説明

フレキシブル回路基板

【課題】低価格化、開口部の形成および素子や電子部品などの高密度化や導体パターンの多層化が容易なフレキシブル回路基板およびフレキシブル回路基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミのシート111とこのアルミのシート111の表面に形成される第一の保護膜112とからなり、スプロケットホール113やデバイスホール114が形成されるベースフィルム11と、このベースフィルムの表面に形成される所定の導体パターン12と、アルミとこのアルミの表面に形成される電気的な絶縁性を有する膜とからなり所定の導体パターン12を覆うように形成される第二の保護膜13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路基板(FPC)のベースフィルムには、従来一般に、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などといった樹脂組成物が用いられている(特許文献1、2参照)。たとえば、特許文献2には、フレキシブル回路基板のベースフィルムとして、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートが適用される構成が開示されている。
【0003】
しかしながら、フレキシブル回路基板のベースフィルムに、樹脂組成物のフィルムを適用する構成は、次のような問題が生じることがある。
【0004】
まず、これらの樹脂組成物は高価であるため、フレキシブル回路基板の価格の低廉化を図ることが困難である。
【0005】
また、フレキシブル回路基板の一種に、TAB(Tape Automated Bonding)用のキャリアテープがある。TAB用のキャリアテープには、ボンディングにおける位置決めのためのスプロケットホールや、素子や電子部品などを実装するためのデバイスホールが形成される。スプロケットホールやデバイスホールは、ベースフィルムを厚さ方向に貫通する開口部である。このような開口部の形成には、エッチングや金型を用いた打ち抜きが用いられる。エッチングにより樹脂組成物のベースフィルムに開口部を形成する方法は、コストがかかる上に、加工レートが非常に小さい。一方、金型を用いた打ち抜きは、打ち抜きのための設備が必要となり、設備コストが上昇する。
【0006】
また、生産効率の向上などを図るため、フレキシブル回路基板の幅広化が進んでいる。しかしながら、樹脂組成物からなるベースフィルムは、温度変化や吸湿などによる変形や寸法変化が大きい。このため、ベースフィルムに樹脂組成物が適用されたフレキシブル回路基板は、幅広化に伴って歩留まりが低下する傾向がある。
【0007】
さらに、近年では、フレキシブル回路基板に形成される配線パターンや実装される素子などの高密度化や多層化が進んでいる。しかしながら、樹脂組成物は熱伝導率が低いため、高密度化や多層化によって、実装される素子などにかかる熱的な負荷が高くなる。このため、高密度化や多層化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−029395号公報
【特許文献2】特開2007−18926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、低価格化を図ることができるフレキシブル回路基板およびフレキシブル回路基板の製造方法を提供することである。または、本発明が解決しようとする課題は、開口部の形成が容易なフレキシブル回路基板およびフレキシブル回路基板の製造方法を提供することである。または、本発明が解決しようとする課題は、高密度化や多層化が容易なフレキシブル回路基板およびフレキシブル回路基板の製造方法を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、アルミのシートと前記アルミのシートの表面に形成される第一の保護膜とからなり厚さ方向に貫通する開口部が形成されるベースフィルムを備えることを特徴とする。前記開口部は、スプロケットホールとデバイスホールのいずれか一方または両方であることを特徴とする。また、前記ベースフィルムの表面に形成される導体パターンと、前記導体パターンを覆うように形成される第二の保護膜とをさらに備えることを特徴とする。前記第二の保護膜は、アルミの表面に電気的な絶縁性を有する膜が形成されたフィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベースフィルムとしてアルミのシートが適用されるため、樹脂組成物のフィルムが適用される構成と比較して、フレキシブル回路基板の温度変化や吸湿に伴う変形や寸法変化を抑制することができる。したがって、製品の歩留まりの向上を図ることができる。また、アルミは樹脂組成物に比較して熱伝導率や放熱の性能が高いため、実装される部品や素子などにかかる熱的な負荷を低減することができる。そして、熱的な負荷の低減によって、回路パターンなどといった導体パターンの多層化や、実装される部品や素子の高密度化を図ることができる。さらに、アルミは電磁波を遮断するため、外部からの電磁波の影響を受けることや、外部への不要輻射(EMI)を防止または抑制できる。さらに、ベースフィルムの価格を、樹脂組成物(たとえばポリイミド)が適用される構成に比較して安価にできる。このため、製品価格の低廉化を図ることができる。
