説明

フルカラー画像形成方法およびフルカラー画像形成装置

【課題】色ムラおよび色濁りの発生が抑制されて、赤色〜橙色領域の色再現範囲が拡大されると共に、優れた耐光性を有する画像が得られるフルカラー画像形成方法およびフルカラー画像形成装置の提供。
【解決手段】フルカラー画像形成方法は、各々、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも6色の静電荷像現像用トナーを用いてフルカラー画像を形成する方法であって、前記6色の静電荷像現像用トナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、オレンジトナー、グリーントナーおよびブラックトナーであり、前記オレンジトナーに含有される着色剤が特定の多環キノン顔料よりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラー画像形成方法およびフルカラー画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)を用いた電子写真方式による画像形成方法においては、従来からのモノクロ画像に加え、近年、フルカラー画像を形成する機会が増加している。電子写真方式によるフルカラー画像形成方法においては、印刷用の版を必要としないことから必要枚数分の印刷物をオンデマンドに作製できるので、軽印刷分野において広く利用されている。
【0003】
特にカタログや広告などのフルカラー画像を形成する場合においては、原物の色相をより忠実に再現することが求められている。そして、このようなフルカラー画像において人物などが含まれる場合においては、その人物の肌色の色再現性が画像全体の印象を大きく左右する。
【0004】
一般に、電子写真方式によるフルカラー画像形成方法においては、イエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーの3色のカラートナーの組み合わせにより色再現を行うが、例えば肌色を再現する場合においては、イエロートナーのトナー画像とマゼンタトナーのトナー画像とを重ね合わせるために、彩度や明度が低下することにより所望の肌色を再現することが難しいという問題がある。
【0005】
また、近年では、コンピューターグラフィックスによる画像をディスプレイ上で作成し、その画像を出力する機会が増加している。しかしながら、電子写真方式によるフルカラー画像形成方法により形成することができるフルカラー画像の色再現範囲は、ディスプレイ上に表示することができるフルカラー画像の色再現範囲よりもはるかに狭いため、ディスプレイ上に表示されるフルカラー画像をそのままの色相で紙などの転写材上に再現することが難しいという問題がある。
【0006】
色再現範囲の拡大を図る技術の1つとしては、例えばイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーおよび黒トナーから構成される4色のトナーに加えて、オレンジトナーおよびグリーントナーなど6色以上のトナーを用いたフルカラー画像形成方法が知られている。すなわち、マンセル色相環において360°で表わされる色相をイエロートナー、マゼンタトナーおよびシアントナーから構成される3色のトナーを用いて色再現するのではなく、これらにオレンジトナーおよびグリーントナーを加えた5色のトナーを用いて色再現することにより色再現範囲の拡大を図るものである。
【0007】
しかしながら、このようなフルカラー画像形成方法によっても、例えば肌色などの赤色〜橙色領域の色再現性が十分に得られなかった。このような問題を解決するため、マゼンタ着色剤とオレンジ着色剤とを併用したオレンジトナーにより、赤色〜橙色領域の色再現範囲を拡大することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、C.I.ピグメントオレンジ11などのオレンジ着色剤を用いたオレンジトナーにより、赤色〜橙色領域の色再現範囲を拡大することが開示されている(例えば、特許文献2および3参照)。
【0008】
しかしながら、このようなオレンジトナーに含有されるオレンジ着色剤の多くが当該オレンジトナーを構成する結着樹脂中における分散性が低く、オレンジ着色剤の微粒子が凝集し不均一に分散するため、色ムラや色濁りが発生し、赤色〜橙色領域の色再現範囲を十分に拡大することができなかった。さらに、得られる画像が優れた耐光性を有するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−3274号公報
【特許文献2】特開2007−304401号公報
【特許文献3】特開2002−156776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、色ムラおよび色濁りの発生が抑制されて、赤色〜橙色領域の色再現範囲が拡大されると共に、優れた耐光性を有する画像が得られるフルカラー画像形成方法およびフルカラー画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.各々、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも6色の静電荷像現像用トナーを用いてフルカラー画像を形成する方法であって、
前記6色の静電荷像現像用トナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、オレンジトナー、グリーントナーおよびブラックトナーであり、
前記オレンジトナーに含有される着色剤が下記一般式(1)、(2)または(3)で表される多環キノン顔料から選択される少なくともひとつであることを特徴とするフルカラー画像形成方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)、(2)及び(3)中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表し、nは0〜4の整数、mは0〜6の整数を表す。)
2.前記オレンジトナーに含有される着色剤が、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントオレンジ19、C.I.バットレッド37のいずれかであることを特徴とする前記1に記載のフルカラー画像形成方法。
3.前記オレンジトナーに含有される着色剤が、C.I.ピグメントレッド168であることを特徴とする前記1または2に記載のフルカラー画像形成方法。
4.前記オレンジトナーが、水系媒体中に着色剤の微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂の微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤の微粒子および結着樹脂の微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであることを特徴とする前記1から3の何れかに記載のフルカラー画像形成方法。
5.少なくとも、6色の画像形成手段と中間転写体を有するフルカラー画像形成装置であって、該6色の画像形成手段は、イエロートナー画像、オレンジトナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、グリーントナー画像、及びブラックトナー画像を形成するものであり、該中間転写体は、該6色の画像形成手段で形成された各トナー画像を順次重ね合わせて転写しフルカラートナー画像を形成し、形成した該フルカラートナー画像を転写材に一括して転写するものであり、該オレンジトナー画像を形成する画像形成手段は、前記1から4の何れかに記載のフルカラー画像形成方法で使用されるオレンジトナーを用いるものであることを特徴とするフルカラー画像形成装置。
【0014】
本発明のフルカラー画像形成方法においては、前記オレンジトナーが、水系媒体中に着色剤の微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂の微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤の微粒子および結着樹脂の微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであることが好ましい。
