説明

フローサイトメトリー免疫表現型検査のための方法、試薬およびキット

本発明は、フローサイトメトリーの分野、より具体的には、蛍光化合物にコンジュゲートさせた抗体試薬のパネルに関する。目的の白血球集団を同定するための少なくとも3つの同定用抗体と、前記白血球集団をさらに特徴付けおよび/または分類するための少なくとも4つの特徴付け用抗体とのセットを含む、少なくとも8つの明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む試薬組成物を提供する。また、試薬組成物に関連があるキットおよび方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメトリーの分野、より具体的には、蛍光化合物にコンジュゲートさせた抗体試薬のパネルに関する。そうした抗体試薬は、抹消血(PB)、骨髄(BM)、胸水、腹水、脳脊髄液(CSF)、硝子体液、滑液、気管支肺胞の洗浄液、尿、脾臓、肝臓、リンパ節およびその他の組織試料中の正常細胞、反応性細胞、再生細胞および新生物性細胞の免疫表現型の特徴付けにおいて有用である。現時点では、(特に、白血球中の)正常細胞、反応性細胞、再生細胞および悪性細胞のフローサイトメトリー免疫表現型検査が、免疫学、血液学および腫瘍学を含めた、医学における多くの適用例に使用されている。とりわけ、前記適用例として、免疫系のモニタリング;原発性免疫不全症の診断および分類;白血病、リンパ腫および形質細胞異常増殖症の免疫表現型検査;低頻度の悪性白血球の、治療の有効性についての尺度としてのモニタリング;クローン性障害、例として、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および肥満細胞症の診断およびモニタリング;(造血前駆細胞を標的として使用した)幹細胞移植または遺伝子療法の後の異なる臨床状態、例えば、健常個体における血球新生またはリンパ球新生の評価;ならびに治療目的で使用しようとする細胞産物の組成物および質の評価が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
フローサイトメトリー免疫表現型検査における従来の診断プロセスは典型的には、抗体のパネルの使用に基づく。現在のところ、抗体の異なる、重複するパネルが、特定の適用例について推奨されている。そのようなパネルは、医学的指標(例えば、血球減少についてのスクリーニング、リンパ球増加の特徴付け)、疾患(例えば、急性白血病の診断、リンパ腫の診断)、または疾患状態(例えば、ALLの診断分類対ALLの、治療の有効性の評価についてのモニタリング)のいずれかのために使われる。推奨されている抗体パネルの例が、European Leukemia Net(ELN)(1)、血液悪性腫瘍の異なるサブタイプのための2006 Bethesda International Consensusパネル(2)、急性白血病の系列の帰属および細分類ためのEGILパネル(3)、形質細胞異常増殖症の診断、分類およびモニタリングのためのEuropean Myeloma Network(EMN)パネル(4)、ERIC(5)、ならびに慢性リンパ球性白血病および有毛細胞白血病対その他の慢性リンパ球増殖性障害の免疫表現型の細分類のためのMatutesのスコアパネル(6)である。
【0003】
これらの推奨されている抗体パネルの大部分は、異なる国の間および研究グループの間で類似しているが、完全に同一であることはない。重要なことには、好ましくはどのように、これらの抗体を組み合わせて、特定の蛍光化合物とコンジュゲートさせた抗体試薬のパネルとなすべきかに関して、種々のネットワークおよび研究グループにより提供されている情報が全くないかまたはわずかしかない。診断試験室が、別個に測定することができる蛍光を放射する異なる蛍光色素とコンジュゲートさせた、2、3、4、5、6、7または8つ以上の抗体を用いて、試料の一定分量を同時に染色することができる時代になっても、抗体の単純なリストが提案されているに過ぎない。世界各国のセンター間の変動は、
- 抗体および抗体クローンの類似しているが同一ではないリスト、
- 異なる感度を示す異なる蛍光色素とコンジュゲートさせた同じ抗体(例えば、抗体を、低い感受性の蛍光色素と組み合わせた場合には、抗体試薬が陰性の結果をもたらす恐れがあり、一方、異なる、より感度の高い蛍光色素と組み合わせた同じ抗体からなる抗体試薬を使用して、同じ細胞を染色した場合には、陽性の結果を得ることができるであろう)、
- 抗体試薬の異なる組合せの同時評価、
- 目的の細胞集団の同定のための、変動し、頻繁に最適以下のまたは不適切な戦略、例として、急性骨髄芽球性白血病におけるCD45ゲーティング
の使用に起因する。
【0004】
結果として、一見したところは類似した抗体パネルから、臨床試料についての類似した診断が得られない。実際に、診断試験室間の再現性は、70%以下である。残念なことに、正常細胞と悪性細胞との不適切な識別のために、診断の機会が失われ、または骨髄の再生が誤って急性白血病の再発と診断される。
【0005】
米国特許第5,047,321号において、LokenおよびTerstappenが、PBおよびBM中の細胞構成成分の多重パラメータ解析のための手順を開示した。これらの発明者らは、記載されている手順を用いて、LDS-751(Exciton)DNA色素、チアゾールオレンジ(TO、Molecular Probes,Inc)RNA色素、蛍光標識化抗CD45モノクローナル抗体、前方光散乱(FSC)および側方光散乱(SSC)を組み合わせた使用に基づいて、PBおよびBMのいくつかの細胞構成成分を区別し、各構成成分に属する細胞数を数え、構成成分のそれぞれの示差解析を行うことができた。このアプローチは、有核赤血球、赤血球、網状赤血球、血小板、リンパ球、単核球、好中顆粒球、好塩基顆粒球、好酸顆粒球、および全ての有核造血細胞の前駆体の特異的な同定を可能にした。しかし、記載されている多重パラメータ解析は、同じ試料中に共存する正常細胞、反応性細胞、再生細胞および新生物性細胞を特異的に差別化することもできず、この手順は、これらのグループの細胞をさらに特徴付けることもできなかった。その後、この特許のさらなる精緻化が、米国特許第6,287,791号においてTerstappenおよびChenにより記載されたが、著者らは、白血球の異なる集団の特徴付けにおいては、いずれの改善も示さなかった。
【0006】
より最近になって、Orfaoらが、米国特許第7,332,295号に、PB、BMおよびその他の体液の多次元の白血球の示差解析のための手順を記載し、この特許は、有核赤血球、リンパ球、単核球、好中顆粒球、好塩基顆粒球、好酸顆粒球、および全ての有核細胞の造血前駆体に加えて、樹状細胞および樹状細胞のサブセットの同定も特異的に可能にした。さらに、米国特許第5,538,855号においては、Orfaoらは、PB試料、BM試料およびリンパ節試料中のT細胞、B細胞およびNK細胞の最大12個の異なるサブセットを同時に同定することを通して、リンパ系コンパートメントのより詳細な解析を可能にする手順も記載した。この特許では、Orfaoらは、同じ蛍光色素とコンジュゲートさせたモノクローナル抗体の対を使用する、3色による単回染色において、CD3抗原、CD19抗原、CD56抗原(および/またはCD16抗原)、CD4抗原ならびにCD8抗原について組み合わせた染色を使用した。にもかかわらず、このアプローチを通しては、著者らは、同定した細胞のサブセットをさらに特徴付けることも、正常細胞と新生物性細胞とを識別することもできず、さらに、正常なPB、BMまたはその他の組織および体液中に存在するリンパ球細胞および非リンパ球細胞のいくつかの関連のサブセット(例えば、TCRγδ+T細胞)を特異的に検出することもできなかった。
【0007】
参照した手順のうち、正常細胞集団、反応性細胞集団、再生細胞集団および新生物性/クローン性の細胞集団の識別を含めた、同定した細胞のより詳細な特徴付けを直接可能にするものはなかった。そのような特徴付けおよび識別は、区別可能な蛍光放射を伴う、より多数の染色の使用、およびより多数の異なる蛍光放射を測定することができるフローサイトメーター計測器の使用を必要とする。
【0008】
多くのその他の刊行物が、特定の免疫表現型プロファイルに基づいて、正常細胞とそれらの新生物性の対応物とを識別することができること、および識別能力(正常細胞とクローン性/悪性の細胞との識別についての感受性)が、同じ試料を染色するために使用する蛍光色素コンジュゲート化抗体試薬の数と共に増加することを示している。また、いくつかの報告は、正常細胞および反応性細胞、ならびにBMの再生の間に成熟する細胞は、明確に異なる免疫表現型プロファイルを示し得るが、これらの細胞と悪性細胞とを明らかには識別し得なかったことも示している。重要なことには、これまでに提案されている抗体を組み合わせたパネルは、正常細胞集団、反応性細胞集団、再生細胞集団と、それらの新生物性の対応物とを系統的な方法で効率的に識別し、同時に、悪性細胞の広範な免疫表現型の特徴付けを通して、異なる疾患の診断カテゴリー間における疑いの余地のない識別を可能にすることができない。
【0009】
