説明

フレキシブル生産システム

【課題】フレキシブル生産システムにおいて、簡単な構成により、ロボットを主体として機械化した生産システムでありながら、人手による作業の分担介入が可能で、生産規模の増減やシステムの移設組み換えが容易なシステムを実現する。
【解決手段】本システム1は、床面に対して任意の回転位置で停止自在とされた回転テーブル2と、回転テーブル2の周囲に配置され、部品に対して処理を行う処理装置31〜34と、回転テーブル2に配置され、処理装置31〜34に対して部品の投入と受取を行うと共に、部品に対して処理を行うロボット4と、部品を供給する部品供給装置5と、を備えている。部品を処理する工程が回転テーブル2の一定の回転方向に沿って行われ、ロボット4が部品供給装置5から供給された部品を所持して回転テーブル2と共に回転しつつ処理装置31〜34に部品の処理をさせると共に自らも部品に対する処理を行って完成品の生産が繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セル生産方式が行われているが、人手主体のセル生産において複数人で生産を行うと、作業速度が作業の遅い人に合わせられるので、作業速度のばらつきによって生産性が安定しなくなる問題がある。そこで、人手に代えてロボットによるセル生産が考えられるが、ロボットに対応させるための専用の治具や部品の搬送装置が必要で非常にコストのかかる重たいシステムとなることが多い。また、計画生産量の増減に対してロボットによる機械化で対応するには予め最大生産量を見越した設備を準備する必要があって設備投資が大きくなり、また、生産量が低下した際に設備稼働率が低くなる。さらに、新規製品に対して機械化部分の流用性が低いと、新規製品に対する投資が大きくなり、品種切り替えに対するフレキシビリティの低い硬直したシステムになる。
【0003】
そこで、市場の動きに追随して段階的に規模の増設が可能であるフレキシブルな部品組立システムとして、正逆回転可能なテーブルを備え、そのテーブルの周囲に部品供給装置や部品加工装置などを配し、かつ部品供給装置の部品取り出し位置、およびステーブル上の全ての治具位置などの全ての位置を複数台のロボットの可動範囲に入るように、テーブルの設置架台上方の天井面より複数台の天吊りロボットを配置し、テーブルの使用により、複数台のロボットで工程分割すると共に作業を相互に補完させる構成とした部品組立システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−226568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような部品組立システムにおいては、複数台のロボットで作業を相互に補完させ、正逆回転するテーブルや組み付け治具の所定回数の回転後に部品が完成するものであり、工程の流れや各ロボットの動作が複雑で、大幅な品種切り替えや生産量の増減変動に対してフレキシブルに対応できるとは考えられない。例えば、部品組立システムを組み替えて小規模のセル生産や、大規模のセル生産に相互に切り替えたり、そのため移設したりすることは容易とは考えられない。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、ロボットを主体として機械化した生産システムでありながら、人手による作業の分担介入が可能で、生産規模の増減やシステムの移設組み換えが容易であるフレキシブル生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、工程順に部品を処理して完成品を次々と生産するフレキシブル生産システムにおいて、床面に対して回転自在、かつ、任意の回転位置で停止自在とされた回転テーブルと、前記回転テーブルの周囲に配置され、部品に対して処理を行う処理装置と、前記回転テーブルに配置され、前記処理装置に対して部品の投入と受取を行うと共に、部品に対して処理を行うロボットと、前記ロボットに部品を供給する部品供給装置と、を備え、部品を処理する工程が前記回転テーブルの回転方向に沿って行われ、前記ロボットが、前記部品供給装置から供給された部品を所持して前記回転テーブルと共に回転しつつ前記処理装置に部品の処理をさせると共に部品に対する処理を行って、完成品の生産を繰り返すものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記回転テーブルは間欠的に回転され、その回転送り時間が可変とされているものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記ロボットまたは前記処理装置による処理工程の一部を人手により分担するものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載のフレキシブル生産システムにおいて、隣り合う複数の処理工程を人手により分担するものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載のフレキシブル生産システムにおいて、人手によって処理する部品または処理した部品を仮置きするバッファを備えたものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記回転テーブルに対する前記ロボットの配置位置が可変とされているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、回転テーブルとその上のロボットが搬送装置の役目をするので、搬送機能を簡略化でき、レイアウト変更時の設備の移動が容易で身軽な設備とすることができる。計画生産量の増減に対して、回転テーブルの周辺の処理装置の台数やロボットの台数を増減することにより、容易に、フレキシブルに対応することができる。部品を処理する工程が前記回転テーブルの回転方向に沿って行われるので、システムの構成が簡単であり、また、回転テーブルは、始点と終点が同じになるので、部品の投入、完成品の取り出しを一箇所に集約することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、人手による作業の分担介入をする場合などに、人の作業時間のばらつきによる生産の遅れを極力抑えることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、自動化(機械化)が困難で人手でしか行えない作業も含めた生産への対応が可能となる。人の柔軟性を利用でき、複雑で高コストの設備を導入することなく、シンプルで簡単な安い設備による自動化が可能となり、そのため、設備のフレキシブル性を向上できる。生産量が増加した場合に、ロボットを追加することなく、一時的に人手を追加することにより、迅速かつ安価に生産量増に対応することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、投入する人手の人数を節約でき、かつ生産量の変動に安価に対応できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、人手による作業時間のばらつきを吸収できるので、作業者が代わっても全体の生産サイクルに影響させることなく生産効率を維持することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、例えば、回転テーブルの半径方向におけるロボットの配置位置を変更し、これに対応して回転テーブルの周囲に配置された処理装置の配置位置を変更することにより、システムのレイアウトを拡大したり縮小したりすることができ、生産量が少ない場合に、設備敷地をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図。
【図2】同システムの側面図。
【図3】同システムの変形例を示す平面図。
【図4】第2の実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図。
【図5】同システムの変形例を示す平面図。
【図6】第3の実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図。
【図7】第4の実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図。
【図8】第5の実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図。
【図9】第6の実施形態に係るフレキシブル生産システムの平面図。
【図10】同システムの使用例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るフレキシブル生産システムについて、図面を参照して説明する。図1、図2は第1の実施形態を示す。図1に示すように、本フレキシブル生産システム1(以下、システム1)は、床面に対して回転自在、かつ、任意の回転位置で停止自在とされた回転テーブル2と、回転テーブル2の周囲に配置され、部品に対して処理を行う処理装置31,32,33,34(総称して処理装置3)と、回転テーブル2に配置され、処理装置3に対して部品の投入と受取を行うと共に、部品に対して処理を行うロボット4と、ロボット4に部品を供給する部品供給装置5と、完成品を排出する完成品排出コンベア6と、各部の動作を制御する制御装置7と、を備えている。システム1は、工程順に部品を処理して完成品を次々と生産するシステムであり、部品を処理する工程が回転テーブル2の一定の回転方向に沿って行われ、ロボット4が、部品供給装置5から供給された部品を所持して回転テーブル2と共に回転しつつ処理装置3に部品の処理をさせると共に部品に対する処理を自らも行い、これにより、完成品の生産が繰り返される。
