説明

フレキシブル太陽電池素子モジュール

【課題】本発明は、各々の太陽電池素子における内部短絡を防止することが可能なフレキシブル太陽電池素子モジュールを提供することを主目的とする。
【解決手段】フレキシブル性を有し、1枚の第1基材および上記第1基材上にパターン状に形成された複数の第1電極層を有する第1電極基材、フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材、並びに、上記第1電極層および上記第2電極層の間に形成された機能層を有し、上記第1電極層、上記第2電極層、および上記機能層を有する太陽電池素子が複数連結されて構成されており、一の上記太陽電池素子の上記第1電極層と他の上記太陽電池素子の上記第2電極層とが電気的に接続されており、上記第1電極基材が、上記第1基材上の上記第2電極層の端部に対向する位置に形成され、上記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ、上記第1電極層と絶縁されている短絡防止層を有することを特徴とするフレキシブル太陽電池素子モジュールにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル太陽電池素子モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加が原因とされる地球温暖化等の環境問題が深刻となり、世界的にその対策が進められている。中でも環境に対する負荷が小さく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池に関する積極的な研究開発が進められている。また、最近では、高機能化や低コスト化が可能な太陽電池として、フレキシブル太陽電池が注目され、研究開発が進められている。
【0003】
このようなフレキシブル太陽電池を実用化するためには、より大きな出力電圧が必要であることから、複数の太陽電池素子を接続してモジュール化することが試みられており、このようなフレキシブル太陽電池素子モジュールにおいては、変形性や加工性を向上させるために、より高いフレキシブル性を付与することが可能な構成が求められている。
【0004】
特許文献1においては、色素増感型太陽電池素子モジュールの構成として、1枚の第1基材上に複数の第1電極層が形成された第1電極基材と、第2電極層を有する複数の第2電極基材と、1枚の第1電極基材上に形成された複数の第1電極層および各々の第2電極基材の第2電極層の間に形成された複数の多孔質層と、上記複数の第1電極層および複数の第2電極層の周囲に配置された複数の封止部材と、上記第1電極層、第2電極層、および封止部材で構成される空間に液状の電解質を封入して形成された複数の電解質層とを有する色素増感型太陽電池素子モジュールの構成が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記構成を有する色素増感型太陽電池素子モジュールにおいては、高いフレキシブル性を付与することは可能であるものの、使用時において、各々の色素増感型太陽電池素子の電極層同士、特に第2電極層の端部を含む側面が第1電極層に接触し、内部短絡が発生してしまうといった問題がある。
上記内部短絡の問題は、各種太陽電池素子モジュールにおいて、上記のモジュール構造を採用した場合も同様に生じる問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−32110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、各々の太陽電池素子における内部短絡を防止することができるフレキシブル太陽電池素子モジュールを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、フレキシブル性を有し、1枚の第1基材および上記第1基材上にパターン状に形成された複数の第1電極層を有する第1電極基材、フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材、並びに、上記第1電極層および上記第2電極層の間に形成された機能層を有し、上記第1電極層、上記第2電極層、および上記機能層を有する太陽電池素子が複数連結されて構成されており、一の上記太陽電池素子の上記第1電極層と他の上記太陽電池素子の上記第2電極層とが電気的に接続されているフレキシブル太陽電池素子モジュールであって、上記第1電極基材が、上記第1基材上の上記第2電極層の端部に対向する位置に形成され、上記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ、上記第1電極層と絶縁されている短絡防止層を有することを特徴とするフレキシブル太陽電池素子モジュールを提供する。
【0009】
本発明によれば、太陽電池素子の第2電極層の端部に対向する位置に短絡防止層が形成されていることから、各々の太陽電池素子の短絡が生じにくいフレキシブル太陽電池素子モジュールとすることができる。また、短絡防止層が第1電極層と同一の導電材料から構成されることから、フレキシブル太陽電池素子モジュールの製造時において、上記短絡防止層および第1電極層を同時に形成することが可能となるため、製造工程を簡略な工程とすることができ、生産性の高いフレキシブル太陽電池素子モジュールとすることができる。
【0010】
本発明は、第1基材上に複数の第1電極層と、上記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ上記第1電極層と絶縁されている短絡防止層とを形成することによりフレキシブル性を有する第1電極基材を形成する第1電極基材形成工程と、フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材を切り出すことが可能な1枚の第2電極基材用基板を準備する第2電極基材用基板準備工程と、上記第1電極基材の上記第1電極層側に機能層を形成する工程、または上記第2電極基材用基板の上記第2電極層側に上記機能層を連続的に形成する工程のいずれか一方を行う機能層形成工程と、上記第2電極基材用基板を切断することにより、上記複数の第2電極基材を形成する切断工程と、上記第1電極基材の上記第1電極層側と上記第2電極基材の上記第2電極層側とを上記第2電極層の端部に対向する位置に上記短絡防止層が位置するように対向させ、上記機能層を界面として密着させることにより上記第1電極基材および上記第2電極基材を貼合し、上記第1電極層、上記第2電極層および上記機能層を有する複数の太陽電池素子を形成する貼合工程と、一の上記太陽電池素子の上記第1電極層と、他の上記太陽電池素子の上記第2電極層とを電気的に接続する接続工程とを有することを特徴とするフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、第1電極基材形成工程では上記短絡防止層を有する第1電極基材を形成することができ、貼合工程では第2電極層の端部に対向する位置に上記短絡防止層を配置することが可能となることから、各々の太陽電池素子の内部短絡が生じにくいフレキシブル太陽電池素子モジュールを製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各々の太陽電池素子における内部短絡を防止することが可能なフレキシブル太陽電池素子モジュールを得ることができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる第1電極基材の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の例を示す概略図である。
【図4】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールに用いられる第1電極基材の他の例を示す概略図である。
【図5】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の例を示す概略平面図である。
【図6】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの他の例を示す概略図である。
【図7】本発明の有機薄膜太陽電池素子モジュールの例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法における第1電極基材用基板準備工程の一例を示す工程図である。
【図9】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法における第1電極基材用基板準備工程の他の例を示す工程図である。
【図10】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法における第2電極基材用基板準備工程、多孔質層形成工程、固体電解質層形成工程、および切断工程の一例を示す工程図である。
【図11】本発明の色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法における第2電極基材用基板準備工程、多孔質層形成工程、固体電解質層形成工程、および切断工程の他の例を示す工程図である。
【図12】本発明の有機薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法における第1電極基材用基板準備工程の一例を示す工程図である。
【図13】本発明の有機薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法における第2電極基材用基板準備工程、多孔質層形成工程、固体電解質層形成工程、および切断工程の一例を示す工程図である。
【図14】比較例において形成された第1電極基材を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュール、およびフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法について説明する。
【0015】
A.フレキシブル太陽電池素子モジュール
まず、本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールについて説明する。
本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールは、フレキシブル性を有し、1枚の第1基材および上記第1基材上にパターン状に形成された複数の第1電極層を有する第1電極基材、フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材、並びに、上記第1電極層および上記第2電極層の間に形成された機能層を有し、上記第1電極層、上記第2電極層、および上記機能層を有する太陽電池素子が複数連結されて構成されており、一の上記太陽電池素子の上記第1電極層と他の上記太陽電池素子の上記第2電極層とが電気的に接続されているものであって、上記第1電極基材が、上記第1基材上の上記第2電極層の端部に対向する位置に形成され、上記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ、上記第1電極層と絶縁されている短絡防止層を有することを特徴とするものである。
【0016】
なお、本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールにフレキシブル性を付与するために、第1電極基材および第2電極基材はフレキシブル性を有するものである。ここで、第1電極基材および第2電極基材のフレキシブル性としては、本態様のフレキシブル太陽電池モジュールに所望の変形性や加工性を付与することができる程度であれば、特に限定されるものではないが、JIS K5600−5−1(塗料−般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第1節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法))に準じた試験(電極基材の厚みが0.3mm以下である場合は直径32mmのマンドレルを用い、電極基材の厚みが0.3mm以上である場合は直径13mmのマンドレルを用いる。約100mm×50mmの電極基材を試験片として用いる)で、20°以上の折り曲げても電極基材として使用可能な程度であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールは、第1電極基材または第2電極基材の少なくとも一方が太陽光の受光面となることから、本発明においては、通常、第1電極基材または第2電極基材の少なくとも一方に透明性を有する基材が用いられる。「透明性を有する基材」の透明性としては、太陽光を受光できる程度であれば特に限定されるものではないが、全光線透過率50%以上であることが望ましい。なお、上記透明性は、JIS K7361-1:1997に準拠した測定方法により測定した値である。
【0018】
また、本発明における「機能層」とは、太陽電池素子が受光した太陽光の光エネルギーを、電気エネルギーに変換する機能を有する層をいう。
【0019】
また、本発明における「一の太陽電池素子」と「他の太陽電池素子」との電気的な接続関係等は、フレキシブル太陽電池素子モジュールにおける隣接する二の太陽電池素子同士についての接続関係等を指す。
また、以下の説明において「一の太陽電池素子の第1電極層」については、「一の第1電極層」と略して説明する場合がある。また、一の太陽電池素子の第1電極層以外の層、および他の太陽電池素子の各層についても同様に略して説明する場合がある。
【0020】
本発明によれば、太陽電池素子の第2電極層の端部に対向する位置に短絡防止層が形成されていることから、各々の太陽電池素子の内部短絡が生じにくいフレキシブル太陽電池素子モジュールとすることができる。また、短絡防止層が第1電極層と同一の導電材料から構成されていることにより、第1電極層をパターン状に形成する際に同時に形成することができるため、生産性の高いフレキシブル太陽電池素子モジュールとすることができる。また、樹脂等の絶縁材料を用いる場合に比べて短絡防止層の厚みを薄く形成することができ、第1電極層と短絡防止の厚みを同等とすることができることから、第1電極層上に形成される固体電解質層等の層を薄膜に形成した場合も、第1電極基材表面の凹凸に由来する各層の剥がれ等を抑制することができる。
【0021】
ここで、本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールの具体例としては、色素増感型太陽電池素子モジュール(第一態様)と、有機薄膜太陽電池素子モジュール(第二態様)と、化合物半導体型太陽電池素子モジュール(第三態様)と、シリコン薄膜太陽電池素子モジュール(第四態様)とが挙げられる。以下、各態様について説明する。
【0022】
I.第一態様
第一態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールは、上記太陽電池素子が、上記第1電極層または上記第2電極層のうちいずれか一方の電極層上に形成され、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有し、かつ上記機能層が酸化還元対を含有する固体電解質層である色素増感型太陽電池素子である色素増感型太陽電池素子モジュールである。なお、以下の第一態様の説明においては、「色素増感型太陽電池素子モジュール」を「モジュール」といい、「色素増感型太陽電池素子」を「素子」という。
【0023】
なお、本態様において、「電極層上に形成される」とは、第1電極層または第2電極層上に直接形成される場合だけではなく、他の層を介して形成される場合を含む概念である。
【0024】
また、本態様のモジュールにおいては、通常、第1電極層または第2電極層のうち、多孔質層が形成されている電極層は酸化物半導体電極層として用いられ、多孔質層が形成されていない電極層は対向電極層として用いられる。
【0025】
本態様のモジュールについて図を用いて説明する。図1(a)は本態様のモジュールの一例を示す概略平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。また、図2(a)は図1(a)、(b)に例示されるモジュールに用いられる第1電極基材の例を示す概略平面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
【0026】
図1(a)、(b)に例示されるモジュール100は、フレキシブル性を有し、1枚の第1基材11、第1基材11上にパターン状に形成された複数の第1電極層12、および短絡防止層13を有する第1電極基材10と、フレキシブル性を有し、第2電極層22からなる複数の第2電極基材20と、第2電極層22上に形成された複数の多孔質層3と、多孔質層3および第1電極層12の間に形成された複数の固体電解質層4とを有する。また、本態様においては、第1電極層12上に触媒層5が形成されていてもよい。なお、図1(a)においては、第2電極基材20の下層に配置される第1電極層および短絡防止層を点線を用いて示している。
また、図1(a)、(b)に例示されるモジュール100は、第1電極層12、触媒層5、固体電解質層4、多孔質層3、および第2電極層22を有する素子1が複数連結されて構成されるものであり、一の第1電極層12と他の第2電極層22が電気的に接続されている。また、モジュール100には、第1電極層12と第2電極層22の端部とが対向する位置に接触防止層16が形成されていてもよい。
【0027】
図1(a)、(b)に例示されるモジュール100においては、図2(a)、(b)に例示されるように、第1電極基材10が、第1基材11上の第2電極層の端部に対向する位置に形成され、第1電極層12と同一の導電材料から構成され、かつ、第1電極層12と絶縁されている短絡防止層13を有することを特徴とするものである。なお、図2(a)においては、第2電極層が対向する位置を一点鎖線を用いて示している。
【0028】
図3(a)は本態様のモジュールの他の例を示す概略平面図、図3(b)は図3(a)のC−C線断面図である。また、図4(a)は図3(a)、(b)に例示されるモジュールに用いられる第1電極基材の例を示す概略平面図、図4(b)は図4(a)のD−D線断面図である。なお、図3および図4における符号については、図1および図2と同様とすることができる。
【0029】
本態様においては、各々の素子の内部短絡が生じにくいモジュールを得ることができる。
以下、本態様のモジュールの詳細について説明する。
【0030】
1.第1電極基材
(1)短絡防止層
本態様における短絡防止層について説明する。
本態様における短絡防止層の形成位置としては、上記第1基材上の上記第2電極層の端部に対向する位置であれば特に限定されない。なお、本態様において「第2電極層の端部と対向する」とは、少なくとも第2電極層の一部の端部に対向することを指す。
【0031】
上記短絡防止層の形成位置としては、通常、第2電極層の形状等により適宜選択される。例えば、本態様における第2電極層の形状としては、短冊状であることが好ましい。上記第2電極層の形状が短冊状である場合は、上記第2電極層を有する短冊状の第2電極基材を備えた四辺形状の素子をストライプ状に配列させたモジュールを得ることができるからである。このような形状のモジュールは、優れたフレキシブル性を示すことができ、発電面積等の調整が容易であり、また製造時において各層の形成位置の位置合わせが容易であるといった利点を有する。
そこで以下、第2電極層の形状が短冊状である場合における短絡防止層の形成位置について説明する。
【0032】
短絡防止層の形成位置としては、第2電極層の短冊の4つの辺のうち、少なくとも一辺の端部に対向する位置であれば特に限定されないが、なかでも短冊の長辺の端部に対向する位置であることがより好ましい。
短冊状の第2電極基材をストライプ状に配列させたモジュールにおいては、ストライプの配列方向におけるフレキシブル性が高くなる。よって、この場合、第2電極層の長辺の端部と第1電極層との間の距離が変化しやすくなることから、第2電極層の長辺の端部の近傍において内部短絡が発生しやすいものとなる。よって、短冊状の第2電極層の長辺の端部に対向する位置に短絡防止層を設けることにより、各々の素子の内部短絡を好適に抑制することができる。
【0033】
ここで、本態様のモジュールにおいては、一の第1電極層と他の第2電極層との一部分を直接接触、もしくは導電性層を介して積層させることにより電気的に接続させる(以下、内部接続と称して説明する場合がある。)ことが好ましいことから、上記短絡防止層の形成位置は、一の第2電極層において他の第1電極層と接続させる第2接続領域の位置によっても、適宜選択される。例えば、図1(a)に例示されるように、短冊状の第2電極層22が短冊の1つの短辺の端部を含む第2接続領域22bを有する場合は、図2(a)に例示されるように、短絡防止層13を第2電極層の短冊の2つの長辺の端部に対向する位置に設けてもよく、図示はしないが、短絡防止層を第2電極層の短冊の1つの長辺の端部に対向する位置に設けてもよい。
一方、例えば、図3(a)に例示されるように、短冊状の第2電極層22が短冊の1つ長辺の端部を含む第2接続領域22bを有する場合は、図4(a)に例示されるように、短絡防止層13は第2電極層22の短冊の2つの長辺の端部のうち第2接続領域側とは反対側の長辺の端部に対向する位置に設けられる。また、この場合、第2電極層の短冊の短辺の端部に対向する位置にも短絡防止層13を設けてもよい。
【0034】
本態様における短絡防止層は、図2(a)に例示するように、隣り合う二の第2電極層の間に複数個形成されていてもよく、図4(a)に例示するように、隣り合う二の第2電極層の間に1個形成されていてもよい。なお、隣り合う二の第2電極層の間に複数個の短絡防止層を形成する場合は、図5に示すように、隣り合う二の第1電極層の幅方向に2個以上(図5においては2個)の短絡防止層13を形成することが好ましい。第1電極層12と短絡防止層13との絶縁をより確実に行うことができるからである。
【0035】
上記短絡防止層は、第2電極層の端部に対向する位置に設けられていれば特に限定されないが、短絡防止層の形成工程の簡便さ、モジュールの製造時における位置合わせ等を考慮すると、ある程度の幅を有する領域であることが好ましい。
このような短絡防止層の幅としては、200μm〜10mmの範囲内、なかでも500μm〜5mmの範囲内、特に1mm〜2mmの範囲内であることが好ましい。短絡防止層の幅が上記範囲に満たない場合は、モジュールの製造時における位置合わせに高い精度が要求されることから、本態様のモジュールの製造効率が低下する恐れがあるからである。一方、短絡防止層の幅が上記範囲を超える場合は、モジュールにおいて発電に寄与する面積が小さくなり、発電効率が低下する可能性があるからである。
なお、短絡防止層の幅とは、一の第1電極層と他の第1電極層との間に形成されている短絡防止層の幅を指し、短絡防止層が複数個形成されている場合は、一の第1電極層に隣接する短絡防止層の端部から他の第1電極層に隣接する短絡防止層の端部までの距離を指す。
【0036】
上述の説明においては、主に短冊状の第2電極層を用いた場合における第1電極層の形状について説明したが、本態様における短絡防止層はこれに限定されるものではなく、第2電極層の形状や、素子の形状に応じて適宜選択することができる。
【0037】
短絡防止層の材料、物性、および形成方法については、後述する第1電極層の材料、物性および形成方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0038】
(2)第1電極層の形状
次に、本態様における第1電極層の形状について説明する。
上記第1電極層の形状としては、素子を構成することができる形状であれば特に限定されない。本態様においては第1基材の第2電極層の端部に対向する位置には上記短絡防止層が形成されることから、上記第1電極層の形状としては、第2電極層の端部の内側に形成され、固体電解質層および多孔質層が積層される発電領域を有する形状であれば特に限定されない。なお、「第2電極層の端部の内側に形成される」とは、少なくとも第2電極層の一部の端部の内側に形成されることを指す。
【0039】