【0012】
ベースフィルムがアルミにより形成される構成であると、ベースフィルムへの開口部の形成を、所定の導体パターンのパターニングと同じエッチング法を用いて行うことができる。このため、ベースフィルムへ開口部を形成するための打ち抜き装置および金型が不要となり、導体パターンを形成する工程と設備の共通化を図ることができる。すなわち、開口部形成工程と導体パターン形成工程とで、設備の共通化を図ることができる。このため、製造コストや設備コストの削減を図ることができる。
【0013】
さらに、所定の導体パターンを覆う第二の保護膜がアルミからなる構成であると、樹脂組成物が適用される構成に比較して、安価に製造することができる。また、アルミは樹脂組成物に比較して熱伝導率や放熱の性能が高いため、実装される部品にかかる熱的な負荷のさらなる低減を図ることができる。さらに、導体パターンが、ベースフィルムのアルミのシートと第二の保護膜のアルミとに挟まれる構成となる。このため、外部からの電磁波の影響を受けることや、外部への不要輻射(EMI)のさらなる防止または抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の構成を模式的に示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の構成を模式的に示した断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の製造方法を模式的に示した断面図であり、開口部形成工程を示した図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の製造方法を模式的に示した断面図であり、開口部形成工程を示した図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の製造方法を模式的に示した断面図であり、導体パターン形成工程を示した図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の製造方法を模式的に示した断面図であり、導体パターン形成工程を示した図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板の製造方法を模式的に示した断面図であり、開口部形成工程および導体パターン形成工程よりも後の工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は、TAB(Tape Automated Bonding)用のキャリアテープに好適なフレキシブル回路基板(FPC:Flexible Print Circuit)である。
【0016】
まず、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の構成を模式的に示した外観斜視図である。図2は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の構成を模式的に示した断面図である。
【0017】
図1と図2に示すように、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は、ベースフィルム11と、所定の導体パターン12と、第二の保護膜13とを有する。そして、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は、ベースフィルム11の表面に所定の導体パターン12が形成され、さらに所定の導体パターン12を覆うように第二の保護膜13が形成されるという構成を有する。すなわち、所定の導体パターン12は、所定の部分(後述)を除いては、ベースフィルム11と第二の保護膜13とに挟まれる。
【0018】
ベースフィルム11は、特に図1に示すように、所定の幅を有する帯状に形成される。そして、ベースフィルム11には、スプロケットホール113とデバイスホール114が形成される。スプロケットホール113とデバイスホール114は、いずれも、ベースフィルム11の厚さ方向に貫通する開口部である。スプロケットホール113は、ベースフィルム11の両側部に、長手方向に沿って所定の間隔で直列的に配列される態様で形成される。スプロケットホール113は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1に素子や電子部品などを実装する工程(=ボンディング)において、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の位置決めや繰り出しに用いられる。デバイスホール114は、ベースフィルム11の所定の位置に形成される。デバイスホール114は、素子や電子部品などを実装するための開口部である。デバイスホール114の寸法や形状や位置は、実装される素子や電子部品や形成される所定の導体パターン12などに応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。