【0021】
回転テーブル2は、制御装置7によって制御されるモータ21によって、例えば、平面視で右回りに間欠的に回転される。右回りに考えて、位置Aにおける部品供給装置5が処理の起点であり、その隣に処理装置31,32が配置され、その隣の位置Bに2台目の部品供給装置5が配置され、その隣にさらに処理装置33,34が配置され、最後に位置Xに完成品排出コンベア6が配置されている。一般に回転テーブルは始点と終点が同じになるので、1台目の部品供給装置5と、最後の完成品排出コンベア6とを隣り合わせに配置して、部品の投入、完成品の取り出しが一箇所でできるようになる。4台の処理装置3は、互いに45度間隔の角度配置とされている。各処理装置3は、ロボット4と部品の授受を行う部品受け口3aが設けられている。また、2台の処理装置31,33には、ロボット4が作業を行うための作業台3bが設けられている。
【0022】
ここで、システム1によって生産される製品(完成品)として、樹脂成形品に電気回路基板を組み込んだ電気製品を想定する。その生産工程は、基板の簡単な加工(仮止め素子のハンダ付け、レーザ印字など)、基板の検査調整(電気特性の測定、トリマ調整など)、成形品への基板配置(はめ込み、折り曲げなど)、成形品と基板との固定(かしめ、折り曲げ、ネジ締めなど)の4工程からなるとする。また、各工程がそれぞれ右回りに順番に、4台の処理装置3によって行われる。これらの処理の前処理や後処理は、ロボット4が行う。なお、以下で述べる他の実施形態や変形例においても、ここで説明した生産工程を同様に想定して参照する。
【0023】
ロボット4が処理作業を行う上で必要な治具は、作業台3bに備える。ロボット4は、図2に示すように、人の立ち姿に対応する高さ位置を作業領域とする2本の腕を備えている。ロボット4は、人の体格と同じようなサイズの、汎用の双腕ロボットで構成される。ロボット4は、部品への処理を処理装置3に行わせるために、その双腕によって、部品供給装置5から部品を受け取り、部品への前処理をし、部品への後処理をし、部品を保持し、部品を処理装置3に投入し、部品を処理装置3から取り出し、完成品を完成品排出コンベア6に投入するなどの作業を行う。そのため、ロボット4は、その停止位置における動作範囲内で処理装置3の部品受け口3aや、部品供給装置5、完成品排出コンベア6などにアクセスできる配置とされている。逆に、部品供給装置5をロボット4の作業エリアに部品供給が可能なように配置するとも言える。また、必要に応じて、ロボット4の組立を補助する組立治具を、ロボット4の動作エリア内の回転テーブル2上に配置する。従って、この組立治具は各ロボット4に付随して回転移動する。
【0024】
次に、システム1の動作を説明する。図1において、回転テーブル2が1周以上回転し、完成品が1個以上生産され、システム1が定常状態にあり、回転テーブル2は停止状態にあるものとする。最初の処理装置31で基板の簡単な加工を行っているロボット4は、この位置に来たときに位置Aにおける部品供給装置5から基板を受け取って、その受け取った部品の処理を行っており、その右隣のロボット4は、処理装置32で基板の検査調整を行っており、その右隣のロボット4は、位置Bにおける部品供給装置5から成形品を受け取った後、処理装置33で成形品への基板配置を行っており、その右隣のロボット4は、処理装置34で成形品と基板との固定を行っている。各ロボット4が各処理装置3における処理作業を終えた時点で、回転テーブル2が45度回転して、各ロボット4が隣の処理装置3の前に到達する。処理装置32で作業していたロボット4は、この回転の開始前に、予め位置Bにおける部品供給装置5から成形品を受け取っている。また、処理装置34で作業していたロボット4は、この回転の開始前に、完成した製品を、予め位置Xにおける完成品排出コンベア6に投入する。ここでは、処理装置3の台数だけロボット4を配置しているので、ロボット4を1ピッチずつ送る毎に1個の完成品が完成品排出コンベア6から出てくる。
【0025】
回転テーブル2の間欠送り時間は、予めロボット4の動作や処理装置3における作業時間から決めておいた一定値とされている。回転送り時間は、処理装置3やロボット4が作業中で、回転テーブル2が停止している停止時間と、各処理工程を次の工程に進めるために回転テーブル2を1角度ピッチ(例えば45度)だけ回転移動させる移動時間とからなる。例えば、移動時間は、危険性や、過度の衝撃がない程度に速やかに回転移動できる時間長とすればよい。停止時間は、各処理装置3における作業時間の中で最も長い作業時間に余裕を加えた時間である。従って、システム1の稼動効率を落とさないために、各処理装置3における作業時問ができるだけ短く、かつ等しくなるように、予め工程設計を行っておく。各ロボット4は、処理中の部品を持ったまま回転テーブル2と共に回転する。従って、システム1は、部品を搬送する装置を備える必要がない。各処理装置3は、一定角度に近い角度ピッチで配置してあり、回転テーブル2が1ピッチ角度だけ回転したとき、各ロボット4が処理装置3で作業を行える範囲内に配置されている。処理装置3や部品供給装置5、作業台3bにおける組立治具などの台数、従って、回転テーブルの回転角度ピッチなどは、生産内容によって異なり、適宜予め検討して配置される。
