説明

ブラインド用スラット

【課題】外観上の見栄えを悪化させることなくスラット本体へのカバーの結着作業を省略する。
【解決手段】ブラインド用スラットは、幅方向に湾曲した細長い長尺板材からなるスラット本体31と、スラット本体31の湾曲凸面を覆う表布32aと、スラット本体31の湾曲凹面を覆う裏布32bとを備える。表布32aをスラット本体31の湾曲凸面に密着させ裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させた状態で表布32a及び裏布32bの幅方向両側部がスラット本体31の側縁近傍において互いに縫着される。全幅がスラット本体31のダブル幅より広い帯状体をその幅方向の両側縁が一致するように長手方向に二つ折りにしながらスラット本体31を挟み、帯状体のスラット本体31の湾曲凸面に重合する部分により表布32aが形成され、帯状体33のスラット本体31の湾曲凹面に重合する部分により裏布32bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスラットを上下に間隔を隔てて水平に支持し、これらのスラットを昇降することにより開閉し、かつ、スラットをその水平軸線の周りに回動することによって遮光の調節を行なう型式のブラインドに使用されるスラットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる横型ブラインドは、幅の狭い薄板状の板材からなる複数のスラットを、ヘッドボックスから垂下したラダーコードで遮光状態の調節のために回転可能にかつ上下に所定の間隔を保って吊持させるとともに、昇降コードによってスラットを上方に畳み上げた状態から窓の全面を覆うように降ろした状態に操作できるように設けている。このブラインドに使用されるスラットは、一般に10数mm〜50mm程度の幅寸法で、長さは1m程度以上の細長く薄い例えばアルミニウム製の板材により形成される。そしてこの種のブラインド用のスラットは、自重による撓みを生じないようその幅方向が湾曲して形成され、その機械的強度を向上させている。そして、そのスラットには、上記昇降コードを組み付けるために、少なくとも長尺方向に離間した2か所の位置に貫通する孔が設けられる。
【0003】
このようなブラインドは、古くから事務室などの窓用調光具として使用されており、近時においてはインテリアとしての性格も重視され、また個人的、家庭的なレベルでも次第にその需要が増進する傾向にある。ここで、家庭における使用を考えた場合には、金属製のスラットは定型的にきれいに整っているという印象を与える反面、事務的で冷たい感じを与えるとともに、スラットの鋭がったエッジによって指を傷つけるという不具合も有していた。
このような不具合を解消するものとして、アルミニウム等の金属製の長尺板状のスラット本体を布地製カバ−で被包して成るブラインド用スラットが開発されている。このカバ−の布地は、天然繊維、再生繊維、合成繊維等から成る織布、不織布より成り、カバ−をスラット本体の湾曲凹面に接着や融着、その他の適宜の手段で結着している。そして、近年ではその保温性を向上させるためにそのカバーのスラット本体の湾曲凸面を覆う表布に膨らみを持たせてみたり、その表布にプリーツやランダムな凹凸を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開平7−4156号公報(明細書[0010]、図1)
【特許文献2】特開平6−346672号公報(明細書[0015]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のブラインド用スラットでは、スラット本体の湾曲凹面を覆うカバーの裏布をそのスラット本体に結着しており、その手段である接着や融着等の作業が比較的煩雑であって、得られるブラインド用スラットの単価が押し上げられる不具合があった。一方、この結着作業を省くと、スラット本体の湾曲凹面とそこを覆う裏布の間に隙間が生じて裏布に張りがなくなり、その裏布にしわ等が発生してその外観上の見栄えが悪化するとともに、スラットをその水平軸線の周りに回動させて遮光させた場合に、その裏布に生じたしわの部分から光が漏れてその遮光が困難になる不具合がある。
本発明の目的は、外観上の見栄えを悪化させることなくスラット本体へのカバーの結着作業を省略し得るブラインド用スラットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、幅方向に湾曲した細長い長尺板材からなるスラット本体31と、スラット本体31の湾曲凸面を覆う表布32aと、スラット本体31の湾曲凹面を覆う裏布32bとを備えたブラインド用スラットの改良である。
その特徴ある構成は、表布32aをスラット本体31の湾曲凸面に密着させ裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させた状態で表布32a及び裏布32bの幅方向両側部がスラット本体31の側縁近傍において互いに縫着されたところにある。
