加することができる。しかし
ながら、抽出性金属化合物が存在することが望ましくない場合(半導体用途など)、無機
酸受容体の使用は最小限に抑えるべきであり、完全に使用を避けることが好ましい。有用
な酸受容体には、例えば酸化亜鉛、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウ
ム、シリカ等が含まれる。
【0082】
本発明の硬化性フルオロポリマー組成物は、過酸化物−硬化性フルオロポリマー組成物
などの他のフルオロポリマー組成物と組み合わせることもできる。これらのその他の硬化
性フルオロポリマー組成物には、コモノマーとして少量の硬化部位モノマーも使用するこ
とができる。適切な硬化部位モノマーは、硬化剤(例えば、過酸化物)、好ましくは硬化
助剤と合わせると、硬化した組成物が得られるであろうモノマーである。これらの硬化部
位モノマーは、少なくとも1つのハロ基(例えば、ブロモもしくはヨード基)を含むこと
が好ましい。
【0083】
その硬化性フルオロポリマー組成物は、1種または複数種のフルオロポリマー、触媒、
選択された任意の添加剤(1種または複数種)、任意のその他の硬化剤(所望の場合)、
および任意の他の補助剤(所望の場合)を従来のゴム加工装置で混合することによって製
造することができる。所望の量の配合成分および従来の他の補助剤または成分を未加硫フ
ルオロカーボンゴムのストックに添加し、密閉式混合機(例えば、バンバリーミキサー)
、ロールミル、または他のいずれかの便利な混合装置など、通常のゴム混合装置のいずれ
かを使用することによって、それと均質に混合または配合することができる。混合プロセ
ス中の混合物の温度は通常、約120℃を超える温度に上昇しないほうがよい。混合中、
有効な硬化のために、ゴム全体に均一に成分および補助剤を分散することが好ましい。
【0084】
次いで、例えば、押出しすることによって(例えば、チューブまたはホースライニング
の形状に)または成形によって(例えば、Oリングシールの形状に)、その混合物を加工
し、造形する。次いで、その造形品を加熱して、ゴム組成物を硬化し、硬化物品を形成す
ることができる。
【0085】
配合混合物の成形またはプレス加硫は通常、適切な圧力下で所望の作業時間中に混合物
を硬化するのに十分な温度で行われる。一般に、これは、約95℃〜約230℃、好まし
くは約150℃〜約205℃で約1分〜15時間、通常5分〜30分の時間行われる。通
常、約700kPa〜約21,000kPaの圧力が金型内の配合混合物にかけられる。
その金型は最初に、離型剤でコーティングし、プレベークしてもよい。
【0086】
本発明の硬化レオロジーは、通常の加工作業中、それらの最低粘度近くを保持し、それ
によって、公知の材料と比較して、向上した耐スコーチ性および加工条件における多くの
選択肢が得られる。注目に値すべきことに、加工における利点は、得られた最終硬化製品
の物理的性質に悪影響を及ぼさず、得られた本発明のフルオロポリマーは、優れた高温特
性および低い圧縮永久ひずみ値を有する。
【0087】
次いで、成形された混合物またはプレス加硫された物品は通常、硬化を完了するのに十
分な温度および時間、通常約150℃〜約300℃、一般に約232℃で約2時間〜50
時間以上の間(一般に、物品の断面厚さと共に増える)後硬化される。厚い部分に関して
は、後硬化中の温度は通常、その範囲の下限から望ましい最高温度に徐々に上げられる。
用いられる最高温度は約300℃であることが好ましく、この値が約4時間以上保持され
る。この後硬化ステップで一般に、架橋が完了し、硬化した組成物から残留揮発物が放出
される場合もある。適切な後硬化サイクルの一例は、条件の6ステップを用いて、窒素下
で成形成形品を熱にさらすことを含む。最初、その温度は、5時間にわたり25℃から2
00℃に上昇し、次いでその成形品は200℃で16時間保持され、その後、温度は2時
間にわたって200から250℃に上昇する。次いでその成形品を250℃で8時間保持
し、その後、温度は2時間にわたって250から300℃に上昇する。次いで、その成形
品を300℃で16時間保持する。最後に、例えばオーブン加熱を止めることによって、
成形品を周囲温度に戻す。
【0088】
そのフルオロポリマー組成物は、Oリング、ガスケット、チューブ、およびシールなど
の物品の製造に有用である。かかる物品は、フルオロポリマー組成物と様々な添加剤との
配合物を様々な圧力下で成形し、その物品を硬化し、次いで後硬化サイクルにそれをかけ
ることによって製造される。無機酸受容体を使用せず配合された硬化性組成物は、半導体
装置に用いられるシールおよびガスケットなどの用途に、かつ高温の自動車用途で用いら
れるシールにおいて特に適している。
【0089】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0090】
別段の指定がない限り、示される結果は以下の試験法を用いて得られた。試験の結果を
以下の表に示す。
【0091】
硬化レオロジー:モンサント移動ダイ・レオメーター(Monsant Die Rh
eometer)(MDR)モデル2000を使用して、ASTM D 5289−93
aに従って177℃で、予熱することなく、経過時間30分、0.5弧度で、未硬化の配
合試料で試験を実施した。プラトーなトルクまたは最大トルク(MH)が得られない場合