【0026】
第1の実施形態によれば、回転テーブル2とその上のロボット4が搬送装置の役目をするので、搬送機能を簡略化でき、レイアウト変更時などの場合の設備の移動が容易で身軽な設備とすることができる。すなわち、従来のシステムでは、コンベアなどによって部品を次工程へ送っていく必要があるが、本システム1では、回転テーブル2にロボット4が載っているので、部品を持ったままロボット4が回転して、自ら次工程の前に部品を搬送することができる。また、回転テーブル2の周辺の処理装置3の台数やロボット4の台数を増減することにより、計画生産量の増減に対し、容易かつフレキシブルに対応することができる。部品を処理する工程が前記回転テーブル2の回転方向に沿って行われるので、システムの構成が簡単であり、また、回転テーブル2は、始点と終点が同じになるので、部品の投入、完成品の取り出しを一箇所に集約することができる。これらを一箇所に集約できることにより、システム1に対する部品供給や、システム1からの完成品回収が容易となる。
【0027】
ここで、システム1の利点、および、回転テーブル2に対する処理装置3や、ロボット4などの配置や固定方法について、さらに説明する。システム1は、人の代わりにロボット4に置き換えるものであるが、ロボット4を個別に移動させるのではなく、4台、一般には任意台数のロボットを1つの回転テーブル2に載せることにより、ロボット4の移動機構を簡素化し、各工程間の移動のばらつきを無くすことができる。また、回転テーブル2の上に全てのロボット4が載っているので、ロボット4が不要な場合は、回転テーブル2ごと着脱することができる。従って、例えば、国内生産から海外生産に切り替える際に、簡単にロボット4による生産から人による生産に簡単に切り替えることができる。回転テーブル2を残して、その上に人が乗って回転されながら作業してもよい。また、回転テーブル2に載っているロボット4として汎用ロボットを用いることにより、さらにその汎用ロボットを人の体格と同じようなサイズの双腕ロボットの構成とすることにより、ロボット4が生産する場合と人が生産する場合とを切り替える際に、特別な治具や機械などの切替が必要なく、新規商品などに対して、フレキシブルに生産変更ができる。
【0028】
また、ロボット4に対して、部品供給など補助的な作業を人手により補う機能を追加することにより、生産量が増えた際に、ロボット4の作業の一部を人手に簡単に置き換えることができ、ある程度の生産量増に対しては、ハードウエアへの特別な投資をすることなく対応可能である。また、生産量の増減に対して、ロボット4の台数も簡単に増減でき、人の増減と合わせて、生産量の変動に対する弾力性が高まる。ロボット4は、汎用装置としておくことにより、別の工程への転用が容易となる。また、ロボット4を双腕ロボットとすることにより、2本のアームによって、人と同じように部品の出し入れを左右のアームで交互に行うことができ、処理装置3への部品の出し入れを効率的に行うことができる。双腕のロボット4は、一方の手を治具として、一方の腕をハンドリング用途として使用して治具レスで組立等の作業を行うことができる。ロボット4が複雑で双腕では作業ができない場合に、回転テーブル2に固定した組立治具や、処理装置3に固定した組立治具を備えて、これらを用いて組立等の作業を行うようにしてもよい。
【0029】
上述したように、モータ21で回転される回転テーブル2は、架台によって床面に支持され、架台に対して任意の位置に回転停止・ロック可能な構成とされている。処理装置3は、床面に配置してもよく、また、回転テーブル2を支持している架台の任意の位置に、連結機構を介して位置決め着脱できるように固定して配置してもよい。連結機構は、例えば、回転テーブル2の架台に円周状に加工し溝を設け、その溝に沿って円周上を移動可能、かつ円周上の任意の位置で位置決めロック可能な構造のものとすればよい。溝の代わりにレールとしてもよい。処理装置3は、このような連結機構によって、回転テーブル2に対して、円周上の任意の位置で位置決めロックすることができる。また、回転テーブル2に、ロボット4固定方法として、円周上の一定間角度毎に予め配置した取り付け穴を設けてその穴によって固定したり、処理装置3を固定する場合と同じように回転テーブル上に溝やレールを設けて連結機構を用いて固定したりして、任意の位置に固定できるようにすればよい。部品供給装置5は、床面に配置したり、回転テーブル2の架台に固定したりすることができる。架台に固定する際の連結機構は、処理装置3を固定する連結機構と同じものを使用することができる。従って、部品供給装置5は、円周上の任意の位置に固定することができる。また、必要に応じて、部品供給装置5に加えて、パレタイザを配置し、パレタイザによって完成品をトレイに格納するようにしてもよい。