【0006】
この請求項1に記載されたブラインド用スラットでは、表布32aをスラット本体31の湾曲凸面に密着させ、裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させ、その状態で表布32a及び裏布32bの幅方向両側部をスラット本体31の側縁近傍において互いに縫着するので、両側部における縫着箇所間における幅を表布32aと裏布32bで異ならせることができる。そして、スラット本体31の側縁は表布32a及び裏布32bの両側部において挟持され、表布32a及び裏布32bはそれらの側部においてスラット本体31の側縁を被覆してその側縁に係止される。このため、スラット本体31の湾曲凸面に密着した表布32aが、そのスラット本体31の湾曲凸面上において幅方向にずれることはない。
一方、表布32aはスラット本体31の湾曲凸面に密着した状態が維持されると、その幅方向の両側において縫着された裏布32bの幅方向の移動が制限されることから、その裏布32bもスラット本体31の湾曲凹面に密着した状態で維持され、スラット本体31に結着しなくとも、裏布32bはスラット本体31の湾曲凹面に密着する。このため、スラット本体31の湾曲凹面とそこを覆う裏布32bの間に隙間が生じるようなことはなく、外観上の見栄えを悪化させることなくスラット本体へのカバーの結着作業を省略することが可能になる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図3に示すように、全幅がスラット本体31のダブル幅より広い帯状体33をその幅方向の両側縁が一致するように長手方向に二つ折りにしながらスラット本体31を挟み、帯状体33のスラット本体31の湾曲凸面に重合する部分により表布32aが形成され、帯状体33のスラット本体31の湾曲凹面に重合する部分により裏布32bが形成されたことを特徴とする。
この請求項2に記載されたブラインド用スラットでは、帯状物33を二つ折りにしながらスラット本体31を挟み、スラット本体31の湾曲凸面及び湾曲凹面に重合する部分により表布32a及び裏布32bを形成するので、別に独立して表布32a及び裏布32bをそれぞれ裁断して得る場合に比較してその手間を減少させることができ、より安価なブラインド用スラットを得ることができる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、表布32a及び裏布32bの各幅がスラット本体31の幅より3〜5mm広いことを特徴とする。
この請求項3に記載されたブラインド用スラットでは、スラット本体31の側縁を表布32a及び裏布32bの両側部において確実に挟持することができる。また、表布32a及び裏布32bの側部はスラット本体31の側縁から必要以上に突出することはない。このため、裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させつつ、外観上の見栄えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブラインド用スラットでは、表布をスラット本体の湾曲凸面に密着させ裏布をスラット本体の湾曲凹面に密着させた状態で表布及び裏布の幅方向両側部をスラット本体の側縁近傍において互いに縫着するので、両側部における縫着箇所間における幅を表布と裏布で異ならせることができる。そして、スラット本体の側縁は表布及び裏布の両側部において挟持され、表布及び裏布はそれらの側部においてスラット本体の側縁を被覆してその側縁に係止される。このため、スラット本体の湾曲凸面に密着した表布が、そのスラット本体の湾曲凸面上において幅方向にずれることはなく、裏布もスラット本体の湾曲凹面に密着した状態で維持される。この結果、スラット本体に結着しなくとも、裏布はスラット本体の湾曲凹面に密着し、スラット本体の湾曲凹面とそこを覆う裏布の間に隙間が生じるようなことはなく、外観上の見栄えを悪化させることなくスラット本体へのカバーの結着作業を省略することが可能になる。
【0010】
また、帯状物を二つ折りにしながらスラット本体を挟み、スラット本体の湾曲凸面及び湾曲凹面に重合する部分により表布及び裏布を形成するようにすれば、別に独立して表布及び裏布をそれぞれ裁断して得る場合に比較してその手間を減少させることができ、より安価なブラインド用スラットを得ることができる。そして、表布及び裏布の各幅がスラット本体の幅より3〜5mm広いものであれば、スラット本体の側縁を表布及び裏布の両側部において確実に挟持することができ、表布及び裏布の側部がスラット本体の側縁から必要以上に突出することを防止できる。このため、裏布をスラット本体の湾曲凹面に密着させつつ、外観上の見栄えを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図6に示すように、いわゆる横型ブラインド10は、図示しないブラケットにより窓の上枠に沿って設けられたヘッドボックス11を備える。