説明

フローティングホースとその製造方法

【課題】巻き取られリール上で保管されることによって生じる損傷に耐えるフローティングホースを提供する。
【解決手段】フローティングホース1は、内側面と外側面とを有するカーカス2と、カーカス2の周りに互いに間隔をおいて位置する複数の圧縮防止カラー3と、カーカス2と圧縮防止カラー3とを囲む浮力媒体4と、浮力媒体4と圧縮防止カラー3とを覆う外側カバー5と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フローティングホースとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、沖合地点からの石油の生産が世界中でますます重要になっている。これは、北海、メキシコ湾、ブラジル沖、カリフォルニア沖の海底を含む世界中の多くの地点で、莫大な石油資源が海底に存在しているからである。浮体式海洋石油生産貯蔵積出設備(FPSO)は通常、海底に位置するそのような石油資源の回収に使用される。FPSOは、海底に掘削された幾つもの油井から石油を引き上げることができる。
【0003】
原油は、汲み出された後、一時的にFPSOに貯蔵される。次に、原油は、輸送タンカーに移送され、精油所などの所望の仕向地に輸送される。しかし、原油をFPSOから海上の輸送タンカーまで移送するのは、船体間で常時相対移動が生じているために極めて困難な作業である。海上での高波、強風、嵐のような悪天候条件のときには、この作業は一層困難となる。原油をFPSOから輸送タンカーまで移送するには、通常フローティングホースが使用される。
【0004】
フローティングホースは通常、FPSOの船首及び/または船尾から輸送タンカーまで延びている。最新の輸送タンカーは、原油積載用の船首マニフォルドを備えている場合もあるが、従来の多くの輸送タンカーは、積載されるべき原油を取り込むための船体中央部マニフォルドからなる積載装置を備えている。このため、FPSOの船体から輸送タンカーの船体中央部マニフォルドまでの、比較的長いローディングホースが必要になる。船体間の離隔距離、つまりFPSOの船尾と輸送タンカーの船首との離隔距離は、一般に約50m〜200mあり、フローティングホースの長さは、約150mから300mの間である。フローティングホースの内径は通常、約15cm(6インチ)から約61cm(24インチ)の間であり、積載される原油の実際のポンプ移送流量に合わせられる。従来、ローディングホースの先端は、テンダーと呼ばれる専用の船舶によって輸送タンカーまで運ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フローティングホースは、石油の移送に使用されないときには、タンカーから切り離された後で、海上に浮かんだままにしておくことができる。しかし、フローティングホースは、海上に浮かんだままにされた場合、船舶との衝突や嵐の際の波による衝撃によって損傷する可能性がある。いずれにしても、連続的な波の作用によってホースの摩耗が生じる。これによって、浮力が失われるおそれがあり、時間の経過と共に、ホースが沈み出す可能性がある。
【0006】
代案として、フローティングホースをFPSO上に巻き上げて、沖合で輸送タンカーに原油を積み込むのに再び必要になるまで保管しておくことができる。これは、レンチを使ってフローティングホースをリールに巻き取ることで可能となる。これによって、ホースが波にさらされたり、それに伴う固有の摩耗を受けたりすることがなくなる。また、フローティングホースが海上に浮かんでいるときに船舶に衝突するおそれがなくなる。しかし、ホースをリールに巻き取ることは、問題のない作業とはいえない。たとえば、ホースをリールに巻き取り、リール上で保管する際にホースが圧縮によって損傷するおそれがある。
【0007】
フローティングホースは通常、浮力を付与するために発泡体層で覆われたカーカスで構成されている。発泡体は、大きな軸方向力(巻き上げ力とホース重量を足した力)の条件下で繰り返しドラムに巻き取られることで、変形し圧縮されることがある。ホースが長期間にわたってリール上で保管され、海中にある時間よりリール上にある時間の方が長くなる典型的な条件では、発泡体層はより圧縮されやすくなる。フローティングホースは、必要時に繰り出され、その後直ちに海中に投入される。このため、リール上にある間に受けていた圧縮からホースが回復する時間はほとんどない。いずれにせよ、一時的及び永久的な圧縮損傷によって、ホースは浮力を失い、最終的に、通常使用の条件下でホースが沈むおそれがある。従って、巻き取られリール上で保管されることによって生じる損傷に耐えるフローティングホースの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフローティングホースは、リールに巻き取られる際に受ける力などの、軸方向及び横方向の力によって生じ得る損傷に耐える。より具体的には、本発明のフローティングホースは、従来のフローティングホースに比べて、圧縮による損傷を受けにくい。これは、通常使用時に生じ得る過度の圧縮から内部の浮力媒体を保護する圧縮防止カラーを含む、本発明のフローティングホースによる効果である。このため、本発明のフローティングホースは耐用年数が長くなり、時間の経過と共に浮力を失いやすくなりにくい。