本態様のモジュールにおいては、一の第1電極層と他の第2電極層とを内部接続させることが好ましいことから、上記第1電極層の形状としては、上記発電領域と、上記発電領域から延長され、他の第2電極層と接続させる接続領域とを有する形状であることが好ましい。
【0040】
上記発電領域は、第2電極層の一部の端部の内側に配置することができ、固体電解質層等を配置することが可能な形状であれば特に限定されず、通常、第2電極層の形状等により適宜選択される。第2電極層の形状が短冊状である場合、上記発電領域の形状としては、四辺形状であることが好ましい。発電面積等の調整が容易であり、また製造時において各層の形成位置の位置合わせが容易であるといった利点を有する。
【0041】
上記接続領域としては、上記発電領域から延長して形成することができ、他の第2電極層と電気的に接続することが可能な位置であれば特に限定されず、他の第2電極層の第2接続領域に応じて適宜選択される。例えば、図1(a)に示されるように、短冊状の第2電極層22において短冊の1つの短辺の端部を含む第2接続領域22bと接続させる場合には、図2(c)に示されるように発電領域12aの長辺方向yに対して略直行方向xに接続領域12bを設けることが好ましい。
【0042】
また、例えば、図3(a)に示すように、短冊状の第2電極層22において短冊の1つの長辺の端部を含む第2接続領域22bと接続させる場合には、図4(c)に示されるように発電領域12aの長辺方向yに対して略平行方向に接続領域12bを設けることが好ましい。
【0043】
また、上記第1電極層12が発電領域12aおよび接続領域12bを有する場合は、図2(c)および図4(c)に例示するように、通常、各領域をつなぐ延長領域12cを有する。なお、図2(c)は図2(a)に例示される第1電極層12の形状を説明する図であり、図4(c)は図4(a)に例示される第1電極層12の形状を説明する図である。
【0044】
なお、上記の説明においては、主に短冊状の第2電極層を用いた場合における、第1電極層の形状について説明したが、これに限定されるものではない。
【0045】
(3)第1電極基材
本態様における第1電極基材としては、透明性を有する基材であってもよく、透明性を有さない基材であってもよく、本態様のモジュールの受光面により適宜選択されるものである。本態様においては、後述するように第2電極基材が金属基材であることが好ましいことから、第1電極基材は透明性を有する基材であることが好ましい。
【0046】
(a)透明性を有する基材
透明性を有する基材は、第1基材として透明基材と、第1電極層として上記透明基材上に形成された透明電極層とを有する。
【0047】
第1基材に用いられる透明基材としては、具体的には、透明無機物製基材や透明樹脂製基材を用いることができる。上記透明樹脂製基材としては、一般的な樹脂から構成される基材を用いることができ、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステルナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂から構成される基材を挙げることができる。また、上記透明無機物製基材としては、合成石英基材やガラス基板等を挙げることができる。透明基材の厚みは、5μm〜2000μmの範囲内であることが好ましい。
【0048】
第1電極層としては透明電極層が用いられる。本態様に用いられる透明電極層としては、透明性を有し、所定の導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。上記透明電極層に用いられる材料としては、金属酸化物、導電性高分子材料等を挙げることができる。上記金属酸化物としては、例えば、SnO、ZnO、酸化インジウムにスズを添加した化合物(ITO)、酸化インジウムに酸化亜鉛を添加した化合物(IZO)等を挙げることができる。上記導電性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン(PA)、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、およびこれらの誘導体等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いることもできる。
透明電極層の全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、なかでも90%以上、特に92%以上であることが好ましい。なお、上記全光線透過率は、可視光領域において、スガ試験機株式会社製 SMカラーコンピュータ(型番:SM−C)を用いて測定した値である。
透明電極層のシート抵抗は、500Ω/□以下であることが好ましく、なかでも300Ω/□以下、特に50Ω/□以下であることが好ましい。シート抵抗が上記範囲より大きいと、発生した電荷を十分に外部回路へ伝達できない可能性があるからである。なお、上記シート抵抗は、三菱化学株式会社製 表面抵抗計(ロレスタMCP:四端子プローブ)を用い、JIS R1637(ファインセラミックス薄膜の抵抗率試験方法:4探針法による測定方法)に基づき、測定した値である。
透明電極層は、単一の層からなる構成であってもよく、また、複数の層が積層された構成であってもよい。透明電極層の膜厚としては、通常、5nm〜2000nmの範囲内が好ましく、特に10nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
第1電極基材の形成方法としては、第1基材上に所望の形状を有する第1電極層および短絡防止層を形成することができる方法であれば特に限定されない。
上記第1電極層および短絡防止層の形成方法としては、例えば、透明電極層材料膜を透明基材上に全面形成した後にレーザースクライブ法を用いて所定のパターン状に切り込みを入れることにより形成する方法、上記透明電極層材料膜を透明基材上に全面形成した後に所定のパターン状にエッチングして形成する方法、金属マスクを用いてスパッタ法等の蒸着法を用いて形成する方法や、金属ペーストとした透明電極層材料を用いて透明基材上に透明電極層を印刷する方法等を挙げることができる。本態様においては、なかでも、レーザースクライブ法を用いた方法が好ましい。第1電極層および短絡防止層を所望のパターン形状に容易に形成することができるからである。なお、レーザースクライブ法やエッチング法等により第1電極層を形成する場合は、必要に応じて形成される補助電極、もしくは後述の触媒層等を第1基材全面に形成したのち、パターン形状に加工する処理を行うことが好ましい。
【0050】
(b)透明性を有さない基材
上記第1電極基材が透明性を有さない基材としては、通常、第1基材と第1電極層として金属層とを有する。また、上記金属層と同一の金属から構成される短絡防止層を有する。
【0051】
上記第1基材としては、透明基材であってもよく、透明性を有さない第1基材であってもよい。透明基材については、上述した「(1)透明性を有する基材」の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
一方、透明性を有さない第1基材としては、一般的な樹脂から構成される基材を用いることができる。
【0052】
第1電極層としては、金属層が用いられる。金属層に用いられる金属としては、例えば、Cu、Al、Ti、Cr、W、Mo、Pt、Zn、ステンレス鋼(SUS)およびそれらの合金等が挙げられる。金属層の厚みとしては、通常、0.01μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、0.1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。金属層の形成方法としては、透明電極層の形成方法と同様とすることができる。
【0053】
第1電極基材の形成方法に用いられる上記金属層および短絡防止層の形成方法としては、上述した透明電極層および短絡防止層の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0054】
(c)その他の構成
第1電極基材としては、第1基材および第1電極層を有するものであれば特に限定されず、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
【0055】
例えば、後述する第2電極基材側に後述する多孔質層が形成される場合は、第1電極基材の第1電極層上に触媒層が形成されていることが好ましい。触媒層は、モジュールの発光効率の向上に寄与する働きを有するものであれば特に限定されない。触媒層の膜厚としては、5nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0056】
本態様における第1電極基材においては、図2(a)等に示されるように、通常、末端に配置されるモジュールから電気を取り出すための配線取り出し層14が設けられる。上記配線取り出し層としては、第1電極層と同一の材料から構成されるものを好適に用いることができるがこの限りではない。
【0057】
本発明においては、図2(a)等に示すように、第2電極層の端部に対向しない位置であって、隣り合う二の第1電極層の間に絶縁層15を設けてもよい。上記絶縁層15を設けることにより、隣り合う第1電極層同士の導通を防止することができる。このような絶縁層15としては、絶縁性を有していれば特に限定されないが、第1電極層12および短絡防止層13と同一の材料から形成され、かつ、第1電極層12および短絡防止層13と導通しない導電材料層15’であることが好ましい。
また、図示はしないが、本発明においては、短絡防止層と導電材料層とが連続的に形成されていてもよい。
【0058】
2.第2電極基材
(1)第2電極層の形状
本態様における第2電極層の形状としては、隣接する第2電極層同士が接触しない形状であれば特に限定されない。また、第2電極層の形状としては、一の太陽電池素子の第1電極層の発電領域上に配置される第2発電領域を有するものであれば特に限定されないが、上記第2発電領域と、他の第1電極層の接続領域と電気的に接続される第2接続領域とを有することが好ましい。
【0059】
このような第2電極層の形状としては、正方形状、短冊状等の四辺形状、多角形状、円形状、楕円形状、連続した曲線からなる端辺を有する形状等を挙げることができる。本態様においては、なかでも短冊形状であることが好ましい。なお、本態様において通常、第2電極層の形状と第2電極基材の形状とは同一の形状となる。
【0060】
また、第2電極層の形状が短冊状である場合、上記第2接続領域としては、上述した第1電極層の接続領域と電気的に接続させることが可能であれば特に限定されないが、図1(a)に示されるように短冊の1つの短辺の端部を含む位置や、図3(a)に示すように短冊の1つの長辺の端部を含む位置に第2接続領域22bが設けられることが好ましく、なかでも、図3(a)のように短冊の1つの長辺の端部を含む位置に第2接続領域22bが設けられることが好ましい。第1電極層および第2電極層の接触面積を大きくすることができ、各々の素子の接続不良を効果的に防止することができるからである。
【0061】
また、第2発電領域は、少なくとも第1電極層の発電領域と対向するように設けられていれば特に限定されず、通常は、第2電極層における第2接続領域以外の領域であって、第2電極層の端部の内側に設けられる。また、第2発電領域は、図1(a)、図3(a)に例示されるように、第1電極層12の延長領域と対向しないように設けられてもよく、図6(a)に例示されるように、第1電極層12の延長領域と対向するように設けられてもよい。
【0062】
(2)第2電極基材
第2電極基材としては、透明性を有する基材であってもよく、透明性を有さない基材であってもよく、モジュールの受光面により適宜選択される。
【0063】
このような第2電極基材としては、電極としての機能を有するものであれば限定されず、第2電極層からなるものであってもよく、第2電極層と、第2電極層を支持するための第2基材とを有するものであってもよい。
【0064】
第2電極基材が、第2電極層からなるものである場合、第2電極基材としては、具体的には、単一の金属層、すなわち金属基材が用いられる。金属基材に用いられる金属や金属基材の厚みについては第1電極基材に用いられる金属層と同様とすることができる。