【0019】
ベースフィルム11は、特に図2に示すように、アルミのシート111と、第一の保護膜112と、熱硬化性の接着剤115とを含む。そして、ベースフィルム11は、アルミのシート111の両面に第一の保護膜112が形成され、第一の保護膜112の一方の表面に熱硬化性の接着剤115の膜が形成されるという構成を有する。
【0020】
なお、アルミのシート111の厚さは特に限定されるものではなく、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1に要求される性能などに応じて適宜設定される。たとえば、50μmの厚さが適用できる。また、第一の保護膜112の材質や厚さも特に限定されるものではない。たとえば、第一の保護膜112には、厚さが3〜10μmのワニスが適用できる。同様に、熱硬化性の接着剤115の種類は、特に限定されるものではない。熱硬化性の接着剤には、公知の各種熱硬化性の接着剤が適用できる。
【0021】
さらに、ベースフィルム11の構成も、図2に示す構成に限定されない。たとえば、ベースフィルム11が第一の保護膜112を有さない構成であってもよい。すなわち、ベースフィルム11が、アルミのシート111と熱硬化性の接着剤115の膜を有し、アルミのシート111の片側表面に熱硬化性の接着剤115の膜が形成される構成であってもよい。
【0022】
所定の導体パターン12は、熱硬化性の接着剤115の膜が形成される側の表面に形成される。そして、所定の導体パターン12は、熱硬化性の接着剤115によりベースフィルムの片側表面に接着される。所定の導体パターン12は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1において、回路(=配線)となるパターンである。所定の導体パターン12の具体的な構成は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の機能や用途などに応じて適時設定されるものであり、特に限定されるものではない。所定の導体パターン12は、たとえば、厚さが10〜50μmのアルミのシートや、厚さが9〜35μmの銅のシートなどが適用できる。
【0023】
所定の導体パターン12には、インナーリード121と図略のコンタクトパッドとが設けられる。インナーリード121は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1に実装される素子や電子部品などと所定の導体パターン12とを電気的に接続するための部分である。図1と図2に示すように、インナーリード121は、デバイスホール114の内側に突出する部分である。コンタクトパッド(図略)は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1と外部とを電気的に接続するための接点(端子)となる部分である。そして、インナーリード121とコンタクトパッドには、ニッケルメッキと金メッキとが施される。すなわち、図2に示すように、インナーリード121の表面には、ニッケルの膜(ニッケルメッキ層)122が形成され、さらにその表面に金の膜(金メッキ層)123が形成される。
【0024】
第二の保護膜13は、ベースフィルム11の片側表面に、所定の導体パターン12を覆うように形成される。そして、第二の保護膜13は、電気的な絶縁性を有する。このため、特に図2に示すように、所定の導体パターン12は、第二の保護膜13によって外部に露出しないように埋め込まれる。換言すると、所定の導体パターン12は、ベースフィルム11と第二の保護膜13とに挟まれる。第二の保護膜13は、所定の導体パターン12を保護する機能や、所定の導体パターン12どうしの絶縁を確保する機能や、所定の導体パターン12と外部との短絡を防止する機能などを有する。第二の保護膜13には、アラミド系の樹脂組成物からなり、片側表面に接着剤の膜(図略)が形成されるカバーレイフィルムが適用できる。たとえば、ポリイミド系の接着剤の膜が形成されたアラミド系の樹脂組成物からなるフィルムが適用できる。また、ポリイミド系の接着剤の膜が形成されたポリイミド系の樹脂組成物からなるフィルムが適用できる。このほか、第二の保護膜13には、アルミなどの導体からなり、表面に電気的な絶縁性を有する膜が形成されるフィルムが適用できる。電気的な絶縁性を有する膜の材料は、特に限定されるものではない。たとえば、公知の各種樹脂組成物が適用できる。このように、第二の保護膜13は、電気的な絶縁性を有する構成であればよい。