【0009】
本発明は、より具体的には、内側面と外側面とを有するカーカスと、カーカスの周りに互いに間隔をおいて位置する複数の圧縮防止カラーと、カーカスと圧縮防止カラーとを囲む浮力媒体と、浮力媒体と圧縮防止カラーとを覆う外側カバーと、を有するフローティングホースを開示する。
【0010】
本発明はまた、カーカスを備えたホースを有し、カーカスが浮力媒体で囲まれたフローティングホースであって、ホースのカーカスの周りに互いに間隔をおいて位置する圧縮防止カラーを有する、フローティングホースを開示する。
【0011】
本発明はまた、圧縮防止カラーを、ホースの長手方向に沿って互いに間隔をおいて位置するように、ホースのカーカスの周りに配置するステップと、ホースのカーカスと、圧縮防止カラーとを浮力媒体で囲むステップと、浮力媒体を外側カバーで囲むステップと、を有する、フローティングホースの製造方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ホースに浮力を付与するのに使用される浮力媒体と、浮力媒体を保護するように作用する圧縮防止カラーと、を示す、本発明のフローティングホースの概略断面図である。
【図2】外部荷重による変形が生じている、圧縮防止カラーを含む本発明のフローティングホースの概略断面図である。
【図3】ホースに浮力を付与するのに使用される浮力媒体であって、当該浮力媒体を保護するように作用する先細り形状の圧縮防止カラーを備えた浮力媒体を示す、本発明のフローティングホースの概略断面図である。
【図4】外部荷重による変形が生じている、本発明の圧縮防止カラーを備えないフローティングホースの概略断面図である。
【図5】フローティングホースが使用される状況を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す本発明のフローティングホース1は、内側面と外側面とを有するカーカス2と、カーカス2の周りに互いに間隔をおいて位置する複数の圧縮防止カラー3と、ホースのカラー2と圧縮防止カラー3とを囲む浮力媒体4と、外側カバー5と、を含んでいる。この種のフローティングホースは通常、内径が約15cmから60cmの範囲内にあり、外径が約25cmから約100cmの範囲内にある。より典型的には、内径は約30cmから60cmの範囲内にあり、外径は約40cmから約100cmの範囲内にある。たとえば、この種の多くの市販のフローティングホースは、内径が50cm(20インチ)であり、外径が95cm(38インチ)である。
【0014】
カーカス2は、管状の形状であり、通常、端部継手を備えた海中用ベースホースで構成されている。ホースのカーカス2は、通常数層の独立気泡発泡体で構成される浮力媒体4で囲まれている。独立気泡発泡体は、ポリウレタン発泡体などのポリマー発泡体からなる複数の層であってよい。浮力媒体4は、海水が充填されたときに0%から40%の範囲内の残留浮力を与えるのに十分な密度及び全容積を有している。フローティングホースは通常、海水が充填されたときに10%から40%の範囲内の残留浮力を有し、より典型的には15%から35%の範囲内の残留浮力を有している。たいていの場合、フローティングホースは、海水が充填されたときに約25%の残留浮力を有している。実際、多くの仕様では少なくとも20%の残留浮力が要求されている。
【0015】
本発明のフローティングホースはカーカスを含んでおり、より高レベルの性能及びより優れた耐久性を得るために、第2のカーカスを任意に含んでいてよい。ホースのカーカス2は通常、ナイロンやポリエステルなどのファブリック及び/または鋼補強物で補強可能な、加硫されたゴムで構成されている。たとえば、ホースのカーカスは、Kevlar(登録商標)のアラミド繊維で補強することができる。ホースのカーカスは通常、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリネオプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、エチレンプロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、またはそれらの混合物などの、加硫されたゴムで構成されるであろう。ホースのカーカスは通常、1層または2層以上のライナも含んでいる。所望のレベルの耐薬品性を与えるために、このようなライナは一般にニトリルゴムで構成される。優れた耐熱性、耐油性及び耐薬品性を実現するため、Viton(登録商標)などのフルオロエラストマをライナの製造に使用することができる。