【0065】
一方、第2電極基材が、第2電極層と、第2基材とを有するものである場合は、第1電極基材と同様とすることができる。
【0066】
第2電極基材としては、必要に応じて他の構成を有することができる。例えば、後述する多孔質層が第1電極基材の第1電極層上に形成される場合、第2電極層上に上述した触媒層を形成することが好ましい。
【0067】
本態様における第2電極基材としては、第2電極層からなるもの、すなわち金属基材であることがより好ましい。第2電極基材として金属基材を用いることで、第2電極基材の第2電極層上に多孔質層を焼成して形成することが可能となるからである。
【0068】
第2電極基材の形成方法としては、所望の形状の第2電極層を有する第2電極基材を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。例えば、後述する「B.フレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法」の項で説明する方法を好適に用いることができる。
【0069】
3.固体電解質層
本態様における固体電解質層について説明する。ここで、本態様における上記固体電解質層は、酸化還元対を含有するものであり、流動性を示さないものである。なお、本態様では、固体電解質層は疑固体電解質(ゲル電解質層)を含む概念である。
【0070】
(1)固体電解質層の構成
上記固体電解質層としては、第1電極層の発電領域上に形成することが可能であれば特に限定されない。本態様においては上記固体電解質層がパターン状に形成されていることが好ましい。
【0071】
また、上記固体電解質層のパターン形状としては、上記第1電極層の発電領域上に上記固体電解質層を形成することが可能なパターンであれば特に限定されない。例えば、図6(b)に例示されるように、固体電解質層4の幅と第1電極層12の幅とが同等であってもよく、図1(a)、図3(a)に例示されるように、固体電解質層4の幅が第1電極層12の幅より大きくてもよく、図示しないが、固体電解質層の幅が第1電極層の幅よりも小さくてもよいが、固体電解質層4の幅が第1電極層12の幅と同等、または第1電極層12の幅よりも大きくなるように形成されていることが好ましい。各々の素子1において発電に寄与する面積を大きくすることができるからである。また、図1(a)等に示すように、固体電解質層4の幅が第1電極層12の幅よりも大きい場合は、一の第2電極層22の端部と、短絡防止層13上に固体電解質層4を配置することができるため、内部短絡の発生をより好適に防止することが可能となる。なお、第1電極層が接続領域を有する形状である場合、通常、第1電極層の上記接続領域には固体電解質層は形成されない。
なお、図6(a)は本態様のモジュールの他の例を示す概略平面図、図6(b)は図6(a)のA’−A’線断面図である。また、説明していない符号については図1(a)、(b)と同様とすることができる。
【0072】
また、上記固体電解質層のパターン形状としては、一の素子の第1電極層における発電領域と第2電極層との間に形成することが可能であれば特に限定されないが、第2電極層と同一形状であることが好ましい。後述する「C.フレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法」の項で説明するように、固体電解質層を簡便な方法でパターン状に形成することができるからである。
【0073】
また、上記固体電解質層4は、図6(a)に例示されるように、第1電極層12の延長領域に形成されてもよく、図1(a)、図3(a)に例示されるように、第1電極層12の延長領域に形成されていなくてもよい。上記固体電解質層の膜厚としては、10nm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0074】
(2)固体電解質層
上記固体電解質層は酸化還元対を有する。上記酸化還元対としては、色素増感型太陽電池で用いられるものであれば特に限定はされない。例えば、ヨウ素およびヨウ化物の組合せが挙げられる。酸化還元対の含有量としては、固体電解質層に占める酸化還元対の割合が、1質量%〜50質量%の範囲内、中でも、5質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましい。
【0075】
固体電解質としては、色素増感型太陽電池で用いられるものであれば特に限定はされない。例えば、酸化還元対および金属固溶体を含有する固体電解質、酸化還元対、有機溶剤および/またはイオン液体、および無機物微粒子を含有する固体電解質、ならびに酸化還元対、有機溶剤および/またはイオン性液体、および高分子化合物を含有する固体電解質が挙げられる。高分子化合物を含有する固体電解質は、多孔質層や対向電極層との密着性が良好なので、好ましい。電解質を固体化するための無機物微粒子や高分子化合物の含有量としては、固体電解質層を構成する材料中に5質量%〜60質量%含有させることが好ましい。
【0076】
固体電解質層の形成方法としては、所望の固体電解質層を形成することが可能であれば特に限定されず、一般的な塗布方法を用いて固体電解質層の材料を塗布する方法を挙げることができる。また、固体電解質層は、第1電極基材の第1電極層側に形成されていてもよく、第2電極基材の第2電極層側に形成されていてもよい。なかでも、第2電極基材の第2電極層側に形成されていることが好ましい。後述する「B.フレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法」の項で示すように、固体電解質層を簡便な方法でパターン状に形成することができるからである。
【0077】
4.多孔質層
本態様における上記多孔質層は、第1電極基材の複数の第1電極層上、または第2電極基材の第2電極層上のいずれか一方に形成される。また、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する。
【0078】
上記多孔質層については、第1電極層の発電領域に積層させることができれば特に限定いされないが、パターン状に形成されることが好ましい。多孔質層のパターン形状については、上述した固体電解質層の項で記載した固体電解質層のパターン形状と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。多孔質層の膜厚は、通常、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
上記金属酸化物半導体微粒子としては、半導体特性を備える金属酸化物からなるものであれば特に限定されるものではない。例えば、TiO、ZnO、SnO、ITO、ZrO、MgO、Al、CeO、Bi、Mn、Y、WO、Ta、Nb、La等が挙げられる。
【0080】
上記色素増感剤としては、光を吸収して起電力を生じさせることが可能なものであれば特に限定されない。上記色素増感剤としては、例えば、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系、インドリン系、カルバゾール系の有機色素や、ルテニウム系の金属錯体色素が挙げられる。
【0081】
本態様における多孔質層の形成方法としては、第1電極基材の複数の第1電極層上または第2電極基材の第2電極層上に所望の厚みで多孔質層を形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、上記金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質層用組成物を焼成処理、もしくは乾燥処理することにより多孔質層形成用層を形成し、次いで多孔質層形成用層の表面に上記色素増感剤を付着することにより形成することができる。なかでも焼成処理を含む形成方法が好ましい。
【0082】
5.その他の構成
本態様のモジュールは、上述した各構成を有するものであれば特に限定されず、他にも必要な構成を適宜選択して追加することができる。このような構成としては、例えば図1(a)に例示されるように、一の素子1において、第1電極層12の端部または第2電極層12の端部の少なくとも一方に対向する位置に配置された接触防止層16を有していてもよい。
上記接触防止層は、第1電極基材上に形成されてもよく、第2電極基材上に形成されていてもよい。接触防止層の材料としては、一般的な樹脂等の絶縁性材料と同様とすることができる。また、接触防止層の厚みについては、素子を構成する各層の厚み等に応じて適宜選択することができる。
【0083】
6.モジュール
本態様のモジュールは素子から構成されるものであり、一の素子の上記第1電極層と他の素子の上記第2電極層とが電気的に接続されているものである。
【0084】
本態様のモジュールは、複数の素子のうち、少なくとも一の素子が第1電極層を有するものであれば特に限定されないが、通常は、モジュールを構成する複数の素子のうち、末端に形成される素子以外の素子が上述した第1電極層を有する。
【0085】
また、モジュールにおいて、一の素子の第1電極層と他の素子の第2電極層との接続方法としては、直接、電極層同士を接触させることにより電気的に接続させてもよく、電極層間に導電性層を形成することにより電気的に接続させてもよいが、導電性層を形成して電気的に接続させることがより好ましい。これによりモジュールにおける接続不良をより好適に防止することができるからである。なお、導電性層の材料としては、一般的な導電性接着剤等を用いることができる。
【0086】
II.第二態様
第二態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールは、上記太陽電池素子が、上記機能層が光電変換層である有機薄膜太陽電池素子である有機薄膜太陽電池素子モジュールである。なお、以下の第2態様の説明では、「有機薄膜太陽電池素子モジュール」を「モジュール」といい、[有機薄膜太陽電池素子]を「素子」という。
【0087】
図7(a)、(b)は、本態様のモジュールの一例を示す概略断面図である。図7(a)、(b)に例示されるように、本態様のモジュール200は、フレキシブル性を有し、1枚の第1基材11、第1基材上にパターン状に形成された複数の第1電極層12を有する第1電極基材10と、フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層22を有する複数の第2電極基材20と、第1電極基材10の第1電極層12との間に形成された光電変換層6とを有するものである。また、モジュール200は、第1電極層12上に正孔取出し層7が、第2電極層22上に電子取出し層8が形成されている。
また、モジュール200は、第1電極層12、正孔取出し層7、光電変換層6、電子取出し層8、および第2電極層22を有する素子2が複数連結されて構成されるものである。
なお、図7(a)、(b)に示されるモジュールに用いられる第1電極基材の第1電極層の形状については、図2、および図4に示される形状と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0088】
本態様によれば、各々の素子の内部短絡が生じにくいモジュールを得ることができる。
以下、本態様のモジュールの詳細について説明する。
【0089】
1.第1電極基材
本態様における第1電極基材は、第1基材と、第1基材上にパターン状に形成された第1電極層と、短絡防止層とを有するものである。
【0090】
本態様における短絡防止層については上述した「I.第一態様」の項で説明したものと同様とすることができるのでここでの説明は省略する。
【0091】
第1電極基材における第1電極層は、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)であってもよく、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)であってもよい。
【0092】
第1電極層の形状については、「I.第一態様」の項で説明した形状と同様とすることができる。
【0093】
第1電極基材としては、透明性を有する基材であってもよく、透明性を有さない基材であってもよく、本態様により製造される素子モジュールの受光面により適宜選択されるものである。