新しい世代の多レーザフローサイトメーターの診断試験室への導入に伴って、単一細胞において、より多数の異なる蛍光化合物を使用し、より多数の蛍光放射を同時に測定することが可能であることに起因して、同じリストの抗体を用いる場合であっても、異なるパネルを構築するための潜在的な空間が指数関数的に増加している。米国特許第7,321,843号において、Orfao、PedreiraおよびSobral da Costaは、数学的計算手順(例えば、最近傍決定則)に基づく新しいアプローチを提案しており、モノクローナル抗体の異なる、部分的に重複する組合せを用いて染色した試料のいくつかの一定分量をフローサイトメーター中で測定して、測定した各単一細胞のための無限の数のパラメータについての情報を含有するフローサイトメトリーリストモードデータファイルを生成することができた。この手順の有用性は、最も最近のフローサイトメーターの多色機能の向上に伴って初めて最大化され得た。これは、これらの手順には、モノクローナル抗体試薬を組み合わせた効率的なパネルの設計が必要となるからである。この場合、共通の骨格マーカーを、パネル中のモノクローナル抗体のそれぞれの組合せについて変化する、その他の追加のマーカーと組み合わせる。並行してまた、同じ著者らが、症例から得られたフローサイトメトリーのデータを参照データファイルと比較するための手順も記載し(米国特許第7,507,548号)、この手順により、例えば、正常細胞と新生物性細胞との直接的な比較も可能となった。しかし、両方の特許では、著者らは、白血病、リンパ腫および形質細胞異常増殖症の診断、分類、段階分けおよび/またはモニタリングに全面的かつ系統的に適用することができる包括的な抗体のパネルを提案することができなかった。
【0010】
したがって、現存するプロトコールは、どのように広く推奨されているモノクローナル抗体をパネル中に特異的に組み合わせるかについては教示していない。現存するプロトコールは、微小病変の診断のための分類およびモニタリングのために、異なるパネルを提案し;焦点を単一の、一様な疾患群に合わせ;広く試験すると、限定的な効率しか示さず;単一試料から得られたいくつかの一定分量について測定した情報を直接組み合わせるための方法を提供せず;かつ/または特定の疾患、例として、慢性のTリンパ球およびNKリンパ球の増殖性障害において(例えば、大顆粒リンパ球性白血病の示差的診断において)、正常な/反応性の細胞とクローン性/新生物性の細胞とを、それらの免疫表現型特性に基づいて、系統的に区別することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,047,321号
【特許文献2】米国特許第6,287,791号
【特許文献3】米国特許第7,332,295号
【特許文献4】米国特許第5,538,855号
【特許文献5】米国特許第7,321,843号
【特許文献6】米国特許第7,507,548号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、これらの困難を認識し、結果の誤った解釈および過大な解釈を回避する、改善され、明確に定義された抗体パネルの設計に着手した。関連のマーカーを注意深く選択し、抗体の適切な組合せを多色チューブ中に設計し、(明るさ、補償、安定性等についての必要性に基づいて)適した蛍光色素を選択して、抗体試薬のセットを開発した。作り変え、最適効率を達成するために、コンセンサスパネルを多センターにおいて広範に評価して、研究を補足した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、一実施形態では、白血球のフローサイトメトリー免疫表現型検査のための試薬組成物を提供し、この試薬組成物は、目的の白血球集団を同定するための少なくとも3つの同定用抗体と、前記白血球集団をさらに特徴付けおよび/または分類するための少なくとも4つの特徴付け用抗体とのセットを含む、少なくとも8つの明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む。本明細書に提供する試薬組成物は、以下のマーカーの組合せのうちの1つに対して作られた抗体のパネルを含む:(a)CD20、CD4、CD45、CD19、Igλ、CD8、Igκ、CD56、TCRγδ、CD3およびCD38、ただし、対CD20/CD4、Igλ/CD8およびCD19/TCRγδに属する抗体がいずれも、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている(LST試薬組成物);(b)CD20、CD45、CD8、Igλ、CD56、Igκ、CD4、CD3、CD14およびCD38、ただし、対CD8/Igλ、CD56/IgκおよびCD3/CD14に属する抗体がいずれも、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている(SST試薬組成物);(c)CD45、CD138、CD38、CD56、β2マイクロ、CD19、cyIgκおよびcyIgλ(PCST試薬組成物)、または(d)cyCD3、CD45、cyMPO、cyCD79a、CD34、CD19、CD7およびCD3(ALOT試薬組成物)。
【0014】
好ましい実施形態では、組成物は、モノクローナル抗体を含む。CDは、分化抗原群(cluster designation)を表し、モノクローナル抗体により定義された特異的な細胞表面抗原の同定のための命名法である。使用する略語を、以下に示す:cyIgκ=細胞質IgGカッパ鎖;cyIgλ=細胞質IgGラムダ鎖;β2マイクロ=β2ミクログロブリン;cyMPO=細胞質ミエロペルオキシダーゼ。表示するマーカーに対する(モノクローナル)抗体は、Becton/Dickinson(BD)Biosciences、Dako、Beckman Coulter、CYTOGNOS、Caltag、Pharmingen、Exbio、Sanquin、Invitrogen等を含めた、種々の会社から商業的に得ることができる。
【0015】
抗体をコンジュゲートするための適切な蛍光色素が、当技術分野では公知である。試薬組成物内で使用する蛍光色素はフローサイトメトリーにより区別可能でなければならないことが理解されるであろう。蛍光色素は、好ましくは、明るさ、限定的なスペクトルオーバーラップ、および補償の限定的な必要性、安定性等について選択される。以下の蛍光色素のパネルが、本発明による試薬組成物において特に有用である:(1)pacific blue(PacB)またはHorizon V450、(2)pacific orange(PacO)またはAMCA、(3)フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはAlexa488、(4)フィコエリトリン(PE)、(5)ペリジニンクロロフィルタンパク質/シアニン5.5(PerCP-Cy5.5)、PerCPまたはPE-TexasRed、(6)フィコエリトリン/シアニン7(PE-Cy7)、(7)アロフィコシアニン(APC)またはAlexa647、および(8)アロフィコシアニン/H7(APC-H7)、APC-Cy7、Alexa680またはAlexa700。本発明者らは、複数回の試験を行って、以下の蛍光色素、すなわち、Pacific BlueまたはHorizon V450、Pacific Orange、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ペリジニンクロロフィルタンパク質/シアニン5.5(PerCp-Cy5.5)、PE-Cy7、アロフィコシアニン(APC)、およびAPC-H7を選んだ場合に、非常に良好な結果を得ることができることを観察した。
【0016】
表現「対に属する抗体がいずれも、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている」は、第1の対の両方の抗体が、蛍光色素Aにコンジュゲートしており、第2の対の両方の抗体が、蛍光色素Bにコンジュゲートしていることを示すことを意味する。したがって、それぞれの対の内部では、蛍光色素は同じであるが、異なる対間では、蛍光色素は区別可能である。
【0017】
したがって、それぞれの試薬組成物を、例えば、リンパ系疾患のスクリーニングのために使用することができる。種々の試薬組成物の例示的適用例の図式的概観については、図2を参照されたい。したがってまた、本発明は、1つまたは複数の試薬組成物を含む診断キットにも関する。しかしまた、組成物は、1つまたは複数のさらなる試薬組成物、特に、疾患のさらなるスクリーニングおよび分類のために設計された試薬組成物と組み合わせても好都合に使用される。表現「と組み合わせて」は、試薬組成物を物理的に組み合わせることも、試薬組成物を物理的に混合することも意味しないが、試薬組成物を、別個の(連続した)解析ステップにおいて適用すること、およびこうして得られたデータを組み合わせることを意味する。例えば、スクリーニング用チューブを特徴付け用チューブと組み合わせて使用する場合には、同じ生物学的試料の別個の一定分量に対する2つの別個の解析ステップが関与し、各ステップが、試薬組成物のうちの1つを使用し、続いて、データの記録および評価が行われる。
【0018】
