説明

ブラケット支持手摺

【課題】 手摺の支柱の下端をブラケットに強固に支持して、支柱の揺動や固定不良の可能性を解消する。
【解決手段】 ブラケット1の一対の起立壁11間に回動スペーサー2を回動自在に配置し、これに中空の支柱3下端を挿入する一方、支柱3の中空部に、断面倒T字状一対の中空補強部材4を嵌合し且つその中空部に断面倒T字状にして突出部52に雌ネジ53を有するナット5を挿入して、ブラケット1の各起立壁からこれらの透孔を介して、各ナット5の雌ネジ53に締着ボルト6を螺着して、これらを、逆方向に引寄せるように一体的に締着する。この逆方向の締着を行うことによってナット5がそれぞれ中空補強部材4を介して支柱3を起立壁11側に引寄せるように、ブラケット1に対する支柱3の強固な固定を行うとともに中空補強材4が支柱3を有効に内部補強して手摺Aの耐水平荷重性を高度に確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラケットを用いて中空手摺支柱を起立支持したブラケット支持手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブラケット支持手摺として、一対の起立壁の対向側面に湾曲部を有する断面U字状のブラケットと、同じく一対の起立壁の外側面に該ブラケットの上記湾曲部に摺接する湾曲摺接部を有して該ブラケットの一対の起立壁間に回動自在に配置したピース状一対の又は一体の底壁を備えた断面U字状の回動スペーサーと、該回動スペーサーの一対の起立壁間に下端を挿入した断面矩形乃至方形の中空支柱手摺と、上記ブラケットの片側一方の起立壁から、これらブラケット、回動スペーサー、中空手摺支柱及び中空補強材の丸孔乃至上下方向長孔の透孔を介して片側他方の起立壁のナットに螺着することによって中空手摺支柱の対向する側面をブラケットの起立壁間に挟持締着したブラケット貫通の締着ボルトを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2582727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、ブラケットに対して回動スペーサーが回動自在となるから、ブラケットを設置するコンクリート躯体上面に長手方向の波打ちや短手方向の傾斜角度の変化があっても常に中空手摺支柱を垂直に起立支持することによって、手摺の新設のみならず改装にも有効なものとすることが可能となる。
【0005】
しかし乍ら、この場合、ブラケットに支持した中空手摺支柱の下端が、ブラケットの起立片間に遊ぶように固定されることによって、該中空手摺支柱が僅かながらも揺動するという固定不良が見られることがある。
【0006】
即ち、締着ボルトは、ブラケットにおける一対の起立片の片側一方から片側他方のナットに螺着するところ、ブラケットは、例えばアルミ鋳物のように剛性の高い材料によって一体成形したものとされるのが一般であり、従って起立片間の間隔が予め定まっている一方、該ブラケットを含めて、これら部材には一般にその製造に際して僅かな寸法誤差が許容される結果、ブラケットの起立片間の間隔寸法と回動スペーサー及び中空手摺支柱の合計の幅寸法に寸法差が生じた場合、一体成形された起立片を中空手摺支柱側に倒して、該寸法差を吸収するような弾性を期待しえないから、上記中空手摺支柱の揺動乃至その固定不良の原因は、結局、許容誤差に起因して部材間に生じることある寸法差を構造的に吸収することができないことにあると見られる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、上記コンクリート躯体上面の波打ちや傾斜角度の変化等に対応して中空手摺支柱を垂直に起立支持することができるメリットを維持しながら、揺動乃至固定不良の可能性を解消して、中空手摺支柱を強固にして確実に固定し得るようにしたブラケット支持手摺を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って鋭意検討したところ、上記ブラケット、回動スペーサー、中空支柱手摺を同様に備え、更に短寸一対にして中空手摺支柱の中空部下端に嵌合した中空補強材及びその各中空部に挿入した一対のナットを備えるとともにブラケットの各起立壁からブラケット、回動スペーサー、中空手摺支柱及び中空補強材を貫通して、該中空補強材中空部のナットに螺着した一対の締着ボルトを備えるようにすると、ブラケットに対する中空手摺支柱の固定を強固且つ確実に行って、揺動や固定不良の可能性を解消することができるとともにブラケットに支持した手摺を高度な耐水平荷重性を備えたものとすることができるとの知見を得た。
【0009】
即ち、ブラケットの各起立壁からの締着ボルトを、中空手摺支柱に挿入配置した中空補強材中空部のナットに対して螺着することによって、各締着ボルトは、それぞれ中空手摺支柱の対向する側面を起立壁側に向けて逆方向に引寄せるように、該対向する側面を2ヶ所で引寄せ締着してその固定を行うとともに上記部材の許容寸法誤差に起因する寸法差が生じても、締着ボルトの螺着進行時にこれを吸収する結果、中空手摺支柱の固定が強固且つ確実になされるに至るためと見られる。また、上記締着ボルトのナットに対する螺着の引寄せ締着によって、中空補強材が、これを嵌合配置した中空手摺支柱の対向する側面における内側壁面に強固に対接するとともに中空手摺支柱が曲げ応力を受けても、その中空部内の中空補強材が相互に対接して中空手摺支柱の中空部を埋めるように配置した中空補強材が、中空手摺支柱を有効に内部補強してその剛性を向上する結果、高度な耐水平荷重性を確保するに至るためと見られる。
【0010】
本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、即ち、請求項1に記載の発明を、一対の起立壁の対向側面に湾曲部を有する断面U字状のブラケットと、同じく一対の起立壁の外側面に該ブラケットの上記湾曲部に摺接する湾曲摺接部を有して該ブラケットの一対の起立壁間に回動自在に配置したピース状一対の又は一対間の下端を連結した断面U字状の回動スペーサーと、該回動スペーサーの一対の起立壁間に下端を挿入した断面矩形乃至方形の中空支柱手摺と、該中空手摺支柱の中空部下端に嵌合した短寸にして一対の中空補強材と、該中空補強材の中空部に挿入した一対のナットと、上記ブラケットの一対の起立壁から、これらブラケット、回動スペーサー、中空手摺支柱及び中空補強材の丸孔乃至上下方向長孔の透孔を介して上記一対のナットに螺着することによって中空手摺支柱の対向する各側面をブラケットの起立壁側に引寄せ締着した一対の締着ボルトを備えてなることを特徴とするブラケット支持手摺としたものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記ナットを、締着ボルトの螺着により中空補強材の中でその側面内壁に密着して、該中空補強材を中空手摺支柱の側面内壁に向けて圧接することによって、締着ボルトの引寄せ締着を可及的有効且つ適切に行うものとするように、これを、上記ナットを、一対の締着ボルトの引寄せ締着によって中空補強材の内壁に対接する短寸の起立基部と、該起立基部の長手方向中間位置に配置した雌ネジを備えて形成してなることを特徴とする請求項1に記載のブラケット支持手摺としたものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記中空補強材の側面内壁に対する起立基部の密着を面接触の密着とするとともに締着ボルトの螺着を安定且つ確実に行うものとするように、これを、上記起立基部を、片面一方を平坦面とし且つ片面他方の少なくとも長手方向中間位置に突出部を配置するとともに上記雌ネジを該突出部に配置してなることを特徴とする請求項2に記載のブラケット支持手摺としたものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記ナットを、その上下を問わずに中空補強材に挿入配置することにより雌ネジを常に定位置として上下反転使用可能なものとするように、これを、上記起立基部を、上記中空補強材と同長乃至これより短寸としてその上下中央位置に配置してなることを特徴とする請求項2又は3に記載のブラケット支持手摺としたものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記締着ボルトを螺着するナットを、六角ナット、四角ナット等のJIS規格のナットによるものとするとともに該ナットの中空補強材における位置合せを可及的容易に行うものとするように、これを、上記ナットを、中空補強材に形成したガイド条にスライド案内したJIS規格のナットによって形成してなることを特徴とする請求項1に記載のブラケット支持手摺としたものである。
