説明

フロントグリル

【課題】部品点数の削減、取付作業の簡易化、製造コストの低下のうち、少なくとも一つを達成する、ランプを備えるフロントグリルを提供すること。
【解決手段】車両用のフロントグリルであって、グリル本体とランプ収納部とが一体的に形成され、グリル本体の表面とランプ収納部の表面が同一メッキ膜で被覆され、前記ランプ収納部に収納されるランプからの光が前記ランプ収納部の前記メッキ膜で反射されることを特徴とする、フロントグリルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロントグリルの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ラジエーターや室内エアコン用に外気を取り入れるためのフロントグリルを備える。フロントグリルはこのような実用的な面のみならず、メーカーロゴを設けたり、車種毎に特徴的な形状としたりすることで意匠的な面においても重要な部材である。一方、フロントグリルの近傍には、DRL(aytime unning ights、昼間点灯照明装置)、ヘッドランプ、ターンランプ、車幅灯などの照明装置が設けられる。これらのような照明装置を車両のフロントグリルに配置する場合、別体のランプ収納部をフロントグリルに設けている。特許文献1には、フロントグリルにランプ配置用の開口部を設け、当該開口部に別体のランプを嵌設する構成が開示されている。特許文献2には、フロントグリルの端部にランプ取付座を設けて、ねじやクリップにより別体のランプを当該ランプ取付座に固定する構成が開示されている。特許文献3には、左右の前照灯を一体のレンズで構成したものが開示されている。特許文献4には、フロントグリルに関連するものではないがリアフィニッシャーの左右に隣接した照明装置を備える構造が開示されている。特許文献5には、フロントグリルに発光装置を設けて間接照明により文字・図形等を表示する構成が開示されている。また、DRLの例として、特許文献6には、車両用の照明装置として、ヘッドランプにDRLを組み込んだ構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3019738号公報
【特許文献2】特開2001−213252号公報
【特許文献3】特開2003−7106号公報
【特許文献4】特開平9−45111号公報
【特許文献5】特開2008−105556号公報
【特許文献6】特開2005−88856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成ではランプ用の開口部を形成し、そこに別体のランプを設けているため、部品点数が多く、取付作業が煩雑になる。またコスト面でも不利である。同様に特許文献2の構成でもランプが別体となるので好ましくない。特許文献3の構成でも、フロントグリルの左右にランプを別体で設ける構成であるため好ましくない。特許文献4の構成リアフィニッシャーの左右に隣接して車両用灯具を設ける構造が開示されているが、このランプもリアフィニッシャーとは別体で設けるため、好ましくない。特許文献5の構成は透明なフロントパネルからなるフロントグリルとその背面側にランプユニットを備え、当該ランプユニットは、フロントパネルの背面に接着される表示シートと反射面を備える外容器と、表示シートを間接的に照明する光源とからなる。この構成においても、ランプユニットはフロントパネルと別体で構成されるため、部品点数の増加、取付作業の煩雑化、製造コストの増加という問題を有する。
そこで、本発明は、部品点数の削減、取付作業の簡易化、製造コストの低下のうち、少なくとも一つを達成する、ランプを備えるフロントグリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するため、本発明は次の構成からなる。即ち、
車両用のフロントグリルであって、
グリル本体とランプ収納部とが一体的に形成され、
グリル本体の表面とランプ収納部の表面が同一メッキ膜で被覆され、
