説明

ブラインドリベット及びその締結方法

【課題】マンドレルの表面のメッキが剥離しにくく、金属粉が発生しにくいプルスルーリベットを提供する。
【解決手段】取付孔(54)を有する複数の被取付部材(50)を締結するためのブラインドリベット組立体は、リベット本体(20)と、マンドレル(40)を備える。リベット本体(20)は、中空のスリーブ(21)と、スリーブの一端に形成されたフランジ(22)を有する。マンドレル(40)は、スリーブの内径より小さい直径でスリーブより長い細長い軸部(41)と、スリーブの内径より大径の頭部(43)を有する。リベット本体のスリーブの貫通孔(25)の端部には面取り(31)又はR面(32)が形成されている。リベット本体により被取付部材を締結するため、マンドレルの軸部を引き抜くとき、頭部によりスリーブの端部が拡径し、頭部はマンドレルの軸部から破断されず、リベット本体の貫通孔を通して引き抜かれ、リベット本体のフランジと、スリーブの拡径した端部との間に被取付部材を締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドリベットに関し、特にマンドレルがリベット本体内を通過して締結するプルスルーリベット及びその締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スリーブ及びそのスリーブの一端のフランジからなる中空の金属製リベット本体と、リベット本体を貫通してスリーブのフランジから軸部が延び出る金属製マンドレルを包含するブラインドリベットは良く知られている。ブラインドリベットは、複数のパネルを一方の側からだけの作業で連結できるという利点がある。
ブラインドリベットのリベット本体は、一端にフランジが形成され、中空スリーブを有する。ブラインドリベットのマンドレルは、スリーブの内径より大径の頭部を端部に有し、リベット本体を貫通する外径の軸部を有する。マンドレルは、リベット本体のフランジとは反対側のスリーブの一端部にマンドレルの頭部が隣接配置されて、フランジから軸部が延び出るようにリベット本体の貫通孔に挿入されて組みつけられる。マンドレルの軸部を締結工具で把持してリベットのフランジ側から強く引き抜くと、リベット本体のスリーブの一端部が拡径するように変形し、フランジと拡径したスリーブの間にパネル等を締結することができる。このとき、マンドレルは軸部の細い破断可能部で破断する。
【0003】
このようなマンドレルを破断させて締結するブラインドリベットは、リベット本体の端部の拡径方向の開き方が安定しないという欠点があった。また、マンドレル頭部が必要以上にリベット本体の軸部端部の中に引き込まれてしまうことがあった。
更に、マンドレルが破断可能部で破断すると、破断可能部から頭部側の部分がリベット本体側に残留するので、残留したマンドレルの部分がリベット本体から脱落する恐れがある。
そのため、リベット本体の端部が安定して拡径するブラインドリベットが望まれていた。また、マンドレル頭部が必要以上にリベット本体の軸部端部の中に引き込まれないようにすることが望まれていた。
更に、マンドレルの部分が残留しないブラインドリベットが望まれていた。
【0004】
このような欠点を解決するため、特許文献1は、マンドレルの頭部がマンドレルの軸部から破断されずに、リベット本体を通って完全に引き抜かれるブラインドリベットを提供する。これはプルスルーリベットと呼ばれている。
特許文献1のブラインドリベット組立体は、リベット本体と、マンドレルとを含み、被取付部材を締結する。マンドレルの軸部を締結工具で把持してリベットのフランジ側から強く引き抜くと、リベット本体のスリーブの一端部が拡径するように変形し、フランジと拡径したスリーブの間にパネル等の被締結部材を締結することができる。このとき、マンドレルの頭部は、軸部から破断せずに、リベット本体を通って取り除かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2009/020543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のプルスルーリベットは、マンドレルを引き抜き、マンドレルの頭部がリベット本体を押し広げるとき、リベット本体の貫通孔のエッジ部がマンドレルに当接し、マンドレルの表面のメッキが剥離し、金属粉が発生するという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、プルスルーリベットを締結するとき、マンドレルの表面のメッキが剥離しにくく、金属粉が発生しにくいブラインドリベット(プルスルーリベット)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明では、リベット本体の貫通孔の端部に面取りを形成、又はR形状に加工して、エッジ部をなくし、面取り部、又はR形状部がマンドレルに当接するようにする。その結果、ブラインドリベットを締結するとき、メッキが剥離しにくく、金属粉が発生しにくくなる。