【0015】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として、上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、ブラケット、回動スペーサー、中空支柱手摺を備え、更に短寸一対にして中空手摺支柱の中空部下端に嵌合した中空補強材及びその各中空部に挿入した一対のナットを備えるとともにブラケットの各起立壁からブラケット、回動スペーサー、中空手摺支柱及び中空補強材を貫通して、該中空補強材中空部のナットに螺着した一対の締着ボルトを備えるようにして、コンクリート躯体上面の波打ちや傾斜角度の変化等に対応して中空手摺支柱を垂直に起立支持することができるメリットを維持しながら、揺動乃至固定不良の可能性を解消して、中空手摺支柱を強固にして確実に固定し得るようにし且つ手摺の耐水平荷重性を高度に確保したブラケット支持手摺を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記ナットを、締着ボルトの螺着により中空補強材の中でその側面内壁に密着して、該中空補強材を中空手摺支柱の側面内壁に向けて圧接することによって、締着ボルトの引寄せ締着を可及的有効且つ適切に行うものとすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記中空補強材の側面内壁に対する起立基部の密着を面接触の密着とするとともに締着ボルトの螺着を安定且つ確実に行うものとすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記ナットを、その上下を問わずに中空補強材に挿入配置することにより雌ネジを常に定位置として上下反転使用可能なものとすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記締着ボルトを螺着するナットを、六角ナット、四角ナット等のJIS規格のナットによるものとするとともに該ナットの中空補強材における位置合せを可及的容易に行うものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】方形の中空手摺支柱を用いたブラケット支持手摺の縦断面図である。
【図2】図1のブラケット支持手摺の横断面図である。
【図3】図1のブラケット支持手摺の分解斜視図である。
【図4】矩形の中空手摺支柱を用いたブラケット支持手摺の縦断面図である。
【図5】図4のブラケット支持手摺の横断面図である。
【図6】図4のブラケット支持手摺の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、Aはブラケット支持手摺であり、該ブラケット支持手摺Aは、ブラケット1、回動スペーサー2、中空手摺支柱3、中空補強材4、ナット5及び締着ボルト6を備えたものとしてある。
【0023】
ブラケット1は、一対の起立壁11の対向側面に湾曲部12を有する断面U字状のものとしてあり、本例にあって該ブラケット1は、例えばアルミ鋳物によって一体に成形することによって、断面矩形をなすように一対の起立壁11と、該起立壁11を覆う一対の対向壁14と、これらに囲繞される下面の中空補強材挿入用の開口(図示省略)と、上記対向壁14下端から張出突出した張出固定壁15とを備えるとともに上記一対の起立壁11の対向側面に、それぞれ凹陥した湾曲部12を備え且つその面内に、例えば丸孔による透孔13を備えたものとしてある。該ブラケット1は、これを、例えば新築又は既築のべランダ等の起立壁面をなすコンクリート躯体に、一対の起立壁11を前後に向けるように載置し、張出固定壁15をホールインアンカー等の固定金具によって固定するように使用する、コンクリート躯体載置固定用のものとしてある。
【0024】
回動スペーサー2は、同じく一対の起立壁21の外側面に該ブラケット1の上記湾曲部12に摺接する湾曲摺接部22を有して該ブラケット1の一対の起立壁11間に回動自在に配置したピース状一対の又は一対間の下端を連結した断面U字状、本例にあっては、該湾曲摺接部22を備えた起立壁21の下端を連結部で連結することによって断面U字状のものとしてあり、本例の回動スペーサー2は、例えばアルミ押出材によって上記断面U字状に一体に成形加工することによって、上記起立壁21を中空とするとともに内側面を鉛直面、外側面を外側に膨出した湾曲面として、該外側面に上記湾曲摺接部22を備え且つ該一対の起立壁21の面内に、上記ブラケット1の透孔13位置に合せて上下に長孔とした透孔23を備えたものとし、また、その底面には、中空手摺支柱3の下端を受止めする矩形の受座を残して、これに囲繞される部分を切除することによって、上記連結部を一対のブリッジ状として、後述の指先の操作用開口を形成したものとしてある。一対のうち一方の起立壁21上端に倒V字状に配置したリブは、回動スペーサーの回動に際して、上記ブラケットの一方の起立壁11に対接して、その回動範囲を限定する回動ストッパーである。該回動スペーサー2は、上記ブラケット1の一対の起立壁11間に、その湾曲部12に対して湾曲摺接部22を摺接するように嵌合し、後述の中空手摺支柱3を、コンクリート躯体の波打ちや傾斜に応じて前後方向に回動して、該波打ちや傾斜を吸収し該中空手摺支柱3の起立角度を垂直としてその受入れ支持を行なうように使用する、支柱角度調整用のものとしてある。