には、指定の時間中に達成された最低トルク(ML)と最高トルクのどちらも測定した。
トルクがMLを2単位超えて増大する時間(「ts2」)、トルクがML+0.5(MH−M
L)に等しい値に達する時間(「t’50」)、およびトルクがML+0.9(MH−ML
に達する時間(「t’90」)もまた測定した。
【0092】
ムーニースコーチ:ASTM D 1646に記載の手順に従って、121℃で測定を
行った。最低粘度(単位)、および様々な粘度レベルに上がるまでの時間(分)を記録し
た。例えば、通常、3、12、および18単位の上昇に達するまでの時間を記録した。
【0093】
プレス加硫:150×150×2.0mmの大きさの試料シートを、別段の指定がない
限り、177℃で30分間、約6.9メガパスカル(MPa)で加圧することによって、
物理的性質の決定のために作製した。
【0094】
後硬化:後硬化した試料シートを、以下の6ステップの条件:6時間にわたり25〜2
00℃;200℃で16時間;2時間にわたり200〜250℃;250℃で8時間;2
時間にわたり250〜300℃;300℃で16時間;を用いて、窒素下で熱にさらした
。その試料は、試験前に周囲温度に戻した。
【0095】
熱老化:プレス加硫かつ後硬化した試料シートを空気中、290℃で70時間熱にさら
し、次いで試験前に周囲温度に戻した。
【0096】
物理的性質:ASTM Die Dでプレス加硫または後硬化シートから切断された試
料について、破断点引張強さ、破断点伸び、および100%伸び率におけるモジュラスを
、ASTM D 412−92を用いて決定した。単位はMPaで報告する。
【0097】
硬度:タイプA−2ショア・デュロメーターでASTM D 2240−85法Aを用
いて、試料を測定した。単位は、ショアAスケールでのポイントで報告する。
【0098】
圧縮永久ひずみ:ASTM 395−89法Bを用いて、Oリングの試料を測定した。
Oリングは、断面厚さ0.139インチ(3.5mm)を有した。その結果を元のたわみ
のパーセンテージとして報告する。
【0099】
別段の指定がない限り、すべての材料が、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリ
ッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals,Milwaukee,WI)
から市販されている。
【0100】
触媒製造:
安息香酸0.55g、メタノール中のNaOCH3溶液(固体25%)0.64g、メ
タノール中のトリブチル−(2−メトキシ)−プロピルホスホニウムクロライド(固体8
5%)1.0g、メタノール12gを反応させることによって、安息香酸トリブチル−(
2−メトキシ)−プロピルホスホニウム触媒を製造した。その結果得られたNaClを触
媒からデカントし、残存するメタノールを取り除いた。
【0101】
水酸化テトラブチルホスホニウム(0.143モル)の40重量パーセント(重量%)
水溶液98.66gの混合物を酢酸(純度99.7%)8.6gを含む500mLフラス
コ中で中和した。約5分間その混合物に渦を生じさせた(pH試験紙はpH9を示した)
。約50℃の浴温度を用いた回転蒸発器(rotavap)を使用して、水が凝縮しなく
なるまで、混合物から水を除去した。エタノール(100mL)をフラスコに加え、凝縮
が生じなくなるまで、その溶液を回転蒸発器でストリッピングした。溶液にエタノールを
さらに100mL加え、続いて、凝縮が生じなくなるまで、回転蒸発器でストリッピング
した。これによって、透明で、わずかに粘性のオイル59.95gが得られた。NMR分
析から、このオイルはエタノールを19%含有することが判明した。カール・フィッシャ
ー滴定から、このオイルは、所望の酢酸テトラブチルホスホニウムと共に水1.8重量%
を含有することが判明した。
【0102】
水酸化テトラブチルホスホニウムの40%水溶液をドライアイスで飽和させることによ
って、炭酸テトラブチルホスホニウム触媒を製造した。真空蒸留(回転蒸発器)、続いて
2つの連続する真空ストリッピングによって、エタノールから水を除去した。
【0103】
以下の実施例において、硬化レオロジーの試験は、未硬化の配合試料で実施した。配合
された混合材料のシートをプレス加硫し、試験し、続いて後硬化した。後硬化した試料を
試験し、次いで熱老化させ、試験し、最後に圧縮永久ひずみについて試験した。その試験
結果は表1(以下の)に含まれる。
【0104】
実施例1および2
テトラフルオロエチレン(TFEモル%)62.2モル%、パーフルオロメチルビニル
エーテル(PMVE)36.6モル%、ニトリル含有硬化部位モノマーCF2=CFO(
CF25CN1.2モル%を含有するフルオロエラストマーゴムを乳化重合によって調製
した。次いで、安息香酸トリブチル−(2−メトキシ)−プロピルホスホニウム触媒3ミ
ルモルを、フルオロポリマーゴム100g、n−デカノール0.8g、FEF N550
カーボンブラック15gと配合した。
【0105】
実施例2では、代わりに酢酸トリブチル−(2−メトキシ)−プロピルホスホニウム触
媒3ミリモルを使用したことを除いては、上記のように、フルオロポリマーゴムを調製し
、配合した。
【0106】
実施例3
TFE62.0モル%、PMVE37.4モル%、ブロモトリフルオロエチレン0.6
モル%を含有するフルオロポリマーを乳化重合によって製造した。このフルオロポリマー