【0009】
本発明の第1の態様は、取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベット組立体であって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたフランジを有するリベット本体と、
前記スリーブの内径より小さい直径で前記スリーブより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大径の頭部とを有するマンドレルとを備え、
前記リベット本体の前記スリーブの貫通孔の端部には面取り部又はR面が形成され、
前記リベット本体により前記被取付部材を締結するため、前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記スリーブの端部が、前記頭部により押されて拡径し、
前記頭部は、前記マンドレルの前記軸部から破断されることなく、前記リベット本体の前記貫通孔を通して引き抜かれ、
前記リベット本体の前記フランジと、前記スリーブの拡径した端部との間に前記被取付部材を締結することを特徴とするブラインドリベット組立体である。
【0010】
リベット本体の貫通孔の端部を面取り、又はR加工してあるので、ブラインドリベットを締結するとき、面取り部、又はR面がマンドレルに当接するので、マンドレルのメッキが剥離しにくくなる。
【0011】
前記マンドレルの前記頭部は、末端部の反対側にテーパ面を有し、前記頭部の前記テーパ面により、前記スリーブの端部を拡径してもよい。
これにより、前記スリーブの端部を均一に拡径することができる。
前記マンドレルの前記頭部の末端部は、平坦面でもよく、又は凹面でも良い。
【0012】
前記被取付部材にはそれぞれ皿孔が形成され、
前記リベット本体の前記フランジは工具側端面の反対側にテーパ状外面を有し、前記フランジの前記テーパ状外面は、一方の前記被取付部材の前記皿孔に当接し、
拡径した前記スリーブの端部は、他方の前記被取付部材の前記皿孔に当接し、複数の前記被取付部材を締結してもよい。
これにより、皿孔によりスリーブの拡径が規制され、被取付部材を安定して締結することができる。
【0013】
前記被取付部材を締結した後、前記リベット本体の拡径した端部は、前記被取付部材の面と同一平面か、前記被取付部材の面より低くなっていてもよい。
これにより、前記被取付部材を締結するための空間が小さくなる。
【0014】
本発明の第2の態様は、被取付部材をブラインドリベット組立体のリベット本体で締結する方法であって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたフランジを有するリベット本体を用意し、前記リベット本体の前記スリーブの貫通孔の端部には面取り部又はR面が形成されており、
前記スリーブの内径より小さい直径で前記スリーブより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大径の頭部とを有するマンドレルを用意し、
前記リベット本体と前記マンドレルとを組み合わせて、ブラインドリベット組立体とし、
前記ブラインドリベット組立体を前記被取付部材の取付孔に挿入し、
前記スリーブを支持しながら前記マンドレルの前記軸部を前記スリーブ側から引き抜き、前記頭部により、前記スリーブの端部を拡径させ、
前記頭部は、前記マンドレルの前記軸部から破断されることなく、前記リベット本体の前記貫通孔を通して引き抜かれ、
前記リベット本体の前記フランジと、前記スリーブの拡径した端部との間に前記被取付部材を締結することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リベット本体の貫通孔の端部を面取り、又はR加工してあるので、ブラインドリベットを締結するとき、マンドレルのメッキが剥離しにくく、金属粉が発生しにくくなる。
また、リベット本体の端部が安定して拡径するブラインドリベットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態のブラインドリベット組立体の斜視図である。