【0025】
中空手摺支柱3は、該回動スペーサー2の一対の起立壁21間に下端を挿入配置した断面矩形乃至方形のものとしてあり、本例にあって該中空手摺支柱3は、例えばアルミ手摺に使用するように、その笠木、格子等とともにアルミ押出材によって、図1乃至図3の例にあって断面方形とし、図4乃至図6の例にあって断面矩形とするように複数の断面形状に一体に成形加工してあり、このとき該中空手摺支柱3は、上端を図示省略の笠木ベースに固定するためのタッピングホール31を四隅のコーナーに備えるとともにその対向する側面、本例にあってはコンクリート躯体の前後に向う内外両側面の下方に、回動ブラケット2と同様に上下に長孔とした透孔23を備えたものとしてある。該透孔23は、これを長孔とすることによってブラケット1の支持に際して、各中空手摺支柱3に上下の高さ調整を施すことによって、同じくコンクリート躯体の波打ちや傾斜による中空手摺支柱3の起立高さの差を吸収し、ブラケット支持の手摺Aを容易且つ確実に設置し得るようにしてある。
【0026】
中空補強材4は、該中空手摺支柱3の中空部下端に挿入配置した短寸にして一対のものとしてあり、本例にあって該中空補強材4は、例えばアルミ押出材によって、上記中空手摺支柱3における上記対向する側面の内壁間寸法の、例えば1/2乃至1/2弱の幅寸法を備えたものとすることによって、これを一対として各中空手摺支柱3の中空部に嵌合するように配置してある。
【0027】
このとき該中空補強材4は、中空手摺支柱3の、例えばタッピングホール31、補強リブ等による断面形状に合せ且つ中空手摺支柱3に対する嵌合状態で先端が相互に接触、例えば面接触することによって該中空手摺支柱3を内部補強するように構成するのが好ましく、これによって中空手摺支柱3の剛性を高め、該中空手摺支柱3を用いて立設されたブラケット支持の手摺Aの高度な耐水平荷重性を確保することが可能となる。
【0028】
本例の中空補強材4は、中空手摺支柱3のコーナーに配置したタッピングホール31を回避して、中空手摺支柱3の対向する側面の内壁に面状に対接する一方、中空手摺支柱3の該対向する側面間中央位置で相互に面接触するか、中空手摺支柱3が曲げ応力を受けたときに相互に接触するように、例えば図1乃至3の例において、一対の間で共通形状の断面T字状とし又はタッピングホールのL字状受溝を更に備えて、図4乃至6において、同じく一対の間で共通形状の断面十字状とするように一体に成形加工してある。このとき、本例の中空補強材4は、ブラケット1の一対の起立壁11の高さより長い、例えば8〜10cm程度のものとし、その長手方向中間位置にそれぞれ丸孔とした透孔41を、例えば下端から1/3程度の高さ位置に備えたものとしてある。
【0029】
ナット5は、該中空補強材4の中空部に挿入配置した一対のものとしてあり、該ナット5は、例えば、中空補強材4に形成したガイド条にスライド案内したJIS規格のナットによって形成することも可能であるが、この場合、中空補強材4の透孔41と雌ネジの位置合せにやや煩雑さが残るので、本例にあって該ナット5は、例えば中空手摺支柱3と下端を合せるように装着して、その位置合せを容易化するように、これを、一対の締着ボルト6の引寄せ締着によって中空補強材4の内壁に密着する短寸の起立基部51と、該起立基部51の長手方向中間位置に配置した雌ネジ53を備えて形成したものとしてあり、このとき、該起立基部51は、これを、片面一方を平坦面とし且つ片面他方の少なくとも長手方向中間位置に突出部52を配置するとともに上記雌ネジ53を該突出部52に配置したものとし、また、該起立基部51を、上記中空補強材4と同長乃至これより短寸としてその上下中央位置に配置したものとしてある。
【0030】