(30g)を、実施例1のフルオロエラストマー70g、実施例1の触媒1.5mmhr
、過酸化物(コネチカット州ノーウォークのアール・ティー・バンダービルト社(R.T
.Vanderbilt Co.,Norwalk,CT)からVarox(登録商標)
DBPHとして市販されている2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)
ヘキサン)0.6mmhr、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)1g、FEF N
550カーボンブラック15phr、およびn−オクタノール0.4gと配合した。
【0107】
実施例4および5
実施例4では、テトラフルオロエチレン(TFEモル%)62.2モル%、パーフルオ
ロメチルビニルエーテル(PMVE)36.6モル%、ニトリル基含有硬化部位モノマー
CF2=CFO(CF25CN1.2モル%を含有するフルオロエラストマーゴムを、乳
化重合によって調製した。次いで、炭酸テトラブチルホスホニウム触媒0.75gを、フ
ルオロポリマーゴム100g、FEF N550カーボンブラック15gと配合した。試
料を30分ではなく12分間プレス加硫した。
【0108】
実施例5では、TiO24gを含ませて、カーボンブラックを省くことを除いては、実
施例4と同様にフルオロポリマーゴムを調製し、配合した。試料を実施例4と同様にプレ
ス加硫した。窒素中132℃で24時間、続いて空気中300℃で4時間、試料を後硬化
した。試料は試験前に周囲温度に戻した。
【0109】
以下の表において、N/Mは、その特性が測定されなかったことを示す。実施例3では
、実施例1および2の290℃の代わりに、270℃で70時間熱老化させた。実施例3
の第3の圧縮永久ひずみ試験の星印は、290℃ではなく、270℃で70時間の条件を
用いたことを示している。
【0110】
本発明の数多くの実施形態が説明されている。しかしながら、本発明の精神および範囲
から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることは理解されよう。
【0111】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を含有するフルオロポリマ
ーと、
(b)一般式{RA}(-){QR’k(+)を有する化合物、または別々にもしくは混合
物として添加されるそれらの前駆物質を含む非フッ素化触媒組成物
(式中、Rは水素、C1〜C20アルキルもしくはアルケニル、C3〜C20シクロアルキル
もしくはシクロアルケニル、またはC6〜C20アリールもしくはアラルキルであり、Aは
酸アニオンまたは酸誘導体アニオンであり、Qはリン、硫黄、窒素、ヒ素、またはアンチ
モンであり、R’はそれぞれ独立して、水素または置換もしくは非置換C1〜C20アルキ
ル、アリール、アラルキル、またはアルケニル基であり、ただしQが窒素であり、かつ組
成物中の唯一のフルオロポリマーが、TFEと、パーフルオロビニルエーテルと、ニトリ
ル基を含むパーフルオロビニルエーテル硬化部位モノマーとのターポリマーから本質的に
なる場合には、R’すべてがHではなく、そしてkがQの原子価である)と、任意には、
(c)一般式R2−OH(式中、R2は炭素原子1〜20個を有するアルキル基であり、
かつR2は部分フッ素化することができる)のアルコールと、
を含む組成物。
【請求項2】
パーフルオロオレフィン、部分フッ素化オレフィン、非フッ素化オレフィン、フッ化ビ
ニリデン、パーフルオロビニルエーテル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択
されるモノマーから誘導される共重合単位を含有するフルオロポリマーをさらに含む、請
求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Aが、COO、O(Rが水素、アリール、またはアルキルアリールである場合)、SO
3、SO2、SO2NH、PO3、CH2OPO3、(CH2O)2PO2、C64O、OSO3
【化1】

から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
RAが、RCOOM、ROSO3M、RSO3M、およびROMから選択される一般式(
式中、Mが水素、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属である)を有する、請求
項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
RAが、C65COO;PhO;CH3−(CH2p−O−SO3(pは1〜10である
);RCOO(Rはアルケニル、C1〜C10アルキル、またはC6〜C20アリールである)
(-)OOC−(CH2p−COO(-)(pは0〜10である);Ph−((CH2p−C
OO(-)q(pおよびqは独立して、1〜4である);およびかかる2種類以上の化合物
のブレンドから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
RAが、一般式(-)z−Ph−Gy−Ph−Oz(-)(式中、Gは結合または二官能脂肪
族、脂環式、またはC1〜C13芳香族ラジカル、またはチオ、オキシ、カルボニル、スル