【0015】
本発明のフルカラー画像形成装置は、上記のフルカラー画像形成方法が実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフルカラー画像形成方法によれば、当該フルカラートナー画像形成方法に用いられるオレンジトナーに含有される着色剤が特定の多環キノン顔料よりなることにより、色ムラおよび色濁りの発生が抑制されて、赤色〜橙色領域の色再現範囲が拡大されると共に、優れた耐光性を有する画像が得られる。
【0017】
このような効果が得られる理由は、オレンジトナーに含有される着色剤を構成する多環キノン顔料が分散性の優れたものであることから、トナー粒子中や定着画像上において多環キノン顔料の微粒子が均一に分散されるためと推測される。また、多環キノン顔料を構成する分子が、光に対して安定した構造のものであることから、得られる画像の耐光性が向上すると考えられる。
【0018】
本発明のフルカラー画像形成装置によれば、本発明のフルカラー画像形成方法が実行されることにより、色ムラおよび色濁りの発生が抑制されて、赤色〜橙色領域の色再現範囲が拡大されると共に、優れた耐光性を有する画像を形成することができる。即ち、トナー粒子中や定着画像上において顔料が粒径の小さな微粒子として均一に分散されるため色むらや色濁りおよび明度の低下が小さく顔料本来の持つクリアな色相が再現されるためと考えられる。これは一般に顔料の粒径が小さいと吸収波長域がシャープになり、色濁りが無く、特に2次色とした時にも色濁りが発生しにくいことによるものである。
【0019】
また、本発明の多環キノン顔料の分散性がよい理由は、キノン部位が水や極性基に対して親和性を持つため、ポリエステルやアクリル樹脂さらには水に対して濡れ性がよく、その結果、それらに対して分散性が良好になるものと考えられる。よって、トナー製法時に水中に分散されるケミカル製法、たとえば乳化凝集法のトナーに用いた場合などでも良好な色再現性が得られるものと考えられる。
【0020】
また、本発明の多環キノン顔料は、耐光性にも優れているが、この理由は、多環キノン分子が平面構造をしており、各々の分子がスタッキングした状態で一次粒子を形成することで光に対して安定化することが挙げられる。これは、スタッキング状態になることで互いに保護しあい、光や紫外線によって生じる三重項酸素による攻撃を受けにくくしているためと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の6色のトナーを用いた場合の色再現範囲の拡大を表す概念図である。
【図2】本発明のフルカラー画像形成方法が実行されるフルカラー画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
<フルカラー画像形成方法>
本発明のフルカラー画像形成方法は、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、グリーントナー、ブラックトナー、および、多環キノン顔料よりなる着色剤を含有するオレンジトナーの少なくとも6色のトナーを従来公知のフルカラー画像形成装置に搭載することにより実行することができる。
【0024】
本発明のフルカラー画像形成方法は、上記6色のトナー以外の他色のトナーを用いてもよく、他色のトナーとしては、例えばブルートナーおよびグレートナーなど挙げられる。
【0025】
〔色再現性範囲〕
ここで、多色系の画像形成方法による「色再現性範囲」について以下に説明する。図1は本発明の6色のカラートナーを用いたフルカラー画像形成方法の色再現範囲を表す概念図である。
【0026】
電子写真の色再現範囲は、減法混色法のY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の3原色で決まり、その2次色であるR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)は、それぞれYとM、CとY、MとCの2次色で表されるため、もとのYMCの色再現範囲(図1の実線で表示)を超えてRGBを再現することは原理的に不可能である。そこで、更に彩度の高い、オレンジ、グリーントナーを追加すれば、色ムラおよび色濁りの発生が抑制されて、色再現範囲は拡大し(図1の破線で表示)、特に肌色の再現につながる赤色〜橙色領域の色再現範囲が拡大可能となる。
【0027】
本発明のフルカラー画像形成方法が実行されるフルカラー画像形成装置としては、少なくとも下記手段を有することにより転写材上にカラー画像を形成することができるものであればよい。
(a)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段
(b)静電潜像担持体上に形成された静電潜像を現像剤担持体に担持させた現像剤により現像してトナー画像を形成する現像手段
(c)トナー画像を転写材上に転写する転写手段
(d)転写材上に転写させたトナー画像を熱定着する定着手段
本発明のフルカラー画像形成方法としては、具体的には、例えば下記の(1)および(2)の方法などが挙げられる。
(1)静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー画像を、転写材に直接転写するトナー画像形成工程を有し、少なくともイエロートナー、オレンジトナー、グリーントナー、シアントナー、マゼンタトナーおよびブラックトナーの6色のトナーを用いてトナー画像形成工程をそれぞれ行うことにより、色の異なる複数のトナー画像を担持した転写材を得、これらのトナー画像を転写材に定着させることによりフルカラー画像を形成する、いわゆる直接転写方式のフルカラー画像形成方法。
(2)静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像することによって形成されるトナー画像を、中間転写体に転写するトナー画像形成工程を有し、少なくともイエロートナー、オレンジトナー、グリーントナー、シアントナー、マゼンタトナーおよびブラックトナーの6色のトナーを用いてトナー画像形成工程をそれぞれ行うことにより、色の異なる複数のトナー画像を担持した中間転写体を得、これらのトナー画像を転写材上に転写し、定着させることによりフルカラー画像を形成する、いわゆる中間転写方式のフルカラー画像形成方法。
【0028】
以下、中間転写方式のフルカラー画像形成方法の一例について具体的に説明する。
【0029】
図2は、本発明のフルカラー画像形成方法が実行されるフルカラー画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【0030】
このフルカラー画像形成装置は、複数の支持ローラ17a〜17d群によって張架された状態で配設された、無端ベルト状の中間転写体(以下、「中間転写ベルト」という。)17を備えており、この中間転写ベルト17の外周面に沿って、各々、イエロートナー画像、オレンジトナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、グリーントナー画像およびブラックトナー画像を形成する6つのトナー画像形成ユニット(本発明でいう6色の画像形成手段)30Y、30Or、30M、30C、30G、30Kが、中間転写ベルト17が各々のトナー画像形成ユニットにおける、静電潜像担持体である感光体ドラム10Y、10Or、10M、10C、10G、10Kの各々に対接されながら循環移動されるよう、離間して並ぶよう設けられている。
【0031】
イエロートナー画像に係るトナー画像形成ユニット30Yは、回転される感光体ドラム10Yと、この感光体ドラム10Yの外周面に沿って、各々、感光体ドラム10Yの回転方向に対して動作順に並ぶよう配設された、帯電手段11Y、露光手段12Y、現像手段13Y、一次転写手段14Y、およびクリーニング手段20Yにより構成されている。
【0032】
一次転写手段14Yは、中間転写ベルト17を介して感光体ドラム10Yに押圧されて一次転写領域(一次転写ニップ部)が形成されるよう設けられた一次転写ローラ141Yと、この一次転写ローラ141Yに接続された転写電流供給手段(図示せず)とにより構成されており、転写電流供給手段によって一次転写ローラ141Yに所定の大きさの転写電流が供給されることにより転写電界が形成され、この転写電界の作用によって感光体ドラム10Y上に形成されたイエロートナー画像が中間転写ベルト17上に一次転写される。