即ち、本例のナット5は、例えば厚肉鋼板、特に厚肉ステンレス板を用いるとともに該厚肉鋼板の長手方向中央位置に透設した透孔位置に、上記突出部52をなすようにJIS規格のナット、特に厚肉鋼板の幅内に納まる幅をなす、例えば四角ナットを溶着して形成した鋼製一対のものとしてあり、これによって厚肉鋼板を上記起立基部51として、その平坦面を中空補強材4の内壁に密着させ、また、これと逆側の突出部52に雌ネジ53を配置したものとしてあり、上記鋼製、特にステンレス製とすることによってアルミの中空補強材4との間で電食の発生を防止して手摺Aとしての耐久性を確保するとともに上記四角ナットを溶着することによって、後述の締着ボルト6の螺着を確実になし得るようにしてある。このとき雌ネジ53、特に四角ナットは、長手方向中央位置、即ち上下中央位置に配置したことによって、その上下の勝手を解消し、一対の中空補強材4に対して上下反転の使用を可能として、部材の共通化を図ったものとしてある。
【0031】
締着ボルト6は、上記ブラケット1の一対の起立壁11から、これらブラケット1、回動スペーサー2、中空手摺支柱3及び中空補強材4の丸孔乃至上下方向長孔の透孔を介して、上記一対のナット5に螺着することによって中空手摺支柱3の対向する各側面をブラケット1の起立壁11側に引寄せ締着した一対のものとしてあり、その長さを、ブラケット1の一対の起立壁11から回動スペーサー2、中空手摺支柱3及び中空補強材4の厚さを介してナット5に至り、該ナット5に対して確実な螺着を行なうように、例えば数cm程度とし、またその径を8mm乃至1cm程度としてある。
【0032】
このように締着ボルト6は、ブラケット1の各起立壁11の透孔13から、該起立壁11の湾曲部12に摺接して回動調整した回動スペーサー2の長孔23、該回動スペーサー2に対して上下調整した中空手摺支柱3の長孔32、中空手摺支柱3に嵌合した各中空補強材4の透孔41を通過して、該中空補強材4に挿入した各ナット5の雌ネジ53に対してそれぞれ強固な螺着を行うことによって、上記中空手摺支柱3の対向する側面をブラケット1の起立壁11側に引寄せ締着するように使用するものとしてある。
【0033】
本例にあって、ブラケット1、回動スペーサー2に加えて中空補強材4、ナット5を用いて締着ボルト6を用いた引寄せ締着を施すことによって、ブラケット1を載置固定するコンクリート躯体上面の波打ちや傾斜角度の変化を、ブラケット1に対して回動の角度調整を施した回動スペーサー2が吸収し、該回動スペーサー2に対して上下の高さ調整を施した中空手摺支柱3を垂直に起立支持し、各締着ボルト6が、それぞれ中空手摺支柱3の対向する側面を、その2ヶ所で逆方向に向けて引寄せ締着するとともに各部材の許容寸法誤差に起因する寸法差を該締着ボルト6の螺着時の進行によって吸収して、中空手摺支柱3を強固且つ確実に固定することができ、従って、中空手摺支柱3の揺動乃至固定不良の可能性を解消し、ブラケット支持の手摺Aの耐水平荷重性を高度に確保することができる。
【0034】
本例のブラケット支持の手摺Aにあって、そのコンクリート躯体への設置は、例えば、回動スペーサー2に、中空手摺支柱3、一対の中空補強材4及び一対のナット5を装着した状態で、ブラケット1底面に設けた中空補強材挿入用の開口から上向きに該回動スペーサー2を通過させるように、該ブラケット1と回動スペーサー2をセットし、この状態でブラケット1の張出固定壁15を、コンクリート躯体に載置固定し、中空手摺支柱3の上下調整及び回動スペーサー2の回動による角度調整を施した後に、一対の締着ボルト6によってこれら回動スペーサー2、中空補強材4及びナット5を、ブラケット1の起立壁側に引寄せ締着することによって、これを行なうものとしてある。
【0035】
このとき、回動スペーサー2は、その底面に指先の操作用開口24を備えているから、締着ボルト6の締着に際しては、ブラケット1の開口から該回動スペーサー2の該開口24に指先を挿入して、中空補強材4及びナット5の位置調整を行うことができ、該位置調整後に締着ボルト6のナット5に対する螺着による引寄せ締着を行うことが可能となる。
【0036】
また、中空補強材4は、下端から長手方向1/3程度の高さ位置に透孔41を設け、ナット5は上下中央位置に雌ネジ53を設けたから、中空手摺支柱3の上下調整に際して、中空補強材4の位置を中空手摺支柱3の中空部上方に移動し、ナット5の雌ネジ53を該中空補強材4の透孔41位置に合せるように、中空補強材4に対するナット5の挿入を行えばよく、これによって、中空手摺支柱3の上下調整に際して、中空補強材4乃至ナット5が中空手摺支柱3の下端から下向きに突出することによって、該中空手摺支柱3の角度調整が妨げられるのを防止し得るようにしてある。