【0030】
(第1の実施形態の変形例)
図3は第1の実施形態の変形例を示し、生産量が半減した場合のシステム構成を示す。生産量の半減に対応して、ロボット4の台数を2分の1の2台に減らしている。こうすることによりロボット1台につき、2台の処理装置3の作業をする(全4工程の作業を2台のロボットでする)ことになる。従って、サイクルタイムは、図1に示した構成の場合のサイクルタイムの2倍となり、ロボット4の台数のみを減らすことにより容易に生産量を調整することができる。ロボット4は汎用機であり、ここで余ったロボット4は他の工程や生産システムに流用することができ、設備投資を少なくして生産量の変動に対する弾力性を高めることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態を示す。本実施形態は、第1の実施形態におけるロボット4による処理工程の一部を人手により分担するものであり、第1の実施形態における位置Aの部品供給装置5に代えて、構造の簡単な、例えばコンベア機能のみを有する部品供給装置51を備えており、人10が部品供給装置51に対して部品を投入する。また、ロボット4は、部品供給装置51上の部品の姿勢や位置を2次元的に認識するための画像処理装置41を備えている。人手により分担する処理工程は、自動化が困難で人手でしか行えない工程や、自動化すると複雑、高コスト、大型化などとなってしまう工程などであり、例えば、部品の外観検査工程があげられる。人10は、部品のキズの有無、色むら、風合いなどを検査して、検査に合格した部品を部品供給装置51に投入する。外観検査は、特に人の感性にかかわる場合に、自動化するにはコストがかさむ反面、信頼性にかける面もあるので、人手で対応することにより、安価かつフレキシブルに生産量の増減や品種切り替えに対応することができる。人10は、部品の裏表などを統一した上で、部品を置く位置や部品の姿勢を厳格に設定することなく、部品供給装置51のコンベア上に部品を投入する。ロボット4は、画像処理装置41によってコンベア上の部品の位置姿勢を認識して部品をピッキングする。
【0032】
第2の実施形態によれば、自動化(機械化)が困難で人手でしか行えない作業も含めて生産対応が可能となる。人の柔軟性を利用でき、複雑で高コストの設備を導入することなく、シンプルで簡単な安い設備による自動化が可能となり、そのため、設備のフレキシブル性を向上できる。
【0033】
(第2の実施形態の変形例)
図5は第2の実施形態の変形例を示し、処理装置3による作業を人手によって分担するように、人手による分担をさらに増やした例である。この変形例では、位置Bの部品供給装置5に代えて、位置Bに部品取り出し装置52を配置し、位置Cに部品供給装置53を配置して備えており、人10が位置B,C,Xに増員され、位置B,Cの間に人10が使用する作業台11が配置されている。位置B,Cにおける2人の人10は、処理装置32,33で行われる作業を分担する。例えば、位置Bの人10は、部品取り出し装置52を介して工程中の部品を受け取り、処理装置32で行う基板の検査調整のうち、調整作業を行う。また、位置Cの人10は、前記によって調整された基板(部品)を受け取り、作業台11上で成形品に基板を収めて、それらの部品(成形品と基板)を部品供給装置53に投入する。これにより、処理装置33で行う処理工程の一部が、位置Cの人10によって分担される。また、位置Xの人10は、処理装置34で行う処理工程の一部を後処理として分担する。このように、各処理装置3の作業の一部を人手によって分担することにより、ロボット4と人10とが並行して作業を行える。これにより、各処理工程の作業時間を短縮でき、人10を投入することにより生産量を上げることができる。つまり、生産量が増加した場合にロボット4を追加することなく、一時的に人10を追加することにより安価に生産量増に対応することができる。人手による作業工程の分担によって処理工程の作業時間が短縮される場合は、回転テーブル2の間欠回転送り時間を短縮することができる。
【0034】
(第3の実施形態)