したがってまた、本発明は、少なくとも2つの試薬組成物のセットにも関し、前記セットは、本明細書上記に記載した試薬組成物と、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む、少なくとも1つのさらなる試薬組成物とを含む。したがって、両方の試薬組成物が、抗体の、明確に異なるパネルを含むが、いくつかの抗体が、両方の組成物中に存在する場合もあるであろう。明確に異なる蛍光色素のパネルが、それぞれの試薬組成物について本質的に同じであり、全部で最大8つの異なる蛍光色素を使用するのが非常に好都合である。
【0019】
一実施形態では、少なくとも2つの試薬組成物のセットは、本明細書上記で定義した(a)および/または(b)および/または(c) (すなわち、LST試薬および/またはSST試薬および/またはPCST試薬)に従う試薬組成物と、併せて、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む、少なくとも1つのさらなる試薬組成物とを含み、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体は、好ましくは、以下のマーカーの組合せのうちの1つに対するものである。
(i) CD20、CD45、CD23、CD10、CD79b、CD19、CD200およびCD43;
(ii) CD20、CD45、CD31、LAIR1、CD11c、CD19、IgMおよびCD81
(iii) CD20、CD45、CD103、CD95、CD22、CD19、CXCR5およびCD49d
(iv) CD20、CD45、CD62L、CD39、HLADR、CD19、CD27およびCD31
(v) CD4、CD45、CD7、CD26、CD3、CD2、CD28およびCD8
(vi) CD4、CD45、CD27、CCR7、CD3、CD45RO、CD45RAおよびCD8
(vii) CD4、CD45、CD5、CD25、CD3、CD11cおよびCD8
(viii) CD4、CD45、CD57、CD30、CD3、CD11cおよびCD8
(ix) CD4、CD45、cyパーフォリン、cyグランザイム、CD3、CD16、CD94およびCD8
(x) CD4、CD45、CD279、CD3およびCD8
(xi) CD2、CD45、CD7、CD26、CD3、CD56、CD5およびCD19
(xii) CD16、CD45、CD57、CD25、CD3、CD56、CD11cおよびCD19
(xiii) HLADR、CD45、cyパーフォリン、cyグランザイム、CD3、CD56、CD94およびCD19;または
(xiv) CD45、CD138、CD38、CD28、CD27、CD19、CD117およびCD81
【0020】
一実施形態では、セットは、LST試薬およびSST試薬の両方と、上記のさらなる試薬のうちの少なくとも1つとを含む。別の実施形態では、セットは、少なくともPCST試薬を含む。
【0021】
別の実施形態では、少なくとも2つの試薬組成物のセットは、本明細書上記で定義した(d)に従う第1の試薬組成物(ALOT試薬)と、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む、少なくとも1つのさらなる試薬組成物とを含み、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体は、以下のマーカーの組合せのうちの1つに対するものである。
(i) CD20、CD45、CD58、CD66c、CD34、CD19、CD10およびCD38
(ii) IgK、CD45、cyIgμ、CD33、CD34、CD19、IgM、CD117およびIgλ、ただし、IgMおよびCD117に対する抗体が、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、
(iii)CD9、CD45、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)、CD13、CD34、CD19、CD22およびCD24
(iv)CD21、CD45、CD15、CDw65、NG2、CD34、CD19、CD123およびCD81、ただし、CD15およびCDw65に対する抗体が、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、
(v) cyCD3、CD45、TdT、CD99、CD10、CD1aおよびCD3
(vi) cyCD3、CD45、CD2、CD117、CD4、CD8、CD7およびCD3
(vii) cyCD3、CD45、TCRγδ、TCRαβ、CD33、CD56、cyTCRβおよびCD3
(viii) cyCD3、CD45、CD44、HLADR、CD45RA、CD123およびCD3
(ix) HLADR、CD45、CD16、CD13、CD34、CD117、CD11bおよびCD10
(x) HLADR、CD45、CD35、CD64、CD34、CD117、骨髄細胞2が発現する免疫受容体(IREM2)およびCD14、
(xi)HLADR、CD45、CD36、CD105、CD34、CD117、CD33およびCD71、
(xii)HLADR、CD45、CD15、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(NG2)、CD34、
CD117、CD7およびCD38、
(xiii)HLADR、CD45、CD42a、CD61、CD203c、CD34、CD117、CD123およびCD4、ただし、CD42aおよびCD61に対する抗体が、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、
(xiv) HLADR、CD45、CD41、CD25、CD34、CD117、CD42bおよびCD9
(xv) HLADR、CD45、CD41、CD25、CD34、CD117、CD42bおよびCD9;または
(xvi) HLADR、CD45、TdT、CD56、CD34、CD117、CD22およびCD19。
【0022】
試薬組成物の例示的なセットは、本明細書下記のTable 1(表1)および/またはTable 6(表6)に記載する、少なくとも1つの試薬組成物と、併せて、Table 2(表2)〜Table 5(表5)およびTable 7(表7)〜Table 9(表9)のうちのいずれか1つに記載する、少なくとも1つの試薬組成物を含む。
【0023】
さらなる態様は、白血球のフローサイトメトリー免疫表現型検査ための診断キットに関し、このキットは、上記の、少なくとも2つの試薬組成物の1つまたは複数のセットを含む。キットは、その他の有用な構成成分、例として、使用のための指示、試料調製用試薬、緩衝剤および/または対照試料をさらに含むことができる。
【0024】
本明細書において提供する試薬組成物、セットおよび診断キットは、種々の分野に適用される。例えば、提案するパネルを、試料の性質、医学的指標または特定の目標に応じて、全体または部分に限って適用することができる。パネルは、単一のまたはいくつかの異なる製造元による特定のモノクローナル抗体試薬を、細胞表面マーカーのみを、および/または細胞表面マーカーと細胞内マーカーとを染色するための異なる細胞調製技法と組み合わせて使用することができる。同様に、試薬組成物は、機能を高めて、8つ超の異なる蛍光色素とコンジュゲートさせたモノクローナル抗体試薬を含有する組合せを含むパネルとなすこともでき、同じ骨格マーカーを、維持し、追加または類似のマーカーと組み合わせる。また、抗体組成物は、コアパネルとして作用することもでき、コアパネルには、免疫系のモニタリングを含めた、異なる目標に伴って新しい組合せを追加する。
【0025】
一実施形態では、成熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための診断キットを提供し、このキットは、SST試薬組成物および/またはLST試薬組成物および/またはPCST試薬組成物と、併せて、B細胞慢性リンパ球増殖性障害(B-CLPD)を検出するための少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、CD20、CD45、CD23、CD10、CD79b、CD19、CD200およびCD43; CD20、CD45、CD31、LAIR1、CD11c、CD19、IgMおよびCD81; CD20、CD45、CD103、CD95、CD22、CD19、CXCR5およびCD49d;またはCD20、CD45、CD62L、CD39、HLADR、CD19、CD27およびCD31に対する抗体を含む。
【0026】
例えば、成熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための診断キットを提供し、このキットは、SST試薬組成物および/またはLST試薬組成物および/またはPCST試薬組成物と、併せて、T細胞慢性リンパ球増殖性障害(T-CLPD)を検出するための、少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、CD4、CD45、CD7、CD26、CD3、CD2、CD28およびCD8; CD4、CD45、CD27、CCR7、CD3、CD45RO、CD45RAおよびCD8; CD4、CD45、CD5、CD25、CD3、CD11cおよびCD8; CD4、CD45、CD57、CD30、CD3、CD11cおよびCD8; CD4、CD45、cyパーフォリン、cyグランザイム、CD3、CD16、CD94およびCD8;またはCD4、CD45、CD279、CD3およびCD8に対する抗体を含む。