【0025】
次に、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の製造方法について説明する。本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の製造方法は、開口部形成工程と、導体パターン形成工程と、それらの後の所定の工程とを含む。開口部形成工程は、ベースフィルム11に開口部(=貫通孔)であるスプロケットホール113とデバイスホール114を形成する工程である。導体パターン形成工程は、開口部が形成されたベースフィルムに、配線パターンなどといった所定の導体パターン12を形成する工程である。
【0026】
図3と図4は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の製造方法のうち、開口部形成工程を模式的に示した断面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、ベースフィルム11は、アルミのシート111と、第一の保護膜112と、熱硬化性の接着剤115とを含む。そして、ベースフィルム11は、アルミのシート111の両面に第一の保護膜112が形成され、第一の保護膜112の一方の表面に熱硬化性の接着剤115の膜が形成される。なお、アルミのシート111の厚さは特に限定されるものではなく、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1に要求される性能などに応じて適宜設定される。さらに、ベースフィルム11の構成も、図3(a)に示す構成に限定されない。たとえば、図3(b)に示すように、ベースフィルム11が第一の保護膜112を有さない構成であってもよい。すなわち、ベースフィルム11が、アルミのシート111と熱硬化性の接着剤115の膜を有し、アルミのシート111の片側表面に熱硬化性の接着剤115の膜が形成される構成であってもよい。
【0028】
そして、開口部形成工程において、ベースフィルム11に、スプロケットホール113やデバイスホール114などといった開口部が形成される。これらの開口部は、ベースフィルム11を厚さ方向に貫通する。
【0029】
図3(c)に示すように、ベースフィルム11の第一の保護膜112の表面(=熱硬化性の接着剤115の膜が形成されない側の表面)に、第一のフォトレジスト501の膜が形成される。第一のフォトレジスト501の膜の材質や形成方法には、従来公知の材質や方法が適用できる。たとえば、ベースフィルム11の第一の保護膜112の表面に、ロール to ロールにて第一のフォトレジスト501をコーティングし、乾燥する方法が適用できる。なお、第一のフォトレジスト501はポジ型であってもよくネガ型であってもよいが、図1においては、第一のフォトレジスト501がネガ型(光エネルギが照射されると、現像液に対する溶解性が低くなるタイプ)である構成を示す。
【0030】
そして、図3(d)に示すように、形成された第一のフォトレジスト501の膜に露光処理が施される。すなわち、紫外線露光機(図略)によって、第一のフォトレジスト501の膜に所定のパターンが焼き付けられる。第一のフォトレジスト501がネガ型であれば、図3(d)に示すように、開口部(=スプロケットホール113やデバイスホール114)が形成される位置には光エネルギ(たとえば紫外線)が照射されず(=遮光され)、それ以外の位置に光エネルギが照射される。図中の矢印は、照射される光エネルギを模式的に示す。
【0031】
そして、図4(a)に示すように、露光処理が施された第一のフォトレジスト501の膜に、現像処理が施される。すなわち、第一のフォトレジスト501の膜のうち、スプロケットホール113やデバイスホール114が形成される位置の部分が除去される。現像処理が施されると、第一のレジストパターン502が形成される。
【0032】
そして、図4(b)に示すように、形成された第一のレジストパターン502をエッチングマスクとして用いて、ベースフィルム11のエッチングを行う。ベースフィルム11のエッチングには、公知の各種ウェットエッチングやドライエッチングが適用できる。これにより、ベースフィルム11には、開口部(=スプロケットホール113やデバイスホール114)が形成される。スプロケットホール113やデバイスホール114が形成された後、図4(c)に示すように、第一のレジストパターン502が剥離される。第一のレジストパターン502の剥離には、たとえば苛性ソーダが用いられる。
【0033】
以上の工程を経て、開口部(=スプロケットホール113やデバイスホール114)が形成されたベースフィルム11が得られる。なお、本発明の実施形態においては、エッチングによりベースフィルム11に開口部を形成する構成を示したが、金型などを用いた打ち抜き加工により開口部を形成する構成であってもよい。
【0034】