【0033】
他のトナー画像形成ユニット30Or、30M、30C、30G、30Kの各々についても、現像剤がイエロートナーの代わりにそれぞれオレンジトナー、マゼンタトナー、シアントナー、グリーントナー、ブラックトナーを含むものである他は、イエロートナー画像に係るトナー画像形成ユニット30Yと同様の構成とされており、図2においては、便宜上、イエロートナー画像に係るトナー画像形成ユニット30Yと同一の構成部材については、「Y」を、それぞれ、「Or」、「M」、「C」、「G」、「K」に代えた同一の符号が付してある。
【0034】
中間転写ベルト17の移動方向(図2において矢印で示す。)におけるトナー画像形成ユニット配置領域より下流側の位置には、二次転写手段14Sが設けられている。
【0035】
二次転写手段14Sは、中間転写ベルト17を支持する支持ローラのひとつであるバックアップローラ17dに中間転写ベルト17を介して押圧されて二次転写領域(二次転写ニップ部)が形成されるよう設けられた二次転写ローラ141Sと、この二次転写ローラ141Sに接続された、転写電圧印加手段(図示せず)とにより構成されており、この転写電圧印加手段によって、一次転写トナー画像の電位と逆極性の二次転写バイアス電圧が二次転写ローラ141Sに印加されることにより転写電界が形成され、この転写電界の作用によって中間転写ベルト17上に形成された一次転写トナー画像が転写材P上に転写される。
【0036】
図2において、18は、二次転写領域より搬送される転写材P上におけるトナー画像を定着させる定着装置であり、例えば、内部に加熱源を具えた加熱ローラ181と、この加熱ローラ181と定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラ182とにより構成されている。
【0037】
また、20Sは、中間転写ベルト17上における未転写トナーを除去するクリーニングブレードを具えた中間転写体クリーニング手段であり、中間転写ベルト17の移動方向における二次転写領域より下流側の位置に設けられている。
【0038】
このようなフルカラー画像形成装置においては、まず、各トナー画像形成ユニット30Y、30Or、30M、30C、30G、30Kの感光体ドラム10Y、10Or、10M、10C、10G、10K上に形成された各色のトナー画像が、中間転写ベルト17上に順次転写して重ね合わせられ、中間転写ベルト17上に一次転写されたトナー画像が、二次転写手段14Sにより転写材P上に二次転写されて、定着装置18において加熱・加圧することにより転写材P上にトナー画像が形成される。
【0039】
〔トナー〕
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる少なくとも6色のトナーは、各々、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するものである。
【0040】
また、本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる各色のトナーにおいては、必要に応じて、磁性粉、荷電制御剤および離型剤などの内添剤を含有するものとすることができる。
【0041】
(トナー粒子の粒子径)
各色のトナー粒子の粒子径は、例えば体積基準のメディアン径で4〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜9μmとされる。
【0042】
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0043】
トナー粒子の体積基準のメディアン径は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出される。
【0044】
具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行い、トナー粒子の分散液を調製し、このトナー粒子の分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径を体積基準のメディアン径とする。
【0045】
(トナーの軟化点温度)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる各色のトナーは、その軟化点温度(Tsp)が70℃以上110℃以下となるものが好ましく、70℃以上100℃以下となるものがより好ましい。本発明に用いられる各色のトナーを構成する着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。従って、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
【0046】
また、トナーの軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行えることができ、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を実現することができる。
【0047】
なお、トナーの軟化点温度(Tsp)は、たとえば、以下の方法を単独で、または、組み合わせることにより制御することができる。すなわち、
(1)結着樹脂を形成すべき単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により結着樹脂の分子量を調節する。
(3)離型剤等の種類や添加量を調節する。
【0048】
トナーの軟化点温度(Tsp)の測定方法は、例えば「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×10Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とする方法などが挙げられる。
【0049】
(着色剤)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられるオレンジトナーに含有される着色剤としては、下記一般式(1)、(2)または(3)で表される多環キノン型顔料が用いられ、1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、発色性が優れることから、特にC.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントオレンジ19、C.I.バットレッド37を用いることが好ましい。
【0050】
【化2】

【0051】
(一般式(1)、(2)及び(3)中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表し、nは0〜4の整数、mは0〜6の整数を表す。)
上記一般式(1)、(2)及び(3)で表される本発明の多環キノン顔料は公知の方法により容易に合成することが出来る。
【0052】
(例示化合物)
本発明のオレンジトナーに用いられる多環キノン系顔料としては、例えば以下の顔料が挙げられるが、本発明のオレンジトナーに有効なオレンジ顔料はこれらに限定されるものではない。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
オレンジトナーに含有される本発明の着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、2〜12質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜10質量部である。
【0056】
オレンジトナーに含有される本発明の着色剤の含有量が上記範囲であることにより、色濁りのない鮮やかな赤色〜橙色領域の色再現が可能となる。
【0057】
オレンジトナーに含有される本発明の着色剤は、オレンジトナー中において数平均一次粒子径で50〜500nm程度に分散されていることが好ましい。
【0058】
数平均一次粒子径は、オレンジトナー粒子の断面を透過型電子顕微鏡にて5万倍に拡大した写真を用いて、オレンジトナー粒子中における着色剤の微粒子のフェレ方向径をオレンジトナー粒子10個について測定し、その算術平均値を算出することにより求められる。
【0059】
オレンジトナーに含有される着色剤においては、多環キノン顔料以外の公知のオレンジ色材が含有されていてもよい。この場合、オレンジ色材の含有量は、本発明の着色剤である多環キノン顔料100質量部に対して、40質量部未満とすることが好ましい。