図6は第3の実施形態を示す。本実施形態は、間欠的に回転される回転テーブル2の、回転送り時間が可変とされているものであり、回転送り時間は、生産量やロボット4の台数などのシステム構成に依存して変更され設定される他に、各作業工程毎の処理時間に応じて動的に変更することができる。本実施形態のシステム1は、制御装置7に工程終了確認部71を備えている。各処理装置3は、部品ごとの処理が終了した旨の信号を出力する。工程終了確認部71は、各処理装置3から処理が終了した旨の信号を受け取って、すべての信号が受信されたときに回転テーブル2を回転させる信号を出力する。制御装置7は、工程終了確認部71からの出力信号に基づいて回転テーブル2を回転させる。
【0035】
ところで、システム1において、人手によってロボット4や処理装置3の処理工程を分担する場合に、各人における作業時間の変動や、複数の人が分担する場合の各人間での作業時間の変動が発生する。その人手による変動する作業時間によって停止時間の短縮が制限されている場合に、生産効率の面から、その変動に応じて動的に回転テーブル2を回転させることが望ましい。そこで、人10による所定の処理が終了するごとに、自動で、または人10の操作によって、処理が終了した旨の信号を工程終了確認部71に対して出力する。これにより、制御装置7は、人が処理工程を分担している場合も含めて、工程終了確認部71からの出力信号に基づいて回転テーブル2を動的に判断して回転させることができる。
【0036】
第3の実施形態によれば、人手による作業の分担介入をする場合などに、人の作業時間のばらつきによる生産の遅れを極力抑えるようにすることができる。例えば、人手作業が入ってしまうとどうしても作業時間のばらつきが大きくなるので、回転テーブル2を一定時間間隔で間欠送りすると人作業が間に合わなくなる場合を見越して、これを回避するために余裕時間を加えた回転送り時間とされ、人作業時間が早くできた場合も間欠送りの時間が一定のため、人に待ち時間が生じたりして効率が悪くなる。そこで、処理装置3の全ての作業と人作業の全ての作業が終わり次第、上述の工程終了確認部71によって回転テーブル2を間欠送りするように制御する。そうすることにより、人の待ち時間や人の遅れを見越した余裕時間を省くことができ生産性を高めることができる。
【0037】
(第4の実施形態)
図7は第4の実施形態を示す。本実施形態は、隣り合う複数の処理工程を人手により分担するものである。図7に示した状態は、例えば、図5に示したシステム1において、位置A,Xにおける作業を1人で行い、位置B,Cにおける作業を1人で行う場合に相当する。つまり、隣り合う処理装置3の作業者を2人投入しているところを1人にすることにより、2人のときよりはサイクルタイムが長くなるが、作業者の数を節約でき、かつ人の融通性が利用できる形態となる。これにより各処理装置3毎に人を割り付ける必要がなくなり、投入する人の数を節約でき、かつ生産量の変動に安価に対応できる。
【0038】
(第5の実施形態)
図8は第5の実施形態を示す。本実施形態は、人手によって処理する部品または処理した部品を仮置きするバッファを備えたものであり、位置Aにおける部品供給装置54、および位置Xにおける完成品排出コンベア61は、それぞれ部品および完成品を仮り置きした状態で滞留させることができるバッファの機能を有している。そこで、位置A,Xにおいて部品を投入する作業と完成品を引き取る作業とを分担している人10による作業時間にばらつきが生じても、バッファの機能がそのバラつきを吸収できるので、全体の生産サイクルに影響させることがなく、生産効率を維持することができる。すなわち、例えば、部品供給装置54のコンベア上に複数の部品をストック可能とすることにより、作業者の作業時間が規定時間より遅れた場合には、バッファされた個数分が消費されるまではバッファが作業時間の遅れを吸収し、また、作業時間が規定時間より早まった場合には、作業を完了した部品をバッファが早めに受け取ることができる。このようにバッファを設けることにより、予め決めた一定時間で回転テーブルを間欠送りしたとしても、人による作業時間のばらつきをある程度吸収でき、安定した生産が可能になる。
【0039】
(第6の実施形態)
図9、図10は第6の実施形態を示す。本実施形態は、回転テーブル2に対するロボット4の配置位置、特に半径方向の配置位置が可変とされているものである。すなわち、回転テーブル2は、ロボット4の配置を、回転テーブル2の中心側に近づけたり、逆に遠ざけたりできる構成とされている。例えば、直径方向の2本の直行するレール8を備え、ロボット4を、そのレール8上で移動させて任意の位置で固定できるようにする。生産量が少ない製品、納期が長い製品、工程数が少ない製品などの場合には、例えば、図9に示すように、2台の処理装置3と、2台のロボット4によってシステム1を構成して製品を生産する。2台のロボット4は、略背中合わせの状態まで、接近して配置されている。また、生産量が多い製品、納期が短い製品、工程数が多い製品などの場合には、例えば、図10に示すように、4台の処理装置3と、4台のロボット4によってシステム1を構成して製品を生産する。このようにロボット4の台数が増えた場合には、各ロボット4をレール8上における外周側に固定すればよい。この場合に、各処理装置3も、ロボット4の回転半径に合わせて、図9の場合よりも、より外周側に配置される。