前記ランプ収納部に収納されるランプからの光が前記ランプ収納部の前記メッキ膜で反射されることを特徴とする、フロントグリルである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフロントグリルによれば、グリル本体とランプ収納部が一体的に形成されているため、ランプ収納部を別体で設ける場合に比べて部品点数が削減される。また、グリル本体とランプ収納部の間に隙間が発生しないので空力的に有利となり、車両走行時における風切り音の発生が防止される。また、グリル本体の表面とランプ収納部の表面は同一メッキ膜で被膜されているため、グリル本体の表面とランプ収納部の表面に同時にメッキ処理を施すことができ、製造工程を簡略化できる。さらに当該同一メッキ膜によりランプ収納部からグリル本体への熱伝導性が向上して、ランプ収納部に収納されるランプユニットの放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】フロントグリル1を備える車両10の正面側斜視図である。
【図2】フロントグリル1のDRL3近傍領域の正面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のフロントグリルはグリル本体とランプ収納部とを一体的に備える。グリル本体及びランプ収納部の材質は、耐久性、耐候性、成形性などを考慮して決定でき、例えばABS樹脂、ポリカーボネート樹脂等を採用することができる。グリル本体の成形は射出成形など、公知の方法で行うことができる。二色成形等により異なる材質を組み合わせて成形しても良い。ランプ収納部はグリル本体部の成形と同時に形成できる。ランプ収納部は視認性や法規等を考慮してグリル本体の任意の位置に設けることができる。グリル本体の表面とランプ収納部の表面には同一メッキ膜で被覆される。メッキ膜はグリル本体の表面とランプ収納部の表面の略全域に設けることが好ましい。ランプ収納部からグリル本体への熱伝導性が向上してランプユニットの放熱性が一層向上するからである。メッキ膜を被覆する方法は特に限定されないが、作業性を考慮して湿式メッキ処理を採用することが好ましい。メッキ膜の材質は、後述のランプユニットの光を反射可能であれば特に限定されないが、クロムメッキなどの反射率が高いものが好ましい。ランプユニットの光の利用率が高まるからである。グリル本体は車両前方に開口し、ランプ収納部に隣接する開口部を備えることが好ましい。車両走行時に当該開口部から取り込まれた大量の外気を介してランプユニットの熱を放射して、放熱性を高めることができるからである。
【0009】
ランプ収納部にはランプが収納される。ランプの種類は、所定の輝度が得られれば特に限定されず、LEDランプ、バルブランプ、冷陰極管など公知のランプを使用できる。中でもランプユニットとして、LEDランプを採用することが好ましい。LEDランプは、小型、長寿命、省電力という利点を有するからである。本発明において、ランプはフロントグリルという限られた領域内に設置されるため、小型であるLEDランプを使用することが好ましい。また、当該ランプを後述のDRLとして使用する場合には、照明時間が比較的長いため、長寿命、省電力であるLEDランプを使用することが一層好ましい。
【0010】
ランプ収納部の形状は、ランプ収納部に収納されるランプからの光がランプ収納部のメッキ膜で所定方向に反射される形状である。即ち、ランプ収納部はリフレクタとしても機能する。本発明のフロントグリルに設けられるランプの光はDRL、ヘッドランプ、フォグランプ、ターンランプなどに利用することができる。ここでいう「DRL」とは、昼間点灯照明装置を指す。DRLによれば、昼間という通常は点灯を必要としない時間帯に点灯することにより、車両を目立たせることで早期に対向車や歩行者などの周囲環境に当該車両の存在を積極的に示すことにより、事故の発生を防止できる。
【0011】
ランプ収納部の車両前方にレンズを設けてシーリングを施すことにより、ランプ収納部の内部の防水を保つことができる。また、これに限らず、ランプユニットの光放出部のみがランプ収納部から車両前方側に露出するようにランプ収納部を形成し、当該ランプ収納部とランプユニットとの間隙をシーリングして、ランプユニットの電極部を防水しても良い。
以下、この発明の実施の形態について、図を参照しながら説明をする。
【実施例1】
【0012】