【0060】
また、本発明のフルカラー画像形成方法に用いられるオレンジトナー以外のトナーに含有される着色剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0061】
イエロートナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などが挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にC.I.ピグメントイエロー74が好ましい。
【0062】
イエロートナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0063】
マゼンタトナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などが挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にC.I.ピグメントレッド122が好ましい。
【0064】
マゼンタトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0065】
シアントナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ピグメントブルー15:3などが挙げられる。
【0066】
シアントナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0067】
グリーントナーに含有される着色剤としては、例えばC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0068】
グリーントナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0069】
ブラックトナーに含有される着色剤としては、例えばカーボンブラック、磁性体、チタンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えばチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。磁性体としては、例えば鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金などが挙げられる。熱処理することにより強磁性を示す合金としては、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズなどのホイスラー合金、二酸化クロムなどが挙げられる。
【0070】
ブラックトナーに含有される着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0071】
イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、グリーントナーおよびブラックトナーに含有される着色剤は、各々、トナー中において数平均一次粒子径で50〜500nm程度に分散されていることが好ましい。
【0072】
(結着樹脂)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる各色のトナーに含有される結着樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。
【0073】
各色のトナーが粉砕法などによって製造される場合には、例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0074】
また、各色のトナーが懸濁重合法、乳化凝集法などによって製造される場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性単量体として、公知の種々の重合性単量体を用いることができ、重合性単量体としては、例えばビニル系単量体などが挙げられ、またイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。また、重合性単量体として多官能性ビニル系単量体を用いることによっては、架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0075】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。
【0076】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0077】
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0078】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0079】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。
【0080】
(外添剤)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる各色のトナーとしては、トナー粒子をそのままの状態で用いることもできるが、トナー粒子に対して、流動性、帯電性およびクリーニング性などを改良するために、流動化剤およびクリーニング助剤などの外添剤を添加して用いることもできる。
【0081】
外添剤としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
【0082】
これら無機微粒子は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
【0083】
外添剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて用いてもよい。
【0084】
(トナーの製造方法)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる各色のトナーは、結着樹脂と、着色剤と必要に応じて内添剤とを用いてトナー粒子を得、このトナー粒子に対して必要に応じて外添剤を添加することによって製造することができる。
【0085】
各色のトナーを製造する方法としては、例えば粉砕法、懸濁重合法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コストおよび製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
【0086】
ここに、乳化凝集法とは、乳化重合法によって製造された結着樹脂の微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の微粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
【0087】
トナーの製造方法として、乳化凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤微粒子の分散液と結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、会合、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
乳化凝集法によってトナーを製造する場合においては、乳化重合法によって得られる結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の結着樹脂微粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調整し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0088】
また、乳化凝集法によってはコア−シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを凝集、会合、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0089】