【0027】
成熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための別の例示的な診断キットは、SST試薬組成物および/またはLST試薬組成物および/またはPCST試薬組成物と、併せて、NK細胞慢性リンパ球増殖性障害(NK-CLPD)を検出するための、少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、CD2、CD45、CD7、CD26、CD3、CD56、CD5およびCD19; CD16、CD45、CD57、CD25、CD3、CD56、CD11cおよびCD19; HLADR、CD45、cyパーフォリン、cyグランザイム、CD3、CD56、CD94およびCD19; CD45、CD138、CD38、CD56、β2マイクロ、CD19、cyIgκおよびcyIgλ;またはCD45、CD138、CD38、CD28、CD27、CD19、CD117およびCD81に対する抗体を含む。
【0028】
さらに別の実施形態では、成熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための診断キットを提供し、このキットは、SST試薬組成物および/またはLST試薬組成物および/またはPCST試薬組成物と、併せて、形質細胞異常増殖症(PCD)を検出するための、少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、CD45、CD138、CD38、CD56、β2マイクロ、CD19、cyIgκおよびcyIgλ;またはCD45、CD138、CD38、CD28、CD27、CD19、CD117およびCD81に対する抗体を含む。
【0029】
また、未熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための診断キットも提供し、このキットは、ALOT試薬組成物と、併せて、B細胞前駆体ALL(BCP-ALL)を検出するための、少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、CD20、CD45、CD58、CD66c、CD34、CD19、CD10およびCD38; Igκ、CD45、cyIgμ、CD33、CD34、CD19、IgM、CD117およびIgλ、ただし、IgMおよびCD117に対する抗体は、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている;CD9、CD45、TdT、CD13、CD34、CD19、CD22およびCD24;またはCD21、CD45、CD15、CDw65、NG2、CD34、CD19、CD123およびCD81、ただし、CD15およびCDw65に対する抗体は、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、に対する抗体を含む。
【0030】
さらなる態様では、未熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための診断キットは、ALOT試薬組成物と、併せて、T細胞前駆体ALL(T-ALL)を検出するための、少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、cyCD3、CD45、TdT、CD99、CD10、CD1aおよびCD3; cyCD3、CD45、CD2、CD117、CD4、CD8、CD7およびCD3; cyCD3、CD45、TCRγδ、TCRαβ、CD33、CD56、TCR βF1およびCD3;またはcyCD3、CD45、CD44、HLADR、CD45RA、CD123およびCD3に対する抗体を含む。
【0031】
その上さらなる態様では、診断キットを、骨髄細胞の同定および特徴付けのために提供し、このキットは、ALOT試薬組成物と、併せて、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)/慢性骨髄増殖性障害(MPD)を検出するための、少なくとも1つの試薬組成物とを含み、後者の試薬組成物は、HLADR、CD45、CD16、CD13、CD34、CD117、CD11bおよびCD10; HLADR、CD45、CD35、CD64、CD34、CD117、IREM2およびCD14; HLADR、CD45、CD36、CD105、CD34、CD117、CD33およびCD71; HLADR、CD45、CD15、NG2、CD34、CD117、CD7およびCD38; HLADR、CD45、CD42a、CD61、CD203c、CD34、CD117、CD123およびCD4、ただし、CD42aおよびCD61に対する抗体は、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている;HLADR、CD45、CD41、CD25、CD34、CD117、CD42bおよびCD9; HLADR、CD45、CD41、CD25、CD34、CD117、CD42bおよびCD9;またはHLADR、CD45、TdT、CD56、CD34、CD117、CD22およびCD19に対する抗体を含む。
【0032】
また本発明は、白血球のフローサイトメトリー免疫表現型検査のための方法にも関し、この方法は、白血球を含む生物学的試料を提供するステップと、少なくとも一部(一定分量)の試料を、本明細書において提供する試薬組成物と接触させるステップとを含む。白血球を含有することが分かっているかまたは疑われる任意のタイプの(ヒト)試料を使用することができる。例えば、試料は、抹消血、骨髄、組織試料、例として、リンパ節、咽頭扁桃腺、脾臓もしくは肝臓、またはその他のタイプの体液、例として、脳脊髄液、硝子体液、滑液、胸水もしくは腹水である。好ましくは、この方法は、第1の一定分量の前記試料を、本発明によるセットの第1の試薬組成物と接触させ、少なくとも第2の一定分量の前記試料を、前記セットのさらなる試薬組成物と接触させるステップと、前記一定分量中の白血球を、フローサイトメーター中で解析するステップと、得られたデータを保存および評価するステップとを含む。典型的には、ステップ(c)は、フローサイトメトリーファイルのデータの統合および多次元解析ためのソフトウエアの使用を含む。CYTOGNOS SL(Salamanca、スペイン)から商品名INFINICYT(商標)の下で市販されているソフトウエアが、本発明の方法において使用するのに非常に適している。INFINICYT(商標)ソフトウエアは、複数のチューブから選択した細胞集団の免疫表現型の情報を、いわゆる最近傍計算に従って自動的に組み合わせることができ、この場合、試料の1つの一定分量に由来する個々の細胞と、同じ試料の別の一定分量に由来する、対応する個々の細胞とを、それらの骨格マーカーおよび分散プロファイル(scatter profile)に従ってマッチさせる。INFINICYTの手順により、本明細書が提示する8色のEuroFlowパネルを、パネル当たりのチューブの数およびチューブ当たりの骨格マーカーの数に依存して、12色、16色または20色以上の免疫染色に変換することができる。抗体パネルおよびINFINICYTソフトウエアは、8色の免疫染色を可能にする全ての現時点で入手可能なフローサイトメーター、例として、FACSCanto(商標)II、FACSAria、LSRII、DAKO CyAn(商標)、Gallio等と組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】抗体パネルの3つのカテゴリーの組成を示す図である。
【図2】EuroFlow抗体パネルの適用例の可能性を示す診断の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1.序論
本研究は、EuroFlow Consortium(LSHB-CT-2006-018708)により実施され、このConsortiumにより、プロジェクト「Flow Cytometry for Fast and Sensitive Diagnosis and Follow-up of Haematological Malignancies」が開始された。このプロジェクトには、白血病、リンパ腫および形質細胞異常増殖症の診断、分類およびモニタリングための標準化した多色免疫表現型検査プロトコールを設計することが含まれる。これらのプロトコールの主要な革新的構成成分が、EuroFlowパネルの抗体の組合せ(EuroFlowパネル)である。このEuroFlowの発明はとりわけ、抗体試薬を組み合わせたパネル(試薬組成物)に関し、これらのパネルを使用して、標準化した方法で、正常造血細胞、反応性造血細胞、再生造血細胞および悪性造血細胞を定義することができる。したがって、これらのパネルにより、慢性および急性の両方の白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性障害、肥満細胞症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、リンパ腫ならびに形質細胞異常増殖症の包括的な免疫表現型による診断、分類、段階分けおよびモニタリングが可能になる。初めて、本研究が提案するパネルは、主観的な専門家意見には基づかず、遡及的に試験され、改変されて、フローサイトメトリー免疫表現型検査の最も頻繁な医学的指標に対する答えを改善するに至った。続いて、これらのパネルを、革新的な方法で、従来のデータ解析のアプローチおよび新しい相互作用的かつ半自動的なデータ解析の手順の両方と組み合わせて適用されるように設計し、この場合、抗体パネルを用いた試料の染色の測定から得られた、単一細胞に関する情報が、全てのパラメータについて組み合わせられる。