【0094】
第1電極基材が透明性を有する基材である場合は、「I.第一態様」の項で説明した透明性を有する基材と同様とすることができる。
【0095】
第1電極基材が透明性を有さない基材である場合は、第1基材としては、「I.第一態様」の項で説明した第1基材が用いられ、第1電極層としては、導電層が用いられる。導電層の構成材料としては、第2電極層の構成材料の仕事関数等を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば第2電極層の構成材料を仕事関数が低い材料とした場合には、第1電極層の構成材料は仕事関数が高い材料であることが好ましい。仕事関数が高い材料としては、例えば、Au、Ag、Co、Ni、Pt、C、ITO、SnO、フッ素をドープしたSnO、ZnO等を挙げることができる。一方、第2電極層の構成材料を仕事関数が高い材料とした場合には、第1電極層の構成材料は仕事関数が低い材料であることが好ましい。仕事関数が低い材料としては、例えば、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、LiF等を挙げることができる。導電層の厚み、形成方法等については透明電極層と同様とすることができる。
【0096】
本態様における第1電極基材としては、第1基材と、第1電極層とを有するものであれば特に限定されず、他にも必要な構成を有することができる。
【0097】
第1電極基材の第1電極層を正孔取出し電極として用いる場合は、第1電極層上に正孔取出し層を形成することが好ましい。正孔取出し層は、光電変換層から正孔取出し電極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。正孔取出し層に用いられる材料としては、導電性高分子が好ましく用いられる。導電性高分子としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリン、ポリピロールが挙げられる。正孔取出し層の膜厚としては、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。
【0098】
第1電極基材の第1電極層を電子取出し電極として用いる場合は、第1電極層上に電子取出し層を形成することが好ましい。電子取出し層は、光電変換層から電子取出し電極への正孔の取出しが容易に行われるように設けられる層である。電子取出し層に用いられる材料としては、例えば、TiOや導電性高分子を用いたものを好適に用いることができる。電子取出し層の膜厚としては、50nm〜5000nmの範囲内であることが好ましい。
【0099】
配線取り出し層および絶縁層については、「I.第一態様」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0100】
2.第2電極基材
第2電極基材における第2電極層は、光電変換層で発生した正孔を取り出すための電極(正孔取出し電極)であってもよく、光電変換層で発生した電子を取り出すための電極(電子取出し電極)であってもよい。
【0101】
第2電極層の形状については、「I.第一態様」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0102】
第2電極基材は、透明性を有していてもよく有さなくてもよく、モジュールの受光面に応じて適宜選択される。上記第2電極基材としては第2電極層からなるものであってもよく、第2電極層および第2基材を有するものであってもよい。上記第2電極基材が第2電極層および第2基材を有するものである場合、第2電極層および第2基材としては、第1電極層および第1基材と同様のものを用いることができる。上記第2電極基材が第2電極層からなる場合、通常、単一の金属層、すなわち金属基材が用いられる。上記金属基材に用いられる金属については、第1電極基材の項で説明した金属と同様とすることができる。
【0103】
第2電極基材は構成以外の構成を有することができる。例えば、上記第2電極層を正孔取出し電極として用いる場合は第2電極層上に上述の正孔取出し層を形成することが好ましい。一方、上記第2電極層を電子取出し電極として用いる場合は第2電極層上に上述の電子取出し層を形成することが好ましい。
【0104】
3.光電変換層
本態様に用いられる光電変換層は、素子の電荷分離に寄与し、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する部材である。光電変換層としては、第1電極層の発電領域上に形成することが可能であり、かつ第1電極層の接続領域に形成されないように形成されていれば特に限定されない。本態様においては光電変換層が第1電極層上にパターン状に形成されていることが好ましい。なお、光電変換層のパターン形状については「I.第一態様」の項で説明した固体電解質層のパターン形状と同様とすることができる。
【0105】
本態様に用いられる光電変換層としては、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であってもよく、また電子受容性の機能を有する電子受容性層と電子供与性の機能を有する電子供与性層とが積層されたものであっても良い。
【0106】
光電変換層が、電子受容性および電子供与性の両機能を有する単一の層であるときは、光電変換層内で形成されるpn接合を利用して電荷分離が生じるため、単独で光電変換層として機能する。光電変換層の電子供与性材料および上記電子受容性材料の混合比は、使用する材料の種類により最適な混合比に適宜調整される。
【0107】
電子供与性材料としては、電子供与体としての機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリ−3−ヘキシルチオフェン等の電子供与性の導電性高分子を好適に用いることができるが、これに限定されない。
【0108】
電子受容性材料としては、電子受容体としての機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、フェニルC61酪酸メチルエステル等の電子受容性の導電性高分子を好適に用いることができるが、これに限定されない。
【0109】
光電変換層の膜厚としては、0.2nm〜3000nmの範囲内で設定されることが好ましい。光電変換層の形成方法としては、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0110】
4.モジュール
モジュールについて、上記以外の点については、「I.第一態様」の項で説明した色素増感型太陽電池素子モジュールの場合と同様とすることができる。
【0111】
III.第三態様
第三態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールは、上記太陽電池素子が、上記機能層が光電変換層である化合物半導体型太陽電池素子である化合物半導体型太陽電池素子モジュールである。化合物半導体型太陽電池素子の光電変換層としては、フレキシブル太陽電池モジュールに用いることができれば、特に限定されないが、例えば、Cu、In、Ga、Al、Se、S等から構成されるカルコパイライト系化合物や、Cd−Te系化合物を用いた光電変換層が挙げられる。本態様については、光電変換層以外の点については、「II.第二態様」の項で説明した有機薄膜太陽電池素子モジュールの場合と同様とすることができる。
【0112】
IV.第四態様
第四態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールは、上記太陽電池素子が、上記機能層が光電変換層であるシリコン薄膜太陽電池素子であるシリコン薄膜太陽電池素子モジュールである。シリコン薄膜の光電変換層としては、フレキシブル太陽電池モジュールに用いることができれば、特に限定されないが、例えば、微結晶のSiや、アモルファスのSiを用いた光電変換層が挙げられる。本態様については、光電変換層以外の点については、「II.第二態様」の項で説明した有機薄膜太陽電池素子モジュールの場合と同様とすることができる。
【0113】
V.その他
本発明における第1電極基材は、種々のフレキシブル太陽電池素子モジュール用電極基材(以下、この項目においては電極基材と称する。)として用いることができる。このような電極基材は、フレキシブル性を有し、1枚の基材、上記基材上にパターン状に形成された複数の電極層、および上記フレキシブル太陽電池素子モジュールに用いられた場合に上記基材の上記第2電極層の端部に対向する位置に形成され、上記電極層と同一の導電材料から構成され、かつ、上記電極層と絶縁されている短絡防止層を有することを特徴とする。上記電極基材は、短絡防止層を有することから、フレキシブル太陽電池素子モジュールに用いた場合、第2電極層の端部に短絡防止層を配置することが可能となるため、各々の太陽電池素子の内部短絡を防止することが可能となる。
【0114】
B.フレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法
本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法は、第1基材上に複数の第1電極層と、上記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ上記第1電極層と絶縁されている短絡防止層とを形成することによりフレキシブル性を有する第1電極基材を形成する第1電極基材形成工程と、フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材を切り出すことが可能な1枚の第2電極基材用基板を準備する第2電極基材用基板準備工程と、上記第1電極基材の上記第1電極層側に機能層を形成する工程、または上記第2電極基材用基板の上記第2電極層側に上記機能層を連続的に形成する工程のいずれか一方を行う機能層形成工程と、上記第2電極基材用基板を切断することにより、上記複数の第2電極基材を形成する切断工程と、上記第1電極基材の上記第1電極層側と上記第2電極基材の上記第2電極層側とを上記第2電極層の端部に対向する位置に上記短絡防止層が位置するように対向させ、上記機能層を界面として密着させることにより上記第1電極基材および上記第2電極基材を貼合し、上記第1電極層、上記第2電極層および上記機能層を有する複数の太陽電池素子を形成する貼合工程と、一の上記太陽電池素子の上記第1電極層と、他の上記太陽電池素子の上記第2電極層とを電気的に接続する接続工程とを有することを特徴とする製造方法である。
【0115】
本発明における機能層形成工程において、「第1電極層側に機能層を形成する」または「第2電極層側に機能層を形成する」とは、第1電極層または第2電極層の表面に、直接機能層を形成する場合だけではなく、他の層を介して機能層を形成する場合を含む概念である。また、本発明における機能層形成工程は、上記第1電極基材の上記第1電極層側に有機物を含む機能層を形成する工程、または上記第2電極基材用基板の上記第2電極層側に上記機能層を連続的に形成する工程のいずれか一方のみを行う場合だけではなく、第1電極層側および第2電極層側の両方に機能層を形成する場合を含む工程とする。
【0116】
また、本発明における貼合工程において、「第1電極基材の第1電極層側と第2電極基材の第2電極層側とを対向させ、機能層を界面として密着させる」とは、機能層を界面にして第1電極層と第2電極層とを密着させる場合だけではなく、第1電極層または第2電極層の表面に他の層が形成されている場合は、機能層を界面にして第1電極層の最表面の層と第2電極層の最表面の層とを密着させる場合を含む概念である。
【0117】
本発明では、界面となる機能層が高分子化合物を含有することが好ましい。他の層や基材との密着性を良好にすることができるからである。
【0118】
本発明によれば、第1電極基材形成工程では上記短絡防止層を有する第1電極基材を形成することができ、貼合工程では第2電極層の端部に対向する位置に上記短絡防止層を配置することが可能となることから、各々の太陽電池素子の内部短絡が生じにくいフレキシブル太陽電池素子モジュールを製造することができる。
【0119】