【0016】
浮力媒体4は、ホース1のカーカス2の周りを独立気泡発泡体の複数の層で覆うことによって設けることができる。カーカス2と浮力媒体4との間に薄いゴム層を配置することが好ましい。浮力媒体4の厚さは通常、約1cmから約20cmである。言い換えれば、浮力媒体4は、カーカス2から外側に約1cmから約20cmの範囲で延びている。浮力媒体4の厚さは約10cmから約15cmの範囲であることが好ましく、約12cmから約14cmの範囲であることが最も好ましい。
【0017】
圧縮防止カラー3は、フローティングホース1の長手方向に沿って、通常互いに約0.25mから5mの間隔をおいて配置され、より典型的には、約0.5mから5mの間隔をおいて配置されている。圧縮防止カラー3は、ホースの長手方向に沿って、互いに0.75mから3mの間隔をおいて配置されることがより好ましい。圧縮防止カラー3は、互いに約1mから2mの間隔をおいて配置されることが一層好ましい。圧縮防止カラー3は、浮力媒体4を保護するのに必要なレベルの剛性を与える任意のポリマー材料で作ることができる。圧縮防止カラー3の製造に使用される材料は、比較的低密度であることが好ましい。本発明の圧縮防止カラー3は通常、比較的かたい加硫されたゴムで構成され、ホースのカーカスとともに加硫されてホースのカーカスに接合される。
【0018】
圧縮防止カラー3は、浮力媒体4がカーカス2から外側に延びる長さの約60%から約100%の長さで外側に延びているのが最適である。多くの場合、圧縮防止カラー3は、浮力媒体4がカーカス2から外側に延びる長さの約70%から約90%の長さで外側に延びているのが最適である。圧縮防止カラーの形状は重要ではない。しかし、多くの場合、圧縮防止カラー3は、フローティングホースの外壁5に向けて外側に延びるに従い、カーカス2から離れる方向に先細りしていることが好ましい。先細り形状の圧縮防止カラー3を図3に示す。
【0019】
浮力媒体4は、ホースのカーカス2と圧縮防止カラー3とを囲んでいるのが最適である。浮力媒体4は、外側でホースの外側カバー5で囲まれている。外側カバー5は通常、ゴムカバーを備えた織物ブレーカ(織物で補強されたゴムカバー)で構成されている。外側カバー5は、ポリウレタンコーティングを任意に含んでいてよい。いずれにせよ、外側カバー5は、浮力媒体4を内蔵し、水による損傷及び環境条件から浮力媒体4を保護するように構成される。
【0020】
図4は、外部荷重による変形が生じている、本発明の圧縮防止カラーを有さないフローティングホースの概略断面図である。図示の外部荷重の下では、外側カバー5及び浮力媒体4は、ホースのカーカス2に向けて内側に、変形量「X」だけ変形している。この圧縮領域では、発泡体の浮力媒体4は永久的な損傷を受け、元のサイズ及び形状に戻れなくなる可能性がある。発泡体の浮力媒体4が時間の経過と共にさらに圧縮されると、発泡体の浮力媒体4の体積が減少し、浮力を与える能力が低下する。このため、ホースは最終的に、ホースが使用されている海面の下に沈む可能性がある。
【0021】
図2は、圧縮防止カラーを含む本発明のフローティングホースの概略断面図であり、ホースは、外側カバー及び発泡体浮力媒体に変形を生じさせる外部荷重を受けている。この場合、外側カバー5及び発泡体の浮力媒体4は、ホースのカーカス2に向けて内側に、変形量「Z」だけ変形している。圧縮防止カラー3を有するホース1の場合、図4に示すように圧縮防止カラー3がない場合に受ける変形量Xよりも、変形量Zが小さいことに留意されたい。変形量を小さくすることによって、発泡体の浮力媒体4は永久圧縮を受けにくくなり、浮力が失われにくくなる。このように、圧縮防止カラー3は、通常の使用時にフローティングホースを損傷から保護するように作用する。
【符号の説明】
【0022】
1 フローティングホース
2 カーカス
3 圧縮防止カラー
4 浮力媒体
5 外側カバー
X,Z 変形量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面と外側面とを有するカーカスと、
前記カーカスの周りに互いに間隔をおいて位置する複数の圧縮防止カラーと、
前記カーカスと前記圧縮防止カラーとを囲む浮力媒体と、
前記浮力媒体と前記圧縮防止カラーとを覆う外側カバーと、
を有するフローティングホース。
【請求項2】
前記圧縮防止カラーは加硫されたゴムで構成されている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項3】
前記圧縮防止カラーは加硫されて前記ホースの前記カーカスに接合されている、請求項2に記載のフローティングホース。
【請求項4】