特に、本発明のフルカラー画像形成方法に用いられるオレンジトナーは、水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであること、すなわち乳化凝集法などの製造方法により得られるものであることが好ましい。このような製造方法が好ましい理由は、オレンジトナーに含有される着色剤として分散性の高い多環キノン顔料が用いられることから、分散液における着色剤微粒子の分散性に優れ、さらに、着色剤微粒子と結着樹脂微粒子とを凝集、融着させた場合においても、着色剤微粒子が優れた分散性を保持したままトナー粒子を形成することができるためである。
【0090】
また、上記(1)の工程におけるオレンジ着色剤微粒子の粒子径としては、体積基準のメディアン径で100〜300nmであることが好ましい。
【0091】
また、トナーの製造方法として、粉砕法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)結着樹脂、着色剤および必要に応じて内添剤をヘンシェルミキサなどにより混合する工程
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、更にターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行う工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー粒子を形成する工程
(5)トナー粒子に外添剤を添加する工程
(現像剤)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる各色のトナーは、非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。なお、ブラックトナーについては、磁性の一成分現像剤として使用することもできる。
【0092】
二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0093】
キャリアの体積基準のメディアン径は、20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmである。
【0094】
キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0095】
(転写材)
本発明のフルカラー画像形成方法に用いられる転写材としては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
以上、本発明のフルカラー画像形成方法の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0097】
本発明によれば、当該フルカラートナー画像形成方法に用いられるオレンジトナーに含有される着色剤が多環キノン顔料よりなることにより、色ムラおよび色濁りの発生が抑制されて、赤色〜橙色領域の色再現範囲が拡大されると共に、優れた耐光性を有する画像が得られる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
〔オレンジトナーの作製例1(乳化凝集法)〕
(1)着色剤微粒子分散液〔1〕の調製工程
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、着色剤(例示化合物1)15質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8」(エムテクニック社製)を用いて分散処理を行って、着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。
【0100】
着色剤微粒子分散液〔1〕中の着色剤微粒子は、体積基準のメディアン径が220nmであった。なお、体積基準のメディアン径は、「MICROTRAC UPA−150」(HONEYWELL社製)を用い、下記測定条件下で測定したものである。
【0101】
サンプル屈折率:1.59
サンプル比重:1.05(球状粒子換算)
溶媒屈折率:1.33
溶媒粘度:0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整:測定セルにイオン交換水を投入し調整した。
【0102】
(2)コア部用樹脂粒子〔1〕の作製工程
下記に示す第1段重合、第2段重合および第3段重合を経て多層構造を有するコア部用樹脂粒子〔1〕を作製した。
【0103】
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0104】
上記界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃に昇温させた後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて反応容器中に滴下した。
【0105】
スチレン 532質量部
n−ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
上記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子〔A1〕を作製した。なお、樹脂粒子〔A1〕の重量平均分子量は16,500であった。
【0106】
(b)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物よりなる単量体混合液を投入し、離型剤としてパラフィンワックス「HNP−57」(日本精蝋社製)93.8質量部を添加し、90に加温して溶解させた。
【0107】
スチレン 101.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n−オクチルメルカプタン 1.75質量部
一方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を調製し、98℃に加熱した。この界面活性剤水溶液中に樹脂粒子〔A1〕を32.8質量部(固形分換算)添加し、さらに、上記パラフィンワックスを含有する単量体混合液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エムテクニック社製)で8時間混合分散した。混合分散により分散粒子径が340nmの乳化粒子を含有する乳化粒子分散液を調製した。
【0108】
次いで、この乳化粒子分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌を行うことで重合(第2段重合)を行って樹脂粒子〔A2〕を作製した。樹脂粒子〔A2〕の重量平均分子量は23,000であった。
【0109】
(c)第3段重合
樹脂粒子〔A2〕に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0110】
スチレン 293.8質量部
n−ブチルアクリレート 154.1質量部
n−オクチルメルカプタン 7.08質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合(第3段重合)を行い、重合終了後、28℃に冷却してコア部用樹脂粒子〔1〕を作製した。コア部用樹脂粒子〔1〕の重量平均分子量は26,800であった。
【0111】
(3)シェル用樹脂粒子〔1〕の作製工程
コア部用樹脂粒子〔1〕の作製における第1段重合で使用された単量体混合液を以下のものに変更した以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行ってシェル用樹脂粒子〔1〕を作製した。
【0112】
スチレン 624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
(4)オレンジトナー〔1〕の作製工程
(a)コア部の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア部用樹脂粒子〔1〕 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤微粒子分散液〔1〕 300質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8乃至11に調整した。