ここで、本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法の具体例としては、色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法(第一態様)と、有機薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法(第二態様)と、化合物半導体型太陽電池モジュールの製造方法(第三態様)と、シリコン薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法(第四態様)とが挙げられる。以下、各態様について説明する。
【0120】
I.第一態様
第1態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法は、上記太陽電池素子が、上記第1電極層または上記第2電極層のいずれか一方の表面上に形成され、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有し、かつ上記機能層が酸化還元対および高分子化合物を含む固体電解質層である色素増感型太陽電池素子である色素増感型太陽電池素子モジュールの製造方法である。なお、以下の第一態様の説明では、「色素増感型太陽電池素子モジュール」を「モジュール」といい、「色素増感型太陽電池素子」を「素子」という。
【0121】
上記モジュールは、多孔質層を必須の構成とすることから、本態様においては、上述の各工程の他に、第1電極層または第2電極層のいずれか一方の表面上に多孔質層を形成する多孔質層形成工程を必須の工程とする。
【0122】
ここで、本態様のモジュールの製造方法について図を用いて説明する。図8(a)〜(d)、図10(a)〜(e)は、本態様のモジュールの製造方法の一例を示す工程図であり、図1(a)、(b)に示すモジュールを製造する例について示す図である。また、図9(a)〜(d)、図11(a)〜(e)は、本態様のモジュールの製造方法の他の一例を示す工程図であり、図3(a)、(b)に示す色素増感型モジュールを製造する例について示す図である。
【0123】
本態様における第1電極基材形成工程について説明する。図8(a)、(b)に示すように、第1基材11上に連続的に導電材料膜123を形成する。また、第1電極基材形成工程においては、触媒層5を形成してもよい。この場合、導電材料膜123上に連続的に触媒層5を形成して積層させる。なお、図8(a)では、導電材料膜123および触媒層5が連続的に形成された第1基材11の一例を上面から示しており、図8(b)では、図8(a)のE−E線断面を示している。
次に、図8(c)、(d)に示すように、導電材料膜123および触媒層5をレーザースクライブ法等により所定の形状にパターニングすることで、1枚の第1基材11上に、パターン状に形成された複数の第1電極層12と第1電極層12と絶縁されている短絡防止層13を有する第1電極基材10を形成する。図8(c)において示される第1電極層の形状および短絡防止層の形成位置等については、上述した図2で説明したため、ここでの説明は省略する。
なお、図8(c)では、第1電極基材10の一例を上面から示しており、図8(d)では、図8(c)のE’−E’線断面を示している。
【0124】
また、第1電極基材形成工程においては、図9(a)、(b)に示すように、第1基材11上に、例えば金属マスク等を用いた蒸着法等により、複数の第1電極層12および短絡防止層13を直接所定のパターン状に形成してもよい。図9(a)において示される第1電極層の形状、および短絡防止層の形成位置等については、上述した図4で説明したため、ここでの説明は省略する。
なお、図9(a)では、第1電極層12および短絡防止層13がパターン状に形成された第1電極基材10の一例を上面から示しており、図9(b)では図9(a)のF−F線断面を示している。
また、図9(c)、(d)に示すように、第1電極層12上には触媒層5を第1電極層12とは異なるパターンで形成してもよい。
なお、図9(c)では、第1電極基材10の他の例を上面から示しており、図9(d)では、図9(c)のF’−F’線断面を示している。
【0125】
次に、本態様における第2電極基材用基板準備工程、および多孔質層形成工程について説明する。図10(a)、(b)、および図11(a)、(b)に示すように、第2電極基材用基板準備工程においては、第2電極層22を有する第2電極基材用基板20’を準備する。次に、多孔質層形成工程においては、第2電極層22上に色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層3を連続的に形成する。図10(a)、(b)に示すように、第2電極基材用基板20’から切り出される第2電極基材22(図10(e)参照)において上述した第1電極層の接続領域と接続される第2電極層22の第2接続領域22bとなる領域22b’(以下、第2電極基材用基板20’の接続領域22b’と称して説明する場合がある。)以外の部分に多孔質層3を連続的に形成することが好ましい。
なお、図10(a)では、多孔質層3が形成された第2電極基材用基板20’の一例を上面から示しており、図10(b)では、図10(a)のG−G線断面を示している。
【0126】
また、図11(a)、(b)に示すように、多孔質層形成工程においては、所定のパターン形状に多孔質層3を連続的に形成してもよい。なお、図11(a)においては、多孔質層3が第2電極基材用基板20’の接続領域22b’以外の部分にストライプ状に連続的に形成されている例について示している。
なお、図11(a)では、多孔質層3が形成された第2電極基材用基板20’の他の例を上面から示しており、図11(b)では、図11(a)のH−H線断面を示している。
【0127】
なお、図示はしないが、多孔質層形成工程においては、第1電極層上に多孔質層を形成してもよい。
【0128】
次に、本態様における機能層形成工程について説明する。
図10(c)、(d)および図11(c)、(d)に示すように、機能層形成工程においては、上述した第2電極基材用基板20’の多孔質層3上に、高分子化合物および酸化還元対を含む固体電解質層4を連続的に形成する。
なお、図10(c)、図11(c)では、固体電解質層4が形成された第2電極基材用基板20’の一例を上面から示しており、図10(d)では、図10(c)のG’−G’線断面を、図11(d)では、図11(c)のH’−H’線断面を示している。
【0129】
なお、図示はしないが、機能層形成工程においては、第1電極基材の第1電極層上に固体電解質層を第1電極層のパターンに対応するパターンで形成してもよい。
【0130】
次に、本態様における切断工程について説明する。
図10(e)および図11(e)に示すように、切断工程においては、第2電極基材用基板20’を所望の形状に切断することにより、第2電極基材20を形成する。なお、図10(e)および図11(e)においては、いずれも、モジュールとした際に、隣接する第2電極基材20が接触しない形状となるように第2電極基材20が形成される例について示している。
【0131】
次に、本態様における貼合工程、および接続工程について説明する。図8(d)に示される第1電極基材10の複数の第1電極層12上に形成された触媒層5と、図10(e)に示される複数の第2電極基材の第2電極層上に形成された多孔質層3とを第2電極層22の端部に対向する位置に短絡防止層13が位置するように対向させて、固体電解質層4を界面として密着させることにより第1電極基材10および第2電極基材20を貼合し、第1電極層12、第2電極層22、多孔質層3および固体電解質層4を有する複数の素子を形成する。また、この際、第1電極層12の接続領域12bと第2電極層22の第2接続領域22bとを導電性層等を介して電気的に接続させる。これにより、本工程においては図1(a)、(b)に示されるモジュール100の構成を得ることができる。
また本工程においては、例えば図9(d)に示される第1電極基材10の第1電極層12上に形成された触媒層5と、図11(e)に示される複数の第2電極基材の第2電極層上に形成された多孔質層3とを第2電極層22の端部に対向する位置に短絡防止層13が位置するように対向させて、固体電解質層4を界面として密着させることにより第1電極基材10および第2電極基材20を貼合して、複数の素子を形成する。また、この際、第1電極層12の接続領域12bと第2電極層22の第2接続領域22bとを導電性層等を介して電気的に接続させる。これにより、本工程においては図3(a)、(b)に示されるモジュール100の構成を得ることができる。
【0132】
以下、本態様のモジュールの製造方法の各工程について説明する。
第1電極基材形成工程において形成される第1電極基材については、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。また、第2電極基材準備工程において準備される第2電極基材用基板については、第2電極基材に用いられるものと同様とすることができる。なお、必要に応じて、第1電極基材上または第2電極基材用基板上に接触防止層を形成してもよい。接触防止層については上述した「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0133】
多孔質層形成工程において形成される多孔質層、およびその形成方法については、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。多孔質層は、第1電極基材の複数の第1電極層上、または第2電極基材用基板の第2電極層上のいずれか一方に形成される。多孔質層が第2電極基材用基板の第2電極層上に形成される場合、第2電極基材用基板から切り出された第2電極基材において、第1電極層の接続領域と電気的に接続可能な第2接続領域を有するように、多孔質層を形成する必要がある。よって、この場合は、図10(a)および図11(a)に示すように、第2電極基材用基板20’の接続領域22b’以外の部分に多孔質層3を連続的に形成することが好ましい。また、図11(a)に示すように、第2電極基材用基板20’上に所定のパターン状に多孔質層3を連続的に形成してもよい。一方、多孔質層が第1電極基材の複数の第1電極層上に形成される場合、多孔質層は、通常、第1電極層のパターンに対応するパターンで形成される。具体的な多孔質層のパターン形状については、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0134】
機能層形成工程において形成される固体電解質層、およびその形成方法については、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。また、図11(c)に示すように、第2電極基材用基板20’上に所定のパターン状に固体電解質層4を形成してもよい。また、上記固体電解質層は、第1電極層側または第2電極層側の少なくとも一方に形成されていればよく、両方に形成されていてもよい。
【0135】
切断工程により形成される第2電極基材の形状としては、モジュールにおいて、隣接する第2電極基材同士が接触しない形状であれば特に限定されず、モジュールの用途等により適宜選択して決定することができる。具体的な第2電極基材の形状については、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明した第2電極基材の形状と同様とすることができる。また、第2電極基材用基板上に多孔質層や固体電解質層が形成されている場合は、通常、本工程により形成される第2電極基材が有する多孔質層や固体電解質層が第1電極層のパターンに対応するパターンを有するように、第2電極基材用基板が切断される。第2電極基材用基板の切断方法としては、公知の方法とすることができる。
【0136】
貼合工程においては、例えば第1電極基材の複数の第1電極層上に多孔質層が形成されている場合は、多孔質層と第2電極層とを対向させて、固体電解質層を界面として密着させる。一方、第2電極基材の第2電極層上に多孔質層が形成されている場合は、第1電極層と上記多孔質層とを対向させて、固体電解質層を界面として密着させる。また、例えば多孔質層が形成されていない側の電極層上に触媒層が形成されている場合は、多孔質層と触媒層とを対向させて固体電解質層を界面として密着させる。貼合方法は、公知の方法を用いることができる。