【0035】
これらのパネルを確立するために、以下の順次的なステップを実施した。
1.当技術分野で使用されている全ての関連のマーカーを、それらの有用性または付加価値について評価する。
- ELN、EMN、ERIC等の欧州ネットワークが提案するマーカー、
- 米国の2006 Bethesda International Consensusが提案するマーカー、
- Rawstronらの提案に従う成熟B細胞悪性腫瘍についての新しいマーカー。
2.造血細胞の特定のコンパートメント(細胞系列、分化経路、成熟段階および/または機能のサブセット)の範囲内で、正常細胞対反応性細胞対再生細胞対異常な/悪性の細胞を認識することができる、マーカーの組合せ(6つ以上)を設計および選択する。
3.抗体試薬の組合せの提案されたパネルを、健常な対象および患者から得られた一次試料中で評価する。
4.中立的な目標および改善の余地に基づいて、抗体試薬の組合せの試験および最適化(マーカーの選択、抗体クローンの選択、および蛍光色素の選択)を繰り返す。
5.EuroFlowパネルの最適化されたバージョンを、大きな一連の明確に定義された患者試料および健常な対照から得られた試料上で評価する。
【0036】
先在する知見と比較して、この設計は、正常細胞、反応性細胞、再生細胞およびクローン性/新生物性の細胞の識別、ならびにクローン性/新生物性の造血障害の分類、段階分けおよびモニタリングの両方を可能にする、(多センターを用いて遡及的に評価して得られた)包括的なパネルの最初のものであり、1)試料の染色した一定分量全ての中の目的の細胞集団全ての適切なかつ再現性のある同定のために共通して染色する必要があるマーカーについて、および2)蛍光色素コンジュゲート化抗体試薬の特定の組合せにおいて、どのようにマーカーを、さらなる特徴付け用マーカーと組み合わせるべきであるかについての明確な指標もたらす。さらにまた、それぞれの組合せの目標についての情報も、それぞれの組合せを、いつ、どうのように適用すべきかについての指標として示される。本発明は、広範な抗体パネルの試験およびいくつかの再設計サイクルを経てようやく作られた。
【0037】
EuroFlowパネルの試薬は、8つ以上の蛍光化合物とコンジュゲートさせた抗体の組合せ(名前を有するチューブ)の1つまたは複数からなるサブセットから構成され、試薬の前記組合せのそれぞれが、異なる目標を有する。EuroFlowパネルは、3つの異なるカテゴリー、すなわち、カテゴリー1抗体パネル、カテゴリー2抗体パネル、およびカテゴリー3抗体パネルからなる(図1)。
【0038】
2.抗体パネルのカテゴリー
以下の目的を、EuroFlowパネルの抗体の組合せにより追求する。
【0039】
カテゴリー1の抗体パネルは、特に、クローン性および/または新生物性のリンパ系障害が、例えば、リンパ球増加、リンパ節の拡大、脾腫大、単クローン性の血清成分、説明のつかない神経学的症状等のために疑われる試料中の、正常な、反応性の、再生および新生物性のB細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞を含めた、成熟リンパ球細胞の異なるサブセットの同定および特徴付けを目的とする。カテゴリー2の抗体パネルは、特に、新生物性のリンパ球前駆体を含有することが疑われる試料中の、正常な、反応性の、再生および新生物性の未熟な(または早熟な)Tリンパ球細胞および/またはBリンパ球細胞の同定および特徴付けを目的とする。カテゴリー3の抗体パネルは、特に、新生物性の骨髄細胞、または骨髄関連マーカーを発現している新生物性の細胞を含有することが疑われる試料中の、正常な、反応性の、再生、ならびに新生物性の未熟な、成熟しつつあるおよび成熟した骨髄細胞の同定および特徴付けを目的とする。
【0040】
前記3つのカテゴリーのそれぞれの中には、より広い目的に伴って、単一チューブによるスクリーニングのステップにおいて使用されることを目的とする抗体試薬の組合せもあれば、より特異的な標的集団がスクリーニングのステップにおいてあらかじめ同定されている場合には、複数チューブによる分類のステップに適用される可能性が高い抗体試薬の組合せもある。
【0041】
2.1 カテゴリー1の抗体パネル
カテゴリー1の抗体パネルは、それぞれが正常な細胞数または高い細胞数を含有する試料(例えば、正常抹消血)、および低い細胞数を含有する試料(例えば、硝子体液)中に存在する成熟リンパ球細胞の特異的なサブグループの最初の同定および特徴付けを目的とする、3つのスクリーニング用チューブと、B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞のさらなる特徴付けを目的とする、複数チューブの抗体の組合せの4つの異なるセットとから構成される。カテゴリー1のスクリーニング用チューブを使用して、比較的高い細胞数を有する試料および比較的低い細胞数を有する試料それぞれの中のクローン性および新生物性のT細胞、B細胞またはNK細胞および形質細胞の存在についてスクリーニングすることができる。低い細胞数の試料の典型的な例が、細針吸引物(FNA)、脳脊髄液(CSF)、および硝子体液である。
【0042】
上記で言及したスクリーニング用チューブは現在、高い細胞数の試料のためのリンパ球スクリーニング用チューブ(LSTと略す)、低い細胞数の試料のための小型試料チューブ(SST)、および別個の形質細胞スクリーニング用チューブ(PCST)と呼ばれている。続いて、その他の4つのセットのチューブを、用途の中でもとりわけ、異なるB細胞、T細胞およびNK細胞の慢性リンパ球増殖性障害(それぞれ、BCLPD、TCLPDおよびNKCLPDと略す)ならびに形質細胞異常増殖症(PCDと略す)を有する患者中の同定されたクローン性または新生物性のB細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞をそれぞれ、さらに特徴付けるために充てる。
【0043】
2.2 カテゴリー2の抗体パネル
カテゴリー2の抗体パネルは、未熟なリンパ球前駆体対非リンパ球前駆体の最初の同定および特徴付けに充てるスクリーニング用チューブと、B細胞前駆体およびT細胞前駆体のさらなる詳細な特徴付けのための2つのセットのチューブとからなる。適用例の中でもとりわけ、スクリーニング用チューブを使用して、急性白血病を、リンパ性急性白血病対非リンパ性急性白血病対未分化型急性白血病対混合型(biphenotypic)または二系統(bilineage)の急性白血病に分類することができる。また、このチューブを使用して、骨髄、抹消血およびその他の組織中のB細胞前駆体について、正常/再生細胞と新生物性/悪性の細胞とを、ならびに胸腺中のT細胞前駆体について、正常/再生細胞と新生物性/悪性の細胞とをそれぞれ識別することもできるであろう。したがって、このスクリーニング用チューブは現在、急性白血病の位置付け用チューブ(ALOTと略す)と呼ばれている。その他の2つのセットのチューブを使用して、適用例の中でもとりわけ、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)およびT-ALLを有する患者、ならびに急性白血病を有し、未分化型または混合型(biphenotypic)/二系統(bilineage)の表現型を示す患者において、B細胞コミットメントおよびT細胞コミットメントを示すリンパ芽球細胞を特徴付けることができる。
【0044】
2.3 カテゴリー3の抗体パネル
最後に、カテゴリー3の抗体パネルは、リンパ球前駆細胞と非リンパ球前駆細胞とを識別することを目的とし、カテゴリー2(ALOTチューブ)において上記に記載したスクリーニング用チューブと同一であるスクリーニング用チューブと、異なる成熟段階の、赤血球系列、巨核球系列、単核球系列、好中球系列、好酸球系列、好塩基球系列、肥満細胞系列および樹状細胞系列に方向付けされた細胞、ならびに試料(例えば、BM)中に存在する場合には、より未熟な、中立的な造血前駆体、および間質細胞を含めた、最早期の造血前駆体から成熟骨髄細胞に成熟しつつある非リンパ球細胞の特徴付けを目的とする1つの追加のセットのチューブとから構成される。用途の中でもとりわけ、このセットのチューブは、新生物性/クローン性の疾患ならびにその他の障害の特徴付けに適用することができ、この場合、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄増殖性障害(MPD)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、肥満細胞症、意義不明の特発性血球減少(ICUS)、ならびに/または混合型および二系統の急性白血病において発生する場合の、骨髄関連マーカーを伴う急性白血病を有する患者等において、目的の細胞(例えば、クローン性/新生物性の細胞、変化した/異常な細胞)が、骨髄分化を示す。この群のチューブを今後は、AML/MDS/MPDと略す。