フィニル、またはスルホニルラジカルであり、Gおよび/またはPhは任意に、少なくと
も1つのCl原子で置換され、yは0または1であり、zは1または2であり、ポリオキ
シ化合物のいずれかの芳香環が任意に、ClもしくはBr原子の少なくとも1つの原子、
またはカルボキシルまたはアシルラジカル、またはアルキルラジカルで置換される);お
よび2種類以上のかかる化合物のブレンド;から選択される、請求項1または2に記載の
組成物。
【請求項7】
RAが、一般式(-)O−Ph−C(CX32−Ph−O(-)(式中、XはHまたはClで
ある);および2種類以上のかかる化合物のブレンド;から選択される、請求項1または
2に記載の組成物。
【請求項8】
RAが、アセテート、ベンゾエート、およびカーボネートから選択される、請求項1ま
たは2に記載の組成物。
【請求項9】
{RA}(-){QR’k(+)が、(QR’k(+)(AQR’k(-)、(QR’4+)(C
32-)R、(QR’4+2CO32-、(QR’42+SO42-、(QR’4+OH-、(PR
4+2CO32-、(PR’4+OH-、(PR’42+SO42-から選択される、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項10】
QR’kが、テトラメチルホスホニウム、トリブチルアリルホスホニウム、トリブチル
ベンジルホスホニウム、ジブチルジフェニルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、
トリブチル(2−メトキシ)プロピルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム
、テトラフェニルホスホニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、テトラペンチルアン
モニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチル
アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベン
ジルアンモニウム、トリブチルアリルアンモニウム、テトラベンジルアンモニウム、テト
ラフェニルアンモニウム、ジフェニルジエチルアミノアンモニウム、トリフェニルベンジ
ルアンモニウム、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−
エニウム、ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム、およびビス(ベンジルジフ
ェニルホスフィン)イミニウムから選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項11】
前記触媒組成物がその場で調製される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物

【請求項12】
前記触媒組成物が、溶媒に溶解された成分から調製される、請求項1〜11のいずれか
一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが、(i)テトラフルオロエチレンと、任意に(ii)次式:
CF2=CFO(R2fO)a(R3fO)b4f
(式中、R2fおよびR3fは、同一または異なる、炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝
鎖状パーフルオロアルキレン基であり;aおよびbは独立して、0または1〜10の整数
であり;R4fは、炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基である)の1種または複数
種のパーフルオロビニルエーテルと、から誘導される共重合単位を含む、請求項1〜12
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記フルオロポリマーが、パーフルオロオレフィン、部分フッ素化オレフィン、非フッ
素化オレフィン、フッ化ビニリデン、およびそれらの組み合わせから選択されるモノマー
から誘導される共重合単位をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記窒素含有硬化部位モノマーが、次式:
CF2=CFO(CF2LCN;CF2=CFO(CF2uOCF(CF3)CN;
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]q(CF2O)yCF(CF3)CN;または
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]rO(CF2tCN;
(式中、L=2〜12;q=0〜4;r=1〜2;y=0〜6;t=1〜4、およびu
=2〜6)を有するニトリル含有モノマーである、請求項1〜14のいずれか一項に記載
の組成物。
【請求項16】
フルオロポリマー充填剤、カーボンブラック、およびそれらの組み合わせから選択され
る充填剤をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記フルオロポリマーが、フルオロエラストマーおよびフッ素樹脂から選択される、請