ヘッドボックス11の内部には、昇降コード12が巻き付けられているドラム(図示せず)が軸着したシャフト13が長尺方向に沿設され、またラダーコード14の上端が巻かれたチルトドラム15が軸着されたチルトシャフト16が同様に沿設される。上記昇降コード12はヘッドボックス11の端部近傍に設けられたストッパ部17から外部に延出され、コード止め18を介して補助コード19に連結されている。21はヘッドボックス11の端部近傍のチルター22から外部に延出された回転操作棒である。昇降コード12の下端にはボトムレール23が組み付けられ、このボトムレール23とヘッドボックス11の間に、ラダーコード14により上下に一定間隔を保って複数の本発明におけるスラット30が支持される。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明のスラット30は、長尺板状のスラット本体31と、これを被包する長尺袋状のカバー32とで構成されている。スラット本体31は、幅方向の中央が上側に膨出するよう幅方向に湾曲した細長い長尺板材からなり、このスラット本体31は例えばアルミニウム製の薄板で形成される。一方、カバー32は、スラット本体31の上側である湾曲凸面を覆う表布32aと、スラット本体31の下側である湾曲凹面を覆う裏布32bとを備える。そして、表布32aと裏布32bを備えるカバー32は、その表布32aをスラット本体31の湾曲凸面に密着させ、その裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させた状態で、その表布32a及び裏布32bの幅方向両側部をスラット本体31の側縁近傍において互いに縫着することにより作られる。ここで、図1における符号34は、表布32a及び裏布32bの幅方向両側部を縫着するために用いられた糸を示す。そして、図2に示すように、このスラット30には、昇降コード12を挿通させる挿通孔30aが、スラット本体31及びカバー32を貫通するように形成される。
【0013】
この実施の形態におけるカバー32は、全幅がスラット本体31の幅の2倍であるダブル幅より広い幅を有する帯状体をその幅方向の両側縁が一致するように長手方向に二つ折りにすることにより作られる。この帯状体を用いた具体的な製造手順を図3に示す。即ち、帯状体33はその端部からその幅方向の両側縁が一致するように長手方向に二つ折りにされ、その二つ折りされた端部によりスラット本体31を挟み、その状態で折り畳みガイド36に挿入される。図4に示すように、この折り畳みガイド36は、スラット本体31の湾曲凸面に帯状体33の折り曲げられた上側を重合させる上型36aと、スラット本体31の湾曲凹面に帯状体33の折り曲げられた下側を重合させる下型36bとを有する。そして、帯状体33のスラット本体31の湾曲凸面に重合する部分により表布32aが形成され、帯状体33のスラット本体31の湾曲凹面に重合する部分により裏布32bが形成される。
【0014】
ここで、表布32a及び裏布32bの各幅はスラット本体31の幅より3〜5mm広いことが好ましい。このため、スラット本体31のダブル幅より広い幅を有する帯状体33の幅はスラット本体31の幅より6〜10mm広いことが好ましい。そして、この表布32a及び裏布32bを構成することになる帯状体33としては、天然繊維、再生繊維、合成繊維等から成る織布、又は不織布より作られることが好ましい。
【0015】
図3に戻って、帯状体33の二つ折りにされてスラット本体31を挟んだ端部は折り畳みガイド36の内部を通過し、縫合用ガイド37に至る。図5に示すように、縫合用ガイド37は、スラット本体31の湾曲凸面に表布32aを密着させる上型37aと、スラット本体31の湾曲凹面に裏布32bを密着させる下型37bとを有し、スラット本体31の側縁近傍の上型37aに、表布32a及び裏布32bの幅方向両側部を互いに縫着するミシン針38を通過させるミシン孔37cが形成される。そして二つ折りにされてスラット本体31を挟んだ帯状体33は縫合用ガイド37の内部を通過する際に、その帯状体33における表布32a及び裏布32bの幅方向両側部がスラット本体31の側縁近傍において互いに縫着される。これによりスラット本体31と、そのスラット本体31の湾曲凸面を覆う表布32aと、スラット本体31の湾曲凹面を覆う裏布32bとを備えた本発明のブラインド用スラット30が得られる。
【0016】
このように構成されたブラインド用スラット30では、表布32aをスラット本体31の湾曲凸面に密着させ、裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させ、その状態で表布32a及び裏布32bの幅方向両側部をスラット本体31の側縁近傍において互いに縫着するので、両側部における縫着箇所間における幅が表布32aと裏布32bで異なり、その裏布32bはスラット本体31の湾曲凹面に密着した状態が維持される。