【図2】(a)は従来のリベット本体の一部を断面とした図、(b)は本発明の第1の実施形態によるリベット本体の一部を断面とした図、(c)は本発明の第2の実施形態によるリベット本体の一部を断面とした図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるマンドレルの側面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によりブラインドリベット組立体を被取付部材にセットした状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のリベット本体により被取付部材を締結した状態を示す断面図である。
【図6】従来のブラインドリベット組立体により被取付部材を締結する場合の工程を示す断面図である。
【図7】図6(a)〜(c)のAで示す円内の拡大図である。
【図8】本発明の第1の実施形態のブラインドリベット組立体を使用して被取付部材を締結する場合の工程を示す断面図である。
【図9】図8(a)〜(c)について、Cで示す円内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるブラインドリベット組立体について説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態のブラインドリベット組立体の斜視図である。ブラインドリベット組立体は、リベット本体20と、マンドレル40とを含む。リベット本体20のスリーブ21側の端部から、軸部41を先頭にしてマンドレル40を挿入し、頭部43がスリーブ21の端部に隣接するように配置する。このブラインドリベット組立体を被取付部材50の取付孔54に挿入し、フランジ22が被取付部材50に当接するようにする。
締結工具(図示せず)により、リベット本体20のフランジ22を保持した状態で、マンドレル40の軸部41を把持してリベット本体20のフランジ22側から強く引き抜くと、リベット本体20のスリーブ21の一端部が拡径するように変形し、フランジ22と拡径したスリーブの間にパネル等の被締結部材50を締結することができる。このとき、マンドレル40の頭部43は、軸部41から破断せずに、リベット本体20を通り抜ける。
【0019】
以下、図2、3を参照して、ブラインドリベット組立体を構成するリベット本体20と、マンドレル40について説明する。
図2(a)は、従来のブラインドリベット組立体のリベット本体10の一部を断面とした図である。リベット本体10の貫通孔25内面のブラインド側端部27には、エッジ部12がある。
図2(b)は本発明の第1の実施形態によるリベット本体20の一部を断面とした図である。
リベット本体20は、円筒状のスリーブ21と、スリーブ21の一端に形成されたフランジ22とを含む。フランジ22のスリーブ21側はテーパ状外面23となっている。スリーブ21の外面は円筒状外面24である。リベット本体20の工具側端面26と、ブラインド側端部27との間に貫通孔25が延びる。スリーブ21の外径は、被取付部材50の取付孔54の直径より少し小さく、取付孔54を通ることができる大きさである。フランジ22の外径は、取付孔54の直径より大きく、テーパ状外面23が、被取付部材50の皿孔53に当接するようになっている。
【0020】
図2(b)に示すリベット本体20は、貫通孔25内面のブラインド側端部27には面取り部31が形成されている。そのため、貫通孔25内面のブラインド側端部27にエッジ部がなく、リベット本体20を通ってマンドレル40を引き抜くとき、エッジ部が当接することがないので、マンドレル40のメッキが剥離しにくい。
リベット本体20の材質は、スチール等であり、亜鉛メッキ等がされている。
【0021】
図2(c)は本発明の第2の実施形態によるリベット本体20'の一部を断面とした図である。図2(c)に示すリベット本体20'は、貫通孔25内面のブラインド側端部27には、面取り部31ではなく、R面32が形成されている。他の点は第1の実施形態のリベット本体20と同様である。R面32を形成した場合も、マンドレル40にエッジ部が当接することがないので、マンドレル40のメッキが剥離しにくい。
【0022】
図3は、本発明の第1、第2の実施形態によるマンドレル40の側面図である。マンドレル40は、細長い軸部41と、軸部41の一端部の拡径した頭部43とを備える。軸部41は円柱状で、リベット本体20の貫通孔25の内径より小さい外径を有し、貫通孔25内に挿入することができる。頭部43の一端部は平坦な末端部44であり、末端部44の反対側の面はテーパ面45となり、軸部41に続く。頭部43の直径は、リベット本体20の貫通孔25の内径より大きい。頭部43の直径は、被取付部材50の取付孔54の内径より小さく、取付孔54を通ることができる。