次いで、導体パターン形成工程に移行する。導体パターン形成工程においては、スプロケットホール113やデバイスホール114が形成されたベースフィルム11に、所定の導体パターン(=所定の配線パターン)12が形成される。図5と図6は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の製造方法のうち、導体パターン形成工程を模式的に示した図である。なお、導体パターン形成工程において形成される所定の導体パターン12の具体的な構成(たとえば、寸法や形状や数など)は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の機能や用途などに応じて適宜設定されるものであり、限定されるものではない。
【0035】
図5(a)に示すように、貫通孔が形成されたベースフィルム11の熱硬化性の接着剤115の表面に、導体のシート503が貼り付けられる。導体のシート503の材質や厚さは、形成される導体パターン12に要求される機能などに応じて適宜設定される。たとえば、導体のシート503としては、厚さが10〜50μmのアルミのシートや、厚さが9〜35μmの銅のシートなどが適用できる。導体のシート503の貼り付け方法には、たとえば、加熱しながら圧着する方法(=ラミネート法)が適用できる。そして、バッチ式熱処理により、ベースフィルム11と、貼り付けられた導体のシート503との間に介在する熱硬化性の接着剤115を硬化させる。
【0036】
熱硬化性の接着剤115を硬化させた後、図5(b)に示すように、導体のシート503の表面に、第二のフォトレジスト504の膜が形成される。第二のフォトレジスト504の種類は特に限定されるものではなく、公知の各種フォトレジスト材料、たとえば、各種感光性の樹脂組成物が適用できる。第二のフォトレジスト504の膜の形成方法には、従来公知の各種方法が適用できる。たとえば、ロール to ロールにより、第二のフォトレジスト504をコーティングし、その後コーティングした第二のフォトレジスト504を乾燥させるという方法が適用できる。そして、図5(c)に示すように、形成された第二のフォトレジスト504の膜に露光処理が施される。図中の矢印は、照射される光エネルギを模式的に示す。なお、第二のフォトレジスト504は、ポジ型であってもよくネガ型であってもよいが、図においては、例として、第二のフォトレジスト504がネガ型(光エネルギが照射されると、現像液に対する溶解性が低くなるタイプ)である構成を示す。そして、図5(d)に示すように、露光処理が施された第二のフォトレジスト504の膜に現像処理が施される。これにより、導体のシート503の表面に、第二のレジストパターン505が形成される。
【0037】
そして、図6(a)に示すように、第二のレジストパターン505が形成された面とは反対側の面に、マスキング膜506が形成される。このマスキング膜506は、導体のシート503をエッチングによりパターニングして所定の導体パターン12を形成する工程において、ベースフィルム11のアルミのシート111を保護する(=エッチングされないようにする)膜である。このマスキング膜506には、熱硬化性のレジストが適用される。熱硬化性のレジストの種類は特に限定されるものではなく、公知の各種熱硬化性のレジストが適用できる。マスキング膜506の形成方法は、たとえば、マスキング膜506の材料である熱硬化性のレジストをコーティングし、その後加熱することにより硬化させるという方法が適用できる。マスキング膜506が形成されると、ベースフィルム11のアルミのシート111は、このマスキング膜506に覆われる。そして、ベースフィルム11に形成された開口部(=スプロケットホール113やデバイスホール114)の内部にも、マスキング膜506の材料である熱硬化性のレジストが充填される。
【0038】
そして、図6(b)に示すように、形成された第二のレジストパターン505をエッチングマスクとして用いて、導体のシート503のエッチングを行う。これにより、導体のシート503がパターニングされて所定の導体パターン12が得られる。なお、前記のとおり、ベースフィルム11のアルミのシート111は、マスキング膜506により覆われているから、このエッチングにおいては、アルミのシート111はエッチングされない。すなわち、マスキング膜506が、アルミのシート111を保護する。そして、エッチングの完了後、図6(c)に示すように、第二のレジストパターン505とマスキング膜506とが剥離(除去)される。第二のレジストパターン505とマスキング膜506の剥離には、たとえば、苛性ソーダが用いられる。
【0039】
上記工程を経ると、ベースフィルム11に、所定の導体パターン12が形成される。
【0040】
図7は、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の製造方法における、開口部形成工程および導体パターン形成工程よりも後の工程を模式的に示した断面図である。
【0041】