【0040】
第6の実施形態によれば、例えば、回転テーブル2の半径方向におけるロボット4の配置位置を変更し、これに対応して回転テーブル2の周囲に配置された処理装置3の配置位置を変更することにより、システム1のレイアウトを拡大したり縮小したりすることができ、生産量が少ない場合に、設備敷地をコンパクトにすることができる。また、上述のレール8を伸ばしたり、レール8の本数を増やしたりして、ロボット4の台数や処理装置3の台数を増やして、システム1の規模を任意に拡大することができる。また、レール8を用いるのではなく、回転テーブル2を構成する床板に半径方向に位置の変わる取り付け穴を設けて、その穴によってロボット4の位置を変えて固定するようにしてもよい。この場合、床板を分割して回転テーブル2の外周部分を着脱可能にしておくことにより、処理装置3との干渉を避けて、システム1の規模を変更することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、ロボット4の台数や処理装置3の台数として、2台または4台で説明したが、これらは、1台、3台、5台以上などとすることができる。また、回転テーブル2が1回転することにより完成品ができる例で説明したが、これに限らず、例えば、半回転や3分の1回転で完成品ができるものとすることもできる。このような場合、1台のシステム1によって、同時に複数種類の製品を生産することもできる。また、回転テーブル2に対するロボット4の固定位置は、システムの稼働中に固定されている必要はなく、各ロボット4の固定位置に、回転方向の位置、または、回転開始の時間に対するバッファ機能を備える構成としてもよい。例えば、処理時間の長い工程を行う処理装置3によって処理を行っているロボット4は、このバッファ機能によって、回転テーブル2の回転開始より遅れて回転テーブル2の所定位置に移動することができ、これにより、全体のサイクルタイムを短縮できる。また、回転停止状態のとき、ロボット4が常に処理装置3に対面している必要はない。つまり、ロボット4の台数よりも処理装置3の台数を少なくすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 フレキシブル生産システム
2 回転テーブル
3,31〜34 処理装置
4 ロボット
5,51,53 部品供給装置
54 バッファ付き部品供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程順に部品を処理して完成品を次々と生産するフレキシブル生産システムにおいて、
床面に対して回転自在、かつ、任意の回転位置で停止自在とされた回転テーブルと、
前記回転テーブルの周囲に配置され、部品に対して処理を行う処理装置と、
前記回転テーブルに配置され、前記処理装置に対して部品の投入と受取を行うと共に、部品に対して処理を行うロボットと、
前記ロボットに部品を供給する部品供給装置と、を備え、
部品を処理する工程が前記回転テーブルの回転方向に沿って行われ、
前記ロボットが、前記部品供給装置から供給された部品を所持して前記回転テーブルと共に回転しつつ前記処理装置に部品の処理をさせると共に部品に対する処理を行って、完成品の生産を繰り返すことを特徴とするフレキシブル生産システム。
【請求項2】
前記回転テーブルは間欠的に回転され、その回転送り時間が可変とされていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項3】
前記ロボットまたは前記処理装置による処理工程の一部を人手により分担することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項4】
隣り合う複数の処理工程を人手により分担することを特徴とする請求項3に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項5】
人手によって処理する部品または処理した部品を仮置きするバッファを備えたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項6】
前記回転テーブルに対する前記ロボットの配置位置が可変とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−131296(P2011−131296A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291111(P2009−291111)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】