【0113】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、上記粒子の会合を行った。この状態で「マルチサイザ3」(コールター社製)を用いて会合粒子の粒子径測定を行い、会合粒子の体積基準メディアン径が5.8μmになった時に、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して会合を停止させた。
【0114】
会合停止後、さらに、熟成処理として液温を70℃にして1時間にわたり加熱撹拌を行うことにより融着を継続させてコア部〔1〕を作製した。
【0115】
コア部〔1〕の平均円形度を「FPIA2100」(シスメック社製)で測定したところ、0.912だった。
【0116】
(b)シェルの形成
次に、上記液を65℃にしてシェル用樹脂粒子〔1〕50質量部(固形分換算)を添加し、さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、70℃まで昇温させて1時間にわたり撹拌を行った。この様にして、コア部〔1〕の表面にシェル用樹脂粒子〔1〕を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェルを形成させた。
【0117】
この後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェル形成を停止した。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して生成した粒子をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェルを有するオレンジトナー粒子〔1〕を作製した。
【0118】
(c)外添剤添加工程
オレンジトナー粒子〔1〕に下記外添剤を添加して、「ヘンシェルミキサ」(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、オレンジトナー〔1〕を作製した。このオレンジトナー〔1〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で310nmであった。なお、この分散径は上述した方法により測定されたものである。また、オレンジトナー〔1〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は、体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0119】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ微粒子 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン微粒子 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0120】
〔オレンジトナーの作製例2〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物4」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔2〕を作製した。このオレンジトナー〔2〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で350nmであった。また、オレンジトナー〔2〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0121】
〔オレンジトナーの作製例3〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物5」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔3〕を作製した。このオレンジトナー〔3〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で230nmであった。また、オレンジトナー〔3〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0122】
〔オレンジトナーの作製例4〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物6」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔4〕を作製した。このオレンジトナー〔4〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子で250nmであった。また、オレンジトナー〔4〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0123】
〔オレンジトナーの作製例5〕
オレンジトナーの作製例1において「例示化合物1」の代わりに「例示化合物7」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔5〕を作製した。このオレンジトナー〔5〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で245nmであった。また、オレンジトナー〔5〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0124】
〔オレンジトナーの作製例6〕
オレンジトナーの作製例2において、「例示化合物4」の代わりに「例示化合物8」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔6〕を作製した。このオレンジトナー〔6〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で290nmであった。また、オレンジトナー〔6〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0125】
〔オレンジトナーの作製例7〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物12」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔7〕を作製した。このオレンジトナー〔7〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で300nmであった。また、オレンジトナー〔7〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0126】
〔オレンジトナーの作製例8〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物14」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔8〕を作製した。このオレンジトナー〔8〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で340nmであった。また、オレンジトナー〔8〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0127】
〔オレンジトナーの作製例9〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物17」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔9〕を作製した。このオレンジトナー〔9〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で370nmであった。また、オレンジトナー〔9〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0128】
〔オレンジトナーの作製例10〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「例示化合物16」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔10〕を作製した。このオレンジトナー〔10〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で450nmであった。また、オレンジトナー〔10〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0129】