【0045】
2.4 EuroFlowパネルにおいて使用するマーカーのタイプ
EuroFlowパネルの各チューブ中には、2つのタイプの抗体試薬、すなわち、1)主として、試料中に存在する目的の細胞集団を正確に同定することを目的とし(骨格マーカー)、また、前記細胞集団の表現型の特徴についての追加情報も提供する試薬と、2)主として、前記細胞集団および試料中のその他のグループの細胞のさらなる特徴付け/分類に充てる試薬(特徴付け用マーカー)とを組み合わせる。
【0046】
典型的には、骨格マーカーが、チューブの以下のセットの各チューブ中で繰り返される:AML/MDS/MPD、BCP-ALL、T-ALL、B-CLPD、T-CLPD、NK-CLPD、PCD。さらにまた、B-CLPDセットのチューブの骨格マーカーは、LSTスクリーニング用チューブおよびSSTスクリーニング用チューブに共通であり、PCDセットのチューブの骨格マーカーは、PCSTに共通であり、BCP-ALLセットおよびT-ALLセットのチューブの骨格マーカーもまた、ALOTに共通である。最後にまた、AMLパネル中の骨格マーカーのうちの2つ(すなわち、CD34およびCD45)も、ALOTチューブに共通である。
【0047】
続いて、特徴付け用マーカーを、包括的な方法で、各チューブ中に組み合わせ、したがって、特徴付け用マーカーにより、低い数で存在する場合であっても、正常細胞、反応性細胞、再生細胞と、クローン性/新生物性の細胞とを区別することが可能となり、新生物性の細胞の場合には、特徴付け用マーカーにより、急性および慢性の白血病、リンパ腫および形質細胞異常増殖症のさらなる診断、細分類、段階分けおよびモニタリングが可能となるであろう。複数チューブパネルにおけるこの目的では、各チューブは、対応するスクリーニング用チューブから得られた情報と組み合わせられた場合に、疾患エンティティの十分な特徴付けおよびモニタリングに関連がある特定の目的に充てられる(例えば、CLLの診断、段階分けおよびモニタリングのためであれば、LSTと組み合わせた、B-CLPDの複数チューブパネルのチューブ番号4が十分であろう)か、または特定の疾患関連情報のために用いられる(例えば、Table 7(表7)に示すBCP-ALLの複数チューブのパネル中のチューブ番号24がとりわけ、BCP-ALLにおいて、正常な/反応性のB細胞前駆体および再生B細胞前駆体と、悪性のB細胞前駆体とを区別し、微小残存病変をモニタリングするために充てられる)。
【0048】
2.5 EuroFlowパネルを最適に適用するためのINFINICYTソフトウエアツール
本発明による抗体パネルを、市販されているINFINICYTソフトウエアツールと組み合わせて使用することができる。このソフトウエアは、データファイルを結合することを通して無限の数のパラメータを有するファイルを生成し、部分的にのみ重複する抗体試薬の異なる組合せを使用して、1つの試料の一定分量中のマーカーの、同じ試料のその他の一定分量中で測定した個々の細胞に対する測定値から得られた情報を計算するため(US7,321,843)、および異なる試料間または試料の異なる群間で比較するため(US7,507,548)の、最近になって記載された手順に基づく。
【0049】
3.成熟リンパ球細胞のための、カテゴリー1の抗体パネルの組成物
成熟リンパ球細胞のための、カテゴリー1の抗体パネルの抗体試薬の複数チューブの組合せにおいては、選択された共通の骨格マーカーが、4つの異なるパネル間で変化し、1) B-CLPDに対してCD20-1、CD45-2およびCD19-6; 2) T-CLPDに対してCD4-1、CD45-2、CD3-5およびCD8-8; 3) NK-CLPDに対してCD45-2、CD3-5、CD56-6およびCD19-8、ならびに; 4) PCDに対してCD45-1、CD138-2、CD38-3およびCD19-6(抗体CDと蛍光色素化合物の番号)からなる。さらに、B-CLPDチューブ中で使用する骨格マーカーはまた、LSTスクリーニング用チューブおよびSSTスクリーニング用チューブ中でも使用し、PCDチューブの骨格マーカーはまた、PCST中でも使用する。
【0050】
抗体試薬のこれらの複数チューブの組合せのそれぞれの中の骨格マーカーは、目的の細胞のグループを描写すること、ならびに十分な数の腫瘍細胞を含有する診断用試料および経過観察用試料中の新生物性の細胞を特異的に同定することを目的とする。さらに、4つの、複数チューブの組合せのそれぞれについて、骨格マーカーを、変動する数の追加の特徴付け用マーカーと組み合わせる。追加の特徴付け用マーカーはさらに、正常な、反応性の、再生B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞それぞれと、新生物性/クローン性のB細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞それぞれとの識別に、これらの細胞が最低限の数で存在する場合であっても寄与し(例えば、微小残存病変のモニタリングおよび疾患の段階分け)、異なる疾患カテゴリーに由来するクローン性/新生物性の細胞間の区別にも寄与する。
【0051】
3.1.リンパ球スクリーニング用チューブ(LST)、小型試料チューブ(SST)、および形質細胞スクリーニング用チューブ(PCST)
EuroFlowのLST試薬組成物を、いくつかの疑われる臨床状態、例として、リンパ球増加、リンパ節の拡大、脾腫大、単クローン性の血清成分、説明のつかない神経学的症状、説明のつかない血球減少等の評価のために設計し、承認を得た(図2)。例示的なLSTチューブの組成を、Table 1(表1)に示す。このチューブは、B系列、T系列およびNK系列の異常な成熟リンパ球集団を検出する。しかし、この8色チューブは、検出された異常なリンパ球集団の正確な診断および分類を行うことはできない。こうした診断および分類は典型的には、B-CLPDチューブ、T-CLPDチューブ、NK-CLPDチューブおよび/またはPCDチューブを用いたさらなる特徴付けを必要とする(セクション3.2、3.3および3.4を参照されたい)。
【0052】
EuroFlowのSST試薬組成物は、EuroFlowのLSTの改変されたバージョンであり、少量の試料および(非常に)低い細胞数を有する試料、例として、細針吸引物(FNA)、脳脊髄液(CSF)、硝子体液等の評価ために特別に設計されている。この特別な目的では、これらのチューブにより、これらの試料中に存在する正常な白血球、例えば、B細胞、T細胞、NK細胞および単核球、ならびに任意の共存する異常な細胞集団を明確に認識することが可能になる。例示的なSST試薬の組成を、Table 1(表1)に示す。
【0053】
EuroFlowのPCST試薬組成物は、異常またはクローン性を検出するための形質細胞のスクリーニングのために、特別に設計されている。異常なまたはクローン性の形質細胞の場合、補完的な、表現型の特徴付けが、2つのチューブからなるPCD抗体パネルを介して達成される。
【0054】
本出願の表のいずれにおいても、蛍光色素番号1は、pacific blue(PacB)またはHorizon V450に対応し、蛍光色素番号2は、pacific orange(PacO)またはAMCAに対応し、蛍光色素番号3は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはAlexa488に対応し、蛍光色素番号4は、フィコエリトリン(PE)に対応し、蛍光色素番号5は、ペリジニンクロロフィルタンパク質/シアニン5.5(PerCP-Cy5.5)、PerCPまたはPE-Texas Redに対応し、蛍光色素番号6は、フィコエリトリン/シアニン7(PE-Cy7)に対応し、蛍光色素番号7は、アロフィコシアニン(APC)またはAlexa647に対応し、蛍光色素番号8は、アロフィコシアニン/H7(APC-H7)、APC-Cy、Alexa680またはAlexa700に対応する。好ましい組合せは、pacific blue(PacB)、pacific orange(PacO)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ペリジニンクロロフィルタンパク質/シアニン5.5(PerCP-Cy5.5)、フィコエリトリン/シアニン7(PE-Cy7)、アロフィコシアニン(APC)、およびアロフィコシアニン/H7(APC-H7)である。
【0055】
【表1】

【0056】
3.2.B細胞慢性リンパ球増殖性障害(B-CLPD)のための複数チューブ抗体パネル