【0037】
図中7は、回動スペーサー2の回動調整、中空手摺支柱3の上下調整の調整状態を維持するように、ブラケット1の一方の起立壁11のネジ孔からこれら回動スペーサー2、中空手摺支柱3、中空補強材4に螺入して、これらを一体的に固定したタッピングネジ、8はブラケット1の起立壁11と張出固定壁15を覆うようにそれぞれ着脱自在に固定した化粧カバーを示す。
【0038】
図示した例は以上のとおりとしたが、ブラケットの湾曲部と回動スペーサーの湾曲摺接部を、例えば横方向に細溝とこれに合せた突条を備えて、その摺接を微小ピッチで段階的に行うようにすること、回動スペーサーをピース状一対のものとするとき、例えば上記断面U字状の回動スペーサーからその連結部を除去した起立壁を独立した部材としたものとすること、中空補強材を、上記断面T字状のものに、その相互の対接側に幅広対接面を配置して断面H字状のものとすること、中空補強材の透孔を上下中央位置とするか、透孔を長手方向2ヶ所に配置して、上下反転使用を可能として、部材の共通化を図ること、上記JIS規格の六角ナット等のナットを独立した部材として使用するとき、その装着を上記に準じてブラケットの開口、回動スペーサーの指先操作用開口を介して行うようにすること等を含めて、本発明の実施に当って、ブラケット、起立部、湾曲部、回動スペーサー、湾曲摺接部、中空支柱手摺、中空補強材、ナット、透孔、締着ボルト等の各具体的形状、構造、材質、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0039】
A ブラケット支持手摺
1 ブラケット
11 起立壁
12 湾曲部
13 透孔
14 対向壁
15 張出固定壁
2 回動スペーサー
21 起立壁
22 湾曲摺接部
23 透孔
24 操作用開口
3 中空手摺支柱
31 タッピングホール
32 透孔
4 中空補強材
41 透孔
5 ナット
51 起立基部
52 突出部
53 雌ネジ
6 締着ボルト
7 タッピングネジ
8 化粧カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の起立壁の対向側面に湾曲部を有する断面U字状のブラケットと、同じく一対の起立壁の外側面に該ブラケットの上記湾曲部に摺接する湾曲摺接部を有して該ブラケットの一対の起立壁間に回動自在に配置したピース状一対の又は一対間の下端を連結した断面U字状の回動スペーサーと、該回動スペーサーの一対の起立壁間に下端を挿入した断面矩形乃至方形の中空支柱手摺と、該中空手摺支柱の中空部下端に嵌合した短寸にして一対の中空補強材と、該中空補強材の中空部に挿入した一対のナットと、上記ブラケットの一対の起立壁から、これらブラケット、回動スペーサー、中空手摺支柱及び中空補強材の丸孔乃至上下方向長孔の透孔を介して上記一対のナットに螺着することによって中空手摺支柱の対向する各側面をブラケットの起立壁側に引寄せ締着した一対の締着ボルトを備えてなることを特徴とするブラケット支持手摺。
【請求項2】
上記ナットを、一対の締着ボルトの引寄せ締着によって中空補強材の内壁に密着する短寸の起立基部と、該起立基部の長手方向中間位置に配置した雌ネジを備えて形成してなることを特徴とする請求項1に記載のブラケット支持手摺。
【請求項3】
上記起立基部を、片面一方を平坦面とし且つ片面他方の少なくとも長手方向中間位置に突出部を配置するとともに上記雌ネジを該突出部に配置してなることを特徴とする請求項2に記載のブラケット支持手摺。
【請求項4】
上記起立基部を、上記中空補強材と同長乃至これより短寸としてその上下中央位置に配置してなることを特徴とする請求項2又は3に記載のブラケット支持手摺。
【請求項5】
上記ナットを、中空補強材に形成したガイド条にスライド案内したJIS規格のナットによって形成してなることを特徴とする請求項1に記載のブラケット支持手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−163754(P2010−163754A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4876(P2009−4876)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000107882)スワン商事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】