【0137】
接続工程においては、隣接する素子の第1電極層と第2電極層とをモジュールの内部で電気的に接続させることができれば特に限定されず、直接接触させてもよく、第1電極層の接続領域および第2電極層の第2接続領域の間に導電性層を形成して接続させてもよい。本態様においては、導電性層を形成して接続させる方法を用いることが好ましい。これによりモジュールにおける接続不良をより好適に防止することができるからである。なお、導電性層の材料としては、一般的な導電性接着剤等を用いることができる。
【0138】
II.第二態様
第二態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法は、上記太陽電池素子が、上記第1電極層および上記第2電極層の間に光電変換層を有する有機薄膜太陽電池素子であり、上記機能層が上記第1電極層および上記第2電極層の間に形成される層である有機薄膜太陽電池素子モジュールを製造する製造方法である。なお、下記の第二態様の説明では、「有機薄膜太陽電池素子モジュール」を「モジュール」といい、「有機薄膜太陽電池素子」を「素子」という。
【0139】
本態様により製造されるモジュールにおける機能層としては、第1電極層および第2電極層の間に形成される層であり、第1電極基材および第2電極基材を貼合する際の界面とすることにより、第1電極基材および第2電極基材を良好に密着させることが可能な層であれば特に限定されない。上記機能層としては、具体的には、光電変換層、または正孔取出し層、電子取出し層を挙げることができる。機能層は導電性高分子を含有することが好ましい。機能層と他の層や基材との密着が良好になるからである。
【0140】
なお、上記モジュールは、光電変換層を必須の構成とするものである。よって、本態様のモジュールの製造方法においては、上記機能層形成工程において光電変換層を形成しない場合は、別途、第1電極層または第2電極層のいずれか一方の表面に光電変換層を形成する工程を有するものとする。
【0141】
ここで、本態様のモジュールの製造方法について図を用いて説明する。図12(a)〜(d)、図13(a)〜(e)は、本態様のモジュールの製造方法の一例を示す工程図であり、図7(a)に示すモジュールを製造する例について示す図である。
【0142】
まず、本態様における第1電極基材形成工程について説明する。図12(a)、(b)に示すように、第1電極基材形成工程においては、第1基材11上に連続的に導電材料膜123を形成する。また、第1電極基材形成工程においては、第1電極層の用途に応じて正孔取出し層または電子取出し層のいずれか一方を形成してもよい。なお、図12(a)、(b)においては正孔取出し層7を形成する例について示す。この場合、導電材料膜123上に連続的に正孔取出し層7を形成して積層させる。なお、図12(a)では、正孔取出し層7が連続的に形成された第1基材11の一例を上面から示しており、図12(b)では、図12(a)のI−I線断面を示している。
次に、図12(c)、(d)に示すように、導電材料膜123および正孔取出し層7をレーザースクライブ法等により所定のパターンにパターニングすることで、1枚の第1基材11上に、パターン状に形成された複数の第1電極層12および短絡防止層13を有する第1電極基材10を形成する。なお、第1電極層12および短絡防止層13の形状については、図2で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、図12(c)では、第1電極基材形成工程により形成された第1電極基材10の一例を上面から示しており、図12(d)では、図12(c)のI’−I’線断面を示している。
【0143】
次に、本態様における第2電極基材用基板準備工程について説明する。図13(a)、(b)に示すように、第2電極基材用基板準備工程においては、第2電極層22を有する第2電極基材用基板20’を準備する。なお、準備される第2電極基材用基板20’には、第2電極層22の用途に応じて、第2電極層22上に正孔取出し層または電子取出し層が形成されていてもよい。図13(a)、(b)では、電子取出し層8が形成されている例について示している。
なお、図13(a)は、電子取出し層8が形成された第2電極基材用基板20’の一例を上面から示しており、図13(b)は図13(a)のJ−J線断面を示している。
【0144】
次に、本態様における機能層形成工程について説明する。
図13(c)、(d)に示すように、機能層形成工程においては、上述した第2電極基材用基板20’の電子取出し層8上に、光電変換層6を連続的に形成する。なお、本工程においては、図13(c)に示すように、第2電極基材用基板20’の接続領域22b’以外の部分に光電変換層6を連続的に形成することが好ましい。
なお、図13(c)では、光電変換層6が形成された第2電極基材用基板20’の一例を上面から示しており、図13(d)では、図13(c)のJ’−J’線断面を示している。
なお、図示はしないが、機能層形成工程においては、第1電極基材の第1電極層側に光電変換層をパターン状に連続的に形成してもよい。
【0145】
次に、本態様における切断工程について説明する。
図13(e)に示すように、切断工程においては、第2電極基材用基板20’を所望の大きさに切断することにより、第2電極基材20を形成する。なお、図11(e)においては、モジュールとした際に、隣接する第2電極基材20が接触しない形状となるように、第2電極基材20が形成される例について示している。
【0146】
次に、本態様における貼合工程、および接続工程について説明する。および接続工程について説明する。図12(d)に示される第1電極基材10の複数の第1電極層12上に形成された正孔取り出し層7と、図13(e)に示される複数の第2電極基材の第2電極層上に形成された電子取り出し層8とを、第2電極層22の端部に対向する位置に短絡防止層13が位置するように、光電変換層6を界面として密着させることにより、第1電極基材10と第2電極基材20とを貼合し、第1電極層12、第2電極層22、光電変換層6、正孔取り出し層、および電子取り出し層8を有する複数の素子を形成する。また、この際、第1電極層12の接続領域12bと第2電極層22の第2接続領域22bとを導電性層等を介して電気的に接続させる。これにより、本工程においては図7(a)に示されるモジュール200の構成を得ることができる。
【0147】
以下、本態様のモジュールの製造方法の各工程について説明する。
第1電極基材形成工程により形成される第1電極基材、および第2電極基材準備工程により準備される第2電極基材用基板については「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。また、これらの工程において、正孔取り出し層、または電子取り出し層のいずれかを形成してもよい。また、必要に応じて第1電極基材上または第2電極基材用基板上に接触防止層を形成してもよい。
【0148】
機能層形成工程により形成される機能層は、第1電極層と第2電極層との間に形成される層である。より具体的には、光電変換層、正孔取出し層、電子取出し層を挙げることができる。機能層形成工程で光電変換層を形成する場合は、第1電極基材の第1電極層側に光電変換層を形成する工程、または第2電極基材用基板の第2電極層側に光電変換層を連続的に形成する工程のいずれか一方を行う。本工程において形成される光電変換層については、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。また、機能層形成工程で正孔取出し層または電子取出し層を形成する場合は、第1電極基材の第1電極層側に正孔取出し層もしくは電子取出し層を形成する工程、または第2電極基材用基板の第2電極層側に正孔取出し層もしくは電子取出し層を連続的に形成する工程のいずれか一方を行う。なお、光電変換層を第1電極層または第2電極層のいずれか一方の表面上に形成する工程が別途行われる。本工程により形成される正孔取出し層または電子取出し層については「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができる。正孔取出し層または電子取出し層は、第1電極基材の第1電極層または第2電極基材用基板の第2電極層のうち、正孔取出し電極または電子取出し電極に用いられる電極層上に形成されてもよく、また、第1電極層または第2電極層のうち、正孔取出し電極または電子取出し電極に用いられない電極層上に光電変換層が形成されている場合は、光電変換層上に形成されてもよい。
【0149】
切断工程については、第一態様の項で記載した工程と同様とすることができる。
貼合工程においては、例えば機能層として光電変換層を界面とする場合は、第1電極基材の第1電極層と第2電極基材の第2電極層のうち、いずれか一方の表面に形成された光電変換層と、上記光電変換層が形成されていない側の電極層とを対向させて、第1電極基材および第2電極基材を貼合する。なお、第1電極層または第2電極層には、正孔取出し層または電子取出し層のいずれかが形成されていてもよい。また、例えば機能層として正孔取出し層または電子取出し層を界面とする場合は、第1電極基材の第1電極層と第2電極基材の第2電極層のうち、いずれか一方の表面に形成された光電変換層上に形成された正孔取出し層または電子取出し層と、上正孔取出し層または電子取出し層が形成されていない側の電極層とを対向させて、第1電極基材および第2電極基材を貼合する。また、例えば機能層として光電変換層および正孔取出し層または電子取出し層を界面とする場合は、第1電極基材の第1電極層と第2電極基材の第2電極層のうち、いずれか一方の表面に形成された光電変換層と、上記光電変換層が形成されていない側の電極層上に形成された正孔取出し層電子取出し層とを対向させて、第1電極基材および第2電極基材を貼合する。本工程に用いられる第1電極基材および第2電極基材の貼合方法としては、公知の方法を用いることができる。なお、上記の説明においては、第1電極層または第2電極層のいずれか一方の電極層の表面のみに機能層が形成されている例について説明したが、両方の電極層の表面に機能層が形成されていてもよい。
接続工程については、「I.第一態様」の項で説明した工程と同様とすることができる。
【0150】
III.第三態様
第三態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法は、上記太陽電池素子が、上記機能層が光電変換層である化合物半導体型太陽電池素子であり、上記機能層が上記第1電極層および上記第2電極層の間に形成される層である化合物半導体型太陽電池素子モジュールの製造方法である。本態様の光電変換層としては、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができ、光電変換層以外の点については、「II.第二態様」の項で説明した有機薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法の場合と同様とすることができる。
【0151】
IV.第四態様
第四態様のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法は、上記太陽電池素子が、上記機能層が光電変換層であるシリコン薄膜太陽電池素子であり、上記機能層が上記第1電極層および上記第2電極層の間に形成される層であるシリコン薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法である。シリコン薄膜の光電変換層としては、「A.フレキシブル太陽電池素子モジュール」の項で説明したものと同様とすることができ、光電変換層以外の点については、「II.第二態様」の項で説明した有機薄膜太陽電池素子モジュールの製造方法の場合と同様とすることができる。
【0152】
V.その他
本発明のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法においては、例えば第1基材、または第2電極基材用基板としてロール状に巻回された長尺状の形態を有するものを用いることにより、上述した第1電極基材形成工程、機能層形成工程等をロール・ツー・ロール(Roll・to・Roll)プロセスで行うことができる。