前記工程(=開口部形成工程および導体パターン形成工程)を経た後、図7(a)に示すように、所定の導体パターン12を覆う第二の保護膜13が形成される。第二の保護膜13は、所定の導体パターン12の保護する機能や、所定の導体パターン12どうしの絶縁を確保する機能や、所定の導体パターン12と他の部材との絶縁を確保する機能を有する。第二の保護膜13には、片側表面に熱硬化性の接着剤の膜(図略)が形成されたカバーレイフィルムが適用される。まず、第二の保護膜13が所定の形状に形成され、第二の保護膜13に形成される接着剤の膜により、前記工程を経たベースフィルム11の表面に位置決めして貼り付けられる。そして、貼り付けられた第二の保護膜13を加熱して接着剤を硬化させる。この工程を経ると、所定の導体パターン12の所定の部分以外の部分(ここでは、インナーリード121とコンタクトパッド以外の部分)は、第二の保護膜13に覆われる(換言すると、所定の導体パターン12は第二の保護膜13に埋め込まれる)。
【0042】
なお、第二の保護膜13の材質は特に限定されるものではない。第二の保護膜13のカバーレイフィルムとしては、たとえばアラミド系の樹脂からなるフィルムや、アルミのフィルムが適用される。なお、カバーレイフィルムとしてアルミのフィルムが適用される構成においては、アルミのフィルムの表面に、電気的な絶縁性を有する材料の膜が形成される構成が適用される。
【0043】
次いで、図7(b)(c)に示すように、形成された導体パターン12の所定の部分に、メッキが施される。すなわち、まず図7(b)に示すように、導体パターン12の所定の部分に、ニッケルメッキが施されてニッケルの膜(=ニッケルメッキ層)122が形成される。さらに、図7(c)に示すように、ニッケルメッキが施された部分に、金メッキが施されて金の膜(=金メッキ層)123が形成される。なお、これらのメッキが施される「所定の部分」としては、たとえば、インナーリード121やコンタクトパッドなどが適用される。インナーリード121やコンタクトパッドは、実装される部品や外部との接続の接点となる部分である。特に、インナーリードは、デバイスホール114の開口部の内側に向かって突出する部分である。
【0044】
上記工程を経て、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1が製造される。
【0045】
本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1と本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1の製造方法は、次のような作用効果を奏することができる。
【0046】
本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は、ベースフィルム11としてアルミのシート111を有するため、樹脂組成物のシートを有する構成と比較して、温度変化や吸湿に伴う変形や寸法変化を抑制することができる。
【0047】
表1は、ベースフィルムがアルミからなるフレキシブル回路基板(=本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1)と、ベースフィルムがポリイミドからなるフレキシブル回路基板(比較例)の寸法変化を示した表である。具体的には、表1は、スプロケットホールを形成した後とフレキシブル回路基板の完成後においけるスプロケットホールどうしの間隔の差を示す。なお、スプロケットホールどうしの間隔の測定には、三次元測長器を用いている。本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1のベースフィルム11と、比較例のフレキシブル回路基板のベースフィルムとは、いずれも厚さが50μmであり、幅(=X軸方向寸法)が151mmである。また、長手方向寸法(=Y軸方向寸法)の変化は、147.25mmに対する寸法変化を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、X軸方向(幅方向)の寸法変化は、比較例のフレキシブル回路基板が−0.057mmであるのに対して、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は−0.024mmである。また、Y軸方向(長手方向)の寸法変化は、比較例のフレキシブル回路基板が−0.039mmであるのに対して、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は−0.012mmである。このように、本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板1は、ポリイミド系の樹脂組成物からなる従来のフレキシブル回路基板に比較して、伸縮(すなわち寸法の変化)が小さい。したがって、フレキシブル回路基板が幅広化した場合であっても、製品の歩留まりの向上を図ること(または低下を防止すること)ができる。