〔オレンジトナーの作製例11(粉砕法)〕
(1)混合工程
下記材料を「ヘンシェルミキサ」(三井鉱山社製)により、撹拌羽の周速を25m/秒に設定して5分間かけて混合して混合物を得た。
【0130】
ポリエステル樹脂(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物:重量平均分子量20,000) 100質量部
着色剤(例示化合物5) 6質量部
離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート) 6質量部
荷電制御剤(ジベンジル酸ホウ素) 1質量部
(2)混練工程
得られた混合物を二軸押出混練機により110℃に加熱しながら混練し、混練物を得、その後この混練物を冷却した。
【0131】
(3)粉砕工程
得られた混練物を「ハンマーミル」(ホソカワミクロン社製)により粗粉砕した後、「ターボミルT−400型」(ターボ工業社製)により微粉砕した。
【0132】
(4)分級工程
得られた微粉末を風力分級機により微粉分級を行うことにより、体積基準のメディアン径が8.0μmのオレンジトナー粒子〔11〕を得た。
【0133】
(5)外添剤添加工程
オレンジトナー粒子〔11〕に、下記外添剤を添加して、「ヘンシェルミキサ」(三井三池鉱業社製)により外添処理を行い、オレンジトナー〔11〕を作製した。このオレンジトナー〔11〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で290nmであった。なお、この分散径は上述した方法により測定されたものである。また、オレンジトナー〔11〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0134】
ヘキサメチルジシラザン処理したシリカ微粒子 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン微粒子 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0135】
〔オレンジトナーの作製例12〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「例示化合物6」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔12〕を作製した。このオレンジトナー〔12〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で300nmであった。また、オレンジトナー〔12〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0136】
〔オレンジトナーの作製例13〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「例示化合物7」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔13〕を作製した。このオレンジトナー〔13〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で310nmであった。また、オレンジトナー〔13〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0137】
〔オレンジトナーの作製例14(比較例1のトナー)〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「C.I.ピグメントオレンジ64」を用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔14〕を作製した。このオレンジトナー〔14〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で610nmであった。また、オレンジトナー〔14〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0138】
〔オレンジトナーの作製例15(比較例2のトナー)〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「C.I.ピグメントイエロー74とC.I.ピグメントレッド48:1」を各々7.5質量部(合計15質量部)用いたことの他は同様にして、オレンジトナー〔15〕を作製した。このオレンジトナー〔15〕に含有される着色剤の分散径は、数平均一次粒子径で610nmであった。また、オレンジトナー〔15〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0139】
〔イエロートナーの作製例1〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「C.I.ピグメントイエロー74」を用いたことの他は同様にして、イエロートナー〔1〕を作製した。このイエロートナー〔1〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0140】
〔イエロートナーの作製例2〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「C.I.ピグメントイエロー74」を用いたことの他は同様にして、イエロートナー〔2〕を作製した。このイエロートナー〔2〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0141】
〔マゼンタトナーの作製例1〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「C.I.ピグメントレッド122」を用いたことの他は同様にして、マゼンタトナー〔1〕を作製した。このマゼンタトナー〔1〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0142】
〔マゼンタトナーの作製例2〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「C.I.ピグメントレッド122」を用いたことの他は同様にして、マゼンタトナー〔2〕を作製した。このマゼンタトナー〔2〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0143】
〔シアントナーの作製例1〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「C.I.ピグメントブルー15:3」を用いたことの他は同様にして、シアントナー〔1〕を作製した。このシアントナー〔1〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0144】
〔シアントナーの作製例2〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「C.I.ピグメントブルー15:3」を用いたことの他は同様にして、シアントナー〔2〕を作製した。このシアントナー〔2〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0145】
〔グリーントナーの作製例1〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「C.I.ピグメントグリーン7」を用いたことの他は同様にして、グリーントナー〔1〕を作製した。このグリーントナー〔1〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0146】
〔グリーントナーの作製例2〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「C.I.ピグメントグリーン7」を用いたことの他は同様にして、グリーントナー〔2〕を作製した。このグリーントナー〔2〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0147】
〔ブラックトナーの作製例1〕