マンドレル40の材質は、スチール等であり、亜鉛メッキ等がされている。
図1を参照すると、被取付部材50は、外面51,52に皿孔53が形成され、皿孔53の先は取付孔54に続いている。本実施形態では、被取付部材50は、皿孔53が外面になるようにして、2枚組み合わされている。
【0023】
本発明の第1の実施形態のブラインドリベット組立体により、被取付部材50を締結する動作について説明する。図4は、ブラインドリベット組立体を被取付部材50にセットした状態を示す断面図である。リベット本体20のブラインド側端部27の側から、軸部41を先頭にしてマンドレル40を挿入する。こうしてリベット本体20とマンドレル40を組み合わせたブラインドリベット組立体を被取付部材50の孔に図4の右側から挿入し、リベット本体20のフランジ22が被締結部材50の皿孔53に当接するようにする。第1の実施形態では、被締結部材50の外面51とフランジ22の端面はほぼ同一平面になる。
【0024】
この状態から、取付工具のノーズピース(図示せず)でリベット本体20の工具側端面26を保持しながら、マンドレル40の軸部41を取付工具(図示せず)で引き抜く。このとき、マンドレル40の頭部43は、リベット本体20のスリーブ21のブラインド側端部27を押し広げながら、リベット本体20の貫通孔25に入っていく。マンドレル40の頭部43はつぶれて、破断することなく、リベット本体20の貫通孔25を通って完全に引き抜かれる。
【0025】
図5は、リベット本体20により被取付部材50を締結した状態を示す断面図である。リベット本体20のブラインド側端部27はマンドレル40の頭部43に押されて拡径し、被取付部材50の皿孔53に当接し、拡径したブラインド側端部27'と、フランジ22との間に被取付部材50を挟む。マンドレル40の頭部43は、43'で示すように、リベット本体20の貫通孔25を通って引き抜かれ、径が小さくなる。頭部43'は軸部41と一体のままである。
リベット取付後、リベット本体20のブラインド側端部27'は、被取付部材50の面とほぼ同一平面か、又は被取付部材50の面より低くなっている。
【0026】
以下、従来のブラインドリベット組立体のリベット本体10を使用して被取付部材50を締結する場合と、本発明の第1の実施形態のリベット本体20を使用して被取付部材50を締結する場合の、マンドレル40とリベット本体20の動きについて詳しく説明する。
図6は、従来のブラインドリベット組立体のリベット本体10を使用して被取付部材50を締結する場合の工程を示す断面図である。図7(a)〜(c)は、図6(a)〜(c)のAで示す円内の拡大図である。
図8は、本発明の第1の実施形態のブラインドリベット組立体のリベット本体20を使用して被取付部材50を締結する場合の工程を示す断面図である。図9(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)のCで示す円内の拡大図である。
図6〜9では、マンドレル40の頭部43の末端部44は、平面ではなく凹面としてある。凹面のほうが、マンドレル40の頭部43の外径を小さくしやすいという利点がある。
【0027】
従来のリベット本体10を使用する図6(a)では、リベット本体10とマンドレル40を組み合わせたブラインドリベット組立体を、被取付部材50の取付孔54を通して配置する。リベット本体10のフランジ22のテーパ状外面23は、被取付部材50の皿孔53に当接する。図6(a)のA部分の拡大図である図7(a)を参照すると、リベット本体10の貫通孔25の端部のエッジ部12は、マンドレル40の頭部43の基部に当接している。
図6(b)は、マンドレル40を取付工具で少し引き抜いた状態を示す。このとき、マンドレル40の頭部43は、リベット本体10のスリーブ21の貫通孔25のブラインド側端部27を少し押し広げている。図6(b)のA部分の拡大図である図7(b)を参照すると、円B'で示す部分で、リベット本体10の貫通孔25のエッジ部12は、マンドレル40の頭部43の基部に当たり、移動する。そのため、マンドレル40の頭部43の基部のメッキが剥離する。
【0028】
図6(c)は、マンドレル40を続けて引き抜いた状態を示す。リベット本体10の貫通孔25のブラインド側端部27は、更に押し広げられる。図6(c)のA部分の拡大図である図7(c)を参照すると、円B"で示す部分で、エッジ部12はマンドレル40の頭部43の先端に近い部分に当たる。そのため、マンドレル40の頭部43の先端に近い部分のメッキが剥離する。