B-CLPDは、WHOエンティティに従う成熟B細胞悪性腫瘍を、フローサイトメトリーのデータのみに基づいて分類するように設計されている(Table 2(表2)を参照されたい)。LSTを同時または順次に使用して得られた情報を、B-CLPBパネルに(例えば、INFINICYTソフトウエアを介して)組み込む必要がある。B-CLPDパネルは、悪性のB細胞集団を、解析する細胞材料にかかわらず、骨格マーカーのCD20、CD19およびCD45を使用して、90%超まで精製することができる症例において働くように設計されている。
【0057】
このパネルは、モジュール式に働くように設計されている。すなわち、特定のB細胞悪性腫瘍についての試験前の確率が高い場合には、パネル全体を染色する必要はない。それらの場合には、このパネルにより、特定のエンティティを、より少ないチューブの数を使用して診断することが可能になる。例えば、CLLを非常に高い陽性予測値(PPV)で診断するためには、LSTチューブ番号1とチューブ番号5とがあれば十分である。
【0058】
【表2】

【0059】
3.3.T細胞慢性リンパ球増殖性障害(T-CLPD)のための、複数チューブ抗体パネル
EuroFlowのT-CLPDは、成熟T細胞悪性腫瘍の診断および分類を目的とする。また、このパネルについては、LSTを用いて同時および順次に得られた情報も、好ましくは、T-CLPDチューブと共に(例えば、INFINICYTソフトウエアを用いたハーモナイゼーションを介して)組み込まれる。このパネルは、悪性のT細胞集団を、解析する細胞材料にかかわらず、骨格マーカーのCD3、CD4、CD8およびCD45を使用して、90%超まで精製することができる症例において働くように設計されている。LSTチューブとT-CLPDチューブとの組合せにより、TCRαβ系列およびTCRγδ系列の両方のT細胞悪性腫瘍を検出することができる。
【0060】
【表3】

【0061】
3.4.NK細胞慢性リンパ球増殖性障害(NK-CLPD)のための、複数チューブ抗体パネル
EuroFlowのNK-CLPDチューブは、異常なNK細胞と正常な/反応性のNK細胞とを識別することを目的とする。NK-CLPDパネルは、4つの骨格マーカー、すなわち、CD45-2、CD3-5、CD56-6およびCD19-8を使用する。(NK-CLPD)
【0062】
【表4】

【0063】
3.5.形質細胞異常増殖症(PCD)のための、複数チューブ抗体パネル
EuroFlowのPCDパネルは、PCDのために、4つの骨格マーカー、すなわち、CD45-1、CD138-2、CD38-3およびCD19-6を有する2つのチューブを含む。(Table 5(表5));チューブ番号18は、Table 1(表1)のPCST(チューブ番号3)と同一である。PCDパネルは、形質細胞の同定および列挙、さらに、反応性の形質細胞増加症等における正常な多クローン性の形質細胞と、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、くすぶり型および症候性の多発髄腫(MM)、形質細胞性白血病(PCL)、アミロイドーシス、ならびに髄外性形質細胞腫等における異常な単クローン性の形質細胞との識別、その上、これらの形質細胞異常増殖症間における識別診断を目的とする。また、EuroFlowのLSTパネルおよびB-CLPDパネルと組み合わせれば、この複数チューブ抗体パネルは、その他の形質細胞異常増殖症、例として、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症およびリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)の診断にも寄与するであろう。
【0064】
【表5】

【0065】
4.未熟リンパ球細胞のための、カテゴリー2のパネルの組成物
4.1.急性白血病の位置付け用チューブ(ALOT)
EuroFlowのALOTチューブは、急性白血病患者中の未熟な芽球細胞集団の性質の評価(Bリンパ球性、Tリンパ球性の急性白血病対非リンパ球性、未分化型または混合性の表現型の急性白血病)、および結果として生じる、最も適切な補完的な抗体パネル、すなわちBCP-ALL、T-ALLおよび/またはAML/MDS/MPDに向かう位置付けのために設計された。ALOTチューブの組成を、Table 6(表6)に示す。マーカーのCD45-2、CD34-5およびCD19-6は、ALOTの情報をBCP-ALLのパネルと(例えば、INFINICYTソフトウエアを使用して)組み合わせる場合には、骨格マーカーとして作用し、また、cyCD3-1、CD45-2およびCD3-8のマーカーも、ALOTの情報をT-ALLのパネルと組み合わせる場合には、共通の骨格マーカーとして作用し、さらにまた、CD45-2およびCD34-5も、AML/MDS/MPDの複数チューブのパネルに対する共通の骨格マーカーである。
【0066】
【表6】

【0067】
ALOTの抗体の組合せが、血液学的悪性腫瘍の排除の目的では十分でないことから、ALOTは、血液学的悪性腫瘍の排除には適さない。しかし、ALOTを、LSTならびにAML/MDSのプロトコールの4つのチューブ(チューブ番号29、30、31および32)と組み合わせた場合には、事実上、全てのタイプの血液悪性腫瘍を、(分類はしないが)検出することまたは除外することができる(図2)。
【0068】
4.2.前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL)のための、複数チューブ抗体パネル
EuroFlowのBCP-ALLチューブは、全ての古典的に定義されたBCP-ALL(プロ-B-ALL、共通-ALL、プレ-B-ALL)の認識および分類、または明確に定義された分子の異常、例として、特異的な融合遺伝子と関連がある免疫表現型による分類を含めた、代替のBCP-ALLの分類を目的とする。BCP-ALLチューブのセットを用いて得られた情報は、骨格マーカーのCD45-2、CD34-5およびCD19-6に基づき、適切なデータ解析ソフトウエアを使用して(例えば、INFINICYTソフトウエアを介して)、ALOTと組み合わせることが必要である(Table 7(表7))。
【0069】
【表7】

【0070】
4.3.T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)のための、複数チューブ抗体パネル
EuroFlowのT-ALLパネルは、4つのチューブからなり、cyCD3-1、CD45-2およびCD3-8を、ALOTと共通の骨格マーカーとして使用する(Table 8(表8)を参照されたい)。T-ALLパネルは、全ての古典的に定義されたT-ALL(未熟T-ALL、一般的な胸腺細胞性のT-ALL、成熟T-ALL)の認識および分類、または例えば、TCRタンパク質の発現(cyTCRβ、TCRαβ、TCRγδ)、もしくは明確に定義された分子の異常との関連性に基づく代替のT-ALLの分類を目的とする。
【0071】
【表8】

【0072】
5.骨髄細胞のための、カテゴリー3のパネルの組成物
EuroFlowのAML/MDS/MPDのパネルは、2つの補完的なマーカーの組合せを含み(チューブ29〜32、およびチューブ32〜35、Table 9(表9)を参照されたい)、全てのパネルが、HLA-DR-1、CD45-2、CD34-5およびCD117-6を骨格マーカーとして含有する(Table 9(表9))。第1のセットのチューブ(チューブ29〜32)は、好ましくは、AMLおよびMDS等における骨髄悪性腫瘍の検出および分類(系列の帰属および成熟)を目的とするために、EuroFlowのALOTと組み合わせて使用するように設計されており、主要な焦点を、未熟な好中球系列(チューブ30)、単核球系列(チューブ31)、および赤血球系列(チューブ32)に合わせている。また、これらの4つのチューブは、APL(チューブ32)、PNH(チューブ29および30)、ならびにその他の異常な骨髄表現型の検出にも寄与する。
【0073】
第2のセットのチューブ(チューブ33〜35)は、巨核球系列、好塩基球系列、形質細胞様樹状細胞系列についての追加情報(チューブ33)、およびAML/MDSと関連がある(またはない)肥満細胞症の診断についての関連情報(チューブ34)を提供する。チューブ35は、AML/MDSをさらに特徴付け、特に、リンパ球関連マーカーの異常な発現および異常なリンパ球の成熟に焦点を合わせている。
【0074】
【表9】

(参考文献)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8つの明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む、白血球のフローサイトメトリー免疫表現型検査のための試薬組成物であって、目的の白血球集団を同定するための少なくとも3つの同定用抗体と、前記白血球集団をさらに特徴付けおよび/または分類するための少なくとも4つの特徴付け用抗体とのセットを含み、前記抗体が、以下のマーカーの組合せのうちの1つに対するものである試薬組成物:
(a)CD20、CD4、CD45、CD19、Igλ、CD8、Igκ、CD56、TCRγδ、CD3およびCD38、ただし、対CD20/CD4、Igλ/CD8およびCD19/TCRγδに属する抗体がいずれも、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている;