【0050】
また、アルミは樹脂組成物に比較して熱伝導率や放熱の性能が高いため、実装される部品にかかる熱的な負荷を低減することができる。そして、熱的な負荷の低減によって、所定の配線や実装される部品や素子の高密度化や多層化を図ることができる(または図ることが容易となる)。さらに、アルミは電磁波を遮断するため、外部からの電磁波の影響を受けることや、外部への不要輻射(EMI)を防止または抑制できる。さらに、ベースフィルム11の価格を、樹脂材料(たとえばポリイミド)に比較して安価にできる。このため、製品価格の低廉化を図ることができる。
【0051】
ベースフィルム11がアルミにより形成される構成であると、ベースフィルム11への開口部の形成を、所定の導体パターン12のパターニングと同じエッチング法を用いて行うことができる。このため、ベースフィルム11に開口部を形成するための打ち抜き装置および金型が不要となり、所定の導体パターン12を形成する工程と設備の共通化を図ることができる。すなわち、開口部形成工程と導体パターン形成工程とで、設備の共通化を図ることができる。このため、製造コストや設備コストの削減を図ることができる。
【0052】
そして、第二の保護膜13がアルミのフィルムからなる構成であると、次のような作用効果を奏することができる。まず、アルミは樹脂組成物に比較して安価であることから、材料費の削減を図ることができる。したがって、第二の保護膜13にアルミのフィルムが適用される構成であると、樹脂組成物のフィルムが適用される構成に比較して、安価に製造することができる。また、アルミは樹脂組成物に比較して熱伝導率や放熱の性能が高いため、実装される素子や部品などにかかる熱的な負荷のさらなる低減を図ることができる。さらに、導体パターン12が、ベースフィルム11のアルミのシート111と、第二の保護膜13のアルミのフィルムに挟まれる構成となるから、外部からの電磁波の影響を受けることや、外部への不要輻射(EMI)のさらなる防止または抑制を図ることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。たとえば、前記実施形態においては、単層の所定の配線パターンを備える構成を示したが、複数層の所定の配線パターンを備える構成であってもよい。
【0054】
また、前記実施形態においては、ベースフィルムに形成される開口部として、スプロケットホールとデバイスホールの両方を示したが、スプロケットホールとデバイスホールのいずれか一方または両方であればよい。さらに、ベースフィルムに形成される開口部には、スプロケットホールとデバイスホールの一方または両方に限定されるものではない。ベースフィルムに形成され、厚さ方向に貫通する開口部であれば、種類を問わずに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
前記実施形態においては、TAB用のフレキシブル回路基板を示したが、本発明は、TAB用以外のフレキシブル回路基板以外にも適用できる。また、前記実施形態においては、フレキシブル回路基板を示したが、本発明は、可撓性を有さない回路基板(いわゆるリジッド回路基板)にも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:本発明の実施形態にかかるフレキシブル回路基板
11:ベースフィルム
111:アルミのシート
112:第一の保護膜
113:スプロケットホール
114:デバイスホール
115:接着剤の膜
12:所定の導体パターン
121:メッキされたニッケル(ニッケルメッキ層)
122:メッキされた金(金メッキ層)
13:第二の保護膜
131:接着剤の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミのシートと前記アルミのシートの表面に形成される第一の保護膜とからなり厚さ方向に貫通する開口部が形成されるベースフィルムを備えることを特徴とするフレキシブル回路基板。
【請求項2】
前記開口部は、スプロケットホールとデバイスホールのいずれか一方または両方であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル回路基板。
【請求項3】
前記ベースフィルムの表面に形成される導体パターンと、
前記導体パターンを覆うように形成される第二の保護膜と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル回路基板。
【請求項4】
前記第二の保護膜は、アルミの表面に電気的な絶縁性を有する膜が形成されたフィルムであることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブル回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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