前記浮力媒体は発泡体である、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項5】
前記フローティングホースは、海水が充填されたときに0%から40%の範囲内の残留浮力を有している、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項6】
前記フローティングホースは、海水が充填されたときに15%から25%の範囲内の残留浮力を有している、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項7】
前記カーカスは管状の形状をしている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項8】
前記カーカスの前記内側面はライナで覆われている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項9】
前記ライナはニトリルゴムで構成されている、請求項8に記載のフローティングホース。
【請求項10】
前記カーカスはスチレンブタジエンゴムで構成されている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項11】
前記浮力媒体は、前記ホースの前記カーカスと前記圧縮防止カラーとを囲んでいる、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項12】
前記圧縮防止カラーは、前記浮力媒体によって完全に覆われている、請求項11に記載のフローティングホース。
【請求項13】
前記圧縮防止カラーは、前記浮力媒体が前記カーカスから外側に延びる長さの少なくとも約60%の長さで、前記カーカスから外側に延びている、請求項12に記載のフローティングホース。
【請求項14】
前記圧縮防止カラーは、前記フローティングホースの長手方向に沿って、互いに約0.5mから5mの間隔をおいて位置している、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項15】
前記圧縮防止カラーは、前記フローティングホースの長手方向に沿って、互いに約0.75mから3mの間隔をおいて位置している、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項16】
前記圧縮防止カラーは、前記フローティングホースの長手方向に沿って、互いに約1mから2mの間隔をおいて位置している、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項17】
前記浮力媒体は、前記カーカスから外側に、約6cmから約18cmの範囲の長さで延びている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項18】
前記浮力媒体は、前記カーカスから外側に、約10cmから約15cmの範囲の長さで延びている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項19】
前記浮力媒体は、前記カーカスから外側に、約12cmから約14cmの範囲の長さで延びている、請求項1に記載のフローティングホース。
【請求項20】
カーカスを備えたホースを有し、前記カーカスが浮力媒体で囲まれたフローティングホースであって、
前記ホースの前記カーカスの周りに互いに間隔をおいて位置する圧縮防止カラーを有する、フローティングホース。
【請求項21】
前記圧縮防止カラーはゴムである、請求項20に記載のフローティングホース。
【請求項22】
前記圧縮防止カラーは加硫されてホースのカーカスに接合されている、請求項20に記載のフローティングホース。
【請求項23】
前記浮力媒体は発泡体である、請求項20に記載のフローティングホース。
【請求項24】
圧縮防止カラーを、ホースの長手方向に沿って互いに間隔をおいて位置するように、前記ホースのカーカスの周りに配置するステップと、
前記ホースの前記カーカスと、前記圧縮防止カラーとを浮力媒体で囲むステップと、
前記浮力媒体を外側カバーで囲むステップと、
を有する、フローティングホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−60136(P2010−60136A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202142(P2009−202142)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(507375203)ヴェーヤンス テクノロジーズ、 インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Veyance Technologies, Inc.
【Fターム(参考)】