(b)CD20、CD45、CD8、Igλ、CD56、Igκ、CD4、CD3、CD14およびCD38、ただし、対CD8/Igλ、CD56/IgκおよびCD3/CD14に属する抗体がいずれも、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている;
(c) CD45、CD 138、CD38、CD56、β2マイクロ、CD19、CyIgKおよびCyIgλ;または
(d) cyCD3、CD45、cyMPO、cyCD79a、CD34、CD19、CD7およびCD3。
【請求項2】
少なくとも2つの試薬組成物のセットであって、請求項1の(a)、(b)および/または(c)に記載の試薬組成物と、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む、少なくとも1つのさらなる試薬組成物とを含み、前記抗体が、以下のマーカーの組合せのうちの1つに対するものである試薬組成物のセット:
(i) CD20、CD45、CD23、CD10、CD79b、CD19、CD200およびCD43
(ii) CD20、CD45、CD31、LAIR1、CD11c、CD19、IgMおよびCD81
(iii) CD20、CD45、CD103、CD95、CD22、CD19、CXCR5およびCD49d
(iv) CD20、CD45、CD62L、CD39、HLADR、CD19、CD27およびCD31
(v) CD4、CD45、CD7、CD26、CD3、CD2、CD28およびCD8
(vi) CD4、CD45、CD27、CCR7、CD3、CD45RO、CD45RAおよびCD8
(vii) CD4、CD45、CD5、CD25、CD3、CD11cおよびCD8
(viii) CD4、CD45、CD57、CD30、CD3、CD11cおよびCD8
(ix) CD4、CD45、cyパーフォリン、cyグランザイム、CD3、CD16、CD94およびCD8
(x) CD4、CD45、CD279、CD3およびCD8
(xi) CD2、CD45、CD7、CD26、CD3、CD56、CD5およびCD19
(xii) CD16、CD45、CD57、CD25、CD3、CD56、CD11cおよびCD19
(xiii) HLADR、CD45、cyパーフォリン、cyグランザイム、CD3、CD56、CD94およびCD19;または
(xiv) CD45、CD138、CD38、CD28、CD27、CD19、CD117およびCD81。
【請求項3】
少なくとも2つの試薬組成物のセットであって、請求項1の(d)に記載の第1の試薬組成物と、明確に異なる蛍光色素コンジュゲート化抗体を含む、少なくとも1つのさらなる試薬組成物とを含み、前記抗体が、以下のマーカーの組合せのうちの1つに対するものである試薬組成物のセット:
(i) CD20、CD45、CD58、CD66c、CD34、CD19、CD10およびCD38
(ii) Igκ、CD45、cyIgμ、CD33、CD34、CD19、IgM、CD117およびIgλ、ただし、IgMおよびCD117に対する抗体が、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、
(iii) CD9、CD45、TdT、CD13、CD34、CD19、CD22およびCD24
(iv) CD21、CD45、CD15、CDw65、NG2、CD34、CD19、CD123およびCD81、ただし、CD15およびCDw65に対する抗体が、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、
(v) cyCD3、CD45、TdT、CD99、CD10、CD1aおよびCD3
(vi) cyCD3、CD45、CD2、CD117、CD4、CD8、CD7およびCD3
(vii) cyCD3、CD45、TCRγδ、TCRαβ、CD33、CD56、cyTCRβおよびCD3
(viii) cyCD3、CD45、CD44、HLADR、CD45RA、CD123およびCD3
(ix) HLADR、CD45、CD16、CD13、CD34、CD117、CD11bおよびCD10
(x) HLADR、CD45、CD35、CD64、CD34、CD117、IREM2およびCD14
(xi) HLADR、CD45、CD36、CD105、CD34、CD117、CD33およびCD71
(xii) HLADR、CD45、CD15、NG2、CD34、CD117、CD7およびCD38
(xiii) HLADR、CD45、CD42a、CD61、CD203c、CD34、CD117、CD123およびCD4、ただし、CD42aおよびCD61に対する抗体が、同じ蛍光色素にコンジュゲートしている、
(xiv) HLADR、CD45、CD41、CD25、CD34、CD117、CD42bおよびCD9
(xv) HLADR、CD45、CD41、CD25、CD34、CD117、CD42bおよびCD9;または
(xvi) HLADR、CD45、TdT、CD56、CD34、CD117、CD22およびCD19。
【請求項4】
各試薬組成物が、pacific blue(PacB)またはHorizon V450、pacific orange(PacO)またはAMCA、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはAlexa488、フィコエリトリン(PE)、ペリジニンクロロフィルタンパク質/シアニン5.5(PerCP-Cy5.5)、PerCPまたはPE-TexasRed、フィコエリトリン/シアニン7(PE-Cy7)、アロフィコシアニン(APC)またはAlexa647、およびアロフィコシアニン/H7(APC-H7)、APC-Cy7、Alexa680またはAlexa700にコンジュゲートしている抗体を含む、請求項2または3に記載の試薬組成物のセット。
【請求項5】
Table 1(表1)および/またはTable 6(表6)に記載する少なくとも1つの試薬組成物と、併せて、Table 2(表2)〜Table 5(表5)およびTable 7(表7)〜Table 9(表9)のうちのいずれか1つに記載する、少なくとも1つの試薬組成物とを含む、請求項4に記載の試薬組成物のセット。
【請求項6】
請求項2から5に記載の少なくとも2つの試薬組成物のセットと、場合により併せて、使用のための指示、緩衝剤および/または対照試料とを含む、白血球のフローサイトメトリー免疫表現型検査ための診断キット。
【請求項7】
成熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための請求項6に記載の診断キットであって、請求項2の(i)〜(v)、(vi)〜(x)、(xi)〜(xiii)、および/または(xiv)(PCD)に記載の試薬組成物のセットを含む診断キット。
【請求項8】
未熟リンパ球細胞の同定および特徴付けのための請求項6に記載の診断キットであって、請求項3の(i)〜(iv)および/または(v)〜(viii)に記載の試薬組成物のセットを含む診断キット。
【請求項9】
骨髄細胞の同定および特徴付けための請求項6に記載の診断キットであって、請求項3の(ix)〜(xvi)に記載の試薬組成物のセットを含む診断キット。
【請求項10】
白血球のフローサイトメトリー免疫表現型検査のための方法であって、
(a)白血球を含む生物学的試料を提供するステップと、
(b)第1の一定分量の前記試料を、請求項2から5のいずれか一項に記載のセットの第1の試薬組成物と接触させ、少なくとも第2の一定分量の前記試料を、前記セットのさらなる試薬組成物と接触させるステップと、
(c)前記一定分量中の白血球を、フローサイトメーター中で解析するステップと、
(d)得られたデータを保存および評価するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記試料が、抹消血、骨髄、リンパ節、咽頭扁桃腺、脾臓もしくは肝臓などの組織試料、または脳脊髄液、硝子体液、滑液、胸水もしくは腹水などのその他のタイプの体液である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)が、フローサイトメトリーファイルのデータの統合および多次元解析ためのソフトウエアの使用を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ソフトウエアが、INFINICYT(商標)である、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529046(P2012−529046A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513893(P2012−513893)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050332
【国際公開番号】WO2010/140885
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511294062)エラスムス・ユニヴァーシティ・メディカル・センター・ロッテルダム (2)
【Fターム(参考)】