求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、約175℃の温度で約15分未満の誘導時間を有する、請求項1〜17
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、同じ温度で試験した比較用の組成物の耐スコーチ性よりも高い耐スコー
チ性を有し、その比較用の組成物がウロトロピン硬化剤と共に同じフルオロポリマーを有
する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
追加の硬化剤物質、および任意に硬化助剤をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一
項に記載の組成物。
【請求項21】
前記追加の硬化剤物質が、アンモニア生成化合物、置換トリアジン誘導体、非置換トリ
アジン誘導体、過酸化物、ビス−アミノフェノール、ビス−アミドオキシム、および有機
スズ化合物から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載のフルオロポリマー組成物を含む造形品。
【請求項23】
窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を有するフルオロポリマーと、式
:{RA}(-){QR’k(+)を有する化合物、または別々にもしくは混合物として添加
されるそれらの前駆物質を含む非フッ素化触媒組成物(式中、Rは水素、C1〜C20アル
キルもしくはアルケニル、C3〜C20シクロアルキルもしくはシクロアルケニル、または
6〜C20アリールもしくはアルキルアリールであり、Aは、複素環式であってもよい酸
アニオンまたは酸誘導体アニオン基であり、QはP、S、N、AsまたはSbであり、R
’はそれぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換C1〜C20アルキル、アリール
、アラルキル、またはアルケニル基であり、ただしQが窒素であり、かつ組成物中の唯一
のフルオロポリマーが、TFEと、パーフルオロビニルエーテルと、ニトリル基を含むパ
ーフルオロビニルエーテル硬化部位モノマーとのターポリマーから本質的になる場合には
、R’すべてがHではなく、そしてkがQの原子価である)と、を含む混合物を、任意に
は一般式R2−OH(式中、R2はC6〜C20アルキル基である)のアルコールの存在下に
て形成するステップを含む、フルオロポリマー組成物の製造方法。
【請求項24】
a)窒素含有硬化部位モノマーから誘導される共重合単位を含むフルオロポリマーを提
供するステップと;
b)そのフルオロポリマーに、一般式:{RA}(-){QR’k(+)を有する化合物、
または別々にもしくは混合物として添加されるそれらの前駆物質を含む非フッ素化触媒組
成物(式中、Rは水素、C1〜C20アルキルもしくはアルケニル、C3〜C20シクロアルキ
ルもしくはシクロアルケニル、またはC6〜C20アリールもしくはアルキルアリールであ
り、Aは、酸アニオンまたは酸誘導体アニオンであり、QはP、S、N、AsまたはSb
であり、R’はそれぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換C1〜C20アルキル
、アリール、アラルキル、またはアルケニル基であり、ただしQがNであり、かつ組成物
中の唯一のフルオロポリマーが、TFEと、パーフルオロビニルエーテルと、ニトリル基
を含むパーフルオロビニルエーテル硬化部位モノマーとのターポリマーから本質的になる
場合には、R’すべてがHではなく、そしてkがQの原子価である)を組み込むステップ
と;任意には、
c)一般式R2−OH(式中、R2はC1〜C20アルキル基であり、かつR2は部分フッ素
化することができる)のアルコールを組み込むステップと;
を含む、硬化性フルオロポリマー組成物における誘導時間を増加する方法。
【請求項25】
a)前記混合物を造形するステップと;
b)任意には、その造形した混合物を硬化させるステップと;
c)任意には、その硬化した混合物を熱老化させるステップと;
をさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒が、化合物の形、触媒前駆物質の混合物の形、およびフルオロポリマー組成物
に別々に添加される触媒の個々の成分の形から選択される形で添加される、請求項23〜
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記硬化ステップが、プレス加硫、および任意には後硬化を含む、請求項25に記載の
方法。
【請求項28】
請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法に従って作製される造形品。

【公開番号】特開2009−161767(P2009−161767A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58256(P2009−58256)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【分割の表示】特願2002−582105(P2002−582105)の分割
【原出願日】平成14年4月12日(2002.4.12)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】