即ち、スラット本体31の側縁は表布32a及び裏布32bの両側部において挟持され、表布32a及び裏布32bはそれらの側部においてスラット本体31の側縁を被覆してその側縁に係止される。このため、スラット本体31の湾曲凸面に密着した表布32aが、そのスラット本体31の湾曲凸面上において幅方向にずれることはない。よって、表布32aはスラット本体31の湾曲凸面に密着した状態が維持されることになる。
【0017】
一方、表布32aはスラット本体31の湾曲凸面に密着した状態が維持されると、その幅方向の両側において縫着された裏布32bの幅方向の移動が制限されることから、その裏布32bもスラット本体31の湾曲凹面に密着した状態で維持されることになる。そして、この裏布32bは、例えば織布又は不織布等から成るため、スラット本体31に結着しなくとも、裏布32bはスラット本体31の湾曲凹面に密着することになる。このため、スラット本体31の湾曲凹面とそこを覆う裏布32bの間に隙間が生じるようなことはなく、その裏布32bにしわ等が発生するようなことは防止され、外観上の見栄えを悪化させるようなことはない。このように、スラット本体31との結着作業を省いたとしてもその裏布32bにしわ等が生じないので、スラット30をその水平軸線の周りに回動させて遮光させた場合に、そのスラット30により効果的に遮光することができる。よって、本発明のブラインド用スラット30では、外観上の見栄えを悪化させることなくスラット本体へのカバーの結着作業を省略することを可能とすることができる。
【0018】
また、この実施の形態では、全幅がスラット本体31のダブル幅より広い帯状体33をその幅方向の両側縁が一致するように長手方向に二つ折りにしながらスラット本体31を挟み、スラット本体31の湾曲凸面及び湾曲凹面に重合する部分により表布32a及び裏布32bを形成するので、別に独立して表布32a及び裏布32bをそれぞれ裁断して得る場合に比較してその手間を減少させることができ、より安価なブラインド用スラットを得ることができる。そして、表布32a及び裏布32bの各幅がスラット本体31の幅より3〜5mm広いので、スラット本体31の側縁を表布32a及び裏布32bの両側部において確実に挟持することができる。また、表布32a及び裏布32bの側部はスラット本体31の側縁から必要以上に突出することはない。このため、裏布32bをスラット本体31の湾曲凹面に密着させつつ、外観上の見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施形態のブラインド用スラットを示す図2のA−A線断面図である。
【図2】そのブラインド用スラットの斜視図である。
【図3】帯状体を二つ折りにしながらスラット本体を挟む状態を示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】図3のC−C線断面図である。
【図6】そのスラットを有するブラインドを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
30 ブラインド用スラット
31 スラット本体
32a 表布
32b 裏布
33 帯状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に湾曲した細長い長尺板材からなるスラット本体(31)と、前記スラット本体(31)の湾曲凸面を覆う表布(32a)と、前記スラット本体(31)の湾曲凹面を覆う裏布(32b)とを備えたブラインド用スラットにおいて、
前記表布(32a)を前記スラット本体(31)の湾曲凸面に密着させ前記裏布(32b)を前記スラット本体(31)の湾曲凹面に密着させた状態で前記表布(32a)及び前記裏布(32b)の幅方向両側部が前記スラット本体(31)の側縁近傍において互いに縫着されたことを特徴とするブラインド用スラット。
【請求項2】
全幅がスラット本体(31)のダブル幅より広い帯状体(33)をその幅方向の両側縁が一致するように長手方向に二つ折りにしながら前記スラット本体(31)を挟み、前記帯状体(33)の前記スラット本体(31)の湾曲凸面に重合する部分により表布(32a)が形成され、前記帯状体(33)の前記スラット本体(31)の湾曲凹面に重合する部分により裏布(32b)が形成された請求項1記載のブラインド用スラット。
【請求項3】
表布(32a)及び裏布(32b)の各幅がスラット本体(31)の幅より3〜5mm広い請求項1又は2記載のブラインド用スラット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−285943(P2008−285943A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133656(P2007−133656)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000109923)トーソー株式会社 (84)