【0153】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0154】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0155】
[実施例1]
<第1電極基材の作製>
PENフィルム(第1基材)上にITO膜(第1電極層)が形成された透明導電フィルムを用意し、そのITO膜上に白金を厚み13Å(透過率72%)で積層して触媒層を形成した。上記触媒層が形成された透明導電フィルムに対し、レーザースクライブにて絶縁部を形成し、ITO膜および触媒層の積層体を図8(c)に示すように、パターニングした。以上の手順により第1電極基材(対向電極基材)を得た。
【0156】
<多孔質層形成用インキの調製>
多孔質酸化チタン微粒子(日本エアロジル社製、商品名:P25)5gをエタノール16.7gに投入し、さらにアセチルアセトン0.25g、及びジルコニアビーズ(φ1.0mm)20gを添加した混合液を、ペイントシェーカーにより攪拌し、さらにバインダーとしてポリビニルピロリドン(日本触媒社製、商品名:K−30)を0.25g添加して多孔質層形成用のインキを調製した。
【0157】
<多孔質層の形成>
上記作製した多孔質層形成用インキを、第2電極基材用基板であるチタン箔上にドクターブレード法により10cm幅の面積で塗布して、多孔質層形成用層を形成した。多孔質層形成用層の周囲には、図10(a)、(b)に示すように、多孔質形成用インキが塗工されず、チタン箔のみが存在している未塗工部(第2電極基材用基板20’の接続領域22b’)を設けた。
その後、120℃で乾燥させることで、多数の酸化チタン微粒子を含む膜厚9μmの層を形成した。その酸化チタン微粒子の層にプレス機で0.1t/cmの圧力を加えた。プレス後、500℃で30分間焼成した。
【0158】
次に、色素増感剤として有機色素(三菱製紙社製、商品名:D358)を、濃度が3.0×10−4mol/lとなるようにアセトニトリル及びtert−ブチルアルコールの体積比1:1溶液に溶解させて色素担持用塗工液を調製した。この塗工液に対し、上述の第2電極基材用基板上に形成した酸化チタン微粒子の層を3時間浸漬させた。その後、色素担持用塗工液から引き上げ、酸化チタン微粒子に付着した色素担持用塗工液をアセトニトリルにより洗浄後、風乾した。これにより、酸化チタン微粒子の細孔表面に増感色素を担持させて多孔質層を形成した。
【0159】
<固体電解質層形成用塗工液の調製>
カチオン性ヒドロキシセルロース(ダイセル化学社製、商品名:ジェルナーQH200)0.14gをエタノール2.72gに溶解させた溶液に、ヨウ化カリウムを0.043g加え、攪拌して溶解させた。次いで、その溶液に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−B(CN)4)0.18g、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(PMIm−I)0.5g、及びIを0.025g加えて、撹拌して溶解させた。これにより、コーティング可能な固体電解質層形成用塗工液を調製した。
【0160】
<固体電解質層の形成>
上述の多孔質層(10cm幅)上に、固体電解質層形成用塗工液をドクターブレード法により塗布し、100℃で乾燥して固体電解質層を形成した。
【0161】
<第2電極基材用基板の切断>
電解質層付き基板を図10(e)に示すように、短冊状であり、かつ第2電極層の短冊の短辺の端部を含む第2接続領域22bを有するように切断した。なお、短冊の幅は10mmとした。
これにより、第2電極基材(導電基材)を得た。
【0162】
<色素増感太陽電池素子モジュールの作製>
短冊上に切り出した第2電極基材のうち、第2接続領域に導電性接着剤を形成した。また、第1電極基材上の第2電極層の端部に対向する位置(図1(a)における16の位置)に接触防止層(厚み5μm、幅1.5mmのアクリル系粘着シート)を配置した。第2電極層上の導電性接着剤が隣接する第1電極層の接続領域と接続するように、第1電極基材と、第2電極基材の貼り合わせを行い、図1(a)、(b)に例示される色素増感型太陽電池素子モジュールを作製した。作製した色素増感型太陽電池素子モジュールを充填材で挟み、150℃でラミネートすることにより、封止した。
【0163】
[実施例2]
固体電解質層形成用塗工液として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIm−B(CN))0.18g、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド(PMIm−I)0.5g、及びIを0.025gを混合した液に粒径20nmのシリカ粒子を5質量%加えて、攪拌したものを用いて、多孔質層(10cm幅)上に、ドクターブレード法により塗布して膜厚12μmの固体電解質層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池素子モジュールを作製した。
【0164】
[比較例]
第1電極層のパターンを図14に示されるようにパターニングし、短絡防止層を有さない第1電極基材としたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池素子モジュールを作成した。
【0165】
<電池性能の評価>
作製したモジュールについて、擬似太陽光(AM1.5、入射光強度100mW/cm)を光源として、対向電極側から入射させ、ソースメジャーユニット(ケースレー2400型)を用いて電圧印加による電流電圧特性を測定した。その結果、実施例1では、短絡電流20mA、開放電圧6.5V、曲線因子0.24、最大出力37mWの特性を示し、蛍光灯(500lux)を光源とした場合、短絡電流0.27mA、開放電圧4.8V、曲線因子0.71、最大出力0.9mWの特性を得た。また、実施例2では、短絡電流30mA、開放電圧6.1V、曲線因子0.35、最大出力64mWの特性を示し、蛍光灯を光源とした場合、短絡電流0.3mA、開放電圧4.8V、曲線因子0.70、最大出力1mWの特性を得た。
なお、実施例1および実施例2で作製した色素増感型太陽電池素子モジュールを、充填材で封止せずに、150mmφのプラスチック芯に10回程度巻き付ける試験をおこなった結果、実施例1で作製した色素増感型太陽電池素子モジュールでは特段の問題は生じなかったが、実施例2で作製した色素増感型太陽電池素子モジュールでは第1電極基材と第2電極基材の間で剥離が生じた。実施例1で作製した色素増感型太陽電池素子モジュールでは、高分子化合物を有する固体電解質層を界面として密着させることで、第1電極基材と第2電極基材の密着が良好になったものと考えられる。
一方、比較例1では短絡電流27mA、開放電圧3.1V、曲線因子0.25、最大出力21mWの特性を示し、蛍光灯を光源とした場合、短絡電流0.28mA、開放電圧2.5V、曲線因子0.71、最大出力0.5mWの特性を得た。電圧が大幅に低下していることから、一部で短絡が生じたと考えられる。
【符号の説明】
【0166】
1 … 色素増感型太陽電池素子
2 … 有機薄膜太陽電池素子
3 … 多孔質層
4 … 固体電解質層
5 … 触媒層
6 … 光電変換層
7 … 正孔取り出し層
8 … 電子取り出し層
10 … 第1電極基材
11 … 第1基材
12 … 第1電極層
13 … 短絡防止層
20 … 第2電極基材
20’ … 第2電極基材用基板
100 … 色素増感型太陽電池素子モジュール
200 … 有機薄膜太陽電池素子モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル性を有し、1枚の第1基材および前記第1基材上にパターン状に形成された複数の第1電極層を有する第1電極基材、
フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材、並びに、
前記第1電極層および前記第2電極層の間に形成された機能層を有し、
前記第1電極層、前記第2電極層、および前記機能層を有する太陽電池素子が複数連結されて構成されており、
一の前記太陽電池素子の前記第1電極層と他の前記太陽電池素子の前記第2電極層とが電気的に接続されているフレキシブル太陽電池素子モジュールであって、
前記第1電極基材が、前記第1基材上の前記第2電極層の端部に対向する位置に形成され、前記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ、前記第1電極層と絶縁されている短絡防止層を有することを特徴とするフレキシブル太陽電池素子モジュール。
【請求項2】
前記太陽電池素子が、前記第1電極層または前記第2電極層のうちいずれか一方の電極層上に形成され、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有し、かつ前記機能層が酸化還元対を含有する固体電解質層である色素増感型太陽電池素子であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル太陽電池素子モジュール。
【請求項3】
前記太陽電池素子が、前記機能層が光電変換層である有機薄膜太陽電池素子、化合物半導体型太陽電池素子、またはシリコン薄膜太陽電池素子のいずれかの太陽電池素子であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル太陽電池素子モジュール。
【請求項4】
第1基材上に複数の第1電極層と、前記第1電極層と同一の導電材料から構成され、かつ前記第1電極層と絶縁されている短絡防止層とを形成することによりフレキシブル性を有する第1電極基材を形成する第1電極基材形成工程と、
フレキシブル性を有し、少なくとも第2電極層を有する複数の第2電極基材を切り出すことが可能な1枚の第2電極基材用基板を準備する第2電極基材用基板準備工程と、
前記第1電極基材の前記第1電極層側に機能層を形成する工程、または前記第2電極基材用基板の前記第2電極層側に前記機能層を連続的に形成する工程のいずれか一方を行う機能層形成工程と、
前記第2電極基材用基板を切断することにより、前記複数の第2電極基材を形成する切断工程と、
前記第1電極基材の前記第1電極層側と前記第2電極基材の前記第2電極層側とを前記第2電極層の端部に対向する位置に前記短絡防止層が位置するように対向させ、前記機能層を界面として密着させることにより前記第1電極基材および前記第2電極基材を貼合し、前記第1電極層、前記第2電極層および前記機能層を有する複数の太陽電池素子を形成する貼合工程と、
一の前記太陽電池素子の前記第1電極層と、他の前記太陽電池素子の前記第2電極層とを電気的に接続する接続工程とを有することを特徴とするフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記太陽電池素子が、前記第1電極層または前記第2電極層のいずれか一方の表面上に形成され、色素増感剤が坦持された金属酸化物半導体微粒子を含有する多孔質層を有し、かつ前記機能層が酸化還元対を含む固体電解質層である色素増感型太陽電池素子であることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記太陽電池素子が、前記第1電極層および前記第2電極層の間に光電変換層を有する有機薄膜太陽電池素子、化合物半導体型太陽電池素子、またはシリコン薄膜太陽電池素子のいずれかの太陽電池素子であり、前記機能層が前記第1電極層および前記第2電極層の間に形成される層であることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル太陽電池素子モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−109952(P2013−109952A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254017(P2011−254017)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】