オレンジトナーの作製例1において、「例示化合物1」の代わりに「カーボンブラック:モーガルL」を用いたことの他は同様にして、ブラックトナー〔1〕を作製した。このブラックトナー〔1〕の軟化点温度(Tsp)は107℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で6.0μmであった。
【0148】
〔ブラックトナーの作製例2〕
オレンジトナーの作製例11において、「例示化合物5」の代わりに「カーボンブラック:モーガルL」を用いたことの他は同様にして、ブラックトナー〔2〕を作製した。このブラックトナー〔2〕の軟化点温度(Tsp)は110℃、トナー粒子径は体積基準メディアン径で8.0μmであった。
【0149】
〔現像剤の調製〕
オレンジトナー〔1〕〜〔15〕、イエロートナー〔1〕および〔2〕、マゼンタトナー〔1〕および〔2〕、シアントナー〔1〕および〔2〕、グリーントナー〔1〕および〔2〕、並びにブラックトナー〔1〕および〔2〕の各々に、メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレート樹脂で被覆した体積平均粒子径50μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%のオレンジ現像剤〔1〕〜〔15〕、イエロー現像剤〔1〕および〔2〕、マゼンタ現像剤〔1〕および〔2〕、シアン現像剤〔1〕および〔2〕、グリーン現像剤〔1〕および〔2〕、並びにブラック現像剤〔1〕および〔2〕を調製した。
【0150】
〔実施例1〜13、比較例1および2〕
図2に示すフルカラー画像形成装置に対応する市販の複合プリンタ「bizhub Pro C500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を改造して6色のトナー画像形成ユニットを装着し、下記表1に示す現像剤の組み合わせに従って各現像剤を現像手段における現像器内へ投入して、下記の評価を行った。
【0151】
〔評価方法〕
(1)色再現範囲
温度20℃、湿度50%RHの環境下において、イエロー単色(Y)、マゼンタ単色(M)、シアン単色(C)、レッド(R)、ブルー(B)、グリーン(G)の各々のベタ画像(2cm×2cm)を形成し、各々の色成分をL表色系におけるa−b座標に表し、その色域面積を測定した。比較例1に示す現像剤の組み合わせを用いた場合の色域面積を100として色域面積を測定した。色域面積が105として評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
なお、「L表色系」は、色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、L軸方向が明度を示し、a軸方向が赤−緑方向の色相を表し、b軸方向が黄−青方向の色相を示すものである。aおよびbは、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパーチャとしてφ4mmのものを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定するものとする。
【0153】
(2)耐光性
10cm×10cmのトナー付着量0.4mg/cmのオレンジ画像を形成し、これを「キセノンウェザーメーターXL75」(スガ試験機社製)を使用し、キセノンランプ7万ルクスの照射条件にて480時間照射を行い、照射前後でのオレンジ画像の反射濃度を測定し、その変化率を求めた。反射濃度変化率が5%以下を合格レベルとして評価を行った。結果を表1に示す。
【0154】
なお、反射濃度は、カラー反射濃度計「X−Rite404A」(X−Rite社製)を用いて測定し、波長領域380〜780nmにおける最大吸収波長における反射濃度の照射前後での変化率を求めた。
【0155】
【表1】

【0156】
表1の結果より、本発明に係る実施例1〜13においては、比較例1および2に比べて、色ムラ、色濁りが解消されて色再現範囲が拡大され、特に赤色〜橙色領域の色再現範囲も拡大されたことによる肌色再現性が良好であった。また、実施例1〜13においては、優れた耐光性を有するオレンジ画像が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0157】
10Y、10Or、10M、10C、10G、10K 感光体ドラム
11Y、11Or、11M、11C、11G、11K 帯電手段
12Y、12Or、12M、12C、12G、12K 露光手段
13Y、13Or、13M、13C、13G、13K 現像手段
14Y、14Or、14M、14C、14G、14K 一次転写手段
141Y、141Or、141M、141C、141G、141K 一次転写ローラ
14S 二次転写手段
141S 二次転写ローラ
17 中間転写体
17a、17b、17c 支持ローラ
17d バックアップローラ
18 定着装置
181 加熱ローラ
182 加圧ローラ
20Y、20Or、20M、20C、20G、20K クリーニング手段
20S 中間転写体クリーニング手段
30Y、30Or、30M、30C、30G、30K トナー画像形成ユニット(画像形成手段)
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、結着樹脂および着色剤を含有する少なくとも6色の静電荷像現像用トナーを用いてフルカラー画像を形成する方法であって、
前記6色の静電荷像現像用トナーが、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、オレンジトナー、グリーントナーおよびブラックトナーであり、
前記オレンジトナーに含有される着色剤が下記一般式(1)、(2)または(3)で表される多環キノン顔料から選択される少なくともひとつであることを特徴とするフルカラー画像形成方法。
【化1】

(一般式(1)、(2)及び(3)中、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表し、nは0〜4の整数、mは0〜6の整数を表す。)
【請求項2】
前記オレンジトナーに含有される着色剤が、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントオレンジ19、C.I.バットレッド37のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のフルカラー画像形成方法。
【請求項3】
前記オレンジトナーに含有される着色剤が、C.I.ピグメントレッド168であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフルカラー画像形成方法。
【請求項4】
前記オレンジトナーが、水系媒体中に着色剤の微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂の微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤の微粒子および結着樹脂の微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のフルカラー画像形成方法。
【請求項5】
少なくとも、6色の画像形成手段と中間転写体を有するフルカラー画像形成装置であって、該6色の画像形成手段は、イエロートナー画像、オレンジトナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、グリーントナー画像、及びブラックトナー画像を形成するものであり、該中間転写体は、該6色の画像形成手段で形成された各トナー画像を順次重ね合わせて転写しフルカラートナー画像を形成し、形成した該フルカラートナー画像を転写材に一括して転写するものであり、該オレンジトナー画像を形成する画像形成手段は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のフルカラー画像形成方法で使用されるオレンジトナーを用いるものであることを特徴とするフルカラー画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−8439(P2012−8439A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146026(P2010−146026)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】