図6(d)は、マンドレル40を更に引き抜いた状態を示す。リベット本体10の貫通孔25のブラインド側端部27は、更に押し広げられる。図6(d)の段階では、エッジ部12はもはやマンドレル40に当たらないのでめっきを剥離することは少ない。
【0029】
図6(e)は、マンドレル40を更に引き抜き、被取付部材50を締結する状態を示す。リベット本体10の貫通孔25のブラインド側端部27は、更に押し広げられ、スリーブ21のブラインド側端部27は、被取付部材50の皿孔53に当接し、拡径したブラインド側端部27と、フランジ22との間に被取付部材50を挟む。マンドレル40の頭部43は、スリーブ21により外側から押されて、径が小さくなる。
図6(f)は、リベット本体10の貫通孔25を通ってマンドレル40を完全に引き抜き、被取付部材50の締結が完了した状態を示す。マンドレル40の頭部43の外径は更に小さくなり、破断することなく、リベット本体10の貫通孔25を通り抜ける。頭部43'は軸部41と一体のままである。
このように、従来のリベット本体10を使用すると、図6(a)〜(c)に示す締結の初期の工程で、リベット本体10の貫通孔25のエッジ部12が、マンドレル40に当接して移動するので、マンドレル40のメッキが剥離しやすい。
【0030】
図8は、本発明の第1の実施形態のブラインドリベット組立体のリベット本体20により被取付部材50を締結する場合の工程を示す断面図である。図9(a)〜(c)は、図8(a)〜(c)について、Cで示す円内の拡大図である。図8では、マンドレル40の頭部43の末端部44は凹面としてある。
【0031】
図8(a)では、リベット本体20とマンドレル40を組み合わせたブラインドリベット組立体を、被取付部材50に配置する。リベット本体20のフランジ22のテーパ状外面23は、被取付部材50の皿孔53に当接する。図8(a)のC部分の拡大図である図9(a)を参照すると、リベット本体20の貫通孔25の面取り部31は、マンドレル40の頭部43の基部に当接している。
図8(b)は、マンドレル40を取付工具で少し引き抜いた状態を示す。このとき、マンドレル40の頭部43は、リベット本体20のスリーブ21の貫通孔25のブラインド側端部27を少し押し広げている。図8(b)のC部分の拡大図である図9(b)を参照すると、円D'で示す部分で、リベット本体20の貫通孔25の端部には、面取り部31が形成されている。面取り部31は、マンドレル40の頭部43の基部に当たり移動するが、面取り部31は鋭角ではなく当接するので、マンドレル40の頭部43の基部のメッキは剥離しにくい。
【0032】
図8(c)は、マンドレル40を続けて引き抜いた状態を示す。リベット本体20の貫通孔25のブラインド側端部27は、更に押し広げられる。図9(c)を参照すると、円D"で示す部分で、面取り部31はマンドレル40の頭部43の先端に近い部分に当たる。面取りがない場合と比較して、マンドレル40の頭部43の先端に近い部分のメッキは剥離しにくい。
図8(d)は、マンドレル40を更に引き抜いた状態を示す。リベット本体20の貫通孔25のブラインド側端部27は、更に押し広げられる。図8(d)の段階では、面取り部31はもはやマンドレル40に当たらないのでめっきを剥離することは少ない。
【0033】
図8(e)は、マンドレル40を更に引き抜き、被取付部材50を締結する状態を示す。リベット本体20の貫通孔25のブラインド側端部27は、更に押し広げられ、スリーブ21のブラインド側端部27は、被取付部材50の皿孔53に当接し、拡径したブラインド側端部27と、フランジ22との間に被取付部材50を挟む。マンドレル40の頭部43は、スリーブ21により外側から押されて、径が小さくなる。
図8(f)は、リベット本体20の貫通孔25を通ってマンドレル40を完全に引き抜き、被取付部材50の締結が完了した状態を示す。マンドレル40の頭部43の外径は更に小さくなり、破断することなく、リベット本体20の貫通孔25を通り抜ける。頭部43'は軸部41と一体のままである。
【0034】
第1の実施形態では、リベット本体20の貫通孔25の内面に面取り部31を形成した。第2の実施形態では、リベット本体20'に面取り部の代わりにR面32を形成する。
第2の実施形態のリベット本体20'を使用して被取付部材50を締結する場合の工程は、図8、9を参照して説明した第1の実施形態の場合とほぼ同様である。
第2の実施形態では、R面32を形成してあるので、曲面でマンドレル40に当接し、マンドレルのメッキは一層剥離しにくくなる。
【0035】