図1に本発明のフロントグリル1を備える車両10の正面側斜視図を示す。フロントグリル1は車両10の車体前部において左右ヘッドライト11の間に取り付けられている。フロントグリル1はグリル本体2とDRL3を備える。図2にフロントグリル1のDRL3近傍領域の正面図を示し、図2におけるA−A線断面図を図3に示す。図2に示すように、グリル本体2は格子状の開口部が形成された網目部21を有する。網目部21はグリル本体2の長手方向に沿って設けられる。DRL3はグリル本体2の左右端部に設けられる。DRL3はレンズ30と、その内側にLEDランプ31と、LEDランプ31を収納するランプ収納部32を備える。図3に示すようにランプ収納部32はグリル本体2と一体的に形成されている。グリル本体2及びランプ収納部32の表面の略全域にクロム製のメッキ膜が形成されている。メッキ膜は湿式メッキ法で形成される。ランプ収納部32はLEDランプ31を収納するとともに、車両前方側の面がLEDランプ31の光を受光して車両前方側へ反射する反射面となっている。LEDランプ31の背面にはヒートシンク33が取り付けられている。レンズ30はランプ収納部32を覆うようにグリル本体2に嵌め込まれている。レンズ30の外縁とグリル本体2との間隙にはシール材34が設けられており、レンズ30の内側(ランプ収納部32内部)の防水が保たれている。
【0013】
本発明のフロントグリル1によれば、グリル本体2とDRL3のランプ収納部32とが一体的に形成されているため、部品点数が削減され、製造コストを低減できる。また、組み付け作業性が高まる。さらに、グリル本体2とランプ収納部32の間に隙間が発生しないので空力的に有利となり、車両走行時における風切り音の発生が防止される。
また、グリル本体2の表面とランプ収納部32の表面には同一メッキ膜が被膜されているため、これらのメッキ処理を同時に施すことができ、個別にメッキ処理する場合に比べて製造工程を簡略化できる。さらに当該同一メッキ膜はランプ収納部32からグリル本体2に連続しているため、ランプ収納部32からグリル本体2への熱伝導性が向上して、LEDランプ31の放熱性が向上する。当該メッキ膜は湿式メッキ法で形成されるものであって、グリル本体2及びランプ収納部32のそれぞれの裏面にも形成される。これにより、LEDランプ31の熱はグリル本体2及びランプ収納部32のそれぞれの裏面を介して外部に放出することができ、放熱性がさらに向上する。また、グリル本体部2には、DRL3に隣接して網目部21が設けられている。網目部21はラジエータ等へ供給される外気の入り口であって、車両走行時には、網目部21を外気が大量に通ることとなる。当該外気により、LEDランプ31の熱はグリル本体2へ伝播して網目部21で効率的に放射されて、高い放熱効果を奏する。このように、グリル本体2及びランプ収納部32の表面に施されたメッキ膜を積極的に放熱に利用することにより、LEDランプ31の放熱性が向上する。
【0014】
本発明のフロントグリル1はDRL3を備える。そのため、車両本体にDRLを設置するスペースを確保する必要がない。従って、フロントグリルを付け替えるだけでDRLの要否に対応することができるため、フロントグリル以外の部材はDRLの要否にかかわらず共通化でき、コスト面で有利となる。また、既存車両の構成にDRLを設けるには、既存のフロントグリルを本発明のフロントグリル3に付け替えればよいため、DRLを設けることが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のフロントグリルは、様々な車両のフロントグリルとして利用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 フロントグリル
2 グリル本体
3 DRL
30 レンズ
31 LEDランプ
32 ランプ収納部
33 ヒートシンク
34 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のフロントグリルであって、
グリル本体とランプ収納部とが一体的に形成され、
グリル本体の表面とランプ収納部の表面が同一メッキ膜で被覆され、
前記ランプ収納部に収納されるランプからの光が前記ランプ収納部の前記メッキ膜で反射されることを特徴とする、フロントグリル。
【請求項2】
前記グリル本体の表面と前記ランプの表面の全域が、前記メッキ膜で被覆されている、ことを特徴とする請求項1に記載のフロントグリル。
【請求項3】
前記グリル本体は車両前方に開口し、前記ランプ収納部に隣接する開口部を備え、
前記開口部から取り込まれた外気を介して、前記ランプの熱を外部へ放射する、請求項1又は2に記載のフロントグリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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