従来のブラインドリベット組立体のリベット本体10を使用すると、図6(a)〜(c)に示す締結の初期の工程で、リベット本体10の貫通孔25のエッジ部12が、マンドレル40に当接し、マンドレル40のメッキが剥離しやすい。
本発明の第1、第2の実施形態によれば、リベット本体20の貫通孔25に面取り部31、又はR面32を設けたので、リベット本体20により締結するとき、図8(a)〜(c)に示す締結の初期の工程で、エッジ部がなく、面取り部31、又はR面32がマンドレル40に当接するので、マンドレル40のメッキが剥離しにくくなる。
【符号の説明】
【0036】
10 リベット本体
12 エッジ部
20 リベット本体
20' リベット本体
21 スリーブ
22 フランジ
23 テーパ状外面
24 円筒状外面
25 貫通孔
26 工具側端面
27 ブラインド側端部
31 面取り部
32 R面
40 マンドレル
41 軸部
43 頭部
44 末端部
45 テーパ面
50 被取付部材
51,52 外面
53 皿孔
54 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する複数の被取付部材を締結するためのブラインドリベット組立体であって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたフランジを有するリベット本体と、
前記スリーブの内径より小さい直径で前記スリーブより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大径の頭部とを有するマンドレルとを備え、
前記リベット本体の前記スリーブの貫通孔の端部には面取り部又はR面が形成され、
前記リベット本体により前記被取付部材を締結するため、前記マンドレルの前記軸部を引き抜くとき、前記スリーブの端部が、前記頭部により押されて拡径し、
前記頭部は、前記マンドレルの前記軸部から破断されることなく、前記リベット本体の前記貫通孔を通して引き抜かれ、
前記リベット本体の前記フランジと、前記スリーブの拡径した端部との間に前記被取付部材を締結することを特徴とするブラインドリベット組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のブラインドリベット組立体であって、
前記マンドレルの前記頭部は、末端部の反対側にテーパ面を有し、前記頭部の前記テーパ面により、前記スリーブの端部を拡径するブラインドリベット組立体。
【請求項3】
請求項1に記載のブラインドリベット組立体であって、
前記被取付部材にはそれぞれ皿孔が形成され、
前記リベット本体の前記フランジは工具側端面の反対側にテーパ状外面を有し、前記フランジの前記テーパ状外面は、一方の前記被取付部材の前記皿孔に当接し、
拡径した前記スリーブの端部は、他方の前記被取付部材の前記皿孔に当接し、複数の前記被取付部材を締結するブラインドリベット組立体。
【請求項4】
請求項1に記載のブラインドリベットであって、
前記被取付部材を締結した後、前記リベット本体の拡径した端部は、前記被取付部材の面とほぼ同一平面か、前記被取付部材の面より低くなっているブラインドリベット組立体。
【請求項5】
被取付部材をブラインドリベット組立体のリベット本体で締結する方法であって、
中空のスリーブと、前記スリーブの一端に形成されたフランジを有するリベット本体を用意し、前記リベット本体の前記スリーブの貫通孔の端部には面取り部又はR面が形成されており、
前記スリーブの内径より小さい直径で前記スリーブより長い細長い軸部と、前記スリーブの内径より大径の頭部とを有するマンドレルを用意し、
前記リベット本体と前記マンドレルとを組み合わせて、ブラインドリベット組立体とし、
前記ブラインドリベット組立体を前記被取付部材の取付孔に挿入し、
前記スリーブを支持しながら前記マンドレルの前記軸部を前記スリーブ側から引き抜き、前記頭部により、前記スリーブの端部を拡径させ、
前記頭部は、前記マンドレルの前記軸部から破断されることなく、前記リベット本体の前記貫通孔を通して引き抜かれ、
前記リベット本体の前記フランジと、前記スリーブの拡径した端部との間に前記被取付部材を締結することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77769(P2012−77769A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220750(P2010−220750)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】